サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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イベント:PRI in Person 2023公式サイドイベント 「森林破壊リスク産品セクターへの投資の情報開示と持続可能性基準」(2023/9/27)

〜TNFDとNDPE方針、インドネシア版タクソノミーの評価〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、10/4(水)、国連責任投資原則「PRI in Person 2023」公式サイドイベントとして「森林破壊リスク産品セクターへの投資の情報開示と持続可能性基準」をGEF、プランテーションウォッチと共同で開催します。

イベント内容

パーム油や畜牛、チョコレート、紙パルプや木材など、熱帯林における森林破壊につながる原料を使う製品は「森林破壊リスク産品」や「森林リスク産品」と呼ばれます。これらの産品を利用することは、生産地である熱帯地域の森林減少や森林劣化を引き起こし、森林や生物多様性、地域コミュニティに大きな影響を与える可能性があります。これらの問題に対処するために「NDPE(森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)方針」(※)の採用が、リスク産品を扱う事業者だけでなく、金融機関でも進められています。本イベントでは、NDPE方針の概要を解説するとともに、その実施状況の評価を報告します。

特に森林破壊が依然として止まらないインドネシアに焦点を当て、現地政府が推進するサステナブル・ファイナンスやインドネシア版タクソノミー改訂の評価、海外投資家への影響についての報告も行います。加えて、最近発表された自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終版の概要と分析結果を解説し、TNFDと他の森林リスク産品への金融セクターの関与のための国際的な基準やアカウンタビリティの仕組みとの乖離について報告します。
※NDPE:No Deforestation、No Peat、No Exploitationの略

概要

【日時】2023年10月4日(水)8:00~8:45(開場:7時45分)

【開催方法】ハイブリッド

・オンライン:Zoomウェビナー

・対面:ビジョンセンター品川 302号室(東京都港区高輪4‐10-8京急第7ビル3階

【スピーカー】通訳あり

トム・ピケン/RAN 森林と金融キャンペーン・ディレクター
グリタ・アニンダリニ/インドネシア環境法センター (ICEL)プログラム・ディレクター
ショーナ・ホークス/RAN 森林と金融アドバイザー
司会進行:飯沼佐代子/地球・人間環境フォーラム(GEF)

【参加費】無料(要事前登録)

当日の発表資料、NDPE方針説明資料をこちらに掲載しております。

登録方法

会場・オンライン共に事前の申し込みが必要です。https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_uJLffh7UTNWGbJZAdbybFw

お問合せ先

地球・人間環境フォーラム 飯沼 E-mail: event(a)gef.or.jp

【主催】レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、地球・人間環境フォーラム(GEF)、プランテーション・ウオッチ

【協力】熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、ウータン森と生活を考える会

※インドネシア環境法センター (ICEL)の登壇者がレイナルド・センビリン氏からグリタ・アニンダリニ氏に変更になりました(10月3日更新)。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
https://japan.ran.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
コミュニケーション:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:2023年日清食品株主総会アクションレポート 5万筆の署名を提出!(2023/8/24)

「責任あるパーム油調達100%」実現をDO IT NOW!

RAN森林キャンペーナー ミキ・ガルシア

8月25日は「即席ラーメン記念日」だと知っていましたか?  1958年8月25日に世界初のインスタントラーメンが発売されたそうです。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)とともに、日清食品ホールディングスの株主総会の会場である大阪で6月28日、バナーアクションを行いました。RANの日清食品への取り組みは今年で10年目です。


©️RAN / Yasunori Matsui

大阪ホテルニューオータニ前での株主総会アクションは今回で5回目になります。オランウータンの着ぐるみの「マニス」(中央)も参加し、今までで一番大きなアクションとなりました。ボランティアの方々も参加し、横断幕やプラカードを掲げ、チラシを配り、会場に入る株主たちに向けてスピーチをしました。RANらは、100%責任あるパーム油調達の早期実現を2030年ではなく、カップヌードルのスローガンである「DO IT NOW!」を使って、 今すぐ実行するようアピールしました。 

 

日清食品は、株主総会直前に、東南アジア等で違法伐採や生態系保全等の環境・社会面での問題が指摘されているパーム油取引を対象とした「苦情処理(グリーバンス)リスト」を初めて公表し、取引に問題があったインドネシアのパーム油会社3社との取引を停止すると発表しました。これは、RANの要請に基づくコンプライアンス対応によって、こうした問題企業との取引を排除できたことになります。

今回の苦情処理リストで示された調達状況の実態を受けて、RAN日本代表川上豊幸は、「インドネシア等の生産地では森林破壊と人権侵害が依然、続いている。『責任あるパーム油生産』には国際基準の『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針に基づいたものだけを調達対象にする必要がある」として、日清食品における迅速な対応を求めています。


写真:当日、株主総会会場前で株主らに配布した資料 ©️RAN / Yasunori Matsui

RAN、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワークがサポートする個人株主らは、株主総会に出席し、「100%責任あるパーム油調達」目標年度の前倒しについても質問しました。また、2024年末から適用される欧州連合(EU)の森林破壊防止法(EUDR)についても質問しましたが、明確な回答を得ることはできませんでした。

この新しい法律によって、EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林を破壊して開発された農園で生産されていないことを確認する「デューデリジェンス」の実施が義務付けられます。森林破壊をしていない証明、人権侵害有無のリスク評価や確認も含め、日清食品は、EUでのビジネスを継続するのなら、後1年数カ月で様々な問題に対処しなければならず、早急な対応を迫られているということになります。


