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プレスリリース:『生物多様性崩壊をもたらす金融業務』日本語要約版発表 〜メガバンクら邦銀、森林リスク産品にパリ協定以降215億ドルを提供〜(2025/4/10)

三菱UFJと子会社、インドネシア森林火災企業に2億8千万ドル融資の事例も

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部サンフランシスコ、以下、RAN)は、本日、「森林と金融」連合による年次報告書である『生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡』日本語要約版を発表しました(注1)本報告書は大手金融機関が熱帯林地域における森林破壊、生物多様性の損失、気候変動、人権侵害を助長している役割について包括的に分析するものです。日本に関する新たな分析の結果、メガバンクを含む邦銀大手がパリ協定締結以降の2016年から2024年6月、熱帯林破壊に関係する高リスク林業・農業企業に約215億ドルの資金を提供していることが明らかになりました。

要約版では東南アジアでの森林破壊リスクの高いメガバンクの顧客事例も記載しています。その一つは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のインドネシア子会社を通した、大規模な森林火災を繰り返し発生させているアブラヤシ農園企業グループへの融資の事例です。報告書と同時に詳細を発表し、銀行グループの与信方針の抜け穴やデューデリジェンス(相当の注意による顧客の適正評価)の弱さを指摘し、森林火災や違法活動を助長する高リスクな資金提供に警鐘を鳴らしました(注2)

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報告書詳細

本報告書「生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡」は、世界の熱帯林破壊の大部分を引き起こしている「森林リスク産品」セクターの6品目(牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材)に携わる300社の森林部門事業に対する商業資金の流れを、パリ協定採択後の2016年1月から2024年6月の期間において分析しています。報告書では、森林リスク産品セクターへの融資・引受と債券・株式保有において、どの銀行と投資家が最も大きな役割を果たしているかを明らかにしています。森林破壊を引き起こすリスクの高い銀行、つまり資金提供額上位30行のなかには、ブラジルやインドネシアなどの熱帯林諸国の大手銀行や、米国、欧州連合(EU)、日本、中国といった輸入および財政的に重要な区域の大手銀行が含まれます。日本の金融機関による2018年1月から2024年6月の資金提供額はみずほフィナンシャルグループが世界9位(約68億ドル)、MUFGが13位(約53億ドル)、SMBCグループが15位(約4億ドル)と続き、3行ともトップ20行に入りました(表)

表「森林リスク産品への融資・引受額 上位30銀行」(2018年1月-2024年6月、単位:百万米ドル)
*森林リスクセクター159社(東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカ)への融資・引受額、傾向。日本のメガバンクはみずほ(9位)、MUFG(13位)、SMBC(15位)。

日本の金融機関はパーム油と紙パルプ部門に多くの資金を提供しています。融資・引受額は2020年に新型コロナ感染拡大で鈍化したものの、2018年と2019年、2021年には高まりを見せました(図:下)。中でも東南アジアで森林破壊を引き起こしているセクターへの資金提供でのメガバンクの存在は大きく、2018年から2024年6月の期間、MUFGはOECD加盟国の銀行の中で最も多額の融資・引受を行い、みずほは2位、SMBCは5位でした。要約版にはメガバンク各行の東南アジアにおける主要顧客15社も記載されています。中には森林破壊、泥炭地の劣化と火災、土地紛争などの問題を繰り返し指摘されてきたロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)、シナルマスなどの複合企業グループが含まれます。

図:森林リスク産品セクターにおける邦銀の融資・引受動向 〜2016年〜2024年(6月まで)〜
出典:「森林と金融」融資・引受データ 単位:百万米ドル

事例:MUFG、インドネシア泥炭地で大規模「炭素爆弾」に融資

同時にRANは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のインドネシア子会社バンクダナモンを通じた、森林火災企業グループへの2億8100万ドルもの融資事例を発表しました。MUFGは2021年に国際基準である「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」をパーム油の与信方針に採用しました。バンクダナモンも同様の方針を掲げているにも関わらずそれに違反し、泥炭地破壊に伴う大規模な火災を繰り返し発生させているアブラヤシ農園企業グループのトゥナス・バル・ランプン(TBLA)に融資を続けています。2024年10月、インドネシア政府はTBLA子会社に対して6,710億インドネシア・ルピア(4,150万米ドル)の生態系と経済への損害の賠償を求める民事訴訟を起こしました。こうした事例は、銀行グループ内での方針不遵守、顧客に対するデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)や、監視体制および監査委員会のリスク管理における監督機能の弱さが森林破壊や火災、違法活動を可能にし、銀行による高リスクな資金提供の実態を示唆しています。

