サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘人権侵害’カテゴリーの記事一覧

プレスリリース:『森林と金融』グローバルのデータベース発表〜パリ協定後、森林破壊企業に1,500億ドルの資金が流入〜(2020/9/2)

紙パルプ、パーム油部門等、世界三大熱帯林での合計額を初分析〜銀行の資金提供額でみずほ世界5位、三菱UFJはパーム油部門で上位一行に〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他5団体は、9月1日に『森林と金融』データベースの調査範囲を東南アジア限定からグローバルに拡大し、日本の3メガバンクを含む世界の銀行が、2016年以降、世界三大熱帯林分布地域での森林破壊と土地劣化を加速させている産品の生産や取引に約1,540億米ドルの融資と引受を行ったことを明らかにしました1

『森林と金融』は、東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地を含む)における紙パルプやパーム油などの産品への資金流入を包括的に分析した初のデータベースです。データ分析の結果、銀行による対象事業への融資と引受はパリ協定が締結された2015年12月以降も40%増加し、同時に、機関投資家が370億米ドルの資産を対象企業の株式や債券で保有していることが分かりました(2020年4月時点、対象事業を特定して計算)。今年もインドネシアやアマゾンで森林火災が発生し、煙害や健康被害の不安が高まる中で新型コロナウイルスの感染拡大が重なることから、金融機関の責任が問われます。

【概要】
RANを含む6団体で構成される「森林と金融連盟」による共同プロジェクト。世界三大熱帯林地域で、森林に影響を及ぼす事業を行う企業約300社へ流入する資金を明らかにするオンラインツール。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年度、部門別に検索が可能。
●対象事業地域:東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地含む)
●対象産品:紙パルプ 、パーム油、牛肉、大豆、天然ゴム、木材
●対象期間:2013年から2020年4月

 【主な分析結果】
●パリ協定締結以降、森林に影響を及ぼすリスクのある事業に流れた融資・引受は1,540億米ドルにのぼり、その約60%が15銀行のみで占められている(※)

●上記15銀行のうち8行が、3メガバンクも含め、国連の「責任銀行原則(PRB)」の署名企業で、銀行の事業戦略を「パリ協定」と「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿ったものとすることを約束している。特にSDGs目標15では「2020年までの森林減少阻止と劣化した森林の回復」をターゲットにしている。

●資金の流れは、ブラジル、中国、インドネシア、マレーシア、米国、日本の銀行からが大きい。この分析結果は、金融セクターを世界の環境および社会的優先事項に合致させるために必要な規制と企業方針が不足していることを表している。

●全体で、ブラジル銀行が最大の資金提供者である。2016年以降、森林リスクのある産品事業に300億米ドルを提供したが、ブラジルで事業を行っている企業にほぼ限定。牛肉、大豆、紙パルプ事業に資金提供されている。

●みずほフィナンシャルグループ(みずほ)は全体で世界5位で55億米ドルの融資・引受を提供。紙パルプへの資金提供が大半を占めている。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG )の融資・引受額はそれぞれ29億米ドルで13位、14位とつづいた。MUFGはパーム油部門で世界最大の資金提供者の一つである。

【背景】
様々な多国間方針や業界の方針が森林破壊ゼロを約束しているにも関わらず、熱帯林の消失面積は過去10年間でほぼ倍増した。主な原因は農業目的の皆伐で、多くの場合が不法に行われ、汚職、脱税、組織犯罪と深いつながりがある。森林を犠牲にして生産される産品は総称して「森林リスク産品」と呼ばれ、牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材が含まれる。2019年だけで1,190万ヘクタールの熱帯林が失われた(注2)。国連環境計画によると、森林破壊および関連する野生生物の生息地喪失は、新型コロナウイルスのような人獣共通感染症の出現における重要な要素となっていながら(注3)、コロナ感染拡大中、森林破壊は50%以上も増している(注4)。融資と引受、そして投資は森林破壊に責任がある企業の事業拡大と日々の事業に非常に重要である。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「いま、世界に残る最後の熱帯林では、意図的な火入れが原因で火災が起きています。紙やパーム油などの産品を生産する農地開墾のために『安価な』方法として火が使われているからです。日本のメガバンクは、顧客企業の農業生産事業が森林火災に拍車をかけていることを知りながら資金を提供し、化石燃料に資金を提供することによって気候危機と火災のリスクを悪化させています。このような資金提供は、PRBに署名した際の約束と合致していません」と指摘しました。