写真:株主総会に参加する株主に資料を配布 ©️RAN / Yasunori Matsui

同社が2030年度としている「持続可能なパーム油調達比率100%」実現を大幅に前倒しするよう求める署名活動の成果として、RANは日本と海外の国々から集められた合計約5万筆の署名を日清食品ホールディングス取締役社長・CEO安藤宏基氏およびアメリカ日清社長のマイケル・プライス氏宛に提出しました。

しかし、日清食品からは目標年の前倒しがなかったため、現在行われている署名活動は継続します。現在、主にX(ツイッター)で、毎週木曜日にツイデモを行っています。

#日清DOITNOW のハッシュタグで、毎週木曜日、何度でもツイートしてください。キーワードは、 #ツイデモ #森のための木曜日 #ForestThursday です。

さらなる署名と、拡散をよろしくお願いします。

日清食品に森林と人権を守る日本のロールモデル企業になってもらいましょう。

 

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日清食品 苦情処理リスト初公開、生産地での問題をRANが指摘

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
ウータン・森と生活を考える会
熱帯林行動ネットワーク・JATAN

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)など3団体の代表者は、本日28日、日清食品ホールディングスの第75期定時株主総会に参加し、同グループ経営陣に、森林破壊や人権侵害、違法農園開発のない「責任あるパーム油調達」の早期実現を求めました。一方、日清食品は総会前に「苦情処理(グリーバンス)リスト」を初めて公開し、環境・社会面で問題視されてきたパーム油企業との取引停止などの対応状況を公表しました。RANは株主総会に合わせて約5万筆の署名を提出。今回の日清食品の是正措置は、国内外の多くの消費者の声が後押しした形となりました。

 

総会開催前には、RAN、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワークのスタッフとボランティアが、会場のホテルニューオータニ大阪前で「日清さん、問題あるパーム油はストップ Do It Now! 」と書かれたバナーを掲げ、日清食品が「持続可能なパーム油調達100%」の目標年度としている2030年(注1)を待つことなく、熱帯林保護と生態系保護、人権尊重における問題に早急に取り組む必要性を参加株主らに訴えました。

RANはこれまでインドネシアでの現地調査を実施し、スマトラ島の野生生物保護区で生産された違法パーム油などの事例を指摘してきました(注2)。日清食品は総会前の24日に「持続可能な調達」を一部更新し、ウェブサイトで「苦情処理リスト」を公開しました。同リストでは、RANの指摘に対処する形で該当農園との取引を停止していたことが公表されました(注3)。一方「持続可能なパーム油調達100%目標年」については「2030年度まで」に据え置かれました。RANらNGOは総会で、2024年末から適用される欧州連合(EU)「森林破壊防止法」(注4)の規制に言及し、目標年度の前倒しの必要性について質問しましたが明確な回答は得られませんでした。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は、「日清食品が苦情処理リストを公開したことは、問題あるパーム油をサプライチェーンから確実に排除する上で、一歩前進したといえます。日清食品の違法パーム油や森林破壊に関与した農園との取引停止措置は、パーム油サプライチェーン(供給網)において、問題が発覚した場合の是正措置の実行と、農園までのトレーサビリティ確保の必要性を示す格好の事例となりました」と指摘しました。

続けて「一方でNGOの調査が示すように、生産地では森林破壊と人権侵害が未だ報告されています。責任あるパーム油生産には『森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ』(NDPE)という国際基準が欠かせません。日清食品グループが、NDPE方針を企業グループ全体で遵守する供給業者からのパーム油だけを調達するには、2030年を待たずに野心的な目標年が期待されます」と強調しました。

今年3月、RANはオンライン署名「問題あるパーム油はストップ Do It Now!」を開始し、日清食品に「持続可能なパーム油調達比率100%」目標の大幅な前倒しを求めてきました(注5)英語でも同様の署名を展開し、株主総会前に48,409筆(日本語約13,432筆、英語版 約34,977筆)の署名を同社に提出しました。高まる消費者の懸念と期待の声が、苦情処理リストの公開と問題企業との取引停止といった日清食品の一定の前進を後押しした形となりました。

RANは2020年から「キープ・フォレスト・スタンディング:森と森の民の人権を守ろう」キャンペーンを展開し、日清食品は対象消費財企業10社の内の1社です。2022年に実施した「森林&人権方針ランキング」では20点満点中4点で、他2社とともに最下位グループの「不可」と評価されました(注6)。方針改善のためには、森林破壊リスクが高い「森林リスク産品」全品(パーム油だけでなく)の調達方針策定と、森林リスク産品供給業者が遵守すべきNDPE項目の明記および供給業者のNDPE採用義務化(注7)、といった強化などが早急に求められます。

写真はこちらからダウンロードいただけます(©️RAN / Yasunori Matsui)
https://www.flickr.com/photos/rainforestactionnetwork/albums/72177720309404964

注1)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略『EARTH FOOD CHALLENGE 2030』始動!」、2020年6月9日(2023年6月閲覧)
https://www.nissin.com/jp/news/8690

注2)RANプレスリリース「新調査報告書『炭素爆弾スキャンダル』発表 〜日清食品など大手消費財企業、インドネシア違法パーム油との関連性が継続〜」 2022年9月22日
https://japan.ran.org/?p=2062

RANは2019年と2022年にインドネシアで現地調査を実施。スマトラ島の野生生物保護区内、とりわけ炭素を多く含む泥炭地でパーム油が違法生産されている実態を突き止めた。さらに、違法農園の追跡調査と大手消費財企業10社のサプライチェーン調査を実施し、日清食品やプロクター&ギャンブル(P&G)などの調達先が同保護区内からの違法パーム油を購入していたことが判明していた。日清食品が発表した「苦情処理リスト」では、「事例2」(アチェ州の女性実業家 Ibu Nasti氏が管理する違法農園)との取引を2022年10月に停止していたことが記載されていた。

