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プレスリリース:「化石燃料ファイナンス報告書2023」発表〜日本の3メガバンク、LNGと北極圏石油ガス、化石燃料全体と拡大への資金提供でワースト10入り(2023/4/13)

化石燃料への資金の流れを追跡し、気候破壊を引き起こす世界最悪の企業を支援する銀行による莫大な支援を詳述

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)をはじめとするNGOは、12日(米国東海岸時間)、新報告書『化石燃料ファイナンス報告書2023〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』(第14版、注)を発表しました。本報告書は、化石燃料への銀行業務について最も包括的分析であり、化石燃料業界への資金提供状況を吟味することで、銀行による気候に関する公約の実態を明らかにしています。

『化石燃料ファイナンス報告書2023』概要

2019年以来初めて、カナダの銀行が米国の銀行 JPモルガンチェースを抜いて、化石燃料への年間での資金提供者の第1位となりました。カナダロイヤル銀行 (RBC) は、2022 年にタールサンド部門に48億ドル、シェールガス部門に74億ドルを含む 421億ドルを化石燃料プロジェクトに投じました。カナダの銀行が化石燃料の最後の手段となりつつあり、パリ協定発効以降、化石燃料企業に8,620億ドルを提供しています。RBC はコースタル・ガスリンク(Coastal GasLink)シェールガス向けパイプラインのような拡張事業に資金提供を続けています。このプロジェクトでは人権や先住民族の主権を侵害しており、先住民族リーダーの同意なしに進められています。

化石燃料への資金提供において、全体として米国の銀行が優位に立ち、2022年には化石燃料への融資全体の28%を占めていることを本報告書は示しています。シティウェルズ・ファーゴバンク・オブ・アメリカは、2016 年以来、依然として化石燃料への資金提供者の上位5行に入っています。一方、2022年の化石燃料企業全般への資金提供額で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)のメガバンク3行は、ワースト10位に入りました。

欧州とウクライナの人々は、ロシアの残虐行為への資金提供をやめるために再生可能エネルギーへの移行を求めましたが、化石燃料会社は拡大を倍増させ、気候への取り組みを弱めました。液化天然ガス(LNG)を拡大している上位 30 社は危機を利用して、2021年に比べて2022年に銀行から50% 近く多くの資金を確保しました。ただし、ほとんどのエネルギー専門家が、ヨーロッパでのLNG 拡大計画は不要であり、新しいプロジェクトがこの化石燃料への供給過剰と長期的な依存に寄与してしまうことで合意しています。

報告書によると、これまでのところ、世界の銀行によるネットゼロの約束は何のメリットもありません。報告書で示した60銀行のうち49行がネットゼロのコミットメントを行いましたが、ほとんどの銀行が化石燃料拡大のための融資を除外する厳格な方針を伴っていません。実際の方針には化石燃料の顧客への融資を銀行が継続できるようにする多くの抜け穴が含まれています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が 2023年3月の報告書で確認したように、今日生きている何百万人もの人々や、今後の数え切れない世代に渡る容認できない損害を回避する機会を人類に与えるには、化石燃料の拡大を止めなければならず、すべての部門で化石燃料の利用を急激に低下させなければなりません。IPCCは、気温を1.5度未満に保ち、安全で住みやすく、持続可能な未来を築くチャンスをもたらす窓が急速に閉ざされつつあると主張しています。

化石燃料部門別の傾向

●拡大企業: 本報告書で取り上げた60行の銀行は2022年に、TCエナジー、トータル・エナジー、ヴェンチャー・グローバル、コノコ・フィリップス、サウジ・アラムコを含めて、化石燃料を拡大している上位100社に1500億ドルを投入した。

●液化天然ガス(LNG): 2022 年の液化天然ガス (LNG)への資金提供額で上位の銀行は、みずほFG、モルガンスタンレー、JPモルガンチェース、ING、シティ、SMBCグループ。LNG に対する全体的な資金提供は、2021年の152 億ドルから2022年の227億ドルへと50%近く増加。

●オイルサンド(タールサンド): 上位のオイルサンド企業は、2022 年に210億ドルの資金を受け取りました。これらの資金の89%を提供したカナダの大手銀行が主導。TDRBCモントリオール銀行が上位にある。

●北極圏の石油ガス: 中国の銀行であるICBC、中国農業銀行、中国建設銀行が北極圏の石油ガス事業への融資を主導し、2022年にこのセクターの上位企業に総額29億ドルを投じた。米国の銀行を含む26の銀行がいまだ北極圏の石油ガスに資金提供。JPモルガンチェースシティバンク・オブ・アメリカ

●アマゾンの石油ガス: スペインの銀行サンタンデールは、アマゾンの生態系から資源を取得する企業への資金提供をリードし、米国の銀行シティが僅差で続く。2022年の資金調達総額は7億6,900 万ドル

●シェールオイルガス: フラッキングを行う企業への融資は2022年に合計670億ドルに達しました。これは、2021年に報告された上位のフラッキング企業の資金提供額を8%上回る。フラッキングによる極端なメタン排出量を考えると、この増加は特に気がかり。RBCJPモルガンチェースは、2022年とパリ協定発効以降で、フラッキングでの石油とガスの最大の資金提供者である。

●海洋の石油ガス: 欧州の銀行のBNPパリバクレディ・アグリコル、日本の銀行のSMBCグループは、2022 年の海洋の石油ガスのワースト資金提供リストの上位。2022 年の資金調達額は合計340億ドル

●石炭採掘: 世界最大の 30 社の炭鉱会社に提供された130 億ドルの資金提供のうち、87%は中国にある銀行から提供されたもので、中信銀行、中国光大銀行、興業銀行が率いていた。

●石炭火力発電: 石炭火力発電の世界上位30社への融資のうち、97%は中国の銀行から提供されたものです。石炭火力発電能力の拡大を計画しているこれらの企業は、2022年にプロファイルされた銀行から295億ドルを受け取った。

日本の3メガバンクの動向

上述の2022年の化石燃料企業全般への資金提供額のみならず、分野別では、LNGと北極圏石油ガス分野、化石燃料事業拡大企業への2022年の資金提供額でも、MUFGみずほFGSMBCグループの全3行が、ワースト10位に入りました。特に、LNG上位30社への2022年の資金提供で、みずほFGがモルガン・スタンレーに代わり初めて1位となり、2016年から2022年の資金提供累計総額でも、LNG分野で3メガバンクがワースト10位入りしました。化石燃料企業全体への資金提供では、MUFGが6位、みずほFGが8位で、SMBCグループは16位となりました。

 

