サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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記事:ホワイトハウス、LNG輸出の新規許可を一時凍結 ウォール街も後に続くべき(2024/2/13)

ジンジャー・キャサディ(レインフォレスト・アクション・ネットワーク)
フアン・マンシアス(米テキサス州カリゾ・コメクルド族)

(本記事は、米誌「Newsweek」に寄稿した記事の翻訳版です)

米国メキシコ湾岸の石油・ガス開発反対運動のリーダーたちは勝利を収めた。米政権が、液化天然ガス(LNG)として知られるメタンガスの輸出施設の新規認可を一時凍結するよう指示したのだ。メキシコ湾岸では、私たちの世代で最大の石油・ガス開発が計画されている。この一時凍結は、開発中止を求める地元住民やリーダーたちの請願に応えたもので、化石燃料拡大の時代の終焉を告げる画期的な出来事となり得る。開発中止の呼びかけはホワイトハウスで終わらず、漁民、公衆衛生の専門家、科学者、アメリカ先住民族、そして一般市民が、銀行保険会社にも、これらの開発事業を中止するようプレッシャーをかけている。

環境保護活動に反対する主張でよくあるものは、「利益追求」と「保全活動」は相反するという考えだ。つまり「利益追求」は本質的に経済にとって、ひいては人間にとって有益なものだが、「保全活動」は大気や土地、植物、水、野生生物を保護するが、人間の利益のためではないという論理だ。しかし、この主張は米国メキシコ湾岸の実情から遠くかけ離れている。ここで暮らす先住民族の文化には、「大地の健康」は「人々の健康」と同義で、切っても切り離せないという考え方がある。

彼らの考えが正しいことは明白だ。同地域では、土壌や大気の有害物質によって人々が命を落としており、一帯は「がん回廊(Cancer Alley)」という悪名高いあだ名で呼ばれているのだから。メタンガス輸出施設付近の地域住民が健康被害を被っていることや、化石燃料に起因する気候災害に世界中の人々が直面していることを考えれば、これらの事業に反対する道徳的根拠には、反論の余地がない。地域の生活に決定権を持つ人々に良心があるならば、利益、人々、環境の間の分断がこれ以上続くことを止めるだろう。これは多数を犠牲にして、少数と利益を共有する銀行や保険会社にも言えることだ。

メタンガスに反対する経済的根拠も高まっている。メタンガスの輸出は米国の一般家庭のエネルギー価格を引き上げ、メタンガス施設が建設される地域の先住民族や黒人、褐色人種のコミュニティの生活を破壊している。さらに、メタンガスの輸出は石炭よりも気候に悪影響を及ぼすという事実が、新たな調査によって浮き彫りになっている。メタンガスの供給が過剰になることは予測されており、その価格を破壊するだろう。全ての化石燃料の拡張事業は、メタンガス拡張事業に見られる負の傾向と同じ問題に直面している。

バイデン政権によるメタンガス輸出凍結により、提案段階にある12件の計画が停止される見込みだ。自然保護団体シエラクラブによれば、これは石炭発電所223基分の温室効果ガス(GHG)排出に相当する。米国にはすでに8つの既存のメタンガス輸出基地(ターミナル)があり、さらに7つの事業が建設中だ。建設中の事業には、テキサス州リオ・グランデ・バレーの未開発の海岸線での新規基地建設(訳註1)や、ルイジアナ州とテキサス州に所在する既存事業の拡張などが含まれる。投資家は、停止中の事業のリスクが大幅に高まったことを否定できないだろう。全てのメタンガス輸出拡大事業、特に民族の抹消(訳註2)などといった現在起きている重大な人権侵害を永続させるような事業は、中止を求めるコミュニティからのプレッシャーというリスクに直面している。

化石燃料セクターは、化石燃料を拡大する全ての事業を止めるよう求める業界アナリストやコミュニティのリーダーからの訴えを、無謀にも無視し続けている。金融機関や投資家は、そのようなセクターで、座礁資産市場の変動による投資の破壊、資金提供を通じて問題に加担したことによる法的リスクの増大といったリスクを負いながらギャンブルすることをやめなければならない。

銀行や保険会社は何十年もの間、化石燃料事業への資金提供による気候や地域社会への影響を無視してきた。メキシコ湾岸の反対運動のリーダーたちは、ウォール街に対して、ホワイトハウスと同様に行動することを求めている。しかし、金融機関は、黒人や褐色人種、先住民族のコミュニティに汚染被害をもたらすメタンガス事業への支援を取りやめていない。