注3)日清食品ホールディングス「持続可能な調達:パーム油の調達状況」(2023年6月閲覧)
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/#procurement_materials

”NISSIN FOODS Group Palm Grievance Tracker” (「苦情処理リスト」、英語)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/pdf/NISSIN%20FOODS%20Group-Palm-Oil-Grievance-Tracker.pdf

注4)EU「森林破壊防止法」:EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注5)RANプレスリリース:日清食品に新署名開始「問題あるパーム油はストップ Do It Now!」2023年3月29日
https://japan.ran.org/?p=2118

英語版オンライン署名「NISSIN’S TOP RAMEN COMES DEAD LAST」(34,977筆)
https://act.ran.org/page/42473/petition/1?locale=en-US

注6)RANプレスリリース「新報告書『森林&人権方針ランキング2022』発表〜日清食品、三菱UFJは低評価 〜」2022年6月15日
https://japan.ran.org/?p=2011

注7) 日清食品ホールディングスの「日清食品グループ持続可能な調達方針」におけるNDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation)に関する記述では、調達先に対してのNDPE遵守は求めていない。(2023年6月閲覧)
https://www.nissin.com/jp/sustainability/management/policy/basic-policy/

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)
米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGO。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より日本代表部を設置しています。
japan.ran.org

ウータン・森と生活を考える会
「森を守りたい」と願う熱い心をもった人々が集まった市民団体。オランウータンなど数多くの 生きものが棲み、先住民にとっても生きる糧を与えてくれるインドネシア・ボルネオ島の自然豊かな熱帯林を、国内外のNGOや現地の村人と共に減少を食い止め回復し保全する活動や、森林減少の要因となっている商品の消費者としての私たちの日本での生活を考える活動を35年以上、市民の力ですすめてきました。hutangroup.org

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
1986年にマレーシアで開催された国際会議において、熱帯林保護のために活動する世界各国のNGOの要請を受け、日本の市民と団体によって1987年に設立。熱帯林をはじめとした世界の森林を保全し、環境面、社会面において健全な状態にすることを目指しています。
jatan.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-4F
川上豊幸 Email: toyo@ran.org
広報:関本幸 Email: yuki.sekimoto@ran.org

—————–

*追記:日清食品のURL変更に伴い、以下を変更しました(11月16日)。

注3)日清食品ホールディングス「持続可能な調達:パーム油の調達状況」(2023年6月閲覧)

旧)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/#procurement_materials
新)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/#procurement_materials

”NISSIN FOODS Group Palm Grievance Tracker” (「苦情処理リスト」、英語)

旧)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/pdf/PalmGrievanceTracker.pdf
新)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/pdf/NISSIN%20FOODS%20Group-Palm-Oil-Grievance-Tracker.pdf

プレスリリース:新調査報告書『炭素爆弾スキャンダル』発表 〜日清食品など大手消費財企業、インドネシア違法パーム油との関連性が継続〜 (2022/9/22)

スマトラ島「ルーセル・エコシステム」の野生生物保護区で追加調査

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は19日(現地時間)、ニューヨーク市で開催中の「気候週間」に合わせ、新報告書『炭素爆弾スキャンダル:パーム油で気候危機を起こす消費財企業』(注1)を発表しました。インドネシアでの現地調査などの結果をまとめ、大手消費財企業は森林保護方針があるにもかかわらず、保護区内の泥炭林を破壊して違法栽培されたパーム油との関連性が依然として続いていることを明らかにしました。

写真:違法アブラヤシ農園のために破壊された泥炭林、インドネシア アチェ州、2018年撮影

RANは今年5月、2019年に続いて(注2)インドネシアのスマトラ島で現地調査を行い、国の保護区である「ラワ・シンキル野生生物保護区」の泥炭地でパーム油が新たに違法生産されている実態を突き止めました。本報告書では2件の違法農園に焦点を当てて追跡調査を行い、大手消費財企業10社のサプライチェーン調査も実施しました。

その結果、日清食品、プロクター&ギャンブル(P&G)、ネスレ、ユニリーバなどの調達先が、同保護区内からの違法パーム油を購入していたことが判明しました。また、花王は違法パーム油の調達を継続している企業と取引を続けていることも分かりました。以上の結果から、問題のあるパーム油がグローバルサプライチェーンに依然として流入している現状が明らかになりました。同保護区は世界的に貴重な熱帯低地林「ルーセル ・エコシステム」の南部に位置します。

【調査概要】

■調査時期:2022年5月

■調査地域:インドネシア・スマトラ島の「ルーセル・エコシステム」内、国の保護区「ラワ・シンキル野生生物保護区」および周辺

■調査方法:現地調査、衛星画像分析(違法農園および森林・泥炭林減少の確認)、サプライチェーン追跡調査(アブラヤシ農園から搾油工場を追跡。製油企業・消費財企業の調達先リストを分析)

■調査対象消費財企業10社:日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース(注3)

■事例概要

事例1)南アチェ州の実業家 Mr. Mahmudin氏が管理する違法農園(写真)

●違法農園で収穫されたアブラヤシ果房が仲介業者を通して、同保護区近くにあるパーム油搾油工場2社、PT. Runding Putra Persada (PT. RPP)とPT. Global Sawit Semesta(PT. GSS)に購入された領収書を記録。

●消費財企業7社(コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、P&G、ユニリーバ)の調達先搾油工場一覧に、上記2工場の記載が確認された。

