サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘人権’カテゴリーの記事一覧

イベント:日・インドネシア森林保全シンポジウム2026「森林減少ゼロに向けたサプライチェーンの未来」(2026/7/9)

〜2026年7月22日(水)・23日(木)開催(東京・表参道 / オンライン)〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、7月22日、23日、「日・インドネシア森林保全シンポジウム2026」を地球・人間環境フォーラム、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、Auriga Nusantara(インドネシア NGO)と共同で開催します。

熱帯林は陸上の生物多様性を支える上で極めて重要です。陸地面積の7%にもかかわらず、地球上の動植物種の50~80%が存在するとされます。インドネシアは世界第3位の熱帯林面積を有し、多くの固有種・絶滅危惧種が生息する世界有数の生物多様性ホットスポットです。一方で、パーム油、紙パルプ、木材、近年では日本で再エネとして使われる木質ペレットの生産拡大に伴い、急速な森林減少と生態系への悪影響が依然として続いています。

日本はこれらインドネシア産森林コモディティの主要な消費国であり、日本企業・投資家の調達や投資行動は、現地の森林保全に大きな影響を与えています。

本シンポジウムでは、各コモディティ(紙パルプ、パーム油、バイオマス)の生産現場における森林減少や生物多様性リスク、地域社会への影響等について研究者やNGOから最新状況を共有します。そして、サプライチェーンを通じた森林減少ゼロに取り組む日本企業や、独自のエンゲージメントやデューデリジェンスに取り組む投資家らも加わり、マルチステークホルダーによる議論を行います。森林減少ゼロのサプライチェーンとネイチャーポジティブな未来の実現に向けた道筋を探ります。

インドネシアの森林減少、生物多様性保全、サステナブル投資、企業の責任ある調達などに関心をお持ちの皆様にとって、国内外の第一線の研究者・専門家、先進的な取り組みを進めるビジネス関係者に直接取材いただける貴重な機会です。

【開催概要】

日時:7月22日(水)、23日(木) 10:00~17:00(ネットワークセッションは17:30~19:00を予定)
会場:東京ウィメンズプラザ ホール(東京都渋谷区神宮前5-53-67)
開催方式:会場・オンライン併催
参加費:無料(事前申込制)
詳細・申し込み
https://www.gef.or.jp/news/event/260722-23japan_indonesia_forest_symposium/

インドネシアの熱帯林に住む生き物 (左:ボルネオオランウータン(c)HUTAN Group、右:クマクスクス(c)Taishi Takahashi / GEF)

プログラム(敬称略)※日英同時通訳付き
*時間および内容の詳細は随時更新・追記いたします。

(インドネシアの登壇者のプロフィールと写真はプログラムの下をご覧ください)

【1日目】

午前 10:00-13:15(予定)

基調講演「インドネシアの森林は、なぜ減少を続けるのか?(仮)」 
– Saurlin P. Siagian(インドネシア国家人権委員会委員)

セッション1「紙・パルプ」
日本のコピー用紙の約3割はインドネシア製です。紙パルプ生産のために起きている熱帯林の伐採、植林地への転換、泥炭地の開発、先住民族や地域住民の権利の侵害などの問題を、インドネシアのNGO・研究者からご紹介します。日本のNGOからは、企業への働きかけ、ユーザー企業の取組みと先進事例を取り上げます。責任ある紙製品調達のために、生産国と消費国それぞれに求められる取り組みを考えます。

– モデレーター:川上 豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットーク)

– コメント:Bambang Hero Saharjo (ボゴール農科大学)

– スピーカー:Aidil Fitri(HaKI:Hutan Kita Institute、私たちの森研究所)、原田 公(熱帯林行動ネットワーク )、Kokok Yulianto(WWFインドネシア)、太田 史生(味の素株式会社)

午後 14:30-17:00(予定)

セッション2「パーム油」
インドネシアは世界最大のパーム油生産国となり、同国の豊かな熱帯林は急速にアブラヤシ農園に置き換えられてきました。本セッションでは現地NGOから、アブラヤシ農園開発による環境・社会問題の最新状況を、日本のNGOからは10年以上継続しているアンケート調査と企業との対話を基に、ユーザー企業の責任ある調達への取組状況をご紹介します。また、NDPE(森林減少ゼロ、泥炭開発ゼロ、人権侵害ゼロ)方針の策定と実施を進める企業や、積極的なエンゲージメントを行う投資家にもご登壇いただき、森林減少を引き起こさないサプライチェーンの実現について議論します。

– モデレーター:内藤 大輔(京都大学農学研究科)

– コメント:冨田 秀実(サステナビリティ経営研究所)

– スピーカー:松原稔(りそなアセットマネジメント)、中司喬之(熱帯林行動ネットワーク)、Adelina Chandra(Trase)、Ristika Putri(LTKL(Sustainable District Association))、佐藤 浩司(花王株式会社)

【2日目】

午前 10:00-12:30(予定)

セッション3「バイオマス」
日本では「再生可能エネルギー」としてバイオマス発電が支援され、インドネシアからの燃料輸入量が急増しています。その生産地で森林が大面積で伐採され、絶滅危惧種や固有種を含む貴重な生態系の価値が失われている現状を、現地NGOや研究者に報告していただきます。一方、日本のバイオマス発電の支援政策も、持続可能性を求めて変化を続けています。政策関係者やバイオマス発電事業に融資してきた金融機関から、それぞれの問題認識や課題解決に向けた取り組みを紹介していただきます。持続可能なバイオマス発電と、森林と生物多様性の維持は両立可能か、多方面から検討します。

– モデレーター:泊 みゆき (バイオマス産業社会ネットワーク)

– コメント:Terri Repi(ゴロンタロムハマディヤ大学)

– スピーカー:岡﨑達也(三井住友トラストグループ)、経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 担当官、Christopel Paino(JAPESDA:Natural Resources Management Advocacy Network)、Timer Manurung(Auriga Nusantara)

午後 14:00-17:00(予定) 

セッション4:「保全」
インドネシアの熱帯林は、パーム油、紙パルプ、バイオマスなどの生産のために減少し続けています。消費国側と生産国側の連携により、森林を破壊しないサプライチェーンを確立することはできるのでしょうか。本セッションでは現地で企業・行政と地域住民が、共同で計画策定やモニタリングなどを行い、広域での森林保全で成果をあげている3つの地域での事例を取り上げ、成功に必要な要素について考えます。また日本のバイヤー企業の調達方針や働きかけが果たす役割、マルチステークホルダーが関わる、熱帯林を減少させない調達の可能性を議論します。

– モデレーター:井田 徹治(共同通信社)

– コメント:Jatna Supriatna (インドネシア大学)

– スピーカー:Rudi Putra(FKL:Leuser Conservation Forum)、石崎雄一郎(ウータン・森と生活を考える会)、Paulinus Kristianto(CAN :Conservation Action Network,Borneo)、不二製油株式会社の保全プロジェクト関係者

総括コメント:足立 直樹(株式会社レスポンスアビリティ)

 

本シンポジウムの注目ポイント

1. インドネシアの森林保全に関する第一線の研究者、NGOが多数来日

Saurlin P. Siagian氏:インドネシア国家人権委員会 監視・調査担当委員

人権擁護、社会正義、農地改革、環境ガバナンス、先住民族の権利が専門。政策提言、調査研究、アドボカシー、制度強化に幅広く従事。


 

