サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘気候変動’カテゴリーの記事一覧

NGO共同プレスリリース:RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2020」発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜(2020/3/18)

みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り

東京ーー米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他は、本日18日(米国太平洋時間 17日)、新報告書『化石燃料ファイナンス成績表2020」(注1)を発表しました。本報告書は、世界の主要銀行による化石燃料への融資・引受をまとめたもので、日本のメガバンク3行を含む世界の主要民間銀行35行は、2015年12月のパリ協定採択後の4年間で合計約2.7兆ドル以上を化石燃料部門に提供し、その額は停滞するどころか増加していることが明らかになりました。化石燃料産業への資金提供は2015年以降毎年増加しており、気候危機の最悪の結果を回避するために、気温上昇を1.5度未満に抑えることとしたIPCC(国連気候変動政府間パネル)の勧告(注2)に真っ向から反しています。

「パリ協定以降のワースト 12銀行」(日本語要約版より)

邦銀の中で、化石燃料部門に最大の資金提供を行なったのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で、2015年12月以降に約1,188億ドルを提供しました。続くみずほフィナンシャルグループ(みずほ)も約1,031億ドルと迫りました。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は約596億ドルでした。これらの資金の約3分の1は化石燃料を拡大している企業の上位100社に提供されました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「歴史的なパリ協定が締結されて以来、メガバンクのMUFG、みずほ、SMBCグループは、約2,814億ドルもの巨額の資金を化石燃料に無駄に費やしてきました。MUFGとみずほだけで約90億ドルもの資金を世界の主な石炭火力発電企業30社に提供しました。緊急かつ大胆な行動が取られなければ、メガバンクはさらなる抗議(注3)、気候変動リスクをテーマとした株主提案(注4)、そして国際的な批判(注5)を受けるでしょう。気候危機への懸念が増すにつれて、銀行は評判を落とし、顧客基盤の弱体化につながるでしょう」と指摘しました。

*3メガバンクはアジア上位5銀行の1位、2位、5位

上記の調査結果に加えて、本報告書は、各行の化石燃料に関する総合的な与信方針と、特定の化石燃料部門に関する方針と融資・引受状況を評価しました。3メガバンク全ての評価は最も低く、化石燃料拡大への資金提供停止の公約は殆どありません。みずほとSMBCグループは、持続可能性を謳っている東京オリンピックのゴールド・スポンサーでもあります。

国際環境NGO 350.orgの日本支部キャンペーナー渡辺瑛莉は「3メガバンクは昨秋、国連責任銀行原則(PRB)に署名し、SDGsとパリ協定にビジネスを整合させることを誓約したにも関わらず、各行の方針は気候危機への対応としては全く不十分であり、世界の主要銀行と比べても大きく遅れを取っています。石炭はすでに世界の大部分のマーケットで経済性を失っており(注6)、メガバンクは石炭とその他の化石燃料への資金提供を継続することによって評判リスクと座礁資産リスクにさらされるでしょう」と指摘しました。

執筆団体、協力団体からのコメント

先住民族環境ネットワーク(IEN)
「キープ・イット・イン・ザ・グラウンド」担当 ダラス・ゴールドトゥース

「アマゾンから北極圏のいたる所で、これら世界の銀行の社会的事業許可は、気候危機による混乱と先住民族の権利侵害といった問題にあふれています。世界の銀行は、母なる地球および先住民族の生活の破壊に対して責任を負わなければなりません。銀行が是正措置を講じるまで長い時間が経ちすぎています。銀行は今、化石燃料への投融資から撤退しなければなりません」

気候ネットワーク 国際ディレクター 平田仁子
「日本の銀行は、気候変動への取り組みに大きく遅れており、そのリスクに向き合っていません。だからこそ私たちはみずほフィナンシャルグループの株主として、パリ協定に沿った投融資を行う経営戦略を記した計画を開示するよう求めています。化石燃料を支援し続けることは、日本の銀行を一層深刻なリスクにさらすだけでなく、私たちの地球のリスクも拡大させます。そのリスクをいかに回避するのかを説明するのは銀行の重要な責任です」

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当 ハンナ・ハッコ
「金融機関は世界経済に対して大きな力と責任があります。これまで日本のメガバンクは、化石燃料の使用を可能にすることにその力を使ってきました。しかしメガバンクはいま、その責任を取り、石炭から脱炭素化へと資金をシフトし始めるべきです。MUFG、みずほ、SMBCグループは、気候危機への資金提供者としてではなく、気候危機の解決策の貢献者として見られたいのであれば、エネルギーに関する新たな与信方針をすぐに採用する必要があります」