RANは同日、MUFGのアメリカ本部前(ニューヨーク市マンハッタンの大通り「アベニュー・オブ・ザ・アメリカス」)で、同社に熱帯林火災への資金提供を止めるよう求めてアピール行動を行いました。ハイネケンは「三菱UFJはパーム油産業への世界最大の資金提供者の一つです。パーム油産業は継続的な森林や泥炭地の破壊と、インドネシアで毎年起こる森林火災に大きな責任があります。しかし、三菱UFJのパーム油に関する与信方針は森林や泥炭地、人権を十分に保護していなく、さらにインドネシア現地の子会社であるバンク・ダナモンには適用されていません。三菱UFJにESG方針の早急な強化を求めます」と強調しました。

Photo by Erik McGregor for Rainforest Action Network

TuKインドネシア事務局長 エディ・スカルノ氏は「インドネシアで事業をする銀行と機関投資家は、森林破壊、泥炭地破壊、人権侵害に、顧客企業の事業を通して日常的に資金提供をしています。しかし銀行は、毎年のように大きな健康被害をもたらす煙害(ヘイズ)を含め、自社事業の直接的な影響を市民、そして株主や規制当局に開示していません」と批判し、「金融セクターの監視を強化し、銀行にはより厳しい貸付基準の導入を強いるといった、緊急の改革が必要です」と続けました。

ブラジルの環境保護団体アマゾン・ウォッチ プログラム・ディレクター クリスチェン・ポワイレ氏は「アマゾン先住民族の人々は、壊滅的な火災の季節に、新型コロナウイルス感染拡大による犠牲者が出る悲劇にも直面しています。ブラジルのアマゾン全域で発生した火災は、過去10年間で最も多く、先住民族の土地で昨年以降は77%も増加しています。この急激な増加は、非合法な森林破壊と、森林にリスクを及ぼす産品生産による火入れの産物で、大手グローバル金融機関によって資金が提供されています。世界の銀行と投資家には、『森林と金融』データベースは災害の共犯者を明らかにしていると伝えたいです」と訴えました。

※15銀行の一覧は別紙「【世界】上位15銀行 部門別の融資と引受」を参照ください。

注1)「森林と金融」ブリーフィングペーパー(2020年9月更新版)

「森林と金融」データベース

方法論:各熱帯林分布地域で森林破壊や土地劣化のリスクを及ぼす事業を行う企業を特定した上、同企業の生産、一次加工、貿易、製造部門に流れる投融資として合理的に考えられる金額を計算しています。

協力団体:レインフォレスト・アクション・ネットワーク、TuKインドネシア、プ ロフンド(Profundo)、レポーターブラジル、アマゾン・ウォッチ、バンクトラック

注2)世界資源研究所、“We Lost a Football Pitch of Primary Rainforest Every 6 Seconds in 2019”、2020年6月2日

注3)国連環境計画、“Preventing the next pandemic – Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission”、2020年7月6日

注4)フィナンシャルタイムズ、“Global deforestation accelerates during pandemic: Tree cover losses increase 77% as collapse in economies pushes exploitation of resources”、2020年8月9日

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※追記:「森林と金融」ブリーフィングペーパーへのリンクを追加しました(2020年9月4日)

プレスリリース:三菱UFJ、他大手銀行・消費財企業、インドネシア「紛争パーム油」生産に加担(2020/8/28)

