サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース:新報告書「森林フットプリント評価 2021」発表〜インドネシア・ボルネオ島の森林と地域コミュニティへの影響について、大手消費財企業10社の開示状況を評価〜(2021/10/22)

日清食品、花王、プロクター&ギャンブルら、森林と人権に及ぼす影響を十分に開示せず

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、21日(米国現地時間)、新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林フットプリント評価2021」(注1、英語)を発表しました。

写真:アブラヤシ農園開発のために伐採された森林、インドネシア東カリマンタン州ベラウ、2018年4月

本報告書は、大手グローバル消費財企業10社を対象に、インドネシア・ボルネオ島の北カリマンタン州と東カリマンタン州における、各社サプライチェーンの「森林フットプリント」(※)を独自に評価したものです。分析の結果、対象企業10社はサプライヤー企業からの原料調達を通じて、同地域で70万ヘクタール(サッカー場175万個分)以上の熱帯林破壊に加担し、さらに825万ヘクタールの森林が危機にあることを明らかにしました。よって10社はいずれも、インドネシアに残る森林と地域コミュニティに及ぼす影響を十分に開示していないと結論づけました。

本報告書は、 英国グラスゴーで31日から始まる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に発表されました。森林と泥炭地は炭素吸収源として気候の安定のために機能することから、森林保護はこれまで以上に重要になっています。

※「森林フットプリント」とは、パーム油や紙パルプ、木材など森林を破壊する恐れのある産品が影響を及ぼす森林と泥炭地の総面積をいいます。別紙参照。

『森林フットプリント評価2021』概要

  • 対象地域:インドネシア・ボルネオ島の北カリマンタン州、東カリマンタン州。この地域に残る森林の約3分の2が危機的状況にあることから、両州に焦点をあてた。
  • 対象企業(多国籍消費財企業10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース。
  • ●10社は、北カリマンタン州と東カリマンタン州のパーム油や紙パルプ、林業企業からの原料調達を通じて、同地域にある70万ヘクタール(サッカー場175万面分)以上の熱帯林の破壊に加担していることが明らかになった(図1)。
  • ●10社が「森林破壊禁止」の方針をサプライヤー企業に徹底しなかったために過去10年間で失われた森林と泥炭地について詳しく説明し、両州だけで825万ヘクタール以上の重要な熱帯林が危機にあることを示した(図2)。
図1:北カリマンタン州・東カリマンタン州での森林破壊(70万ヘクタール、2009年〜2019年)
凡例:赤(泥炭地)、茶(2009〜2011年)、薄茶(2012〜2014年)、水色(2015〜2017年)、緑(2018〜2019年)
図2:北カリマンタン州・東カリマンタン州で危機にある森林(825万ヘクタール)
凡例:ピンク(泥炭地)、危機にある森林〜青(事業管理地内の劣化していない森林)、水色(事業管理地内の劣化した森林)、赤(開発可能地域の劣化していない森林)、黄(開発可能地域の劣化した森林)、保護されている森林〜緑(劣化していない森林)、黄緑(劣化した森林)
  • 両州で200万ヘクタール以上の森林が、先住民族コミュニティが何世代にもわたって生活し、保護してきた集落や慣習地において残されていることが明らかになった。しかしコミュニティの土地が林業企業や農園企業に割り当てられたことから、多くのコミュニティの森林を保護し管理する権利は尊重されていない(図3)。
図3:北カリマンタン州・東カリマンタン州の慣習地と、住民参加型「社会林業」のために政府が割り当てた地域(出典:Ancestral Domain Registration Agency: BRWA(インドネシアの団体))
凡例:赤(泥炭地)、「社会林業」〜緑(村落林)、オレンジ(住民造林)、水色(コミュニティ林)、BRWAからの慣習地〜青(慣習地)

RAN森林政策ディレクター ジェマ・ティラックは「世界の主な科学者たちは、現在の気候危機を『人類へのコードレッド(非常事態発生を告げる警報)』と呼んでいます。プロクター&ギャンブルのような多国籍消費企業と、倫理的とはいえない取引先のサプライヤー企業は、企業方針の抜け穴や口約束の陰で、森林破壊の悪循環を続けています。地球で最後の手付かずの森林が伐採されている一方、何世代にもわたって森林を維持してきた地域コミュニティからは土地の権利が奪われ、人権が侵害されています」と訴えました。

RAN日本代表 川上豊幸は「今月末からCOP26が始まります。今まさに、森林と泥炭地の破壊を防ぎ、森に住む人々の土地の権利を守るための行動を起こすときです。日清食品や花王などの大手消費財企業は、森林破壊を引き起こす開発事業の拡大という脅威の最前線に立たされている人々の人権や土地権を守るために、今すぐ積極的な役割を果たさなければなりません」と強調しました。

