プレスリリース:大手銀行、数十億ドルの資金提供を通じタールサンドの大規模な破壊と汚染に加担(2017/11/1)
プレスリリース
2017年11月1日
エクストリーム化石燃料[1]インフラの拡大のための世界最大の銀行による無謀な融資は、
パリ協定の1.5°目標を深刻な危機に陥れる
サンフランシスコ、カリフォルニア – 今日発表されたレポートによると、商業銀行は、タールサンド部門への資金提供を続けており、2017年にはその金額が急上昇している。これはパリ協定の1.5°から2°未満という目標に合致しないレベルである。レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)と世界の11団体が発表した新レポート「タールサンドへの資金提供:民間銀行 vs パリ気候協定(Funding Tar Sands: Private Banks vs. the Paris Climate Agreement)」は、生産者とパイプライン企業へのタールサンド向けの資金提供が、2017年の現時点までで、既に2016年に実施した合計額より50%も多くなっていることを明らかにした。
「COPでは、各国政府はパリ協定の目標達成に向けて進捗を把握する準備を整えているが、銀行も同様に対応しなければならない。」とRANの気候・エネルギープログラムディレクター、パトリック・マッカリーは語る。「世界規模の銀行に対して、気候災害を回避し、先住民族の権利と人権を尊重するために表明された支援とその行動を整合させるような方針を直ちに確立するよう、我々は求めている。これには、タールサンド事業分野からの退出と、先住民族の権利尊重の方針強化を含めなければならない」。
タールサンドは、高い抽出コスト、市場投入の難しさ、巨大な埋蔵量、温室効果ガスの強度、地域環境や先住民族の権利への重大な影響、より低炭素集約度でより安価な代替物にすぐに代替できるという特徴を持つ独特の燃料である。しかし、この報告書で分析された33の銀行は、タールサンドに2017年だけで320億ドルもの資金を提供した。
「トランプ大統領は、パリ協定から米国が離脱すると発表した時、ある境界線を引いた。気温上昇を1.5℃に制限するというパリ合意の目標と、自身の政権との間にである。銀行は線のどちら側に落ちるか?JPモルガン・チェース社の最高経営責任者(CEO)は、この問題についてはトランプ氏に同意していないとしているが、この銀行はタールサンドの資産を取得する際に主要企業に融資し、今年、タールサンドへの資金提供を増やした。」とRANのエネルギープログラム調査コーディネーター、アリソン・カーシュは述べる。
JPモルガン・チェース社は、再度、米国銀行の中でタールサンドへの最大融資会社となり、彼らの融資方針の格付けはD +となり、この資金提供を抑制する防止策を明らかに欠いていると判明した。 「目標達成に必要なのは、早急な化石燃料の段階的廃止である。一方、世界最大級の銀行は、エクストリーム化石燃料の一つであるタールサンドの強化と生産拡大に資金を提供している。」とNGOのバンク・トラックの気候・エネルギーキャンペーンコーディネーター、ヤン・ルーベルは述べた。「このような危険な資金提供を制限する方針を持っている欧州の銀行がいくつかあるが、気候や倫理的な理由で必要となる、タールサンド拡大の支援を排除する堅実な方針が、ほとんどの大手銀行には欠けている」。
先住民主導の団体や草の根団体、欧州のNGO組織化などを通じた市民からの圧力を受けて、一部の銀行はタールサンドへの資金拠出を断念する方針を約束している。2017年10月、欧州第2位の銀行であるBNPパリバ社は、グローバルな銀行の新しい基準を確立した。この方針では、タールサンドについては、タールサンド事業が30%以上である企業を除外し、キーストーンXL[2]、トランスマウンテン[3]、ライン3[4]のパイプライン事業を含めてタールサンドのプロジェクト全体への資金提供を排除するとしている。
グリーンピースとオイル・チェンジ・インターナショナルによる補足的な報告書である「イン・ザ・パイプライン:タールサンド・パイプラインへの資金提供者のリスク(In the Pipeline: Risks for funders of tar sands pipelines)」は今週発表され、タールサンド・パイプラインへの資金提供による主要銀行の財務面と評判面での損害について警告を発している。この報告書は、法律面の課題、先住民族および地域社会からの反対、飲料水への脅威、経済的脆弱性など、3件の計画中のタールサンド・パイプラインに影響を及ぼすリスクを詳細に検討している。
[1]訳注:化石燃料産業において最も炭素集約度が高く財政的に危険で環境破壊的な部門であるエクストリーム・オイル(オイルサンド、北極・超深海の石油)、石炭採掘、石炭火力発電、そして液化天然ガス(LNG)輸出が、エクストリーム化石燃料と呼ばれている。
[2] 訳注:既に稼働中のキーストーンパイプライン(59万バレル/日)に 70万バレル/日の輸送能力を追加し、カナダ原油の米国向け輸入量を増加することを可能にする2,673kmのパイプライン計画
[3] 訳注:原油をカナダ西部アルバータ州から米国西海岸に送るための全長1170 kmのパイプライン計画
[4] 訳注:原油をカナダ西部アルバータ州から米国ウィスコンシン州に送るための全長1659kmのパイプライン計画