Bambang Hero Saharjo氏:ボゴール農科大学教授

森林火災・泥炭地火災研究の世界的権威。森林・プランテーション開発に伴う違法な森林火災の科学的解明と原因追究に尽力し、2019年に科学的根拠に基づき公共の利益に資する情報発信等の活動に取り組む個人に与えられる「ジョン・マドックス賞」を受賞。

 

Adelina Chandra氏:Trase リサーチャー

データに基づく分析を通じて、森林減少とコモディティ・サプライチェーンの透明性向上に取り組む国際非営利組織 Traseのリサーチャー。森林減少、森林ガバナンス、持続可能なコモディティ・サプライチェーンを専門とする。

 

Ristika Putri氏:「持続可能な郡政府連合」事務局長

持続可能な地域づくりを推進するインドネシアの「持続可能な郡政府連合」(Lingkar Temu Kabupaten Lestari、LTKL)の事務局長。郡政府、企業、地域コミュニティ、開発パートナーとの連携を通じて、経済成長と森林保全、気候変動への強靱性を両立する地域戦略の策定を支援。

 

Timer Manurung氏:環境NGO Auriga Nusantara創設者・代表

インドネシアで20年以上活動してきた環境活動家。衛星・サプライチェーンデータに裏付けされた、インドネシア有数の環境アドボカシー組織を率いる。

 

Rudi Putra氏:Leuser Conservation Forum(FKL)保全アドバイザー

アジア最大・世界有数の熱帯林「ルーセルエコシステム」における生態系保全の第一人者。同地で30年以上にわたり森林・野生生物保全に取り組み、2014年にゴールドマン環境賞を受賞。

 

Jatna Supriatna氏:インドネシア大学教授、気候変動研究センターおよび持続可能な地球資源研究所の所長

インドネシアを代表する保全生物学者で、国際NGOコンサベーション・インターナショナルのインドネシア代表、副代表を長年務めた。インドネシアの環境と生物多様性を主題とした著書と論文多数。

 

2. 日本企業・投資家などとの対話

インドネシアのNGOや研究者に加えて、日本側からも下記の幅広い立場の人が集い、議論を行います。森林・生物多様性保全の現場、裏付けとなる科学的な知見、サステナブル投資やサプライチェーン管理の実務など、横断的な視点や取り組みを取材いただけます。

• 紙製品・パーム油のユーザー企業
• エンゲージメントやデューデリジェンスに積極的に取り組む投資家・金融機関
• 関連政策を所管する行政担当者
• 研究者、サステナビリティ専門家

 

3. 交流の機会

両日とも終了後にはネットワーキング・セッションを予定しております。登壇者への取材や名刺交換、関係者との意見交換など、対面ならではの交流の機会としてご活用ください。

 

【お問い合わせ】

一般財団法人 地球・人間環境フォーラム
鈴嶋(suzushima@gef.or.jp, TEL: 050-7112-2967)・飯沼(iinuma@gef.or.jp, TEL: 080-3488-9850)

 

プレスリリース:MUFG株主総会でアピール「気候変動と人権侵害に投融資しないで」〜MUFG、LNGの環境・社会リスク認識せず支援継続を明言〜(2026/6/26)

執行役のリスクへの認識不足が露呈、取締役の監督機能への懸念残る

「化石燃料ファイナンス大賞 世界ワースト2位」と書かれた”表彰スタイル”のバナーを掲げアピール©︎ RAN / Masaya Noda

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は本日26日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)株主総会に参加し、気候変動を加速させる化石燃料産業や人権侵害、森林破壊を行う事業者への資金提供の停止を求め、会場前でアピールしました。

RANは集まった環境NGOとともに、会場のグランドプリンスホテル新高輪前で「化石燃料ファイナンス大賞 世界ワースト2位」と書かれた”表彰スタイル”のバナーを掲げ、 MUFGの資金提供が気候変動の加速に加担していることを株主にアピールしました。今月9日に発表した「化石燃料ファイナンス報告書2026」によると、化石燃料企業へのMUFGの2021年から2025年の資金提供額は世界の大手銀行65行中2位でした(注1)。会場周辺では、超小型電気自動車の移動広告と搭載したスピーカーを用い(注2)、米国における液化天然ガス(LNG)事業による先住民族の権利侵害などの悪影響を示しました。また、スピーチと資料配布も行いMUFGの資金提供への懸念点を説明しました。

会場前を走行する超小型電気自動車による移動広告 ©︎ RAN / Masaya Noda

スピーチの様子 ©︎ RAN / Masaya Noda

株主への資料配布の様子 ©︎ RAN / Masaya Noda

RANは総会で、1) 米国リオ・グランデLNG事業など先住民族の権利侵害が発生している資金提供例を挙げ、MUFGの方針や国際基準の違反が繰り返される原因と防止策、2) 外部からの情報提供に基づいて、取締役が方針遵守状況を監視・確認するためのメカニズム設置について質問しました。執行役専務グループCROの横幕勝範氏は「今はLNG事業(への資金提供等)をやめることは考えていない。先住民族の権利については、IFCパフォーマンススタンダードなどの国際基準を見ている」という趣旨の説明をしました。この回答は、同LNGへの融資が自社方針や国際基準に違反しているとMUFGが認識していない可能性を示唆しています。取締役の監視機能についての質問には、取締役ではなく執行役が対応したものの、質問への回答はなく、取締役のガバナンス機能が不十分であるとの懸念が浮き彫りになりました。

RANは昨年の株主総会で「リオ・グランデLNG事業などにおける先住民族の権利侵害についてMUFGではどのような是正措置や救済が可能か」と質問したところ、横幕氏からは「顧客の先住民族の人権への配慮を確認し、仮に顧客の配慮が十分でない場合は、融資を行わない方針である」という趣旨の説明がありました(注3)。

責任ある金融キャンペーナー・麻生里衣は「MUFGは、リオ・グランデLNGにおける先住民族の権利侵害などの問題を知りながら抜本的な対策を行っていません。よって、この権利侵害に加担していると言わざるをえません。昨年の株主総会での役員の返答にもかかわらず、MUFGは昨年秋に同事業の拡張プロジェクトに7億ドル以上の資金提供を行いました。2024年に来日し、MUFGと直接対話した先住民族を含む地域コミュニティは、このニュースを聞いてとても失望していました。事業者は今も、地域の先住民族やコミュニティと対話の場を設けずに、彼らの声を無視する形で建設を進めています。地下に眠る先住民族の歴史遺産は、破壊されれば永久に失われてしまいます」と訴えました。

©︎ RAN / Masaya Noda

前述の「化石燃料ファイナンス報告書 2026」では、MUFGの2025年の化石燃料企業への資金提供額が世界3位の470億ドルで、前年比で21%も増加しました。MUFGは、LNG事業を拡大する企業に対して多額の資金提供を行なっています(注4)。米ネクスト・ディケイド社が進めるリオ・グランデLNG輸出基地事業において、地域の先住民族であるカリゾ・コメクルド族との十分な対話は行われていません。この事業への資金提供は、大規模事業への融資の際に環境・社会面での影響を確認するための国際基準である「赤道原則」(注5)や、同社グループの先住民族の権利に関する方針不遵守の可能性があることをRANは指摘しています(注6)。

