サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘紙パルプ’カテゴリーの記事一覧

お知らせ:APP社「森林保護方針」5周年について(2018/2/6)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は2月6日、APP社(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)が「森林保護方針」を2013年2月に発表してから5年が経過したことを受けて、下記を発表しました。

「森林保護方針」5周年となるAPP社の現状について、業界の方々へのお知らせ

インドネシア最大の紙パルプ会社、APP社(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)は、2013年2月、“革新的”な「森林保護方針」(FCP)を新たに発表し、製紙原料生産のための天然熱帯林伐採を停止すること、また人権を尊重し、自社植林地の拡大が引き起こした数多くの地域コミュニティとの土地紛争に対処することを誓約しました。それから5年が経ち、一部では明らかな進展が見られました。しかし、APP社とその関連会社にはまだ長い道のりが残されています。泥炭火災や人権侵害など、深刻な環境・社会問題を未だに起こしています。さらに、透明性と説明責任の問題や、森林保護方針の実施速度と有効性は、依然として問題になっています。

これらの問題は、AP通信による先般の調査で浮き彫りになりました。その調査では、シナルマス・グループ(SMG)と同グループの紙パルプ事業を担うAPP社が、国内外の複雑な企業体制やその他の手法により、数多くの事業管理地を秘密裏にコントロールしていたことが明らかになりました。これらの事業管理地は、スマトラ島にあるAPP社の巨大なOKIパルプ新工場や他工場へ、現在、または将来的に原料を供給する可能性があります。SMG/APP社が秘密裏にコントロールしている事業管理地では天然林の伐採が疑われるほか、APP社が新たに木材サプライヤーとして加えようとしている企業の事業管理地では地域コミュニティから「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得られていないなどの問題があります。

SMG/APP社は、サプライヤー企業やサプライヤー候補企業は同社から分離していてコントロールはしていないと主張していますが、この主張が虚偽であることをAP通信の記事は示唆しています。これまでSMG/APP社は、この主張を様々な場面で都合よく利用してきました。シンガポール政府などには2015年に起きた壊滅的な火災の幾つかに対する責任を否定し、顧客や政府などには同社事業による社会的及び環境的影響の内容や程度を欺き、独立認証機関には改革努力の実施や業務改善を確認するための検証作業の範囲や内容についても誠実さを欠いた交渉だったのです。

またAP通信の記事では、SMG/APP社が投資家、株主、政府、一般の人々へ公開しているほとんどの重要な情報について、その内容と正確性を疑問視しています。記事で明らかになった新事実により、隠された関係の最終的な受益者について疑念が出てきており、規制や税制上での予期せぬ影響を及ぼす可能性があります。

SMG/APP社は、投資家、顧客、政府などから過去数年にわたって、また最近では関係再開を模索している森林管理協議会(FSC)から信用を取り戻そうと試みています。しかし、サプライヤー企業やサプライヤー候補企業とのつながりや管理についての誤解を招くような説明は、そのSMG/APP社の信用を損なってしまいます。

以下、AP通信の調査によって明らかになった2つの事例を考察します。

一つ目は、ボルネオのムアラ・スンガイ・ランダック(Muara Sungai Landak)社に関連する事例です。同社は、シナルマス社の従業員2名によって所有されています。AP通信は「(SMG/APP社が)森林伐採を停止するという誓約に間接的に違反している証拠」を、「ドローン写真と衛星画像から」、そして「熱帯林を伐採する際に支払う賦課金を追跡する政府記録から」発見し、2014年以降、著しい森林破壊が行われていることを明らかにしました。

二つ目は、バングン・リンバ・セジャテラ社(Bangun Rimba Sejahtera、BRS)の事例です。同社は、2013年に南スマトラ沖の小島、バンカ・ブリトゥン島にパルプ材用の産業植林地を開発する許可を得ました。BRS社はSMG/APP社から独立しているとされていますが、 実際はSMG/APP社によって設立されたようです。AP通信によると、同社は「2007年には、マルガレータ・ウィジャヤ(Margaretha Widjaya)氏によって所有されていた。同氏は、2002年から2008年にかけてシナルマス・フォレストリー社(Sinarmas Forestry)の副社長を務めており、また、SMG創業者の孫娘でもある。企業記録によると、BRS社は数年にわたって2層の持ち株会社に所有されており、これらの持ち株会社の住所には、シナルマス社の複数の事務所が登録されていた。また、企業のトップと株主にはシナルマス社の幹部が含まれていた」と報道されています。

