サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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ブログ:三菱UFJが抱える重大なESGリスク

RANはMUFGアメリカズのニューヨーク本社前でアピール行動を行い、森林火災への資金提供停止を訴えた。2020年9月1日、写真:Erik McGregor

菅首相が日本の「温室効果ガスを2050年までに実質ゼロ」にすると10月26日に発表しました。この数カ月、HSBC、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェース、バークレイズなど世界の銀行でも気候変動対策に関する公約を発表する動きが続いています。

一方、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は「持続可能な社会の実現に貢献する」と約束しているにも関わらず、実際は、森林破壊と気候変動を加速し、人々の生活を脅かしています。

このような問題に対応すべきESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針について、今年4月にみずほフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が方針を改定し、その後5月にMUFGも改定しましたが、気候変動対策においては遅れを取ってしまいました。これではMUFGは「サステナビリティ・リーダー」にはなれません。

MUFGの投融資には、以下の3つの部門において様々なESGリスクを抱えています。

1. パーム油:熱帯林を破壊しているパーム油企業等に投融資

MUFGは、熱帯林や熱帯泥炭地の破壊を加速させているパーム油部門に、世界で最も融資している金融機関の一つです。熱帯林は二酸化炭素の吸収源として、そして大半の陸上生物多様性の生息地としても重要な役割を果たしています。また、泥炭地は「炭素の貯蔵庫」とも呼ばれ、気候へのインパクトは測り知れません。しかし熱帯林は、パーム油や紙パルプ等の生産のために急速に失われています。森を長年守ってきた地域住民の生活と権利も脅かされているのです。

MUFGは、熱帯林の重要性を認識しつつも、保護に必要な対策を十分に取らず、熱帯林や泥炭地の破壊に加担している企業に融資を続けています。世界クラスの生物多様性ホットスポットと知られるルーセル・エコシステムの熱帯林まで影響を受けています。これでは、2020年までに森林減少を阻止しようという国連「持続可能な目標」(SDGs)の目標15を実現することはできません。

インドネシア、スマトラ島・アチェ半島上空。Duta Rendra Mulyaによる森林破壊の光景

2.石炭:気候危機を悪化させている

MUFGは、石炭火力発電への投融資を段階的に廃止し、石炭火力向けプロジェクトファイナンスを2040年までに残高ゼロにすることを公約しました。しかし、MUFGは、国内外で批判の的になっているベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業(1,200メガワット規模)に融資しようとしています。このプロジェクトは今後数十年にわたって二酸化炭素を大気中に排出することになります。ブンアン 2 は座礁資産になるリスクが高く、建設されるべきではない理由が複数指摘されています。

3.オイルサンド・パイプライン:世の中の流れに逆行

MUFGは、オイルサンド部門でアジア最大の資金提供者です。カナダのアルバータ州から米国ミネソタ州の先住民の土地を通って五大湖につづく、問題の多い「ライン3」パイプラインの事業者であるエンブリッジに多額の資金を提供しています。このパイプラインがもしも建設された場合、平均的な石炭火力発電所の約50倍(!)もの二酸化炭素を排出することが予測されます。MUFGは、バイデン大統領が中止を約束した「キーストーンXL」パイプラインにも資金を提供しています。両方のプロジェクトは、先住民の権利と生活を脅かすため、先住民族の人々は強く反対しています。

***

パリ協定が採択された2015年以降の4年間、MUFGは化石燃料部門に1,188億ドル(約12.7兆円)の融資・引受を提供し、その金額は世界6位、国内ではトップの金融機関でした。科学的知見によれば、パリ協定の目標を満たすためには「パリ協定と整合性のある金融機関原則」に沿って化石燃料の拡大と森林破壊を直ちに止める必要がありますが、MUFGはこのような約束を一切していません。

MUFGが真の「サステナビリティ・リーダー」になるには、社会的責任を果たしている他の大手金融機関のベストプラクティスを見習い、ESGに関する投融資方針とその実施を次のように強化する必要があります:

