サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

共同プレスリリース:世界の投資家、日本企業の気候変動対策及び取締役会の監督能力の実効性に重大な懸念を表明(2024/7/8)

国際環境NGO マーケット・フォース
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

環境NGOとその代表者を含む個人株主は今年4月に金融・電力の2業界4企業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、日本最大の発電会社・JERAの経営に大きく関与する中部電力)に対して株主提案を提出しました。

当該企業4社に対する株主提案は、企業の取締役会が気候関連事業リスク及び機会の適切な管理・監督を行う上で必要な能力あるいは人材を備えているか、株主が評価する上で必要な情報開示を求めるものです。

メガバンク3社には、上記の提案に加えて、気候変動への公約及び気候変動リスク管理戦略を踏まえ、化石燃料セクターの顧客の移行計画とパリ協定1.5℃目標との整合性について、各行がどのように評価を行うか、そして当該セクター顧客がパリ協定に沿った信頼性の高い移行計画を作成しなかった場合、新規資金の制限を含む、対応措置をどのようにとるのかの開示を求める提案を提出しました。

すべての議案は6月末に実施された当該企業4社の株主総会で以下の通り決議されました。

株主提案の内容と議決権行使結果

※各社臨時報告書:三菱UFJFG三井住友FGみずほFG中部電力

3メガバンクに対する取締役のコンピテンシーを求める提案については、議決権行使助言会社のISSが賛同を表明しています。各社は反論を提示しましたが、この提案の内容が世界的な機関投資家の要望に即したものであることは明らかです。
上記の株主提案の議決結果は、気候変動に関するリスクへの対処に関して課題を抱える企業に対して、引き続き厳しい目が向けられていることを意味します。

中部電力

「中部電力は、化石燃料事業を拡大し続けるJERAの株式を50%保有し、その脱炭素戦略にも大きく依存しています。しかしながら、中部電力の取締役会が、気候関連リスクと機会を管理するために必要な専門知識を十分に備えているか不明のため、自社および株主は重大な財務リスクに晒されています。
投資家が期待する情報開示と、中部電力の取締役会が備えていると主張し、開示している専門知識やスキルマトリックスの内容や情報量には大きな乖離があり、その不満が今回の4分の1に迫る賛成率に反映されていると言えます」
鈴木幸子(マーケット・フォース, エネルギーファイナンスアナリスト)

「中部電力の電源構成は石炭22%、LNG42%(2022年度実績)と化石燃料による発電が大半を占めています。同社は、2050年に事業全体のCO2排出をネットゼロにする目標を掲げていますが、総会での説明および質疑応答では、グリーン・トランスフォーメーションやデジタル・トランスフォーメーションを促進することで社会システムの再構築につなげるといった抽象的な考えが示されるのみで、ネットゼロに向けた具体的な策は示されませんでした。一方で、脱炭素には原発が不可欠として早期の稼働再開を目指すとの主張が繰り返され、このままで本当に脱炭素が達成できるのかとの不安は拡大するばかりです。我々の提案に対する23.3%という賛成には、より具体的かつ実質的な気候変動対策を進められる人材と気候コンピテンシーが必要であるとの投資家の期待が込められているのではないでしょうか」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

MUFG、三井住友FG、みずほFG

「昨年の提案に比べて賛成率が大きく伸びた3メガバンクへの6つの提案は、世界の投資家から、各行の取締役・経営陣に対する気候関連のリスク管理を強化するよう求める強いシグナルと言えます。日本のメガバンクが、気候科学に反してLNGなどの化石燃料拡大への支援を増額し、実効性ある抑制方針をいまだに示さないことは、世界の中で大きく遅れを取っており、投資家の財務リスクを適切に管理できていないと見なされているからです。「地域固有の様々な経路」と言い訳をしているうちに、世界は再エネやエネルギー効率への投資を益々拡大し、高くて汚い化石燃料からの脱却を進めており、日本企業の競争力にも悪影響を及ぼしかねません。さらに日本は「移行ファイナンス」の名の下に、アジアの化石燃料使用を固定化(ロックイン)するなど、脱炭素化を妨げてしまっています。今こそ、各行の1.5度(ネットゼロ)への公約に立ち返り、経済や社会基盤の安定と直結する気候対策に本気で取り組むべきです」
渡辺瑛莉 (マーケット・フォース, 日本エネルギー金融キャンペーナー)

