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‘気候変動’カテゴリーの記事一覧

ブログ:新型コロナウイルスとつながる熱帯林破壊、メガバンクらの対応分かれる(2020/5/28更新)

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン
(本ブログはRIEF環境研究機構に4月29日に寄稿したものです。5月28日更新)

写真:インドネシアの泥炭地での違法皆伐、2017年 AIDENVIRONMENT提供

現在、世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス。実は、東南アジアなどに広がる熱帯林の破壊と大きく関係している。日本の金融機関は投融資を通じて、東南アジアの熱帯林破壊を助長してきた。

日本の金融機関の責任が問われる中、4月中旬に発表されたみずほフィナンシャルグループ(みずほ)と三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の方針改定では、この問題に真摯に対応し始めていることが見受けられる。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は林業とパーム油に関する方針を昨年策定した。今後の改訂方針で強化される可能性はあるが、2行と比べて対応が遅れている(*)。

そこで大きな課題となるのは、各銀行がどのような基準を設け、その基準がどのように実施されるかという点だ。ここではメガバンク3行をはじめ、東南アジアへの投融資が比較的多い三井住友信託銀行、農林中央金庫と野村グループも加え、各社のエクスポージャーと対策を比較してみる。

熱帯林保護は感染症予防策


今年4月、国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、新型コロナウイルスの感染拡大について、「自然を上手く管理すれば、人間の健康も維持できる(”The better we manage nature, the better we manage human health”)と見解を発表した

壊れやすい生態系に人間が入り込むことで、人間と野生生物の接触がかつてないほど増大していることや、違法な野生生物取引が深刻な感染症を悪化していると説明している。新しい感染症の約75%は人畜共通感染症であり、こういった感染症から毎年約10億の事例と数百万人の死者が発生していると警鐘を鳴らしている。

「動物由来感染症の危機を拡大させる要因(動物から人間にうつる病気)」
森林破壊や他の土地利用転換
規制が弱く違法な野生生物取引
農業と家畜生産の増大
細菌の薬剤耐性
気候変動
出典:国連環境計画 *RANによる仮訳

パーム油、紙パルプ、木材、大豆、牛肉などの産品は、森林を犠牲にして生産されることから、総称して「森林リスク産品」と呼ばれる。農園や植林地開発のために森林は伐採され、開発に伴う道路建設はさらなる森林破壊を引き起こし、違法伐採等の事業活動のために森林へのアクセスを容易にする。森林を分断して野生生物の移動ルートを遮断し、生息地を断片化する。

陸上生物種の大半が熱帯林に生息していることを考えると、感染症の予防策として、熱帯林を保護することは特に重要である。また、熱帯林は二酸化炭素の吸収など、気候の安定にも極めて重要な役割を果たす。周辺で暮らす数百万人もの地域住民や先住民族にとっては住居であり、生活の柱であり、宗教的または精神的な拠り所でもある。そのため、国連「持続可能な開発目標」(SDGs)目標15では「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な管理の実施を促進し、森林破壊を阻止し、劣化した森林を回復」するという目標を掲げているのだ。

日本の金融機関の熱帯林破壊との関わりと対応

では、メガバンクをはじめ、東南アジアの熱帯林にエクスポージャーがある日本の金融機関は熱帯林破壊にどのように関わり、どのように対応しているのだろうか。

日本の金融機関の中でも、特にメガバンクの投融資先には、東南アジアの熱帯林や泥炭地を破壊し、人権侵害に関与している企業が複数ある。そこには東南アジアで事業展開している紙パルプ企業やパーム油企業だけでなく、現地でパルプ、木材、天然ゴムを生産または加工している王子製紙、丸紅、住友林業、伊藤忠住友ゴムといった日本企業も含まれる。

以下の表は、東南アジアの熱帯林に悪影響を及ぼしている100社のうち、資金提供金額が最も多い上位10企業の森林リスク部門に、日本の金融機関が行った投融資の流れと金額を示している(2017年〜2019年8月)。