1.森林、特に熱帯林に影響を及ぼす林業・農業関連企業には、ベストプラクティスである「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」基準遵守を要求すること

2.パリ協定の1.5度目標に沿って、化石燃料への投融資を段階的に停止し、化石燃料を拡大させる投融資は直ちに止めること

3.人権、特に先住民族と地域コミュニティの権利を尊重し、人権侵害を起こすプロジェクトには投融資をしないこと

4.高リスク部門をはじめ、ESGリスクの管理・監督の実効性を向上すること

もっと知りたい方はこちらへ:

熱帯林破壊・森林火災への投融資について

化石燃料への投融資について

NGO共同声明:三菱UFJ、石炭火力向けプロジェクトファイナンス残高ゼロ目標 (2020/10/16)

依然パリ協定と整合せず、邦銀の遅れ目立つ

(English follows Japanese)

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)がサステナビリティレポートを公表し(注1)、「2019年度末時点で3,580百万米ドルの石炭火力発電向けプロジェクトファイナンスの貸出金残高を2030 年度に2019 年度比 50% 削減、2040年度を目途にゼロにする(但し、MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークに基づき、脱炭素社会への移行に向けた取り組みに資する案件は除外)」との目標を掲げました。これは、本年4月および7月にそれぞれ同様の目標を掲げた、みずほフィナンシャルグループ(注2)、三井住友フィナンシャルグループに続いての発表であり、邦銀大手3行の足並みが揃った形となります。

 これは一定の前進ではあるものの、気候危機の緊急性を鑑みれば、不十分な目標設定としか言わざるを得ません。早急にさらなる厳格な目標設定と方針改訂が求められます。MUFGも署名している国連責任銀行原則(PRB)では、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)にビジネス戦略を整合させることが謳われていますが、この度MUFGが掲げた目標は、時間軸の長さ、並びにスコープの狭さの両面で大きな問題があります。また、邦銀の石炭方針は、海外の金融機関と比べても依然低い評価に留まっています(注3)。

 最新の科学によれば、パリ協定の1.5度目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。償還期間を過ぎても何十年も石炭火力発電所が稼働し続けることを鑑みれば、与信残高ゼロはより早期に達成される必要があります。また、今回の目標では依然として、新規の融資契約の余地が残されています。新規の石炭火力発電所は、世界中で1基たりとも建設の余地のないことが科学的にも明らかとなっていますが、邦銀によるブンアン2(ベトナム)などの新規融資検討が懸念されています。同事業はパリ協定の目標と整合しないだけでなく、経済合理性の欠如、現地の環境汚染や住民への人権侵害など、様々な問題が指摘されています。新規石炭火力発電事業への融資を例外なく停止する方針を早急に掲げるべきです。

 また、スコープをプロジェクトファイナンスに限定し、コーポレートファイナンスを対象外としていることも問題です。石炭採掘を含む石炭火力のバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンス(注4)も対象に含めるべきであり、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を掲げるべきです。海外では、顧客にパリ協定に整合的な時間軸での移行計画の提出を求めるエンゲージメントを行い、計画が不適格であればダイベストメントするという流れが加速しています。これは一例ですが、エンゲージメントを効果的に行うためにも、まず金融機関がパリ協定に整合的な戦略・目標のロードマップを示す必要があります。注5

 さらに、石炭火力だけでなく、炭素排出量の多い他の化石燃料関連事業や土地利用に関わる(注6)事業および企業に対する資金提供の停止や残高削減の方針も掲げるべきです。

注1) https://www.mufg.jp/dam/csr/report/2020/ja_all.pdf

注2) 4月公表の同グループの方針では、2050年までの目標設定だったが、6月に開催された年次株主総会で2040年を目処に達成できるという趣旨の発言がなされた。

注3) 欧州やアメリカ、シンガポールの銀行と比べても邦銀の石炭方針は低い評価となっている。https://coalpolicytool.org/ 
(参考:https://world.350.org/ja/press-release/200908/

注4) 石炭火力発電への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業向けの融資、株式や債券の引受・投資など。