BRS社が取得した事業管理地は、地域コミュニティが伝統的に所有してきた土地です。同社による管理は、地域コミュニティによって広範に反対されていて、わずか数週間前の2018年1月19日には、数千人もの地元住民が州知事事務所の前で集会を行い、BRS社の管理許可をインドネシア環境林業省が取り消すように要求することを知事に求めました。

BRS社の事例は、APP社がOKI工場に木材を調達するために供給源を拡大した最初のケースで、SMG/APP社とBRS社の関係についての虚偽に加え、影響を受けるであろう数多くの住民からは管理許可とパルプ材用植林計画についてFPICが得られていないことが明らかになっています。BRS社の管理に対する地域コミュニティと地元政府の反対を考慮しなかったことは、APP社が持続可能性についての誓約に反したということであり、また、法的義務にも違反した可能性があります。 昨年3月、BRS社に対する地域コミュニティの抗議に関して、インドネシアNGOと国際NGOの60団体が懸念を表明し、書簡をAPP社へ提出しました。しかし、APP社からの回答はないままです。

AP通信の調査結果は、森林破壊や地域コミュニティの権利侵害のみならず、巨大OKI工場の原料調達元を拡大するためにSMG/APP社が行っているその他の問題行為という高いリスクがあることを、紙の購入企業や投資家などに示しています。これは、投資家、購入企業、政府、認証機関、地域コミュニティへの警鐘です。

SMG/APP社は、これまで刑事告発、市場からの圧力、FSCからの絶縁措置という結果をもたらしてきた行為や被害を再び繰り返すのでしょうか? SMG/APP社の約束は信頼に値するのでしょうか? AP社の記事は、SMG/APP社のガバナンスに関する組織的な幅広い問題を示しています。これらの問題は、SMG/APP社を信頼して取引を始める前に対処されなければなりません。

私たちは、紙の購入企業、投資家などに対して、以下を要請するよう求めます:

・AP通信の調査結果について、独立した調査を完了すること。調査では、合法性、税制上の影響、受益者の全面開示、APP社の利害関係者が参加する合意形成のプロセスでの誤解を招く説明について検討することを含み、また、調査にはインドネシア政府も関与すること。

・SMG/APP社は、BRS社及びその他の事業管理地において、地域コミュニティのFPICの権利を尊重すること。この権利には、地域コミュニティの土地でパルプ材用植林地開発を拒否する権利も含むこと。また、SMG/APP社は、BRS社をサプライヤーとして認めず、BRS社を管理許可と事業管理地から撤退させること。

・SMG/APP社は、APP社の事業により影響を受けるすべての地域コミュニティの情報を公開すること。これには、APP社が解決済みであると主張する紛争に関わる地域コミュニティの情報も含むこと。

・SMG/APP社は、原料を供給しているサプライヤー企業とのつながりと関係性を全面開示すること。また、産業植林地事業権(HTI)を保有し、現時点ではAPP社の工場に木材や繊維を供給していなくても将来は供給する可能性があり、同社の元従業員や現在の従業員、その他提携先と関連がある企業とのつながりや関係性を全面開示すること。


レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

お知らせ:紙パルプ業界への無責任な投資を銀行方針は回避できていないと、レポートで指摘

連絡先:Mandy Haggith | hag@environmentalpaper.eu | +44 7734235704

環境NGOの連合体(EPN)*は、世界の紙パルプ企業に資金提供する銀行の方針を評価した報告書「In the Red」を、2017年8月1日に出版しました。この評価で、紙パルプ部門に最も深く関わる銀行には、環境的・社会的危害を引き起こすプロジェクトや企業への資金提供を避けるための公開された方針がないことが明らかになりました。