地域住民から略奪された土地で生産

インドネシアーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、インドネシアNGO2団体、LBHバンダアチェとWalhi(ワルヒ)アチェと現地調査を行い、大手パーム油企業ゴールデン・アグリ・リソーシズ(GAR)が地域住民の土地権を侵害して生産された「紛争パーム油」を大手消費財企業に供給していることを明らかにしました(注1)。GARの供給先にはネスレ、マース、モンデリーズ、ペプシコ、ユニリーバなどが含まれます。また、GARは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の顧客企業であり、MUFGはESG(環境、社会、ガバナンス )方針で違法事業への融資禁止などを約束していることから、自社方針違反についての対処が求められます。

土地を守るために村に残った、パンテ・チェルミンの人々

今回の調査によって判明したのは、GARと別の1社(Permata Hijauグループ)を通じ、問題となっているパーム油企業 PT. Dua Perkasa Lestari (DPL、注2)の紛争パーム油が供給されたという点です。DPL社はパンテ・チェルミン村(アチェ 州西南アチェ県)のコミュニティとの間に数十年にわたる未解決の紛争があり、以下の紛争が調査で明らかになりました。

 ●DPL社は、最初の事業地で適切な事業許可を取得していなかった
 ●コミュニティが慣習的に利用してきた土地の収奪が記録されていた
 ●DPL社はコミュニティから「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得ず、住民たちの農作物に壊滅的な被害を与えた
 ●DPL社はコミュニティの人々を脅迫して立ち退かせるために、インドネシア総務省の方針に違反して、軍隊を組織的に使用した、など。

LBHバンダアチェ ディレクターのSyahrul氏は「DPL社の事業許可が2008年に発行されて以来、地域コミュニティは自分たちの土地から強制的に立ち退かされる脅威にさらされてきました。 住民のほとんどは経済的制約など様々な理由でそこで生活を続けることができませんでしたが、まだ多くの人が自分たちの土地のためにたたかうことを誓っています。 LBHは、この事件を西南アチェ県政府、アチェ州政府、アチェ州議会、インドネシア大統領府にも報告しましたが、紛争は解決されず、誰もコミュニティの土地権の申し立てを検証していません。新型コロナウイルス の感染が拡大する中、地域コミュニティの土地権を保護し、食料と生活を維持することはこれまで以上に喫緊の課題となっています」と訴えました。

MUFGは、2018年から2020年4月の間、DPL社から紛争パーム油を購入したGARとその子会社に対して合計3億ドルの融資を行っています(注3)。一方で融資などに関するESG方針を2018年に策定し、翌年にはパーム油部門への資金提供についての方針を追加しました。ESG方針の中で「違法または違法目的の事業」への融資の禁止、持続可能なパーム油事業の支援、そして「非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業」の場合は顧客企業の環境・社会配慮が十分であるか確認することを約束しています(注4)。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三菱UFJフィナンシャル・グループは、GARのような、自社およびサプライチェーンで繰り返し人権侵害を起こしている企業には融資すべきではありません。 GARへの融資は三菱UFJのESG方針に違反しています」と指摘しました。

消費財企業や銀行は、サプライチェーンにおける供給業者や融資先企業に対し、パンテ・チェルミン村の住民への土地返還が合意されるまで、DPL社との取引停止を求める責任があります。 ハイネケンは「三菱UFJフィナンシャル・グループは、GARが責任あるパーム油のみの調達を確実にするために、資金提供の必要条件として監視強化や、サプライチェーンのコンプライアンス管理体制強化を徹底させるべきです」と強調しました。

GARはインドネシアの大手財閥、シナルマス・グループのパーム油子会社で、創業家のウィジャヤ・ファミリーが支配しています。 シナルマスのパーム油部門は、2016年から2020年4月まで、インドネシアの銀行のバンクネガラインドネシア(BNI)、バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)、オランダの銀行のABNアムロ、MUFGなどから35億米ドルを超える融資と引受を受けました。これはDPL社による人権侵害と森林破壊の証拠がGARに提起されたのと同じ時期です。

