サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

NGO共同プレスリリース:MUFG株主提案、23%の支持を獲得(速報値)(2021/6/29)

~株主のプレッシャーがMUFGの気候対策を動かす~

MUFG株主総会に気候変動株主提案を提出した気候ネットワークと個人株主 ©︎RAN

気候ネットワークおよび3人の個人株主が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して提出した株主提案は、可決に必要な3分の2の株主の支持を得ることはできませんでしたが、株主らがMUFGに対し、気候変動に対する明確な警告を示し、投資家による圧力の影響を今一度指し示す結果となりました。速報値では23%の株主の賛成が得られました。

本日のMUFGの株主総会の議案の一つとして採決された株主提案は、気候ネットワークおよびマーケット・フォース、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japanの3人の個人株主による共同提案であり、パリ協定の目標に整合させるために必要な指標と目標を備えた計画を決定し、開示することを求めたものです。

本株主提案は、Federated Hermes EOSを含む、資産運用総額で数兆ドルに及ぶ機関投資家からの支持を得たことに留まらず、MUFGが2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロを約束する「MUFGカーボンニュートラル宣言」の発表につながる動きを後押ししました。

国際的な大手議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、株主総会に向けた助言の中で、「銀行の動きは外部からのプレッシャーと無関係ではないように見えることは指摘しておきたい。MUFGは、気候ネットワークが今年3月に株主提案を提出した後に、カーボンニュートラル宣言を発表しており、グループからのプレッシャーがこの動きを後押ししたと考えられる。このことは、気候ネットワークのMUFGに対する働きかけ(エンゲージメント)が既に実を結んでいることを示していると言えるだろう」と述べています。

 気候ネットワークの国際ディレクター平田仁子は、「大手議決権行使助言会社が会社提案を支持したにもかかわらず、4分の1に迫る23%の株主が私たちの提案を支持したことは大変心強い結果です。投資家が、今のMUFGの方針ではまだ不十分であることを突きつける結果になったたと考えます。今日の議決権行使は、経営者をさらに追及するものであり、MUFGに対するプレッシャーは今後一層高まると考えています。」

 「また、気候危機の物理的・経済的影響は明らかであり、投資家は、MUFGに対し、さらに迅速に大胆に行動することの必要性を求めていくことになるでしょう」と述べています。

MUFG株主総会会場前で株主提案について説明する気候ネットワーク国際ディレクター 平田仁子氏 ©︎Taishi Takahashi

アジアの主要銀行で化石燃料に最多の額を提供しているMUFGの現状を踏まえると、提案者は5月17日に発表されたネットゼロ宣言を歓迎しながらも、MUFGが以下のような欠陥を残していると考えます。

  • ●パリ協定と整合するために必要な短期・中期の目標が定められておらず、「2030年の中間目標は2022年度に設定・公表する」と表明するに留まっている。すべての投融資に伴う排出量の測定および開示を行うとの明確なコミットがなされていない(スコープ3)。
  • ●第26回 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)議長の最近の要求に反して、石炭に対するファイナンスのフェーズアウト(段階的廃止)目標を定めていない。
  • ●石油・ガスの事業の拡大、または森林と泥炭地の破壊といった非常に炭素集約度の高い事業に対するファイナンスを止めるという包括的なコミットメントは出されていない。

350.org Japan 代表の横山隆美は、「MUFGが新しい方針を公表したことにより、一部の株主にとっては、銀行が正しい方向に進んでいることが一時的には保障されたわけですが、本日の投票は大きな不満と懸念を残すものとなりました。私たちの議案が否決されたとはいえ、相当数の賛成票があった訳であり、コーポレート・ガバナンス・コードが示す通り、MUFGは株主の賛成の理由や多くの票が集まったことの分析を行い、株主との対話をさらに深めることが必要です」と述べています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸は「MUFGは化石燃料への資金提供で世界6位の銀行であり、森林破壊をもたらす産品への資金提供でもトップ銀行の一つです。そのことを考えれば、現在の約束では自社の投融資による膨大な炭素排出への影響力に対して適切に対処ができていません。この株主の賛同への動きをMUFGは真摯に受け止めて、迅速に対処することが必要です」 と指摘しています。

マーケット・フォースのエネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「世界は急速にクリーンエネルギーへと移行していますが、MUFGは過去にこだわり続けています」「投資家にはプレッシャーをかけ続ける責任があり、MUFGが言葉だけでなく真の行動へと確実に移行するために、今後も引き続き厳しい目を向けていくことが重要です」と述べました 。

MUFG株主総会後の記者会見 ©︎350 Japan
MUFG株主総会会場前でのアピール行動 ©︎ Taishi Takahashi
MUFG株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち ©︎ Taishi Takahashi
MUFG株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち ©︎ Taishi Takahashi