このうち、最も資金調達が多いのは王子製紙である。実は、同社は世界中で紙パルプ事業を展開し、インドネシアでの合弁パートナー3社(コリンド社インドフード社/サリム・グループAPP社/シナルマス・グループ)は「ブラック企業」と言われるほど、熱帯林破壊や違法性、人権侵害を含む環境・社会問題が長年指摘されてきた。しかし合弁事業は継続または開始されている。SMBC三井住友信託銀行が主な資金提供者である。

また、MUFGは他の金融機関と比べて、東南アジアを拠点とする企業、特にシナルマス・グループおよびサリム・グループのパーム油企業への投融資が多いことが特徴的である。これらの企業グループは、2019年の森林火災への関与が理由で、インドネシア政府に農園事業を凍結された農業関連企業に含まれる。

日本の金融機関から東南アジアの熱帯林破壊に関与している企業への資金の流れ(2017年〜2019年8月)
左:金融機関名の左に表記されているのは融資・引受・投資額
右:企業名の右に表記されているのは資金提供を受けた金額
単位:百万米ドル、森林リスク事業のみの金額に調整済み
出典:「森林と金融データベース」(forestsandfinance.org)

みずほ、邦銀で最も厳しいESG方針を発表

4月15日に発表されたみずほの方針改定では、熱帯林破壊の阻止に重要な対策が新規に採用されている。東南アジアの熱帯林破壊の8割は農業用の土地転換が要因であり、その多くはパーム油、紙パルプ、林業の生産のための大規模開発によるものだ。

今回の方針では、パーム油、木材・紙パルプ 部門への投融資において、グローバル・ベストプラクティスである「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)の策定を投融資先に要求し、地域住民等への「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)の尊重を求めることにしている。また、MUFGの方針から見習って、セクターを横断して、児童労働・強制労働を行っている事業、ラムサール条約指定湿地およびユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業、そしてワシントン条約に違反する事業には投融資等を行わないことにし、先住民族の地域社会に負の影響を与える事業や非自発的住民移転につながる土地収用を伴う事業に対しては取引先の対応状況を確認するとしている。

邦銀でNDPEとFPICを投融資先に明確に求めているのは、みずほの方針が初めてだ。画期的な方針といえ、他のメガバンク2行、三井住友信託、農林中金、野村グループの方針を超えた基準であることは明らかだ。

環境と社会に対してポジティブ・インパクトを及ぼすためには?

以下に、各金融機関の「森林リスク産品部門」に関する方針内容をまとめた。

森林リスク産品部門における各金融機関の方針

各金融機関の方針サイトへのアクセス
みずほ SMBC MUFG 三井住友信託 野村グループ 農林中金

上記の通り、この2年間で日本の金融機関の対応は確実に強化された。しかし、環境と社会に対してポジティブ・インパクトを及ぼすためには、みずほが採用した「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE基準)を含む方針の強化、そしてその徹底的な実行が重要だ。

MUFGの森林セクターについての方針改訂は、NDPE方針を含むかどうかが評価の目安の一つとなる。MUFGは日本最大の銀行として、東南アジアも含め、世界中で銀行業務を展開している上でも、3メガで最も厳しいESG方針を策定することが期待される。同時に日本を代表する銀行として、世界の銀行と競い合っていくという、他の銀行にはない大きな責任も負っている。

*MUFGは5月13日にESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針を改定したが、NDPE基準やFPICといった国際的なベストプラクティスは策定されず、不十分な改訂となった(5月28日更新)。

参考:NDPE方針、FPICについてはRAN報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」を参照ください。

ハナ・ハイネケン(Hana Heineken)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)「責任ある金融キャンペーン」 シ二ア・キャンペーナー。米プリンストン大学、ベースロースクール卒業。東京生まれ。

声明:三菱UFJ、新ESG方針を発表するも「期待外れ」 (2020/5/14)

〜気候変動対策・森林保護、3メガで最も進展のない方針改訂〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日14日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針を13日に改定した(注1)ことを受けて、国内外の銀行、特にみずほフィナンシャルグループ(みずほ)および三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)と比べて「改訂は不十分で期待外れである」と批判しましたRANはMUFGに対して、熱帯林に壊滅的な影響をもたらすパーム油事業や国内外での化石燃料事業拡大への資金提供について、数年にわたって様々なESG問題を指摘してきました。

