日本の銀行グループは気候変動リスクに未対応、新レポート発表
2017年6月22日
プレスリリース
みずほフィナンシャルグループが、国内化石燃料関連企業への日本一の資金提供者で、
世界的な熱帯林破壊と人権侵害の主要な資金提供者の一員であると露呈
東京 — レインフォレスト・アクション・ネットワーク、バンクトラック、シエラ・クラブ、オイル・チェンジ・インターナショナルの4つのNGOが本日発表した報告書によると、日本のメガバンク3行を含む世界最大級の銀行は、環境負荷が極度に高い化石燃料(Extreme Fossil Fuels)-石炭採掘、石炭発電、オイルサンド、北極および超深海の油、液化天然ガス(LNG)輸出等を指す-への継続的な資金提供を通じて気候リスクに対応することができていません。
報告書「気候変動を加速させる銀行業務:化石燃料ファイナンス成績表2017」は、化石燃料産業の中で最も炭素集約度が高く、経済リスクが高く、環境破壊的な事業分野に資金提供し、気候変動を助長している世界の37の銀行を分析しています。その事業分野とは石炭採掘、石炭火力、エクストリーム・オイル(オイルサンド、北極・超深海の油)、液化天然ガス(LNG)輸出などがあります。みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UJFフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)などの邦銀も責任を負うべき金融機関として含まれています。「気候変動を加速させる銀行業務:化石燃料ファイナンス成績表2017」では、これら分野での気候変動リスクに対処する有意義なコミットメントが欠如していることから、日本のメガバンク3行にはFグレード(成績の中で最も低いスコア)をつけています。
日本の三大銀行のうち、みずほFGはパリ協定の後に環境負荷が極めて高い化石燃料への融資を増やした唯一の銀行で、気温上昇を2度未満に抑えるという世界的な目標を無視していることで際立っています。みずほFGは、2016年だけで、世界で最大で最も炭素集約度の高い化石燃料企業に29億ドル(約3230億円)以上を拠出しました。これらの融資の半分は、最も炭素汚染度が高く、二酸化炭素排出量が多いエネルギー源である石炭火力発電に関連していました。みずほFGは、パリ協定と世界的な脱炭素化に向けた動きにもかかわらず、2014年以降、化石燃料の融資を合計60%増加させました。
これらの結果を踏まえ、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japan、FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)は、「みずほフィナンシャルグループに関する2016年ESG評価レポート」を独立レビューとして公表しました。みずほFGは環境負荷が極めて高い化石燃料(Extreme Fossil Fuels)への国際的な関与に加えて、日本の化石燃料および原子力関連企業へのトップ資金提供者であり、また東南アジアの熱帯林伐採を推進する企業に多額の資金を提供しています。2011年から2016年の間に日本の化石燃料関連企業に、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)をはるかに上回る、380億ドル(約4兆円)以上の融資と引受けを行いました。同じ時期に、東南アジアの熱帯林を脅かす企業に40億ドル(約4456億円)(セグメント調整済)以上の融資と引受けを行い、日本の原子力関連企業には約80億ドル(約8912億円)を拠出しました。
みずほFGは、気候変動、森林破壊、人権問題に対処するための強力な環境、社会、ガバナンス(ESG)方針の策定において他の金融機関に後れを取っており、投資の重大なリスクを株主に適切に開示することができていません。みずほFGは、その社会・環境面の予防措置方針が不適切であるために、世界中で主要なESG論争に巻き込まれています。これらには、先住民族の権利の侵害により国連職員により非難された米国のダコタ・アクセス・パイプライン(Dakota Access Pipeline)事業、児童労働に結びついているインドネシアのパーム油企業インドフード社、健康や生計への被害のためにコミュニティの反対活動に直面しているインドネシアのチレボン石炭火力発電所等があります。セクターに特化したESG方針がなければ、みずほFGは、より多くの企業スキャンダルや、座礁資産になりかねない炭素集約度の高い産業への誤った資金配分、熱帯林破壊や人権侵害への資金提供による企業責任などに巻き込まれるリスクがあり、これらのいずれもが株主の利益に影響を及ぼす可能性があります。
レインフォレスト・アクション・ネットワークの日本代表、川上豊幸は「化石燃料の燃焼と熱帯林減少は気候変動の主要な推進要因であり、みずほFGはこれらに何十億ドルもの資金を提供している。株主としては、その無謀な資金提供のやり方に対しては、みずほFGが説明責任を果たすようにしておく必要がある。」と述べています。
「みずほFGが化石燃料関連企業への融資を増やすことは、パリ協定の世界的目標に反している。みずほFGは、融資および投資方針の一環として気候関連の財務情報を完全に開示し、1.5〜2度の温度目標に沿ったポートフォリオの脱炭素化を約束すべきである。ダコタ・アクセス・パイプラインのようなプロジェクトへの資金提供を続ければ、みずほFGは、人権と気候変動に関する懸念のために国際的なダイベストメント(投資撤退)のターゲットとなるだろう。」と350.org Japan代表の古野真は述べています。
「みずほ銀行はインドネシアなどで、地元のコミュニティの生計手段に負の影響などをもたらしている石炭火力発電事業に資金を提供している。みずほFGは、地元の人々に悪影響を及ぼしているような事業に融資すべきでなく、融資者として責任ある行動をとるべき」と、FoE Japan の深草亜悠美は語っています。
ダウンロード先:
・気候変動を加速させる銀行業務:化石燃料ファイナンス成績表2017レポート(英文):www.ran.org/bankingonclimatechange
・気候変動を加速させる銀行業務:化石燃料ファイナンス成績表2017レポート(和文要約版):
・みずほフィナンシャル・グループに関する2016年ESG評価レポート(英文・和文):www.ran.org/mizuho_riskyinvestment
連絡先:
レインフォレスト・アクション・ネットワーク: 03-3341-2022, japan@ran.org
350.org Japan: 090-2183-2113, marie.tanao@350.org
FoE Japan: 03-6909-5983, info@foejapan.org
団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットワークは、30年以上、最前線の人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンにより企業の力や構造的不正に挑むことで、森林を保全し、気候を保護し、人権を守っています。詳しくは www.ran.org
350.org Japanは、米国ニューヨークに拠点をおく国際環境NGO 350.orgの日本支部として2015年4月に設立されました。350.org Japanは気候変動防止に向けた化石燃料への投資撤退「ダイベストメント」を広めるために、My Bank My Futureキャンペーンを展開しています。このキャンペーンを通じて、「パリ協定」で定められている気温上昇を1.5-2℃未満に抑えるという目標に整合した投融資方針を策定することを邦銀に市民とともに呼びかけています。350.orgは180を超える国と地域で活動を展開しています。詳しくは:350.org/ja
FoE Japan は、気候変動、原発・エネルギー、森林、生物多様性、開発金融など地球規模での環境問題に日本で取り組む国際環境NGOです。Friends of the Earth International のメンバー団体として、日本で1980年から活動を続けています。詳しくは:http://foejapan.org/
JACSESは、1992年、ブラジルで開催された地球サミットを契機として、市民の立場で独立した研究・政策提言・情報提供を行うNGOの構想が提起され、1993年6月に設立されました。現在、日本政府から途上国に向かう開発援助資金の改善を目指す「持続可能な開発と援助プログラム」と、日本国内の大量生産・消費・廃棄を見直すための政府資金の改善を目指す「持続可能な社会と税制・財政プログラム」が中心となって活動しています。詳しくは:http://jacses.org/