写真:泥炭地地域で新たに開発された大規模アブラヤシ農園 インドネシア・スマトラ島、2024年12月

RAN日本シニア・アドバイザーの川上豊幸は「メガバンク3行は、2021年に『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)』を環境・社会方針に採用しました。しかし依然として資金提供を通じて、熱帯林の破壊や火災に油を注ぎ続けています。メガバンクのNDPE方針は適用範囲が非常に狭く、農園企業や伐採事業などに限定している点が問題です。現在の方針はパーム油、そして紙の原料となるパルプを調達する加工企業を対象外としていて、森林破壊を包括的に防止する歯止めになっていません。もう一つの問題は、それらの企業を傘下または管理下に置く親会社や企業グループ全体への適用もしていない点です。メガバンクはまず、NDPE方針の適用範囲を加工部門まで含めた上で、顧客の企業グループ全体を含めるように拡大していくことが必要です。そして資金提供の際に、NGOが指摘する問題のある企業の情報を真摯に受け止めて、十分なデューデリジェンスを行うことも重要です」と指摘しました。

結論

報告書は長期的な金融の安定を保つために、デューデリジェンスの向上、NDPE方針の強化と実行などが必要であると結論付けています。銀行には、NDPE方針の厳格な実施を顧客企業に求め、実施状況をモニタリングし、顧客企業の方針違反に対処できるような仕組みを導入するといった具体的な取り組みが不可欠です。

※「森林と金融」連合は、キャンペーン活動や草の根活動、調査活動を行う10団体の連合体です。レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、TuK インドネシア、プロフンド(Profundo)、アマゾン・ウォッチ、レポーターブラジル、バンクトラック、サハバット・アラム・マレーシア(国際環境NGO FoE Malaysia)、FoE US、oEオランダ(Milieudefensie)、CEDカメルーンによって構成されています。

 

注1)報告書日本語要約版版:forestsandfinance.org/BoBC-24-JA-summary
日本語ウェブサイト:forestsandfinance.org/ja/banking-on-biodiversity-collapse-ja

『森林と金融』は、東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカにおける紙パルプやパーム油など森林リスク産品への資金流入を包括的に分析したオンラインデータベース。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年、部門別に検索が可能。

●対象事業地域:世界三大熱帯林地域である東南アジア、ラテンアメリカ(アマゾン)、中央・西アフリカ(コンゴ盆地)
●対象産品:牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材(森林リスク産品)
●対象期間:融資・引受は2016年1月から2024年6月、債券・株式保有は2024年7月時点

英語ウェブサイト:forestsandfinance.org/banking-on-biodiversity-collapse(2024年10月に発表)

注2)RANブログ「MUFG、インドネシアの泥炭地で大規模『炭素爆弾』に融資〜子会社銀行、アブラヤシ農園企業グループに2億8100万ドルを提供 複数の事業管理地で泥炭地破壊と度重なる火災を起こす〜」、2025年4月10日
※泥炭地での農園開発は膨大な量の二酸化炭素が放出され『炭素爆弾』とも呼ばれる。泥炭地から水が抜かれ、土地が乾燥することから火災のリスクも急増し、生態系と気候変動にとって大きな脅威となる。

声明:MUFGはNZBA脱退後も約束を反故にせず、 パリ協定1.5度目標に整合しない企業への融資中止を(2025/4/9)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が銀行間の自主的イニシアティブ「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から3月19日に脱退したことを受けて、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、RAN)は9日、MUFGに、NZBAから脱退しても投融資ポートフォリオをパリ協定1.5度目標と整合させる約束を反故にせず、パリ協定の1.5度目標に整合しない企業への融資の中止を求める声明を発表しました。

RANは3月と4月に2回にわたって、MUFGに脱退の理由を質問するメールを送りました。同グループは「今後の気候変動対策を検討するにあたり、NZBAにおける加盟継続のメリットを総合的に判断した結果だ」とし、「カーボンニュートラル実現や、パリ協定1.5度目標達成へ MUFG として貢献するというコミットメントは不変です」と回答しました。

 

RAN日本シニア・アドバイザー川上豊幸は「MUFGから『パリ協定1.5度目標達成に貢献するというコミットメントは不変である』という回答をもらいました。MUFGが、2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標に今後も取り組むと改めて言及したことは重要です。なぜなら米国では大手銀行のNZBAからの脱退が続き、その一行のウェルズ・ファーゴが2月、2050年までのネットゼロのコミットメントを反故にした実例があるからです。MUFGはこのような動きに屈することなく、世界中で危機感が高まる気候変動問題に対して、日本最大手の銀行として責任を持って行動してもらいたいと願います」と主張しました。