写真:MUFG子会社ユニオン・バンク本社前でのアピール行動、サンフランシスコ、2019年6月

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケン

「新型コロナウイルスの感染拡大は森林破壊と関係があり、国連環境計画(UNEP)は生態系や野生生物への脅威に取り組む必要性はかつてないほど高まっていると指摘しています(注2)。その最中に発表された今回の改訂は、三菱UFJが環境・社会面でのリーダーシップを取ることに失敗したことを意味し、期待外れで失望しています。新たな感染症拡大を防ぐためにも気候危機への対応と熱帯林保護が重要ですが、今回の方針改訂で、三菱UFJは気候の安定化と地球に残る最後の熱帯林よりも自社利益を優先するという決定を下したことは批判されるべきです」

他のメガバンクの与信方針と比較した重要な違いは以下の通りです。

●みずほ方針との違い:石炭火力発電事業への資金提供における段階的廃止のスケジュールが約束されていない。また「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE方針:No Deforestation, No Peat and No Exploitation)、地域コミュニティの権利を尊重する「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)に代表される、森林セクターでの資金提供における国際的なベストプラクティスが策定されていない。
●SMBC方針との違い:パーム油向け新規農園開発時に森林および生物多様性の保護を公約していない。また、森林伐採での土地開墾の際の火の不使用を確認する記述もなく、持続可能性の評価に脆弱な認証システムに頼っている。

MUFGは、RANが4月に開始した新キャンペーン「キープ・フォレスト・スタンディング〜森林と森の民の人権を守ろう〜」の対象企業で、唯一の邦銀です(注3。気候、生物多様性や先住民族にとって重要な熱帯林と泥炭地に大きな影響を及ぼしている企業として選ばれ、RANはMUFGの資金提供について以下の点を指摘してきました。

●環境・人権面で諸問題を抱える「紛争パーム油」への世界最大の資金提供者の一つで、気候危機を加速させた昨年のインドネシア森林火災にも加担した(注4)。
●今年3月にRANらが発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表 2020」では、パリ協定締結以降の化石燃料事業への融資・引受額が世界で6番目に大きく、2016年から2019年に1,188億米ドルの資金提供が行われたことが明らかになった(注5)。
●MUFGは北米のオイルサンド・パイプライン企業への主要な資金提供者であり、資金提供先にはエンブリッジ社が建設するライン3石油パイプライン、TCエナジー社が建設するキーストーンXLパイプラインが挙げられる。さらに、気候災害と先住民族の権利侵害と明確なつながりが指摘されているにも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の最中に両社へ新規の資金提供を約束した(注6)。
●北極圏での石油・ガス開発への資金提供額における世界4位の金融機関で、新規の石炭火力発電所へのファイナンスの原則的な停止を約束したにもかかわらず、議論を呼んでいるベトナムのブンアン 2のような新規石炭火力発電事業への資金供給を続けている(注7)。

ハイネケンのコメント(続き)

「MUFGの方針は、企業の『二枚舌』の典型的な事例です。新方針はオイルサンドと北極圏の石油・ガス開発をリスクの高いセクターと認識していますが、パリ協定と方針を合致させたいのであれば、化石燃料事業への融資制限の基準と明確な段階的廃止計画が必要です。熱帯林破壊と化石燃料開発への世界最大の資金提供者の一つとして、三菱UFJは基準強化に全力で取り組まなければ、大きなレピュテーションリスクになります」

英語の声明はこちら: “MUFG Falls Behind Peers in New ESG Finance Policy Announcement”

脚注

注1)三菱UFJフィナンシャル・グループ、「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2020年5月13日

注2)国連環境計画、「Working With the Environment to Protect People: UNEP’s COVID-19 Response」(英語)

注3 )RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」 2020年4月1日(5月14日更新:日本語要約版追加)

注4)RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜」2020年1月29日

注5)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り」2020年3月18日

注6)RAN本部プレスリリース「Reckless Keystone XL Decision by TC Energy Endorsed by JPMorgan Chase, Citi and Canadian Peers」(英語)、2020年4月3日

注7)マーケット・フォース「ブンアン2石炭火力事業に融資しないで!」

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:三菱UFJは、森林保護、気候変動対策、人権尊重の強化を(2020/5/8)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は持続可能な社会の実現に貢献すると約束しているにも関わらず、実際は、森林破壊と気候変動を加速し、人々の生活を脅かしています。このような問題に対応すべきESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針も、4月のみずほフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の方針発表で、遅れを取ってしまいました。これではサステナビリティ・リーダーにはなれません。MUFGは、実際どのような批判対象となる投融資を行なっているのでしょうか?

