サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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プレスリリース:危険なLNG事業を支援する邦銀に要請、 米メキシコ湾岸の住民代表団が初来日(2024/10/8)

日本の金融機関に健康、文化、経済、野生生物を脅かす化石燃料事業への支援停止を訴え

(東京)10月7日から10日、米国テキサス州リオ・グランデ・バレーの活動家であり地域住民の代表が初来日しています。代表団は来日中、米国南部メキシコ湾岸地域のLNG(液化天然ガス / メタンガス)事業と関係がある日本のメガバンクおよび保険会社と東京で会合を持つ予定です。※写真を更新(10月10日)

東京・日本外国特派員協会での記者会見、2024年10月7日

三菱UFJフィナンシャル・グループ宛の署名数を手に会談に向かう代表団、2024年10月9日

代表団 3名

・フアン・マンスィアス(テキサス州カリゾ・コメクルド族チェアマン)
・ベッカ・ヒノホサ(南テキサス環境正義ネットワーク共同創立者)
・ディナ・ヌニェス(南テキサス人権センター シニア・オーガナイザー、Vecinos para el Bienestar de la Comunidad Costeraシニア・オーガナイザー)

代表団は、米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)とともに、日本の保険会社および三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などメガバンクの代表者と面会し、先祖伝来の故郷の土地を破壊し、地域のエコツーリズムを衰退させ、絶滅危惧種を脅かす大規模なLNG(メタンガス)事業(※)への支援停止について話し合う予定です。(※)リオ・グランデLNG輸出施設、テキサスLNG輸出施設、リオ・ブラボー・パイプラインの3事業

代表団のコメント

フアン・マンスィアス
「企業はこの土地を占拠しようとしています。化石燃料で富を得るお金持ちのためにです。LNG事業は私たちの空気や水を汚染し、先祖代々の土地を冒涜します。企業はこの土地を破壊しようとしています。しかしそのためには、私たちの民族を滅ぼさなければなりません。私たちはそれを許しません。私たちはもう脅しには屈しません」

日本のメガバンクであるMUFG、みずほフィナンシャルグループ、SMBCグループは、リオ・グランデLNG輸出基地を含め、LNG拡大企業への資金提供で世界の上位にあります。世界主要60銀行への資金提供(融資・引受)を分析調査した「化石燃料ファイナンス報告書」(Banking on Climate Chaos )によると、メガバンク3行は2023年単年とパリ協定以降の提供額の両方で上位10社に入っています。メガバンクには、メタンガスの新規および拡大事業への支援を除外する方針はなく、問題の多い化石燃料からの脱却を顧客企業に促す方針もありません。これはオランダのING銀行が発表した、2026年までにLNG(メタンガス)への投資を段階的に停止するという新方針や、フランスのラ・バンク・ポスタルが発表した、2022年までにすべての化石燃料への投資を停止するという方針とは対照的です。上記報告書によると、アジアの銀行は、気候変動や人権に関する方針において欧州の銀行に遅れをとっています。

ベッカ・ヒノホサ
「これらのメタンガス事業は、地元の低所得者層や野生生物に多大な汚染による危険をもたらします。それは否定できません。私たちのコミュニティはすでに、これらの事業に対する訴訟に勝訴しています。しかし、リオ・グランデLNG輸出施設は法の抜け穴を理由に、いまだにコンクリートを流し、神聖な野生生物の生息地を更地にしています。日本企業は、これらのLNG事業への支援をやめるべきです。そうすれば、事業を完全に停止させることができます」

人々が住み続けることのできる気候を実現するために、金融機関は化石燃料への資金提供を段階的に減らしていかなければなりません。しかし、前述の「化石燃料ファイナンス報告書」によると、銀行は2023年に化石燃料産業に7,058億米ドルの資金提供(融資・引受)を行ない、誤った方向に進んでいます。そのうち、1,209億ドルがLNG(メタンガス)拡張事業に使われています。リオ・グランデ地域のLNG(メタンガス)施設のステークホルダー(利害関係者)からなる代表団は、東京を訪れ、大手金融機関がこれらの化石燃料事業への支援を停止するよう要求する予定です。

ディナ・ヌニェス

「強力な組織化と、地域社会の意思の強い人々のおかげで、ワシントンD.C.(米国コロンビア特別区控訴裁判所)が3つの事業への承認を取り消すという良い判決が下されました。私たちは、リオ・グランデLNGのような巨大事業を打ち負かすことができるとわかっています。そして今、私たちは日本企業が正しい決断を下すよう求めます。そして、このような有害な採取事業への資金提供や支援を廃止するよう求めます」

LNG(メタンガス)に関する日本の金融が及ぶ範囲は、メキシコ湾岸地域を超えて広がっています。日本は、LNG輸出施設への国際的な公的金融の世界最大の資金提供国です。2012年から2022年までに建設されたLNG(メタンガス)輸出施設と、建設中または2026年までに完成予定の輸出施設に提供された世界の公的金融の約50%を占めています。日本はメタンガスへの公的資金提供でも世界トップクラスであり、毎年平均で約43億ドルを提供しています。

英語版はこちら “Japanese Banks Backing Dangerous LNG/Methane Projects: Gulf Coast Community Leaders visit Tokyo to demand that Japan’s financial institutions stop supporting dirty fossil fuel projects that threaten their health, culture, economy and wildlife” 

東京・丸の内の記者会見場にて意気込みを見せる代表団、2024年10月8日

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

“Gulf Coast Residents Demand Japan Stop Supporting LNG Facilities” materials / 米メキシコ湾岸地域住民来日会見関連資料