一方、MUFGは新規の液化天然ガス(LNG)事業への巨額の投融資など、パリ協定の1.5度目標に整合しないプロジェクトへの資金提供を行っています。RANら『化石燃料ファイナンス報告書2024』によると、パリ協定採択以降、2016年から2023年のMUFGの化石燃料産業への投融資額は世界4位の約3,077億米ドルで、LNG事業を拡大する企業130社への2023年の投融資額は世界2位の約84億米ドルでした。例えば環境・社会面でも大きな問題がある米国テキサス州メキシコ湾岸地域で計画中のリオ・グランデLNG事業を進めるネクスト・ディケイド社に、MUFGは2023年に約21.7億ドル以上を提供しています。

川上は「リオ・グランデLNG施設が稼働すれば石炭火力発電所50基分に相当する二酸化炭素を排出することになると懸念されています。今年、2024年の平均気温がパリ協定の抑制目標である1.5度上昇を初めて上回ったことが明らかになりました。MUFGは直ちに、リオ・グランデLNG施設など、1.5度目標の達成を困難にする事業や企業への資金提供は中止すべきです」と強調しました。

 

昨年12月、米メキシコ湾岸地域の住民や先住民族、市民団体らはNZBAと、その母体であるグラスゴー金融同盟(GFANZ)、国際連合に書簡を送り、NZBAからの加盟銀行脱退の懸念を示し、NZBAは圧力に屈せず規約を維持し、加盟銀行に「世界の平均気温上昇を1.5度に抑える」というパリ協定の合意と目標を整合させることを要請していました。今年3月、 日本のメガバンク3行全てもNZBAから脱退しました。ほぼ同時期にNZBAは加盟規約の見直しを巡り、融資案件を1.5度以内に抑える目標と整合させる必要性について撤廃が提案されていると報道されました。MUFGは2025年3月までNZBAステアリンググループ(地域毎に選出される金融機関で構成)の一員だったとRANに回答しましたが、規約の見直しと脱退との関係については「コメントを控える」としています。

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-2F
日本チームマネジャー:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

声明:トランプ大統領就任日の大統領令について(2025/1/20)

 

2025年1月20日(月)に大量の大統領令が出されたことを受けて、米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、RAN)事務局長ジンジャー・キャサディは以下の声明を発表しました。

 

「トランプ政権によるエネルギーと環境関連の大統領令は破壊を招く近視眼的なもので、気候変動とコミュニティへの代償を顧みず、企業利益を最大化するという一大テーマがあります。

アラスカ固有の生態系での無制限の石油・ガス開発許可からパリ協定離脱まで、これらの大統領令は科学と現実に真っ向から反しています。そして、米国と世界中のコミュニティ、特に脆弱な黒人、先住民族、褐色人種、低所得者のコミュニティが、その代償を支払うことになります。

記録的な熱波、猛威を振るう山火事、激しさを増す嵐、そして何百万もの人々が気候変動による移住を余儀なくされている現実を無視する余裕は私たちにはありません。

私たちは前に進まなければなりません。クリーンエネルギー中心の未来への公正な移行が私たちには必要です。しかし、この政権は私たちの未来を、過去の汚れた化石燃料経済にしばりつけようとしています」

 

レインフォレスト・アクション・ネットワーク事務局長
ジンジャー・キャサディ

(英語プレスリリース”Statement on Trump Inauguration Day Executive Orders”、和訳版は2025年1月21日投稿)

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
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共同声明:SOMPOが日本の損保で初めてFPICを含む先住民族の権利を尊重する方針を設定(2025/1/15)

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

1月10日、日本の大手損害保険会社の1つであるSOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)は、「事業におけるESG配慮」方針を更新し、「保険引受・投融資における注意を要する事業」の対象に先住民族の人権を侵害する恐れのある事業を新たに加え、FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意)等の国際スタンダードを参照する旨を公表しました(※1)。保険引受・投融資においてFPICを尊重する方針を策定したのは、日本の損害保険会社として初であり、私たちはSOMPOのこの方針策定を歓迎するとともに、東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(以下、MS&AD)に対しても、FPICを含む先住民族の権利を尊重する方針を早急に策定するよう要請します。

FPICは先住民族に関する国際連合宣言で明記されている権利であり、先住民族の参加権及び、先住民族や先住民族の土地等に影響を及ぼす可能性のある事業に同意又は不同意する権利を保証しています。また、FPICによって先住民族は、事業の設計や実施、モニタリング、評価の段階で交渉することが可能になります(※2)