【化石燃料ファイナンス成績表2020】概要・調査結果

•「化石燃料ファイナンス成績表2020」は世界の主要民間銀行35行が化石燃料部門に行った資金提供を示した世界で最も包括的な報告書であり、RAN、バンクトラック、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェンジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラクラブが執筆し、世界45カ国250以上の団体が賛同している。石炭、石油、ガス部門に関わる世界2,100社に対する2016年〜2019年の間の融資・引受を対象としている。

日本のメガバンクの順位は35行中、MUFGが第6位、みずほが第9位、SMBCグループが第20位となった。2018年〜2019年にかけて、みずほとSMBCグループが化石燃料部門への融資・引受額を大きく増やし、それぞれ10%増、27%増となった。一方、MUFGは5%減少した。世界第1位はJPモルガン・チェースで2016年〜2019年の間、約2,686億ドルを化石燃料部門に資金提供した。

化石燃料を拡大している企業にはMUFGが約399億ドル、みずほが約343億ドル、SMBCグループが約248億ドルをそれぞれ提供した。算出方法は、新規の石炭および石油開発、ガス採掘、関連インフラの拡大を積極的に計画している100社への融資・引受額を合算した。

•世界の主要民間銀行の中でも、3メガバンクは、オイルサンド、北極圏の石油・ガス、海洋の石油・ガス、シェールオイル・ガス、液化天然ガス(LNG輸出入ターミナル)、石炭採掘、石炭火力発電に関わる世界の主要な30〜40社に顕著に資金提供を行っている。3メガバンク全ては液化天然ガスおよび北極圏の石油・ガスへの主要な資金提供者であり、MUFGとみずほは石炭火力とシェールオイル・ガスへの顕著な資金提供者である。MUFGは、北米のオイルサンド・パイプライン企業エンブリッジが建設するライン 3石油パイプライン(米国ミネソタ州)に資金提供を行う銀行の中で主要な役割を担い、影響を受ける先住民族コミュニティの激しい抵抗に直面している。

• 融資・引受額は、対象となる化石燃料関連企業の当該部門の事業活動に基づいて割引して算出。

   

*執筆者による新型コロナウィルスに関する注記
本報告書の執筆団体は、世界中の人々が現在直面している新型コロナウィルスによる生命、健康、生計手段への深刻な影響による緊急事態を認識しています。パンデミックおよびそれに付随する経済的影響への緊急対応が当面の優先事項とされるべきとの認識の下、執筆していました。しかしながら、気候変動が絶滅の危機であることには変わりありません。私たちが再び気候危機に目を向けることができるようになった時、本報告書のデータや分析が気候危機の脅威に真剣に立ち向かうために役立つことを願っています。

   

注1)RAN、バンクトラック、シエラクラブ、オイル・チェンジ・インターナショナル、先住民族環境ネットワーク、リクレイム・ファイナンス、「化石燃料ファイナンス成績表2020」日本語要約版
報告書全文(英語)
※350.org Japan、気候ネットワーク、グリーンピース・ジャパンは、本報告書を支持する250以上の団体に含まれます。

注2)国際連合広報センター「IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約を 締約国が承認」(2018年10月8日付 IPCC プレスリリース・日本語訳)2018年10月16日

注3)「Fridays For Future Tokyo」は3月6日、みずほ銀行に新規の石炭火力への融資を辞めることを求めて本社前でアクションを起こした。
ブルームバーグ「Young Climate Activists Change Tactics as Virus Spreads」、2020年3月16日(英語)

注4)NHK「『石炭火力への融資はリスク』 気候変動対策で株主提案」、2020年3月16日

注5)RAN「プレスリリース:三菱UFJの人権侵害・森林破壊・化石燃料への融資を批判」、2019年6月27日

注6)VOX, “4 astonishing signs of coal’s declining economic viability: Coal is now a loser around the world”, 2020年3月14日(英語)

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

350.org Japanは米国ニューヨークに拠点を置く国際環境NGO 350.orgの日本支部として2015年4月に設立されました。350.org Japanは気候変動防止に向けた化石燃料への投融資撤退「ダイベストメント」を広めるために、「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンを展開しています。このキャンペーンを通じて、「パリ協定」で定められている気温上昇を1.5℃未満に抑える目標に整合した投融資方針を策定することを邦銀に市民とともに呼びかけています。350.orgは180を超える国と地域で活動を展開しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※記載に一部誤りがございましたので訂正いたします(2021年3月8日)。
誤)超深海の石油・ガス
正)海洋の石油・ガス