以下は、化石燃料企業への資金提供額の推移を示しています。2016年のパリ協定発効時よりも資金提供額は増加した状況で維持されており、大きな増加傾向は見られませんが、大きな減少も確認できていません。

賛同団体からのコメント

気候ネットワーク プログラム・コーディネーター 鈴木康子

「気候危機を回避するためには再エネの主力化と脱炭素化を加速させる必要があることが明らかであるにも関わらず、本年の報告書でも、日本の3メガバンクを含む世界の大手60行がいまだに化石燃料事業に多額の支援をしていることが明らかになっています。3メガバンクともネットゼロ目標を掲げ、プログレスレポートの開示などを行っていますが、その一方で化石燃料事業への支援を継続していては、本当の気候危機対策は進みません。特にMUFGはアジアの化石燃料事業への金融支援が最大であると指摘されている上、日本政府が国内外、特にアジア諸国に向けて広げようとしているグリーントランスフォーメーション(GX)促進に積極的な姿勢を示していることが懸念されます」

マーケット・フォース、日本エネルギーファイナンスキャンペーナー、渡辺瑛莉

「日本のメガバンク3行が、2050年までのネットゼロ排出を達成するという宣言に反し、依然として化石燃料を拡大する企業への融資・引受を継続していることは容認できません。メガバンク3行は2022年において化石燃料への資金提供で世界トップ10に名を連ねており、メガバンクの同セクターへのエクスポージャーに伴う財務リスクについて、投資家の間で懸念が高まっています。3行とも新たな油田やガス田、LNGプロジェクトへの資金提供を制限する方針はなく、これは、2050年ネットゼロ排出達成のため、今後新規の石油やガスの開発は必要ないとする国際エネルギー機関の結論と明らかに矛盾しています。地球温暖化を1.5度に抑えるために残されている時間は僅かであり、メガバンク3行は、化石燃料セクターへの資金提供を減らすための方針と目標を早急に強化することが必要です。銀行は気候危機を解決するため、さらにはより良い環境を築き上げるために資金提供を行うべきです」

国際環境NGO 350.org Japanチームリーダー代行、伊与田昌慶

「この最新レポートは、パリ協定への約束とは裏腹に大手金融機関が化石燃料に対する巨額の投融資を継続している事実の告発状です。三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループなどの大手金融機関が関与を続ける化石燃料産業は、未曾有の気候危機に人々が傷つき倒れる中、過去最高水準の利益をあげました。

G7広島サミットを控え、日本の官民が気候危機を深刻化させる「化石燃料中毒」から脱却するか否かが注目されています。昨年発表された350.org Japan調査によって、日本の主な金融機関は、パリ協定採択後、再エネ関連企業への融資引受額の19倍もの資金を化石燃料関連企業に提供してきたことも明らかになっています。最新のIPCC第6次評価報告書に学び、化石燃料やアンモニア・水素混焼、原子力、CCUS等といったまやかしではなく、最も有力な再生可能エネルギーにこそ、その資金を投じるべきです」

 

注)日本語要約版

化石燃料の金融データ、方針スコア、最前線の現場からのストーリーを含む完全なデータセット(英語)は、bankingonclimatechaos.org からダウンロード可能。世界の主要民間銀行60行が化石燃料部門に行った資金提供を示した包括的な報告書。石炭、石油、ガス部門の約3,210社(親会社2,000社)に対する2016年〜2022年の7年間の融資・引受を分析の対象としている。

「化石燃料ファイナンス2023〜気候カオスをもたらす銀行業務〜」は、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、バンク・トラック、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェインジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラ・クラブ、ウルゲバルトによって執筆されている。世界70カ国以上の550を超える組織がこの報告書を支持し、気候破壊への資金提供を停止するよう銀行に呼びかけている。

 

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
川上豊幸  Email: toyo[@]ran.org

※更新
『化石燃料ファイナンス報告書2023〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』日本語要約版を追加しました(2023年9月28日)

 

共同プレスリリース:国内外の環境NGOが東証プライム6企業に株主提案 〜メガバンク全3社含む日本企業の気候変動対策に問題提起〜(2023/4/11)

国際環境NGO マーケット・フォース
国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

4月11日、国内外の環境NGOとその代表者を含む個人株主は金融、商社、電力の3業界の6企業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱商事、日本最大の発電会社・JERAの経営に大きく関与する東京電力ホールディングスと中部電力)に対し、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出したことを発表しました。

昨年の株主総会シーズンでは、日本企業も過去最多の気候変動に関する株主提案に直面しました。こうした株主提案は我々環境NGOに限らず、国外の機関投資家や地方自治体からも提案されています。多様なステークホルダーが高炭素排出企業による気候変動対策の遅れに対して危機意識を共有し、行動に移しています。我々が提出した議案も機関投資家に幅広く支持されました。

今年6企業に対して提出された株主提案はパリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画、あるいは、2050年炭素排出実質ゼロ(ネットゼロ)への移行に向けた取り組みに関する情報開示を企業に求めるものです。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3月に公表した第6次統合報告書によれば、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2035年までに19年比で60%減らす必要があります。しかし気候変動対策の強化がなければ、2100年までに約3.2℃の上昇が見込まれており、現状の各国の削減努力は極めて不十分です。この報告書の公表に合わせ、国連のグテーレス事務総長は「気候時限爆弾が刻々と時を刻んでいる」と危機感を示し、先進国は2035年までに電力部門における温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを求めています。

日本が議長国を務めるG7広島サミットを前に、日本が化石燃料(LNG等)投資の必要性を認めるよう求めたり、発電部門で化石燃料の利用継続を前提とした技術導入を推進していることについて、G7加盟国の反発を招いたとの報道もあります。米国や英国を含む加盟国の政府関係者は、札幌で開催される気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケ草案に疑問を呈し、気候変動対策を加速させる取り組みにあまり重点が置かれていないと指摘しています。

民間企業の気候変動対策は日本政府のこうした方針に大きく影響を受けるとはいえ、国際社会において事業を展開し、信頼を得るためには業界あるいは企業独自の気候変動対策が求められています。とりわけ、今回株主提案の対象となった企業(メガバンク3社や三菱商事)や対象企業ら(東京電力HDと中部電力傘下のJERAを含む)は国内外で化石燃料事業への投融資および関与を継続しています。特に、LNG火力のパイプライン開発や発電所の新設、既存の石炭火力発電所の稼働を延命させるアンモニア・水素の混焼技術の推進は大きな問題です。

提出先企業が抱える問題の要点(業界ごと)

