サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース:日清食品に新署名開始「問題あるパーム油はストップ Do It Now!」(2023/3/29)

熱帯林破壊、人権侵害、違法農園開発などへの早急な対応の意思表明を求めて〜2030年グローバル目標の大幅な前倒しを〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、3月21日、日清食品ホールディングスに、森林破壊や人権侵害、違法農園開発への早急な対応を求めて、「日清食品さん、2030年では遅すぎます。問題のあるパーム油は今すぐストップ!地球と未来のために、Do It Now!」署名を開始しました(注1)。

日清食品は2020年6月、2030年度までの「持続可能なパーム油調達比率100%」実現に向けてチャレンジするという目標を掲げました(注2)。署名活動や株主総会などを通じた働きかけを通じて、2021年6月に「国内即席めんの目標を2025年度とする」と改善されましたが、それ以外の調達での目標年は2030年度のままです。対応は遅く、高まる消費者の期待を裏切るものです。2023年3月時点で、同社はグループ全体の「RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議)」認証パーム油使用割合(2021年実績)を約36%と公表しています。しかし、日清食品が採用しているRSPOの「マスバランス」方式では認証農園で生産されたパーム油と、生産地の追跡ができない問題あるパーム油が混合され、森林破壊や人権侵害への対処は困難です。2022年に開示されたパーム油を調達する搾油工場リストの情報には、RANの調査で発覚した違法開発地域からのパーム油森林破壊を引き起こす企業からのパーム油が納入されていた搾油工場が含まれており、問題のあるパーム油への対応システムが不十分であることが判明しました。

本署名では、日清食品に目標年の前倒しと、自社サプライチェーン(供給網)から問題あるパーム油を排除するための実施計画策定および公表などを求めます。

【署名について】

本署名は署名サイト「change.org」で展開し、日清食品ホールディングス安藤宏基取締役社長 CEOとアメリカ日清 マイケル・プライス社長に以下4点を要望しています。

1. グループ全体で自社サプライチェーン(供給網)から問題あるパーム油を確実に排除するために、2030年から大幅に前倒した達成期限を持った拘束力のある実施計画を直ちに策定し、発表してください。

2. パーム油のサプライヤーを全て情報開示すること。

3. パーム油のサプライヤーが方針を遵守しているかをモニタリングし、独立検証できる新たな仕組みを構築することによって、方針実施状況を示すこと。

4. パーム油を含む全ての森林リスク産品を対象とするグループ全体の調達方針において、森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針がサプライヤーへの要求事項となることを明記する。

RAN 日本代表 川上豊幸は「2030年度という目標年は、経営陣の危機感の無さや問題対処への意思が希薄であることを露呈しているようです。日清食品が今後7年間も環境・社会面での配慮の確認が不十分なパーム油調達を続ければ、サプライチェーンで発生している気候危機や生物多様性の損失、労働権および土地権の深刻な人権侵害が今後も続き、対応を先送りすることになります。『食』を通じて楽しみや喜びを提供し、世界の人々(=地球)に貢献するEarth Food Createrを目指すグローバルカンパニーの目標とは思えず、多くの消費者の期待を裏切ってしまうのではないでしょうか」と指摘しました。

【背景:日清食品のパーム油調達における動き】

  • 日清食品は2020年8月にパーム油調達方針を改定し、「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE:No Deforestation,No Peat,No Exploitation)の支持を表明しました注3)。改定方針には、責任あるパーム油生産に欠かせない国際基準である「NDPE」に沿った項目が含まれ、森林破壊や森林火災、そして炭素を豊富に含む泥炭地開発の禁止、また先住民族および地域住民の権利尊重と土地権侵害の禁止が明記されました。
  • 方針強化の背景には、高まる消費者の懸念があります。2019年、RANはインドネシアで現地調査を行い、日清食品を含む大手消費財企業が、スマトラ島の貴重な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」で熱帯林および泥炭地破壊を引き起こしている企業からパーム油を調達している可能性を明らかにしました(注4)。2022年、RANは再度、現地調査を行い、ルーセル・エコシステムの保護地域を違法に農園開発した地域からのパーム油が納入された搾油工場(注5)や、森林破壊を引き起こしている企業から調達している搾油工場(注6)が、日清食品を含む大手消費財企業のミルリスト(調達先搾油工場リスト)に含まれていることを示しました。
  • RANは2020年4月、「キープ・フォレスト・スタンティング」キャンペーン注7)を開始し、自社サプライチェーンでの森林破壊および人権侵害への対処において、国際的に影響力のある消費財企業として10社を挙げました。日清食品はその1社ですが、キャンペーン開始時にNDPE基準を採用していなかった唯一の消費財企業でした。日清食品のNDPE方針を支持するとの表明は大きな一歩ですが、高い保護価値(HCV)地域や高炭素貯留林(HCS)の転換禁止などの森林破壊禁止規定、泥炭地開発禁止、先住民族のFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づ同意)の権利などの項目は、日清食品グループ全体の調達方針には明記されていません。企業グループとしての調達方針強化と、方針達成に向けた実施計画の策定および野心的な達成目標年の公表が必須です。

注1)署名URL: https://chng.it/BScfG5rB

 英語版署名「NISSIN’S TOP RAMEN COMES DEAD LAST」

注2)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略『EARTH FOOD CHALLENGE 2030』始動!」(2020年6月9日)より抜粋

「森林破壊の防止、生物多様性の保全、および農園労働者の人権に配慮された持続可能なパーム油の調達を進めます。2020年3月現在、グループ全体における「RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議)」認証パーム油の調達比率は約20%です。2030年度には、RSPO認証パーム油の調達に加え、独自アセスメントにより持続可能であると判断できるパーム油のみを調達することを目指します」

注3)日清食品ホールディングス「持続可能な調達:持続可能なパーム油調達コミットメント」より抜粋:

日清食品グループは、NDPE (No Deforestation,No Peat,No Exploitation=森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ) を支持し、取引先等のステークホルダーの協力を得て、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油を調達します。
 ・保全価値の高い (HCV: High Conservation Value) 地域および炭素貯蔵力の高い (HCS: High Carbon Stock) 森林の保護、森林破壊ゼロ
 ・深さに関わらない泥炭地の新たな開発禁止
 ・植栽や土地造成、その他開発のための火入れ禁止
 ・先住民族・地域住民の権利尊重・土地権侵害の禁止
 ・RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議) が定める「原則と基準」の遵守
 ・農園まで含めたトレーサビリティの確認

注4)RANプレスリリース「三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜」 (2019/10/18)

注5) RANプレスリリース「新調査報告書『炭素爆弾スキャンダル』発表〜日清食品など大手消費財企業、インドネシア違法パーム油との関連性が継続〜」(2022/9/22)

注6) RAN, Notorious Rainforest Destroyer Caught Taking Palm Oil To Global Market (2022/12/08)

注7)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜 (2020/4/1)

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
川上豊幸  Email:japan@ran.org

タグ: パーム油, 日清, 東京五輪, 気候変動