声明:JPモルガン・チェース、北極圏の石油・ガス開発と石炭に関する新方針を発表(2020/2/26)

〜 北極圏の石油・ガス開発事業への資金提供停止および新規石炭火力発電所への資金提供を制限〜

東京ーー米金融大手JPモルガン・チェースが24日、北極圏での石油・ガス新規開発事業と世界各地でのCCS無し新規石炭火力発電所へのプロジェクトファイナンスもしくはプロジェクト紐付きコーポレートローンの停止を発表したことを受けて、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、RAN)は以下の声明を発表しました。今回の方針改善は、JPモルガン・チェースが化石燃料事業への世界最大の資金提供者として責任が問われ、抗議が高まる中で発表されました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

「JPモルガン・チェースの方針改善は、世界トップの化石燃料への資金提供銀行として気候危機への責任を果たすには十分とは言えません。しかし日本の3メガバンクの方針よりもはるかに優れています。

三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループはJPモルガンとは対照的に、世界各地の石炭火力発電所および北極圏の石油・ガス開発事業への資金提供の禁止を一切約束していません。むしろ、重大なESG課題がある両セクターでの融資・引受額は世界上位となっています。

3メガバンクはJPモルガン・チェースの方針改善を受けて、世界各地の石炭火力発電所への資金提供の全面禁止をはじめ、気候危機に対応する方針を強化すべきです」

*JPモルガン・チェース方針改善の解説はこちら(英語):
RAN、シエラクラブ、“Media Briefer: Detailed analysis of JPMorgan Chase’s Environmental and Social Policy Framework Update”, 2020年2月

*英文プレスリリースはこちら:
“JPMorgan Chase Coal and Arctic Policy a Step Forward But Fails to Match its Climate Responsibility as the World’s #1 Fossil Bank”(2月24日、サンフランシスコ現地時間)

参考:RANら「化石燃料ファイナンス成績表2019」(2019年4月)

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。http://japan.ran.org

プレスリリース:新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し「気候危機」を加速〜 (2020/1/29)

〜インドネシア森林火災、熱帯林と泥炭地破壊、違法行為や人権侵害への資金提供を調査〜

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日29日、新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク:東南アジア顧客企業3社の事例」(注1)を発表し、日本のメガバンクが2019年のインドネシア森林火災と煙害(ヘイズ)に関与した農業関連企業や、森林と泥炭地を違法皆伐した農園開発企業への資金提供を通じて「気候危機を加速させている」と批判しました。

火災が起きている泥炭地に放水するヘリコプター、インドネシア・南スマトラ、2019年
提供:NOPRI ISMI/ MONGABAY INDONESIA

本報告書は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)3メガバンクの銀行業務について調査し、分析からは以下が明らかになりました。

  • ●3メガバンクは、2019年の森林火災への関与が理由でインドネシア政府に農園事業を凍結された農業関連企業に、合計で10億米ドルを超える融資・引受を2017年から2019年8月に行っていた。
  • ●上記企業への資金提供額は、みずほが最も多く4億6,600万米ドル、MUFGが4億1,500万米ドル、SMBCが2億100万米ドルだった。
  • ●3メガバンクと財務的つながりが特に強いのはシナルマス・グループ(3行合計で3億6,500万米ドルの資金提供)、サリム・グループ(同じく6億400万米ドル)、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(7,900万米ドル)といった、リスクの高い事業を展開している東南アジアの企業グループである。
2019年のインドネシア森林火災に関与した企業へのメガバンクからの資金の流れ
(2017年〜2019年8月の融資・引受額、単位:百万米ドル、出典:「森林と金融」データベース

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「3メガバンクは世界中の石炭火力発電所建設に資金提供すると同時に、地球で最も重要な炭素吸収源である熱帯林と泥炭地の破壊にも資金提供しています。つまり、二重に気候危機を加速させているのです」と批判しました。2019年のインドネシアの火災で7億900万トンの温室効果ガスが排出されたと推計され(注2)、同国は一連の火災だけで世界6位の二酸化炭素排出国となりました。