DPL社の事業管理地は世界的に重要な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」内に位置し、同熱帯林には高濃度の炭素を蓄えた泥炭地があります。同社はその一つのトリパ泥炭地に事業地を保有し、パンテ・チェルミン村はトリパ泥炭地域にあります。

注1)詳細はこちら:“Major Brands and Banks Complicit in the Production of Conflict Palm Oil on Stolen Community Lands in Indonesia”(英語)

注2)アチェ州議員 Said Syamsul Bahri 氏が所有

注3)RAN「森林と金融」データベース

注4)「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:日清食品株主総会で森林・人権保護方針強化を求めてアピール「問題あるパーム油を使わないで」 (2020/6/25)

〜持続可能パーム油100%、2030年では遅すぎる〜

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日25日、日清食品ホールディングスの第72期定時株主総会に参加し、株主に向けて、パーム油調達の方針強化を同社に求めるよう会場前でアピールしました。また、同社新環境戦略で示されたパーム油調達目標「2030年度に持続可能パーム油100%達成」は遅すぎると指摘し、総会では「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE方針)を正式な調達方針として採用することを求めましたが、曖昧な回答しか得られませんでした。

RANと「ウータン・森と生活を考える会」のスタッフとボランティアは、オランウータンの着ぐるみとともに、会場のホテルニューオータニ大阪前で「日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に 」と書かれたバナーを掲げ、同社が「持続可能性」を追求する東京2020大会のスポンサーでもあることから、環境面・社会面でのパーム油調達方針の強化を求めました。RANはこれまで同社に、消費財企業の国際基準となっているNDPE方針をパーム油調達方針に採用するなど、責任ある調達に早急に取り組む必要があると提案してきました。

日清食品が今月9日に公表した新環境戦略「Earth Food Challenge 2030」(注1)では「持続可能なパーム油の調達を進める」とありますが、以下の問題点が挙げられます。

●「2030年度には、RSPO認証パーム油の調達に加え、独自アセスメントにより持続可能であると判断できるパーム油のみを調達することを目指します」と約束しているが、今後10年にわたって日清食品の調達が森林減少、泥炭地劣化、人権侵害といった問題に直面し続ける懸念がある。

●持続可能なパーム油には、国際的なパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」の認証油に加え、同社の独自アセスメント(評価)によって持続可能であると判断されたパーム油も含まれる。しかし評価方法次第では、低い基準や曖昧な基準で評価され、持続可能であると判断されてしまう恐れがある。さらに、同社のRSPO認証油の定義には、非認証油を混入する方式のパーム油も含まれる可能性がある。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「日清食品が、今後10年間も環境・社会面での配慮の確認が不十分なパーム油調達を続けることになれば、サプライチェーンで発生している気候危機や生物多様性の損失、人権や労働権、および土地権の深刻な侵害が今後も続き、問題を先送りすることになります。日本だけでなく、同社が事業展開する世界中の消費者やESG(環境・社会・ガバナンス)課題に取り組む投資家にとっても受け入れられるものではありません。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標15.2では、2020年までに森林減少を阻止することを掲げています。その目標にも合致していません」と批判しました。

RANは、株主として総会で発言し、「2030年度までに持続可能なパーム油のみを調達するという目標では、他のグローバル企業が2020年を森林減少阻止の目標年にしている点から大きく見劣りする」と指摘しました。また、日清食品が22日、NDPE方針への支持をウェブサイトで表明した件について(※)「NDPE方針を持続可能なパーム油の調達における独自アセスメントの内容として組み込むとともに、調達方針として採用すべきだ」と提案しました。

