サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

2017, 4月の記事一覧

大手金融機関、商社、GPIFの森林破壊・搾取・児童労働への関与が判明

2017 年 4 月 24 日

日本の大手金融機関や商社、そして GPIF が東南アジアでの森林破壊・搾取・児童労働への関与が判明

〜新報告書によって、非倫理的な 8 つの企業に対し資金支援を行う金融機関が明らかに〜

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(以下、RAN)は本日、「投資家には責任が ある―森林と金融調査レポート」と題された報告書を発表いたします。報告書では、森林破壊 と人権侵害を繰り返している東南アジアのパーム油、紙パルプ、ゴム、木材企業に対し、多大 な資金提供を行っている世界の主要な銀行や投資機関の一覧を公開しています。

RAN の調査により、王子ホールディングス、丸紅、伊藤忠、フェルダ・グローバル・ベンチ ャーズ、インドフード、IOI、ウィルマー、APP の 8 社が、自社やサプライチェーンの事業に おいて、児童労働や強制労働、先住民族からの土地の搾取、熱帯林皆伐、炭素を豊富に含んだ 泥炭地の破壊、現地の汚職に便乗した利益享受、違法に製造された商品の売却など、社会およ び環境問題に関与している事実が明らかになりました。上記 8 社はすべて、社会問題や環境問 題への取組みについてそれぞれ誓約や方針を公表していますが、問題は改善されていません。

RAN 森林と金融キャンペーンディレクターのトム・ピケンは、以下のように述べています。 「銀行や投資機関は、自らが資金を提供している事業が熱帯林破壊や現地の人々からの搾取を 行っているという事実を認識する倫理的、経済的な義務があります。こうした金融機関は、自 分たちの投資によって、環境、社会、そして最終的には自らに対し多大なダメージを与えてい ると理解する必要があります。」

機関投資家による最新報告(2017 年 2 月付)によると、上記 8 社の森林部門事業は、債券お よび株式で合計 65 億米ドル以上の資金を得ているほか、2010 年以降に融資および引受で受け取っ た資金の総額は 280 億米ドル以上となっています*。上記 8 社を金銭的に支援している主要銀行 は、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱 UFJ フィナンシ ャル・グループ、中国開発銀行、RHB バンキング、CIMB グループ、HSBC などであり、最大 級の投資機関としては、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、バンガード、エン プロイーズ・プロヴィデント・ファンド、ブラックロック、およびディメンショナル・ファン ド・アドバイザー等が含まれています。

「銀行家や投資家の人々は、こうした事態から目を背けるのを止め、自分たちが受け取って いる短期的な配当や数百万ドルのボーナスが実際は何を犠牲にして生みだされているのかを認 識しなくてはいけません。金融機関が森林破壊や人権侵害には融資をしないと誓約しない限り、 気候変動の大きな要因である森林破壊に歯止めをかけようとする国際努力は徒労に終わってし まうのです。」

RAN は今回の報告書で、銀行と投資機関に対し、熱帯林に害を与えている商品の製造に関 わるすべての企業、およびそれに関連する川下のサプライチェーンについて、投融資方針を策定するよう求めています。 そうした方針があって初めて、自らが資金的に支援している森林破 壊や人権侵害について明白に確認ができるからです。銀行や投資家は、デューディリジェンス によるスクリーニングを強化し、資金提供先の企業の業務をきちんとモニターして、無責任な 企業に対しては資金提供を断つ社会的責任があります。

森林破壊や社会問題は、金融機関にとっても重要な問題になっています。 2000 年から 2012 年にかけて、日本の国土の約 3 倍の面積の熱帯林が失われましたが、その中でも消失が最も深 刻な地域の一つが東南アジアです。その大きな要因は、グローバル企業によるパーム油、紙パ ルプ、木材、ゴム、その他ソフト・コモディティへの急激な需要の高まりです。消失した熱帯林のうち、ほぼ半分が商業的用地に違法に転換されており、その半分は輸出用商品を生産する ためのものです。

今回の報告書によって、融資、引受、投資を通じて年間何十億ドルもの資金を提供すること で、金融機関がいかに環境破壊を行う主体的存在となっているかが明らかになっています。こ の報告書は、 明日から東京で開催される「RI アジア 2017」でも発表いたします。

以下からダウンロードできます。

日本語版 投資家には責任がある -森林と金融 調査レポート-

英語版 Every Investor Has A Responsibility:Forest & Finance Risk Dossier

*融資と引受はグループ会社レベルで計算されており、森林セクター以外の事業活動がある企業については、選定した企業の森林リスク分野に帰すると合理的に考えられる資金提供額の割合をより正確に捕捉するために、減額して集計した。入手可能な情報の限界により、本報告書で指摘する債券・株式の総額はいくつかの年金基金による債券・株式を含めていない。さらなる情報については次を参照してください。forestsandfinance.org

熱帯林の破壊及び人権侵害の疑い 緊急の調査を要請 新国立競技場建設で

2017年4月20日

熱帯林の破壊及び人権侵害につながる疑いのある合板の使用について

緊急の調査を要請 新国立競技場建設で

日本及び国際環境団体は本日、持続可能な 2020 年東京オリンピックへのコミットメントに対する 深刻な違反であるとして、東京の新国立競技場の建設における、悪評高いマレーシアの伐採企業 であるシンヤン社製と考えられる熱帯材合板型枠の使用について緊急に調査するよう要請した。