LNG輸出認可を一時停止するというホワイトハウスの発表により、金融業者と投資家の選択肢は明確になった。化石燃料の拡大への支援を中止するなど、全ての人の生命を守るために必要な方針を策定するか、それとも、政府の規制にますます反するようになっているギャンブルを利益目的で続けるか、のどちらかなのだ。メキシコ湾岸と世界中の人々の命を救うために、今こそリーダーシップが必要だ。ウォール街はホワイトハウスの後に続き、大胆に行動しなければならない。

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク事務局長
ジンジャー・キャサディ

テキサス州カリゾ・コメクルド族チェアマン
フアン・マンシアス

*本記事で述べられている見解は執筆者個人のものです。

 

訳註1)リオ・グランデLNG事業の概要や問題点については、日本のNGO「環境・持続社会」研究センター(JACSES)がまとめたファクトシート(2024年4月発行)を参照のこと。

https://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2019/10/f3f4587241d5a547e73247c7eea46d96.pdf

訳註2)テキサス州の先住民カリゾ・コメクルド族は、アメリカ先住民族であるにもかかわらず、連邦政府から公認の先住民族としての法的地位や土地権などが認められていない。彼らは長年、この「民族の抹消」という深刻な人権侵害とたたかい、また先祖代々に伝わる土地を環境破壊などから守る活動を行ってきた。現在、彼らの聖地にメタンガス輸出施設やパイプラインが建設されるのを阻止するために、世界的なキャンペーンを展開している。彼らの活動の結果、輸出施設の建設が中止・遅延されたり、投融資を検討していた銀行が事業から撤退するなどしている。

(和訳版発行日:2024年9月3日)

ブログ:インドネシア違法パーム油「炭素爆弾スキャンダル」続報〜「ルーセル・エコシステム」の野生生物保護区で森林破壊の新証拠〜(2023/11/7)

消費財企業、泥炭地破壊禁止を約束するもオランウータン生息地で徹底できず

*本記事は、英文”RAN Reveals Fresh Evidence of Illegal Rainforest Destruction for Palm Oil in Leuser Ecosystem”(2023年9月18日)の和訳に説明を一部追加したものです。

炭素爆弾」と呼ばれる泥炭林破壊

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は2022年9月、米ニューヨークでの「気候週間」開催に合わせて調査報告書『炭素爆弾スキャンダル』を発表した。報告書では、大手グローバル消費財企業が、インドネシアの「ルーセル・エコシステム」内にある、国の保護区である「ラワ・シンキル野生生物保護区」で違法に生産されたパーム油を調達していることが明らかになった。

報告書発表から1年、RANの現地調査は再び、同保護区内で泥炭林の違法破壊が進行・拡大している新たな証拠を集めた。破壊されている地域は炭素が豊富な泥炭湿地で、世界的に重要な生物多様性のホットスポットである。一帯はオランウータンの生息密度が世界で最も高く、​​「世界のオランウータンの首都」と呼ばれている。

泥炭地の生態系は、地球上で最も効果的に自然の炭素隔離を行う陸上景観である。一方で、熱帯の泥炭湿地林は炭素を多く含み、一度水を抜かれて皆伐されると、長期にわたって膨大な量の二酸化炭素を大気中に放出する。泥炭湿地にアブラヤシ農園を開発する際は、水路を造成して排水する必要がある。泥炭地開発は「炭素爆弾」と呼ばれ、生態系と気候変動において重大なリスクである。

新たな「炭素爆弾スキャンダル」

新たな衛星画像と空中から撮影した映像によると、2022年の調査で9km長さだった水路は増え、2023年には少なくとも26kmおよぶ新しい水路が掘られている。この新規水路開発の増加は、保護区内の森林損失の増加を示す憂慮すべきデータと一致している。インドネシアの原生林のほとんどでは森林消失が減少傾向にあるが、ここでは逆のことが起きている。

水路を使って泥炭地から排水を行う破壊的行為の原因となっているのは、パーム油の生産である。このように生産されたパーム油は、消費財企業は、森林や泥炭地の破壊を禁止することを方針などで公に約束しているにもかかわらず、最終的には食品や日用品などのグローバル消費財企業各社のサプライチェーン(供給網)に供給されている。このような抜け穴は、保護区周辺にある搾油工場のネットワークが、トレーサビリティ(原材料の追跡可能性)やコンプライアンス(法令や方針遵守)のシステムを十分に整備していないことに起因している。