熱帯林を破壊しているパーム油企業等に投融資

MUFGは、熱帯林破壊を加速しているパーム油部門に、世界で最も融資している金融機関の一つです。二酸化炭素の吸収源として、そして大半の陸上生物多様性の生息地としても重要な役割を果たす熱帯林は、パーム油や紙パルプ等の生産のために急速に失われています。森を長年守ってきた地域住民の生活と権利も脅かされているのです。

MUFGは、熱帯林の重要性を認識しつつも、保護に必要な対策を十分に取らず、熱帯林を破壊している企業に融資を続けています。これでは、2020年までに森林減少を阻止しようという国連「持続可能な目標」(SDGs)の目標15を実現することはできません

インドネシア、スマトラ島・アチェ半島上空。Duta Rendra Mulyaによる森林破壊の光景。

気候危機を悪化している石炭、石油ガスの拡大へ投融資

パリ協定が採択された2015年以降の4年間、MUFGは化石燃料部門に1,188億ドル(約12.7兆円)の融資・引受を提供し、その金額は世界6位、国内ではトップの金融機関でした。最近の資金使途には、ベトナムでの新規石炭火力発電所の他、高炭素で汚染リスクが高いオイルサンド・パイプライン建設やシェールガス開発、そして巨大炭鉱事業にも融資しているのです。

科学的知見によれば、パリ協定の目標を満たすためには化石燃料の拡大を直ちに止める必要がありますが、MUFGは化石燃料への投融資を段階的にやめる約束を一切していません

***

MUFGが真のサステナビリティ・リーダーになるには、社会的責任を果たしている他の大手金融機関のベストプラクティスを見習い、ESGに関する投融資方針とその実施を次のように強化する必要があります

1. 森林、特に熱帯林に影響を及ぼす林業・農業関連企業には、ベストプラクティスである「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」基準遵守を要求すること

2. パリ協定の1.5度目標に沿って、化石燃料への投融資を段階的に停止し、化石燃料を拡大させる投融資は直ちに止めること

3. 人権、特に先住民族の権利を尊重し、人権侵害を起こすプロジェクトには投融資をしないこと

4. 高リスク部門をはじめ、ESGリスクの管理・監督の実効性を向上すること

もっと知りたい方はこちらへ:

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声明:三井住友FG、気候リーダーになる好機を逃す〜与信方針を改訂するも、みずほに及ばず〜 (2020/4/17)

三菱UFJに注目が高まる

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日17日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が同グループの石炭、石油・ガス、森林減少等への資金提供に関するESG(環境・社会・ガバナンス)方針の改定を16日に発表したこと(注1)を受けて、「中途半端な改訂で残念である」とし、以下の声明を発表しました。SMBCの方針改訂は、国内2位のメガバンクであるみずほフィナンシャルグループ(みずほ、TYO:8411)が気候リスク管理を強化した一連の方針改訂を発表した(注2)翌日に公表されました。メガバンクの方針はパリ協定の目標を達成するにはまだ不十分ですが、初めてセクター別の方針を定めた2年前に比べると大きな変化を遂げています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の方針改訂は5月までに発表される可能性があり、みずほとSMBCの方針改訂を受けて、MUFGへの注目が高まります。

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「今回の方針改訂で、三井住友フィナンシャルグループは日本での気候変動対策のリーダーになる大きな機会を逃しました。 同グループは国連の『責任ある銀行原則』に署名し、投融資をパリ協定と持続可能な開発目標に合致させることを約束しましたが、これでは達成できません。 もう一度、振り出しに戻って直ちにやり直す必要があります」と指摘しました。