RANは、オンライン署名「MUFGにリオ・グランデLNGへの資金提供の停止を求めよう!」を英語で展開し、現在は約28,000筆の署名が世界中から集まっています。日本語版もMUFGの株主総会を前に開始しました(注7)。RANは今後もMUFGを含むメガバンクに対し、銀行が助長する負の影響を受ける地域の人々の声を伝え、環境・社会方針やガバナンス体制についての改善を求め、「環境と人権を守るリーダー」となるよう要請するとともに、世論喚起を行っていきます。

脚注

注1)共同プレスリリース「化石燃料ファイナンス報告書 2026」発表 〜世界65銀行、パリ協定以降に8.7兆ドルを提供(2026年6月9日)

注2)環境に配慮し、化石燃料車ではなく電気自動車(EV、電動ミニカー:第一種原動機付自転車)を使用。使用した広告宣伝車は、東京都屋外広告物条例の規制対象外であるが、委託企業は管轄警察署など関係各所に相談・報告しながら走行ルートの策定などを行った。午後には金融街の中心地である丸の内・大手町でも1時間程度走行した。

注3)RANプレスリリース MUFG株主総会でアピール「気候変動に投融資しないで」(2025年6月27日)

注4)『化石燃料ファイナンス報告書 2026』 参考資料 3メガバンクの資金提供分析

注5)「赤道原則」とは大規模事業への融資の際に環境・社会への影響を評価するための国際基準のこと。参考:https://equator-principles.com/app/uploads/EP4_Japanese.pdf

注6)RANプレスリリース「赤道原則ファクトシート」発表 〜MUFGとみずほ、「赤道原則」や自社グループ環境・社会方針不遵守の疑い〜 米テキサス州リオ・グランデLNGへの資金提供について」(2026年5月20日)

注7)オンライン署名「三菱UFJさん、米国リオ・グランデLNGへの資金提供はもうやめて!」(日本語)

Tell MUFG to Defund Rio Grande LNG!」(英語)

参考:「MUFGの投資リスクをご存知ですか?」(RANのキャンペーン特設Webページ)https://fossilfreejapan.org/ja/campaigns/mufg/

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています:http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204、TEL 03-6721-0441
責任ある金融キャンペーナー 麻生里衣 Email: rie.aso@ran.org
日本チームマネジャー:関本幸 Email: yuki.sekimoto@ran.org
コミュニケーション&デジタルスペシャリスト 立花実咲 Email: misaki.tachibana@ran.org

プレスリリース:RAN「赤道原則ファクトシート」発表 〜MUFGとみずほ、「赤道原則」や自社グループ環境・社会方針不遵守の疑い〜 米テキサス州リオ・グランデLNGへの資金提供について(2026/5/20)

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は本日20日、『赤道原則ファクトシート:MUFGとみずほによる赤道原則などの国際規範および自社グループ方針不遵守の疑い』(注1)を発表しました。「赤道原則」とは大規模事業への融資の際に環境・社会への影響を評価するための国際基準です。本書は、同原則を採択している三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)みずほフィナンシャルグループが米テキサス州リオ・グランデLNG事業への資金提供において、原則5の「ステークホルダー・エンゲージメント」で多くの要件を満たしていない可能性を指摘しています。同時に、融資における先住民族の地域社会への配慮や慎重な判断を定めた、自社グループの環境・社会方針への違反の可能性も示しています(注2)。今回の調査・分析は、公開情報や先住民族を含む地域コミュニティから提供された情報をもとにRANが実施し、上記資金提供が赤道原則および自社グループ方針の不遵守と考えられると結論づけています。

リオ・グランデLNGの建設現場(写真©︎ Bekah Hinojosa / (SOTXEJN)

本書は、MUFGとみずほによるリオ・グランデLNG輸出ターミナル(基地)事業への資金提供について、公開されている情報や、リオ・グランデ・バレー地域の先住民族であるカリゾ・コメクルド族を含む地域コミュニティから提供された情報に基づき、RANが実施した調査を元に作成されました。リオ・グランデLNGに隣接するテキサスLNG施設(2026年中旬に最終投資決定(FID)達成予定)は、カリゾ・コメクルド族の聖地と建設予定地が重複しています。調査の結果、リオ・グランデLNGの事業者であるネクスト・ディケイド社が、利害関係者である地域コミュニティに対して、同原則の原則5「ステークホルダー・エンゲージメント」で定められた多くの要件を満たしていないことが明らかになりました。具体的には以下が挙げられます。

  • 適切な方法での継続的なコンサルテーションの機会を提供していないこと
  • 適切に行われた環境・社会的評価の結果が未だ開示されていないにも関わらず、現地の整地作業が完了していること
  • MUFGとみずほは、赤道原則が参照する国際金融公社(IFC)パフォーマンススタンダードが定める場合において(注3)、先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(注4、FPIC)の取得を事業者に確認すると定めているが、事業者はカリゾ・コメクルド族からFPICを取得せずに建設を進めている、など

2024年9月、リオ・グランデ・バレー地域のコミュニティ代表団とRANは共同でMUFG とみずほに対し、ネクスト・ディケイド社との関係において適切な人権デューデリジェンスを怠ってきたとしてビジネスと人権対話救済機構(JaCER)を通じて苦情を申し立てました(注5)。2024年10月にはコミュニティ代表団が来日し、MUFGなどの金融機関と対話を行いましたが(注6)、現在においても解決に向けた進展は見られません。

また本書では、MUFGとみずほが資金提供しているリオ・グランデLNG事業、隣接するテキサスLNG事業およびリオ・ブラボー・パイプライン事業が完成した際には、ライフサイクル全体で考えると膨大な温室効果ガス(GHG)の排出をもたらすことも問題視しています。

MUFGとみずほによる関与の概要

地域コミュニティとRANによる正式な苦情や問題提起にもかかわらず、MUFGとみずほはリオ・グランデLNG事業の第1フェーズに続き、第2フェーズのFIDでも重要な役割を担っていました。その他にも、両銀行グループはネクスト・ディケイド社への資金提供やアドバイザーなどのサービス提供を通じて同事業に関与し続けています。

リオ・グランデLNG、第1フェーズ、1〜3号基、2023年(参考
・MUFG:16億4292万米ドル
・みずほ:12億2292万米ドル

リオ・グランデLNG、第2フェーズ準備、2024年(参考
・MUFG:1億9000万米ドル

リオ・グランデLNG、第2フェーズ:4号基 、2025年9月にFID(参考
・MUFG
 - 38億5,000万米ドルのタームローン債権者間代理人(インタークレジター・エージェント)
・みずほ
 - 4号基の担保管理受託者(コラテラル・エージェント)
 - ネクスト・ディケイド社の資本調達アドバイザー

RAN責任ある金融キャンペーナー(日本担当)麻生里衣は「地域の先住民族やコミュニティ代表団との切実な対話の後に発表された、MUFGとみずほによるリオ・グランデLNG拡張事業への資金提供決定の知らせは、両銀行グループの社会や環境へのコミットメントが意味を持たないものであるということを明白にしました。RANはこれまで​長年に​わたり、メガバンクに​対し社会や環境に重大な影響を及ぼす​企業グループについて問題提起を​行ってきました。​しかし、メガバンクによる​このような化石燃料​企業への​資金提供の継続を見れば、メガバンクの社会や環境へのコミットメントがどれほどの意味を持つのか疑問視されます。​銀行によって​繰り返される資金提供が、​これら​企業の​問題ある​事業活動の継続を可能にしています。​そして、​その​代償を​払うことに​なるのは​、現地で生活する​地域コミュニティの​人々なのです」と訴えました。​