大手消費財企業は泥炭地での大規模アブラヤシ農園(プランテーション)の新規開発を2015年12月31日の「カットオフ日」   (*)以降、禁止している。それから8年近くが経つが、スマトラ島で最も重要な泥炭湿地地域での新規開発を止めることはできていない。同湿地林は、絶滅の危機に瀕しているスマトラオランウータンの生息密度が世界で最も高いことで知られている。*訳註:これ以降の違反は是正措置や回復措置を要する。

2023年もニューヨークで「気候週間」が開催された。期間中、世界最大手の消費財企業各社は「気候への影響に対処し、自社サプライチェーンにおける森林や泥炭地の破壊をなくす」と主張したが、それを単純に信用することはできない。巨大な炭素貯蔵庫であり、世界のオランウータンの「首都」でもある「ラワ・シンキル野生生物保護区」の原生林破壊が、同企業らのモニタリング下でも続いているのは極めて明白であるからだ

「ラワ・シンキル野生生物保護区」における違法排水路開発(上空からの映像)

 

縮小する保護区の境界線

最新の調査結果でRANは、既得権益を持つ地元の有力者たちが、保護区の境界線を縮小するようインドネシア政府を説得するために、保護区内の破壊を急ピッチで進めていることを示していると訴えている。我々は、保護区の境界線を変更して、最近皆伐された地域や既存の大規模違法アブラヤシ農園を保護区から再び外すよう、インドネシア環境林業大臣 を説得する企てが進行中であることを承知している。この企ては、前述の『炭素爆弾スキャンダル』報告書で違法パーム油を消費財企業に供給していることを暴露された  地元実業家のMahmudin氏 が、その後に行った約束(違法農園を保護区に戻し、回復させること)を反故にしたことからも明らかである。

以下の画像は、新規水路開発によって破壊が進んでいる「ラワ・シンキル野生生物保護区」内の森林地域で、RANの調査で上空から最近撮影されたものである。同保護区内の新規水路開発の大部分は、南アチェ県  Ie Meudama村の北側の地域に集中している。この村は、『炭素爆弾スキャンダル』報告書で、Mahmudin氏の農園で違法に生産・収穫されたアブラヤシ果房の集積場所として名前が挙げられている。

「ラワ・シンキル野生生物保護区」内にあるLe Meudama村の北側の地域では、新たな違法大規模アブラヤシ農園の開拓に向けて、かなりの森林が伐採されている。

コンシューマー・グッズ・フォーラムと日清食品などの消費財企業は行動を

コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)、そしてモンデリーズ、ネスレ、コルゲート・パーモリーブ、ペプシコ、花王といった世界の有名消費財企業のほとんどが、「ラワ・シンキル野生生物保護区」の危機にいかに対処してきたか、詳しく説明する文書を発表していない。

RANCGFに対し、「ルーセル・エコシステム」で進行している「炭素爆弾危機」に対して行動を起こすよう求めている。皆さんにも署名への協力をお願いしたい(英語)

2022年「気候週間」期間中、RAN森林キャンペーン担当マギー・マーティンがCGFフォレストポジティブ連合 」メンバーに『炭素爆弾スキャンダル』報告書を提起

 

CGFには400社の消費財企業が加盟している。現在までのところ、『炭素爆弾スキャンダル』報告書が暴露した事実に対して、ユニリーバプロクター&ギャンブル(P&G)および日清食品の3社のみが公に回答を発表している。報告書に概説された問題が昨年から悪化していることを考えると、この消費財企業3社、そして同業他社やCGFがとった行動は十分だったとは言えない。

ユニリーバは、違法アブラヤシを調達しているとRANが暴露した搾油工場のうち、PT. Global Sawit Semesta と PT. Samudera Sawit Nabatiをサプライチェーンから除外し、この決定を「停止中・取引停止供給業者リスト」で公表した。しかし、ユニリーバの「苦情処理リスト」と「搾油工場リスト」によると、『炭素爆弾スキャンダル』報告書で指摘されている他の2つの工場(PT. Runding Putra PersadaとPT. Bangun Sempurna Lestari)は除外していなく、ユニリーバのアプローチは一貫していない。ユニリーバはまた、アチェ州における景観プログラムへの支援も挙げている。同プログラムは「ルーセル・エコシステム」北東部のアチェ・タミアン県 では好影響をもたらしたが、森林破壊と新規排水路開発が最も進んでいる南アチェ県では、こうしたプログラムは未だ確立されていない。