写真:三井住友フィナンシャルグループ株主総会前でのアクション、2018年6月

3メガバンクは昨年9月に国連「責任銀行原則」に署名したことで、銀行業務の実態と持続可能性に関する公約の間に『大きな開き』ができました(注3)。日本の銀行による融資先は、問題案件となっているベトナムおよびインドネシアの新規石炭火力発電所建設、インドネシアでの森林火災と搾取を伴うパーム油の農園、米国で紛争をもたらしているオイルサンド・パイプライン等(注4)に関わり、世界中に広がっています。今年3月に発表されたRANらの報告書では、MUFGとみずほは世界6位、9位の化石燃料への資金提供者であることが明らかになりました(注5)。また、3メガバンクは東南アジアの森林減少に加担している最大の資金提供者に含まれ、SMBCがメガバンクで最も多いことも明らかになっています(注6)

SMBCの方針は以下の通り、多くの面でみずほの方針よりも弱いと言えます。

●パーム油、紙パルプ、木材等、森林に悪影響を与える恐れのある産品への与信方針に「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE : No Deforestation, No Peat and No Exploitation、注7)や、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC:Free, Prior and Informed Consent))の要件がない。 このような基準は国連「持続可能な開発目標(SDGs)達成に不可欠である

● SMBCは、石炭に関わる資金提供の段階的廃止を約束せず、新設の石炭火力発電所への支援は「原則として」実行しないと約束している。一方で、超々臨界石炭火力発電所を「環境へ配慮した技術」と評価している(注8)

●炭鉱採掘部門で環境負荷の大きい「山頂除去採掘」を新たに禁止している点や、石油・ガス部門で社会・環境面でのリスクを認識している点は進展といえる。しかし、気候変動関連の制約が全く記載されていない

MUFGの方針改訂への期待は、みずほが設定した新基準を超えなければ、大きな失望へと変わるでしょう。MUFGは日本最大の銀行として、そして世界で銀行業務を大きく展開している上でも、3メガバンクで最も厳しい気候関連方針を策定し、世界の銀行と競い合っていくという、他の銀行にはない大きな責任を負っています。

注1)三井住友フィナンシャルグループ「ESGに関するリスクの考え方について」、2020年4月16日

注2)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティへの取り組み強化について〜脱炭素社会実現に向けたアクション強化〜」、2020年4月15日

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連『責任銀行原則』発足をうけて〜」、 2019年9月23日

注4)参考資料
Market Forces「ブンアン2石炭火力事業に融資しないで!」

東洋経済「日本が関与『インドネシア石炭火力』に重大事態:チレボン2号機案件で『贈収賄疑惑』が浮上」、2020年1月16日

RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜 」、2020年1月29日

RAN本部プレスリリース「TCエナジー社、キーストーンXLパイプライン計画を進める〜JPモルガンチェース、シティ・グループ、カナダの銀行が資金提供」(Reckless Keystone XL Decision by TC Energy Endorsed by JPMorgan Chase, Citi and Canadian Peers)(英語)、2020年4月3日

SMBC関連で、問題ある事業や融資先企業には以下も含まれる。
東アフリカ原油パイプライン

マイティアース『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』、2019年12月10日

米国カリフォルニア州での石炭輸出ターミナル

注5)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表:3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,3814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り〜」 、2020年3月18日

注6)RAN他「森林と金融データベース:東南アジアの森林リスク企業へ融資と引受:上位10金融機関(2014年〜2019年8月)」

注7) NDPE方針については「責任投資原則」のパーム油に関する声明を参照

注8)SMBCの石炭方針については以下のNGO共同声明も参照
「三井住友が石炭新方針を発表~みずほの新方針と比べて低水準に〜」、2020年4月16日

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

声明:みずほ、邦銀で最も厳しいESG方針を発表〜気候変動と森林保護方針を強化〜(2020/4/15)

銀行業界における新たなスタンダードに

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日15日、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)が「サステナビリティへ の取り組みに関する基本方針」を改定し(注1)、邦銀で最も厳しいESG(環境・社会・ガバナンス)方針の採用を発表したことを受けて以下の声明を発表し、歓迎しつつも問題点を指摘しました。今回の方針改定は、RANを含めたNGOが、みずほによる新規石炭火力発電所、オイルサンドのパイプライン開発、熱帯林破壊への無責任な資金提供を数年にわたって批判してきたことが背景にあります(注2)。また、6月のみずほの定時株主総会に向けて気候変動対策の進歩的な方針を求めた、環境NGO「 気候ネットワーク」による株主提案(注3)に続いて発表されました。

