サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘プレスリリース’カテゴリーの記事一覧

プレスリリース:RAN最新調査 MUFG資金提供とRGEグループの森林破壊の実態が明らかに(2025/12/19)

〜インドネシアが大洪水に見舞われる中で発覚〜

写真:RGEグループの供給業者 PT. SAKの事業管理地で、熱帯林が皆伐されたばかりの区域を記録したドローン写真。© Auriga Nusantara, 2025

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は本日19日、新たな調査の結果を発表し(注1)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループとつながりのある供給業者によるインドネシアでの大規模熱帯林破壊の明白かつ継続した証拠があるにもかかわらず、同グループへの資金提供を続けていることを明らかにしました。RGEは、インドネシアの億万長者であるスカント・タノト氏が支配する紙パルプ複合企業です。RANは「このスキャンダルは、世界の銀行や大企業が森林破壊を終わらせると約束しながらも、いかに生態系の崩壊を加速させているかを強く示している」と主張しました。森林破壊は、11月末にインドネシア各地を襲った壊滅的な洪水の一因に挙げられています。 これによりインドネシア政府は、北スマトラ州にあるRGE傘下のパルプ企業であるトバ・パルプ・レスタリの操業停止を命じました

今回の調査は、衛星画像分析やインドネシア政府のデータ、サプライチェーン記録によって、中国にあるRGEグループ最大のパルプ工場に供給する木材チップ工場が、2020年から2024年にボルネオ島の東カリマンタン州で5,500ヘクタール以上の天然林を皆伐した植林地から木材を調達していたことを明らかにしました。この調査は、インドネシアのパルプ材セクターに関するサプライチェーン透明性プラットフォーム「Trase」の最新データを利用して実施されました。 調査結果は、RGEが2016年に大々的に発表した「サプライチェーンからの森林破壊停止」の誓約と矛盾し、MUFGの森林破壊をなくすという約束の信頼性についても深刻な懸念を提起しています。RGEはこれに対して、予備分析の結果、供給業者の事業許可地で「土地被覆の変化」が発生し、これは同社の方針に違反している可能性が高いと結論付けたと、回答しました。

PT. BJAの事業管理地における年ごとの森林破壊を示した衛星画像(2020〜2024年)

森林破壊スキャンダル、インドネシア地域社会が壊滅的な洪水に見舞われる中で発覚

調査による新事実は、インドネシアがボルネオ島(カリマンタン)からスマトラ島の各地でコミュニティを壊滅させた深刻な洪水の余波に直面する中で明らかになりました。災害対策政府機関や科学者は、この災害を上流の森林喪失と直接結びつけています。かつて降雨を緩和し、ランドスケープ(景観)を安定させていた原生林は産業用植林地に取って代わり、浸食を悪化させ、鉄砲水の速さと規模を増幅させています。洪水の後、インドネシア政府は監査を実施する間、RGEグループの別のパルプ企業であるトバ・パルプ・レスタリに対し操業停止を命じました。

RAN森林プログラムディレクターのロビン・アバベックは「記録された森林皆伐は些細なものではなく、RGEグループのグローバルな木材繊維供給量のかなりの部分を占めています。また、この様な事例が発覚したのは今回だけではありません。 まさにこれらの同じ企業は、数年前の森林皆伐の後、強化された監視下に置かれるはずでした。この事例は、RGEが掲げる『森林破壊へのゼロ・トレランス(不容認)』が偽りであることを明らかにしています。RGEの木質繊維需要の急増は、ボルネオに残る熱帯林への最大の脅威の一つであり続けています」と警鐘を鳴らしました。

FSC規則が証明:RGEの関連企業、森林皆伐を続けるシャドー事業とのつながり

今回の調査により、PT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)が、RGEの保有する中国の巨大パルプ工場「アジア・シンボル」に木材チップを独占供給していることが判明しました。 森林管理協議会(FSC)の改訂ガイドラインによると、PT. BCLはRGEの財務的支配下にあるとみなされます。これはPT. BCLとつながりのある森林破壊の継続が、FSC方針およびRGE自身の「森林破壊ゼロ」誓約に直接違反していることを意味します。

RGEはPT. BCLの所有を否定していますが、重複する企業構造や産業施設の共有、独占的な供給の流れは、RGEの「紙パルプ帝国」を拡張する「シャドーカンパニー(影の企業)」の形態を明らかにしています。この仕組みにより、タノト一族の複合企業は森林皆伐から利益を得ながら、自社の旗艦的な代表企業を破壊行為から隔てることを可能にしています。
RGEはRANの質問に対して、アジア・シンボルおよびRGEグループの他の下流パルプ企業はPT. BCLからの供給を全て停止すると回答しました。しかしながら、PT. BCL自体は依然としてRGEの企業グループの一部です。

アバベックは「RGEは、市場と金融へのアクセスを確保するために、FSC認証企業としての地位回復を急いでいます。そのために、過去における環境破壊の規模を査定しています。しかし同時に、同社の木材繊維需要はボルネオの熱帯林での新たな破壊を加速させ続けています」と続けました。

関連する最新情報として、本日(米国時間18日)、RANはFSCの設立メンバーを辞職することを発表しました。長年にわたる当認証機関への信頼性の失墜が理由です。

写真:PT. BCLで植林地からの丸太が荷下ろしされる様子、インドネシア東カリマンタン州バリクパパン、2024年11月

MUFGはRGEへの支援を継続、明白な証拠があるにもかかわらず

RGEの森林破壊に関する証拠が増える中、MUFGは2020年から2025年7月までに、RGEのパルプ部門であるエイプリル社(APRIL)に少なくとも2億2200万米ドルの融資を提供しました(注2)。これには2024年のシンジケートローンへの9,500万米ドルの出資も含まれます。 MUFGは持続可能なファイナンスを牽引すると表明する一方で、「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針の包括的な適用方法や、不透明な企業構造やシャドーカンパニーを持つ顧客へのデューデリジェンスの実施方法を示していません。
RANは調査結果公表の前に、新たな証拠をMUFGに提示しました。しかしMUFGは顧客の守秘義務を理由に、調査結果についてのコメントを控えました。

