サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

NGO共同プレスリリース:RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2020」発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜(2020/3/18)

みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り

東京ーー米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他は、本日18日(米国太平洋時間 17日)、新報告書『化石燃料ファイナンス成績表2020」(注1)を発表しました。本報告書は、世界の主要銀行による化石燃料への融資・引受をまとめたもので、日本のメガバンク3行を含む世界の主要民間銀行35行は、2015年12月のパリ協定採択後の4年間で合計約2.7兆ドル以上を化石燃料部門に提供し、その額は停滞するどころか増加していることが明らかになりました。化石燃料産業への資金提供は2015年以降毎年増加しており、気候危機の最悪の結果を回避するために、気温上昇を1.5度未満に抑えることとしたIPCC(国連気候変動政府間パネル)の勧告(注2)に真っ向から反しています。

「パリ協定以降のワースト 12銀行」(日本語要約版より)

邦銀の中で、化石燃料部門に最大の資金提供を行なったのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で、2015年12月以降に約1,188億ドルを提供しました。続くみずほフィナンシャルグループ(みずほ)も約1,031億ドルと迫りました。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は約596億ドルでした。これらの資金の約3分の1は化石燃料を拡大している企業の上位100社に提供されました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「歴史的なパリ協定が締結されて以来、メガバンクのMUFG、みずほ、SMBCグループは、約2,814億ドルもの巨額の資金を化石燃料に無駄に費やしてきました。MUFGとみずほだけで約90億ドルもの資金を世界の主な石炭火力発電企業30社に提供しました。緊急かつ大胆な行動が取られなければ、メガバンクはさらなる抗議(注3)、気候変動リスクをテーマとした株主提案(注4)、そして国際的な批判(注5)を受けるでしょう。気候危機への懸念が増すにつれて、銀行は評判を落とし、顧客基盤の弱体化につながるでしょう」と指摘しました。

*3メガバンクはアジア上位5銀行の1位、2位、5位

上記の調査結果に加えて、本報告書は、各行の化石燃料に関する総合的な与信方針と、特定の化石燃料部門に関する方針と融資・引受状況を評価しました。3メガバンク全ての評価は最も低く、化石燃料拡大への資金提供停止の公約は殆どありません。みずほとSMBCグループは、持続可能性を謳っている東京オリンピックのゴールド・スポンサーでもあります。

国際環境NGO 350.orgの日本支部キャンペーナー渡辺瑛莉は「3メガバンクは昨秋、国連責任銀行原則(PRB)に署名し、SDGsとパリ協定にビジネスを整合させることを誓約したにも関わらず、各行の方針は気候危機への対応としては全く不十分であり、世界の主要銀行と比べても大きく遅れを取っています。石炭はすでに世界の大部分のマーケットで経済性を失っており(注6)、メガバンクは石炭とその他の化石燃料への資金提供を継続することによって評判リスクと座礁資産リスクにさらされるでしょう」と指摘しました。

執筆団体、協力団体からのコメント

先住民族環境ネットワーク(IEN)
「キープ・イット・イン・ザ・グラウンド」担当 ダラス・ゴールドトゥース

「アマゾンから北極圏のいたる所で、これら世界の銀行の社会的事業許可は、気候危機による混乱と先住民族の権利侵害といった問題にあふれています。世界の銀行は、母なる地球および先住民族の生活の破壊に対して責任を負わなければなりません。銀行が是正措置を講じるまで長い時間が経ちすぎています。銀行は今、化石燃料への投融資から撤退しなければなりません」

気候ネットワーク 国際ディレクター 平田仁子
「日本の銀行は、気候変動への取り組みに大きく遅れており、そのリスクに向き合っていません。だからこそ私たちはみずほフィナンシャルグループの株主として、パリ協定に沿った投融資を行う経営戦略を記した計画を開示するよう求めています。化石燃料を支援し続けることは、日本の銀行を一層深刻なリスクにさらすだけでなく、私たちの地球のリスクも拡大させます。そのリスクをいかに回避するのかを説明するのは銀行の重要な責任です」

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当 ハンナ・ハッコ
「金融機関は世界経済に対して大きな力と責任があります。これまで日本のメガバンクは、化石燃料の使用を可能にすることにその力を使ってきました。しかしメガバンクはいま、その責任を取り、石炭から脱炭素化へと資金をシフトし始めるべきです。MUFG、みずほ、SMBCグループは、気候危機への資金提供者としてではなく、気候危機の解決策の貢献者として見られたいのであれば、エネルギーに関する新たな与信方針をすぐに採用する必要があります」