みずほ銀行の株主総会前でのNGOによるアクション、2017年6月

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「今回の新方針で、みずほは日本の銀行業界で新たな基準を設定しました。石炭に関する方針で例外が残るものの、森林破壊の要因となる産品に対して「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ方針」(※)が適用され、石油・ガス、石炭採掘における社会的・環境的保護が強化されたことを歓迎します。他のメガバンク2行の三菱UFJフィナンシャル・グループとSMBCグループも、みずほの方針に匹敵する方針、あるいはさらに厳しい方針を策定するよう願っています」と強調しました。
※NDPE方針: No Deforestation, No Peat and No Exploitation

取締役会によるサステナビリティの監督および気候変動への対応に関するガバナンス体制の強化に加え、みずほの新方針の特筆すべき点は以下の通りです。

●パーム油および 木材・紙パルプセクターの顧客企業にベストプラクティスであるNDPE方針の策定や、地域住民等への「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)の尊重を求める

●新規の石炭火力発電所建設への資金提供はしないが(すでに支援意思表明済みの案件は除く)、当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠であり温室効果ガスの削減を実現するリプレースメント案件は例外とし、次世代技術の発展等の脱炭素社会への移行に向けた取り組みは支援は継続。石炭火力発電所向け与信残高削減目標として2030年度までに2019年度比50%に削減し、2050年度までに残高ゼロとする

●山頂除去方式で行う炭鉱採掘事業への投融資等は行わない

●石炭採掘、石油・ガスに関わる顧客企業は、気候変動に伴う移行リスクへの対応を確認し、環境・社会に及ぼす影響を評価する。石油・ガスに関わる顧客企業(パイプライン建設を含む)は、先住民族や地域コミュニティとのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行う

● セクターを横断して、児童労働・強制労働を行っている事業、ラムサール条約指定湿地およびユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業、ワシントン条約に違反する事業には投融資等を行わない

●セクター横断的に投融資等に留意が必要な対象事業として、先住民族の地域社会に負の影響を与える事業、非自発的住民移転につながる土地収用を伴う事業を規定。投融資を検討する際には、リスク低減・回避に向け取引先の対応状況を確認し、慎重に取引判断を行う

みずほは、東南アジアで森林破壊の要因となっている産品に世界で3番目に多く資金提供しています(注4)東南アジアには、地球上で最後に残された広大な熱帯林の一つがあります。みずほの紙パルプおよびパーム油企業への資金提供は特に問題があり、最近では2019年にインドネシアで発生した森林火災にも直接的な関係があります(注5)。同年の森林火災では85万ヘクタールを超える土地と森林が破壊され、7億900万トンの温室効果ガスが排出されたと推計されています。また何年にもわたって、みずほは、泥炭地破壊や違法労働搾取に関与するパーム油大手インドフード社への最大の資金提供者の一つです。インドフードのような企業への投融資の継続の有無は、方針遵守における重要な「リトマス試験紙」になります。

みずほはまた、化石燃料への資金提供額では世界9位の銀行で(注6)、パリ協定締結以降の4年間で1,034億ドルの融資・引受を行っています。2017年1月から2019年9月の期間、新規石炭火力発電所を開発する企業への最大の貸し手でもあります(注7)。また、TCエナジー社とエンブリッジ社に資金提供することで、物議を醸しているオイルサンドのパイプラインおよびフラッキング(水圧破砕法)によるシェールガスのパイプラインを支援しています。TCエナジー社は「キーストーンXL」と「コスタル・ガスリンク」を、エンブリッジ社は「ライン3」を建設しています。

ハイネケンは「みずほが発表した方針強化を歓迎します。しかし、気候危機対策に真剣に取り組むリーダーになりたいのであれば、改定方針にある2050年より早期の脱石炭を約束し、化石燃料の拡大と熱帯林破壊を促進するあらゆる投融資を停止する必要があります。また、ESGについて大々的に発表しながら、気候に悪影響を及ぼしたり、先住民族等の権利を侵害する企業に資金を提供し続ければ、それは偽善的です。新方針の適用後、みずほが問題ある企業に対しての無責任な投融資を止めるかどうかは今後の課題です。方針は実施されて初めて価値があります」と続けました。