この評価では、金融業界が、紙パルプ業界との資金的関与における環境的・社会的リスクの管理にどの程度備えているかを調査しました。これは、いくつかの国の研究者チームが実施したベンチマーク評価であり、紙パルプ業界への資金提供の要求事項をとりまとめた2016年発表の文書グリーン・ペーパー、レッド・ラインの要求事項に照らして、42の民間銀行の紙パルプの方針を評価したものです。

レッド・ラインとは、紙パルプ会社が投資を受ける前に満たさなければならない最低限の要件を明記した規制のための環境・社会基準です。紙パルプ工場やそれへの資金提供機関がこれらの要件を満たさない限り、社会的・環境的被害を引き起こし市民団体によるキャンペーンのターゲットとなる可能性が高いといえます。したがって、EPNの加盟組織は、顧客である紙パルプ企業が最低限の要件を満たすことができない場合には、資金提供機関がこれら企業を回避することを期待しています。金融機関における方針が容認できないレベルであれば、その金融機関はこれらの問題に関する説明責任とコミットメントの欠如を明確に示しているといえるでしょう。

EPNの担当者マンディ・ハギス(Mandy Haggith)は次のように述べています。「評価の結果、銀行の方針は非常に残念です。残念ながら、私たちが評価した銀行のどれも、レッド・ラインに違反する顧客企業から自らを徹底的に防護することはできません。ほとんどのレッド・ライン基準で、膨大な数の銀行がせいぜい部分的にしか防護されていません。我々は、銀行部門には、紙パルプのプロジェクトや企業を損なう無責任な投資を回避するという目的に合致した方針はないと結論付けるしかありません。 我々は、すべての銀行がこのセクターへの関与に関する方針を見直し強化するよう促します」。

RAN Japan による報告書の仮抄訳はこちら

* エンヴィロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、紙パルプの持続可能性の問題に取り組んでいる140以上のNGOの世界的なネットワークであり、そのすべてがグローバル・ペーパー・ビジョンを支持しています。

関連ウェブサイト

–  In the Red: report on the assessment of bank policies – http://www.environmentalpaper.eu/in-the-red/

–  The Green Paper, Red Lines criteria – http://www.environmentalpaper.eu/red-lines-for-pulp-mill-finance/

–  Global Paper Vision – http://www.environmentalpaper.eu/our-common-vision/

 

 

 

アバクロンビー & フィッチ、木材を原料とする素材に新しい調達方針を採用

2017915日

世界規模のアパレル企業が森林破壊に対処するリーダー企業に加わり、RANが称賛

連絡先: Emma Rae Lierley, Emma@ran.org, +1 425.281.1989

public_relations@anfcorp.com, + 1 614.283.6192

 

サンフランシスコアバクロンビーキッズとホリスターを含むアバクロンビー&フィッチ社(AF)は、人気がある一方で問題も指摘されているレーヨン、ビスコース、モーダルなどの木材を原料としている衣料素材の調達と使用に関する新しい方針を発表しました。

AFの木質原料素材に関する方針と行動はレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)と共同して作成したものです。これには、RANの「アウト・オブ・ファッション」キャンペーンによって、インドネシア等での危機に瀕する森林とそれらに依存して生きる人々に対して、多くの木材を原料とする素材が及ぼすリスクが注目されたという背景があります。

AFは、ビスコースやレーヨンなどの再生セルロース繊維の供給元を、自社のサプライチェーンに沿って追跡することを約束しました。同社は、望ましい繊維の供給源を確立するために、2018年中頃までに必要な過程を終える予定です。そこでは、原生林や危機に瀕した森林からの供給を受けず、またそのような森林に依存している先住民族の人権侵害に関与しないように考慮されています。この新しい方針は、AFのすべてのブランドを対象とします。

AFは、サプライチェーンが森林破壊に寄与しないとする方針を実施しているアパレル企業グループに加わることになります。 同社は、ラルフ・ローレンやビクトリア・シークレット(Lブランド)と共に、これらの問題に対処することを公言したいくつかの主要米国企業の1つとして際立っています。