なお、SOMPOによる保険引受が判明した米国リオ・グランデLNG事業の事業者NextDecadeは、同事業について現地の先住民族であるカリゾ・コメクルド族との協議会を一度も開催したことがなく、 FPICが取得されていません(※3)。現地住民・環境NGO・現地自治体は、事業者が適切な環境影響調査を怠っていると主張して、これまで抗議活動や訴訟を起こしてきましたが、2024年8月に現地裁判所が事業の建設及び稼働の承認を破棄したことにより、住民側が勝訴しています(※4)。昨年10月には、カリゾ・コメクルド族や現地コミュニティの代表団が来日し、リオ・グランデLNG事業を支援するSOMPOや銀行と会合を行い、事業からの撤退を求めました(※5)

新規の化石燃料事業である同事業は、パリ協定1.5度目標と整合しないことから実施すべきではありませんが、加えてSOMPOはリオ・グランデLNG事業の事業者に対してFPICが取得されているかを確認するべきで、FPIC取得が確認できない場合は直ちに撤退するべきです。

また、東京海上及びMS&ADに対しては、FPICを含む先住民族の権利を尊重する方針を早急に策定するよう強く求めます。

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

注:
※1:https://www.sompo-hd.com/csr/esg/product/
※2:https://www.ran.org/press-releases/axis-capital-becomes-first-north-american-insurer-to-adopt-policy-on-free-prior-and-informed-consent/
※3:https://jacses.org/2475/
※4:https://www.sierraclub.org/press-releases/2024/08/dc-circuit-rules-against-ferc-approval-lng-and-pipeline-projects-south-texas
※5:https://japan.ran.org/?p=2347

プレスリリース:「森林&人権方針ランキング2024」発表 〜ユニリーバがトップ 日清食品やP&Gは取り組みが遅れ最下位〜(2024/12/6)

大手消費財企業、森林破壊と人権侵害を依然として助長〜グローバル企業10社の森林及び人権方針を評価〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日6日、「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2024」を発表し(注1)、グローバル消費財企業はサプライチェーン(供給網)で調達するパーム油や大豆、包装紙といった森林破壊リスクが高い産品の生産を通して、森林破壊と人権侵害を依然として助長していると指摘しました。

本ランキングは、熱帯林地域で森林破壊と人権侵害のリスクが高い産品に関与している大手消費財企業10社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価・分析している年次報告です。サプライチェーンでの森林破壊と人権侵害を阻止するための取り組みを詳細な基準で比較評価したところ、どの企業も昨年と大きな変化はなく、合格点といえる「C」評価を得たのはユニリーバのみでした。最下位はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で、日本企業は花王が「D(3位)」、日清食品ホールディングスが5段階で最低ランクの「不可(同点7位)」でした。

評価方法は、各社の方針と取り組みについて森林と人権分野の12項目を24点満点で評価しています合計得点に合わせてA(21〜24点)、B(17〜20点)、C(12〜16点)、D(6〜11点)、不可(0〜5点)で評価しました。パーム油、紙パルプ、大豆、牛肉、カカオ、木材製品など、森林を破壊するリスクのある産品(森林リスク産品)のセクターにおける傾向や動向を分析しています。10社のランキングの詳細は以下の通りです。

*Y=ありor全て(2点)、P=一部(1点)、N=なし(0点)

【森林&人権方針ランキング2024】調査概要

▪️調査対象企業:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
▪️調査期間2024年10月〜11月
▪️調査方法:各社の環境及び人権に関する方針を調査・分析(ウェブサイトなどで公開されている最新版)、各社へのヒアリング
▪️主な森林・人権方針の評価項目(全12項目、各2点)

*2点:方針あり/ 全体に採用、1点:一部に採用、0点:方針・計画なし

  • 「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針・適用範囲:パーム油や紙パルプなど森林リスク産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準(注3)。特に、個別産品だけではなく森林リスク産品全般への適用、供給業者の企業グループ全体への適用を重視している
  • 「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注4)
  • 人権擁護者への暴力や脅迫への「ゼロトレランス」(不容認)方針の有無(注5)
  • サプライチェーンの透明性:EUDR要件(注6)である、原料生産地までのフルトレーサビリティ達成の取り組みも含む(2023年版から追加)
  • 森林フットプリントの開示(注7)、など

全体の評価・傾向

「リーダー企業」(C評価)

  • ユニリーバは、昨年と同様の「C」評価を維持し、「リーダー企業」としての存在感を見せました。産品横断的な苦情対応進捗表を公表することで、リーダーシップを発揮しました。 