RAN 責任ある金融キャンペーナー(日本担当)の麻生里衣は「MUFGは、サステナビリティへの誓いを行動に移すべきです。MUFGは、自然資本と生物多様性を優先課題と認識しているとしながらも、RGEグループなどの顧客への資金提供は全く逆の傾向を示しています。責任ある金融機関を目指すのであれば、MUFGは影に隠れて熱帯林を破壊する企業にではなく、最前線のコミュニティの声に耳を傾けるべきです」と訴えました。

即時に求められる行動

レインフォレスト・アクション・ネットワークは以下を要求します:

1. RGEグループ全体の森林破壊が停止・是正されない限り、FSCとの関係修復停止の措置は延長されること。

2. FSCのガイドラインに従い、PT. バリクパパン・チップ・レスタリ、タラカン島のパルプ工場(PT. フェニックス・リソーシズ・インターナショナル、注3、その他のRGE関連のシャドーカンパニーを明確に企業グループに含めること。

3. RGEグループへのMUFGの新規の資金提供を即時に停止すること。

4. グループ全体で森林破壊のない事業活動が確認されない限り、グローバル消費財企業によるRGEからの調達を停止すること。

アバベックは「RGEがボルネオのあらゆる場所で森林破壊を積極的に進めている傍ら、MUFGは資金を提供しています。地域社会は、土砂崩れや壊滅的な洪水を含む被害に必然的に見舞われることになります。タノト一族のビジネス帝国と、それを可能にしている銀行には責任があります」と強調しました。

注1)RAN「RGEグループ、パルプ材サプライチェーンにおける新たな森林破壊を認める」
https://japan.ran.org/?p=2584

注2)「森林と金融」データより
https://forestsandfinance.org/ja/

注3)参考
RAN「ボルネオとパプアで森林破壊の新たな動き〜背後にひしめく悪しきプレイヤーたち〜」、2023年5月22日
https://japan.ran.org/?p=2276

*本プレスリリースは、英文 ”New Investigation Exposes MUFG’s Financing of Royal Golden Eagle’s Deforestation as Indonesia Reels from Deadly Floods” の和訳版です。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先

レインフォレスト・アクション・ネットワーク

東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204、TEL 03-6721-0441 FAX:03-6721-0959

責任ある金融キャンペーナー(日本担当)麻生里衣 
Email: rie.aso@ran.org

日本チームマネジャー:関本幸
Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース「森林&人権方針ランキング2025」発表 〜合格点はユニリーバのみ 森林破壊ゼロ実現からほど遠く〜(2025/12/5)

大手消費財企業10社の森林及び人権方針を評価
日清食品が最下位から脱出、花王に続きサプライチェーンにおける人権擁護者への暴力を容認しないと公約


環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日5日(米国時間3日)、「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2025」を発表し(注1)、グローバル消費財企業は取り組みの進捗が遅く、サプライチェーン(供給網)から森林破壊と人権侵害をなくすという約束を果たせていないと指摘しました。

本ランキングは、熱帯林地域で森林破壊と人権侵害のリスクが高い産品に関与している大手グローバル消費財企業10社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価・分析する年次報告です。各社のサプライチェーンにおける森林破壊と人権侵害を阻止するための取り組みを詳細な基準で比較評価したところ、合格点といえる C 評価を得たのはユニリーバのみでした。日本企業は花王が D+(同点3位)、日清食品ホールディングスは人権擁護者への暴力や強迫行為を容認しないことを花王に続いて公約し、 D−(同点7位)を得て最下位グループからランクを上げました。最下位はモンデリーズでした。

評価方法は、各社の方針と実施について、「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針、人権保護、サプライチェーンの透明性などの12項目を24点満点で評価しています。合計得点に合わせてA(21〜24点)、B(17〜20点)、C(12〜16点)、D(6〜11点)、不可(0〜5点)のランクを付けています。パーム油、紙パルプ、大豆、牛肉、カカオ、木材製品など、森林を破壊するリスクのある産品(森林リスク産品)セクターにおける傾向や動向を分析しています。10社のランキングの詳細は以下の通りです。


*Y=ありor 全て(2点)、P=一部(1点)、N=なし(0点)
✦ 「日清食品グループ持続可能な調達方針」で「NDPE を支持」と 述べているが、NDPE誓約の中核要素の遵守を供給業者に明示的に求める方針強化が必要である。

「森林&人権方針ランキング2025」調査概要&結果

▪️調査対象企業:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ユニリーバ
▪️調査期間:2025年10月〜11月
▪️調査方法:各社の環境及び人権に関する方針を調査・分析(ウェブサイトなどで公開されている最新版)、各社へのヒアリング
▪️主な森林・人権方針の評価項目(全12項目、各2点)
*2点:方針あり/ 全体に採用、1点:一部に採用、0点:方針・計画なし

  • 森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針・適用範囲:NDPE方針はパーム油や紙パルプなど森林リスク産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準である(注3)。個別産品だけではなく森林リスク産品全般への適用、供給業者の企業グループ全体への適用を重視している
  • 人権擁護者への暴力や脅迫へのゼロトレランス(不容認)方針の有無(注4)
  • 自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注5)
  • 苦情処理システム:グリーバンスメカニズムの設置、苦情処理記録の開示など
  • サプライチェーンの透明性:パーム油搾油工場リストの公開、生産地までのフルトレーサビリティ達成の取り組み(EUDR要件、注6)含む
  • 森林フットプリントの開示(注7)、など

全体の評価・傾向

「リーダー企業」(C+評価)