「各行が気候変動対策への取組みを強化している点は評価していますが、日本の電力セクターが1.5℃目標に整合するには、まだ不十分であると考えています。世界では既に化石燃料の使用を如何に削減するかを論じている中、日本ではいまだに100基を超える石炭火力発電所が稼働している上に、CO2対策がとられていない(Unabated)に関して独自解釈を展開し、官民一体となって水素・アンモニア混焼を推し進めようとしています。金融機関は気候変動対策を進める上で重要な役割を担っています。自らのコミットメントを果たし、顧客の脱炭素戦略を支援していくためには、科学的根拠に基づいて顧客の脱炭素化計画が信頼できるものかを判断し、適格な評価を行う必要があります。そのためには気候コンピテンシーが不可欠です。25%を超える賛成票は、世界の投資家も取締役に気候コンピテンシーを求めていることが示されたと言えるでしょう。今後、会社がどのように気候関連のリスク管理を強化していくのかに注意していきたいと思います」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

「メガバンクには、今回の株主提案で投資家から有意な数の賛同があったことを真摯に受け止め、顧客企業の移行計画が1.5度目標に沿っているかどうかを評価する体制と、気候危機に対応できる取締役の管理体制の強化が求められます。メガバンク3社はネットゼロを約束していますが、化石燃料企業への資金提供を継続し、特にLNGセクターでは世界の銀行でも1、2を争う金額をみずほとMUFG は2023年に提供し、信頼できる移行計画を持たない北米の企業にも巨額の資金提供を行っています。これは融資先企業の移行計画への対応状況の評価体制が不十分で、かつ、取締役会としての管理・監督機能も働いていないことを示していると言えます。
 メガバンクは米国メキシコ湾岸のリオ・グランデLNG施設とパイプライン開発企業にも資金提供していますが、この事業は温室効果ガス排出量の多さに加え、周辺環境の悪化による低所得住民への負の影響や、先住民族の権利侵害が指摘され、人権面でも深刻な問題を抱えています。各社とも投融資における人権デューデリジェンスの実施を約束し、総会の質疑応答でも人権尊重を強調する場面はありましたが、このような事例を見ると実施が十分であるとはいえません。気候変動でも人権でも、策定した方針の実施体制の強化が必要です」
川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク 日本シニア・アドバイザー)

報道機関関係者の皆様へ:

気候変動に関する株主提案・対話の効果、着実に

2020年にみずほFGに気候変動に関する株主提案が提出されて以来、多くの投資家が日本の主要企業の気候変動対策の遅れに対して、深刻に懸念し、対話を実施してきました。今年は総合商社や銀行、電力、自動車のほか、製鉄や製薬業界の企業にも気候変動対策の遅れを問う株主提案が提出されています。
いっぽうで、定款変更を求める株主提案が可決されるために株主の2/3以上の賛同が必要であることから、報道関係者の皆様より、急速な脱炭素を推し進める我々の活動の具体的成果についてご質問を頂くことも度々あります。そこで、我々が企業との対話を通じ、企業のマテリアルリスクを取り除き、脱炭素に大きく寄与することとなった数ある事例のうち代表的なものを以下にてご紹介いたします。ぜひご参考にしてください。

総合商社による石炭火力発電事業の撤退
マーケット・フォースは2021年、住友商事に対してパリ協定の目標に沿った事業活動のための事業戦略を記載した計画の策定、及び開示を求める株主提案を提出しました。提案は20%の賛成票を獲得し、その後の石炭火力に関するポリシーの改善につながりました。さらに住友商事は2022年2月にバングラデシュのマタバリ2 石炭火力発電所から撤退することを発表しました。この結果、同社は年間1億8700万トンのCO2排出を回避することに成功したと考えられます。

金融機関による指針変更や化石燃料事業への融資ストップ
2020年、気候ネットワークがみずほFGに株主提案を行い、みずほFGは日本の銀行として初めて、2050年までの石炭火力フェーズアウト目標(後に2040年に変更)を設定しました。他の2メガバンクもこの動きに追随しています。

2021年、350.org Japan、RAN(個人株主)、気候ネットワーク、マーケット・フォースはMUFGに対し、株主提案を提出しました。決議後、MUFGは2050年までにポートフォリオ全体でネットゼロを目指すことを発表し、日本の銀行として初めてネットゼロバンキングアライアンスに加盟しました。その後、みずほFG、三井住友FGも追随しています。