注5) パリ協定と整合的な目標設定とロードマップを示そうとしている例として、仏BNPパリバの取り組みが挙げられる。https://350jp.org/tcfd/

注6) IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の2019年「土地関係特別報告書」(https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/190809.html)では、農業、林業、その他土地利用による排出量が、人間活動による排出量の約23%を占めており、このうち、熱帯林減少による排出量が最も問題であるとされた。http://japan.ran.org/?p=1517

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 渡辺瑛莉 japan@350.org

‘Inadequately aligned with Paris Agreement, Mitsubishi UFJ Financial Group lags far behind its international peers’

No Coal Japan coalition responds to banking giant’s new climate goals

Joint Press Statement
October 16, 2020

350.org
Kiko Network
Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Friends of the Earth Japan
Mekong Watch
Rainforest Action Network
Greenpeace Japan

Japan — Today, Mitsubishi UFJ Financial Group (MUFG), the largest banking institution in Japan, released its Sustainability Report (Japanese version only), stating its goal of erasing US$3.58 billion loan balances for coal-fired power projects by 2040. This announcement follows those of its Japanese peers, Mizuho Financial Group and Sumitomo Mitsui Financial Group, which set the same goal in April (1) and July this year respectively.

In response to the announcement, the No Coal Japan coalition, formed by several civil society groups, including 350.org, Kiko Network, JACSES, FoE Japan, Mekong Watch, Rainforest Action Network and Greenpeace Japan, said:

“While this is a step forward for MUFG, this goal is inadequate given the urgency of the climate crisis, and the impact of coal-fired power plants and other fossil fuels on health amidst the COVID-19 pandemic. There is an urgent need for stricter goal setting and fundamental policy revisions in Japan’s financial sector.

The standard of Japanese banks’ coal policies including MUFG remains low as compared to overseas financial institutions. MUFG is also one of the signatories of the UN Principles for Responsible Banking (PRB), which stipulates that the signatory banks should align their business strategies with the Paris Agreement and the Sustainable Development Goals (SDGs).

The goal set by MUFG is problematic in both a lengthy timeline and narrow scope. According to the best available science, coal-fired power plants need to be completely shut down by 2030 in developed countries and by 2040 in the rest of the world to limit the warming of the Earth to1.5 degrees, aligning with the Paris Agreement. Given that coal-fired power plants will continue to operate for decades beyond the redemption period, a zero-loan balance needs to be achieved much sooner.

In addition, the goal still leaves room for financing new coal fired power projects. It is scientifically clear that there is no room for the construction of any new coal-fired power plant in the world. However, there are concerns that Japanese banks are considering new loans such as the coal-fired power station Vung Ang 2 in Vietnam.

“Not only is the project inconsistent with the goal of the Paris Agreement, it lacks economic profitability, and will pollute the local environment and violate the basic human rights of the local communities. To align with Paris goals, MUFG should urgently put in place a policy to suspend financing for all the new coal-fired power projects without exception.

The scope of the goal set by MUFG is limited to project financing and not applied to corporate financing. Corporate financing (2), which covers the entire value chain of coal-fired power including coal mining, should be included along with a phase-out strategy with a timeline consistent with the Paris Agreement. Internationally, there is an accelerating trend where banks ask their customers to submit a transition plan on a timeline consistent with the Paris Agreement, and divest from clients with inadequate transition plans. To effectively facilitate this process, financial institutions must first set a roadmap of strategies and goals that are consistent with the Paris Agreement.

Furthermore, in addition to coal-fired power, policies to stop funding other high carbon emitting sectors such as other fossil fuel sectors and land-use-related sectors (3), and targets to phase-out from those sectors should be put forward.

Notes to editors:

(1) In April, Mizuho Financial Group announced its goal of erasing its outstanding credit balance for coal-fired power projects by 2050. However, during its Annual Shareholders’ Meeting in June 2020, the group commented that this goal could be achieved by 2040.

(2) Loans, underwritings, equity and bond investments for companies heavily reliant on coal mining/coal-fired power and companies who have expansion plans for new coal mining/coal-fired power plants and related infrastructures.