株主総会前アクション・記者会見の写真はこちら

参考:NGO共同プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出〜昨年のみずほFGに続く日本での株主アクション〜」(2021/3/29)

英語のプレスリリース:“Shareholders send MUFG a stark climate warning”

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

気候ネットワーク 平田仁子 E-mail: khirata@kikonet.org
マーケット・フォース 福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa@marketforces.org.au
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 E-mail: yuki.sekimoto@ran.org
350.org Japan 渡辺瑛莉 E-mail: eri.watanabe@350.org

NGO共同声明:MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず(2021/4/26)

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークの改定について 」(注1)における「特定セクターに係る項目」の石炭火力発電セクターおよび森林、パーム油セクターに関するファイナンス方針の改定を公表しました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「本改定は、いくつかの部門において対策強化が図られていますが、急を要する気候危機への対応として、なお不十分なものです。日本の金融機関を代表するMUFGには今後、パリ協定の1.5度目標達成に整合した、より野心的な石炭関連の方針を策定し、その他化石燃料や森林破壊を引き起こす産品に関する方針の強化を期待します」と述べました。

本改定でMUFGは、石炭火力発電所の新設に加え、既存発電設備の拡張にも原則としてファイナンスを実行しないと規定しましたが、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合があります」と例外を残しています。CCUSも混焼も2030年までの削減にはほとんど寄与しないと考えられており、石炭火力を延命することにすぎない技術です。これらの技術への支援はパリ協定と整合しません。

国際環境NGO 350.org Japan代表である横山隆美は、「MUFGのセクター方針のスコープは基本的にプロジェクトファイナンスに限定されており、コーポレートファイナンスは含まれていないことは大きな懸念事項です。「脱石炭リスト(Global Coal Exit List)」投融資調査 (注2、3)によると、MUFGの石炭産業 への融資は世界第3位です。石炭火力セクターのポリシーとしてはバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンスへと拡大し、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を策定すべきですが、今回の改訂では踏み込めていません」と指摘しました。

MUFGはまた、熱帯林破壊を引き起こしている企業に資金提供を行っている世界有数の金融機関であり、パーム油および紙パルプセクターの顧客企業に関連するESG(環境・社会・ガバナンス)リスクへのエクスポージャーが高い銀行です。特にパーム油セクターへの融資・引受額は東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、インドネシア6位のバンクダナモンを買収して東南アジアでの存在感を高めつつあります。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「今回の方針改定でパーム油セクターにおいて『森林破壊ゼロ、 泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を遵守する旨の公表を求める』ことが追加されたことは評価できます。しかしNDPE基準の適用はパーム油のプランテーション企業に限定され、パーム油購入企業には適用されず、そして紙パルプなど熱帯林や泥炭地の破壊を引き起こしているパーム油以外の産品に対しても適用されなかったことは非常に残念です。そしてNDPE方針を遵守するための独立検証を求めていないことも課題です。農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは、気候対策面からは大きな失敗といえます」と指摘しました。

今回の改定ではまた、石油・ガスセクター方針に何らの変更がなく、パリ協定の目標に沿ってフェーズアウトする約束がされなかったのは大きな懸念です。マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGを始め日本の金融機関は化石燃料企業へのエクスポジャーが大きく、中でもMUFGは今年3月にRAN他が発表した調査(注4) では、過去5年間の化石燃料事業への融資・引受額で世界第6位を占め、アジアで第1位を占めました。本改定をもってしても、MUFGの化石燃料セクターポリシーは、諸外国の金融機関と比べても極めて不十分です。昨今、世界の投資家や金融機関による2050年ネットゼロ実現に向けて、投融資による排出をゼロにするコミットメントが相次ぐ中、MUFGは遅れをとっています。」と述べました。

気候ネットワークおよび環境NGOに所属する個人株主3名は今年3月 、MUFGに対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めた株主提案を提出しました(注5)。本改定内容は提案内容とはいまだに乖離があり、パリ協定1.5℃目標に整合していると理解できるものではありません。今後、株主としてMUFGと引き続き協議を進めてまいります。

注1)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2021年4月26日

注2)共同プレスリリース「日本の金融機関が石炭産業への融資総額で世界第1位に」、2021年2月25日

注3)本調査の対象および調査方法はこちらをご参照。

注4)共同プレスリリース「『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」、2021年3月24日

注5)プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出」、2021年3月29日

英語のプレスリリース:“Japan’s largest bank MUFG tightens coal power and forest sector policies – but far from aligned with Paris Agreement”

本件に関するお問い合わせ

気候ネットワーク 平田仁子 khirata@kikonet.org

マーケット・フォース 福澤恵 meg.fukuzawa@marketforces.org.au

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 yuki.sekimoto@ran.org

国際環境NGO 350.org Japan 横山隆美 japan@350.org