RANは2020年4月から「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーンを展開し(注2)、上記10社に対して、自社のグローバルサプライチェーンにおける「森林フットプリント」の開示を求めてきました。「森林フットプリント」という言葉はこれまでも使われてきましたが、RANで用いる場合、消費財企業が商業的な森林伐採や農業の拡大によって、これまでに影響を与えたり、今後与える可能性がある森林と泥炭地の総面積を意味します。また、森林および泥炭地が、先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合、先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含みます。森林フットプリントの開示にあたっては、企業は森林フットプリント全体を説明するために行なった一連の行動を記述し、これ以上の森林破壊と権利侵害を防ぐためにサプライヤー企業に介入する方策を立てるとともに、過去の被害の是正措置を取る必要があります。

これまでユニリーバ、ネスレ(注3)コルゲート・パルモリーブの3社が、インドネシア・スマトラ島北部に限定した森林フットプリントを公表しています。日本企業では、花王は森林フットプリント導入について協議している点を「2021年活動方針」(注4)で開示しています。一方、日清食品からは正式な返答を得られませんでした。

*報告書全文はこちら(英語)。概要および評価への各社回答も掲載されています。 www.ran.org/borneo_forest_footprint

注1)新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林フットプリント評価2021」(英語)。日本語要約版は近日中に発表予定。

注2)「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある上記の消費財企業・銀行17社に実際の行動を起こすよう要求しています。

注3)参考:RAN声明「世界初、ネスレ『森林フットプリント』開示を歓迎〜インドネシア・パーム油サプライチェーンで影響を受ける森林面積を公表〜」(2020/12/11)

注4)花王「2021年の進捗」

 

別紙「森林フットプリントについて

「森林フットプリント」とは?

森林フットプリントとは、消費財企業の森林リスク産品(※)利用や銀行による森林リスク産品への資金提供によって、これまでに影響を与えたり、今後与える可能性がある森林と泥炭地の総面積をいう。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、サプライヤー企業や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらにサプライヤー企業や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。上記の森林および泥炭地が、先住民族と地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

※森林リスク産品:森林破壊の原因の多くはパーム油、紙パルプ、木材製品などの産品生産で、これらの産品は森林を破壊するリスクがあることから「森林リスク産品」と呼ばれている。

リスクにさらされている地域には、供給業者、投融資先企業、またはそれらに原料を供給する独立系企業の管理下にあるプランテーション(大規模農園や植林地)開発区域内の森林と泥炭地、そして上記企業のグローバルサプライチェーンの原料調達(工場、精製所、加工処理施設など の周辺地域)における伐採予定地や農業開発用に割り当てられた地域が含まれる。これらの全てが把握され、公開されている必要がある。

RANは、消費財企業および銀行が森林フットプリントを把握し開示するためには以下のようなステップを提案している。

1.情報開示
・自社サプライチェーンで森林リスク産品を調達している国、金融機関の場合は顧客企業の事業が森林リスク産品関連事業で活動している国を特定し、自社の年次報告書やサステナビリティレポートなどで情報開示する。
・優先すべき森林リスク産品の調達を行っている国・地域を選択する。当該地域で森林リスク産品を生産、加工、取引しているサプライヤー企業を特定し開示する。

2.森林・泥炭地減少へのリスクを調べる
・特定されたサプライヤー企業・企業グループからの調達や、当該企業への投融資によって、これまで影響を与えたり、今後与える可能性のある森林や泥炭地の総面積と位置を把握するために空間分析を行い、地図を作成する。
・作成した地図を自社の年次報告書、サステナビリティレポート、企業ウェブサイトなどで開示する。

3.地域域コミュニティの権利・土地紛争
・選択した調達国・地域でサプライヤー企業や投融資先企業の事業によって影響を受ける森林や泥炭地に居住する、先住民族や地域コミュニティの権利に及ぼす影響に関する情報を調査する。
・情報には先住民族や地域住民が伝統的に所有する森林や泥炭地に関する土地への権利、アクセス、利用および保全への影響を含む。
・これまで影響を与えたり、今後与える可能性のある森林や泥炭地の総面積と位置を把握するために空間分析を行い、地図を作成する。

4.2と3の統合
・森林減少のリスクに関して得た情報と、地域コミュニティへの影響と土地紛争に関するリスクをまとめた、国や地域ごとの「森林フットプリント地図」を完成し、開示する。

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org