●PT. GSSは、2019年の調査でも違法パーム油の購入が確認されている。しかし花王の合弁会社かつ調達先であるパーム油企業であるアピカル(ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ)は、同工場との取引を継続している(注4)

事例2)アチェ州の女性実業家 Ibu Nasti氏が管理する違法農園(11ヘクタール、東京ドーム2.3個分。以下の地図を参照)

●収穫されたアブラヤシ果房が仲介業者を通して、同保護区近くにあるパーム油搾油工場のPT. Bangun Sempurna Lestari(PT. BSL)に購入された領収書を記録。

●消費財企業6社(日清食品、P&G、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、ユニリーバの調達先搾油工場一覧(注5)に、PT. BSLの記載が確認された。

●PT. BSLで搾油されたパーム原油は、北スマトラ州ベラワン港に製油所を持つパーム油大手ムシムマス社に直接供給された。同社は米国、ヨーロッパ、日本、中国など世界中にパーム油を輸出している。

不二製油の搾油工場一覧には事例1と2で問題となっている搾油工場3社が記載されていることから、違法パーム油を調達しているといえる。

図:Ibu Nasti氏の農園地図。違法に森林が伐採・排水された農園(●)が保護区内(紫網掛け)に位置していることがわかる。収穫されたアブラヤシ果房は集積場所(水色●)に運ばれ、その後、搾油工場へ供給される

 

RAN日本代表の川上豊幸は「ルーセル・エコシステムは泥炭地を含む熱帯低地林で、いわば大きな炭素の貯蔵庫です。また、絶滅危惧種のスマトラオランウータンとスマトラゾウを絶滅から救う最後の砦でもあります。ラワ・シンキル野生生物保護区をパーム油のために破壊し、違法なアブラヤシ生産を見過ごすことは『炭素爆弾』に火をつけるようなものです」と警鐘を鳴らしました。事例2で、違法パーム油との関連が指摘された日清食品のウェブサイトには以下の点が明記されています(注6)

・「国内の油脂メーカーの調達先である一次精製工場やその先の搾油工場で、現地の法律に違反した行為が行われていないことを油脂メーカーとともに確認しています」

・「持続可能であると判断できるパーム油調達の比率を2030年度までにグループ全体で100%」にする

川上は「今回の調査で、日清食品が調達する搾油工場の一つに違法なパーム油が調達されていたことが判明しました。日清食品はこれを機に、農園までのトレーサビリティ確認、サプライヤーの厳格なリスク評価やモニタリング、『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針』の遵守について、直ちに尽力する必要があります」と強調しました。RANは、気候変動と生物多様性保護は喫緊の課題であることから、同社に持続可能なパーム油調達100%の目標の前倒しを求め、オンライン署名「日清さん、2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!」を2020年から実施しています(注7)

本報告書は、ニューヨーク市で開催中の「気候週間」と、22日開催のコンシューマーグッズフォーラム(CGF)会合に合わせて発表されました。『炭素爆弾スキャンダル』という題名は、炭素を多く含む泥炭林が伐採および排水されると長期にわたって膨大な量の二酸化炭素を排出することから「炭素爆弾」という呼び名があることに因んでいます。上記消費財企業はCGF会員企業であり、森林破壊禁止や、森林を回復軌道に乗せるための「フォレストポジティブ」を公約していますが、問題のあるパーム油との関係を断ち切れていません。RANは消費財企業に対して、問題企業との取引停止を強く求めています(注8)

 

「ルーセル・エコシステム」、「シンキル・ベンクン地帯」について

シンキル・ベンクン地帯は、ルーセル・エコシステムの南部に位置する、生物多様性の世界的なホットスポットです。地中深くに炭素を豊富に含む泥炭地であることから、貴重で効果的かつ自然の炭素吸収源として世界でも重要な場所です。一帯にはラワ・シンキル野生生物保護区、シンキル泥炭地、クルット泥炭地、そして近接する熱帯低地林が含まれます。この地帯は絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、トラの重要な生息地であり、世界で最も優先して保全されるべき場所の一つです。一帯はオランウータンの生息密度が世界で最も高く「オランウータンの首都」とも呼ばれてきました。泥炭林は一度伐採され、排水されると、泥炭土壌は「炭素爆弾」となり、何年にもわたって膨大な量の二酸化炭素を排出します(注9)。そのため、本報告書で示されている泥炭地の破壊は、生態系、そして気候変動においても重大なリスクです。

参考「ルーセル・エコシステムをまもる

*詳細は報告書(英語)をご参照ください。また、高解像度写真、ドローン映像、現地調査およびサプライチェーン調査による証拠をご要望の際はご連絡ください。

 

注1)RAN報告書(英語)『炭素爆弾スキャンダル:パーム油で気候危機を引き起こす消費財企業』(Carbon Bomb Scandals: Big Brands Driving Clomate Disaster for Palm Oil)
https://www.ran.org/wp-content/uploads/2022/09/Rainforest-Action-Network-Leuser-Report-FINAL-WEB.pdf

注2)RANプレスリリース「三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜」、 2019年10月18日
https://japan.ran.org/?p=1522

注3)消費財企業10社は、RANが2020年4月から展開する「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーンの対象企業である。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行17社に行動を起こすよう要求している。
https://japan.ran.org/?p=2011

注4)花王の搾油工場一覧(ミルリスト、2022年9月22日最終閲覧)、各社の一覧は報告書で確認のこと。

2021年版(報告書で使用)
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/progress-2020-001.pdf

2022年上半期
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/progress-2022-001.pdf

注5)日清食品の搾油工場一覧(2022年9月22日最終閲覧)、同上。
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/pdf/PalmOilMills_2021.pdf