新方針の効果的な実施は、急激な気候変動と前例のない生物多様性の損失という「二重の危機」への取り組みと、国連『責任銀行原則』(注8)に署名した銀行としての誓約を果たすには不可欠です。

参考
Say No, Mizuho〜気候変動におけるみずほの”真実”とは〜」ウェブサイト

銀行セクターにおけるベストプラクティスの事例:
RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2020」(世界35銀行の化石燃料に関する方針を評価)
RAN他「森林と金融:銀行の分析結果」(世界30銀行の森林減少および人権に関する方針評価)

英語のプレスリリースはこちら:
“Japan’s 2nd Largest Bank – Mizuho – Announces Strictest ESG Policies To Date In Japan”

注1)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティへの取り組み強化について〜脱炭素社会実現に向けたアクション強化〜」、2020年4月15日

注2)NGO共同プレスリリース「みずほ銀行へ『無責任銀行ジャパン大賞2017』を株主総会前で贈呈」、2017年6月23日

注3)気候ネットワーク プレスリリース「みずほフィナンシャルグループの株主として 日本初の気候変動に関する株主提案を提出」、2020年3月16日

注4)RAN他「森林と金融」データベース

注5)RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜 」、2020年1月29日

注6)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表:3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り〜」 、2020年3月18日

注7)際環境NGO 350.org Japan、気候ネットワーク プレスリリース「日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占 – COP25で判明」、2019年12月6日

注8)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連『責任銀行原則』発足をうけて〜」、 2019年9月23日

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:2020新キャンペーン開始!「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜 (2020/4/1)

2020年までに森林破壊ゼロ・人権尊重の公約を実行せよ(5月14日更新)

東京ーー米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日1日(米国太平洋時間 3月31日)、新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング〜森林と森の民の人権を守ろう〜」(注1)を発表し、熱帯林破壊と人権侵害を助長している企業で影響力のある代表的な企業として、多国籍ブランド企業10社、大手銀行7社に対応を求めるキャンペーンを開始しました。17社には日本企業3社ー三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、日清食品、花王ーも含まれます。

本報告書は、17社のブランド企業と銀行の業務が重要な熱帯林を破壊し続けている状況を説明するとともに、2020年までに森林破壊を止めて先住民族の権利を尊重するという公約を怠っている事例も説明しています。こういった企業の無責任な事業活動は、急激な気候変動と前例のない生物多様性の損失という二重の危機を助長し、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)ターゲット15(2020年までに森林破壊を阻止)と矛盾しています。熱帯林破壊による森林減少はまた、新型コロナウィルス感染症の拡大に拍車をかけている可能性も指摘されています。世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの流行は野生動物から始まった可能性があると報告し(注2)、国連環境計画(UNEP)は予防策として生態系および野生生物への脅威に取り組む必要があると述べています(注3)

本報告書はRANの2020年における新キャンペーン開始に合わせて発表されました。インドネシアをはじめ、熱帯林の運命を左右するともいえる、以下の17社を対象にしています。

消費財ブランド企業(10社:多国籍・日用消費財企業):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース
銀行(7社:金融大手):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

RANは本キャンペーンで、17社の消費財ブランドと銀行に、森林リスク産品のサプライチェーン、投資(合弁事業への投資も含む)、金融サービスについて、ベストプラクティスである「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を企業グループ全体で採用および実施することを求めています。また、対象企業に自社の「森林フットプリント」ーー森林伐採や産業的農業の拡大によって、森林や泥炭地、先住民族や地域コミュニティの権利がサプライチェーンおよび資金提供で受けた影響について情報開示することを求めています。また企業は、先住民族と地域コミュニティの人権について、サプライチェーンの改善や森林保護および回復の取り組みにおいて重視するよう求められています。産業的農業の拡大は森林破壊を助長する要因の一つであるだけでなく、先住民族が直面する暴力行為にも大きな責任があります。