それに対して日清食品は「(持続可能なパーム油のみの調達達成を)2030年まで待ち続けているわけではなく、できるだけ早く進めていく」と述べ、「独自アセスメントは、外部のNPOと客観的な認証が確保できる形で進める」としました。また「(NDPE方針を)支持しているということは、パーム油原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油のみを調達するよう、最善の努力を尽くすということだ」との曖昧な返答でした。

川上は、「日清食品は『最善の努力を尽くす』というのであれば、持続可能性の確認を進めるために、NDPE方針をパーム油調達方針として定め、独自アセスメントに明確に組み込むことが不可欠です。また、パーム油を調達する搾油工場リストの情報開示を通じて、アブラヤシ農園などで起きている問題について、現地NGOなど外部に情報提供を求めることで早急に問題を発見し、早期の解決に取り組む体制づくりが必要です。世界が日本のリーダーシップに期待している今、五輪スポンサーでもある日清食品が他社に見劣りするような『最善の努力』では、消費者や投資家からの納得は得ることは難しくなります」と批判しました。

【森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針(NDPE方針)について】

RANは日清食品に対して、今年の株主総会までに、NDPE方針に合致した調達方針の強化の公表を求めてきました。具体的な内容としては、森林破壊ゼロを基本に、インドネシアやマレーシアなどパーム油生産国の熱帯林及び泥炭地の保護、アブラヤシ農園での労働権保護、先住民族や地域コミュニティの土地権を含む人権尊重が挙げられます。また、企業全体で供給業者の事業活動がNDPE方針の要求事項に合致していることを迅速かつ独立して検証することを目的に、信頼できる体制の構築にも取り組むよう再三求めています。NDPE方針は、国連責任投資原則(PRI)に関わる機関投資家56機関が支持を表明しています(注2)。投資機関も方針採択と実施に関心を寄せているという点で、非常に重要な調達基準となっています。

RANが今年4月に発表した報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」注3)でも、グローバルサプライチェーンにおける森林を犠牲にする産品の拡大による森林破壊と土地権侵害を止めるよう日清食品に提言しています。報告書の中で、取り上げている消費財企業10社のうち、NDPE方針を採択していないのは日清食品だけです。

【「五輪スポンサー日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 」署名について】

本署名(注4)は、日清食品に、東京五輪スポンサー企業としてパーム油調達方針の強化を求めたもので、2019年8月21日の開始以来、約29,500人の賛同が集まっています。署名サイト「change.org」で展開し、宛先は日清食品ホールディングス安藤宏基取締役社長 CEOです。米国でも5月にメールキャンペーンを実施し、アメリカ日清宛に約17,000通のメールが送信されました。日米で合計5万人近い方々が同社のパーム油調達について懸念を持ち、アクションに参加したことは画期的です。

日清食品は、このような消費者の声を真摯に受け止めて、NDPE方針に基づく調達方針のさらなる改訂に早急に取り組むことが求められます。

※【6月26日追記】6月22日、日清食品「持続可能な調達:原材料ごとの実施状況 パーム油」に「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ (NDPE) を支持しており、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油のみを調達するよう、最善の努力を尽くしています」が加えられました。

注1)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」始動!」

注2)2019年4月、責任投資原則(PRI)に関わっている機関投資家56機関、合計運用資産総額7.9兆米ドルがRSPOへの支持を表明し、銀行を含むパーム油バリューチェーン全体の全ての企業に対して、公表する形で「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」の採用と実施を求めた。
PRI, “Fifty-six investors sign statement on sustainable palm oil”, 3 April 2019

注3)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」(2020/4/1) 

注4)RAN署名「五輪スポンサー日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜問題あるパーム油を使わないで〜」

【訂正】「米国でも5月にメールキャンペーンを実施し、安藤CEO宛に約17,000通のメールが送信されました」とありましたが、「アメリカ日清宛に」の誤りでした。お詫び申し上げます(6月26日)。

声明:ミネアポリスの黒人男性死亡での抗議デモ、構造的人種差別について(2020/5/29)