■メガバンク

「メガバンクの気候関連方針、目標、移行計画は、国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオや、メガバンクも署名しているネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)のような世界的スタンダード設定を行うイニシアチブにも沿っておらず、2050年までに排出量をネットゼロにする道筋を示すものとして信頼性を欠いています。とりわけ新規の石油・ガス開発事業への支援を制限する方針を持つ海外の競合他社と比べても、大きく遅れを取っています。自らの公約を果たすためにも、ネットゼロ長期目標と整合性ある短期・中期目標および投融資方針の設定に向けた行動を急ぐべきです」
(マーケット・フォース, 日本・エネルギーファイナンスキャンペーン担当, 渡辺瑛莉)

「銀行は、日本政府のGX基本方針に準じ、エネルギーの安定供給を目的とした高効率火力へのアンモニア・水素混焼への投資を継続的に行おうとしていますが、国際社会はより直接的な削減に寄与する再生可能エネルギーに関連開発への投資に重きをおいています。日本のメガバンクも、持続可能な、真に「グリーン」なエネルギーシステムの構築を目指すべきです」
(気候ネットワーク, プログラム・コーディネーター, 鈴木康子)

「気候変動への対応には土地利用セクターも重要です。NZBAガイドラインで炭素集約分野とされる農業分野で排出量や集約度の削減目標の設定が求められていますが、日本のメガバンクでは行っていません。また木質バイオマス発電所のGHG排出係数は、燃焼時に石炭火力発電所より高いにもかかわらず、木質バイオマス燃料の燃焼からのCO2排出量を報告していないので、適切な情報開示が行われておらず、電力部門での気温上昇を1.5度以内に抑える移行実現を困難にしてしまいます」
(レインフォレスト・アクション・ネットワーク, 日本代表, 川上豊幸)

■東京電力・中部電力

「東京電力、中部電力、及び両社の合弁企業で高炭素排出企業であるJERAは、新規の化石燃料事業に投資をしながらネットゼロ企業と名乗ることは許されません。これら企業は、資本配分を気温上昇を1.5度以下抑える道筋と整合させるなど、移行計画の信頼性を示す必要があります」
(マーケット・フォース, エネルギーファイナンスアナリスト, 鈴木幸子)

日本最大の発電事業者であるJERAは『JERAゼロエミッション2050』を掲げ、低炭素社会を目指すと表明しています。現在社会においてサステナブルなエネルギーへの切り替えは簡単ではないとの意見もありますが、タイムリミットが刻々と近づく中、欧米では同業会社が着々とゼロエミッションへの取り組みを進めています。既に「いかに実現させるか」が焦点であり、既存の火力発電設備にアンモニアや水素を混焼させることで排出削減を狙うという日本のやり方は、科学的にも経済的に疑問視されています。JERAおよび東電HD・中電がこうした戦略を続けるのであれば、その効果の真偽を判断するための情報を正確かつタイムリーに公開すべきでしょう」
(気候ネットワーク, プログラム・コーディネーター, 鈴木康子)

■三菱商事

三菱商事が現在示している気候変動に関する目標や情報開示は、同社が2050年までにネットゼロ目標を達成するための実行可能な道筋があると投資家が結論づけるには全く不十分です。例えば三菱商事のScope3排出量(3億8100万トン)は、英国、フランス各国の化石燃料の年間排出量を上回っています。だからこそ、Scope3排出量目標を設定することで同社がネットゼロ約束をどのように達成するのか、投資家が確認できるようにする必要があるのです」
(マーケット・フォース, アジア・エネルギーファイナンスキャンペーン担当,  福澤恵)

今回、株主提案を提出先となった企業は、座礁資産リスク(環境や市場、規制の変化で企業が将来的に減損処理する資産を抱えること)や訴訟リスク、ブランド価値の毀損など将来の企業価値に関する重大なリスクを抱えています。また、こうした企業が誤った戦略を取り続けると気候変動対策の妨げともなりかねません。

企業が我々の株主提案を真摯に受け止め、投資家の方々の後押しを受けて気候変動対策を強化するとともに情報開示を進めることが、企業価値の向上に繋がり、ひいては気候危機を防ぐ一助となるとして、ご理解を得られることを期待しています。

メガバンク3社への株主提案
団体としては、NGOマーケット・フォース(豪)、気候ネットワーク(日)、個人としては、川上豊幸(米NGO RAN日本代表)が共同提案に参加。

三菱商事への株主提案
法人としては、マーケット・フォース、個人としては、深草 亜悠美 (FoE Japan 気候変動・エネルギー担当) が共同提案に参加。

東京電力ホールディングスおよび中部電力への株主提案
マーケット・フォース、気候ネットワークが共同で提案。

提案文書

三菱UFJフィナンシャル・グループへの提案文書(PDF

みずほフィナンシャルグループへの提案文書(PDF

三井住友フィナンシャルグループへの提案文書(PDF

三菱商事への株主提案(PDF

東京電力ホールディングスと中部電力への株主提案(PDF

株主提案に関する投資家向け説明資料

3メガバンク 投資家向け説明資料(PDF

三菱商事 投資家向け説明資料(PDF

東京電力ホールディングスと中部電力 投資家むけ説明資料(PDF

※各社への提案書および投資家向け説明資料は特設サイトからもダウンロードいただけます。

株主提案に関する特設サイト

Asia Shareholder Action: https://shareholderaction.asia/ja/

連絡先

マーケット・フォース(Market Forces) https://www.marketforces.org.au
担当者:鈴木幸子 E-mail: sachiko.suzuki[@]marketforces.org.au
担当者:福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa[@]marketforces.org.au

国際環境NGO FoE Japan https://www.foejapan.org/
担当者:深草亜悠美 E-mail: fukakusa[@]foejapan.org

気候ネットワーク https://www.kikonet.org
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:川上豊幸 E-mail: toyo[@]ran.org

プレスリリース:新報告書『ボルネオ島 最後の森林を守る:地域コミュニティ抵抗の事例』発表 (2023/2/15)

インドネシア、森林減少率低下するも熱帯林の危機は継続

  • ●ボルネオ島の熱帯林の多くは企業の事業管理地に残り、伐採や農園開発のリスクにある。「ロング・イスン」先住民族コミュニティの慣習林は伐採業者の管理地に重なることから10年以上も対立が続いている。
  • ●ロング・イスン村で操業する伐採業社は 、複合企業グループ「ハリタ・グループ」のコントロール下にある。同グループはP&G、モンデリーズ、日清食品など消費財企業の調達先である。
  • ●RANは消費財企業に対して、自社調達方針の実施を求めると同時に、ハリタ・グループに「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針を全事業で遵守させるよう求めている。