プロクター&ギャンブル(P&Gはこの危機に関して、保護区内の大規模違法アブラヤシ農園を回復するために供給業者と協力することを約束したが、過去数週間にRANは、この約束が果たされていないことを示す新たな証拠を得た。P&Gの供給業者が、問題の供給業者であるMahmudin氏による違法農園の返還は実際には行われないとの最新情報を発表したのである。P&Gは、直接供給業者(ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ子会社のアピカル、ゴールデン・アグリ・リソーシズ、ムシムマス、ウィルマー)から違法なパーム油を調達するリスクを抱えたままである。

日清食品は、今年6月の株主総会の前に発表した新しい苦情処理(グリーバンス)リストのなかで、『炭素爆弾スキャンダル』報告書について回答した。これによると、日清食品は、報告書で特定されたコンプライアンス違反の供給業者のひとつであるIbu Nasti氏の農園からの調達を停止している。しかし、パーム油の搾油工場である PT. Bangun Sempurna Lestariに対しては取引停止を実施していない。同工場に関しては、「ラワ・シンキル野生生物保護区」内にあるIbu Nasti氏の違法農園から違法アブラヤシを調達していたことが発覚している。

EUDRへの対応 

欧州連合(EU)で新たに制定された「森林破壊防止法」(EUDR)の施行日が間近(2024年12月末)に迫るなか、大手消費財企業がこのような違法行為や熱帯原生林の破壊に関するひどく悪質な事例に効果的に対応できていないことについて、業界全体が懸念を抱き警戒するべきである。EUDRは、パーム油などの森林破壊を起こすリスクのある「森林リスク産品」を欧州に輸入する全ての企業に対し、供給元を生産場所まで詳細に追跡し、これらの供給業者が森林破壊や人権侵害を行っていないことを証明する「デューデリジェンス」を行うことを義務付けるものである。大手消費財企業が検証やトレーサビリティという基本的な行為を達成できないままでいることは、企業とその投資家をさらに大きな財務リスクにさらすことになる。いまだに存在する「抜け穴」をふさぎ、問題あるパーム油をしっかりと排除しない限り、そのようなリスクは続くだろう。

ラワ・シンキル野生生物保護区」内の泥炭地における新規水路開発の範囲を示す地図
黒点線:2022年に見つかった水路(9km)、赤点線:2023年に見つかった水路(26km)、ピンク:野生生物保護区の境界線、緑:原生林

ラワ・シンキル野生生物保護区」内の皆伐された土地は、泥炭地から水が排出された後に火が入れられる

違法な大規模アブラヤシ農園の造成に向けて、「ラワ・シンキル野生生物保護区」内の泥炭地から水を排水するために新しい水路が建設されている(南アチェ県)

『炭素爆弾スキャンダル』報告書の出版から1年後の2023年、「ラワ・シンキル野生生物保護区」内で泥炭林を破壊するブルドーザー

RAN PRI in Person 2023 Materials 関連資料

PRI in Person 2023 Official Side Event 公式サイドイベント

Presentation Slides /プレゼン資料

 

 

No Deforestation, No Peat, No Exploitation (NDPE)

TNFD (Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)

(NGO共同プレスリリース「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フレームワークの最終提言公開、グリーンウォッシュの懸念が継続」 、未訳)

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ブログ:2023年日清食品株主総会アクションレポート 5万筆の署名を提出!(2023/8/24)

「責任あるパーム油調達100%」実現をDO IT NOW!

RAN森林キャンペーナー ミキ・ガルシア

8月25日は「即席ラーメン記念日」だと知っていましたか?  1958年8月25日に世界初のインスタントラーメンが発売されたそうです。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)とともに、日清食品ホールディングスの株主総会の会場である大阪で6月28日、バナーアクションを行いました。RANの日清食品への取り組みは今年で10年目です。


©️RAN / Yasunori Matsui

大阪ホテルニューオータニ前での株主総会アクションは今回で5回目になります。オランウータンの着ぐるみの「マニス」(中央)も参加し、今までで一番大きなアクションとなりました。ボランティアの方々も参加し、横断幕やプラカードを掲げ、チラシを配り、会場に入る株主たちに向けてスピーチをしました。RANらは、100%責任あるパーム油調達の早期実現を2030年ではなく、カップヌードルのスローガンである「DO IT NOW!」を使って、 今すぐ実行するようアピールしました。 

 