【October 7th, 2024】
Press Conference: Gulf Coast Residents Demand Japan Stop Supporting LNG Facilities

Juan Mancias, Tribal Chair, Carrizo/Comecrudo Tribe of Texas
Rebekah Hinojosa, Co-Founder, South Texas Environmental Justice Network
Ruth Breech, Senior Campaigner for Climate & Energy, Rainforest Action Network

FCCJ website, Archived Video

Press Release

Speaker Biographies

2024 Update: Rio Grande Valley at Risk from Methane Gas Export Terminals

 

【2024年10月8日】
会見「米メキシコ湾岸住民、日本の金融機関にLNG施設への支援停止を要請」

フアン・マンスィアス氏(テキサス州カリゾ・コメクルド族チェアマン)
ベッカ・ヒノホサ氏(南テキサス環境正義ネットワーク共同創立者)
ディナ・ヌニェス氏(南テキサス人権センター シニア・オーガナイザー)
ルース・ブリーチ(RAN気候変動&エネルギー担当 シニア・キャンペーナー)
川上豊幸(RAN日本シニア・アドバイザー)

プレスリリース

参考資料「化石燃料ファイナンス報告書204 抜粋版」

登壇者経歴

 

Rainforest Action Network
425 Bush Street, Suite 300 | San Francisco, CA 94108 | RAN.org

RAN日本代表部
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-13-11-204 | Japan.ran.org

 

 

プレスリリース:米メキシコ湾岸住民と市民団体、 リオ・グランデ・バレーLNG事業への 資金提供の段階的停止を金融機関に要請(2024/7/22)

「私たちは、当該事業がもたらす社会的・環境的影響に関して、支援する金融機関の責任を追及していきます」

(和訳版発行日:2024年8月23日、最後に更新情報あり)

(米ニューヨーク)7月22日、米国メキシコ湾岸の住民と、数百万人の会員・支援者を代表する主要な市民団体らは、テキサス州リオ・グランデ・バレーにおける液化メタンガス(通称「液化天然ガス(LNG)」)事業への支援中止を求める書簡を大手金融機関に送付しました。書簡は、リオ・グランデLNG事業、テキサスLNG事業、および同施設にガスを提供するリオ・ブラボー・パイプライン事業を支援している、または支援する可能性のある40社の銀行、保険会社、資産運用会社、金融機関に送られています(以下のリストを参照。7月22日以降に送付された金融機関もある)。

**書簡(英語原文)はこちら**

書簡からの抜粋

「当該事業に資金援助を行うことは、貴社に財務リスクと評判リスクの両方をもたらし、地域の生態系、先住民族の権利、気候に取り返しのつかない害を及ぼします」

「私たちは、ネクスト•ディケイド社と同社によるリオ・グランデLNG輸出基地(ターミナル)との関係解消、エンブリッジ社とリオ・ブラボー・パイプラインとの関係解消、そして両事業およびリオ・グランデ・バレーや米国メキシコ湾岸一帯で計画されている他の事業にもさらなる金融支援を行わないことを強く求めます」

上記3件のメタンガス輸出施設はまだ建設されていなく、いずれの事業も土地の整地とコンクリート打設を開始または継続するための資金を募っています。テキサス州ポートイザベル近郊は、同州沿岸で手つかずの自然が残る最後の地域のひとつですが、ネクスト・ディケイド社はリオ・グランデLNG事業の建設に向けて地域の重要な湿地帯、干潟、先住民族の聖地をすでに破壊しているところです。

一帯は、何世代にもわたって沿岸の重要な野生生物やオセロット(ネコ科動物)などの絶滅危惧種の生息地で、テキサス州の先住民族カリゾ・コメクルド族にとっても先祖代々重要な土地です。地域には、ローワー・リオ・グランデ・バレ-野生生物保護区に隣接する重要な野生生物の回廊がありますが、これらのLNG事業は、回廊の真ん中で操業し有毒な汚染をまき散らす計画となっています。また、米宇宙企業「スペースX」社のロケット発射台(ボカチカ・ビーチ)とは約6マイルしか離れていなく、頻繁にロケット爆発が繰り返されています。一方、グレンファーン・エナジー・トランジション社が所有・管理するテキサスLNGは、ガルシア牧場に建設されようとしています。この一帯は、カリゾ・コメクルド族の先祖代々の埋葬地と村落遺跡がある場所で、ワールド・モニュメント財団に「危機に瀕した歴史地域」として指定され、米国立公園局にも「国家歴史登録財」として登録されています

2023年、世界の大手銀行は化石燃料に7,050億ドルの資金提供(融資・引受)を行いました(訳註1)。化石燃料事業を拡大している大手企業への融資・引受だけでも3,470億ドルにのぼります。化石燃料に世界最大の融資・引受を行なっている金融機関はJPモルガン・チェースです。シティバンクは化石燃料を拡大している大手企業に対して、パリ協定採択後の2016年から23年までの合計で最も多額の資金を提供しています。

2023年にリオ・グランデLNG事業を含むLNGセクターに対して最大の融資・引受を行なったのは、みずほフィナンシャルグループと三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)でした。金融機関は投資対象を選択することが可能で、資金を化石燃料事業ではなく、再生可能エネルギーなどの気候変動対策に充てることができました。フラッキング(水圧破砕法)によるシェールガスの採掘からパイプラインによる輸送、エネルギー集約的な液化に至るまで、LNG事業はあらゆる段階でメタンガスを大量に放出します。メタンガスは、大気に放出されてから20年間は二酸化炭素の80倍以上の温暖化効果を持つ、強力な温室効果ガスです。