「黒人の命も大切(Black Lives Matter)」
        ——構造的な人種差別が構造の変化を求める

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、RAN)は、米ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官の暴行を受けて死亡した事件を巡り全米各地で広がる抗議デモについて、以下の声明を発表しました。

レインフォレスト・アクション・ネットワークは、米国の黒人が経験している構造的暴力に反対し、連帯して行動することを表明します。私たちは、対策と正義を求める人々と手を取り合います。私たちは、ジョージ・フロイドさん、アーモード・アーバリーさん、サンドラ・ブランドさん、トニー・マクデイドさん、アンバー・モンローさん、ブリオナ・テイラーさん、ジャマール・クラークさん、フィランド・カスティールさん、マイケル・ブラウンさん、タミル・ライスさん、トレイボン・マーティンさん、エリック・ガーナーさん、フレディ・グレイさんの殺害における、制度化された不公平に怒りを感じる人々と手を取り合います。そして私たちは、暴力を賞賛したトランプ大統領の恥ずべき発言を非常に残念に思います。

沈黙という選択肢はありません。改革を求め、正義を求め、人種差別的な暴力と人種的な不平等の終わりを求めるのは、私たち全員の責任です。

以下のように、今できることがあります。

「ミネソタ・フリー・ファンド」に寄付し、緊急の法的支援をサポートする

—ミネソタの「ブラック・ビジョンズ・コレクティブ」をサポートする
(回復と変革をもたらす正義の原則に取り組み、抑圧および暴力構造の解体を誓うローカル団体)

人種差別に反対する姿勢を積極的に取るための方法を学ぶ(リンク集)

※英語の声明
“Statement from Rainforest Action Network on the protests in Minneapolis and systemic racism”

※関連文書(英語)
“Protect The Right to Protest and #DefendBlackLives” (2020年6月2日)

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

声明:三菱UFJ、新ESG方針を発表するも「期待外れ」 (2020/5/14)

〜気候変動対策・森林保護、3メガで最も進展のない方針改訂〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日14日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針を13日に改定した(注1)ことを受けて、国内外の銀行、特にみずほフィナンシャルグループ(みずほ)および三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)と比べて「改訂は不十分で期待外れである」と批判しましたRANはMUFGに対して、熱帯林に壊滅的な影響をもたらすパーム油事業や国内外での化石燃料事業拡大への資金提供について、数年にわたって様々なESG問題を指摘してきました。

写真:MUFG子会社ユニオン・バンク本社前でのアピール行動、サンフランシスコ、2019年6月

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケン

「新型コロナウイルスの感染拡大は森林破壊と関係があり、国連環境計画(UNEP)は生態系や野生生物への脅威に取り組む必要性はかつてないほど高まっていると指摘しています(注2)。その最中に発表された今回の改訂は、三菱UFJが環境・社会面でのリーダーシップを取ることに失敗したことを意味し、期待外れで失望しています。新たな感染症拡大を防ぐためにも気候危機への対応と熱帯林保護が重要ですが、今回の方針改訂で、三菱UFJは気候の安定化と地球に残る最後の熱帯林よりも自社利益を優先するという決定を下したことは批判されるべきです」

他のメガバンクの与信方針と比較した重要な違いは以下の通りです。

●みずほ方針との違い:石炭火力発電事業への資金提供における段階的廃止のスケジュールが約束されていない。また「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE方針:No Deforestation, No Peat and No Exploitation)、地域コミュニティの権利を尊重する「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)に代表される、森林セクターでの資金提供における国際的なベストプラクティスが策定されていない。
●SMBC方針との違い:パーム油向け新規農園開発時に森林および生物多様性の保護を公約していない。また、森林伐採での土地開墾の際の火の不使用を確認する記述もなく、持続可能性の評価に脆弱な認証システムに頼っている。