日清食品は、株主総会直前に、東南アジア等で違法伐採や生態系保全等の環境・社会面での問題が指摘されているパーム油取引を対象とした「苦情処理(グリーバンス)リスト」を初めて公表し、取引に問題があったインドネシアのパーム油会社3社との取引を停止すると発表しました。これは、RANの要請に基づくコンプライアンス対応によって、こうした問題企業との取引を排除できたことになります。

今回の苦情処理リストで示された調達状況の実態を受けて、RAN日本代表川上豊幸は、「インドネシア等の生産地では森林破壊と人権侵害が依然、続いている。『責任あるパーム油生産』には国際基準の『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針に基づいたものだけを調達対象にする必要がある」として、日清食品における迅速な対応を求めています。


写真:当日、株主総会会場前で株主らに配布した資料 ©️RAN / Yasunori Matsui

RAN、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワークがサポートする個人株主らは、株主総会に出席し、「100%責任あるパーム油調達」目標年度の前倒しについても質問しました。また、2024年末から適用される欧州連合(EU)の森林破壊防止法(EUDR)についても質問しましたが、明確な回答を得ることはできませんでした。

この新しい法律によって、EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林を破壊して開発された農園で生産されていないことを確認する「デューデリジェンス」の実施が義務付けられます。森林破壊をしていない証明、人権侵害有無のリスク評価や確認も含め、日清食品は、EUでのビジネスを継続するのなら、後1年数カ月で様々な問題に対処しなければならず、早急な対応を迫られているということになります。


写真:株主総会に参加する株主に資料を配布 ©️RAN / Yasunori Matsui

同社が2030年度としている「持続可能なパーム油調達比率100%」実現を大幅に前倒しするよう求める署名活動の成果として、RANは日本と海外の国々から集められた合計約5万筆の署名を日清食品ホールディングス取締役社長・CEO安藤宏基氏およびアメリカ日清社長のマイケル・プライス氏宛に提出しました。

しかし、日清食品からは目標年の前倒しがなかったため、現在行われている署名活動は継続します。現在、主にX(ツイッター)で、毎週木曜日にツイデモを行っています。

#日清DOITNOW のハッシュタグで、毎週木曜日、何度でもツイートしてください。キーワードは、 #ツイデモ #森のための木曜日 #ForestThursday です。

さらなる署名と、拡散をよろしくお願いします。

日清食品に森林と人権を守る日本のロールモデル企業になってもらいましょう。

 

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ブログ:ボルネオとパプアで森林破壊の新たな動き〜背後にひしめく悪しきプレイヤーたち〜(2023/5/22)

インドネシア北カリマンタンに新巨大パルプ工場 60万ヘクタールの熱帯林が危機に

投稿者:RAN, EPN, Auriga, Greenpeace and Woods and Wayside

インドネシアで新たな森林破壊の脅威が浮上

地球の未来を賭けたギャンブルをしてはならない。リスクが高すぎて、私たちの手に負えないからである。インドネシアでは最近、森林保護に一定の進展が見られるようになったが、無謀な企業行動によって利益を得ようとする人々に対する警戒を怠ってはならない。

インドネシアでは、数十年にわたって大規模なアブラヤシ農園やパルプ材用植林地、伐採による森林破壊が容赦なく拡大され続けていたが、森林破壊を減らすための努力が実を結び始めた。この変化は、原生林地域における新規事業許可の一部停止、森林法のより良い実施、国際的なサプライチェーンから要求された一層高い基準により、もたらされている。

しかし、新しい調査報告書『パルピング・ボルネオ(Pulping Borneo)』(パルプ材に変わるボルネオの森)は、この傾向を脅かす不穏な出来事を暴露している。そのひとつは、インドネシア東部の小さな島、タラカン島に建設中の巨大パルプ工場である。この工場がフル稼働すれば、年間330万トンの木材が破砕されることが予測されている。これは年間でトラック10万台分以上の丸太に相当し、ボルネオとパプアの太古の熱帯林60万ヘクタールが危機に瀕することになる。

熱帯林や周辺に住む先住民族コミュニティ、熱帯林が今も支える驚異的な生物多様性、そして気候の安定やインドネシア自身の気候変動への公約に対する熱帯林の重要な貢献にもかかわらず、企業が減少しつつあるインドネシアの熱帯林から利益を得ようとし続けることに驚くことではない。

しかし注目すべきは、この破滅的なゲームに参加している悪しきプレイヤーたちである。それは、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(RGEグループ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、そしてプロクター&ギャンブル(P&G)だ。