本報告書は初めて、消費財ブランドと銀行、そしてインドネシアの森林リスク産品、特にパーム油、紙パルプの生産・加工過程で森林破壊と人権侵害を引き起こしている10社の林業・農業企業とのつながりも分析しています。

MUFGはパーム油企業への世界最大の資金提供者の一つで、紙パプルや木材等の森林リスク産品および、関連する消費財企業への重要な資金提供者でもある。MUFGは東南アジアの森林リスク産品事業のみに対して2015年から2019年8月の期間で9億4,100万米ドルもの資金提供を行った。MUFGはNDPE方針を持たないまま、子会社のダナモン銀行を通じてインドネシアでの事業を拡大している(注4)

花王は日本で最大のパーム油購入企業の一社です。花王は2014年にNDPEに合致した方針を採用し、今年3月中旬に2020年森林減少ゼロ目標を強化すると共に、パーム油サプライチェーンの搾油工場リストを公表した(注5)。しかしながら、国際的な業界団体「コンシューマー・グッズ・フォーラム」の会員企業として約束した、2020年までに森林減少をゼロにする目標は達成していない(注6)

日清食品は、即席麺生産での主要なパーム油購入企業だが、花王と比較すると、NDPE方針を採用せず、自社サプライチェーンにおけるパーム油搾油工場リストも公表していない。日清食品は「コンシューマー・グッズ・フォーラム」の会員企業としての公約を達成するには程遠い(注7)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「熱帯林破壊は、森林の生態系だけでなく、人間の命も脅かしています。数十万人が感染し、世界経済を揺るがしている新型コロナウィルスの大流行と熱帯林破壊が関連していることで、緊急性が増しています。キャンペーン対象企業となった消費財企業10社と銀行7行は森林減少を巨額の資金で助長しています。今のような危機を防ぐためにも、これらの企業は責任を果たすべきです」と訴えました。

影響力の大きい消費財ブランド、銀行、林業・農業企業は、金融およびサプライチェーンでの相互関係で「破壊の輪」を作っています。日本企業について、川上は「三菱UFJは、国連責任銀行原則(PRB)に署名した限り、自行のポートフォリオにおける森林破壊・人権侵害の停止に取り組む大きな責任があります」と指摘し、「花王は、森林減少ゼロ方針を全ての製品に適用を拡大し、サプライチェーンでのNDPE方針の実施確認の取り組みを早急に進める必要があります。日清食品は、現在の持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)認証油に依存した取り組みでは不十分なので、まずはNDPE方針を採択し、搾油工場リストの公表を通じてリスク管理体制を強化し、森林減少、泥炭地開発を食い止める対処に一刻も早く取り組みを進めることが必要です」と続けました。

*本報告書に対する企業からの返答はこちらに記載しています(英語)。

**注記:レインフォレスト・アクション・ネットワークは、世界中の人々が現在直面している新型コロナウィルスによる生命、健康、生計手段への深刻な影響による緊急事態を認識しています。パンデミックおよびそれに付随する経済的影響への緊急対応が当面の優先事項とされるべきとの認識の下、今回の報告書を発表しています。しかしながら、森林減少、先住権への攻撃と気候変動が脅威として存在することに変わりありません。私たちが再び生物多様性の喪失および気候危機に目を向けることができるようになった時、本報告書のデータや分析が上記の脅威に真剣に立ち向かうために役立つことを願っています。

動画(日本語字幕付き)

注1)新報告書「Keep Forests Standing: Exposing Brands and Banks Driving Deforestation」(英語)
*日本語要約版(5月14日追加)「「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」

注2)WHO, “Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report – 32”, 2020年2月21日

注3)UNEP, “Coronavirus outbreak highlights need to address threats to ecosystems and wildlife”, 2020年3月3日

注4)三菱UFJフィナンシャル・グループ「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」

※参考:RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜」、2020年1月29日

注5)花王「『持続可能なパーム油』の調達ガイドライン」 
「2019年の進捗『持続可能なパーム油』の調達ガイドラインの進捗 2020年の目標」

注6)コンシューマー・グッズ・フォーラム「Deforestation: Mobilising resources to help achieve zero net deforestation by 2020」(英語)

注7)「日清食品グループ 持続可能な調達方針」
「日清食品グループ 人権方針」
「持続可能なパーム油の調達」

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org