(3) According to the IPCC Special Report on Climate Change and Land (2019), emissions from agriculture, forestry and other forms of land use make up 23% of total emissions from human activities, with deforestation in tropical regions being singled out as the biggest carbon emitter from the land-use.

Contacts:
Asia Pacific: Nicole Han, +65 9828 1538, nicole.han@350.org
Global: Nathalia Clark, +55 61 991371229, nathalia@350.org

メディア掲載:オルタナで「ルーセル・エコシステム」調査事例が言及されました

オルタナ「花王が小規模パーム農園の生産支援、インドネシアで」(2020年10月14日)〜RANのインドネシアでの調査事例が言及されました。

「花王は10月14日、インドネシアの小規模パーム農園の生産性を向上させ、RSPO(持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議)認証取得を支援するプログラム「SMILE」を発表した。現地で油脂製品製造・販売を手掛けるアピカルグループ、農園会社アジアンアグリと協働で実施する」>>続きを読む

**関連するRANのプレスリリース**

プレスリリース「花王と三菱UFJ、インドネシア『ルーセル・エコシステム』森林破壊に加担 〜取引先 RGEグループが森林破壊企業からパーム油調達〜」(2020/9/29)

ルーセル・エコシステムで造成作業をする掘削機、インドネシア ・アチェ州、2020年6月10日

メディア掲載:日本経済新聞で「森林と金融」関連活動が紹介されました(2020/10/5)

日本経済新聞「ESG投資家が注視するメガバンクとアジア 」(2020年10月5日)〜RANのコメントが紹介されました〜

「国際会計基準(IFRS)をつくる国際会計基準審議会(IASB)の運営母体IFRS財団が、非財務情報の基準設定について協議文書を発表している。世界的に乱立ぎみの基準を整理、簡素化する狙いがあり、選択肢の1つとして財団の下に新組織『サステナビリティー基準審議会』(SSB)をつくる案を示した。12月末まで意見を募るという(略)。

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)が9月末に開いた説明会では、みずほに加えて、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループのASEAN域内での企業向け投融資について「結果として泥炭地・熱帯林の破壊につながっているのではないか」との問題提起がなされた。紹介されたインドネシアの大手財閥シナルマスへの融資などが象徴的な事例だ」>>続きを読む

**関連するRANのプレスリリース**
「『森林と金融』グローバルのデータベース発表〜パリ協定後、森林破壊企業に1,500億ドルの資金が流入〜」(2020/9/2)

MUFGアメリカズのニューヨーク本社前で森林火災への資金提供停止を訴えた、2020年9月1日、写真:Erik McGregor

ブログ:森林火災をあおる金融機関〜背後で動く資金〜(2020/9/15)

ニューヨークでアピール行動、三菱UFJとブラックロックに熱帯林破壊への資金提供停止を求め

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン
(FoE米国 ガウラブ・マダン氏との共同執筆

伐採直後の森林に隣接する、森林火災の発生地点、ブラジルマットグロッソ州アウタ・フロレスタ 写真:Christian Braga / Greenpeace

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)と国際的な市民団体は、8月31日から9月4日、インドネシアアマゾンで起きている森林火災について「ストップ!森林火災アクション週間」の呼びかけを行った。火災によって先住民族の土地が破壊され、気候変動と生物絶滅の危機が加速しているからだ。

さらに今年は、森林火災が、新型コロナウイルスによる公衆衛生と経済の「二重の危機」を悪化させる可能性がある。火災が、世界的流行の影響で動揺が広がる医療システムと経済にさらなる負担となっているのだ。新型コロナはすでに、先住民族や森林破壊の最前線にあるコミュニティに不均等な影響を及ぼしているが、火災によってその悲惨な状況が深刻化している。