「北スマトラのコミュニティは、世界のブランドが人々や森林への地域的な影響を認識し、改善することを求めて、30年以上にわたってこの問題を訴えてきました」。その方針策定のためにA&Fと共に仕事をしてきたRANのシニア森林キャンペーナのブリアナラ・モーガンは述べています。 「ブランドがサプライチェーンの責任を負うようになるのは勇気づけられることです。A&Fのコミットメントと行動は、方針を策定した100以上の他のブランドに加わることで、本当に森林やそれに依存する人々にプラスの影響を与えることができます」。

AFでは、行動を通して環境への責任への私たちのコミットメントを示してきましたが、この新しい方針は、進行中の持続可能な旅へのさらなるステップです。サプライチェーンの追跡可能性向上の必要があることがわかっています。RANの支援により、私たちは今より大きなプラスの影響を生み出すことができます。」A&Fのサステナビリティ担当シニアディレクター、キム・ハール氏は述べています。

AFの新しい方針は、インドネシア、カナダ、南アフリカ、ブラジルの生産者に対し、布地のためのパルプ生産が天然林、そして森林に依存する先住民族および地元のコミュニティに大きな影響を及ぼしているという強い市場の警告を拡大させるものとなっています。例えば、インドネシア北部のスマトラでは、伝統的に所有されている土地が一掃され、コミュニティの同意がないままに布や紙の生産のためのパルプを作る農園に転換されたという20以上の土地紛争事例の報告があります。

アウト・オブ・ファッション」キャンペーンの中で、RANは会員と消費者に対して、AFやその他の「ファッション15」ブランドに、木質原料素材の環境および社会への影響に注意を向けすぐに行動するように依頼する手紙を書くよう呼びかけてきました。RANのこのキャンペーンでは、Michael KorsGuessForever 21Under ArmorFoot Lockerなどの他のブランドに対しても、サプライチェーが森林の喪失または関連する人権侵害に関連していないことを確認するために、確固とした購買方針の策定、サプライチェーンの調査、問題が指摘されている供給源の特定と排除、時間軸を設けた計画の実施の呼びかけを続けています。

布地のためのパルプ生産とRANの「アウト・オブ:ファッション」キャンペーンの詳細については、こちらをご参照ください。

みずほ銀行へ「無責任銀行ジャパン大賞2017」を株主総会前で贈呈

2017年6月23日

東京 —本日開催されたみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の株主総会で、NGO団体が抗議活動の一環として、みずほFGに「無責任銀行ジャパン大賞2017」を授与しました。 参加者たちは、株主に対し、みずほに危険な化石燃料、森林破壊、原子力への投融資の中止を求めるように呼びかけ、これらのリスクを管理するための包括的なESG(環境・社会・ガバナンス)方針の策定を求めました。 また、みずほFGが投融資ポートフォリオ全体におけるESGリスクを完全に開示するよう要請しました。 みずほFGの社員に扮したNGOメンバーが、「無責任銀行ジャパン大賞2017」という大きな受賞プレートを受け取り、他のメンバーは「みずほ:気候変動を加速させる銀行業務をやめよう」というバナーを持って行動に加わりました

この模擬授賞式は、NGO4団体レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japan、FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が昨日発表した「みずほフィナンシャルグループに関する2016年 ESG評価レポート」調査結果を強調するために行われました。 レポートは、みずほの無責任な銀行業務が、深刻な気候変動を増幅させ、熱帯林を脅かし、人々の健康を危険にさらし、人権侵害を促進していることを示しています。 みずほFGは、これらの問題に対処するための強力な環境、社会、ガバナンス(ESG)方針を策定・採用する点において、世界の銀行に後れを取っており、投資の重大なリスクを株主に適切に開示することができませんでした。

「みずほは、化石燃料や熱帯林破壊に関与している炭素集約度の高い企業に数十億ドルの資金を投入しています。 株主は、これをみずほが適切に開示していない重大なリスクであることを知る必要があります。」と、レインフォレスト・アクション・ネットワークの日本代表、川上豊幸は述べています。

「今日の行動の目的は、気候変動を加速させ、社会や環境問題を引き起こしているみずほFGの無責任な投融資行動に焦点を当てるためです。 みずほFGは責任ある投融資を行い、パリ協定で定められたように気温上昇を2℃以下に抑えるために、化石燃料への資金を削減すべきであります。」と、350.org Japan代表の古野真は述べています。