「中位企業」(D+、D、D -評価)

  • コルゲート・パーモリーブは、「中位企業」の中で高い実行力を見せました。特筆すべき点は苦情処理記録を公表し、人権擁護者への暴力や脅迫を一切容認しないことを約束してリーダー企業と肩を並べました。
  • 花王マースは、昨年は少し前進が見られましたが、今年は実行力を改善することができませんでした。上記3社は、森林破壊の流れを止めるために断固とした行動をとる必要があります。
  • ペプシコは「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針遵守の独立した検証を進めず、苦情対応追跡表も公表しなかったことから、今回のランキングでは後退しました。
  • ネスレも後退し、サプライチェーンにおいて森林破壊を起こしている悪質業者の責任を追及する項目では後戻りしました。

「不可企業」(F評価)

  • フェレロ、モンデリーズ、日清食品、プロクター・アンド・ギャンブルの4社は、森林破壊と人権侵害への対応で下位グループにランクされ、依然として実行力の評価は低いままとなりました。4社は森林破壊に歯止めをかけ、先住民族コミュニティを搾取から守るために必要な組織的な改革を起こすことができませんでした。

日本企業の評価

  • 総合点は日清食品が不可(5点)、花王はD(8点)で、昨年とスコア及び点数は同じでした。
  • 昨年同様、両社とも「NDPE方針」を既に採用し、2点の評価を得ています。
  • 「NDPE適用の範囲」については、花王は昨年、森林リスク産品全般の供給業者とその企業グループ全体も適用対象としていることが確認できたため、評価は満点の2点です。一方、日清食品は一昨年から得点はなく、グループ調達方針の環境分野にNDPE支持を記載していますが、NDPE主要項目が明記されているのはパーム油事業のみで森林リスク産品全般ではありません。また、供給業者にNDPEの採用を義務化していなく、供給業者の企業グループ全体も適用範囲に含んでいません。
  • 「森林フットプリントの開示」については、花王が今年5月にインドネシア・リアウ州の分析(英語)を公表しましたが、地域が限定的であることから1点にとどまりました。日清食品は実施を表明したことで1点を得ましたが、まだ開示がなく、明確な開示期日も不明です。
  • 「問題企業の責任追及」では、日清食品は昨年「苦情処理リスト」を公開し、違法パーム油生産農園との取引停止や対応状況を公表しました。今年6月にも情報を更新し1点を得ていますが、方針違反への対応手順が公表されていません。花王は小規模農家生産者を対象とした苦情処理メカニズムはありますが、大規模農園・植林企業などを対象としたリストは依然として開示がなく得点はありません。

RAN日本シニアアドバイザーの川上豊幸は「花王は、今年はNDPE方針の実施体制強化を示すことができませんでした。パーム油事業について2025年までに『使用するパーム油をRSPO認証油に100%切り替えをめざす』と表明していますが、その中身は非認証油が混入するマスバランス方式や、認証油のクレジットを取引するブック・アンド・クレーム(B&C)方式としています。また、サプライヤーなど取引先企業の独立監査を伴っていなく、実施体制の強化とは判断できませんでした」と評価しました。

続けて「日清食品は引き続き『不可』評価でした。NDPE方針遵守が森林リスク産品全般に適用されず、パーム油に限定されたままです。またNDPE方針の採用を供給業者に義務化していません。そして持続可能なパーム油のみを2030年までに調達するとの約束は前倒しされていませんし、サプライヤーへの独立監査も求めていなく、改善は見られませんでした」と指摘しました。

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーン

2020年4月の開始以来、評価分析を毎年実施し、今年で5回目の発表となります。グローバル企業に対し、世界最後の熱帯林への産品供給源の拡大を阻止し、企業の搾取から自分たちの土地を守るために闘う先住民族コミュニティの保護を確保するため、直ちに具体的な行動をとるよう求めています。

2024年版のランキングは、気候変動と生物多様性危機の緊急性が高まる中、多くの消費財企業が意味のある変化を実施できていないことを浮き彫りにしています。そして今回のランキングは森林と人権にとって重要な時期に発行されました。まず、2024年末に施行が予定されていた欧州連合の森林破壊防止法(EUDR)が1年延期され、消費財関連の森林減少を規制する取り組みがさらに先送りされました。人権面では、国際NGO「グローバル・ウィットネス」が毎年発表する報告で、世界各地で起こる土地や環境を守る人々の殺害増加の原因として、アグリビジネスセクターが上位に挙げられています。 