RANは、MUFGとみずほに対し、以下の3点を含む対応策の早急な実施を求めます。

  • リオ・グランデLNG、テキサスLNGおよびリオ・ブラボー・パイプライン事業における先住民族の権利侵害をはじめとした負の影響と顧客企業による対応状況の事実確認を行うこと
  • 上記事業による負の影響への救済と是正について、早急にコミュニティ代表団とコンサルテーションを開始し、JaCERに提出された苦情処理を顧客企業とともに進めること
  • 上記事業の顧客による方針の不遵守状況の深刻度を考慮して、これらの事業や顧客への今後の支援を停止すること

脚注

注1)「赤道原則ファクトシート:MUFGとみずほによる赤道原則などの国際規範および自社グル ープ方針不遵守の疑い〜米国リオ・グランデLNGへの資金提供〜」http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2026/05/Equator-Principle-fact-sheet_JP_202605.pdf

注2)「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」https://www.mufg.jp/csr/policy/index.html
みずほフィナンシャル・グループ「環境・社会に配慮した取引に関する取組方針の概要」https://www.mizuho-fg.co.jp/sustainability/business/investment/index.html

注3)MUFGとみずほはIFC環境・社会持続可能性パフォーマンススタンダード( IFCパフォーマンススタンダード)第7項が定める特別な状況として、先住民族が伝統的に領有または慣習的に使用している土地や自然資源に影響がある事業、先住民族のアイデンティティにとって不可欠な重要な文化遺産に著しい影響がある事業などを定めている。
https://www.ifc.org/en/insights-reports/2012/ifc-performance-standards英語)

注4)「FPIC(エフピック)」とは Free, Prior and Informed Consent の略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注5)「ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)」ウェブサイト。MUFGとみずほは同機構の会員企業である。
https://jacer-bhr.org/index.html
提出苦情:https://japan.ran.org/wp-admin/upload.php?item=2643

JaCER「苦情処理案件リスト」(2026年5月1日更新)
・案件登録番号:No.036_2024 とNo.035_2024 (受付日 2024年9月26日 )
・ステータス:会員企業(銀行)は「通報者と対話継続中」としているが、地域コミュニティには「対話」といえるような機会は一度も提供されていない。https://jacer-bhr.org/data/media/FY2022-24List20260501JPN.pdf

注6)RANプレスリリース「危険なLNG事業を支援する邦銀に要請、 米メキシコ湾岸の住民代表団が初来日」、2024年10月18日
https://japan.ran.org/?p=2347

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています:http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204、TEL 03-6721-0441
責任ある金融キャンペーナー:麻生里衣 Email: rie.aso@ran.org
日本チームマネジャー:関本幸 Email: yuki.sekimoto@ran.org

別表

▼テキサスLNG、リオ・グランデLNG等の建設予定地を示したマップ。周辺には地域コミュニティ居住地、野生生物保護区およびスペースXのロケット発射拠点施設などがある。

共同声明:CP2 LNGの最終投資決定を受けて、米ルイジアナ州地域社会と世界の支持団体が融資銀行を非難(2026/03/26)

ルイジアナ州キャメロン郡 — ベンチャー・グローバルのLNG(液化天然ガス)拡張計画の最前線に立つ地域コミュニティは、多数の大手金融機関(※)がCP2 LNGプロジェクト(CP2)の第2フェーズ向けに合計86億ドルの資金を提供し、最終投資決定(FID)が行われたという発表を受けて、深い失望と強い憤りを表明しました。CP2は沿岸部コミュニティに不利な形で建設中であり、地域コミュニティが上記の銀行に、同プロジェクトで起きている多くの人権侵害について正式に伝えていたにもかかわらず、そのわずか数週間後にFIDが発表されました。

※バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、シティバンク、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、バークレイズ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、 みずほフィナンシャルグループ、 三井住友フィナンシャルグループ、ナティクシス スタンダードチャータード、 サンタンデール銀行、インテーザ・サンパオロ、バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行、ドイツ銀行

ロビン・シグペン|FISH
「こうした銀行は、なぜ水が飲めなくなったのか、なぜ魚がいなくなったのか、なぜ私たちの暮らしが失われつつあるのかを、子どもたちの目を見て説明する必要などないでしょう。しかし、私たちは説明する責任を背負っています。私は『Fishermen Involved in Sustaining Our Heritage(私たちの伝統を守る漁師たち)』の事務局長として、何世代にもわたってこの海で生計を立ててきた家族や人々を代表しています。 私たちは、高い投資リスクの保証のために提供される担保ではありません。銀行はCP2への融資を選んだ時、人々よりも利益を選んだのです。そして、それが私たちにどのような代償を強いるか、銀行は正確に承知の上で融資をしたのです。私たちは黙って犠牲になるつもりなど毛頭ありません」

上記施設の近隣住民にとって、CP2のFIDが意味することは以下の通りです:1)国際エネルギー機関(IEA)がエネルギー転換には不要としているインフラに数十億ドルが投じられていること、2)文字通り「沈みつつある」地区での事業であること、3)同業他社を大きく上回る負債比率で、320億ドル以上の負債を抱える企業が運営していること、4)気候変動対策への適合を公約しながらも化石燃料の拡大に資金提供を続ける金融機関によって擁護されていること。 独立系金融アナリストは、世界のLNG市場が2027年から2030年にかけて大幅な供給過剰に向かっていると警告しています。欧州やアジアの主要市場ではガス依存度の削減が積極的に進められ、ベンチャー・グローバル自身も仲裁裁判での大きな敗訴を受けて、信用格付けがすでに「ネガティブ」に引き下げられています。

アリッサ・ポルタロ| ハビタット・リカバリー・プロジェクト代表
「真のエネルギー安全保障とは、メタン基地を建設することではありません。それは『エネルギー主権』です。すなわち、家庭や地域社会、地区が、自ら管理する身近な資源から必要なエネルギーを自ら生み出す力のことです。航路を守るために、地球の反対側へ資金や兵士を送り込むことではありません。銀行がCP2に約束(コミット)するその1ドル1ドルは、私たちを現実的に守ってくれる太陽光パネル、風力発電所、沿岸部の再生、そして地域主導のインフラ整備への投資から削られる1ドルなのです」

このFIDを可能にした銀行は、ベンチャー・グローバルの浚渫作業によって推定9,000~18,000立方ヤードの土砂がこれまでに漁場に放出され、約260エーカーの湿地生息地が破壊され、現地の人々の生計手段であるカキが520万個も死滅したことについて情報提供を受けています。 銀行は、隣接するカルカシュー・パスLNG基地が稼働初年度だけで2,000件以上の大気排出許可基準超過を自主報告し、稼働開始から343日間のうち286日もの間、大気浄化法の要件を満たしていなかったことを認識しています。そして銀行はCP2がキャメロン郡に建設されることも知っています。同郡は全米で最も洪水リスクの高い郡にランクされ、インフラの96%がすでに洪水の脅威にさらされています。銀行はこれらのすべてを知りながら、それでも契約に署名をしました。