熱帯林が自然発火することはなく、ブラジルとインドネシアで発生しているのは「自然火災」ではない。巨大アグリビジネス向けの土地開墾のために、意図的に火が放たれたのである。ブラジルでは牛肉と大豆、インドネシアではパーム油と紙パルプ事業がその原因である。違法にもかかわらず、企業が火入れをするのは、土地を切り拓く手段として最も安価だからだ。そして直接または間接的に森林火災につながりのあるこうした企業は、銀行や投資機関から莫大な額の投融資を受けている。その中には持続可能性への取り組みを主張している金融機関もある。

今回のアクション週間で、重要な4金融機関ーブラックロック、サンタンデール、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、バンクネガラインドネシア(BNI)ーの果たす役割に注目した理由はここにある。RANと協力団体が9月に更新した「森林と金融」データベースで検索すれば、どの銀行と投資機関が熱帯林の破壊と火災に拍車をかけ、どれだけの資金を提供しているのかを正確に突き止めることができる。分析の結果、上記の投資機関と銀行4社は、火入れを行なって森林を破壊するパーム油、紙パルプ、牛肉、大豆産業に大きく加担していることがわかった。

MUFG — 2016年以降、森林破壊リスク事業に32億ドルを提供

日本のメガバンクであるMUFGは世界5位の資産総額を保有する銀行で、実はパーム油部門では、東南アジア以外に本社を置く金融機関の中で最大の資金提供者でもある。MUFGは、シナルマス・グループのような、気候の安定化に極めて重要なインドネシアの熱帯林と泥炭地を破壊している世界最大のパーム油・紙パルプ企業複数社に資金を提供している。泥炭地破壊はインドネシアで起きている火災の最大の原因であり、アマゾンでの火災よりもはるかに多い二酸化炭素を放出した主因となっている。

残念ながら、MUFGが公表している与信方針に森林火災と煙害(ヘイズ)に関する記載はなく、インドネシアの子会社であるダナモン銀行に同行の方針の順守を義務付けてもいない。ただ私たち活動家にとって幸いなことに、米国におけるMUFGの存在感は大きい。MUFGは西海岸を拠点とするユニオンバンクを小会社に持ち、モルガン・スタンレーの筆頭株主でもある。なので、私たちの本拠地である米国で圧力をかけられるのは利点だ。

RANはボランティアとともにMUFGアメリカズのニューヨーク本社前でアピール行動を行い、森林火災への資金提供停止を訴えた。2020年9月1日
写真:Erik McGregor

ブラックロック — 2020年に森林破壊リスク事業に13億ドルを投資

世界最大の資産運用会社で、気候危機に責任を負うべき企業への最大の機関投資家でもあるブラックロックには、大きな問題がある。ブラックロックは今年1月、気候問題を投資戦略の中心に据えると約束したばかりだが、森林破壊、人権、そして先住民族および気候危機の最前線にある地域コミュニティの権利に対処する包括的で一貫性のある投資方針を持たず、森林破壊リスク企業への膨大な投資を続けている。さらに悪いことに、ブラックロックは2010年以降、森林破壊に対処する行動を求める株主提案の全てに、臆面もなく反対票を投じている以下、ブラックロックの森林破壊問題について簡単にまとめてみた。

●ブラックロックは、上場している世界最大の森林破壊リスク企業25社の三大株主の1社である
●ブラックロックは世界最大の食肉加工会社JBSの大口投資家であるが、同社がブラジルのアマゾンでの火災に関与しているという度重なる証拠や、さらに最近、同社のサプライチェーンにアマゾン熱帯林の保護地域で違法に放牧された畜牛が含まれているという証拠があるにもかかわらず、総額およそ1億4,000万米ドルを提供している
●ブラックロックは、2020年までに自社サプライチェーンで森林破壊に終止符を打つと約束しながら達成できなかった複数の消費財企業に、2,500億米ドルを投資している

RANとアマゾン・ウォッチ、FoEなどの協力団体は、ブラックロックに森林破壊と森林火災への資金提供を止めるよう訴えた。2020年9月1日 写真:Brooke Anderson

サンタンデール — 2016年以降、森林破壊リスク事業に50億ドルを提供

米国各地に支店を持ち、スペインに本社を置くサンタンデールは、ブラジルの企業に多額の資金を提供している。森林破壊の禁止をいろいろと宣言しているが、実際は、特にアマゾンの熱帯林破壊のリスクにさらされている。