「みずほFGが資金を提供している幾つかの化石燃料プロジェクトにより、地元の人々の人権が侵害され、生計手段が破壊されている」とFoE Japanの深草亜悠美は語り「これらのプロジェクトがもたらしている負の影響を直視し、融資者として責任を負う必要がある。」と続けました。

NGO団体は、ESG評価レポートを株主が総会会場に入る際に配布しました。レポートでは、みずほFGは2011年と2016年の間に、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)をはるかに上回る、日本の化石燃料関連企業に380億ドル(約4兆円)以上の融資と引受けを行ったことが報告されています。 同じ時期に、東南ア
ジアの熱帯林を脅かす企業に40億ドル(約4456億円)以上の融資と引受けを行い、日本の原子力関連会社には約80億ドル(約8912億円)を拠出しました。 この報告書は、みずほのポー
トフォリオにおけるいくつかの問題点を浮き彫りにしています。そして、財務ポートフォリオ全体における重要なESGリスクに関する情報開示、気温上昇を2度未満に抑えるという目標達成に向けたポートフォリオの投資先・融資先企業における炭素排出量削減ロードマップの策定、包括的なESG方針の発表をみずほFGに要請することなど、みずほFGの株主に対する具体的な提案を記載しています。

ダウンロードは:

・みずほフィナンシャルグループに関する2016年ESG評価レポート(英文・和文):www.ran.org/mizuho_riskyinvestment

・みずほフィナンシアルグループへのメッセージ送信サイト(英語):

ブログ:APP 社は約束を果たすべき時だ(2017/5/24)

森林 シニアキャンペーナー ブリアナラ・モーガン

APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社は、インドネシアと中国の両国における最大手の紙パルプメー カーだ。同社は森林破壊や人権侵害をあからさまに行ってきた歴史があるが、2013 年の「森林破壊ゼロ、人権侵害ゼロ、泥炭地開発ゼロ」方針の採択、および天然熱帯林の伐採からの撤退は、インドネシアの森林破壊の防 止に向けた大きな前進だった。しかし現場レベルでは、特に最前線の地域や先住民族のコミュニティにとって十 分な変化は見られていない。

インドネシア、北スマトラ州ルブック・マンダルサ村で、慣習的に所有してきた土地を歩く農民たち。 同村では APP 社との社会的紛争が今も続いている。

APP 社は、森林を破壊し、地域コミュニティの同意なしに土地を利用するという点で、紙パルプ産業における 「最悪中の最悪企業」として長年知られてきた。同社はこれまで、インドネシア国内で管理する土地 260 万ヘク タールのうち 200 万ヘクタール以上(7,700 平方マイル以上)を皆伐している。森林の大部分は、大量の炭素を 貯蔵している泥炭地域にあり、また絶滅の危機に瀕するトラやゾウの生息地であったが、パルプ原料のため、あ るいはパルプ用産業植林地への転換のために皆伐された。皆伐された土地の 100 万ヘクタール以上は、現在ユー カリやアカシアといった単一樹種の植林地と化している。

このような環境破壊と温室効果ガス排出に加えて、 APP 社の負の遺産には社会紛争と地域コミュニティへの被害も含まれる。問題の多くは、APP 社が地域コミュ ニティが所有する土地を特定して伐採や植林開発から除外することを怠ったために生じており、その結果、同社 は数百もの地域コミュニティに対して威圧的な行為を行ったり(時には暴力的な) 紛争を起こしたりしている。

APP 社の木材運搬用重トラックは、紙パルプ用植林地で収穫した木材を運ぶために、定期的に地域コミュニティ の所有地を縦断している。道路を破壊し、もうもうたる砂塵で道路わきの家を覆っている。

主にレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、WWF、FoE、グリーンピースなどの NGO が インドネシアの市民社会ともに、この悪質な企業の問題を明らかにし、同社との取引中止を求める大キャンペー ンを行ったことにより、APP 社による深刻な環境・社会影響は国際社会の注目を浴びることとなった。同社が重要な森林生息地として知られる地域を皆伐したことが発覚後、森林管理協議会(FSC)は 2007 年、同社との関 係を解消した。世界市場もこれを考慮し、ディズニー、マテル、ハーパー・コリンズ、オフィスデポなど数多く の大企業が同社との契約を解除することとなった。解除された契約額は、合計 8 億ドル以上と推定される。

「私たちの土地が解放されるまで、私たちの権利を回復するまで、続けなければなりません。」 イブ・ヌルホトマサリさん(インドネシア、ジャンビ州ルブク・マンダルサ村)

APP 社は、大規模な契約解除への対応のなかで、自らが変わる必要性を認め、2013 年 2 月には自社の業務から森林破壊、人権侵害、および泥炭地での皆伐を止めるという誓約を採択した。これ以降、いくつかの面で進歩はあり、ほとんどの森林減少や、泥炭林への植林地拡大は停止されている。しかし、大きな懸念がある。APP 社 は最近、世界最大規模のパルプ・製紙工場となる OKI 工場を南スマトラ州に完成させたが、この工場のための長期的な原料や木質繊維の供給が足りないのだ。これは APP 社が泥炭地を排水して利用することに引き続き依 存し、パルプ材の生産基盤を拡大する必要があるという、深刻なリスクを意味する。また、それによって新たな 社会紛争やさらなる森林破壊という重大なリスクも発生してくる。

「APP 社が誓約を破っていることは明らかです。」 フランドディ・タルナ・ネガラさん(インドネシア、ジャンビ州ルブク・マンダルサ村)

さらに、APP 社による土地収奪、権利侵害、社会的被害という負の遺産は、依然として大きな問題として残っ ている。現在、数百もの地域コミュニティが、慣習的に所有する森林や農場を、同社が同意なしに使用したり皆伐したことに対して是正を求めているのだ。APP 社の植林地で係争中の社会紛争のなかでも、最も極端な例のひとつは“Beyond Paper Promises”ウェブサイト(英語:訳「紙の約束を越えて」)で紹介しているルブク・マンダルサ村のケースである。事 例として、以下に述べる。

スマトラのジャンビ州のルブック・マンダルサ村は、約 6,000 人のマラユ民族が形成する農業コミュニティで、 自給と現金収入を米や野菜、コーヒーの栽培に依存している。APP 社は 2006 年から同地域で業務を開始し、農 地をブルドーザーで潰し、伐採した木を細い川に投げ入れた。コミュニティは抗議のために立ち上がり、地方政 府に対して苦情申し立てと抗議活動を行った。抗議しても何も変わらず皆伐が続いたため、人々は直接行動を起 こし、掘削機械を破壊した。9人の村人が逮捕され、15ヶ月間刑務所に収容されたが、人々は諦めなかった。APP 社が1期目のユーカリを収穫した後、農民たちは空閑地となったその地に戻り、作物を植えて自分たちの土地を 取り戻した。

インドネシアのルブク・マンダルサ村では、農業はたんなる生計手段ではなく、抵抗手段でもある。

この紛争は 2015 年 2 月 8 日、悲劇的な頂点を迎えた。懸案の土地に出入りして農業を行っていたルブック・ マンダルサ村コミュニティの人々は収穫祭を予定しており、APP 社も収穫祭について事前に通知され、一帯への 出入りを監視していた検問所を人々が自由に通過することに合意した。その日の午後、地元出身の青年活動家インドラ・ペラーニさんは祭りに出席するために検問所を通過しようとしたが、検問所で警備員と言い争いになっ た。インドラ・ペラーニさんが祭りに到着することはなかった。翌日、手足が結ばれ、撲殺された彼の遺体が見 つかった。

殺害された農民活動家、インドラ・ペラーニさん(写真提供:ワルヒ・ジャンビ)

この殺人事件は国内外の報道で広く非難された。殺人事件以降、APP 社は現地の警備会社による業務を停止さ せ、地域コミュニティから概ね手を引いた。警備員は警察に自首し、現在は刑務所で服役している。しかし事件以降もこの地域の根本的な紛争はほとんど変化していない。現在 300 人以上の人々が耕作している土地は、地域 コミュニティが数世代にわたって使ってきたものであるが、法律上、今では APP 社の植林地の一部とされてい るのだ。農民は土地、農作物、建てた家屋を失う恐怖の中で暮らしている。