【化石燃料ファイナンス成績表2020】概要・調査結果

•「化石燃料ファイナンス成績表2020」は世界の主要民間銀行35行が化石燃料部門に行った資金提供を示した世界で最も包括的な報告書であり、RAN、バンクトラック、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェンジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラクラブが執筆し、世界45カ国250以上の団体が賛同している。石炭、石油、ガス部門に関わる世界2,100社に対する2016年〜2019年の間の融資・引受を対象としている。

日本のメガバンクの順位は35行中、MUFGが第6位、みずほが第9位、SMBCグループが第20位となった。2018年〜2019年にかけて、みずほとSMBCグループが化石燃料部門への融資・引受額を大きく増やし、それぞれ10%増、27%増となった。一方、MUFGは5%減少した。世界第1位はJPモルガン・チェースで2016年〜2019年の間、約2,686億ドルを化石燃料部門に資金提供した。

化石燃料を拡大している企業にはMUFGが約399億ドル、みずほが約343億ドル、SMBCグループが約248億ドルをそれぞれ提供した。算出方法は、新規の石炭および石油開発、ガス採掘、関連インフラの拡大を積極的に計画している100社への融資・引受額を合算した。

•世界の主要民間銀行の中でも、3メガバンクは、オイルサンド、北極圏の石油・ガス、海洋の石油・ガス、シェールオイル・ガス、液化天然ガス(LNG輸出入ターミナル)、石炭採掘、石炭火力発電に関わる世界の主要な30〜40社に顕著に資金提供を行っている。3メガバンク全ては液化天然ガスおよび北極圏の石油・ガスへの主要な資金提供者であり、MUFGとみずほは石炭火力とシェールオイル・ガスへの顕著な資金提供者である。MUFGは、北米のオイルサンド・パイプライン企業エンブリッジが建設するライン 3石油パイプライン(米国ミネソタ州)に資金提供を行う銀行の中で主要な役割を担い、影響を受ける先住民族コミュニティの激しい抵抗に直面している。

• 融資・引受額は、対象となる化石燃料関連企業の当該部門の事業活動に基づいて割引して算出。

   

*執筆者による新型コロナウィルスに関する注記
本報告書の執筆団体は、世界中の人々が現在直面している新型コロナウィルスによる生命、健康、生計手段への深刻な影響による緊急事態を認識しています。パンデミックおよびそれに付随する経済的影響への緊急対応が当面の優先事項とされるべきとの認識の下、執筆していました。しかしながら、気候変動が絶滅の危機であることには変わりありません。私たちが再び気候危機に目を向けることができるようになった時、本報告書のデータや分析が気候危機の脅威に真剣に立ち向かうために役立つことを願っています。

   

注1)RAN、バンクトラック、シエラクラブ、オイル・チェンジ・インターナショナル、先住民族環境ネットワーク、リクレイム・ファイナンス、「化石燃料ファイナンス成績表2020」日本語要約版
報告書全文(英語)
※350.org Japan、気候ネットワーク、グリーンピース・ジャパンは、本報告書を支持する250以上の団体に含まれます。

注2)国際連合広報センター「IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約を 締約国が承認」(2018年10月8日付 IPCC プレスリリース・日本語訳)2018年10月16日

注3)「Fridays For Future Tokyo」は3月6日、みずほ銀行に新規の石炭火力への融資を辞めることを求めて本社前でアクションを起こした。
ブルームバーグ「Young Climate Activists Change Tactics as Virus Spreads」、2020年3月16日(英語)

注4)NHK「『石炭火力への融資はリスク』 気候変動対策で株主提案」、2020年3月16日

注5)RAN「プレスリリース:三菱UFJの人権侵害・森林破壊・化石燃料への融資を批判」、2019年6月27日

注6)VOX, “4 astonishing signs of coal’s declining economic viability: Coal is now a loser around the world”, 2020年3月14日(英語)

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

350.org Japanは米国ニューヨークに拠点を置く国際環境NGO 350.orgの日本支部として2015年4月に設立されました。350.org Japanは気候変動防止に向けた化石燃料への投融資撤退「ダイベストメント」を広めるために、「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンを展開しています。このキャンペーンを通じて、「パリ協定」で定められている気温上昇を1.5℃未満に抑える目標に整合した投融資方針を策定することを邦銀に市民とともに呼びかけています。350.orgは180を超える国と地域で活動を展開しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※記載に一部誤りがございましたので訂正いたします(2021年3月8日)。
誤)超深海の石油・ガス
正)海洋の石油・ガス