また本報告書はシナル・マス・グループ、サリム・グループ、ジャーディン・マセソン・グループの3社を事例とし、熱帯林と泥炭地破壊、違法行為、汚職、土地権と労働権侵害の証拠がありながらメガバンクが資金提供を続けている現状も解説しています。ハイネケンは「3メガバンクは国連『責任銀行原則』(注3)に署名することで、経営戦略を『持続可能な開発目標』とパリ協定と合致させることを約束しました。しかし3メガバンクの現行の銀行業務は内部コンプライアンスが機能していないことを表し、このようなリスクは投資家にはほとんど開示されていません。メガバンクは口先だけでなく行動で示すときです」と訴えました。

本来、森林と土地は強力な炭素吸収源ですが、森林破壊と森林劣化によって農業や林業などの土地利用部門はエネルギー部門に次いで2番目に大きな排出源になっています。特に熱帯林と泥炭地は重要な炭素吸収源であり、泥炭地は1ヘクタールあたり2,600炭素トン以上(注4)を貯留してくれます。しかし紙パルプやパーム油生産におけるインドネシアの泥炭地破壊関連の二酸化炭素の年間排出量は大きく、石炭火力発電所70基分(注5)に相当します。

注1)RAN『森林火災・違法行為とメガバンク:東南アジア顧客企業3社の事例〜SDGsとパリ協定に沿った資金提供を〜』

注2)Yoga Rusmana, “Forest Fire Emissions From Indonesia Worse Than Amazon, EU Says”, Bloomberg, 2019年11月27日 (英語)

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜」2019年9月23日

注4)Frances Seymour and Jonah Busch, “BRIEFS: Why Forests? Why Now? A Preview of the Science, Economics, and Politics of Tropical Forests and Climate Change”, Center for Global Development, 2014年10月11日(英語)

注5)Nancy Harris Nancy Harris and Sarah Sargent, “Destruction of Tropical Peatland Is an Overlooked Source of Emissions”, 世界資源研究所、2016年4月21日

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

メディア掲載:オルタナにRAN川上豊幸が寄稿しました(2019/12/27)

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナonline」にRAN川上豊幸がインドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務」を寄稿しました(2019年12月27日)

「2019年、日本でも大きく報道されたアマゾンの森林火災。しかし大規模な森林火災はアマゾンだけでなく、インドネシアでも起きていました。2019年のインドネシアの森林火災で排出された二酸化炭素の量は、アマゾンの火災による排出量を20%以上超えていました。(続きを読む)

NGO共同プレスリリース「新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜」 (2019/10/3)
〜インドネシア煙害深刻化、森林火災に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようNGOが要請〜

声明:ゴールドマン・サックス、米大手銀行で最も厳しい化石燃料融資方針を採用(2019/12/17)

石炭及び北極圏での石油開発プロジェクトを除外、石炭採掘からの撤退を約束〜日本のメガバンクは大きく立ち遅れ〜

東京——ゴールドマン・サックスが15日、化石燃料融資に対する新しい規制(注1)を発表したことを受けて、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、RAN)は、以下の声明を発表しました。同行は米国の大手銀行の中で最も厳しい化石燃料方針を掲げることになり、日本のメガバンクの大きな立ち遅れが顕著になりました。ゴールドマン・サックスは、世界中の石炭採掘および石炭火力発電所プロジェクトへの直接的な資金提供からの撤退だけでなく、北極圏の石油探査および生産への資金提供からも撤退することを決定しました。この方針では、世界的に有名な「北極圏国立野生生物保護区」の保護についても明確に言及しています。同時に、事業の多角化戦略を持たない石炭採掘企業への資金提供も段階的に終了することを約束しました。

この方針改定によってゴールドマン・サックスは、石油・ガス部門への資金提供について明確に規制を設けた米国最初の大手銀行となります。また、全世界での石炭採掘および石炭火力発電所への直接的な資金提供から撤退した、米国最初の大手銀行ともなります。他の米国銀行の石炭融資規制には、一部の地域には適用しない抜け穴があり、これは重要な前進です。また、ゴールドマンの石炭採掘に関する方針は他の米国銀行とは異なり、1)引受業務の撤退を含み、2)削減ではなく、段階的な撤退を明確に約束しています。