MUFGは、RANが4月に開始した新キャンペーン「キープ・フォレスト・スタンディング〜森林と森の民の人権を守ろう〜」の対象企業で、唯一の邦銀です(注3。気候、生物多様性や先住民族にとって重要な熱帯林と泥炭地に大きな影響を及ぼしている企業として選ばれ、RANはMUFGの資金提供について以下の点を指摘してきました。

●環境・人権面で諸問題を抱える「紛争パーム油」への世界最大の資金提供者の一つで、気候危機を加速させた昨年のインドネシア森林火災にも加担した(注4)。
●今年3月にRANらが発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表 2020」では、パリ協定締結以降の化石燃料事業への融資・引受額が世界で6番目に大きく、2016年から2019年に1,188億米ドルの資金提供が行われたことが明らかになった(注5)。
●MUFGは北米のオイルサンド・パイプライン企業への主要な資金提供者であり、資金提供先にはエンブリッジ社が建設するライン3石油パイプライン、TCエナジー社が建設するキーストーンXLパイプラインが挙げられる。さらに、気候災害と先住民族の権利侵害と明確なつながりが指摘されているにも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の最中に両社へ新規の資金提供を約束した(注6)。
●北極圏での石油・ガス開発への資金提供額における世界4位の金融機関で、新規の石炭火力発電所へのファイナンスの原則的な停止を約束したにもかかわらず、議論を呼んでいるベトナムのブンアン 2のような新規石炭火力発電事業への資金供給を続けている(注7)。

ハイネケンのコメント(続き)

「MUFGの方針は、企業の『二枚舌』の典型的な事例です。新方針はオイルサンドと北極圏の石油・ガス開発をリスクの高いセクターと認識していますが、パリ協定と方針を合致させたいのであれば、化石燃料事業への融資制限の基準と明確な段階的廃止計画が必要です。熱帯林破壊と化石燃料開発への世界最大の資金提供者の一つとして、三菱UFJは基準強化に全力で取り組まなければ、大きなレピュテーションリスクになります」

英語の声明はこちら: “MUFG Falls Behind Peers in New ESG Finance Policy Announcement”

脚注

注1)三菱UFJフィナンシャル・グループ、「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2020年5月13日

注2)国連環境計画、「Working With the Environment to Protect People: UNEP’s COVID-19 Response」(英語)

注3 )RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」 2020年4月1日(5月14日更新:日本語要約版追加)

注4)RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜」2020年1月29日

注5)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り」2020年3月18日

注6)RAN本部プレスリリース「Reckless Keystone XL Decision by TC Energy Endorsed by JPMorgan Chase, Citi and Canadian Peers」(英語)、2020年4月3日

注7)マーケット・フォース「ブンアン2石炭火力事業に融資しないで!」

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

声明:三井住友FG、気候リーダーになる好機を逃す〜与信方針を改訂するも、みずほに及ばず〜 (2020/4/17)

三菱UFJに注目が高まる

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日17日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が同グループの石炭、石油・ガス、森林減少等への資金提供に関するESG(環境・社会・ガバナンス)方針の改定を16日に発表したこと(注1)を受けて、「中途半端な改訂で残念である」とし、以下の声明を発表しました。SMBCの方針改訂は、国内2位のメガバンクであるみずほフィナンシャルグループ(みずほ、TYO:8411)が気候リスク管理を強化した一連の方針改訂を発表した(注2)翌日に公表されました。メガバンクの方針はパリ協定の目標を達成するにはまだ不十分ですが、初めてセクター別の方針を定めた2年前に比べると大きな変化を遂げています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の方針改訂は5月までに発表される可能性があり、みずほとSMBCの方針改訂を受けて、MUFGへの注目が高まります。

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「今回の方針改訂で、三井住友フィナンシャルグループは日本での気候変動対策のリーダーになる大きな機会を逃しました。 同グループは国連の『責任ある銀行原則』に署名し、投融資をパリ協定と持続可能な開発目標に合致させることを約束しましたが、これでは達成できません。 もう一度、振り出しに戻って直ちにやり直す必要があります」と指摘しました。