注6)日清食品「持続可能な調達」
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/

注7)RANプレスリリース:日清食品に新署名開始「2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!」(2020/11/13)
https://japan.ran.org/?p=1730

注8)RANは、今回の報告書で違法パーム油との関連性が確認された消費財企業10社に対し、透明性があり検証可能な森林および泥炭地のモニタリングシステム、パーム油サプライチェーンにおけるトレーサビリティ管理システム、そして「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE:No Deforestation, No Peatland and No Exploitation)遵守システムが確立されるまでは問題ある供給業者からの調達を即時停止することを求めている。

注9)熱帯泥炭林が地面に貯蔵している炭素は 1ヘクタール当たり約2600 炭素トン(t-C)である。2015年のインドネシアでの大規模泥炭地火災は、米国経済全体の合計よりも多くの二酸化炭素を大気中に放出したが、その火災の理由は主にアブラヤシ農園の開発とパルプ材植林地である。シンキル・ベンクン地帯のシンキルとクルットの泥炭地で火災が発生した場合、同地域の二酸化炭素の排出量だけで、インドネシアの年間総排出量の最大で7%に相当すると推定されている。そうした場合、パリ協定の約束を果たす同国の実行力を損なう可能性がある。

※出典:RAN「The Last of the Leuser Lowlands」(2019年)、「森林と金融調査レポート:投資家には責任がある」(2017年)
http://www.ran.org/wp-content/uploads/2019/09/Leuser_Watch_Singkil-Bengkung_2019.pdf

http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2017/06/RAN_Every_Investor_Has_A_Responsibility_June_2017_JP.pdf

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

共同プレスリリース:投資家たちが日本企業に迅速な気候変動対策を要求(2022/6/29)

マーケット・フォース
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
国際環境NGO 350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

写真:SMBCに気候変動株主提案を提出した団体と個人株主

2022年6月29日(水)、 日本企業に対しネットゼロの達成に向けた行動と透明性の向上を求める株主提案を支持した株主の数が過去最多となりました。

本日から先週にかけて、220億ドル(3兆円)の資産を保有する株主が、三菱商事、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)、そして日本最大の火力発電事業を保有するJERAを共同所有する東京電力ホールディングスと中部電力の4社に対し、気候リスクの管理を改善するよう訴えました。

株主提案の提案元には気候ネットワーク、マーケット・フォースが団体として、350.org Japan、 FoE Japan、レインフォレスト・アクション・ネットワークに所属する個人が含まれています。

これらの株主提案の議決結果は、気候変動によるリスクの高まりとビジネス慣行を一致させることに課題を抱える企業に対して、これまで以上に厳しい目が向けられていることを意味します。このような深刻な脅威に対抗するための行動を求める機関投資家や株主の強い機運が高まっているのです。

 

三菱商事

「三菱商事は、エネルギー移行を支援すると主張しておきながら、環境負荷もリスクも高いLNGセクターへの大きな投資を続けています。つまり、エネルギー移行と相反する事業に、株主の資産をつぎ込んでいるのです。我々の三菱商事に対し情報開示の拡充を求めた第5号、第6号議案に対してそれぞれ1.2兆円、9600億円に相当する株を保有する投資家から賛同を得ました。この賛同は、同社が新たなLNG計画を進める前に、その計画が2050年ネットゼロ達成のコミットメントに整合したものであるかを証明する必要があるという投資家の明確な支持表明です。」

福澤恵(マーケット・フォース エネルギー・ファイナンス担当)

 

「三菱商事は2050年のネットゼロ目標を掲げていますが、その内容は不明瞭で不十分なものでした。気候変動目標と現状の企業経営のギャップ、対策のあるべき姿について、対話を通じ互いの理解を深めることがある程度できたと感じていますが、必要とされる行動とスピード感がまだまだ足りていません。気候危機は社会全体に影響を及ぼしており、企業自体もその影響を受けます。引き続き、対話やさまざまな手法を通じ、企業に対し行動変容を求めていきたいと思います。」

深草 亜悠美 (FoE Japan気候変動・エネルギー担当)

中部電力

「中部電力とも対話を続けてきましたが、まだまだ気候変動の危機感や世界の脱炭素に向けた流れについての理解に溝があるという印象であり、同社は株主総会でも電力の安定供給を重視し、および国の政策に従うとの会社の方針が主張していました。とはいえ、今回の中部電力と東京電力への株主提案に一定数の賛同が得られたということ、さらに電源開発(J-POWER)に対する国外の機関投資家からの脱炭素戦略の強化を求める株主提案(3つの議案)に各々約26%、約18%、約19%の賛成率を獲得していることからも、両社および2社が株式を保有するJERAの事業経営に影響を及ぼすと期待しています。」

鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター) 

「石炭とLNGを拡大するJERAの計画は、中部電力の株主に容認できないリスクをもたらします。世界が気候目標に沿って動くにつれ、中部電力グループの化石燃料関連資産が座礁するリスクが高まります。 JERAへの投資を通してもたらされる気候関連の財務リスクがどの程度なのかより良く理解するため、中部電力の2割もの投資家が、中部電力に明確な開示を要求することに賛同したのは当然とも言えます。」

鈴木幸子(マーケット・フォース 気候とエネルギー調査担当)  

 