  • ユニリーバが再びトップを維持し、合格点といえるC+評価を獲得しました。NDPE方針の整合性、サプライチェーンの透明性、苦情処理の開示において最も明確な目標を設定し続けています。22年に公表された人権擁護者の保護方針は他社にとって先例となっています。先住民族の権利では、大手企業として初めてFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意)の履行について独立検証するプロセスの試験導入を約束しました。

「中位グループ上位企業」(D+、D評価)

  • コルゲート・パーモリーブ、花王、ネスレ、ペプシコ、マースの5社はNDPE方針の適用範囲でばらつきがあり、上位2社しか2点を得ていません。人権擁護者への暴力に対するゼロトレランスは全社が約束していますが、リーダー企業になるには暴力などを防止する手順を策定し公開する必要があります。

「中位グループ企業」(D−評価)

  • P&G、フェレロ、日清食品の3社は、NDPE方針の実施や適用範囲が限定的であることから低評価となりました。日清食品は人権擁護者への暴力や威嚇へのゼロトレランスを初めて公約しました。

「不可企業」(F評価)

  • オレオクッキーで有名なモンデリーズは、ほぼ全ての項目で低い評価となりました。同社は人権擁護者保護への明確な公約を発表していなく、苦情追跡システムも公開していません。

▪️日本企業の評価

総合点は花王がD+(10点)、日清食品はD−(6点)で、両社とも昨年から点数を上げました。

  • 「NDPE方針」:両社とも同方針を既に採用し、2点の評価を得ています。
  • 「NDPE適用の範囲」:花王が森林リスク産品全般の供給業者とその企業グループ全体も適用対象としていることから2点を得ています。日清食品は今年も点数獲得に至りませんでした。今年、サプライヤー行動規範を制定してNDPE支持を供給業者に求め、そのグループ企業全体にも適用を要望しました。しかしNDPE方針の中核要素が明記されませんでした。また、グループ調達方針の環境分野にNDPE支持を記載していますが、NDPEの中核要素が明記されているのはパーム油事業のみで森林リスク産品全般ではありませんでした。また供給業者にNDPEの採用を義務化していなく、供給業者の企業グループ全体も適用範囲に含んでいません。
  • 「暴力や脅迫へのゼロトレランス」:両社ともサプライチェーンにおける人権擁護者への暴力の不容認を公約していることから1点を獲得しました。しかしユニリーバが発表しているような、人権擁護者の保護方針実施の手順を定めたガイドラインは公表していません。
  • 「森林フットプリントの開示」:花王昨年5月にインドネシア・リアウ州の分析(英語)を公表しましたが、地域が限定的であることから1点にとどまりました。日清食品は実施を表明していますが、まだ開示がないため点数の獲得はありませんでした。
  • 「苦情処理システム」:日清食品は2023年から「苦情処理リスト」を公開し、違法パーム油生産農園との取引停止や対応状況を公表しました。今年3月にも情報を更新し1点を得ていますが、方針違反への対応手順が公表されていません。花王は小規模農家生産者を対象とした苦情処理メカニズムはありますが、大規模農園・植林企業などを対象とした対応のリストや記録は依然として開示がなく得点はありませんでした。

人権尊重と新規制

人権擁護者(Human Rights Dedenders: HRDs)の保護は、今年の評価でも重要な項目の一つです。2015年から2024年、ビジネスと人権リソースセンター(注8)は147カ国で6,400件以上の攻撃(そのうち1,000件以上は殺害)を記録しました。一部の消費財企業は人権擁護者保護の実施に向けた初期段階の措置を講じていますが、危機の規模を考えると企業の対応はいまだ断片的で一貫性に欠けています。

欧州連合の森林破壊防止法(EUDR)の施行を前に、多くの消費財企業は規制の遵守を保証する約束を投資家にしています。しかし各社は「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)のような効果が低い認証制度や、これまで問題となってきた供給業者からの自己申告制度にいまも頼っています。こうした状況で、何社かの大手企業は森林破壊や人権侵害にさらされるリスクを依然として抱えています。

総評・コメント

RANフォレスト・キャンペーン・ディレクターのダニエル・カリーヨは「新たな規制に備え、大手消費財企業は森林破壊ゼロのサプライチェーン実現を約束しています。しかし森林が破壊される前に、森に住む人々は暴力や脅迫を受けたり、土地を奪われたりしています。世界最大の消費財企業は自社製品に森林破壊や人権侵害が一切含まれていないことを証明できなければ、その公約は意味がありません。約束が森林を守るのではなく、行動が森林を守るのです」と強調しました。

RAN日本シニア・アドバイザーで、日本企業と対話を続けてきた川上豊幸は「花王は様々な取り組みを行い、グローバルのトップ企業と肩を並べました。中でもNDPE方針の遵守徹底を供給業者とアカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)で定義されるその企業グループ全体に求めている点は、国内他社の見本となります。パーム油サプライチェーンではNDPE実施調査を行ない、結果も公開しています。しかし、サプライチェーンで起こる森林破壊や人権侵害についての対応を説明する苦情処理リストを開示していません。消費者や地域コミュニティ、投資家に向けて、高い透明性を示していくことが求められます」と主張しました。

続けて「日清食品は得点を上げて、最下位グループからようやく脱出しました。理由の一つに人権擁護者に対する暴力へのゼロトレランスを初めて公約した点が挙げられます。5月にはサプライヤー行動規範を制定して供給業者全体とそのグループ企業に適用した点は評価できますが、NDPEへの「支持」表明に止まり、炭素貯留力の高い森林や保護価値の高い地域の保全といった中核的な要素が明記されないままとなっています。同方針の供給業者への義務化でも、供給業者の独立監査の要求においても改善が見られませんでした。そして持続可能なパーム油のみを2030年までに調達するという目標年も前倒しされませんでした」と指摘しました。

大手消費財企業は、世界で続く森林破壊や人権侵害との関与が継続しています。RANは、消費財企業が森林伐採や土地の権利侵害の阻止に実行力を発揮し、環境保護活動家や人権擁護者が直面する暴力や脅威を食い止める一助になるよう、これからも企業に働きかけていきます。