国際オリンピック委員会(IOC)及び東京 2020 大会関係者は、オリンピック関連の建設事業にお いて違法かつ持続不可能な木材が使用されるリスクが高いことに対し、繰り返し情報提供を受け てきた[1]。昨年 12 月の新国立競技場の建設着工の数日前には、40 を超える環境団体が IOC に対し、 オリンピック関連の建設事業で使用される木材が合法かつ持続可能なものであることを確保する ための東京 2020 大会関係者及び日本政府による取り組みが適切でないと警告する書簡を送付した [2]。NGO は、オリンピックで使用される木材について強固なデューデリジェンスを義務付けるこ とでリスクを直ちに軽減しなければ、生物多様性、気候変動、地域コミュニティに悪影響を与え ることになると主張してきた。

4 月 3 日、競技場の建設現場において、シンヤン社のものであると思われる表示の付いた熱帯合板 がコンクリート型枠に使われていることが調査担当者によって判明した(添付写真(a)、(b)参照)。 表示は、シンヤン社製合板として日本国内で販売されているものに非常に類似している(添付写 真(c)参照)。4 月 18 日にも熱帯合板型枠の使用が確認されている。

シンヤン社は、違法伐採が横行し、森林破壊が世界で最も深刻な場所の一つであるマレーシア・ サラワク州の「6 大」伐採企業の一つとして知られている。同社は、「ハート・オブ・ボルネオ」 と呼ばれる、国境をまたがる保全地域における広範囲を含む原生林を組織的に伐採している。 2016 年には、一日当たりサッカーコート 40 個分以上に当たる面積の手付かずの雨林を皆伐したこ とが明らかになっている[3]。地元コミュニティ及び同社の元社員は、自社の利益に反する懸念を 表明したり、行動を起こす者に対して恐喝や襲撃をするために、同社が武装した犯罪組織を雇っ ていると主張している。また、同社は森林に対する慣習上の権利を主張する先住民族の人々に影響を及ぼすような人権侵害にも関与している[4]。建設現場で見られた「E パネル」と表示されて いるからといって、必ずしも環境面での持続可能性や人権侵害とは関わりのないことを保証する ものではない。

「シンヤン社はサラワクの熱帯林で最も悪名高い開発企業の一つであり、この企業からの合板は いかなる持続可能性基準をも満たしてはいない。シンヤン社の合板を使用することは、持続可能 なオリンピックを開催するという日本のコミットメントに対して明らかな違反である」と Markets for Change のペグ・パットは述べた。

「シンヤン社の木材製品を使用することは、立場の弱い先住民族であるペナンやイバンの人々か ら慣習的権利や生計手段、文化的慣行を奪うことになる」とSarawak Dayak Iban Associationのニコ ラス・ムジャは述べた。

さらに懸念されるのは、大会組織委員会が環境面の持続可能性及び人権に関する基準からコンク リート合板型枠を免除するという抜け穴を認めていることである[5]。適用される方針は、合法性 について極めて弱い規定である「グリーン購入法」で、この規定のもとでは違法性の高い木材が 合法な木材として日本に輸入されてしまっていると、これまで繰り返し批判されている[6]。

「国立競技場は日本政府が建設する建造物であり、国の威信を示す場所でなければならない。し かし、オリンピック関連の建設において弱い環境・社会基準が適用され、不正企業からの木材を 使用しているという予備的証拠を考えると、オリンピック及び日本にとっての不祥事なりかねな いと懸念する」と国際環境 NGO FoE Japan の三柴淳一は述べた。さらに三柴は「この証拠により、 大会関係者が大会のための木材をどのように調達しているかを緊急に調査すること、そして木材 が合法、持続可能で、人権侵害に関わっていないか確保するための強力な対策を即時に採用する ことが求められる」と述べた。

環境団体は、日本のオリンピック関係者に対して説明及び信頼のおける環境監査のできる第三者 による公開調査の実施を求めている。ここで提示された問題が解決されない限り、建設現場でこれ以上熱帯合板が使われてはならないと環境団体は要請する。

このプレスリリースのPDF版は、こちらからダウンロードできます。

新国立競技場建設現場で使われているシンヤン社製合板の写真等はこちらからダウン ロードできます。

注: [1] 例えば以下を参照:グローバル・ウィットネス「衝突する二つの世界(Two Worlds Collide)」(2014年1 2月)https://www.globalwitness.org/olympics/、グローバル・ウィットネス「マレーシアの熱帯林破壊と 日本:持続可能な2020年オリンピック東京大会へのリスク(Japan’s links to rainforest destruction)」(2015年1 2月)、https://www.globalwitness.org/ru/reports/shinyang/

[2] https://www.fairwood.jp/news/pr_ev/2016/161206_pr_ngoletterIOC.html

[3] グローバル・ウィットネス、「マレーシアの熱帯林破壊と日本:持続可能な2020年オリンピック東京大 会へのリスク(Japan’s links to rainforest destruction)」

[4] マレーシア人権委員会(SUHAKAM)報告書「Report On Penan In Ulu Belaga: Right To Land And Socio- Econo mic Development」http://www.suhakam.org.my/wp-content/uploads/2014/01/PS08_Pem.Tanah_ecosoc090108.pdf

[5] 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、持続可能性に配慮した木材の調 達基準 英語版:https://tokyo2020.jp/en/games/sustainability/data/sus-wcode-timber-EN.pdf 日本語版:h ttps://tokyo2020.jp/jp/games/sustainability/data/sus-wcode-timber-JP.pdf

[6] Mari Momii, チャタム・ハウス, 「Trade in Illegal Timber: The Response in Japan,」(2014年11月) https://w ww.chathamhouse.org/publication/trade-illegal-timber-response-japan