サンタンデールは、2012年から「銀行環境イニシアティブ(Banking Environment Initiative)」のメンバーで、ソフト・コモディティ・コンパクト(SCC)に署名している。同コンパクトへの署名を通じて、サンタンデールは「ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム」の会員企業と協力して、2020年までに大豆、パーム油、牛肉、紙パルプおよび木材のサプライチェーンにおける「森林破壊実質ゼロ」を達成することを約束した。また同社は、自社の顧客企業と投資先が「熱帯林破壊のリスクが高い市場においてパーム油や木材製品、大豆を大量に生産または加工する業務を行っている場合も、それらの業務が2020年までに森林破壊実質ゼロを達成するという目標に沿うものであることを確認できる」ようにするとも約束している。お気づきのとおり、この中には牛肉に関する資金提供が含まれていない。

上記のようなグリーンウォッシュはさておき、サンタンデールがブラジルの牛肉セクターに対する最大の資金提供者の1社であることは事実である。このセクターがアマゾンの森林破壊や火入れによる森林開墾に関係していることは明らかだが、融資先にはマルフリグやJBSといった物議を醸している企業も含まれる。

サンタンデールの森林破壊リスク事業への融資・引受額(単位:100万米ドル)(2016年1月〜2020年4月)出典:https://forestsandfinance.org/?lang=ja

バンクネガラインドネシア(BNI) — 2016年以降、森林破壊リスク事業に24億ドルを提供

BNIはインドネシア最大手銀行の一つで、持続可能性に関して同国をリードするイメージを打ち出している。しかし、インドネシア各地で火災が発生する要因となっている泥炭地での火の使用や農園および植林地の開発を禁止する方針は公表していない。BNIの顧客として名を連ねる企業には、2019年に農園および植林地のある地域で起きた火災を理由に、インドネシア政府に農園の操業を凍結された数社が含まれる。BNIの顧客で最も有名な企業が前述のシナルマス・グループだ。世界有数の紙パルプおよびパーム油企業で、火災が影響した森林と泥炭地の面積はインドネシアの企業グループで最大である。BNIは2016年以降、同グループの紙パルプとパーム油の両部門に総額12億米ドル以上の資金を提供してきた。環境NGOのグリーンピースによれば、同グループの紙パルプ部門であるAPP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)とその子会社、事業パートナー、およびサプライヤーは、2015年から2018年の間にインドネシアにおいて総面積25万ヘクタール以上を焼き払った。また、同社はインドネシア各地での土地紛争の渦中にありながら、パルプ材植林地向けにさらに多くの土地の開墾を続けている。これは、気候にも甚大な影響を及ぼす。植林地の多くは、層の厚い泥炭(何千年にもわたり有機物が堆積した結果、大量の炭素を貯留する土壌)を排水し、劣化させて開発しているからだ。

今後、RANは上記の銀行と機関投資家への働きかけを強め、その見境のない資金提供によって私たちと地球の未来がどれほど脅かされているかを明るみに出していく。このオンライン署名「STOP! 企業があおる森林火災」(英語)に賛同して、上記4社を含む企業への働きかけを継続できるよう、協力をお願いしたい。

■署名の参加方法(英語)

以下の内容を記入して「Take Action」(賛同する)ボタンをクリックしてください。アルファベットと数字での記入をお願いします。

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英語のブログはこちら “The Money Behind the Big Business of Burning” (2020年9月3日)

ブログ:熱帯林破壊の五輪木材供給企業に汚職疑惑(20209/8)

〜インドネシアコリンド・グループ〜

日本代表 川上豊幸
(本ブログはサステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」に8月27日に寄稿したものです)

2020年夏、東京。新型コロナウイルスの感染拡大がなければオリンピックが華々しく開幕し、アスリートたちは世界中から声援を受けて金メダルを競い合っているはずでした。しかし五輪開幕は1年延期され、新国立競技場は静まりかえっています。