脚注

注1)「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行に実際の行動を起こすよう要求しています:www.ran.org/kfs-scorecard-jp/
ランキング評価方法論:
https://japan.ran.org/wp-content/uploads/2025/12/RAN_KFS_Scorecard_Methodology_2025_JP.pdf

注2)消費財企業10社:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
*10社全社が全容を報告している唯一の産品であるパーム油を例にとると、10社合計で約230万トンのパーム油と、約140万トンのパーム核油およびその派生物を購入している(2022年)。パーム油世界市場の約3%、パーム核油世界市場の約17%に相当する(2023年版報告書より)。

注3)「NDPE」はNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い森林の保護、保護価値の高い地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止などの中核要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。
*参考:「『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針とは?」ブリーフィングペーパー

注4)「ゼロトレランス・イニシアティブ」(ZTI)ウェブサイトを参照のこと。
ZTI は先住民族組織およびコミュニティ団体が主導する連合体で、人権擁護者の保護に関する企業のベストプラクティスを定義している。

注5)「FPIC(エフピック)」とは Free, Prior and Informed Consent の略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注6)EUの「森林破壊フリー製品に関する規則」(EUDR:通称「森林破壊防止法」):EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注7)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注8)ビジネスと人権リソースセンター、”Defending rights and realising just economies: Human rights defenders and business (2015-2024)
標的とされた人権擁護者の大半は、土地や水、環境を守るために活動し、生態系や生計、文化遺産を脅かす活動に反対していた。特に鉱業やアグリビジネス、化石燃料採掘などの環境や社会に大きな影響を及ぼすセクターで脅威に直面することが多い。東南アジアのパーム油および林業のサプライチェーンは最も危険な状況にあり、土地収奪や違法伐採、プランテーション拡大に異議を唱える人権擁護者が威嚇や暴力、犯罪化行為によって被害を受けてきた。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本でも活動を続けています。
http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204
日本チームマネジャー:関本幸 Email: yuki.sekimoto@ran.org
日本シニア・アドバイザー川上豊幸 Email: toyo@ran.org

共同プレスリリース:LNGの急拡大、新ウェブサイト「ExitLNG」で明らかに(2025/12/2)

リクレイム・ファイナンス、Andy Gheorghiu Consulting、バンクトラック、CEED、Food and Water Watch、FoEフランス、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、ReCommon、SFOC、StandEarth、ウルゲバルト(Urgewald)

本日2日、新たなマッピング分析プロジェクトが発表され、世界は空前のLNG(液化天然ガス)開発ブームに直面し、世界全体で279件の新規LNG事業が計画されていることが明らかになりました(注1)。世界の銀行の支援を受けたこの動きはガスの拡大を引き起こし、温室効果ガス排出量を数十億トンも増加させることになり、世界的な気候目標達成の望みを打ち砕きます。さらに地域コミュニティの健康と福祉を脅かし、生物多様性にも影響を与えます。新ウェブサイト「ExitLNG(エグジットエルエヌジー)」の設立団体は、関与する銀行に対して支援撤回を強く求めています。

「ExitLNG」ウェブサイトで公開された地図は、279件の新規LNG事業の建設計画を特定し、LNG拡大の影響を受ける国々の範囲を明らかにしています(注2)。本ウェブサイトは、関連企業や融資銀行、コミュニティと生物多様性へのリスクも示しています。

今回の調査分析は、米国がLNGの輸出ブームを牽引していることと、計画されている輸出能力増加の40%に相当する38事業を進めていることも明らかにしています。この要因の一つとして、トランプ米大統領の化石燃料政策が挙げられます。次いで多いのがロシア(同20%、18事業)、カタール(同8%、3事業)です。一方、LNG輸入施設事業が最も多く計画されているのはアジア太平洋地域で、中でも中国が最多で(計画されている輸入能力増加の34%に相当する49事業)、インド(同8%、11事業)、ベトナム(同7%、14事業)が続いています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年には新規LNG輸出基地の最終投資決定(FID)が急増し、予想されるガス供給量が増加しました(注3)。これによって新規ガス田開発が促進され(注4)、地球の平均気温上昇を1.5度に抑えるという国際的な目標の達成を脅かすことになります。

全体的に、新規LNG輸出施設は二酸化炭素換算(CO2e)で10ギガトン以上の温室効果ガスを2030年までに排出すると推定されています。これは米国と欧州連合(EU)の年間排出量の合計に匹敵する規模です(注5)。

リクレイム・ファイナンスの石油・ガスキャンペーナー Justine Duclos-Gonda は「世界中で起きている建設ラッシュは、気候と地域コミュニティに被害を及ぼす災害へと私たちを導き、その代償は私たち全員が払うことになります。健康と生計を脅かすこれらの事業に反対する声がますます高まっているのは当然のことです。しかし、こうした懸念にもかかわらず、銀行は社会的・気候的コストを顧みずに、LNG拡大に数十億ドルを注ぎ続けています」と述べています。

最大のLNG輸出基地開発企業は、カタールエナジーと米国ベンチャー・グローバルです(計画中のLNG輸出基地のCO2e排出量の規模で計算)。両社はそれぞれ、2030年までに合計12億トン以上のCO2e排出をもたらすLNG輸出基地事業を計画しています。フランスの石油メジャーであるトタルエナジーズは5位で、2030年までに合計3億トン以上のCO2e排出が見込まれるLNG輸出基地事業を計画しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) LNGキャンペーンマネージャーのルース・ブリーチは「コミュニティは気候変動の影響と壊滅的な経済被害に苦しんでいます。液化ガスは事態を悪化させています。世界は化石燃料の拡大を一切必要としていません。新たなシェールガス田も、パイプラインも、LNGタンカーも、LNG基地も一切不要です。それにもかかわらず、米国政府、化石燃料企業、銀行、保険会社は世界中でガスを推進し、私たちの生涯で最大の化石燃料インフラ建設を引き起こしています」と強調しました。