RANフォレスト・キャンペーン・ディレクターのダニエル・カリーヨは「森林保護活動家は増大する脅威に直面しています。2023年だけで196人が殺害されました。企業がサプライチェーンで責任を果たしていないことは、先住民族のリーダーや活動家への暴力の増大に直接つながっています。世界の大手消費財企業は、森林保護と人権尊重のために真の行動に踏み出す時です。気候危機が加速するなか、企業はその方針と行動を緊急事態に合わせなければなりません。森林は減少の一途をたどり、最前線のコミュニティは包囲されています。消費者、投資家、市民社会は今、ただの約束ではない、それ以上の行動を求めています」と強調しました。

調査対象の大手消費財企業10社は、いずれも世界で続く森林破壊や人権侵害に関与しています(注8)。RANは、消費財企業が森林伐採や土地の権利侵害を助長し、環境保護活動家や人権擁護者が直面する脅威を増大させているとして、これからも責任を問うていきます。 

脚注

注1)「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行に実際の行動を起こすよう要求しています:www.ran.org/kfs-scorecard-jp/

ランキング評価方法論

注2)消費財企業10社:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
*10社全社が全容を報告している唯一の産品であるパーム油を例にとると、10社合計で約230万トンのパーム油と、約140万トンのパーム核油およびその派生物を購入している(2022年)。パーム油世界市場の約3%、パーム核油世界市場の約17%に相当する(2023年版報告書より)。

注3)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い<High Carbon Stock:HSC>森林の保護、保護価値の高い<HCV: High Conservation Value>地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止といった要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。

*参考:「『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針とは?」ブリーフィングペーパー

注4)「FPIC」(エフピック)とは Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注5)「ゼロトレランス・イニシアティブ」ウェブサイトを参照のこと

注6)EUの「森林破壊フリー製品に関する規則」(EUDR:通称「森林破壊防止法」):EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注7)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注8)以下を参照のこと

RANプレスリリース「RAN新調査報告書『包囲下のオランウータンの首都』発表〜違法パーム油、日清食品などのサプライチェーンに混入の可能性が継続〜」(2024/11/22)

RANプレスリリース「新報告書『RGEグループの実態:無秩序に広がる破壊の帝国を暴く』発表〜止まらない環境破壊と違反行為、消費財企業と銀行に同グループとの取引停止を求め〜」(2024/3/18)

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:RAN新調査報告書『包囲下のオランウータンの首都』発表〜違法パーム油、日清食品などのサプライチェーンに混入の可能性が継続〜(2024/11/22)

インドネシア保護区での違法森林伐採、最新鋭の衛星画像調査で明らかに

  • インドネシアの野生生物保護区で、森林破壊の新証拠が最新鋭の衛星画像で明らかに。保護区内に652ヘクタール(東京ドーム約140個分)もの違法アブラヤシ農園を確認。
  • 消費財企業は違法パーム油が供給網に混入するリスクに、銀行は違法パーム油を調達する可能性のある顧客に資金提供するリスクにさらされている。
  • 調査結果は、企業の森林破壊禁止公約の実効性、EU新規制を遵守する準備が十分かどうか疑問を投げかけている。
  • 違法パーム油の問題が続くも、11月13日に行われた「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)年次総会では基準が弱体化された。


写真:違法アブラヤシ農園の一つ。ラワ・シンキル野生生物保護区内の泥炭林を伐採・排水して造成された。2024年9月、インドネシア・アチェ州

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は11月11日、タイ・バンコクで13日まで開催された「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)に合わせ、新報告書『包囲下のオランウータンの首都』を発表しました(注1)

本報告書は、インドネシア・スマトラ島の「ラワ・シンキル野生生物保護区」で、大規模な違法伐採が今も起きていることを明らかにしました。RANは7月、最新鋭の衛星画像「プレアデス・ネオ」による調査を実施し、国の指定する保護区がパーム油生産のために破壊されている実態を確認しました。RANは同保護区で2019年22年にも調査を行い、パーム油の原料となるアブラヤシの農園造成による森林破壊を発見して公表しています。この地域は生物多様性豊かなホットスポットで、「世界のオランウータンの首都」とも呼ばれる「ルーセル・エコシステム」の南部に位置します。

調査は今年7月、同保護区の泥炭林地域におけるアブラヤシ農園拡大の範囲を把握するため、エアバス社の「プレアデス・ネオ」衛星による飛行撮影を実施しました。この衛星画像は30cmという高い解像度をもち、これほどの高解像度画像が公開されたことは同地域では初めてです。画像分析の結果、同保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)に及ぶ違法アブラヤシ農園が存在し、そのうち453ヘクタール(同97個分)がアブラヤシ果実の生産が可能な土地であることを特定しました。