2022年、350.org Japan、RAN(個人株主)、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三井住友FGに対して気候変動に関する株主提案を2件提出しました。株主提案の提出後、同社は石炭採掘部門の投融資方針を強化し、新規および既存プロジェクトの拡張と関連するインフラ開発への投融資を制限しました。その後、他2行も同様の方針を掲げました。

2023年には、金融、商社、電力の3業界の6企業に対して提案を提出し、気候変動対策の更なる強化を求めました。三井住友FGが環境破壊と人権侵害の懸念がある東アフリカ原油パイプライン事業 (EACOP)に、関与しないと表明しています。環境団体の声に加え、株主提案でも抗議を表明したことで、同社は融資への関与を否定しました。その後、MUFGも同様の表明を行いました。

これまでの気候変動対策を求める企業との対話は、上記のような形で株主提案の提出に至りましたが、企業の取り組みの段階的な改善に重要な役割を果たしてまいりました。今年の株主提案の対象となった企業も、これまでに情報開示の改善を行っており、今年に統合報告書が公開されれば、さらに改善されることが期待されます。

「Asia Shareholder Action」株主提案および投資家向け説明資料はこちらのサイトからご覧いただけます。

お問い合わせ先

マーケット・フォース (https://www.marketforces.org.au )
担当者: Antony Balmain +61-423-253-477
Email:antony.balmain@marketforces.org.au

気候ネットワーク(https://www.kikonet.org )
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
japan.ran.org
担当者:関本幸
E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

共同プレスリリース:環境NGO、東証プライム4企業に対して株主提案〜メガバンク全3社含む日本企業の取締役のコンピテンシーに関する開示を要求〜(2024/4/15)

国際環境NGO マーケット・フォース
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

国内外の環境NGOとその代表者を含む個人株主は4月15日までに、金融、電力の2業界の4企業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、日本最大の発電会社・JERAの経営に大きく関与する中部電力)に対し、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出しました。

我々は関連企業との対話を続けてきましたが、より一層の気候変動対策への注力を期待し、今年は企業の取締役会に焦点を当てた提案を提出しています。提出先企業の取締役会が、気候関連事業リスク及び機会の適切な監督を行う上で必要な能力あるいは人材を備えているか、株主が評価する上で必要な情報開示を求める議案となっています。

株主提案

昨年の株主総会シーズンで日本企業は過去最多の気候変動に関する株主提案に直面しました。近年、このような株主提案は環境NGOに限らず、国外の機関投資家や地方自治体からも提案されています。多様なステークホルダーが高炭素排出企業による気候変動対策の遅れに対して、広範囲に及ぶ悪影響のみならず、企業価値の低下を招くとの危機意識を共有し、行動に移しています。我々が提出した議案も機関投資家に幅広く支持されました。

メガバンク3社については、気候変動への公約及び気候変動リスク管理戦略を踏まえ、これらの実効性を株主が判断できることが重要です。化石燃料セクターの顧客の移行計画とパリ協定1.5℃目標との整合性について、メガバンク各社がどのように評価を行うか、そして当該セクター顧客がパリ協定に沿った信頼性の高い移行計画を作成しなかった場合、新規資金の制限を含む、対応措置をどのようにとるのかの開示を求めています。

提出先企業が抱える問題の要点は以下の通りです(業界ごと)

■メガバンク

「メガバンクの気候変動対策は1.5度に気温上昇を抑えるために科学が明確に求めている行動水準からいまだに大きく乖離しており、このことは企業価値をリスクにさらします。特に、石油・ガスへのファイナンス方針においてアジアの銀行を含む競合他社から大きく遅れをとり、高リスクの事業に資金を提供し続けており、リスク管理能力が問われています。我々の2つの提案が可決されれば、メガバンクの取締役会に気候関連の事業リスクと機会を監督する能力が備わっているか、またメガバンクが重視する高排出企業への移行エンゲージメントの実効性について株主が評価できるようになるでしょう。ひいては、メガバンクの気候変動対策の強化に繋がり、企業価値の維持・向上にも資すると考えます。」

(マーケット・フォース, 日本・エネルギーファイナンスキャンペーン担当, 渡辺瑛莉)

 