こうした影響にもかかわらず、世界の銀行はLNG開発企業への資金支援を継続し、2021年から2024年にかけてLNG拡大に1,740億米ドルを投入しています。この資金の4分の3はわずか5カ国(米国、日本、中国、カナダ、フランス)から提供され、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、JPモルガン・チェースの3行がそれぞれ100億米ドル以上を支援しています。

サンタンデール、ING、ソシエテ・ジェネラル、クレディ・アグリコル、グループBPCEなどの欧州系銀行も、LNG拡大の主要な資金提供者として特定されています。

「ExitLNG」を立ち上げた以下の団体は銀行に対し、LNGの影響を認識し、新規LNG事業および新規LNG施設を開発する企業に対する全ての金融サービスを終了させるための包括的な方針を採用するよう強く求めています。

連絡先

Justine Duclos Gonda
Exit Oil & GasCampaigner
justine@reclaimfinance.org
+33781512959

Helen Burley
International press relations
helen@reclaimfinance.org
+447703731923

注1) https://ExitLNG.org
「ExitLNG」は、リクレイム・ファイナンス、 Andy Gheorghiu Consulting、バンクトラック、CEED、 Food and Water Watch、 FoEフランス、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、 ReCommon、 SFOC、 StandEarth、ウルゲバルト(Urgewald)が共同で立ち上げた新ウェブサイト。

注2) LNG事業とは、LNG基地の輸出入能力を大幅に増加させる大規模インフラを指している。この定義には、新規基地、および既存基地の特定フェーズやトレイン(天然ガスを冷却して液化する設備)が含まれる。各事業には、それぞれ異なる利害関係者、輸出入能力、スケジュール、資金調達方法が存在する可能性がある。LNG事業は「脱石油・ガスリスト(Global Oil & Gas Exit List: GOGEL)2024」のデータに基づき特定されている。

注3) 国際エネルギー機関(IEA)、『Gas 2025』、2025年10月

注4) リクレイム・ファイナンスは、LNG施設に直接関連する46件の短期のガス拡大事業(すなわち、現在はフィールド評価中または開発中のガス事業)を特定した。これらの事業は、石油換算で510億バレル以上のガス資源量を有する。

注5) 米国環境保護庁(EPA)によると、2022年の米国排出量は約6.34Gt CO₂eであった。欧州環境庁によると、2023年のEUの温室効果ガス排出量(土地利用・林業を除く)は約3.1Gt CO₂eであった。

(英語プレスリリース “New mapping project reveals surge in LNG expansion”)

プレスリリース:RAN労働組合、RANとの労働協約を初めて締結(2025/11/21)

(米国サンフランシスコ) レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の労働者は、「RANアライアンス・フォー・ワーカーズ・ライツ」(Rainforest Action Network Alliance for Workers’ Rights:RAWR)の組合員とRANとの間の初の労働組合協約を全会一致で承認しました。労組と団体との間の交渉プロセスによって、従業員に大きな保護と改善をもたらす契約が成立しました。具体的には以下の変更が含まれますーー介護者支援、給与の下限および昇給、対立解決、柔軟な働き方を実現するための解決策など。

2022年8月12日、RANとRAWRは、アメリカ通信労働組合(Communications Workers of America:CWA)の協力を得て、スタッフ主導による労働組合結成が自主的に承認されたことを発表しました。それ以来、協働的かつ誠実な交渉が続けられてきました。

RAN気候変動&エネルギープログラムのキャンペーンマネージャーで、交渉期間を通じてRAWR交渉委員を務めたルース・ブリーチは「全会一致で協約を承認し、RANのスタッフは次の章に向けて団結しています。この労働協約は、RAN労働者の地域を超える連帯と、私たちが自らの価値観に基づき行動するという共通のコミットメントを示す重要なベンチマークです。RANの強みは私たちのネットワークにあります。元スタッフ、CWA、そして他団体からの助言が、この協約を勝ち取る上で極めて重要でした」と述べました。

RAN事務局長ジンジャー・キャサディは、「RANでは、労働者の権利を強く支持しており、RANにおける初めての団体交渉協約をとても誇りに思います。この協約はRANの職員に強固な保護を提供します。また、RANが世界各地で展開するキャンペーンを通じて森林保全や気候保護、人権擁護に取り組む献身的な活動家たちに向けて、RANが前向きで支援的な場であり続けることを確かなものにします」と述べました。

今回の労組結成による新たな成功は、労働組合の衰退が国にとって悪影響だったと考える60%の米国成人にとっても(ピュー・リサーチ・センター調査)歓迎されるニュースとなるでしょう。RANは、米国における進歩的な運動の歴史的な礎である労働者の組織運動を長年支持してきました。RANのコアバリューは、公平性と公正さへのコミットメントであり、コミュニティの協力者・団体、同盟団体、同僚らが常に誠実さや敬意、尊厳をもって扱われることを求めています。

当事者間の協約が成立したことは、RANが、尊敬と誠実さ、人々と地球のためのたたかい、ピープルパワー(人々の力)、レイシャルジャスティス(人種的正義)、ソーシャルジャスティス(社会的正義)といった自らの価値観に全面的にコミットしていることを示しています。特筆すべきは、交渉過程で各条項が暫定合意されるたびに、RANが協約全体の承認を待つことなく、可能な限りすぐにその条項の実施を承諾した点です。

CWA9415書記ジェイソン・モンゴメリーは「RANとそのスタッフは、公正な賃金、福利厚生、労働条件の改善を確保する画期的な労働協約を締結しました。この合意は、グローバルなキャンペーンだけでなく、自らの職場においても正義と公正さに対するRANの深いコミットメントを反映しています。組織内外で自らの価値観を体現することで、RANはあらゆる非営利団体にとって力強い模範を示しています」と述べました。

 