東京電力HD

「東電・中電が50%ずつ株式を保有しているJERAは、日本最大の火力発電事業者であり、世界の脱石炭の潮流に逆行して、今なお対策のとられていない巨大な石炭火力発電所を神奈川県横須賀市や愛知県武豊町に建設しています。また、ゼロエミッションを目指すとしながらも、その内容は実用化の目途もたたない水素・アンモニア混焼やCCUS技術に投資を振り向け、 保有する火力発電設備を将来温存する意向です 。このことは、将来の火力発電所の座礁資産化を招く可能性が高く、株主に甚大な不利益をもたらすリスクそのものです。とりわけ東京電力は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が54.74%の株を保有し、事実上国有化された企業です。今回、我々の提案は9.55%の賛成を得ましたが、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の持つ54.74%を差し引けば、単純計算で21.1%の賛成があったことを意味し、気候リスクの財務情報開示の重要性が高く認識されていると考えられます。東電・中電および国は、JERAへの投資に対する気候関連の財務リスクを開示することが日本最大のエネルギー企業としての責務であることを認識すべきです。

桃井貴子 (気候ネットワーク理事・東京事務所長)

「今日の結果は、2050年実質排出量ゼロへの道筋で、新規の石炭・ガス火力発電所、新規ガス田と関連インフラを積極的に開発しているJERAのような会社を抱える東京電力に対する株主からの非難の表れです。東京電力に対し情報開示の拡充を求めた私たちの株主提案に、848億円に相当する株を保有する投資家から賛同を得ました。 政府が東京電力の株式の過半数を保有してることを考慮すれば、いかに多くの機関投資家が我々の提案に賛同したかを示しています。」

鈴木幸子(マーケット・フォース  気候・エネルギー調査担当)

 

三井住友フィナンシャルグループ

「議案4は、同趣旨の去年の三菱UFJの23%よりも高い賛同率を得られました。ウクライナ戦争とエネルギー危機による化石燃料価格の高騰が続く状況にあり、また、大手議決権行使助言会社2社が評価した計6つの助言項目のうち、議案4の1つを除き、すべての助言は反対を推奨していたにも関わらずです。このことは、投資家が現状のSMBCグループの脱炭素への取り組みが不十分であり、取り組みを加速すべきだとの強いメッセージを取締役会に突きつけたと言えるでしょう。議案5については全く新しいタイプの提案であり、欧米の金融機関に今シーズンに出された類似の提案と同レベルの賛同率となりました。SMBCグループは投資家の要請に応え、短期・中期目標を含む事業計画を策定し、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)をはじめとした化石燃料計画への資金提供からフェーズアウトしていくことで、気候関連リスクの管理を強化するべきです。」

渡辺瑛莉(350 org. Japan シニア・キャンペーナー)

 

「三井住友銀行フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の株主の27%が、同社が気候変動リスクを管理できていないことを懸念しています。つまり、27%は資産額で1.5兆円にものぼり、SMBCの事業計画が化石燃料産業からシフトしていることを示す具体的な行動なしに、2050年のネットゼロ目標やパリ協定を支持するというSMBCの主張が空虚であることを懸念しているのです。 これは、SMBCとその取締役会のみならず、他の日本のメガバンクに対して、強い警鐘を鳴らすものです。」

鈴木幸子(マーケット・フォース  気候・エネルギー調査担当)

 

「太田純CEOは株主総会で、森林セクターを重要視していること、そして排出の多いセクターから随時算定していくと発言しました。しかし、SMBCの電力セクターにおける2030年の温室効果ガス削減目標には、木質バイオマス発電や石炭混焼による森林セクターからの排出は含まれていません。このままでは燃料燃焼時の排出がどこにもカウントされないままになり、脱炭素への誤った移行ファイナンスが行われてしまいます。SMBCは電力セクターの排出量算定を見直すと同時に、森林およびパーム油などの農業セクターの排出量を早急に算定し、短期・中期の排出削減目標を策定すべきです。」

川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)

各社株主総会の決議結果


SMBC株主総会後の記者会見


SMBC株主総会会場前でのアピール行動


SMBC株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち


SMBC株主総会会場前でのアピール行動

写真:©️Taishi Takahashi / 350 Japan

編集者・記者のみなさま向けに

2022年、気候変動関連の株主提案が過去最多を記録

環境NGOグループ(マーケット・フォース、気候ネットワーク、350.org Japanの団体と個人)は、今年、日本企業4社に対して、合計6件の株主提案を行っています。6件自体はこれまでで最多ですが、今期は機関投資家を含む他の団体による気候変動関連議案の提出もありました。 

 

株主提案の効果

マーケット・フォースは2021年、住友商事に株主提案を提出しました。その結果、20%の賛成票を獲得し、石炭火力に関するポリシーの改善につなげ、2022年2月にバングラデシュのマタバリ2 石炭火力発電所から撤退することを発表しました。

同年、350.org Japan、RAN、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、株主提案を提出しました。決議後、MUFGは2050年までにポートフォリオ全体でネットゼロを目指すことを発表し、日本の銀行として初めてネットゼロバンキングアライアンスに参加しました。その後、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループも追随しています。

2020年、気候ネットワークがみずほFGに株主提案を行い、みずほは日本初の銀行として2050年までの石炭火力フェーズアウト目標(後に2040年に変更)を設定。他の2メガバンクもこの動きに追随しています。

株主提案の対象となった企業も、これまでに情報開示の改善を行っており、今年に統合報告書が公開されれば、さらに改善されることが予想されます。

 

参考資料

三菱商事 株主提案原文 (JP/EN)

三菱商事 投資家向け説明資料 (EN)

三菱商事 投資家向け説明資料 (JP)

三菱商事 投資家向け説明資料, アップデート (EN) 2022年5月

三菱商事 投資家向け説明資料, アップデート (JP) 2022年5月

中部電力 株主提案原文 (JP/EN)

東京電力 株主提案原文 (JP/EN)