写真:先住民族「ロング・イスン」コミュニティの人々 ©️Khairul Abdi / RAN

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部サンフランシスコ、以下、RAN)は14日、新報告書「ボルネオ島 最後の森林を守る:地域コミュニティの闘い」を発表し(注1)インドネシアの森林減少率が過去数年で減少しているにもかかわらず、同国に残る重要な熱帯林の多くは依然として危機的状況にあると警鐘を鳴らしました。熱帯林の多くは企業のコンセッション(事業管理地)にあり、伐採や植林地および農園への転換のリスクに常にさらされています。本報告書は、地域および先住民族コミュニティによる森林保護・管理、そして産業開発への人々の抵抗がボルネオ島最後の熱帯林を守る最善の方法の一つであると結論づけています。

本報告書は「ハート・オブ・ボルネオ」として知られる北カリマンタン州と東カリマンタン州の重要な地域に焦点を当てています。先住民族コミュニティ「ロング・イスン村」の人々が、10年以上にわたって彼らの土地での伐採事業に抵抗し、土地権の法的承認を求めてきた力強い闘いを説明しています。また人々がこれまで直面してきた激しい脅迫や不当逮捕についても記載しています。

地図:ロング・イスン村は東カリマンタン州マハカムウル県(マハカム川上流)に位置する

ロング・イスンの村民で「ロング・イスン森林管理組織」の代表であるテクワン・アジャ(通称テクワン)は「私は、森や土地、水、そして尊厳を含め『生命の源』を守ろうとしたことで109日間も逮捕されました。その後、私は今も容疑者に指定され、警察への出頭が求められています」と訴えました。テクワンは地元警察に罪状もなく投獄され、犯罪者にされました。ロング・イスンの人々は、 これはコミュニティと対立する伐採企業が警察の力を借りて、コミュニティに力ずくで伐採事業を承認させようと仕組んだ方策だと考えています。

大手消費財企業の多くは重要な森林保護方針である「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE、注2)を採用する一方で、ロング・イスンの事例に関わりがあります。プロクター&ギャンブルとモンデリーズなどの消費財企業は、有力な複合企業グループのハリタ・グループと取引を続けています。日本企業では日清食品がハリタグループのコントロール下にある搾油工場からパーム油を調達していることを開示しています(注3)。また伊藤忠建材の取引先にはハリタグループの合板工場も含まれます(注4)

ハリタ・グループはインドネシアのパーム油および木材部門で最も影響力のある企業グループの一つです。ロング・イスンの森林開発の権利を有する伐採企業の2社は、同グループのコントロール下にあります。ハリタ・グループがロング・イスン村の慣習権を侵害し、コミュニティ慣習地からの撤退を拒否したことから、国際的な紙・木材認証制度の一つである森林管理協議会(FSC)に正式な苦情が申し立てられました。その後2017年にFSC認証の基準に対する違反が確認されたとして、FSCはロング・イスンの土地紛争に関連してハリタグループ企業1社の認証を取り消しました(注5)。2023年2月には、別のハリタグループの木材企業の認証が一時停止となり(FSC要求事項への重大な不適合のため)、FSCはハリタグループとの上記苦情に対応するために行っていた調停手続きの停止を発表しました(注6)


写真:バレンタインデーに合わせて行われたモンデリーズ本社前でのアピール行動、米国シカゴ、2023年2月14日 ©️Juliste G / RAN

RAN 森林キャンペーン・ディレクターのダニエル・カリロは「地球規模で、私たちは止めることのできない気候危機の瀬戸際にいます。これ以上の森林破壊はさらなる瀬戸際へと追い込むだけです。一方で、コミュニティの人々は私たちみんなのために貴重な熱帯林を守ろうとし、高まる脅迫と報復に直面しています。このような状況には今すぐ歯止めをかける必要があります。多国籍消費財企業には、今の状況を変える力があります」と強調しました。

RANはプロクター&ギャンブル、モンデリーズ、日清食品、そして本事例と関わりのある消費財企業に自社の調達方針を実行し、調達先であるハリタ・グループに、ロング・イスンの慣習林と重なる地域での木材事業案を含め、グループの全事業でのNDPE方針遵守を求めるよう要請しています 。

「ハート・オブ・ボルネオ」地域は、ボルネオ島の熱帯林の大部分が集中する北カリマンタン州と東カリマンタン州にあります。両州の森林の3分の2近くが今も企業の事業管理地内にあることから、この地域への脅威は高まっています。インドネシアの首都移転計画も間近に迫り、熱帯林への脅威をさらに大きくしています。

ハリタグループは、上記の件に関する申し立てを否定しました。同グループの返答はこちらに掲載しています。
RAN.org/publications/long-isun/

 

注1)報告書「ボルネオ島 最後の森林を守る:地域コミュニティ抵抗の事例」
日本語版
英語版

ウェブサイト「ボルネオ島の消えゆく森を守る 〜先住民族「ロング・イスン」の闘い〜」

モンデリーズ社への署名(英語)

注2)パーム油や紙パルプなど森林破壊を引き起こす産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準。NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。

注3)日清食品「ミルリスト」(2021年版)2023年2月閲覧
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/pdf/PalmOilMills_2021.pdf

注4)PT. Titra Mahakam Resources Tbk. “PT. Tirta Mahakam Resources Tbk. Financial Statements.” IDN Financials. September 2022.
https://idnfinancials.s3-ap-southeast-1.amazonaws.com/financial-statements/TIRT/2022/3Q_2022_TIRT_Tirta+Mahakam+Resources+Tbk.pdf

注5)参考:Forests People Programme. “FSC to investigate renewed complaints of human rights violations by Roda Mas Group”. Forests People Programme June 2020.
https://www.forestpeoples.org/en/timber-pulpwood-and-fsc/press-release/2020/fsc-investigate-renewed-complaints-human-rights

注6)FSCジャパン「FSCはHaritaグループとの調停の中止を決定しました」、2023年2月9日
https://jp.fsc.org/jp-ja/newsfeed/fsc-will-not-pursue-mediation-with-harita-group

 

参考

RAN「キープ・フォレスト・スタンディング〜森と森の民の人権を守ろう」キャンペーン関連

プレスリリース:新報告書「森林&人権方針ランキング2022」発表〜日清食品、三菱UFJは低評価 〜 (2022/6/15)
https://japan.ran.org/?p=2011

プレスリリース:新報告書「森林フットプリント評価 2021」発表〜インドネシア・ボルネオ島の森林と地域コミュニティへの影響について、大手消費財企業10社の開示状況を評価〜(2021/10/22)
https://japan.ran.org/?p=1919