また、銀行はこのFIDが行われた下された広範な背景についても理解しています。イランの民間人や地域全体の人々に人道的苦難をもたらしている現在の中東紛争により、LNG価格は一時的に60%急騰し、ベンチャー・グローバルと投資家に「戦争の棚ぼた利益」(a war windfall)をもたらしています。 化石燃料企業は、こうした紛争から単に利益を得ているだけではありません。彼らのビジネスモデルは紛争に依存しているのです。紛争は供給の不確実性を生み、不確実性は価格を高止まりさせ、高価格は株主への利益還元を継続させます。一方で、一般の人々はガソリンスタンドでの支払いや光熱費、そして税金という形でその代償を払わされています。施設周辺の地域コミュニティは有毒ガスを吸い、中東の人々は命で代償を払っています。一方で、銀行は融資手数料で利益を得ています。

ジェームズ・ハイアット|For A Better Bayou
「これらの銀行は、大気汚染許可違反、湿地破壊、洪水リスク、そして私たちの地域社会で記録されている人権侵害について知っていたにもかかわらず、融資を行いました。基準値が超過するたび、生息地が1エーカー破壊されるたび、そして今、私たちの家族が健康被害に耐えるたび、これらの全ての責任はこれらの銀行に刻まれているのです。これは単なるひどい気候政策ではありません。これは人権侵害であり、これに加担した金融機関は責任を問われるべきです」

アンディ・ゲオルギウ|Transatlantic Anti-LNG network コーディネーター
「ベンチャー・グローバルの施設およびその拡張事業への共同融資に関与しているすべての欧州の銀行は、意図的に人々の苦しみと気候の混乱を助長し、ベンチャー・グローバルの背後にいる億万長者たちが、大西洋の両岸の一般家庭から現在の高価格で白昼堂々と搾取することに加担しています。一方で、低価格でLNGを供給するという約束を反故にし、長期契約パートナーを裏切っているのです」

ダニエラ・フィナモーレ|ReCommon
「CP2 LNGを支援することで、インテサ・サンパオロのような欧州の銀行は、人権、気候の安定、そして最前線に立つ地域コミュニティの安全よりも、短期的な利益を選んでいます。このことについては議論の余地は全く無く、明らかに彼らの責任不履行です」

ジャスティン・デュクロ=ゴンダ|Reclaim Finance
「ナティクシスやスタンダードチャータードを含め、このプロジェクトを支援する欧州の銀行は、気候変動に関する約束を破り、欧州のエネルギー自立を危険にさらしています。このプロジェクトは、地域コミュニティにとっても、気候の安定にとっても、そして納税者にとっても悪い知らせです。欧州の銀行は、気候変動に関して言行一致を示し、LNGの拡大支援をやめるべきです」

喜多毬香|「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 持続可能な開発・援助プログラム担当スタッフ
「地元の漁師たちが被害を報告しているにもかかわらず、銀行が支援を行ったことに深く失望しています。CP1の保険を引き受けた日本の保険会社である東京海上とSOMPOに対し、CP2の引受を行わないよう強く求めます」

麻生里衣|レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)責任ある金融キャンペーナー(日本担当)
「私たちは再び、銀行が人々の暮らしや自然環境を犠牲にして利益を得る化石燃料企業を支援する様子を目撃しました。私たちは昨年より、地域コミュニティや支援団体と共に、日本のメガバンクを含む金融機関に対して、ベンチャー・グローバルのLNG事業について問題提起を行ってきました。メガバンク3社全てがその問題を知りながらコミュニティに背を向けて、ベンチャー・グローバルを支援する道を選んだのです。そしてメガバンクは『守秘義務』を逆手に取り、その説明責任から逃れ続けています。この状況を見れば、メガバンクの言う『責任ある金融』は、私たちの社会への責任ではなく顧客への責任を重視しているとしか思えません」

ショーナ・アンブローズ|レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)気候変動・エネルギー部門スポークスパーソン
「このメタン基地の影で暮らす人々は、リスク評価の単なる補足事項ではありません。RANは長年にわたり、金融機関が人権を後回しにし、取引の付け足しのように扱うと何が起こるかを記録してきました。CP2は、その最新の事例です。銀行側は情報を把握し、地域社会の声を聞いていたにもかかわらず、それで引き起こされる害を承知の上で、それでも今回のような選択をしたのです。その選択は実際に人々に重大な影響を及ぼします。私たちは、この取引に関わるすべての当事者の責任を徹底的に追及していきます」

このプレスリリースは、ルイジアナ州南西部、メキシコ湾岸南部地域の最前線コミュニティおよび支持団体、ならびに2026年2月に金融機関および保険会社宛てに送付された要請文への署名団体を代表して発表しました。

本件に関するお問い合わせ先

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204
TEL 03-6721-0441 FAX:03-6721-0959
責任ある金融キャンペーナー(日本担当)
麻生里衣
Email: rie.aso@ran.org
日本チームマネジャー
関本幸
Email: yuki.sekimoto@ran.org

RAN米国本部
気候変動・エネルギー部門コミュニケーションマネジャー
ショーナ・アンブローズ
Email: shawna@ran.org

共同プレスリリース:米ルイジアナ州のLNG事業で地域住民とNGOが人権救済申立を東京海上に提出 (2026/02/25)

~日本の保険大手、浚渫工事の事故及び人権侵害を助長したとして通報を受ける~

For A Better Bayou
Habitat Recovery ProjectのFisherfamily Advisory Council for Tradition & Stewardship(FACT)

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

東京海上とSOMPOへの申立

東京海上及びSOMPO本社前にて行われたアクションの様子

米国ルイジアナ州及び日本のNGOと住民は共同で、ベンチャー・グローバル社のカルカシュー・パス1 LNG(液化天然ガス)事業が引き起こした公害及び経済的損失に関する記録文書に基づき、東京海上グループに対して、包括的な人権救済申立書を提出した。公開情報で把握する限り同社グループの保険引受における公式の人権救済申立は初のケースである。申立書では、東京海上の子会社が、同施設向けの9億ドルの保険契約の7.5%を保有しており、ルイジアナ州ベンチャー・グローバル社のLNGターミナルの保険引受を行ったことで、自社の規定及び国際人権法に違反したと主張している。

申立書は、東京海上のグローバルステークホルダーズホットラインを通じて提出され、同社グループの人権方針の複数の規定に違反したと主張している。人権方針では、顧客との取引開始前に人権デューデリジェンスを実施すること、被影響コミュニティに直接対話を行うこと、国内外の法令の遵守、及び取引全体を通じてリスクを再評価することが義務付けられている(※1)。カルカシュー・パス1LNG事業の施設では、稼働時間の50%以上において大気浄化法に法的準拠していないことが判明しており(※2)、現在大気浄化法許可及び州の運営免許を争う複数の連邦訴訟の対象となっているにも関わらず、保険契約が行われた(※3)。