現地調査、消費財企業と製油企業のサプライチェーン分析を加えた一連の調査結果は、消費財企業と銀行の森林破壊禁止方針の実効性や、消費財企業とパーム油企業が2025年末に施行となる欧州連合(EU)の新規制「森林破壊禁止法(EUDR)」を遵守する準備が十分かどうか緊急の疑問を投げかけています。

図1:2016年と2024年の衛星画像比較:黄色が野生生物保護区の境界線(報告書より)

 

【調査概要】

■調査時期:2024年7月(衛星調査)、2024年9月〜10月(現地調査、サプライチェーン分析)

■調査地域:インドネシア・スマトラ島の「ルーセル・エコシステム」内、国の保護区「ラワ・シンキル野生生物保護区」上空および周辺

■対象消費財企業8社:日清食品、花王、プロクター&ギャンブル、ネスレ、モンデリーズ、コルゲート・パーモリーブ、ペプシコ、ユニリーバ(注2)

■対象銀行11社:三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ING、UBS、HSBC、ラボバンク、CIMB、メイバンク、BNPパリバ、UOB、DBS、OCBC(注3)

■調査方法:1)「プレアデス・ネオ」衛星画像分析(違法農園および森林・泥炭林減少の確認)、2)現地調査(アブラヤシ農園から搾油工場を追跡)、3)サプライチェーン分析(製油企業・消費財企業の調達先リストを分析)、4)資金提供調査(製油企業への銀行の資金提供額を調査、注4)、5)The TreeMap社との衛星画像分析(2016年6月に撮影された画像を用い、期間別の森林消失を分析)

【主な調査結果】

  • 広範囲に及ぶ違法アブラヤシ生産:ラワ・シンキル野生生物保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)の違法農園があり、そのうち果実の収穫可能な土地は453ヘクタール(同97個分)だった。これは違法生産されたパーム油がすでに世界の主要消費財企業や供給業者のサプライチェーンに混入している可能性を示唆している。
  • 影響を受ける消費財企業と銀行:プロクター&ギャンブル(P&G)、ネスレ、モンデリーズ、ペプシコ、日清食品などの大手消費財企業は、違法パーム油の調達が発覚したロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(子会社のアピカル)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Groupといった製油企業からパーム油を購入することでリスクにさらされている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ラボバンク、HSBCなどの銀行は、上記パーム油企業に資金提供をすることでリスクにさらされている。これらのパーム油企業は、RANの過去10年にわたる調査で、上記保護区で違法に生産されたパーム油を供給している搾油工場から油を調達していることが繰り返し明らかにされている。
  • 森林減少率の増加:国の法律で保護されている地域にもかかわらず、同保護区での森林伐採は2021年から2023年にかけて4倍に増加している。2016年以降の総伐採量の74%が、欧州連合(EU)の新規制「森林破壊禁止法(EUDR)」の森林破壊禁止の基準日(注5)である2020年12月31日以降に伐採されていることから、法的保護や規制要件が組織的に無視されていることを示している。
  • 新たな抜け穴:今回の調査では、裕福な土地投機家が小規模農家を装うことで、違法森林伐採への責任を回避する「パーム油ロンダリング」という新たな抜け穴が立証されている。

図2:ルーセル・エコシステム周辺の搾油工場からパーム油を調達している製油企業5社への融資・引受銀行と資金の流れ。上記11行はNDPE方針をもっている。2020年1月から2024年6月、単位:百万米ドル 出典:「森林と金融」データベース

 

パーム油産業はすでに「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ(NDPE)」方針を誓約し、EUDRは2025年12月31日の施行が提案されています。しかし今回の調査結果からは、こういった規制が採用された後も、違法伐採が著しく増加していることが浮き彫りになりました。RANはThe TreeMap 社とも衛星画像調査を行い、同保護区内で2016年以降に2,577ヘクタール(東京ドーム約551個分)もの森林が失われたことを確認しました。残念なことに、世界のパーム油産業が森林破壊禁止の基準日として設定した2015年12月から2020年12月の間に662ヘクタール、その後、EUDRの基準日である2020年12月以後には1,915ヘクタールの森林が皆伐されました(注6)。

本報告書は、違法な大規模アブラヤシ農園の破壊的な影響を明確に示しています。RANはこの違法農園がこの地域の森林破壊の主な原因であると特定しました。特に懸念されるのは、この環境危機をもたらしているのは小規模農家ではなく、土地投機家であるという点です。