書簡は「もし貴社がリオ・グランデ・バレーにおけるこれらの危険な事業を支援するならば、事業の遅延や法的な障害に直面し続けることによる大きな財務リスクと、責任ある持続可能な金融業務の実施を緊急に市民から要求されることで、深刻な評判損傷リスクに直面することになると警告します」とも述べています。

この書簡に署名した人々の多くは、最近米国ニューヨークで行われた抗議行動「Summer of Heat(猛暑の夏)」に参加し(訳註2)、大手金融機関が米国メキシコ湾岸沿いの化石燃料事業に資金を提供するのを止めるよう要求しています。

声明

テキサス州カリゾ・コメクルド族チェアマン
フアン・マンシアス

「リオ・グランデLNG、テキサスLNG、リオ・ブラボー・パイプラインなど、環境に害をもたらす汚れたエネルギー事業が、私たちカリゾ・コメクルド族の聖地に建設されようとしています。私たちは、これら事業の開発に関わる金融機関や企業に強く反対しています。カリゾ・コメクルド族はソシエテ・ジェネラルとBNPパリバと会合を持ち、その結果、両行はこれらのLNG事業から撤退しました。書簡を送付する銀行および投資運用企業のグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)も同様に撤退しなければなりません。私たちは決して引き下がりません」

 

南テキサス環境正義ネットワーク
ベカ・イノホサ氏(テキサス州ブラウンズビル在住)

「私たちリオ・グランデ・バレー地域のコミュニティは、リオ・グランデLNG事業とテキサスLNG事業に明確に反対してきました。なぜなら、これらの事業は清潔な空気、野生生物の生息地、汚染されていない水路へのアクセスを必要とする、私たちの生活と気候を破壊するからです。これらのLNG事業を支援する銀行、投資機関、保険会社、あらゆる企業は、低所得層のラテン系コミュニティに汚染を押し付けているのであり、それは「環境レイシズム(人種差別)」そのものです。今回書簡を送った金融機関は、これらのLNG事業への支援を直ちに撤回しなければなりません」

 

ボーダー・ワーカーズ・ユナイテッド(Border Workers United)
ディレクター ルピタ・サンチェス氏(同州ブラウンズビル在住)

「リオ・グランデ・バレー地域とテキサス州にとって経済は重要ですが、同地域はより良い機会を与えられるべきです。私たちは、公正な収入、職場の安全、社会的保護が保障されたディーセント・ワーク(訳注3)の機会を得られるべきです。LNGは私たちの土地、空気、水を破壊します。LNGは私たちの環境と健康を脅かすものです」

 

シエラ・クラブ ローンスター支部
デイブ・コルテス支部長

「危険な爆発、お年寄りや子どもたちを病気にする大気汚染、地域のインフラを劣化させるトラックの交通量の多さ、水不足のなかでの大量の水使用、自然空間の冒涜。テキサス州メキシコ湾沿いの人々は、LNG施設によるこれらの影響を長年にわたって被ってきました。一方で、フリーポートからアマリロ、ブラウンズビル、オースティンに至るまで、全てのテキサス州民は気候変動の影響を感じています。記録的なハリケーン「ベリル」は、ヒューストンを襲った異常な暴風雨のわずか2カ月後にこの地域を打ちのめしました。LNG基地と、それが生み出す有毒なライフサイクル全体は、この苦しみの元凶です。これらの金融機関は、気候変動に対する迅速な行動を求めるテキサス州民やアメリカ市民の大合唱を故意に無視するのか、または21世紀のクリーン・エネルギー経済への投資を支援するのか。選択を迫られています」

 

書簡送付先 金融機関リスト(7月22日作成)

米国 

  • AIG
  • オールステート
  • バンク・オブ・アメリカ
  • ブラックロック
  • シティ 
  • クリフォード・キャピタル  
  • フィデリティ・ナショナル・ファイナンシャル
  • グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)
  • JPモルガン・チェース 
  • モルガン・スタンレー 
  • シメトラ・ファイナンシャル
  • トゥルーイスト・ファイナンシャル
  • ワシントン州年金基金
  • ウェルズ・ファーゴ
  • ウィルミントン・トラスト

日本 

  • みずほ銀行
  • 三菱UFJ銀行
  • 三井住友銀行
  • SOMPOホールディングス

カナダ 

  • モントリオール銀行
  • CIBC
  • カナダ・ナショナル銀行
  • ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)
  • スコシアバンク
  • トロント・ドミニオン(TD) 

イギリスおよびヨーロッパ 

  • アリアンツ
  • サンタンデール銀行
  • バークレイズ 
  • クレディ・アグリコル 
  • ドイツ銀行
  • HSBC
  • インテーザ・サンパオロ
  • ドイツ復興金融公庫(KfW IPEX-Bank)
  • ソシエテ・ジェネラル
  • スタンダードチャータード

サウジアラビア 

  • リヤド銀行
  • アラブ石油投資会社(APICORP)

韓国

  • KB国民銀行 
  • 韓国産業銀行 

シンガポール

  • ユナイテッド・オーバーシーズ銀行

アラブ首長国連邦  

  • アブダビ商業銀行 

中国

  • 中国銀行 

 

バミューダ

  • レゾリューションライフグループホールディングス 

 