「メガバンクは、融資先の移行計画への評価体制が緩い点が問題です。気候危機下で効果的な管理を行うための取締役など経営レベルでの専門性が不足しているように見えます。結果として、1.5℃目標の達成を困難にするような事業計画を持っている企業にも融資が継続されたり、また、銀行としての方針や管理体制が不十分なのではないかと私たちは懸念しています。例えば、LNGセクターでの事業拡大を進める企業への資金提供を継続し、MUFGとみずほは先住民族の人権を侵害している米国のリオ・グランデLNG事業でも重要な役割を果たしています。3行とも、木質バイオマス発電事業や農業など高炭素セクターでの生物由来CO2排出量の集計も行なっていません。メガバンクにはネットゼロにコミットし、脱炭素社会へのシステム移行をサポートする金融機関として、融資先企業や政府の移行計画の妥当性を見極め、対処する管理能力が問われています。」

(レインフォレスト・アクション・ネットワワーク, 日本シニア・アドバイザー, 川上豊幸)

 

■中部電力

今年は特に『第7次エネルギー基本計画』についての検討が行われる重要な年です。中部電力およびJERAは、引き続き、水素・アンモニア、CCSの導入促進および原発再稼働で脱炭素を図るとしていますが、それらによる実質的な排出削減効果と経済性、さらに安全性の保障を鑑みれば、まったく解決策にはなっていません。根本的な方針転換をするには、会社経営を担う人たちに科学的知見を踏まえた判断をしていただく必要があります。真の脱炭素、再エネが主力となる社会に向かっていくには柔軟な考え方と思い切った転換が必要です。」

(気候ネットワーク, プログラム・コーディネーター, 鈴木康子)

 

「採掘から使用を含めた供給網全体で化石燃料からの脱却なしに気温上昇を1.5度以下に抑制することは極めて困難です。中部電力とJERAの移行計画は、1.5度目標のタイムラインに沿っているとは言えず、両社は大きな移行リスクを抱えるとともに気候変動の悪化を招こうとしています。中部電力の取締役会は真正かつ実効性のある移行計画を後押しする監督責任があり、今後厳しい目で見られることになるでしょう。そもそも、取締役会の気候リスク監督能力を株主が評価するための情報が不足しているのが現状です。」

(マーケット・フォース, エネルギーファイナンスアナリスト, 鈴木幸子)

 

株主提案の提出先企業に求める情報開示は、コーポレートガバナンス・コードの求め、及び投資家団体(CA100+やTPI等)、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)等を通じ、投資家が求める情報開示に合致しています。

また、株主提案を提出先となった企業は、座礁資産リスク(環境や市場、規制の変化で企業が将来的に減損処理する資産を抱えること)や訴訟リスク、ブランド価値の毀損など将来の企業価値に関する重大なリスクを抱えています。また、こうした企業が誤った戦略を取り続けると気候変動対策の妨げともなりかねません。

企業が我々の株主提案を真摯に受け止め、投資家の方々の後押しを受けて気候変動対策を強化するとともに情報開示を進めることが、企業価値の向上に繋がり、ひいては気候危機を防ぐ一助となるとして、ご理解を得られることを期待しています。

 

■ 株主提案に関する詳細 

メガバンク3社(こちらから)

中部電力 (こちらから)

 

■ 株主提案に関する特設サイト

各社への提案書および投資家向け説明資料は特設サイトからもダウンロードいただけます。

Asia Shareholder Action: https://shareholderaction.asia/ja/

 

■ 株主提案の内容に関するお問合せ先

□ マーケット・フォース(Market Forces)https://www.marketforces.org.au
日本語窓口(松木):TEL:+81-80-4395-8529
担当者:Antony Balmain E-mail: contact[@]marketforces.org.au
Tel: +81-80 4395 8529

□ 気候ネットワーク  
https://www.kikonet.org

東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

□ レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
japan.ran.org

担当者:川上豊幸 E-mail: toyo[@]ran.org

NGO共同プレスリリース:MUFG株主提案、23%の支持を獲得(速報値)(2021/6/29)

~株主のプレッシャーがMUFGの気候対策を動かす~

MUFG株主総会に気候変動株主提案を提出した気候ネットワークと個人株主 ©︎RAN

気候ネットワークおよび3人の個人株主が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して提出した株主提案は、可決に必要な3分の2の株主の支持を得ることはできませんでしたが、株主らがMUFGに対し、気候変動に対する明確な警告を示し、投資家による圧力の影響を今一度指し示す結果となりました。速報値では23%の株主の賛成が得られました。

本日のMUFGの株主総会の議案の一つとして採決された株主提案は、気候ネットワークおよびマーケット・フォース、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japanの3人の個人株主による共同提案であり、パリ協定の目標に整合させるために必要な指標と目標を備えた計画を決定し、開示することを求めたものです。