写真:人影もまばらな新国立競技場 2020年8月

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)ら環境NGOはこれまで、東京五輪施設での東南アジアの熱帯材使用を問題視してきました。NGOによる調査と、東京2020組織委員会の情報開示の結果、新国立競技場や有明アリーナなどほぼ全ての新施設建設で、熱帯林を伐採して生産されたインドネシアとマレーシア企業の合板が使用されていることが明らかになりました。これらの合板はコンクリートを成形するための型枠として使われ、何度か再利用されますが、基本的に使い捨てです。

そしていま新たな問題として、そのインドネシア産合板を五輪に供給したコリンド社が汚職に関与したという疑惑が浮上しています。コリンド・グループはインドネシア/韓国系複合企業で、木材、パーム油、紙パルプなどの事業を展開しています。同社についてはこれまで熱帯林での違法伐採に加え、樹木を全て伐採して生態系をも破壊する森林皆伐や、農園開発のための火入れが指摘されてきました。

コリンド・グループの汚職疑惑

今年6月25日、海外メディアのアルジャジーラは、コリンド社がインドネシアの熱帯林を木材伐採とアブラヤシ農園開発を目的に買い占めた際、「疑わしい取引に関わった」と報道しました。コリンドの複数の子会社は、西パプア全土で約4万ヘクタールの広大な熱帯林を伐採しました。西パプアにはアジア最大の熱帯林が残され、多くの先住民族コミュニティが暮らし、固有の生物多様性を誇ります。

パプア・アグロ・インベストメンツ(PAI)という、同社のシンガポールのペーパーカンパニーの2013年から2015年の財務諸表によると、「農園の権利取得に関する専門家」へ約2,200万ドルのコンサルタント料が支払われていました。 アルジャジーラが汚職防止専門家10人に2,200万ドルの支払いについて意見を求めたところ、インドネシアでは農園開発許可には当局への費用はかからないため、全員が贈収賄への警告を促しました。

また、コリンド・グループは国際的な認証制度を運営する森林管理協議会(FSC)の認証取得企業ですが、同協会が委託した2018年の調査では、同社が「非常に不備のある土地取得と補償プロセスを通じて(西パプア)族の人権を侵害している」ことが判明しました。 西パプア族が「コリンド社との取引で3億ドルを失い、同社は彼らを救済する取り組みには500万ドルも費やさなかった」ことが調査で明らかになったのです。

しかし、コリンド社は上記の不正行為についての申し立てを全て否定しています。

東京五輪 木材調達の失敗

東京五輪の会場建設現場でコリンド社製木材が最初に見つかったのは、2018年5月、有明アリーナ(バレーボール会場)でした。同社の木材は新国立競技場でも使われたことが後に確認され、合計で11万7800枚ものインドネシア製コンクリート型枠合板が新国立競技場だけで使われました。これは、国立競技場の屋根や庇(ひさし)などの建設で使われた国産木材の約3倍以上と推計されます(注)。両会場とも、熱帯林をパーム油生産などの農園に開発するために伐採した「転換材」を使用し、絶滅危惧種であるボルネオオランウータンの生息地から調達していたことが確認されています。

しかし東京2020大会主催者は、コリンド社から供給された木材の使用量をこれまで明らかにしていません。RANは同社の木材使用が東京五輪の木材調達基準に違反しているとして、五輪主催者(組織委員会、有明アリーナを管轄する東京都、新国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センター)に通報しましたが、非常識な基準の解釈や、不当な運用手続の解釈のために、6件全てが通報案件としての手続きが開始されず、当該木材の原産地も一部しか開示されていません。

東京五輪で使われた木材自体が、汚職疑惑のある西パプア州での同社事業から調達されたという確証はありませんが、西パプアでの汚職疑惑と、東京五輪に木材を供給したコリンド子会社(バリクパパン・フォレストインダストリーズ、(BFI、インドネシア・カリマンタン州)の合板工場との間には明らかなつながりがあります。