**プレスリリースの英語原文はこちら**

“Gulf Coast Residents and Major Organizations Call on Financial Institutions to Phase Out Financing of LNG Projects in the Rio Grande Valley”

連絡先

シエラ・クラブ
Ada Recinos, Deputy Press Secretary
ada.recinos@sierraclub.org (米国太平洋時間)

更新情報

1)損害保険大手のチャブ(Chubb)は、保全方針(conservation policy)更新によって、2024年春にリオ・グランデLNG事業を保険対象から除外したことが、情報公開請求により入手した保険証書で確認された。

RANプレスリリース「チャブ社、リオ・グランデLNG保険を取下げ(Chubb Drops Rio Grande LNG Insurance)」、2024年8月

https://www.ran.org/press-releases/chubb-drops-rio-grande-lng-insurance/

2)2024年8月6日、米ワシントンD.C.巡回区控訴裁判所は、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)によるリオ・グランデLNG事業、テキサスLNG事業およびリオ・ブラボー・パイプラインに対する承認を事実上取り消す判決を下した。裁判所は、FERC が国家環境政策法および天然ガス法の要件を遵守していなかったという申立人らの意見に同意した。FERCは今後、新規プロジェクト許可を決定する前に、環境影響に関する新たな補足草案と、新たなパブリックコメント期間を設けて、上記3件の事業すべての影響を再検討する必要があるとした。

原告として参加している米環境NGO「シエラ・クラブ」のプレスリリース:「D.C. Circuit Rules Against FERC Approval of LNG and Pipeline Projects in South Texas」、2024年8月6日

https://www.sierraclub.org/press-releases/2024/08/dc-circuit-rules-against-ferc-approval-lng-and-pipeline-projects-south-texas

訳註

1)RAN、気候ネットワーク、国際環境NGO 350.org、「共同プレスリリース:化石燃料ファイナンス報告書 2024」発表:2024年5月16日

https://japan.ran.org/?p=2300

2)2024年6月から8月にかけて実施

https://www.summerofheat.org/weekbyweek

3)「ディーセント・ワーク」とは、「働きがいのある人間らしい仕事、より具体的には、自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした、全ての人のための生産的な仕事」のこと(出典:ILO )。https://www.ilo.org/ja/regions-and-countries/asia-and-pacific-deprecated/ilo-ni-tsu-i-te/te-i-se-n-wa-ku

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
japan.ran.org

本件に関する日本でのお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org



スタッフ募集:コミュニケーション&デジタルスペシャリスト(日本担当)

RANについて

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、約40年にわたり調査活動、教育、パートナーシップ、非暴力直接行動、草の根運動、戦略的キャンペーン、コミュニケーションを通じ、企業の力や構造的不正義に挑むことで、森林を保全し、気候を保護し、人権擁護のキャンペーンを展開してきました。RANは、利益最優先の不公正なシステムの影響を直接受けている先住民族や最前線のコミュニティと協力して活動してきました。また、RANは世界中の協力団体と連携し、破壊的な事業を停止し、人権を尊重し、気候変動の原因となる活動を減らす企業方針を採用するよう企業に働きかけています。

レイシャル・ジャスティス(人種的正義)、ダイバーシティ(多様性)、公平性

RANは、公平および公正という価値観を活動に組み込むよう努めています。その一環として、レイシャル・ジャスティス(人種的正義)と文化的公正性の分析をプログラム活動と組織体制に取り入れています。また、相互信頼、協力、敬意を基本とし、全てのスタッフがサポートされ、大切にされ、自分の声が届くと感じられるような組織文化を育むよう努めています。

RANは、人種、階級、ジェンダー、文化、宗教の多様性を重視し、スタッフや幹部、アクティビストが反抑圧(アンチ・オプレッション)の原則を理解し、受け入れるプログラムを組織内で実施しています。RANの歴史、文化、基本理念についての詳細は、RANのウェブサイトをご覧ください。
https://www.ran.org/mission-and-values/

募集ポジション

RANでは、日本チームのメディア&コミュニケーション、およびデジタル業務を行う「コミュニケーション&デジタルスペシャリスト」を募集しています。勤務開始は2024年秋を想定しています。この職務はRAN「森林」部門のコミュニケーションを担当し、RANのキャンペーン目標を明確に伝えるために、RAN本部のコミュニケーション部門やデジタル部門、および気候変動・エネルギー部門のメンバーと緊密に連携して業務を実施します。

求める候補者は、森林破壊を止めること、気候変動とたたかうこと、人権を保護することに深くコミットする人材です。RANの使命と価値を向上させるために優れた判断力を持ち、キャンペーン計画・展開の迅速な対応にも適応でき、メディア報道の機会やデジタル・コミュニケーションにおける機会をとらえることに意欲的なことが求められます。

理想的な候補者は、説得力があり、質が高く、詳細までこだわった業務を、しばしば厳しい日程でも遂行できる人です。高度なライティングスキルと、効果的なメッセージを的確に伝えるスキルも求められます。 関連するメディア・プロジェクトに携わった経験やメディアとのリレーションシップ、デジタルコミュニケーションの経験、プロジェクトを成功に導いた実績もあれば望ましいです。

職務内容:

コミュニケーション&デジタルスペシャリストは、RANの日本での活動のコミュニケーションとデジタル活動を主導する役割を担います。この職務は主に国内メディアの記者との関係を構築し、記事掲載の獲得、担当キャンペーンのスポークスパーソンを務めます。この職位は、日本語でのコミュニケーションおよびオンライン資料におけるメッセージング戦略の構築・実行、制作・編集プロセスの調整・実行も担当します。具体的な仕事内容は以下の通りです。