人権救済申立書は、2025年8月に発生した壊滅的な惨事に伴う経済的損失を詳述している(※4)。ベンチャー・グローバル社のカルカシューパス2(CP2)事業に関連した浚渫工事により、漁場に数トンの堆積物が流出し、エビ漁のシーズン開幕時に重要なカキの養殖場が厚い泥で覆い尽くされた(※5)。エビ漁師はソーシャルメディアで泥まみれで空の網の様子を共有した。カキ漁師は事態発生から数ヶ月後の現在も漁獲高に大打撃を受けており、収入が失われている事態が流出事故に起因すると主張している。これは、生計手段の損失を保護する世界人権宣言第25条に定められた権利の侵害である。この度、情報開示請求により、流出事故の発生時に浚渫工事の重要な部分を請け負っていたベンチャー・グローバル社の委託先建設会社の主要保険引受者が東京海上の子会社であることも判明した。

「この大惨事は未然に防止できたものであり、まさに東京海上の人権方針が防止するべきとしている被害そのものである。」と、申立書の署名団体の一団体である、Fisherfamily Advisory Council for Tradition & Stewardship(FACTS)(※6)は述べている。

本申し立ては、対応を怠った場合、OECD日本連絡窓口(NCP)(※7)への追加の苦情申し立てに繋がる可能性があることを警告している。こうした苦情により、国連特別手続による調査が行われる前例も存在する(※8)。申立書には、東京海上が2022年7月から2025年9月にかけて、これらのリスクについて繰り返し警告を受けていたことを示す詳細な時系列が含まれている。こうした警告にも関わらず、東京海上は保険引受を継続した。カルカシュー・パス1LNG事業の保険契約の更新日は、2026年3月14日の予定である。

以下の団体、For A Better Bayou、Habitat Recovery ProjectのFisherfamily Advisory Council for Tradition & Stewardship(FACT)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、東京海上に対し、以下の行動をとるよう求めている。

  • ベンチャー・グローバル社のカルカシューパスLNG事業の保険契約が2026年3月14日に満了する際に、更新を拒否すること。
  • ベンチャー・グローバル社の拡張事業(CP2、CP3、プラクミンズLNGフェーズII)への保険引受を除外すること。
  • 東京海上の上級管理職と影響を受けたコミュニティーの対面会議を含む、人権デューデリジェンスを徹底的に実施すること。
  • 影響を受けた漁業者世帯及び地域社会に対して金銭的補償を行うこと。
  • 不適切な保険引受を承認した幹部責任者の責任追及のため、内部調査を開始すること。

同様の人権救済申立は、ベンチャー・グローバル社の保険を引き受けた日本の大手損害保険会社であるSOMPOにも送付された。SOMPOは東京海上のグローバルステークホルダーズホットラインのような公開された仕組みは持たないものの、「多様なステークホルダーおよびライツホルダーの皆さまから、人権に関する苦情、相談、ご意見を幅広く受け付けられる体制を整備しています(※9)」と記載している。SOMPOと東京海上の両社は、世界人権宣言第8条に明記された救済を受ける権利を有する影響を受けたコミュニティと協力する責務を負っている。

「東京海上とSOMPOは、カルカシュー・パスLNG事業に対する保険契約の更新を直ちに停止し、ベンチャー・グローバル社の事故によって発生した人権侵害について、自社の人権方針に基づき、適切な人権デューデリジェンスを実施するべきである。」と「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラムディレクターである田辺有輝は述べている。

東京海上は2023年から2024年にかけて、化石燃料関連事業の直接保険料として、4億3000万ドルを受け取ったと報じられている(※10)。同社の北米における事業は他地域を上回る業績を上げている一方で、このような継続的な人権侵害を助長し、利益を得てきました。苦情申立書で引用された学術研究によると、保険会社が引受方針を遵守した場合、有害な事業をより広範に直接抑制する市場環境が形成される(※11)。これは、東京海上が自社の方針を遵守することで、リスクの暴露を減らし、本件で生じた損害を是正し、人権侵害や環境破壊を引き起こす事業から業界全体を転換させる好機になることを意味している。

カルカシュー・パスLNG事業の詳細はファクトシート(※12)を参照

注釈

※1:人権に対する基本的な考え方・人権基本方針 https://www.tokiomarinehd.com/sustainability/humanrights.html
※2:Terminal Trouble Pollution Violations at America’s LNG Export Terminals https://environmentalintegrity.org/wp-content/uploads/2025/10/LNG-Report-nonembargoed-10.29.25.pdf
※3:
Environmental Groups File Federal Lawsuit Against Louisiana CP2 LNG Export Facility’s Clean Air Act Permit https://environmentalintegrity.org/news/environmental-groups-file-federal-lawsuit-against-louisiana-cp2-lng-export-facilitys-clean-air-act-permit/
Louisiana Community and Environmental Groups Challenge Coastal Use Permits for Controversial CP2 Project https://earthjustice.org/press/2024/louisiana-community-and-environmental-groups-challenge-coastal-use-permits-for-controversial-cp2-project
※4:Cameron Parish fishermen clash with Venture Global over dredging mess https://lailluminator.com/2025/09/25/cameron-parish-fishermen-clash-with-venture-global-over-dredging-mess/?utm_source=chatgpt.com
※5:Fishermen in Southwest Louisiana Say LNG Terminals Are to Blame for Shrimp Harvest Decline https://insideclimatenews.org/news/07092025/louisiana-lng-terminals-shrimp-fishing/
Cameron Police Jury asks LDWF to perform study on oyster impacts in Big Lake after Venture Global Dredging Spill https://www.kplctv.com/2026/02/10/cameron-police-jury-asks-ldwf-perform-study-oyster-impacts-big-lake-after-venture-global-dredging-spill/
Louisiana Oyster Season Facing Crisis: Fisherfamilies in Cameron, LA, Cite Major Die Off from Dredging and Dumping from Shipping, Refinery and LNG projects. https://habitatrecovery.org/press-releases/oyster-opener
※6:Introducing The FACTS https://habitatrecovery.org/thefacts
※7:OECD Guidelines for Multinational Enterprises on Responsible Business Conduct and Japanese NCP https://www.mofa.go.jp/ecm/oecd/page22e_000946.html
※8:Laos: Demanding accountability for deadly dam collapse https://www.inclusivedevelopment.net/cases/laos-xe-pian-xe-namnoy-dam-collapse/
※9:ビジネスと人権への取組みの全体像 https://www.sompo-hd.com/csr/action/employee/content4/bhr/
※10:Renewables Gallop As Fossil Fuels Stall— Opportunities and Risks in the Energy Transition https://global.insure-our-future.com/wp-content/uploads/sites/2/2025/09/IOF_MonteCarloBriefing_090225_Digital.pdf
※11:Renewables Gallop As Fossil Fuels Stall— Opportunities and Risks in the Energy Transition https://global.insure-our-future.com/wp-content/uploads/sites/2/2025/09/IOF_MonteCarloBriefing_090225_Digital.pdf
※12:
ファクトシート カルカシューパス2(CP2)LNGターミナル事業2026年2月「環境・持続社会」研究センター(JACSES) https://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2026/02/cp2factsheet.pdf

本件に関する問い合わせ

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

ブログ:RGEグループ、パルプ材サプライチェーンにおける新たな森林破壊を認める(2025/12/19)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度(© Auriga Nusantara, 2025)

概要

● ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、自社サプライチェーンにおける森林破壊を2016年以降に停止することを誓約している。しかし、それから9年後の今も、RGEグループの紙パルプ部門のサプライチェーンは、熱帯林の皆伐を続ける事業管理地からの調達を継続している。木材チップの調達は、物議を呼んでいる PT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)を通じて行われている。RGEグループは、自社方針の違反があったことを認めている。