RAN森林政策ディレクター、ジェマ・ティラックは「世界で最も重要な生態系のひとつが破壊され続けていることは、消費財企業や銀行、消費者への警鐘です。今回の調査で得られた証拠は、違法に皆伐された土地で生産されたパーム油がグローバルサプライチェーンに混入し、スマトラオランウータンのような象徴種が深刻な危機にさらされていることを明確に示しています。私たちが日常的に購入する製品、例えば化粧品のOLAY、ミロ、オレオ、ポテトチップスのLay’s、即席麺のカップヌードルなどのサプライチェーンには違法パーム油が混入するリスクがあり、その証拠も揃っています」と強調しました。

The TreeMap社のデビッド・ガヴォー(David Gaveau)博士は「今回初めて、時を得た衛星画像によってラワ・シンキル野生生物保護区におけるパーム油危機の全容が明らかになりました。最新鋭の衛星画像は、アブラヤシの木々や苗木の一本一本まで細かく捉えることができます。この高度なツールが公開されたことで、以前は無料の衛星データで見逃されていた違反行為も記録できるようになりました」と語りました。

 

13日、RSPOはバンコクで開催された年次総会において、認証基準改訂版(「RSPO原則と基準2024」)の承認を決議しました。RSPOは森林破壊禁止の基準日(2018年11月)を削除し、森林破壊禁止を実施するために使われる信頼できる従来の定義を、独自に作成した欠陥のある定義に置き換えて、基準を弱体化させました。ティラックは「違法に生産されたパーム油は、RSPOの『マスバランス』方式を通して世界の市場に流通しています。この方式では、認証農園で生産されたパーム油に非認証油が混合される問題があります。RSPOは、消費者や市場からの信頼を維持したいのであれば、その基準を強化する必要があります。今回の基準改訂は、執行力の欠如、腐敗した監査プロセス、欠陥のある苦情処理メカニズムによってもたらされた欠陥だらけの認証制度をさらに弱体化するものです」と批判しました(注7)。

 

RANは、消費財企業、パーム油企業、金融機関が直ちに協力し、保護区のあるシンキル・ベンクン・トゥルモン地域の保護に向けて持続可能な解決策に投資するよう強く求めています。熱帯低地林と泥炭地の保護を優先しつつ、同時に地域住民の権利と生業を尊重するコミュニティ主導の農業を育成するという、将来の見通しを共有することが必要です。

RANは、本報告書で言及された全ての消費財企業と銀行に連絡を取り、その回答は報告書に含まれています。さらに詳細な情報や分析、衛星画像については、RANの監視専用プラットフォーム「Forest Frontlines」および「Nusantara Atlas」をご覧ください。

 

注1)RAN報告書(英語)『包囲下のオランウータンの首都』(‘Orangutan Capital’ Under Siege)

注2)対象とした消費財企業8社の調達先搾油工場一覧には、違法パーム油購入が明らかになった搾油工場企業 (PT. Global Sawit Semesta:PT. GSS)が記載されていた。各社リストのリンクは報告書を参照のこと。

注3)

a) ラワ・シンキル野生生物保護区とルーセル・エコシステム周辺の搾油工場からパーム油を調達している5社、
b) 違法パーム油を調達している搾油工場企業からパーム油を調達している製油企業を特定し、該当企業に資金提供をしている、または過去にしていた銀行を対象とした。

上記製油企業5社はロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループ(アピカル・グループ)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Group、ウィルマー・インターナショナル、シナルマス・グループ(ゴールデン・アグリ・リソーシズ:GAR)である。そのうち、RGE、ムシムマス、Permata Hijau Groupは上記  b)に該当する。

注4)製油企業と銀行

RGE、ムシムマス、Permata Hijau Group:MUFG、欧州の銀行ING、UBS、HSBC、ラボバンクなどから資金提供を受けている。

ウィルマー、GAR(最新搾油工場一覧にPT. GSSは含まれていないが、過去に調達していたことがある):MUFG、マレーシアの銀行CIMBとメイバンク、フランスの銀行BNPパリバ、シンガポールの銀行UOB、DBS、OCBCから資金提供を受けている。出典:「森林と金融」データベース

注5)「基準日」:カット・オフ日ともいう。基準日以降に森林伐採・転換が行われた場合、その地域や生産単位が、森林伐採や転換を行わないという約束、方針、目標、その他の義務に違反していると見なされる。アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)の定義を参照のこと。

注6)EUDR施行後は、2020年12月31日以降に森林伐採・劣化の起きた場所で生産された商品が、EUへの輸出不可となる。

注7)RAN声明:RSPO認証基準改訂について(英語)

 

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。


本件に関するお問い合わせ

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