サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース:三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜 (2019/10/18)

炭素を豊富に含む「ルーセル・エコシステム」のシンキル保護区で違法栽培

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、2019年にインドネシアで現地調査を実施し、有名な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」で警戒すべき泥炭林破壊に、大手銀行や食品企業が加担していることを明らかにしました。本調査で、炭素を豊富に含み、国の保護区である「ラワ・シンキル野生生物保護区」(ルーセル ・エコシステム内)で違法に生産されたパーム油が、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(TYO: 8306)の顧客である大手パーム油企業ゴールデン・アグリ・リソーシズ(GAR)に買い取られ、カーギルや不二製油などを通じてユニリーバやネスレ、ペプシコといったスナック食品の製造に使われていることが判明しました(注1)

破壊されたシンキル泥炭林、アチェ州

今回の調査によって明らかになったことは、パーム油企業のGARが、「ラワ・シンキル野生生物保護区」で違法栽培されたアブラヤシ果房を原料にパーム油を搾油している工場から直接、パーム油を調達していたことです。「MUFG環境社会ポリシーフレームワーク」(注2)では、「違法または違法目的の事業」への資金提供を禁止し、「保護価値の高い地域へ負の影響を与える事業」において「適切な環境・社会配慮の実施」を顧客に求めています。保護価値の高い地域には国際自然保護連合(IUCN)レッドリストで絶滅が危惧される種の生息地も含まれるため、「ラワ・シンキル野生生物保護区」に適用されます。GARはMUFGの顧客企業であることから、MUFGの方針に違反していることになり、同行のESG(環境・社会・ガバナンス)方針の有効性が疑問視されます。これは、MUFGが先月賛同した責任銀行原則(PRB)の目標とも矛盾しています。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「調査の結果で得られた証拠には疑いの余地がありません。三菱UFJフィナンシャル・グループは近年、融資等に関する方針を発表し、違法事業へのファイナンスの禁止と、パーム油セクターで生じる負の影響の緩和を約束しました。しかし三菱UFJは、インドネシアで違法に生産されたパーム油を購入して熱帯泥炭林の破壊を促進しているゴールデン・アグリ・リソーシズといったパーム油大手に積極的に資金提供しています」と批判しました。

MUFGは、金融グループの中でパーム油セクターへの資金提供が世界で6番目に多く、日本のメガバンクの中では最大です(注3)。GARへの資金提供はその典型的な例であり、GARのパーム油事業には重大なESGリスクがあるにもかかわらず(注4)、MUFGは近年でもGARの最大の金融機関でした。2015年1月から2018年6月、MUFGはGARおよびその子会社に2億8100万米ドルの融資と引受を実施しました。これには2018年4月の1億ドルのリボルビングローンも含まれます。2018年7月、MUFGはGARにさらに5000万ドルのローンを発行しました (注5)。 

ハイネケンは「この問題についてMUFGはGARと対話し、違法なパーム油の調達停止を求めるなど、顧客企業に自社のESG投融資方針を遵守させる必要があります」と続けました。RANはMUFGに対し、GARに将来的な資金提供を約束する場合は、責任あるパーム油のみの調達を確実にするため、監視強化と第三者による供給コンプライアンス制度の強化を求めました。

シンキル・ベンクン地帯は生物多様性の世界的なホットスポットです。地中深くに炭素を豊富に含む泥炭地であることから、貴重で効果的かつ自然の炭素吸収源として世界でも重要な場所です。一帯にはラワ・シンキル野生生物保護区、シンキル泥炭地、クルット泥炭地、そして近接する熱帯低地林が含まれます。この地帯は絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、トラの重要な生息地となっており、世界で最も優先して保全されるべき場所の一つです。一帯はオランウータンの生息密度が世界で最も高く、「オランウータンの首都」とも呼ばれてきました。泥炭林は一度伐採され、排水されると、泥炭土壌は「炭素爆弾」となり、何年にもわたって膨大な量の二酸化炭素を排出します(注6)。そのため、本報告書で示されている泥炭地の破壊は、重大な気候リスクでもあります。

【調査結果】
・RANの現地調査員は、2019年初め、違法なアブラヤシ農園で収穫されたアブラヤシの果実が、近隣のパーム油仲介業者(CV. Buana Inda という名称)に売買されたことを記録した。その農園は、ルーセル・エコシステム内の国の保護区、「ラワ・シンキル野生生物保護区」内の泥炭地で造成されていた。
・ 現地調査、聞き取り調査、CV. Buana Indahの売上の取引記録により、「ラワシンキル野生生物保護区」近くにあるパーム油搾油工場2社、PT. Global Sawit Semesta (PT. GSS) と PT. Samudera Sawit Nabati (PT. SSN)がCV. Buana Inda から供給された、問題あるパーム油を加工していたことが判明しました。
GARのサプライチェーンにおける搾油所一覧(2019年1月から3月)によると、両方の搾油工場がGARへの供給企業だった。直近に公開された一覧(2019年4月から6月)にはPT. SSN の名前があり、同工場にはトレーサビリティ(農園から搾油工場までの追跡可能性)を管理する仕組みがないと記載されている。搾油工場の職員への聞き取りからも、GARが上記の搾油工場と調査の時点で取引していたことが確認された。

注1)RAN報告書(英語)「The Last of the Leuser Lowlands」(最後のルーセル 熱帯低地林)」

注2)MUFG環境社会ポリシーフレームワーク 

注3)RAN「森林と金融」データベース参照

注4)2019年2月、パーム油事業での森林破壊、人権侵害、違法行為、汚職等の証拠によって、GARは「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス」の銘柄から外された。

注5)2015年1月から2018年6月の間、GARとその子会社は19億米ドルのローンと引受を16銀行から受けた。この内、最大の資金提供者はMUFG(2億8100万ドル)、中国開発銀行(2億6000万ドル)、OCBC(2億700万ドル)、メイバンク(2億400万ドル)、CIMB(1億3600万ドル)、ABNアムロ(1億2600万ドル)、バンクネガラインドネシア(BNI、1億ドル)だった。(出典:「森林と金融データベース」)

注6)熱帯泥炭林が地面に貯蔵している炭素は 1ヘクタール当たり約2600 炭素トン(t-C)である。2015年のインドネシアでの大規模泥炭地火災は、米国経済全体の合計よりも多くの二酸化炭素を大気中に放出したが、その火災の理由は主にアブラヤシ農園の開発とパルプ材植林地である。シンキル・ベンクン地帯のシンキルとクルットの泥炭地で火災が発生した場合、同地域の二酸化炭素の排出量だけで、インドネシアの年間総排出量の最大で7%に相当すると推定されている。そうした場合、パリ協定の約束を果たす同国の実行力を損なう可能性がある。
※出典:RAN「The Last of the Leuser Lowlands」及び「森林と金融調査レポート:投資家には責任がある」(2017年)

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org