● 森林管理協議会(FSC)が新たに公表したガイドラインによれば、PT. BCLはRGEグループの財務的支配下にあり、ゆえにRGEの企業グループの一員とみなされる。したがって、RGEグループは、FSCとの関係修復に向けた取り組みの基盤である「森林破壊禁止」誓約に引き続き違反している。

● インドネシア政府の記録および衛星画像分析から、中国にあるRGEグループ最大のパルプ工場に専属で供給する木材チップ工場であるPT. BCLが、2020年から2024年の間に5,565ヘクタールの天然林を皆伐した2つのパルプ材植林地から調達していたことが明らかになった。

● 日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、RGEグループのパルプ部門への融資を続けている。2020年から2025年7月までに、エイプリル社に2億2,200万米ドルの融資を行っている。そのうち、2024年にはシンジゲートローンに9,500万米ドルもの拠出が行われた。

RGEグループと森林破壊のつながり

ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、ビスコース、紙、ティッシュ、包装材の世界的な大手供給企業である。同グループは、2016年の始めまでに自社サプライチェーンから森林破壊を停止するという誓約を広く宣伝しているにもかかわらず、インドネシアの熱帯林を皆伐している供給業者からの調達を続けている。

税関記録、衛星画像分析およびサプライチェーンのデータによると、インドネシアの木材チップ生産者であるPT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)が、2020年から2024年にかけてボルネオ島の東カリマンタン州で5,500ヘクタール以上の天然林を皆伐した2つのパルプ材植林地から、大量の木材を調達してきたことを示している。この税関記録および木材供給に関するデータは、サプライチェーンの透明性向上のためのプラットフォーム「Trase」が、インドネシアのパルプ部門に関する最新アップデートのなかでまとめたものである。現地のNGOである「アウリガ・ヌサンタラ(Auriga Nusantara)」による現地調査は、2025年に至るまで継続している森林破壊を記録している。

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地2025年5月の衛星画像(Sentinel-2)に示された、最近皆伐された区域の記録(ヌサンタラ・アトラス上で閲覧)。ドローンの位置(黄色のピン)および撮影されたおおよその範囲(ピンク色)を表示

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度(© Auriga Nusantara, 2025)

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度 (© Auriga Nusantara, 2025)

問題となっている木材チップ工場——PT. BCL——は、数年にわたりRGEグループの独占供給者となっている。森林管理協議会(FSC)が2025年10月に採用した新しいガイドラインによれば、PT. BCLは、RGEグループの財務的支配下にあり、ゆえに企業グループの一員とみなされる。以上のことから、RGEグループは保護価値の高い(HCV)地域の破壊および森林の非森林用途への大規模転換を禁じるFSCの「組織とFSCの関係に関する指針」に違反していると見られる。RGEグループは、「救済(補償)プロセス」を通じて、傘下のパルプ企業グループであるエイプリル社(APRIL:アジア・パシフィック・リソース・インターナショナル)とFSCとの関係修復を図ってきた。しかし、RGEグループ傘下のパルプ企業トバ・パルプ・レスタリ(TPL)の労働者が先住民族コミュニティの人々に暴行を加えた事件の告発を受け、この救済プロセスは2025年9月に停止されている。

PT. BCLで植林地からの丸太が荷下ろしされる様子(2024年11月)

loyal-Golden-Eagle-Industrial-Zone-BalikpapanPT. BCLの木材チップ施設は、RGEグループ傘下のアピカル社のパーム油精油施設の隣に位置する(バリクパパン)

RGEグループはこの告発に対し、同社の「予備的分析は、2020年から2024年の間に、PT. センダワル・アディ・カリヤ(PT. Sendawar Adhi Karya: PT. SAK)およびPT. バカヤン・ジャヤ・アバディ(PT. Bajayan Jaya Abadi: PT. BJA)の事業管理地において土地被覆の変化が実際に発生していること、および、この土地被覆の変化は当社の森林破壊禁止方針および持続可能な調達方針に適合していなかった可能性が高いことを示しています」と回答している(RGEの回答全文はページ下部を参照)。

2023年7月、RGEグループ傘下のアジア・シンボル社も、PT. BCLは木材チップ供給者であり、RGEグループおよびアジア・シンボルの森林破壊禁止誓約に反して、2016年から2022年にかけて森林破壊を引き起こしていた供給業者から木材を調達していたと認めている。アジア・シンボルはこの声明の中で、PT. BCLには「強固なデューデリジェンス体制を整備し、調達した全ての木材について定期的な現地検証を実施することが求められていました」と述べた。しかし、このスキャンダル以降も、アジア・シンボルはPT. BCLから安定的に調達を続けている。2020年にはアジア・シンボルのPT. BCLからの木材チップ調達は、全体の約5分の1を占めていた。政府記録と衛星画像分析などを用いた今回の新たな調査結果は、PT. BCLが天然林を皆伐している企業からの調達を継続していたことを示している。2024年にPT. BCLが調達した木材総量の36%は、天然林の皆伐を行うPT. SAKとPT. BJAから調達されていた。この調達は、アジア・シンボルが表明している、PT. BCLの調達に関する強化されたデューデリジェンス・検証の実施期間中に行われたものである。RGEグループのバリューチェーンに森林破壊とつながりのある供給業者が存在し続けていることは、RGEグループが掲げる「森林破壊を一切容認しない」という主張が偽りであることを示している。

RGEグループは次のように回答した。「PT. BCLおよびその供給業者による当社方針の遵守に疑いが生じたのは、今回が初めてではありません。(略)当社調査による予備的な所見に基づき(略)アジア・シンボルは、PT. BCLからの全ての供給を直ちに停止する決定を下しました。アジア・シンボルおよびその他のRGE企業は、今後PT. BCLから調達を行いません」

PT. BJAの事業管理地における年次の森林破壊を示した地図(2020〜2024年)

PT. SAKの事業管理地における年次の森林破壊を示した地図(2020〜2024年)

サプライチェーン内の森林破壊

衛星画像分析および現地調査は、PT. SAKおよびPT. BJAの隣接する事業管理地内で、2020年以降、5,500ヘクタール以上の熱帯林(サッカー場7,000面以上に相当)がパルプ材用植林地のために皆伐されてきたことを示している(衛星リモートセンシング分析はRANが外部委託したもの)。

PT. BCLがインドネシア環境林業省に報告したデータによれば、PT. SAKおよびPT. BJAは、2024年に両社の植林地の40万立方メートルを超える木材を、全てPT. BCLの木材チップ工場に送っている。出荷記録によれば、PT. BCLは同年、その木材チップの全量、すなわち80万トン超(7,000万米ドル以上相当)を、中国山東省日照市にあるRGEグループの巨大パルプ工場であるアジア・シンボルに輸出している。これらの出荷記録は、インドネシアのバリクパパンと中国の日照市との間で木材チップを輸送した船舶の動きの追跡データの分析結果によって確認された。

PT. BCLの最終受益者(実質的な所有者)は、オフショアのペーパーカンパニーによって隠されているが、これらのペーパーカンパニーは、RGEグループと複数の共通点を持つ。RGEグループはPT. BCLの所有・支配を否定しているものの、PT. BCLは、RGEグループのパルプ材サプライチェーンにおける垂直統合型の施設であると見られる。PT. BCLは、RGEグループに専属で供給し、RGEグループ傘下のクタイ(Kutai)にあるパーム油の製油所と同じコンビナートで操業し、出荷港を共有している。