APP 社は、このような紛争が再び発生しないこと、既存の紛争が解決されること、コミュニティが受けた被害 に対処し、改善されることを確保しなければならない。

英語のブログはこちら(2017/5/24)

関連資料
プレスリリース:紙パルプ調達方針実施に積極的な企業ランキング発表『紙の約束を超えて』」(2018/6/14)

インドネシアの森林減少と土地収奪という危機の最前線での暮らし

紙パルプ生産で破壊されたインドネシアの森林の片隅で暮らす住民の貴重な情景写真を提供する

新たなキャンペーンサイト(BeyondPaperPromises.org)開設

緊急リリース

2017523

連絡先: Emma Rae Lierley, Emma@ran.org, +1 425.281.1989

サンフランシスコーレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)により本日開始された新しいキャンペーンとウェブサイトでは、進行中の紙パルプ企業との紛争の前線にあるインドネシアの先住民族コミュニティをめぐる貴重な情景写真を提供しています。このサイト、ビヨンド・ペーパー・プロミス(BeyondPaperPromises.orgは、生き生きした人物写真と住民との本人の語りを使って、住民自身の声で土地収奪と森林減少の話を伝えています。(サイトは英語です)

 サプライチェーンの大半の企業が事業による森林減少や土地権や人権侵害を排除する約束をしていますが、この新しいキャンペーンではインドネシアの森林減少の危機の最前線のコミュニティにとっては、ほとんど変化がないという事実に着目しています。

 「コミュニティと森林の現実こそが、企業コミットメントの測定に使うべき本当の評価基準です。」RANのシニア森林キャンペーナーのブレア・モーガンは述べています。「森林減少を停止し、今や数十年が経過している土地権紛争に取り組むという約束そのものはいいことだが、実際のところ、現場ではこれまでのところ、私たちにはほとんど変化を見出すことができません」。

 コミュニティと企業との間の紛争は、脅迫、抗議、逮捕、さらには殺人によって特徴付けられ長年にわたり続いています。インドネシア・スマトラ島のジャンビ州と北スマトラ州では、アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)とトバ・パルプ・レスタリ社(Toba Pulp LestariTPL)が大きな役割を果たしています。これらの企業が国際商品市場の産業植林地を拡大しようとしているため、地元コミュニティの農場や村がしばしば彼らにとっては障害となっているのです。

 201612月の歴史的発表で、ジョコウィ・インドネシア大統領はインドネシア史上初めて先住民族の土地の権利を認め、北スマトラのパンダマン・シピトゥータ(Pandumaan-Sipituhutaコミュニティの土地をTPLの植林地から除外し、他の9つのコミュニティの慣習的土地権をも認めました。これは多くの人にとって最初の肯定的なステップと見なされていました。しかし地方政府は地方レベルでは同様の土地権についての認識が遅れており、多くのコミュニティは土地が返還されるのを未だ待っています。

 「政府が私たちを保護し、先祖から受け継いできた土地を政府が私たちに返すようにお願いします。」と、このキャンペーンで様子を伝えられたコミュニティの一つであるインドネシア、北スマトラ州、アエクルン(Aek Lung)の住民、レンティーナ・ナババンは語りました。「この土地は私たちの生活の源であり、子どもたちが学校に行くことができるようにしてくれる私たちの蓄えです。また自分たちの土地を耕すことを怖がったりしなくてすむように、私たちの伝統的に所有している土地を政府が認めるようお願いします」。

 数十年に渡ってインドネシアの森林の行く末が国際的に懸念されています。産業用パルプ材植林地やアブラヤシ農園の開発によって大規模に促進される森林減少は、広大な天然の熱帯林と炭素を豊富に含む泥炭地を皆伐によるものです。インドネシアは、国内で継続している森林減少と商品作物のためのプランテーション開発により世界の温室効果ガスの巨大な排出者であり、そのために米国と中国に次ぐ世界第三位の排出国となっています。