写真:Ulet Ifansasti/Greenpeace

「森林破壊のエース」 RGEグループ

トランプの1枚目、つまり最初のプレイヤーは、ケイマン諸島で登記された会社で、タラカン新工場の代表者、フェニックス・リソーシズ・インターナショナル(PT Phoenix Resources International)である。調査の結果、同社はインドネシアで最も裕福かつ最も物議を醸している大物実業家の一人、スカント・タノト氏の支配下にある可能性が高いことが明らかになった。タノト氏はRGEグループの実質的所有者である。

オフショアを通じて、所有権が複数の層から成る複雑な企業構造を構築する企業は珍しくない。この仕組みは、実際に事業を行っている国での税収を大抵の場合は犠牲にして減らし、大企業が税負担を軽減または回避する方法を提供する。それに加えて、企業グループは「シャドーカンパニー(影の会社)」を運営する能力も得られる。「シャドーカンパニー」とは、親会社である企業グループの慎重に管理された対外的イメージに反するような、物議を醸す活動を水面下で行う企業のことである。

RGEグループは、長年にわたりインドネシアの熱帯林を皆伐し、先住民族や地域コミュニティの権利を侵害してきた破壊的な歴史を持つ。しかし2015年以降、RGEグループとその主要構成会社であるAPRIL(紙パルプ会社)、アジアン・アグリ(パーム油生産・精製会社)、アピカル(パーム油加工・販売会社)はいずれも「森林伐採ゼロ」の誓約を含む持続可能性へのコミットメントを強調して宣伝している。RGEグループは、自社の方針は「金銭的関与を問わず、RGEグループが所有、管理、あるいは投資する」すべての企業に対し「例外なく」適用され、「すべての繊維、木材、パルプの第三者供給業者」を含むと主張している。しかし、このコミットメントの信憑性には大いに疑問がある。

「キャッシュの王様」 MUFG 

RGEグループの継続的な拡大の要は、タラカン島の新工場のような資本集約的な事業の資金を銀行に依存していることである。「森林と金融」連合がまとめたデータによると、2016年以降、RGEグループの取引銀行のうち上位15行が、RGEグループの森林セクター事業に合計で50億米ドル以上の融資を行っている。なかでもRGEグループにとって極めて重要な取引銀行のひとつが、日本最大の銀行である三菱UFJフィナンシャル・グループ(東証:MUFG)である。

最近のMUFGの融資に関連して、RGEグループの社長は次のように述べている。 「持続可能性は当社のビジネスモデルの中核であり、サステナブルファイナンス(持続可能な社会を実現するための金融)はRGEにとって進むべき道です。私たちはパートナー銀行からの支援と関心を得ており、2022年に総額16億米ドルの持続可能性に関連した融資を確保しました」。 この声明は、むしろグリーンウォッシュ(訳註:上辺だけの環境配慮アピール)の協定に読める。

MUFGによるRGEグループ企業への多額の資金援助は、「保護価値の高い地域における森林破壊(deforestation)が行われていないこと」を顧客に求めるというMUFG自身の森林セクター方針と矛盾しているように見える。 『パルピング・ボルネオ』報告書は、2015年から2022年にかけて、オランウータンの生息地を含む3万7000ヘクタール以上の自然林を皆伐して得た木材を、RGEグループが関連する別の工場である バリクパパン・チップ・レスタリ(PT Balikpapan Chip Lestari)が加工していたことを明らかにしている。そして2021年には、RGEのパーム油が、スマトラ島の熱帯低地林である「ルーセル・エコシステム」内の原生林を皆伐して栽培されたアブラヤシから生産されたことが暴露されスキャンダルとなっている。他にも問題事例が後を経たないが、残念なことにMUFGからの資金提供は続いている。 

有害な活動につながりのある銀行は総じて、自社のサステナビリティ方針は、幅広い企業グループの中の特定の子会社にのみ適用されると言い訳をする。しかしこのようなあからさまな抜け穴は、森林保護へのコミットメントを事実上無意味なものにしてしまう。また、OECD多国籍企業ガイドラインのような国際基準や、汚職などの問題に関して国際機関が発行したその他の金融基準にも抵触している。

近年、ますます多くの銀行がRGEから手を引いていることは、多くを物語っている。MUFGが掲げる持続可能性へのコミットメントが信じるに値するものなのであれば、MUFGも毅然とした態度でRGEとの関係を断ち切らなければならない。しかし、資金の流れを止めることは解決策の一部に過ぎない。RGEグループや類似するグループの拡大に手を貸した銀行には、被害を受けた地域コミュニティや生態系を救済する責任があるはずである。