マハカム川の森林景観

PT. SAKおよびPT. BJAの事業管理地は、西クタイ県にあり、ボルネオ島で三番目に大きい河川であるマハカム川の流域に位置する。インドネシア語で「マハカム・ウル」と呼ばれる上流域には、インドネシアに残された最大級の手付かずの熱帯林が広がっている。しかし、マハカム川流域に残存する熱帯林は、石炭採掘やアブラヤシ農園開発、森林伐採、そして今回の事例に見られるようなパルプ材用植林地開発などの産業によって、断片化の脅威に晒されている。

マハカム川で遊ぶ絶滅危惧種カワゴンドウ7頭の群れ(2024年11月© RAN)

マハカム川流域には、現地では「ペスット」と呼ばれるマハカム川固有のカワゴンドウの個体群(別名:イラワジイルカ、IUCNレッドリスト:深刻な危機(CR))や、めったに姿を見せないスマトラサイなど、多くの絶滅危惧種や、象徴的な種が生息している。スマトラサイは、かつて野生では絶滅したと考えられていたが、2025年にタバング(Tabang)郡区のPT. SAKの事業管理地近く、2016年にマハカム地域で確認されている。一頭のサイはその後保護されたが、この森林は野生復帰を成功させる上でも極めて重要な生息地であることに変わりはない。さらに、絶滅の危機にあるボルネオオランウータンやテングザル、オナガサイチョウなどの動物も生息している。

タバング郡区のPT. SAKの事業管理地近くで、2025年にカメラトラップにより撮影されたボルネオサイ(CR)(写真© Indonesia’s Resource Conservation Centre (BKSDA))

カワゴンドウマハカム川に生息する絶滅危惧種(CR)のカワゴンドウ。「ペスット」とも呼ばれる(© Yayasan RASI)

ボルネオオランウータン絶滅危惧種(CR)のボルネオオランウータン。生息地存続可能性評価によると、マハカム川周辺に生息する(写真:Creative Commons)

マハカム川流域に生息する絶滅危惧種(EN)のテングザル(写真© Yayasan RASI)


先住民族ダヤックのフドック祭(マハカム・ウル)

マハカム川上流の素晴らしい景観と生物多様性は、自然に依存した伝統的農業と現代的農業により生計を立てる先住民族コミュニティのダヤック族のスチュワードシップ(責任ある管理)によって守られている。これらのコミュニティの多くは、伝統的に使用してきた土地と森林をめぐる慣習的権利(慣習林:インドネシア語で「フータン・アダット」)を獲得して、森林伐採、アブラヤシ農園、鉱山の新規開発地を求める企業の進出から土地と権利を守るために闘っている。

MUFGは森林破壊への関与に対処していない

日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、RGEグループのパルプ部門およびパーム油部門に対する重要な資金提供者である。MUFGは、RGEグループのインドネシア事業に対する第二位の資金提供者であり、同グループの数十億ドル規模のサステナビリティ・リンク・ローンにおいて主幹事およびサステナビリティ・アドバイザーを務めた。「森林と金融」のデータによれば、MUFGは2020年から2025年7月までの間に、RGEグループのパルプ企業であるエイプリル社に2億2,200万米ドルを提供した。その中には、2024年のシンジゲートローンへの9,500万米ドルの拠出が含まれる。

MUFGは、顧客の守秘義務を理由に、本調査結果についてのコメントを控えた。

2021年、MUFGはパーム油部門に「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を採用し、その後2023年に紙パルプ部門にも同方針の適用範囲を拡大した。しかしMUFGは、これらの方針をどのように実施し、デューデリジェンスやリスク管理プロセスに統合しているかについて、ほとんど情報を開示していない。また、森林破壊ゼロのポートフォリオを達成するための明確な基準日(カットオフ日)や達成の期限も開示していない。このMUFGの現状は、森林破壊への対処に関して2024年に大手機関投資家グループが示した期待を大きく下回っている。

RGEグループが、インドネシア各地で森林破壊を引き起こし続けている「貸借対照表に計上されない事業活動」、いわゆる「シャドーカンパニー(影の企業)」の複雑なネットワークを運営している証拠は増え続けている2020年2023年および2024年の報告書を参照)。これらのシャドーカンパニーの最終受益者は、秘密管轄区(secrecy jurisdictions)に所在するオフショア企業によって隠されている。しかし、複数の取締役の重複や資源の共有、そして従業員の証言も含めると、シャドーカンパニーの事業活動は実質的にRGEグループに支配されていることを示している。RGEグループは、これらの事業活動への関与を否定している

MUFGがパルプ部門の融資先による森林破壊に対処するためには、複数のマルチステークホルダー型イニシアチブが推奨する様に、自社方針やデューデリジェンスを特定の事業や子会社に限定せずに、顧客の企業グループ全体に適用するべきである。このようなアプローチは、気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)、アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアチブ(AFi)、森林破壊フリー・デューデリジェンスのガイド、ならびに「森林と金融」による方針評価によって支持されている。

 

本調査のストーリーマップはこちら(英語ページ)

 

著者:レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。


https://japan.ran.org

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RGEグループからの回答原文(2025年12月11日)

Dear Rainforest Action Network,

This is in response to your letter dated 24 November, 2025 regarding wood supply received by Asia Symbol from its supplier PT. Balikpapan Chip Lestari (BCL), specifically the wood supply sourced by BCL from companies PT Sendawar Adhi Karya (SAK) and PT Bakayan Jaya Abadi (BJA). In your letter you stated that you had evidence that between 2020 and 2024 SAK and BJA had converted forest areas into plantations in their concessions in East Kalimantan.

We take all such allegations seriously. Asia Symbol investigated your claims and preliminary analysis of the concessions of the two suppliers to BCL indicates that land cover change did occur in the concessions of SAK and BJA between 2020 and 2024 and that this land cover change was likely non-compliant with our no-deforestation and sustainable sourcing policies and requirements.

As you have noted in your letter, this is not the first time that compliance by BCL and its suppliers with our policies has come into question. Asia Symbol had in 2023 requested BCL to suspend supply from its supplier PT. Industrial Forest Plantation (IFP) after claims that IFP had conducted non-compliant plantation establishment and BCL had implemented that suspension.

Based on the preliminary findings of our investigation regarding supply to BCL by SAK and BJA, and following the earlier issues with BCL and its then supplier IFP in 2023, Asia Symbol has taken the decision to immediately cease all supply from BCL. Asia Symbol and any other RGE companies will not source from BCL in the future.

Asia Symbol’s decision indicates the seriousness with which we take issues of non-compliance with our wood sourcing and sustainability policies and processes. In addition to immediately ceasing wood sourcing from BCL, Asia Symbol is continuing to review its wood supply due diligence and compliance systems to ensure they are rigorously applied to and by every supplier, and that their application is strengthened.

We ask that our response above is published in full in your upcoming report.

Sincerely,

Lucita Jasmin
Group Sustainability Director

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免責事項: この記事は “Royal Golden Eagle acknowledges new deforestation in its pulpwood supply chain” の和訳版です。参照、引用、正確な理解のためには英語の原文をご覧ください。