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料(EN)

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料(JP)

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料 アップデート (EN) 2022年5月

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料 アップデート (JP) 2022年5月

三井住友フィナンシャルグループ 株主提案原文 (JP/EN)

三井住友フィナンシャルグループ 投資家向け説明資料 (EN)

三井住友フィナンシャルグループ 投資家向け説明資料 (JP)

三井住友フィナンシャルグループ  投資家向け説明資料, アップデート (EN) 2022年5月

三井住友フィナンシャルグループ  投資家向け説明資料, アップデート (JP) 2022年5月

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:新報告書「森林&人権方針ランキング2022」発表〜日清食品、三菱UFJは低評価 〜 (2022/6/15)

「森林破壊禁止」を約束するも、森林破壊と人権侵害を阻止できず
〜グローバル消費財企業・銀行17社の森林及び人権方針を評価〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日15日、新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2022」(注1)を発表しました。

熱帯林地域で森林破壊のリスクが高い産品に関与している消費財企業と銀行の17社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価・分析した結果、自社サプライチェーンおよび投融資がもたらす森林破壊と土地収奪、地域住民及び先住民族への暴力について適切な措置を講じている企業と銀行は一社もなく、森林破壊と人権侵害を阻止できていないと結論づけました。ランキングではユニリーバが「C」評価で最も高く、日清食品ホールディングス三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は5段階評価で最低ランクの「不可」でした。

RAN「森林と人権方針ランキング2022」〜森林破壊と人権侵害をもたらす企業と銀行〜

本ランキングは、原材料調達と資金提供を通じて森林破壊のリスクが高いサプライチェーンに関与している消費財企業と銀行で、影響力の大きい消費財企業10社と銀行7社を対象に、各社の方針について森林と人権分野の10項目を20点満点で評価しています。通称「森林リスク産品」と呼ばれる熱帯林産品はパーム油、紙パルプ、牛肉、大豆、カカオ、木材製品などです。17社には日清食品、花王、MUFGの日本企業3社が含まれます。合計得点に合わせてA(18〜20点)、B(15〜17点)、C(12〜14点)、D(5〜11点)、不可(0〜4点)で評価しました。

最も取り組みが遅れている「不可」と評価された銀行と消費財企業は以下の8社です。 

●消費財企業: 日清食品(日本)、モンデリーズ、プロクター&ギャンブル(P&G)(ともに米国)

●銀行: BNI(インドネシア)、CIMB(マレーシア)、ICBC(中国)、JPモルガン・チェース(米国)、MUFG(日本)

【森林&人権方針ランキング2022】概要

■調査期間:2022年4月~6月
■調査対象者:大手消費財企業(10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース)、大手銀行(7社):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ
■調査方法:各社の環境及び人権に関する方針を調査・分析(ウェブサイトなどで公開されている最新版)

■主な森林・人権方針の評価項目(全10項目、各2点)
*2点:方針あり/ 全体に採用、1点:一部に採用、0点:方針・計画なし
●「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)採用状況:パーム油や紙パルプなど森林破壊を引き起こす産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準(注3)
●NDPE方針遵守の証明・独立検証
●「森林フットプリント」開示:サプライチェーンや投融資先の事業が影響を与える森林の総面積(注4)
●「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注5)
●暴力や脅迫への「ゼロトレランス」(不容認)方針の有無、など

■全体の評価・傾向

●消費財企業
「合格点」といえる「C」と評価されたのはユニリーバのみでした。この一年、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、花王の各社方針では改善が見られましたが、依然として遅れを取っています。ユニリーバは森林リスク産品のサプライチェーン全体がもたらす影響に対処するために、信頼できる方針を採用している唯一の消費財企業で、森林フットプリント(インドネシア・スマトラ島北部に限定)も公表しています。しかし、グローバルサプライチェーン全体の森林フットプリントの開示を約束している企業は、キャンペーン対象外のネスレのみです。

●銀行
7行全てが「D」または「不可」でした。「不可」と評価されたMUFGJPモルガン・チェースはこの一年でNDPEを採用しましたが、両社とも適用範囲が限定的なことから方針に抜け穴が残っています。同じく「不可」だったマレーシアのCIMBは、NDPE方針の採用を発表したものの、適用範囲や実施時期について言及していないことからこの項目で得点を得られませんでした。RANは、消費財企業と銀行が森林破壊や人権侵害を撲滅すると主張しても、NDPE方針の遵守を保証するために信頼でき、かつ独立した検証メカニズムがなければ信用に値しないと警告しています。

■日本企業の評価

 ●総合点は日清食品MUFGが不可(ともに4点)で、花王はD(6点)でした。
 ●3社ともNDPE方針を採用するも、適用の範囲については評価が分かれました。花王は全分野の供給業者について企業グループ全体で適用対象としたことから1点の評価を得ました。しかし日清食品MUFGは取引先および融資先のグループ全体を対象とせず、パーム油事業のみに適用するなど限定的であることから得点はゼロ点でした。
 ●「森林フットプリントの開示」については、日清食品花王が実施を表明したのみで、開示そのものは遅れていることから得点は1点でした。
 ●昨年に続き「FPIC原則の実施」、「NDPE方針遵守の証明」については各社とも得点がありませんでした。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「花王は方針を強化し、昨年の『不可』から『D』評価にランクを上げました。改善の要素として、取引先に企業グループ全体での『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)の方針採用を義務付けることとなった点があげられます。これは重要な進展です。一方、日清食品とMUFGは『不可』評価のままでした。大きな理由の一つとして、両社ともNDPEの適用範囲が限定的なことがあげられます。 例えばMUFGは、融資先の企業グループ全体にNDPE方針を適用していなく、かつ、パーム油の農園事業に限定しています。MUFGは、融資の使途が『農園事業ではない』として、持続可能なパーム油の認証機関であるRSPOから除名されたインドネシアのインドフード社への融資を継続しています。MUFGは企業グループとしての評価と方針遵守の確認、パルプ産業を含めた他セクターへのNDPE方針の拡大が課題です」と指摘しました。