  • このポジションは、RAN日本チームと、RAN全体のコミュニケーションおよびデジタル戦略と連動して活動する。日本のコミュニケーション担当者として、コミュニケーション部門、デジタル部門、森林部門、気候・エネルギー部門と協力し、戦略的でメディア報道価値のあるキャンペーン活動を計画・実施する。RANやキャンペーンのメッセージやストーリーを広めるための長期的な戦略手段を策定する
  • 迅速なコミュニケーション対応を担当し、メッセージ作成、寄稿文(op-ed)の執筆、トーキングポイント(論点)、その他メディア資料を作成する
  • メディアトレーニング:メディア取材に対応できるようスタッフにトレーニングと指導を行う。記者会見などの活動の際、メディアとの連絡役を務める
  • キャンペーン活動促進において、委託業者(デザイナー、翻訳者、フォトグラファー、ビデオグラファーなど)や戦略的協力者・団体との関係を構築する
  • メディアリストの作成および更新
  • キャンペーン目標達成のために、企業や市場に関するメディアリサーチの実施
  • 英語で書かれた報告書や記事などの翻訳・編集、または翻訳者との共同作業
  • クリエイティブな印刷物やオンライン資料の制作を指揮し、管理する(インパクトのある広告や独創的なウェブ動画、シェアされるSNSコンテンツなど)。
  • RANの出版物やウェブサイト、SNS投稿文の執筆と編集・校正・発表/投稿
  • 内部の戦略会議に貢献し、森林、エネルギー、金融、気候変動問題に関する最新動向を把握する
  • 国内外のRANスタッフと協力し、包括的かつ協力的なチーム文化の醸成に貢献する


©︎Taishi-Takahashi / 350 Japan

応募資格:

  • RANのミッション、活動、戦略に強い関心があること(核となる戦略である非暴力直接行動の行使も含む)
  • 日本語と英語での優れたライティングスキルとコミュニケーションスキル
  • 森林、気候変動、投資・金融コミュニティ、社会変革ムーブメントに関する問題について知識があること
  • メディアやパブリック・リレーションにおける実務経験があること(ジャーナリズムの経歴だけではこの職務には適さない)
  • 口頭・書面での優れたコミュニケーションスキル。 オンラインメディア、講演会など、団体の会議、1対1の対話など様々なコミュニケーションに適応できること
  • 強いフレーミングスキルとメッセージを組み立てるスキル
  • ペースが速く、アクティビスト志向の現場で活躍できる能力があること
  • メディアの注目を集めることに成功した方法とキャンペーンを評価する判断能力があること
  • 確かな編集・校正能力と新聞・記事用語の使い方に精通していること
  • 仕事量が多い中でも優先順位決定を効果的に行い、多岐にわたるプロジェクトを調整できる能力があること
  • 主体性、柔軟性、創造性があること
  • 抑圧に反対する強い分析能力、負の影響を受ける先住民族やコミュニティと協働する能力があること
  • 国内外の出張が可能であること

求められる経験

  • 関連分野でのメディア担当やジャーナリストとしての経験が3年以上ある
  • デジタル・コミュニケーションの経験や学ぶ意欲があると望ましい
  • メディアとの関係構築能力。特に環境、森林保護、気候変動、ビジネスや金融関連の記者やブロガーとのリレーションシップがあることが望ましい
  • チームで効果的な仕事をした実績があること
  • 強い組織管理能力、時間管理能力、プロジェクト管理能力がある
  • 異なる時間帯と複数の言語で活動する国際的なチームで働き、あらゆるレベルでスタッフと協働する能力がある(主な言語は英語)
  • 北米、インドネシア、ヨーロッパに拠点を置くグローバルチームや協力団体との会議のために、年に数回の国内外出張も含め、臨機応変な時間で勤務できること
  • 広告会社やデザイナーと協力し、クリエイティブなオフラインおよびオンラインコンテンツを制作する能力がある
  • メディアリスト管理(データベース管理を含め)に精通していること
  • ワードプレスやX (旧 Twitter)の使い方に慣れていること

コミュニケーション&デジタルスペシャリストは、日本チーム、森林部門、コミュニケーション部門の一員です。この職位は日本チーム・マネジャーの管理のもと業務を行います。

給与

フルタイム。想定年収は$45,000~$55,000米ドル(経験や勤務地を考慮、米ドルまたは日本円で支給)

勤務地・勤務形態

リモートワーク。国内メディアと関わる職務であることから首都圏在住の方が望ましい(応相談)

世界中でスタッフが勤務していることから、同僚との連携にフレキシブルな時間での勤務が可能な方

福利厚生

土日・祝日休み、有給休暇(4週間、2年後は5週間)、冬季休暇
健康保険など
年金保険料(年金保険料の同額または最大で年収の3%までをRANが負担)
サバティカル休暇(勤続5年毎に12週間の休暇、給料全額支給)

機会均等とアクセス

RANは機会均等を掲げ、すべての人に平等な雇用とボランティアの機会を提供するよう取り組んでいます。採用面接や採用過程で宿泊などの手配が必要な場合は、HR@ran.org までご連絡ください。有色人種その他、歴史的に排除されてきたアイデンティティをお持ちの方からの応募を歓迎します。

応募方法

以下のリンクから、レジュメ(履歴書と職務経歴書)とカバーレターをお送りください。最適な検討ができるよう、応募書類のご提出は2024年9月30日までにお願いいたします。

https://rainforest-action-network.breezy.hr/p/58c1be0fb038-communications-digital-specialist-japan