対照的に、日本のメガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、石炭部門および北極圏の石油・ガスに大きなエクスポージャーを抱え、リスクに対処するための方針が不十分です。3メガバンクの内、MUFGが石炭採掘と石炭火力発電所に関して最も厳しい方針(注2)を採用し、環境破壊を伴う山頂除去採掘方式で行う炭鉱採掘事業、新規の石炭火力発電所事業への資金提供は原則的に行わないとしています。しかし、受入国の状況や技術の使用に応じて新規の石炭火力発電を認める例外規定が設けられています(注3)。石炭開発を即時中止するべきだとするグテーレス国連事務総長らの呼びかけ (注4)にもかかわらず、ベトナムで計画されているブンアン2石炭火力発電所 (注5)への3メガバンクによる資金提供は、石炭への資金提供を段階的に終了するという約束についての責任欠如が明白です。

また、3メガバンクは北極圏の石油・ガス開発事業への資金提供で世界の上位7銀行 (注6)に入り、SMBCはゴールドマン、ドイツ銀行に次いで世界3位です。しかし、これらのメガバンクはいずれも北極圏—— 北極野生生物国家保護区を含むーーの石油探査と石油生産への資金提供を禁止する明確な約束をしておらず、直接的な資金提供を中止した17の国際的な銀行(注7)とは対照的です。北極野生生物国家保護区にはホッキョクグマ、ジャコウウシ、200種以上の鳥が生息し、何千年にもわたってアラスカ及びカナダ北部で暮らすグウィッチン族の生活を支えてきたポーキュパイン・カリブーの繁殖地でもあります。この地域は野生生物の重要なシンボルでもあります。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンのコメント

「ゴールドマン・サックスが石炭関連事業への資金提供について例外なく厳格に禁止したことは、抜け穴のあるメガバンクの方針とは対照的です。メガバンクの現在の方針は世界標準とは明らかに一致していません。

ゴールドマン・サックスは、北極圏での石油探査と石油生産への直接的な資金提供を中止することにより、石油・ガス部門における米国の大手銀行として最初の『立入り禁止区域』を確立しました。ゴールドマンの新しい方針は、米国の銀行が石油とガス事業に一線を引けるということを示しました。次は他の大手銀行、特にメガバンクがそれに続くべきです。

保護区を冒とくする石油産業の事業への資金提供の禁止は、『グウィッチン族運営委員会』による決定的なアドボカシー活動など、先住民族主導の粘り強い抵抗の成果です。トランプ政権が北極圏保護区での掘削の入札を準備している今、3メガバンクはゴールドマンが踏み出した一歩に続いて、神聖な北極圏の保護区を守るために明確な約束を行うべきです。

ゴールドマンはメガバンクへの主要な投資家として、銀行の化石燃料および森林リスク産品セクターのより厳しい方針を提唱するのに適した立場にあります。メガバンクには、ゴールドマンの方針改定をチャンスとして生かすことを希望します」

*この方針に関する詳細の分析は、RANとシエラ・クラブの報道向け資料もご覧ください:www.ran.org/briefer(英語)

注1)Goldman Sachs Environmental Policy Framework
注2)MUFG方針/ガイドライン
注3)NGO共同声明「三菱UFJが新規石炭火力発電への融資を行わないと約束、環境NGOは更なる方針強化を要請」 (2019年5月16日)
注4)国際連合広報センター「国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)開会式におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶」(マドリード、2019年12月2日)
注5)No Coal Japan「国内外環境NGO8団体、邦銀4行にベトナムのブンアン2石炭火力発電事業の融資拒否を求める要請書を提出」(2019年11月1日)
注6)RANら「化石燃料ファイナンス成績表2019」(2019年4月)
注7)バンクトラック、“Banks that ended direct finance for Arctic oil and/or gas projects”, 2019年8月更新

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

メディア掲載:HBOにRAN関本幸が寄稿しました(2019/10/22)

ハーバー・ビジネス・オンライン(HBO)にRAN 関本幸が「東京五輪施設建設の『目に見えない部分』に、21万畳分の熱帯材が使われている!?」を寄稿しました(2019年10月22日)

「東京五輪開催まで1年を切った。それとともに、大会中の猛暑対策など、さまざまな問題が現実味を帯びてきている。そのような中、東京五輪で使われた木材と、東南アジアの森林破壊とのつながりが問題視され続けている。「新国立競技場には国産材がたくさん使われているのでは?」と思う人も多いだろう。しかし、47都道府県から提供される国産材は屋根やひさしで使われるだけで、土台のコンクリートを成形する型枠用合板(コンクリートパネル=コンパネ)には、東南アジアからの熱帯材が使われた。 続きを読む )

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)