 

※更新:「ボルネオ島 最後の森林を守る:地域コミュニティ抵抗の事例」日本語版を追加しました(2023年3月20日)。

 

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
https://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
コミュニケーション:関本  Email: yuki.sekimoto@ran.org

共同プレスリリース:パリ協定に整合する気候変動対策の強化を求める株主提案の議決権行使結果(2022/11/8)

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
国際環境NGO 350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

2022年4月、国内外の環境NGOとその代表者を含む複数の個人株主が、金融、商社、電力の3業界の4社(三井住友フィナンシャルグループ、三菱商事、JERAの株主である東京電力ホールディングスと中部電力)に対して気候変動対策の強化を求める株主提案を提出しました。これらの提案は、6月後半の各社の株主総会にて否決されましたが、表2に示すように一定数の賛同を得ることができました。提案は主に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)勧告の内容に沿って、ネットゼロ達成のための具体的な計画の設定・開示を求めるものでした。

今回の調査からは、1) 定款変更という形式への課題が残る一方で、気候変動対策の強化を求める株主提案への支持が国内外の投資家の間で広がっていること、2) パリ協定と整合する経営戦略の策定・開示を求める提案への支持がより集まった一方で、企業のビジネスモデルの根幹に影響をおよぼし得る株主提案への支持も一定程度集まったこと、3) 大手議決権行使助言会社の判断に関わらず、企業との建設的対話(エンゲージメント)を通じて独自の判断を下す投資家が増えてきていること、が見てとれました。

ここに各提案に対する議決権行使の調査結果を報告致します。 

 

株主提案に対する議決結果

4社の提案に対する機関投資家の議決権行使状況を公開情報から調査した結果、2022年10月31日までに把握できたそれぞれの提案に対する賛否(企業・団体の数)は表1のとおりです。(提案詳細は表2を参照)

*分裂とは、企業またはグループ会社の中で議決権行使の賛否が分かれているケース。合計とは、各提案に対して議決権行使を行った投資家の中で、今回の調査で結果が確認できた企業・団体の数の集計。

気候変動に関連する株主提案は世界でも増加しています。こうした提案に対し、長期的な気候変動リスクに適応する戦略の策定および開示は企業価値の向上に資するとする賛成の意見がある一方、中長期的な企業価値に対する気候変動リスクは重要だが定款に入れ込むのは対象企業の業務執行に具体的な制約を加える懸念があるといった反対意見も見受けられました。

日本の会社法の下で株主からの提案を議題に載せるには、定款変更を求めるものに縛られている状況を踏まえると「定款への記載が妥当ではない」ことが判断理由とされてしまう点は課題です。一方で議決権行使結果を見ると、気候変動問題の重要性に対する理解は着実に広がっていることが見てとれます。

 

議案に対する賛成率

議案に対する賛成率からは、パリ協定と整合する経営戦略の策定・開示を求める提案(SMBCグループ議案4・三菱商事議案5)に対して、投資家からの賛成が得やすい傾向が見られます。とはいえ、企業の事業戦略(ビジネスモデル)の根本にも影響し得るネットゼロに向けた移行を求める株主提案にも10~20%程度の支持が得られていることは注目に値します。議決権の2/3以上の賛成を得られていない以上、法的拘束力はありませんが、企業としても無視できない数の機関投資家が気候変動対策の強化を求めていることを示唆しています。

大手助言会社や国内外の運用受託機関の判断

今年は、投資家の議決権判断に一定の影響力を有すると言われている、議決権行使助言会社大手のグラスルイス(Glass Lewis)とインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)の判断も大きく分かれました。

SMBCグループの議案4、三菱商事の議案5、6については、助言会社の意見が割れていたにも関わらず、株主から一定の賛同を得られたのは、2050年ネットゼロという明確な目標に向け、気候変動対策に関する方針に対して独自の判断を下す機関投資家が増えてきていることや、機関投資家が議決権行使前に企業とサステナビリティ(持続可能性)に関する建設的な対話(エンゲージメント)をする機会が増えていることが背景にあると思われます。

2020年にみずほフィナンシャルグループに株主提案を出した時点では、国内の機関投資家が助言会社以外の国外の機関投資家の動向に追随する動きは限定的でした。2020年に日本版スチュワードシップ・コードが改訂されて以降、日本の機関投資家にとっても「気候変動対策と経営戦略」のつながりについての認識が変化してきているように見受けられます。

定款変更に記載する内容として適切かという議論は残るものの、気候変動問題の重要性や、中長期的な計画が企業価値に影響をおよぼすとの認識への理解は広がってきています。その傾向は、国外の主な機関投資家の提案に対する議決権行使結果を見るとより明らかです。

国内投資家に比べると国外投資家は賛成票が多くなっています。一方で、エネルギー危機の中で脱炭素の機運が弱まりかねない状況下において、すべての提案に一括して「反対」した国外の大手資産運用会社があったことは懸念されます。

 

今後に向けて

国内外の機関投資家の多くは、2050年ネットゼロを目指す資産運用会社の国際的な枠組みである「ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブ(NZAMI)」に署名しています。NZAMIのコミットメントを達成できるかどうかは投資先企業の行動に大きく依存するため、機関投資家は投資先企業に対し脱炭素化に向けた取り組みの強化・加速化を促していく必要があります。

企業側は、TCFDレポートを作成して情報開示を進めたり、2050年に向けた長期目標を設定し、独自の気候変動対策計画を公開するなど、一定の取り組みは進めていますが、株主提案の対象となったいずれの企業も2050年の目標達成に向けた具体的な計画を示すには至らず、対策は不十分なままです。各社は、株主提案への議決権行使結果も踏まえ、脱炭素目標に向けて現実的かつ具体的な行動を盛り込んだ計画を示し、行動を加速させていくことが強く求められています。

 

集計結果

株主提案への議決権行使結果(PDF)

 

関連情報

【プレスリリース】国内外の環境NGOが国内4企業に株主提案(2022年4月13日)

【共同プレスリリース】三菱商事への株主提案は否決:三菱商事は情報開示と気候変動対策の強化を(2022年6月24日)

【共同プレスリリース】 株主総会にて東電・中電とも否決、ただし東電は約9.55%(速報値)獲得(2022年6月28日)

【共同プレスリリース】投資家たちが日本企業に迅速な気候変動対策を要求(2022年6月29日)

本件の連絡先

気候ネットワーク   https://www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

プレスリリース『森林と金融 2022年方針評価』発表〜メガバンクら金融機関の森林ESG方針は不十分〜(2022/10/19)