免責事項:この日本語文は英文の翻訳で、採用や詳細は原文である英文に準じます。

参考資料

「RANについて」(日本語)
「RANのミッション」(日本語)

「RANのミッション、ビジョン、バリュー」(英語)

RAN「非暴力方針」(英語)

共同プレスリリース:世界の投資家、日本企業の気候変動対策及び取締役会の監督能力の実効性に重大な懸念を表明(2024/7/8)

国際環境NGO マーケット・フォース
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

環境NGOとその代表者を含む個人株主は今年4月に金融・電力の2業界4企業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、日本最大の発電会社・JERAの経営に大きく関与する中部電力)に対して株主提案を提出しました。

当該企業4社に対する株主提案は、企業の取締役会が気候関連事業リスク及び機会の適切な管理・監督を行う上で必要な能力あるいは人材を備えているか、株主が評価する上で必要な情報開示を求めるものです。

メガバンク3社には、上記の提案に加えて、気候変動への公約及び気候変動リスク管理戦略を踏まえ、化石燃料セクターの顧客の移行計画とパリ協定1.5℃目標との整合性について、各行がどのように評価を行うか、そして当該セクター顧客がパリ協定に沿った信頼性の高い移行計画を作成しなかった場合、新規資金の制限を含む、対応措置をどのようにとるのかの開示を求める提案を提出しました。

すべての議案は6月末に実施された当該企業4社の株主総会で以下の通り決議されました。

株主提案の内容と議決権行使結果

※各社臨時報告書:三菱UFJFG三井住友FGみずほFG中部電力

3メガバンクに対する取締役のコンピテンシーを求める提案については、議決権行使助言会社のISSが賛同を表明しています。各社は反論を提示しましたが、この提案の内容が世界的な機関投資家の要望に即したものであることは明らかです。
上記の株主提案の議決結果は、気候変動に関するリスクへの対処に関して課題を抱える企業に対して、引き続き厳しい目が向けられていることを意味します。

中部電力

「中部電力は、化石燃料事業を拡大し続けるJERAの株式を50%保有し、その脱炭素戦略にも大きく依存しています。しかしながら、中部電力の取締役会が、気候関連リスクと機会を管理するために必要な専門知識を十分に備えているか不明のため、自社および株主は重大な財務リスクに晒されています。
投資家が期待する情報開示と、中部電力の取締役会が備えていると主張し、開示している専門知識やスキルマトリックスの内容や情報量には大きな乖離があり、その不満が今回の4分の1に迫る賛成率に反映されていると言えます」
鈴木幸子(マーケット・フォース, エネルギーファイナンスアナリスト)

「中部電力の電源構成は石炭22%、LNG42%(2022年度実績)と化石燃料による発電が大半を占めています。同社は、2050年に事業全体のCO2排出をネットゼロにする目標を掲げていますが、総会での説明および質疑応答では、グリーン・トランスフォーメーションやデジタル・トランスフォーメーションを促進することで社会システムの再構築につなげるといった抽象的な考えが示されるのみで、ネットゼロに向けた具体的な策は示されませんでした。一方で、脱炭素には原発が不可欠として早期の稼働再開を目指すとの主張が繰り返され、このままで本当に脱炭素が達成できるのかとの不安は拡大するばかりです。我々の提案に対する23.3%という賛成には、より具体的かつ実質的な気候変動対策を進められる人材と気候コンピテンシーが必要であるとの投資家の期待が込められているのではないでしょうか」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

MUFG、三井住友FG、みずほFG

「昨年の提案に比べて賛成率が大きく伸びた3メガバンクへの6つの提案は、世界の投資家から、各行の取締役・経営陣に対する気候関連のリスク管理を強化するよう求める強いシグナルと言えます。日本のメガバンクが、気候科学に反してLNGなどの化石燃料拡大への支援を増額し、実効性ある抑制方針をいまだに示さないことは、世界の中で大きく遅れを取っており、投資家の財務リスクを適切に管理できていないと見なされているからです。「地域固有の様々な経路」と言い訳をしているうちに、世界は再エネやエネルギー効率への投資を益々拡大し、高くて汚い化石燃料からの脱却を進めており、日本企業の競争力にも悪影響を及ぼしかねません。さらに日本は「移行ファイナンス」の名の下に、アジアの化石燃料使用を固定化(ロックイン)するなど、脱炭素化を妨げてしまっています。今こそ、各行の1.5度(ネットゼロ)への公約に立ち返り、経済や社会基盤の安定と直結する気候対策に本気で取り組むべきです」
渡辺瑛莉 (マーケット・フォース, 日本エネルギー金融キャンペーナー)

「各行が気候変動対策への取組みを強化している点は評価していますが、日本の電力セクターが1.5℃目標に整合するには、まだ不十分であると考えています。世界では既に化石燃料の使用を如何に削減するかを論じている中、日本ではいまだに100基を超える石炭火力発電所が稼働している上に、CO2対策がとられていない(Unabated)に関して独自解釈を展開し、官民一体となって水素・アンモニア混焼を推し進めようとしています。金融機関は気候変動対策を進める上で重要な役割を担っています。自らのコミットメントを果たし、顧客の脱炭素戦略を支援していくためには、科学的根拠に基づいて顧客の脱炭素化計画が信頼できるものかを判断し、適格な評価を行う必要があります。そのためには気候コンピテンシーが不可欠です。25%を超える賛成票は、世界の投資家も取締役に気候コンピテンシーを求めていることが示されたと言えるでしょう。今後、会社がどのように気候関連のリスク管理を強化していくのかに注意していきたいと思います」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