写真:北カリマンタン州のタラカン島にあるフェニックス・リソーシズ・インターナショナル社の建設現場、2022年12月 ©️Environmental Paper Network(3°22’57.55 “N-117°31’15.94 “E)

「化粧品の女王」 P&G

次のプレイヤーは消費財企業である。消費財企業は、搾取された土地や人々から調達された安価な原料の需要を牽引する主要な役割を果たしている。例えばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、RGEグループのパーム油部門から原料を調達し、最終的に衛生用品や化粧品などの様々なパーソナルケア製品に使用している。P&Gは「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE)方針を掲げているが、MUFGと同様に不十分で、すべての森林リスク産品に関して取引先企業が関連する企業グループ全体に方針を適用していない。

P&Gは利益を上げ続ける一方で、RGEのような企業グループとのビジネスの代償を、インドネシア全土で森林破壊に立ち向かう地域コミュニティに支払わせている。その事例の一つが、北スマトラ州のコミュニティ「パルガマナン・ビンタン・マリア」に対する、RGEグループの関連企業であるトバ・パルプ・レスタリ(TPL)による土地収奪である。

パルガマナン・ビンタン・マリア」集落は、TPL(紙パルプ生産企業)の操業による影響を受けている数十のバタク先住民族コミュニティの一つである。TPLが収奪した土地は同コミュニティの先祖代々の土地の40%と重なり、その3分の1はすでに同社工場に供給するために産業用パルプ材に転換されている。このプロセスは、コミュニティの十分完全な同意なしに行われた。干ばつの増加や洪水、森林に依存した生活の衰退など、悲惨な影響がすでに生じている。地域コミュニティは組織化して、P&Gのような世界的な消費財企業に対して、TPL社が彼らの慣習林を返還し、先住民族コミュニティを犯罪者扱いする不当行為や脅迫を止めるまで、RGEグループ全体との取引を停止するよう求めている。

破滅的なゲームに終止符を打つ

今、P&GやMUFGのような消費財企業や銀行が、方針の抜け穴を悪用するのを止めるべき時が来ている。国際企業や金融機関のサステナビリティ方針は、森林や泥炭地の破壊、あるいは地域コミュニティや労働者の搾取に関与する企業グループとの取引を禁止しなければならない。そしてその方針は、1)森林リスクがあるセクターにおける全ての産品を対象とし、2)取引先企業が関連する企業グループ全体に適用されなければならない。この二つの要件を持たない方針は全て、消費財企業や銀行が引き起こしている真の被害から意図的に目をそらすための巧妙なごまかしにすぎない。

朗報は、消費財企業や銀行が、顧客や供給業者の企業グループの全容を評価するために、特別に考案された詳細な方法論が存在することである(訳註:『Shining Light on the Shadows(影に光を当てる)』で説明)。この方法論は、アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFI)による「企業グループ」の定義ーー「当事者のいずれかが他方の行動や業績を監督するという関係によって企業が提携する法人の総体」ーーを用いている。 このアプローチは、消費財企業や銀行の方針範囲の基礎となるべきである。

森林破壊に関する課題と解決策は、熱帯林が広大であるのと同じくらい複雑であるが、ひとつ確かなことがある。「森林と森の民の人権を守る(キープ・フォレスト・スタンディンク)」ためには、消費財企業や銀行は「環境に配慮しているふり」をやめ、しっかりとした方針を打ち出し、真剣に取り組む必要がある。陰で森林を切り倒し、地域コミュニティを破壊する企業グループに現金を提供し、契約書を交わすことは「持続可能」とは言えない。 私たちはその行為を実態に即して呼ぶ必要がある。それは「単純明快な不正行為」であると。

*本記事は、英文 ”The Players Behind a New Wave of Deforestation in Borneo and Papua”(2023年5月22日)の和訳版です(2024年2月15日投稿)。

 

イベント(4/22):パーム油・熱帯林と私たちが食べている物の密接な関係

Earth Day みんなつながってる環境イベント大阪2023〜パーム油・熱帯林と私たちが食べている物の密接な関係〜アースデイの日にみんなで一緒に考えませんか?

世界有数の生物多様性の宝庫である熱帯林。
私たちの身近な消費生活が豊かな森を破壊することにつながっているかもしれません…

環境問題に関心がある、自分ができることを考えたい、仲間を集めてこんなことをやってみたい、パーム油・カップヌードルの現状をどうにかしたい…

ドキュメンタリー映画やワークショップを通して、身近な食べ物から、海外の環境問題について私たちにできることを一緒に考えましょう!

