サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

2016, 1月の記事一覧

パーム油産業により進行する伐採が、種の絶滅と気候への影響に拍車をかける

横行するプランテーション拡大が深い泥炭地とスマトラ象の主要な生息地を破壊。

地域の命運は、産業の巨人と 地方及び中央政府の集団的な行動に委ねられている。

緊急リリース

 2015年11月10日

Emma Rae Lierley, Emma@ran.org, 425.281.1989

サンフランシスコ – 壊滅的なインドネシアの森林火災シーズンの最中に、本日発表されたRainforest Action Network (RAN)による新しい報告書が、地球上で最も生物多様性に富む地域のひとつにおいて破壊が進行していることを明らかにした。「地球上の最後の場所:ルセル生態系を守るための進捗確認と新たな機会(The Last Place on Earth: Tracking Progress and New Opportunities to Protect the Leuser Ecosystem)」と題されたRANの報告書は、現地工場にパーム油を供給する生産業者による継続的な伐採の証拠に言及している(訳注:ルセル生態系とは、インドネシアのアチェ州及び北スマトラ州にある森林地帯。260万ヘクタールを占め東南アジアの熱帯雨林の中で最も豊かな地帯のひとつである)。

特に、現在、この地域からパーム油を調達している可能性のあるパーム油の三大バイヤーとされるウィルマー(Wilmar International)、ムシムマス(Musim Mas Group)、ゴールデン・アグリ・リソーシーズ(Golden Agri Resources)に焦点を当て、彼ら及び政府当局者が、侵入してくる産業開発事業から絶滅危惧種や地域生活を守るために必要な手順の概要を述べている。

進捗報告書は、インドネシア・アチェ州の開発への新しい進路を見いだすチャンスについて説明している。それはルセル生態系を保護し、平和と生活の安定を確保し、地域社会のための新しい経済的機会を作る機会である。インドネシアの大統領ジョコ・ウィドド氏は、この機会を確保する上で重要な人物である。なぜなら彼は、まもなくインドネシアの裁判所で民事訴訟の対象となるかもしれない保留中のアチェ州における悲惨な計画の承認を拒絶する力を持っているからである。

RANが最初に2014年11月にルセル生態系への脅威を明らかにした1年後に発行したこの最新の報告書は、熱帯雨林が伐採され続け、泥炭地が枯渇し続け、企業と地域社会の紛争が続き、ルセル生態系のための継続的な法的保護が危機に瀕していることを示した。

報告書は、最も重要な現存の低地熱帯雨林や泥炭地が紛争パーム油のために破壊され続けていることを示す新たな衛星画像と現地調査結果を明らかにした。

また報告書では、脅威にさらされた広大な生態系の周辺を侵食する森林破壊活動に責任のある企業を名指しした。それには、インドネシア政府自身のプランテーション会社であるプルクブナン・ヌサンタラIII社(PT. Perkebunan Nusantara (PTPN) III)も含まれている。これら危機に瀕した地域で進行する破壊の規模からみて、今、さらなる集団行動をとらない場合、私たちは永遠にルセル生態系を失う恐れがあることは明らかだ。

RANのアグリビジネスのキャンペーンディレクターであるジェマ・ティラック氏は述べている。「ルセル生態系は、世界で最も豊かな生物多様性の景観地域の一つであり、何百万人もの人々が、その食料、水や生活をここに依存している。しかし、この自然の王冠における宝石-トラ、オランウータン、サイ、ゾウやクマにとっての居住地である泥炭地や低地熱帯雨林-の運命は、今行われる重要な決定に委ねられている。」

「ルセル生態系から紛争パーム油を買い付ける可能性がある三大バイヤーは、ルセル生態系の破壊を停止する購買力を持っている。これらバイヤーは他の利害関係者と協力し、彼らのサプライヤーと地方政府や州政府に本当の意味での奨励策を提供し、熱帯雨林や泥炭地の破壊に対する一時凍結措置を推進し、ルセル生態系のための継続的な法的保護を確保するために、ステップアップする必要がある。」

「人権、森林や地域社会が依存する生態系サービスを保護しながら、多様な経済を構築するようにバランスを取ることが求められる。この機会はつかみ取られなければならない。さもなければインドネシアの最後の森林フロンティア-ルセルの生態系というアチェの最も貴重な資産-は、開発モデルの犠牲になってしまう。スマトラとボルネオの工業開発は、熱帯雨林と泥炭地を破壊しコミュニティの生計を喪失させ土地収奪、紛争、従事する労働者の権利侵害を引き起こしてきたが、それと同じことが起こってしまうのである。」

「ルセル生態系の破壊はアチェの何百万人もの人々にとって悲惨なものとなり、絶滅危惧種を絶滅の淵に追い込むだろう。」ティラック氏は続ける。「ジョコ大統領は、インドネシアの人々のために最善のことをし、国のかけがえのない自然の遺産を保存するために、三大バイヤー、及び、最近推進されているインドネシアのパーム油誓約(Indonesian Palm Oil Pledge :IPOP、 http://www.palmoilpledge.id/ 参照)の仲間たちと力を合わせる力を持っている。森林や泥炭地の破壊を停止する、また産業パーム油開発の拡大を促すために意図的に行われる森林火災を停止する努力は、インドネシアの二酸化炭素排出量と、毎年恒例の煙霧危機の深刻さを縮小し、コミュニティの生活と生計を保障するものとなるだろう。」

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更なる情報は www.ran.org でご覧ください。