写真:三井住友フィナンシャルグループ株主総会前でのアクション、2018年6月

3メガバンクは昨年9月に国連「責任銀行原則」に署名したことで、銀行業務の実態と持続可能性に関する公約の間に『大きな開き』ができました(注3)。日本の銀行による融資先は、問題案件となっているベトナムおよびインドネシアの新規石炭火力発電所建設、インドネシアでの森林火災と搾取を伴うパーム油の農園、米国で紛争をもたらしているオイルサンド・パイプライン等(注4)に関わり、世界中に広がっています。今年3月に発表されたRANらの報告書では、MUFGとみずほは世界6位、9位の化石燃料への資金提供者であることが明らかになりました(注5)。また、3メガバンクは東南アジアの森林減少に加担している最大の資金提供者に含まれ、SMBCがメガバンクで最も多いことも明らかになっています(注6)

SMBCの方針は以下の通り、多くの面でみずほの方針よりも弱いと言えます。

●パーム油、紙パルプ、木材等、森林に悪影響を与える恐れのある産品への与信方針に「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE : No Deforestation, No Peat and No Exploitation、注7)や、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC:Free, Prior and Informed Consent))の要件がない。 このような基準は国連「持続可能な開発目標(SDGs)達成に不可欠である

● SMBCは、石炭に関わる資金提供の段階的廃止を約束せず、新設の石炭火力発電所への支援は「原則として」実行しないと約束している。一方で、超々臨界石炭火力発電所を「環境へ配慮した技術」と評価している(注8)

●炭鉱採掘部門で環境負荷の大きい「山頂除去採掘」を新たに禁止している点や、石油・ガス部門で社会・環境面でのリスクを認識している点は進展といえる。しかし、気候変動関連の制約が全く記載されていない

MUFGの方針改訂への期待は、みずほが設定した新基準を超えなければ、大きな失望へと変わるでしょう。MUFGは日本最大の銀行として、そして世界で銀行業務を大きく展開している上でも、3メガバンクで最も厳しい気候関連方針を策定し、世界の銀行と競い合っていくという、他の銀行にはない大きな責任を負っています。

注1)三井住友フィナンシャルグループ「ESGに関するリスクの考え方について」、2020年4月16日

注2)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティへの取り組み強化について〜脱炭素社会実現に向けたアクション強化〜」、2020年4月15日

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連『責任銀行原則』発足をうけて〜」、 2019年9月23日

注4)参考資料
Market Forces「ブンアン2石炭火力事業に融資しないで!」

東洋経済「日本が関与『インドネシア石炭火力』に重大事態:チレボン2号機案件で『贈収賄疑惑』が浮上」、2020年1月16日

RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜 」、2020年1月29日

RAN本部プレスリリース「TCエナジー社、キーストーンXLパイプライン計画を進める〜JPモルガンチェース、シティ・グループ、カナダの銀行が資金提供」(Reckless Keystone XL Decision by TC Energy Endorsed by JPMorgan Chase, Citi and Canadian Peers)(英語)、2020年4月3日

SMBC関連で、問題ある事業や融資先企業には以下も含まれる。
東アフリカ原油パイプライン

マイティアース『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』、2019年12月10日

米国カリフォルニア州での石炭輸出ターミナル

注5)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表:3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,3814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り〜」 、2020年3月18日

注6)RAN他「森林と金融データベース:東南アジアの森林リスク企業へ融資と引受:上位10金融機関(2014年〜2019年8月)」

注7) NDPE方針については「責任投資原則」のパーム油に関する声明を参照

注8)SMBCの石炭方針については以下のNGO共同声明も参照
「三井住友が石炭新方針を発表~みずほの新方針と比べて低水準に〜」、2020年4月16日

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org