【日時】
2023年4月22日(土)9:00〜21:00
(オープンイベントです。映画の時間を除いて、ワークショップなども計画していますが、基本的にはインフォーマルな学びの空間、質問や意見などの交換の場所を提供します。):

映画上映①10:00〜 ②14:00〜 ③18:00〜
*映画の時間の合間にワークショップなどインフォーマルな学びの空間、質問や意見などの交換の場所を提供します。
*ヴィーガンのお菓子などエシカルな商品もご用意する予定です。

【上映作品】
「グリーン・ライ〜エコの嘘〜」(97分、2018年、ヴェルナー・ブーテ監督)https://www.cinemo.info/82m
スーパーで見かける「環境に優しい」商品。商品を買うと世界を救えるは本当?確かめるため監督自身が世界一周調査の旅へ出る。「環境に優しい」「サステナブル」耳触りの良い言葉の裏側に隠された残酷な真実に迫るドキュメンタリー。
解説:https://unitedpeople.jp/greenlie/exp

【場所】
ルマ・ボルネオ(https://nobuo5002.wixsite.com/ruma2
大阪府都島区都島本通3-8-10 2F

アクセス:大阪メトロ谷町線の都島駅から徒歩3分、またはJR桜宮駅から徒歩9分
*道案内:谷町線 都島駅 ①番出口をでます。オコメノカミサマというラーメン屋さんの方へ出てまっすぐ進み、炉ばた焼き屋さんの角を左折。

【対象】
環境に関心のある全ての人々。
「行動したいけどまだよくわからない」「環境問題に取り組む仲間が欲しい」というユースの方も大歓迎です!

【申込フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdc3oFtQaLjSlRGEaUQt4ssiYd_Xw9Bgm6xvqU63g-m205EZw/viewform?fbclid=IwAR0Flo4L-FuVWiqmtFxPqAnLfP-7AeujTd_qYFM6nBsllefBbtJt0909urQ

【参加費】
基本的にありませんが、可能でしたら、500円のドネーション・カンパをいただけるとありがたいです。余裕のある方はそれ以上、余裕のない方はできる時で結構です。

また、カンパの代わりとして以下の行動も歓迎です!
・今日見たこと、経験したこと、聞いたことを友達、家族、知り合いなどに話す
・今日の感想をソーシャルメディアでシェアする
・RANの署名にサインをする
・署名したことを友達などに話す
・RANのサイト、YouTubeをみて勉強する
・RANのTwitterをフォローする
・RANやウータンのイベントに参加する
・ウータンのTwitterをフォローする
・ハッシュタグをつけてSNS投稿する #日清食品 #パームオイル #カップヌードル #森林破壊 #インドネシアの自然 #人権侵害 #野生動物 #安藤さん #doitnow #cupnoodles #nissin
・ウータンのサイト、YouTubeをみて勉強する
・ウータンの会員になる
・ウータンに寄付する
・RANやウータンの活動に参加する
・アメリカのRANのサイトで英語やインドネシア語を勉強する(日本語と英語、インドネシア語のレポートもたくさんあります)
・自分が学んだこと、気づきをみんなに言う、ソーシャルメディアでシェアする
・何かを買う時、それに何が入っているかチェックする。パーム油・植物油の入ったものならば、インドネシアなどの熱帯雨林、地元民、動物たちの犠牲によって成り立っている可能性があると理解する。

☆★署名に参加することもできます!★☆

日清食品さん、2030年では遅すぎます。 問題のあるパーム油は今すぐストップ! 地球と未来のために、DO IT NOW!

【主催】

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
https://japan.ran.org/

ウータン・森と生活を考える会
https://hutangroup.org/

ウータン・森と生活を考える会は、「森を守りたい」と願う熱い心を持った人々が集まった市民団体です。オランウータン、テングザル、サイチョウ、昆虫、植物、菌類、微生物…多くの命がつながりあって、何万年もの時をかけて作られた生物多様性の宝庫であり、先住民にとっても、私たちにとっても、生きる糧を与えてくれるボルネオ島の自然豊かな熱帯林。一度絶滅すると二度と戻ることのない種が多くいる生態系の減少を食い止める活動、国内外のNGOや現地の村人とともに保全・再生する活動、原因となるパーム油などの大規模開発による熱帯林破壊を日本の消費者に伝える活動を、30年以上、市民の力で進めてきました。