森林破壊・気候変動・人権侵害への資金流入を防げず

  • 森林破壊リスクのある産品企業に投融資する上位 200金融機関(銀行と投資機関)の森林関連方針を評価。総じて方針は弱く全体平均は10点満点で1.6ポイント、約6割の金融機関が1ポイント未満だった。
  • 上記産品企業300社への資金の流れも分析。その結果、パリ協定以降、世界の銀行は2,670億米ドルの融資・引受を行ない、投資機関は400億米ドルの債権や株式を保有していることがわかった(2022年9月時点)。
  • メガバンクの方針評価はMUFGが5.4ポイント、みずほは6.9ポイントと高評価を得るも、問題の多いインドネシアの紙パルプ大手2グループに多額の資金を提供している。

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部サンフランシスコ、以下、RAN)を含む8団体で構成する「森林と金融」連合は18日、「森林と金融」データベースを更新し、「2022年方針評価」を発表しました(注1)。新たに世界大手200金融機関(銀行と投資機関)の森林関連方針を評価・分析した結果、全体平均は10点満点のうち1.6ポイントと総じて低評価で、農林業その他土地利用(AFOLU)セクターに投融資を行う金融機関には十分な環境・社会・ガバナンス(ESG)方針がないことが浮き彫りになりました。

また、更新したデータを分析した結果、パーム油や紙パルプなど森林をリスクにさらす産品(以下、森林リスク産品)への多額の金融サービスを金融機関が行っていることも明らかになりました。 パリ協定締結以降の2016年から2022年9月、森林リスク産品企業300社に2,670億米ドルの融資・ 引受が行われ、新型コロナウイルスの世界的流行時には減少したものの2021年には2018年の水準に戻りました(図1)。農林業その他土地利用セクターは世界の温室効果ガス排出量の23%を占めているにもかかわらず(注2)、不十分な方針のもとで森林リスク産品への資金流入に歯止めがかかっていないことを問題視しました。

評価対象の金融機関には日本のメガバンク3行、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も含まれます。メガバンクが高評価を得た一方、GPIFは0.7ポイントと平均以下でした。

  1位 ノルウェー政府年金基金(7.5ポイント)
  2位 ラボバンク(7.4ポイント)
  3位 ABNアムロ(7.2ポイント)
  4位 みずほフィナンシャルグループ(6.9ポイント)
16位 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(5.4ポイント)
31位 三井住友フィナンシャルグループ(4.0ポイント)

*他の日本の金融機関は、41位 JAグループ(3.1)、42位 三井住友トラスト・グループ(3.1)、52位 大和証券グループ(2.2)、57位 野村グループ(2.1)、95位 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)(0.7)など(注3)。

【概要】

『森林と金融』は、東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカにおける紙パルプやパーム油など森林リスク産品への資金流入を包括的に分析したオンラインデータベース。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年、部門別に検索が可能です。

今回の方針評価の対象となった金融機関は、紙パルプやパーム油など森林リスク産品企業に投融資する上位200銀行及び投資機関で、銀行には日本のメガバンク3行、投資機関には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が含まれます。

  • ●対象事業地域:世界三大熱帯林地域である東南アジア、ラテンアメリカ(アマゾン)、中央・西アフリカ(コンゴ盆地)
  • ●対象産品:牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材(森林リスク産品)
  • ●対象期間:融資・引受は2016年から2022年9月、債券・株式保有は2022年9月時点
  • ●評価方法:各金融機関の森林関連方針を環境・社会・ガバナンス(ESG)の3分野35項目の基準で評価。方法論の詳細(注4)

【主な分析結果】

  • ●方針評価
    全体の平均得点は10点満点中1.6ポイントと総じて低評価でした。全金融機関の59 %が1ポイント未満で、ESGリスクの管理と緩和ができていないことを表しています。また7ポイント以上の評価を得たのはわずか3金融機関で、改善の余地が大きく、気候変動や生物多様性の損失に対処しなければならない緊急性を反映しているとは言えません。
  • ●金融サービス
    対象金融機関の金融サービスの合計を調査・分析。その結果、森林リスク産品企業300社への融資・引受額はパリ協定締結以降の2016年から2022年9月で2,670億米ドル、株式・債券の保有額は2022年9月時点で400億米ドルであることがわかりました。
  • ●日本の金融機関の評価
    みずほとMUFGの方針評価がそれぞれ6.9ポイント、5.4 ポイントと高評価ながらも、インドネシアの紙パルプ大手企業2社のAPP社(シナルマス・グループ)とエイプリル社(ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ)に多額の資金を提供しています。
    GPIFの評価は昨年に続き0.7ポイントと低く、PRI(責任投資原則)に署名している一方で、ブラジル牛肉大手企業への1,900万米ドルの投資が確認できました。

【ケーススタディ】

ブリーフィングペーパーでは森林破壊の要因となるセクターとして、インドネシアの紙パルプ産業とアマゾンの牛肉産業への金融の役割について事例紹介しています。両産業に金融サービスを提供する金融機関の方針について、環境・社会基準6項目(森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、火災禁止、強制労働・児童労働禁止、先住民族及び地域コミ ュニティの「自由意思による事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)」の尊重)で評価したところ、方針は非常に弱く、火災の原因となる環境悪化の防止、先住民族や地域コミュニティの権利保護、強制労働及び児童労働による搾取禁止の措置はほとんど講じられていないことが判明しました。上記6項目は、森林保護の国際基準となっている「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE: No Deforestation, No Peat, No Exploitation)が方針に採用されているかが鍵となります。

RAN日本代表 川上豊幸のコメント

「メガバンクにとっての大きな課題は、3行ともに投融資先企業に対してNDPE方針遵守の公表、あるいはNDPEに準ずる方針作成を求めていますが、企業グループ全体での遵守を明確には求めていない点です。つまり、投融資先企業にNDPE方針の遵守状況の確認を十分に行う体制が整っていません。そして遵守確認は事業ごとに判断され、投融資先企業全体や企業グループ全体での遵守評価が行われてもいません。そもそも、MUFGはNDPE遵守の公表をパーム油の農園企業や他の大規模農園には求めていますが、紙パルプ部門を含む森林セクター方針に含まれていない点も問題です。

 加えて、メガバンクの森林セクター方針では、取得すべき森林認証として、FSC認証よりも脆弱なPEFC認証が認められています。そのため、FSC認証を取得することができない問題企業にも資金提供が可能となっていることから、早急な方針改善が必要です」

 