本株主提案は、Federated Hermes EOSを含む、資産運用総額で数兆ドルに及ぶ機関投資家からの支持を得たことに留まらず、MUFGが2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロを約束する「MUFGカーボンニュートラル宣言」の発表につながる動きを後押ししました。

国際的な大手議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、株主総会に向けた助言の中で、「銀行の動きは外部からのプレッシャーと無関係ではないように見えることは指摘しておきたい。MUFGは、気候ネットワークが今年3月に株主提案を提出した後に、カーボンニュートラル宣言を発表しており、グループからのプレッシャーがこの動きを後押ししたと考えられる。このことは、気候ネットワークのMUFGに対する働きかけ(エンゲージメント)が既に実を結んでいることを示していると言えるだろう」と述べています。

 気候ネットワークの国際ディレクター平田仁子は、「大手議決権行使助言会社が会社提案を支持したにもかかわらず、4分の1に迫る23%の株主が私たちの提案を支持したことは大変心強い結果です。投資家が、今のMUFGの方針ではまだ不十分であることを突きつける結果になったたと考えます。今日の議決権行使は、経営者をさらに追及するものであり、MUFGに対するプレッシャーは今後一層高まると考えています。」

 「また、気候危機の物理的・経済的影響は明らかであり、投資家は、MUFGに対し、さらに迅速に大胆に行動することの必要性を求めていくことになるでしょう」と述べています。

MUFG株主総会会場前で株主提案について説明する気候ネットワーク国際ディレクター 平田仁子氏 ©︎Taishi Takahashi

アジアの主要銀行で化石燃料に最多の額を提供しているMUFGの現状を踏まえると、提案者は5月17日に発表されたネットゼロ宣言を歓迎しながらも、MUFGが以下のような欠陥を残していると考えます。

  • ●パリ協定と整合するために必要な短期・中期の目標が定められておらず、「2030年の中間目標は2022年度に設定・公表する」と表明するに留まっている。すべての投融資に伴う排出量の測定および開示を行うとの明確なコミットがなされていない(スコープ3)。
  • ●第26回 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)議長の最近の要求に反して、石炭に対するファイナンスのフェーズアウト(段階的廃止)目標を定めていない。
  • ●石油・ガスの事業の拡大、または森林と泥炭地の破壊といった非常に炭素集約度の高い事業に対するファイナンスを止めるという包括的なコミットメントは出されていない。

350.org Japan 代表の横山隆美は、「MUFGが新しい方針を公表したことにより、一部の株主にとっては、銀行が正しい方向に進んでいることが一時的には保障されたわけですが、本日の投票は大きな不満と懸念を残すものとなりました。私たちの議案が否決されたとはいえ、相当数の賛成票があった訳であり、コーポレート・ガバナンス・コードが示す通り、MUFGは株主の賛成の理由や多くの票が集まったことの分析を行い、株主との対話をさらに深めることが必要です」と述べています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸は「MUFGは化石燃料への資金提供で世界6位の銀行であり、森林破壊をもたらす産品への資金提供でもトップ銀行の一つです。そのことを考えれば、現在の約束では自社の投融資による膨大な炭素排出への影響力に対して適切に対処ができていません。この株主の賛同への動きをMUFGは真摯に受け止めて、迅速に対処することが必要です」 と指摘しています。

マーケット・フォースのエネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「世界は急速にクリーンエネルギーへと移行していますが、MUFGは過去にこだわり続けています」「投資家にはプレッシャーをかけ続ける責任があり、MUFGが言葉だけでなく真の行動へと確実に移行するために、今後も引き続き厳しい目を向けていくことが重要です」と述べました 。

MUFG株主総会後の記者会見 ©︎350 Japan
MUFG株主総会会場前でのアピール行動 ©︎ Taishi Takahashi
MUFG株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち ©︎ Taishi Takahashi
MUFG株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち ©︎ Taishi Takahashi

株主総会前アクション・記者会見の写真はこちら

参考:NGO共同プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出〜昨年のみずほFGに続く日本での株主アクション〜」(2021/3/29)

英語のプレスリリース:“Shareholders send MUFG a stark climate warning”

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

気候ネットワーク 平田仁子 E-mail: khirata@kikonet.org
マーケット・フォース 福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa@marketforces.org.au
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 E-mail: yuki.sekimoto@ran.org
350.org Japan 渡辺瑛莉 E-mail: eri.watanabe@350.org