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーンは2020年4月の開始以来、評価分析を毎年実施し、今年で3回目の発表となります。RANはさらなる森林破壊と人権侵害を防ぐために、森林破壊と人権侵害を行う大手アグリビジネス企業と林業企業に対して大きな影響力をもつ消費財企業と銀行に実質的な行動を早急に取るよう要求を続けます。

 

「森林&人権方針ランキング2022」説明資料

【日本企業各社の点数と評価概要、改善点】

日清食品(不可:4点、昨年2点):グループ全体の調達方針に「NDPEを支持する」と記載しているが、消費財企業10社ではP&G、モンデリーズと並んで「不可」評価だった。改善のためには、グループ調達方針に供給業者が遵守すべきNDPE項目を明記し、供給業者にNDPE採用を義務付ける必要がある。今年5月、パーム油の搾油工場リストを公開したことは一歩前進といえるが、花王や欧米の大手消費財企業はすでに公開している。森林破壊のモニタリングやデューデリジェンスが開示された。また森林フットプリントの開示についても「順次導入」すると公表したが、実施時期の言及はなかった。こういった情報開示を通して、供給業者および生産地の現状把握と問題対応のための体制強化を進める必要がある。なお、持続可能なパーム油100%調達を2030年までに達成するという目標は大幅な前倒しが必要。

 

花王(D:6点、昨年3点):今年5月、「2022年の活動 花王の持続可能な調達への考え方」で、全ての森林リスクコモディティのサプライヤーとそのグループ企業に対して、NDPE方針採用の義務化を明記した。また、サプライチェーンにおける人権擁護者に対する暴力や不当告発、脅迫などを容認しないことを明記した。また、森林フットプリントの2023年実施に向けて準備を進めていることも公表した。今後はさらなる方針強化とともに、これら方針遵守のためにモニタリング、FPIC確認を含めた遵守の検証、問題事例への対処が求められる。

 

MUFG(不可:4点、昨年4点)今年4月の環境・社会方針の改定では、パーム油事業へのファイナンスをRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証取得企業に限定した。前年まではインドネシア政府とマレーシア政府の認証も認めていたことから、より厳格化された。投融資先への「NDPE遵守の公表」の要求は2021年4月の方針改定で追加されたがパーム油の農園企業に限定され、パーム油購入企業や、紙パルプや大豆など他の森林リスク産品セクターには適用されなかった。この点は、今年の方針改定で見直されることはなかった。MUFGはパーム油セクターへの融資・引受額が東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、紙パルプ産業にも多額の融資を提供している。今後、NDPE方針の適用拡大と、投融資先にNDPE方針遵守のための独立検証を求めていくことが課題になる。

 

【17社の消費財企業・銀行の影響力について】

評価対象となった消費財企業と銀行の多くは「森林破壊禁止」と先住民族の権利及び人権尊重の達成のために、特に国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)をきっかけに、様々なコミットメントと方針を取り入れてきた。

しかし「森林と金融データ」によると、パリ協定採択以降、評価対象銀行は合計で、インドネシア、コンゴ盆地、アマゾンの三大熱帯林地域で操業する森林リスク産品企業に少なくとも225億米ドルを提供した。最も多額の資金提供をしたのはJPモルガン・チェースで69億米ドル、次いでMUFGが40億米ドルだった。同様に消費財企業各社は、地域コミュニティの慣習上の権利を侵害して森林破壊を起こしている生産者から調達を続けている供給業者との取引を停止していない

評価対象企業・銀行で、顧客や供給業者、投融資先企業に「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施証明を要求している企業はない。現時点では、先住民族と地域コミュニティが自らの慣習地での開発を拒否する権利が尊重されていることを確認するための手続きを公表している銀行と消費財企業はない。

【レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸コメント】

「森林保護は気候と生物多様性の危機を回避する、最善かつ自然の解決策です。今、かけがえのない熱帯林を守るために抵抗している地域住民や先住民族が激しい報復に直面しています。一握りの消費財企業と銀行は熱帯林破壊、土地収奪、人権擁護者の殺害に大きな影響力があるにもかかわらず、それを止めるための取り組みは遅れています。企業の活動が森林や地域コミュニティに与える影響について責任を転嫁し続ける時間は、世界にはもう残されていません。やるべき課題はたくさん残されています」

注1)新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2022」(日本語版)
方法論
さらなる詳細は英語版を参照ください。

注2)消費財企業(10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース

銀行(7社):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある上記の消費財企業・銀行17社に実際の行動を起こすよう要求しています。注3)〜注5)の参考資料としてもご参照ください。

注3)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い<High Carbon Stock:HSC>森林の保護、保護価値の高い<HCV: High Conservation Value>地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止といった要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。

注4)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

参考:RANプレスリリース「新報告書『森林フットプリント評価 2021』発表〜インドネシア・ボルネオ島の森林と地域コミュニティへの影響について、大手消費財企業10社の開示状況を評価〜」2021年10月22日

注5)「FPIC」(エフピック)とは Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注6)「ゼロトレランス・イニシアティブ」ウェブサイト

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RANは、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※更新
・調査概要として調査期間、調査対象者、調査方法を追記しました(2022年6月17日)