「メガバンクには、今回の株主提案で投資家から有意な数の賛同があったことを真摯に受け止め、顧客企業の移行計画が1.5度目標に沿っているかどうかを評価する体制と、気候危機に対応できる取締役の管理体制の強化が求められます。メガバンク3社はネットゼロを約束していますが、化石燃料企業への資金提供を継続し、特にLNGセクターでは世界の銀行でも1、2を争う金額をみずほとMUFG は2023年に提供し、信頼できる移行計画を持たない北米の企業にも巨額の資金提供を行っています。これは融資先企業の移行計画への対応状況の評価体制が不十分で、かつ、取締役会としての管理・監督機能も働いていないことを示していると言えます。
 メガバンクは米国メキシコ湾岸のリオ・グランデLNG施設とパイプライン開発企業にも資金提供していますが、この事業は温室効果ガス排出量の多さに加え、周辺環境の悪化による低所得住民への負の影響や、先住民族の権利侵害が指摘され、人権面でも深刻な問題を抱えています。各社とも投融資における人権デューデリジェンスの実施を約束し、総会の質疑応答でも人権尊重を強調する場面はありましたが、このような事例を見ると実施が十分であるとはいえません。気候変動でも人権でも、策定した方針の実施体制の強化が必要です」
川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク 日本シニア・アドバイザー)

報道機関関係者の皆様へ:

気候変動に関する株主提案・対話の効果、着実に

2020年にみずほFGに気候変動に関する株主提案が提出されて以来、多くの投資家が日本の主要企業の気候変動対策の遅れに対して、深刻に懸念し、対話を実施してきました。今年は総合商社や銀行、電力、自動車のほか、製鉄や製薬業界の企業にも気候変動対策の遅れを問う株主提案が提出されています。
いっぽうで、定款変更を求める株主提案が可決されるために株主の2/3以上の賛同が必要であることから、報道関係者の皆様より、急速な脱炭素を推し進める我々の活動の具体的成果についてご質問を頂くことも度々あります。そこで、我々が企業との対話を通じ、企業のマテリアルリスクを取り除き、脱炭素に大きく寄与することとなった数ある事例のうち代表的なものを以下にてご紹介いたします。ぜひご参考にしてください。

総合商社による石炭火力発電事業の撤退
マーケット・フォースは2021年、住友商事に対してパリ協定の目標に沿った事業活動のための事業戦略を記載した計画の策定、及び開示を求める株主提案を提出しました。提案は20%の賛成票を獲得し、その後の石炭火力に関するポリシーの改善につながりました。さらに住友商事は2022年2月にバングラデシュのマタバリ2 石炭火力発電所から撤退することを発表しました。この結果、同社は年間1億8700万トンのCO2排出を回避することに成功したと考えられます。

金融機関による指針変更や化石燃料事業への融資ストップ
2020年、気候ネットワークがみずほFGに株主提案を行い、みずほFGは日本の銀行として初めて、2050年までの石炭火力フェーズアウト目標(後に2040年に変更)を設定しました。他の2メガバンクもこの動きに追随しています。

2021年、350.org Japan、RAN(個人株主)、気候ネットワーク、マーケット・フォースはMUFGに対し、株主提案を提出しました。決議後、MUFGは2050年までにポートフォリオ全体でネットゼロを目指すことを発表し、日本の銀行として初めてネットゼロバンキングアライアンスに加盟しました。その後、みずほFG、三井住友FGも追随しています。

2022年、350.org Japan、RAN(個人株主)、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三井住友FGに対して気候変動に関する株主提案を2件提出しました。株主提案の提出後、同社は石炭採掘部門の投融資方針を強化し、新規および既存プロジェクトの拡張と関連するインフラ開発への投融資を制限しました。その後、他2行も同様の方針を掲げました。

2023年には、金融、商社、電力の3業界の6企業に対して提案を提出し、気候変動対策の更なる強化を求めました。三井住友FGが環境破壊と人権侵害の懸念がある東アフリカ原油パイプライン事業 (EACOP)に、関与しないと表明しています。環境団体の声に加え、株主提案でも抗議を表明したことで、同社は融資への関与を否定しました。その後、MUFGも同様の表明を行いました。

これまでの気候変動対策を求める企業との対話は、上記のような形で株主提案の提出に至りましたが、企業の取り組みの段階的な改善に重要な役割を果たしてまいりました。今年の株主提案の対象となった企業も、これまでに情報開示の改善を行っており、今年に統合報告書が公開されれば、さらに改善されることが期待されます。

「Asia Shareholder Action」株主提案および投資家向け説明資料はこちらのサイトからご覧いただけます。

お問い合わせ先

マーケット・フォース (https://www.marketforces.org.au )
担当者: Antony Balmain +61-423-253-477
Email:antony.balmain@marketforces.org.au

気候ネットワーク(https://www.kikonet.org )
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
japan.ran.org
担当者:関本幸
E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

プレスリリース:SOMPO・株主総会で米国リオ・グランデLNG事業の保険引受停止要請に回答せず(2024/6/24)

〜化石燃料方針の改善を行うも、今後の支援余地残す〜


SOMPO株主総会会場前でのアクションの様子

環境・持続社会」研究センター(JACSES)
Insure Our Future
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
Oil Change International
気候ネットワーク