「森林と金融」連合は、森林リスク産品セクター特有の社会・環境面での負の影響を止めるために、銀行と投資機関に強固なESG基準とデュー・デリジェンス (相当の注意による 適正評価)の必要性を訴えています。

 

参考:インドネシア紙パルプ大手とブラジル牛肉大手への銀行別融資・引受額と方針得点

(「森林と金融 2022年方針評価」ブリーフィングペーパーより)

  • ●MUFGとみずほは、APP社(シナルマス・グループ)とエイプリル社(RGEグループ)の大きな債権者である。APPとエイプリルは自社パルプ工場の生産能力拡大を計画し、インドネシアの泥炭地と熱帯林への負荷の高まりが懸念されている(注5)。
  • ●みずほは紙パルプ部門で火災・人権基準を盛り込んだ融資・引受方針を設けているものの、2016年から2022年9月に12億ドルもの融資・引受を行なっている。これはインドネシア4行とHSBCに次いで6番目に多い金額であり、同行の方針の実施状況が疑問視される。

  • ●ブラジル牛肉部門はアマゾンでの森林破壊の要因となっている。GPIFが投資しているブラジル牛肉大手3社は、10年以上前に署名した森林破壊ゼロの約束を実行できず、いまだにサプライチェーンに森林破壊がないことを保証できていない。 

注1)「森林と金融」データベース(英語日本語
銀行方針評価まとめ(英語、「総合得点(Weighted Total)」で「降順/昇順」を選択)
「森林と金融 2022年方針評価」ブリーフィングペーパー(2022年10月発行)
「森林と金融」構成団体:レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、プロフンド(Profundo)、TuKインドネシア、バンクトラック、アマゾンウォッチ、レポーターブラジル、サハバット・アラム・マレーシア(国際環境NGO FoE Malaysia)、FoE US

注2)IPCC 『土地関係特別報告書』(英語)
参考:環境省「IPCC 『土地関係特別報告書』の 概要」、2020年度

注3)GPIF以外の、60位以下の日本の金融機関
日本生命保険(62位、1.9ポイント)、オリックス・コーポレーション(71位、1.5)、群馬銀行(81位、1.0)、地方公務員共済組合連合会(132位、0.2)、公立学校共済組合(0ポイント)

注4)方針評価の方法論:200の大手銀行・投資機関の公開されている方針を環境・社会・ガバナンス(ESG)の3分野35項目の基準で採点・分析。各金融機関が基準項目に明確に取り組み、対象企業とサプライヤーに基準を適用していれば10点、サプライヤーに基準が適用されていないなど部分的遵守は8.5点とした。そして35項目の合計得点を0から10ポイントに標準化した。また産品別でも採点され、各金融機関の投融資額の合計に各産品事業が占める割合を算出し、加重平均の上、合計した数字を総合得点とした。

評価基準35項目の概要:

  • ●環境分野(10項目):森林破壊禁止、泥炭地開発禁止など
  • ●社会分野(10項目):先住民族や地域コミュニティの権利尊重(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則の実施)など
  • ●ガバナンス分野(15項目):投融資の透明性、汚職規制、情報開示など

注5)参考:RANブログ「MUFGとみずほが「ネットゼロ」不履行、 インドネシア紙パルプ大手の事業拡大に資金提供」、2022年1月31日

 

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-4F
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:新調査報告書『炭素爆弾スキャンダル』発表 〜日清食品など大手消費財企業、インドネシア違法パーム油との関連性が継続〜 (2022/9/22)

スマトラ島「ルーセル・エコシステム」の野生生物保護区で追加調査

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は19日(現地時間)、ニューヨーク市で開催中の「気候週間」に合わせ、新報告書『炭素爆弾スキャンダル:パーム油で気候危機を起こす消費財企業』(注1)を発表しました。インドネシアでの現地調査などの結果をまとめ、大手消費財企業は森林保護方針があるにもかかわらず、保護区内の泥炭林を破壊して違法栽培されたパーム油との関連性が依然として続いていることを明らかにしました。

写真:違法アブラヤシ農園のために破壊された泥炭林、インドネシア アチェ州、2018年撮影

RANは今年5月、2019年に続いて(注2)インドネシアのスマトラ島で現地調査を行い、国の保護区である「ラワ・シンキル野生生物保護区」の泥炭地でパーム油が新たに違法生産されている実態を突き止めました。本報告書では2件の違法農園に焦点を当てて追跡調査を行い、大手消費財企業10社のサプライチェーン調査も実施しました。

その結果、日清食品、プロクター&ギャンブル(P&G)、ネスレ、ユニリーバなどの調達先が、同保護区内からの違法パーム油を購入していたことが判明しました。また、花王は違法パーム油の調達を継続している企業と取引を続けていることも分かりました。以上の結果から、問題のあるパーム油がグローバルサプライチェーンに依然として流入している現状が明らかになりました。同保護区は世界的に貴重な熱帯低地林「ルーセル ・エコシステム」の南部に位置します。

【調査概要】

■調査時期:2022年5月

■調査地域:インドネシア・スマトラ島の「ルーセル・エコシステム」内、国の保護区「ラワ・シンキル野生生物保護区」および周辺

■調査方法:現地調査、衛星画像分析(違法農園および森林・泥炭林減少の確認)、サプライチェーン追跡調査(アブラヤシ農園から搾油工場を追跡。製油企業・消費財企業の調達先リストを分析)

■調査対象消費財企業10社:日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース(注3)

■事例概要

事例1)南アチェ州の実業家 Mr. Mahmudin氏が管理する違法農園(写真)

●違法農園で収穫されたアブラヤシ果房が仲介業者を通して、同保護区近くにあるパーム油搾油工場2社、PT. Runding Putra Persada (PT. RPP)とPT. Global Sawit Semesta(PT. GSS)に購入された領収書を記録。

●消費財企業7社(コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、P&G、ユニリーバ)の調達先搾油工場一覧に、上記2工場の記載が確認された。

●PT. GSSは、2019年の調査でも違法パーム油の購入が確認されている。しかし花王の合弁会社かつ調達先であるパーム油企業であるアピカル(ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ)は、同工場との取引を継続している(注4)

事例2)アチェ州の女性実業家 Ibu Nasti氏が管理する違法農園(11ヘクタール、東京ドーム2.3個分。以下の地図を参照)

●収穫されたアブラヤシ果房が仲介業者を通して、同保護区近くにあるパーム油搾油工場のPT. Bangun Sempurna Lestari(PT. BSL)に購入された領収書を記録。

●消費財企業6社(日清食品、P&G、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、ユニリーバの調達先搾油工場一覧(注5)に、PT. BSLの記載が確認された。