RANらNGOがコリンド社の不透明な所有権構造について調査したところ、同グループ副会長のスン・ロバート氏が複雑な循環出資(系列企業が順繰りに株式を持つ韓国企業の独特な資本構造)を通じてBFIの98%以上を間接的に所有していることが明らかになったのです。 同氏はコリンド・グループのスン・ウンホ会長の息子で、上記の2,200万ドルのコンサルタント料を支払ったPAI社の取締役でもあります。

コリンド・グループのコーポレートガバナンスにおける問題は贈収賄だけではありません。 2013年に韓国の国税庁がスン・ウンホ会長個人の事業を調査したところ、「スン・ウンホ氏は、62社のペーパーカンパニーを英領ヴァージン諸島、香港、パナマ、セイシェル、シンガポールなどに保有し、それらの企業は循環出資を通じてコリンド社のインドネシアにおける資産を共同で所有していた」(前述のアルジャジーラらによる調査報道からの引用)ことが明らかになりました。 2018年、裁判所は、複雑かつ多層的な所有権構造と名義株主を用いたことが脱税目的のようにみえるという理由で、同氏に約9千万ドルの罰金を支払うよう命じました。裁判で明らかになったように、すべてのペーパーカンパニーがスン・ウンホ氏個人の利益のために管理されていました。この裁判はいまも継続しています。

五輪調達基準、腐敗行為も禁止を明記

東京五輪の「持続可能性に配慮したな調達コード」は、環境社会面や合法性の基準だけではなく、腐敗防止について「サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、贈収賄等の腐敗行為に関わってはならない」と述べています。従って、五輪主催者は、コリンド材を調達したことにより、この基準を違反したかを調査し、違反している場合は、コリンド社をサプライヤー対象から外すといった措置を講じるべきでしょう。

また、コリンド・グループと強いつながりをもつ企業は、同社との取引を見直すべきです。 例えば、同社と紙パルプの合弁会社をもつ王子製紙、2017年まで同社に資金を提供してきた三井住友フィナンシャルグループ、そして東京五輪 の施設建設にコリンド材を供給した住友林業が挙げられます。

さらに広い意味で考えると、日本企業はインドネシアの森林セクターにおける腐敗リスクの蔓延を認識し、取引先企業のESG(環境、社会、企業統治)課題における実績評価を企業グループ全体で行う必要があります。 東京五輪はこうしたESG課題への対応を怠ったことで、今後長きにわたって悪い評判がつきまとう「高いツケ」を払うことになるでしょう。

来年の五輪開幕までにすべきこと

東京五輪主催者は安価な合板の確保を優先した可能性があり、コリンド社の問題にしっかりと目を向けませんでした。また、利用した木材への調達基準の不遵守を指摘したRANの通報に対しても、基準や手続きの非常識な解釈や判断によって責任回避を行っていることは、五輪調達における深刻な問題点です。

五輪開催まで1年間の猶予があることを踏まえ、東京五輪主催者は木材調達におけるデューデリジェンスの不備を自覚し、問題企業と取引をしたことで日本および世界の国々に悪しき前例を作ってしまったことを認識し、木材に限らず他の調達も含めた再発防止策等を策定する必要があります。

注)NGO共同声明「東京五輪は「見せかけのサステナビリティ」(2020年3月30日)参照

※参考
アルジャジーラ・101イーストの動画「同意なき西パプアの熱帯林売却」(英語)
https://www.aljazeera.com/programmes/101east/2020/06/200625081849050.html

アルジャジーラのインタラクティブサイト「5ドルの森林」(英語)
https://interactive.aljazeera.com/aje/2020/five-dollar-forests/index.html

Geckoプロジェクト、 韓国の調査報道機関「ニュース打破(タパ)」、アルジャジーラ、モンガベイによるコリンド・グループについての調査報道(英語)
https://news.mongabay.com/2020/06/the-consultant-why-did-a-palm-oil-conglomerate-pay-22m-to-an-unnamed-expert-in-papua/

FSC「コリンドグループがFSC認証を維持するために必要な改善措置を定めました」、2019年11月7日
https://jp.fsc.org/jp-jp/news/id/621

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)