CWAについて

アメリカ通信労働組合(Communications Workers of America:CWA)は、電気通信、カスタマーサービス、メディア、航空、医療、公共サービスと教育、製造、テクノロジーなどの分野で働く人々を代表しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワークについて

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、最前線の人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンにより企業の力や構造的不正に挑むことで、森林を保全し、気候を保護し、人権を守っています。

 

本件に関するお問い合わせ先

RAWRメディア担当:
ショーナ・アンブローズ(Shawna Ambrose)
Email: shawna@ran.org
TEL: 628. 444. 2211

(英語声明 “RAN Alliance for Workers’ Rights Secures First Contract at Rainforest Action Network”

 

共同プレスリリース:気候変動に関する株主提案決議結果は 企業と投資家のさらなる取り組みの必要性示す(2025/7/4)

Market Forces
FoE Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
気候ネットワーク

日本国内外の環境団体および個人は今年4月、日本のメガバンク3行(MUFG、SMBC、みずほ)と総合商社(三井物産、三菱商事、住友商事)、中部電力に対して気候変動とガバナンス(監査)に関する株主提案を提出しました。これらの企業は1.5℃目標達成のためネットゼロ目標を掲げているにもかかわらず、その事業内容は1.5℃目標と整合していません。化石燃料への投融資および燃料調達事業への各社による関与が続いている現状を踏まえると、当該企業が極めて重大な気候リスクを抱え続けていることは明らかであり、今後も断固とした気候変動リスクへの実質的な取り組みが必要です。

これまで明らかになっている今年の決議結果からは、多くの投資家が該当企業に対して気候リスクに対する十分な説明責任を求めているとは言えず、私たちは投資家による気候変動リスクへの認識状況に対しても懸念を強めています。金融機関には昨年同様の株主提案が提出されていますが、みずほでは、実質的な改善がみられない中、賛同率が昨年の半分程度になっています。

当該企業に提出された議案と議決結果(一部速報値)は以下の通りです。一部の提案には10%を超える支持が集まるなど、一定の賛同が示されました。しかし、支持率が10%未満に留まる議案もあり、資産運用会社の多くが気候リスクを重視しているかどうか、疑問が残る結果となりました。株主提案は(全て)否決されましたが、提案対象企業に対しては気候変動リスク対応の強化を、機関投資家に対してはスチュワードシップ責任を体現することを求める働きかけを継続して行っていきます。

株主提案の内容と議決権行使結果

賛同率低下の一方で、当該企業の適切なガバナンスと実効性のある取締役会を求めている機関投資家がいることも明らかです。実際、主要な議決権行使助言会社として知られるISSは今年、我々の株主提案を受けた企業のうち1社の7人の取締役候補に反対票を投じるよう勧告しました。さらには、企業による気候リスク管理の実施状況を強力に監視する必要性に賛同し、ガバナンス強化を求める投資家もいます。1兆5,020億米ドル規模の資産を運用する世界有数の投資家である英国最大の資産運用会社のリーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)は三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャル・グループ、中部電力に対して我々が提出した株主提案を支持する意向を事前に表明していました。

気候変動によるリスクを適切に管理できなければ、長期的には企業価値にマイナスの影響が出る可能性があります。三菱商事、三井物産、住友商事の三大総合商社は2.6℃から3.6°Cの壊滅的な気温上昇と整合する事業計画を掲げているという試算(MSCIのデータ準拠)もあり、これはパリ協定で合意された世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える目標にも矛盾しています。さらに日本の3メガバンクも、この様な1.5°C目標と整合しない化石燃料の新規・拡張事業の計画を持つ事業者への資金提供を続けています。『化石燃料ファイナンス報告書 2025』によると、2024年、みずほは化石燃料拡大事業者への資金提供額を前年比で16%増加させ、MUFGも3.6%増加させました。

今後も、我々は日本の大手企業による脱炭素への変化と行動を引き続き後押しします。現状、気候変動対応は不十分でですが、過去5年間の働きかけによって、地域社会の懸念を受けたエンゲージメント活動の結果、日本の大手銀行や商社がアジアにおける主要な化石燃料プロジェクトへの関与を取りやめるなど、リスク管理を強化している事例もみられます。例えば、我々は三井物産が2023年10月にバングラデシュ・コックスバザールでのCPGCBL LNG火力発電所プロジェクトから撤退したことを確認しており、これによりプロジェクトのライフサイクル全体で4,400万トンのCO₂排出が回避される見込みです。

よって、機関投資家へは一層の働きかけが必要だと考えています。Market Forcesが日本の主要な機関投資家を対象に行った調査によると、主要な機関投資家5社傘下の資産運用会社は、日本の化石燃料拡大企業8社の取締役選任議案に99%の確率で賛成している結果が明らかとなり、気候変動リスクを適切に管理するためのスチュワードシップが効果的に行われていないことを示唆しています。今年の議決権行使結果を確認しながら、機関投資家に対しては、気候変動対策やリスク管理が不十分である企業に対し、スチュワードシップ責任を果たし、パリ協定に整合した移行計画の策定と実施のための、さらなる効果的なエンゲージメントと自社の気候コミットメントに沿った適切な議決権行使を行うように求めていきたいと考えています。

【提案主コメント】

総合商社・中部電力

「株主提案への支持は限定的だったものの、提案先企業へのメッセージは明確です。日本の商社と中部電力は重大な気候関連リスクに直面しており、投資家はこれに対して断固たる行動を期待しています。私たちは依然として、信頼できる脱炭素化ビジネス戦略の欠如と、事業運営における人権への配慮の不十分さについて、強い懸念を抱いています。私たちは、これからも、企業が効果的なリスク管理と透明性の高いガバナンスメカニズムを備え、信頼できる脱炭素施策の実行と、人権侵害への誠実な行うよう求めていきます。今後も建設的な対話を通じて、これらの企業がグローバルに化石燃料からの移行を進めるよう、協力関係を強化していきます。」
 布川健太郎 | Market Forces