●PT. BSLで搾油されたパーム原油は、北スマトラ州ベラワン港に製油所を持つパーム油大手ムシムマス社に直接供給された。同社は米国、ヨーロッパ、日本、中国など世界中にパーム油を輸出している。

不二製油の搾油工場一覧には事例1と2で問題となっている搾油工場3社が記載されていることから、違法パーム油を調達しているといえる。

図:Ibu Nasti氏の農園地図。違法に森林が伐採・排水された農園(●)が保護区内(紫網掛け)に位置していることがわかる。収穫されたアブラヤシ果房は集積場所(水色●)に運ばれ、その後、搾油工場へ供給される

 

RAN日本代表の川上豊幸は「ルーセル・エコシステムは泥炭地を含む熱帯低地林で、いわば大きな炭素の貯蔵庫です。また、絶滅危惧種のスマトラオランウータンとスマトラゾウを絶滅から救う最後の砦でもあります。ラワ・シンキル野生生物保護区をパーム油のために破壊し、違法なアブラヤシ生産を見過ごすことは『炭素爆弾』に火をつけるようなものです」と警鐘を鳴らしました。事例2で、違法パーム油との関連が指摘された日清食品のウェブサイトには以下の点が明記されています(注6)

・「国内の油脂メーカーの調達先である一次精製工場やその先の搾油工場で、現地の法律に違反した行為が行われていないことを油脂メーカーとともに確認しています」

・「持続可能であると判断できるパーム油調達の比率を2030年度までにグループ全体で100%」にする

川上は「今回の調査で、日清食品が調達する搾油工場の一つに違法なパーム油が調達されていたことが判明しました。日清食品はこれを機に、農園までのトレーサビリティ確認、サプライヤーの厳格なリスク評価やモニタリング、『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針』の遵守について、直ちに尽力する必要があります」と強調しました。RANは、気候変動と生物多様性保護は喫緊の課題であることから、同社に持続可能なパーム油調達100%の目標の前倒しを求め、オンライン署名「日清さん、2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!」を2020年から実施しています(注7)

本報告書は、ニューヨーク市で開催中の「気候週間」と、22日開催のコンシューマーグッズフォーラム(CGF)会合に合わせて発表されました。『炭素爆弾スキャンダル』という題名は、炭素を多く含む泥炭林が伐採および排水されると長期にわたって膨大な量の二酸化炭素を排出することから「炭素爆弾」という呼び名があることに因んでいます。上記消費財企業はCGF会員企業であり、森林破壊禁止や、森林を回復軌道に乗せるための「フォレストポジティブ」を公約していますが、問題のあるパーム油との関係を断ち切れていません。RANは消費財企業に対して、問題企業との取引停止を強く求めています(注8)

 

「ルーセル・エコシステム」、「シンキル・ベンクン地帯」について

シンキル・ベンクン地帯は、ルーセル・エコシステムの南部に位置する、生物多様性の世界的なホットスポットです。地中深くに炭素を豊富に含む泥炭地であることから、貴重で効果的かつ自然の炭素吸収源として世界でも重要な場所です。一帯にはラワ・シンキル野生生物保護区、シンキル泥炭地、クルット泥炭地、そして近接する熱帯低地林が含まれます。この地帯は絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、トラの重要な生息地であり、世界で最も優先して保全されるべき場所の一つです。一帯はオランウータンの生息密度が世界で最も高く「オランウータンの首都」とも呼ばれてきました。泥炭林は一度伐採され、排水されると、泥炭土壌は「炭素爆弾」となり、何年にもわたって膨大な量の二酸化炭素を排出します(注9)。そのため、本報告書で示されている泥炭地の破壊は、生態系、そして気候変動においても重大なリスクです。

参考「ルーセル・エコシステムをまもる

*詳細は報告書(英語)をご参照ください。また、高解像度写真、ドローン映像、現地調査およびサプライチェーン調査による証拠をご要望の際はご連絡ください。

 

注1)RAN報告書(英語)『炭素爆弾スキャンダル:パーム油で気候危機を引き起こす消費財企業』(Carbon Bomb Scandals: Big Brands Driving Clomate Disaster for Palm Oil)
https://www.ran.org/wp-content/uploads/2022/09/Rainforest-Action-Network-Leuser-Report-FINAL-WEB.pdf

注2)RANプレスリリース「三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜」、 2019年10月18日
https://japan.ran.org/?p=1522

注3)消費財企業10社は、RANが2020年4月から展開する「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーンの対象企業である。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行17社に行動を起こすよう要求している。
https://japan.ran.org/?p=2011

注4)花王の搾油工場一覧(ミルリスト、2022年9月22日最終閲覧)、各社の一覧は報告書で確認のこと。

2021年版(報告書で使用)
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/progress-2020-001.pdf

2022年上半期
https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/progress-2022-001.pdf

注5)日清食品の搾油工場一覧(2022年9月22日最終閲覧)、同上。
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/pdf/PalmOilMills_2021.pdf

注6)日清食品「持続可能な調達」
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/

注7)RANプレスリリース:日清食品に新署名開始「2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!」(2020/11/13)
https://japan.ran.org/?p=1730

注8)RANは、今回の報告書で違法パーム油との関連性が確認された消費財企業10社に対し、透明性があり検証可能な森林および泥炭地のモニタリングシステム、パーム油サプライチェーンにおけるトレーサビリティ管理システム、そして「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE:No Deforestation, No Peatland and No Exploitation)遵守システムが確立されるまでは問題ある供給業者からの調達を即時停止することを求めている。

注9)熱帯泥炭林が地面に貯蔵している炭素は 1ヘクタール当たり約2600 炭素トン(t-C)である。2015年のインドネシアでの大規模泥炭地火災は、米国経済全体の合計よりも多くの二酸化炭素を大気中に放出したが、その火災の理由は主にアブラヤシ農園の開発とパルプ材植林地である。シンキル・ベンクン地帯のシンキルとクルットの泥炭地で火災が発生した場合、同地域の二酸化炭素の排出量だけで、インドネシアの年間総排出量の最大で7%に相当すると推定されている。そうした場合、パリ協定の約束を果たす同国の実行力を損なう可能性がある。

※出典:RAN「The Last of the Leuser Lowlands」(2019年)、「森林と金融調査レポート:投資家には責任がある」(2017年)
http://www.ran.org/wp-content/uploads/2019/09/Leuser_Watch_Singkil-Bengkung_2019.pdf

http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2017/06/RAN_Every_Investor_Has_A_Responsibility_June_2017_JP.pdf

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org