NGO共同声明:MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず(2021/4/26)

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークの改定について 」(注1)における「特定セクターに係る項目」の石炭火力発電セクターおよび森林、パーム油セクターに関するファイナンス方針の改定を公表しました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「本改定は、いくつかの部門において対策強化が図られていますが、急を要する気候危機への対応として、なお不十分なものです。日本の金融機関を代表するMUFGには今後、パリ協定の1.5度目標達成に整合した、より野心的な石炭関連の方針を策定し、その他化石燃料や森林破壊を引き起こす産品に関する方針の強化を期待します」と述べました。

本改定でMUFGは、石炭火力発電所の新設に加え、既存発電設備の拡張にも原則としてファイナンスを実行しないと規定しましたが、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合があります」と例外を残しています。CCUSも混焼も2030年までの削減にはほとんど寄与しないと考えられており、石炭火力を延命することにすぎない技術です。これらの技術への支援はパリ協定と整合しません。

国際環境NGO 350.org Japan代表である横山隆美は、「MUFGのセクター方針のスコープは基本的にプロジェクトファイナンスに限定されており、コーポレートファイナンスは含まれていないことは大きな懸念事項です。「脱石炭リスト(Global Coal Exit List)」投融資調査 (注2、3)によると、MUFGの石炭産業 への融資は世界第3位です。石炭火力セクターのポリシーとしてはバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンスへと拡大し、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を策定すべきですが、今回の改訂では踏み込めていません」と指摘しました。

MUFGはまた、熱帯林破壊を引き起こしている企業に資金提供を行っている世界有数の金融機関であり、パーム油および紙パルプセクターの顧客企業に関連するESG(環境・社会・ガバナンス)リスクへのエクスポージャーが高い銀行です。特にパーム油セクターへの融資・引受額は東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、インドネシア6位のバンクダナモンを買収して東南アジアでの存在感を高めつつあります。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「今回の方針改定でパーム油セクターにおいて『森林破壊ゼロ、 泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を遵守する旨の公表を求める』ことが追加されたことは評価できます。しかしNDPE基準の適用はパーム油のプランテーション企業に限定され、パーム油購入企業には適用されず、そして紙パルプなど熱帯林や泥炭地の破壊を引き起こしているパーム油以外の産品に対しても適用されなかったことは非常に残念です。そしてNDPE方針を遵守するための独立検証を求めていないことも課題です。農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは、気候対策面からは大きな失敗といえます」と指摘しました。

今回の改定ではまた、石油・ガスセクター方針に何らの変更がなく、パリ協定の目標に沿ってフェーズアウトする約束がされなかったのは大きな懸念です。マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGを始め日本の金融機関は化石燃料企業へのエクスポジャーが大きく、中でもMUFGは今年3月にRAN他が発表した調査(注4) では、過去5年間の化石燃料事業への融資・引受額で世界第6位を占め、アジアで第1位を占めました。本改定をもってしても、MUFGの化石燃料セクターポリシーは、諸外国の金融機関と比べても極めて不十分です。昨今、世界の投資家や金融機関による2050年ネットゼロ実現に向けて、投融資による排出をゼロにするコミットメントが相次ぐ中、MUFGは遅れをとっています。」と述べました。

気候ネットワークおよび環境NGOに所属する個人株主3名は今年3月 、MUFGに対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めた株主提案を提出しました(注5)。本改定内容は提案内容とはいまだに乖離があり、パリ協定1.5℃目標に整合していると理解できるものではありません。今後、株主としてMUFGと引き続き協議を進めてまいります。

注1)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2021年4月26日

注2)共同プレスリリース「日本の金融機関が石炭産業への融資総額で世界第1位に」、2021年2月25日

注3)本調査の対象および調査方法はこちらをご参照。

注4)共同プレスリリース「『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」、2021年3月24日

注5)プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出」、2021年3月29日

英語のプレスリリース:“Japan’s largest bank MUFG tightens coal power and forest sector policies – but far from aligned with Paris Agreement”

本件に関するお問い合わせ

気候ネットワーク 平田仁子 khirata@kikonet.org

マーケット・フォース 福澤恵 meg.fukuzawa@marketforces.org.au

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 yuki.sekimoto@ran.org

国際環境NGO 350.org Japan 横山隆美 japan@350.org