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2016, 12月の記事一覧

東京オリンピック施設の人権侵害、熱帯林破壊、違法伐採リスクをIOCに警告

2016年12月6日

プレスリリース

2020年東京オリンピックを前に市民団体が人権侵害、熱帯林破壊、違法伐採のリスクをIOCに警告:

40を超える団体が国立競技場などの会場建設が人権侵害や環境破壊に関わるおそれがあるとの書簡をIOCに送付

スイス・ローザンヌ――2020年東京オリンピックの経費削減策の議論が続く[1]なか、国際NGOなど44団体が賛同し、東京の新国立競技場や他の会場に予定される施設の建設に、違法で持続不可能な熱帯雨林木材が使われる可能性が高いと警告する書簡が、冬季理事会開催中のIOCに今日手渡された。市民団体は追加の予防措置やデューデリジェンス対策がとられなければ、生物多様性や気候変動、そして森林への正当な権利をもち森林に依存して暮らす地域コミュニティに深刻な影響を与えかねないと警鐘を鳴らしている。

その木材消費が熱帯林破壊の原因になっているとして、市民団体や国際社会から長年、日本は批判されてきた[2]。日本は世界最大の熱帯合板の輸入国で、その多くがマレーシアやインドネシアの森林から供給されている。NGOは特に日本の輸入合板のほぼ半分を供給するマレーシア・サラワク州の状況に焦点を当てている。サラワクは森林減少のペースが世界でもっともはやい地域の一つであり、違法伐採の発生率が極めて高い[3]。サラワクの先住民族コミュニティは先祖伝来の土地を守るため何十年もの間、伐採会社と闘ってきており、ときに死者が出ることもあった[4]。action_to_ioc

ある独立の調査によれば、新国立競技場の施工を担当する大成建設が使用している合板と、極めて破壊的な伐採活動のために世界でもっとも急速に森林減少が進むサラワク州の生物多様性ホットスポットの関わりが指摘されている[5]。「サラワクの伐採会社は私たちの森を破壊し、飲み水を汚染した。私たちの先住民族としての権利を侵害し、生計を奪った」とSarawak Dayak Iban Associationのニコラス・ムジャ氏は語っている。

「東京2020大会関係者は先住民族の権利侵害、違法伐採、熱帯林破壊に関係する木材の使用を避けるために十分な対策をとっていない」と国際環境NGOのFoE Japanの三柴淳一氏は述べる。「東京オリンピックの会場建設に違法で持続不可能な木材を使うことになれば、持続可能性を堅持するとのオリンピック関係者の誓約に反し、とんでもないレガシーが残されることになる」と話す。NGOはIOCが大会関係者に対して、「持続可能性を、オリンピックの開催計画の策定と、開催運営のすべての側面に取り入れることを保証する」というIOCの誓約と矛盾しない、より厳しい基準を要求するよう求めている[6]。12月4日に開催された専門家による会合において、小池百合子東京都知事はこの問題に対して認識をしており、「発注者として声をあげていく」と発言している[7]。

東京オリンピックの企業スポンサー数は過去最高となっているが、こうしたオリンピック会場建設に資金が使われるとなれば、深刻なレピュテーション・リスクを抱えることになるかもしれない。「森林減少ゼロにとりくむ企業や政府が増えているときに、これは大きな後退になる。IOCとスポンサーは東京2020大会関係者に対し、オリンピック会場建設に使われるすべての木材が合法で持続可能な供給地から、地域コミュニティの自由意思による事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)を尊重した上で供給されるよう対策をとるべきだ」とレインフォレスト・アクションネットワーク(カリフォルニア州)のハナ・ハイネケン氏は指摘している。

※国際オリンピック委員会への公開書簡(PDF版)

英語(原文)/English(original)

日本語(翻訳)/Japanese(translation)

[1] www.olympic.org/news/in-the-wake-of-rio-s-marvellous-games-tokyo-makes-strong-strides-towards-2020/
[2] Friends of the Earth, From policy to reality: ‘Sustainable’ tropical timber production, trade and procurement, 2013, 109ページ、www.foei.org/wp-content/uploads/2013/12/From-policy-to-reality.pdf
[3] グローバル・ウィットネス「衝突する二つの世界」2014年 www.globalwitness.org/olympicsjp/
[4] マーケット・フォー・チェンジ熱帯林行動ネットワーク(JATAN), 「フローリングへと変貌する熱帯林」, 2016年, http://www.marketsforchange.org/forest_to_floor_japanese , The Straits Times, June 21 2016, www.straitstimes.com/asia/se-asia/opposition-pkr-politician-shot-dead-in-sarawak/
[5] グローバル・ウィットネス「マレーシアの熱帯林破壊と日本:持続可能な2020年オリンピック東京大会へのリスク」2015年12月 www.globalwitness.org/en/reports/shinyang/
[6] オリンピック・アジェンダ2020、提言4

[7] 朝日新聞2016年12月5日付「違法伐採の木材 新国立「防止を」 輸入時の確認NGO訴え www.asahi.com/articles/DA3S12691251.html

 

 

************** 続 報 (2016年12月7日)**************

 続報「コーツIOC副会長が公開書簡を受け取り、対応を表明」

現地(スイス・ローザンヌ)時間12月6日午前11時、国際オリンピック委員会(IOC)への公開書簡「letter_handover_to_ioc2020年東京オリンピックに違法で持続不可能は熱帯木材が使用されるリスクについて」を、ジョン・コーツIOC副会長(兼東京2020調整委員会委員長)に、44の国際NGOの代表が手渡しました。
そのNGO代表からは、コーツ副会長の対応について、以下のような説明が届いています。「コーツ副会長とは10分程度の時間を得ることができ、非常に興味を示して頂き、本当に懸念を抱いているようでした。コーツ氏は、組織委員会や日本政府等の2020年東京大会関係者に対して、NGOの懸念と提案を伝えること、そして関係者に報告を求め、NGOにも共有することを約束してくれました。」

IOCへの公開書簡「2020年東京オリンピックに違法で持続不可能な熱帯木材が使用されるリスクについて」の手交の様子