「中部電力は株主総会で石炭火力を「ベースロード電源」と称し、エネルギー安定供給の必要性を繰り返しました。電力の安定供給と脱炭素を両立するために、あらゆるエネルギーを追求すると述べています。しかし、それでは将来世代に大きなツケを残すことになります。排出量の割合が大きな電力会社だからこそ、実現可能なロードマップの策定と化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速するための対策強化を求めます。」 
鈴木康子|気候ネットワーク

「三井物産は非常に大きな気候変動リスクに晒されていることから、気候変動対策のために残された時間の中で、効果的かつ実行可能なリスク対策を講じることが重要です。情報開示の充実はその第一歩です。特に、ネットゼロを掲げながらも化石燃料分野への依存度が高いという現在の戦略を踏まえると、今回の要請は妥当なものと考えています。引き続き、気候変動対策の強化に向けてエンゲージメントを継続していきたいと考えています。」 
深草亜悠美 | FoE Japan

メバガンク3行

「昨年、投資家から『顧客の移行計画の評価』に関する株主提案に対し、強い支持があったにもかかわらず、3メガバンクは過去1年間有意義な進展を見せませんでした。今年、同様の株主提案への支持が低下したことは、多くの投資家がスチュワードシップ責任を果たさず、投資先のメガバンクにおける気候変動リスク管理を十分に担保できていない状況を示しています。

脱炭素に向けて、科学的根拠に基づいた意義深い行動をとり続けるのか、企業と投資家双方の本気度が改めて問われています。行動をとらないことによる経済と人々への深刻な損害は到底容認できるものではありません。いかなる遅延の猶予はなく、石炭、石油、ガスから再生可能エネルギーへの移行を加速するための対策強化が求められます。」
渡辺 瑛莉 | Market Forces

「今回、新たに監査役についての責任を問う提案を行いました。みずほとMUFGは現地の先住民族が反対する米国テキサス州リオ・グランデLNG事業に資金提供を行っており、自らが採択する国際基準である『赤道原則』に違反しています。また、MUFGは大規模な熱帯林火災に対してインドネシア政府から損害賠償請求を受けているアブラヤシ農園企業を管理下に置く企業にも資金提供を行っています。これらはメガバンクにおけるガバナンスの問題を象徴する一部の例に過ぎません。自社グループにおけるガバナンスの問題について監査が認識していない現在の状態は、内部監査体制が機能していないことの表れです。3メガバンクにおけるリスク管理体制の課題は、2050年ネットゼロという目標を掲げているにもかかわらず、座礁資産リスクのある化石燃料事業を拡大する計画をもつ企業に投融資を続けていることにも表れています。さらに、この様な構造的なガバナンスの問題を見抜くことができていない機関投資家についても懸念があります。機関投資家には、長期的な視点に立った、真に責任ある投資を行うことを求めます」
川上豊幸|レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

「今回、新たに監査役についての責任を問う提案を行いました。SMBCとみずほで、監査委員会の財務リスク監査に係る情報開示を求める提案の方が、もう一方より賛成数がわずかながら高く、MUFGの投票数は2つの提案ともに他の2行よりも少ないものでした。それぞれの結果に違いはあれど、新たな動きを求めている機関投資家が一定数いることを示しています。日本のメガバンク3行は世界の化石燃料関連企業への資金提供を続けており、その金額は世界でも上位にランクしています。国民の預貯金を運用する銀行が化石燃料関連事業に資金を提供し続け、国民の将来の命の安全を脅かす、あるいは快適な環境で生活する権利を損なうことに加担していることに我々株主はもっと声をあげるべきではないでしょうか。そして機関投資家には、より長期的な視点に立ち、未来に向けて責任ある投資を行うことを求めます。」

鈴木康子|気候ネットワーク


お問合せ先

マーケット・フォース(Market Forces)
Antony Balmain E-mail: contact[@]marketforces.org.au

FoE Japan
深草亜悠美 E-mail: fukakusa[@]foejapan.org

気候ネットワーク 東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

プレスリリース:MUFG株主総会でアピール「気候変動に投融資しないで」(2025/6/27)

〜化石燃料支援継続とガバナンス問題を指摘、気候変動株主提案は否決〜

「MUFGさん、気候変動に投融資しないで」超小型電気自動車による移動広告でアピール ©︎ RAN / Masaya Noda

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日27日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)株主総会に参加し、気候変動を加速させる化石燃料と森林破壊への支援停止を求め会場前でアピールしました。今年4月、RANを含む環境NGO3団体は、MUFGを含むメガバンク3行に気候変動対策の強化を求める株主提案を提出しました(注1)。総会で提案は否決されるも、人権デューデリジェンス(相当の注意による適正評価)で問題が改善しない事業には資金提供をしないことを、RANの質問によって改めて確認できました。また、気候変動など重大なリスクに対応するガバナンス体制が不十分で、問題ある化石燃料企業や森林破壊企業への資金提供が継続している点も指摘しました。

RANは、集まった環境NGOとともに、会場のグランドプリンスホテル新高輪前で「MUFGさん、気候変動に投融資しないで」などのバナーを掲げてスピーチを行い、株主に関連資料を配布してアピール行動を行いました。同時に、会場周辺で超小型電気自動車による移動広告を用い(写真、注2)、液化天然ガス(LNG)事業による環境破壊や先住民族の権利侵害などの悪影響を伝えました。広告には、昨年10月に来日した、米国テキサス州「リオ・グランデLNG」事業に反対する地域住民の写真を使用。住民は来日中にMUFG担当者と面会し、同事業への支援停止を求めていました。RAN は総会に先立ち、オンライン署名「MUFGにリオ・グランデLNGへの資金提供停止を伝えよう!」(英語)を展開し、現在は1万3,000筆を超える署名が集まっています(注3)