6月24日、SOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)の年次株主総会が開催されました。日本の環境NGOスタッフも株主として参加し、SOMPOの保険引受者としての関与が明らかになっており、現地から抗議の声が上がっているリオ・グランデLNG事業への同社の更なる保険契約更新の可能性の可否を質問したところ、SOMPOの経営陣からは、個別案件に関する回答は差し控えるとの趣旨の回答がありました。私たち環境NGOは、同社に対してリオ・グランデLNG事業を含む化石燃料事業への保険引受停止を求めています。

リオ・グランデLNG事業は、NextDecade社が主導する米国テキサス州におけるLNG(液化天然ガス)輸出ターミナル事業であり、SOMPOは同事業の保険を引き受けていることが判明しています(※1)。リオ・グランデLNG事業は、大量のCO2排出による気候変動の悪化や、現地の大気汚染、野生生物保護区への影響、先住民族の文化遺産の破壊等のリスクから、住民から抗議の声が上がっており、現地住民・環境NGO・現地自治体から、事業者が適切な環境影響調査を怠っているとして、度々訴訟を起こされてきました(※2)。また、6月18日、国内外の環境NGO28団体は、SOMPOのCEO奥村幹夫氏に対し、リオ・グランデLNG事業への保険引受停止等を求める要請書を連名で送付しています(※3)。

SOMPOは、石炭事業(発電及び炭鉱開発)への保険引受や、石炭を主業とする企業への保険引受を制限する方針を日本で初めて発表した企業であり、気候変動対策について日本における先駆的な方針を発表してきました。しかし、世界の大手保険会社と比較すると、石油・ガスの制限対象がオイルサンド及び北極圏監視評価プログラム(AMAP)のみで限定的である等、その取り組みは大きく遅れています。一方で、アリアンツ、ミュンヘン再保険、ハノーバー再保険等、欧州の大手保険会社間では、広範囲に及ぶ石油・ガス事業への保険引受を停止する取り組みが広がり始めています。

6月21日にSOMPOは、これまで保険引受の停止対象としてきた石炭主業企業の対象を拡大し、同じく引受停止対象であったエネルギー採掘活動の範囲を北極野生生物国家保護区(ANWR)から北極圏監視評価プログラム(AMAP)に拡大しました(※4)。しかし、後者についてSOMPOは「ノルウェー域内は除く」との注を設けています。Greenpeace Nordicの報告書によると、過去にSOMPOは、ノルウェー海域で複数の石油・ガス事業を行っているボル・エナジ社の保険を引き受けたことが判明しており(※5)、石油・ガス事業が盛んに行われているノルウェー海でのエネルギー採掘事業の保険を今後も引き受ける余地を残しています。

2021年に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」は、2050年までにネットゼロを達成するためには、新規の化石燃料採掘事業は行うべきではないと指摘しています(※6)。

南テキサス環境正義ネットワークのベカ・イノホサは、「私たちのコミュニティ及びテキサス州カリゾ・コメクルド族は、リオ・グランデLNGと、私たちの地域のあらゆるLNG施設に反対する立場を明示してきました。これらの化石燃料事業は、汚染されていない環境、漁業、エビ業で生計を立てている私たちの生活を破壊するでしょう。SOMPOがリオ・グランデLNGに関与し続けることは、私たち有色人種や先住民族の低所得者層に対して、企業のそのような意向と汚染を強要することになりかねないため、SOMPOはリオ・グランデLNGから直ちに撤退しなければなりません。」と述べています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の気候変動・エネルギー シニアキャンペーナーであるルース・ブリーチは「SOMPOが気候変動への影響とリスクを深刻に考慮しているのであれば、化石燃料事業への保険引受及び支援を停止するべきです。SOMPOは、米国テキサス州南部で計画中のLNG輸出ターミナルである、リオ・グランデLNG事業の主要保険会社です。本事業は、未開発の海岸地帯に建設され、先住民族の聖地や湿地帯、漁業コミュニティにとって有害であり、温室効果ガスの排出を増加させます。SOMPOはリオ・グランデLNG事業への支援を今すぐにでも止めることができるはずです。」と述べています。

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の持続可能な開発と援助プログラムディレクターである田辺有輝は、「SOMPOの石油・ガスに関する方針は、停止対象が、オイルサンド及び北極圏監視評価プログラム(AMAP)でのエネルギー採掘活動と極めて限定的であり、今後も大量の温室効果ガスを排出する化石燃料事業に対して保険引受を行う余地を残しており、パリ協定1.5度目標に整合していません。SOMPOに対しては、リオ・グランデLNG事業を含む新規化石燃料事業への保険引受停止を強く要請します。」と述べています。

注:
※1:https://jacses.org/2329/
※2:​​リオ・グランデLNG事業の概要や問題点については、以下のファクトシートをご参照ください。https://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2019/10/f3f4587241d5a547e73247c7eea46d96.pdf
※3:https://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2019/10/RGV_-Sompo-Letter-June-2024.pdf
※4:https://www.sompo-hd.com/csr/system/vision/
※5:https://www.greenpeace.org/static/planet4-norway-stateless/2023/05/29fbf8d4-ensuring-disaster-final-20220523-13-41.pdf
※6:International Energy Agency (IEA), (2021), 「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」, p. 20,
https://iea.blob.core.windows.net/assets/0716bb9a-6138-4918-8023-cb24caa47794/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector.pdf

英語のプレスリリースはこちら

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

※更新
英語プレスリリース “SOMPO: Stop Underwriting Rio Grande LNG” を追加しました(2024年6月24日)