「MUFGさん、気候変動に投融資しないで、米国リオ・グランデLNG事業に投資しないで」環境NGOによるアピール©︎ RAN / Masaya Noda

今年4月、マーケット・フォース、気候ネットワーク、RAN(個人株主)の環境NGO3団体はメガバンク3行に気候変動対策と監査体制に関する情報開示を求める株主提案を提出しました。本日のMUFG総会では、第3号議案(監査委員会の財務リスク監査に係る情報開示)、第4号議案(顧客の気候変動移行計画の評価に関する情報開示)とも否決されました。一方、RANからの「先住民族の同意を得ずに進めている化石燃料事業(注4)への関与は人権問題であるが、どのような是正措置や救済措置を取ることが可能か」という質問に対し、MUFGの横幕勝範執行役常務 グループCROは「人権面で問題のある事業についてデューデリジェンスを実施しても改善しない場合には資金提供を行わない方針である」との回答がありました。

RAN日本シニアアドバイザーの川上豊幸は、第3号、4号議案について総会中に説明しました。総会での決議結果を受けて私たちの株主提案が否決されても、MUFGのガバナンス体制が弱く、監督機能が不十分であることには変わりありません。株主総会の場で、デューデリジェンスを実施しても改善しない場合には資金提供をしないと再確認したのは意味があります。しかし、すでに提供したファイナンスに関する人権侵害への是正措置や救済措置の対応についての明確な返答はありませんでした。私たちは気候変動対策や森林減少、人権面でリスクのある事業や企業への資金提供を事前に食い止めるとともに、すでに引き起こされた問題への対応も可能となるよう、MUFGとのエンゲージメントを継続していきます」と強調しました。

MUFG株主総会の会場前を走行する超小型電気自動車による移動広告 ©︎ RAN / Masaya Noda

RANなどが今月発表した「化石燃料ファイナンス報告書2025」(注5)によると、2021年から2024年のMUFGによる化石燃料産業への融資・引受額は世界4位で、2024年単年では6位でした 。国際エネルギー機関(IEA)の調査報告書では、2021年以降、全ての化石燃料拡大事業はパリ協定の1.5度目標に整合しないという分析結果が出ています。しかしその後も、MUFGは化石燃料の拡大計画を有する企業への資金提供で上位に名を連ねています。新規LNG事業への巨額の投融資など、パリ協定の1.5度目標に整合しないプロジェクトへの資金提供も継続しています。その一つが米国テキサス州の「リオ・グランデLNG事業」です。

川上は「私たちはリオ・グランデLNG事業について、MUFGが利用している苦情処理プラットフォームのJaCER(ビジネスと人権対話救済機構)に人権侵害事例として昨年9月に申し立てを行いました。しかしその後も状況に改善はみられず、事業者のネクスト・ディケイドは、計画地周辺に聖地があるカリゾ・コメクルド族と協議をしていません。先住民族には、事前に十分な情報が提供され、彼らの自由意志に基づいて開発事業に同意するかどうかを決める権利が国際的に認められています。融資先の事業者がこのプロセスを怠っていることは、MUFGが採択している『赤道原則』にも明らかに違反しています。このように、環境や社会面で問題ある事業や顧客企業への資金提供を事前に防ぐことができていなく、さらに、問題を指摘されても継続している現状は、方針違反に当たる業務執行上の問題を執行役員、監査役員が共に認識できていなく、本来のガバナンス機能を果たしていないと考えられます」と問題を提起しました。

総会に参加する株主たち ©︎ RAN / Masaya Noda

また、MUFGは東南アジアで森林破壊を起こしている産品セクターに、経済協力開発機構(OECD)加盟国の銀行で最も多額の融資・引受を行っています(注6)。紙パルプやパーム油などの産業は、炭素を吸収し貯留する熱帯林の破壊や土地紛争とも結びついています。RANは4月、MUFG子会社のバンクダナモンを通して、大規模な森林火災を繰り返し発生させているアブラヤシ農園企業を支配下に置く企業グループに融資を継続している事例も公開しました(注7)

RANは株主総会後も、MUFGを含めたメガバンクに、現地の情報提供、環境・社会方針やガバナンス体制についての提言、そして銀行の支援で負の影響を受けている地域の人々の声を伝えるなどのエンゲージメント(対話)を定期的に実施していきます。

参考:「MUFGの投資リスクをご存知ですか?」(RANのキャンペーン特設Webページ)https://fossilfreejapan.org/ja/campaigns/mufg/

 

注1)共同プレスリリース「東証プライム7企業に対して気候変動対策に関する株主提案〜全7社が勧告的決議案を拒んだことを受け、定款変更議案を提出〜」、2025年4月15日

注2)環境に配慮し、化石燃料車ではなく電気自動車(EV、電動ミニカー:第一種原動機付自転車)を使用。使用した広告宣伝車は、東京都屋外広告物条例の規制対象外であるが、委託企業は管轄警察署など関係各所に相談・報告しながら走行ルートの策定などを行った。午後には金融街の中心地である丸の内・大手町でも1時間程度走行した。

注3)オンライン署名「Tell MUFG to Defund Rio Grande LNG!」(英語)。6月24日時点での署名数は 13,225 筆。

注4)リオ・グランデLNGをはじめ、パプアLNG、スカボローガス、バロッサガス田など

注5)共同プレスリリース「化石燃料ファイナンス報告書 2025」発表 〜世界65銀行の化石燃料への資金提供額、2024年は8,694億ドルに急増〜」、2025年6月18日

注6)共同プレスリリース「『生物多様性崩壊をもたらす金融業務』日本語要約版発表 〜メガバンクら邦銀、森林リスク産品にパリ協定以降215億ドルを提供〜」、2025年4月10日

注7)RAN「MUFG、インドネシア泥炭地で大規模『炭素爆弾』に融資 〜子会社銀行、アブラヤシ農園企業グループに2億8100万ドルを提供〜」、2025年4月10日

 

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org