サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘プレスリリース’カテゴリーの記事一覧

NGO共同声明:三菱UFJ、石炭火力向けプロジェクトファイナンス残高ゼロ目標 (2020/10/16)

依然パリ協定と整合せず、邦銀の遅れ目立つ

(English follows Japanese)

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)がサステナビリティレポートを公表し(注1)、「2019年度末時点で3,580百万米ドルの石炭火力発電向けプロジェクトファイナンスの貸出金残高を2030 年度に2019 年度比 50% 削減、2040年度を目途にゼロにする(但し、MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークに基づき、脱炭素社会への移行に向けた取り組みに資する案件は除外)」との目標を掲げました。これは、本年4月および7月にそれぞれ同様の目標を掲げた、みずほフィナンシャルグループ(注2)、三井住友フィナンシャルグループに続いての発表であり、邦銀大手3行の足並みが揃った形となります。

 これは一定の前進ではあるものの、気候危機の緊急性を鑑みれば、不十分な目標設定としか言わざるを得ません。早急にさらなる厳格な目標設定と方針改訂が求められます。MUFGも署名している国連責任銀行原則(PRB)では、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)にビジネス戦略を整合させることが謳われていますが、この度MUFGが掲げた目標は、時間軸の長さ、並びにスコープの狭さの両面で大きな問題があります。また、邦銀の石炭方針は、海外の金融機関と比べても依然低い評価に留まっています(注3)。

 最新の科学によれば、パリ協定の1.5度目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。償還期間を過ぎても何十年も石炭火力発電所が稼働し続けることを鑑みれば、与信残高ゼロはより早期に達成される必要があります。また、今回の目標では依然として、新規の融資契約の余地が残されています。新規の石炭火力発電所は、世界中で1基たりとも建設の余地のないことが科学的にも明らかとなっていますが、邦銀によるブンアン2(ベトナム)などの新規融資検討が懸念されています。同事業はパリ協定の目標と整合しないだけでなく、経済合理性の欠如、現地の環境汚染や住民への人権侵害など、様々な問題が指摘されています。新規石炭火力発電事業への融資を例外なく停止する方針を早急に掲げるべきです。

 また、スコープをプロジェクトファイナンスに限定し、コーポレートファイナンスを対象外としていることも問題です。石炭採掘を含む石炭火力のバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンス(注4)も対象に含めるべきであり、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を掲げるべきです。海外では、顧客にパリ協定に整合的な時間軸での移行計画の提出を求めるエンゲージメントを行い、計画が不適格であればダイベストメントするという流れが加速しています。これは一例ですが、エンゲージメントを効果的に行うためにも、まず金融機関がパリ協定に整合的な戦略・目標のロードマップを示す必要があります。注5

 さらに、石炭火力だけでなく、炭素排出量の多い他の化石燃料関連事業や土地利用に関わる(注6)事業および企業に対する資金提供の停止や残高削減の方針も掲げるべきです。

注1) https://www.mufg.jp/dam/csr/report/2020/ja_all.pdf

注2) 4月公表の同グループの方針では、2050年までの目標設定だったが、6月に開催された年次株主総会で2040年を目処に達成できるという趣旨の発言がなされた。

注3) 欧州やアメリカ、シンガポールの銀行と比べても邦銀の石炭方針は低い評価となっている。https://coalpolicytool.org/ 
(参考:https://world.350.org/ja/press-release/200908/

注4) 石炭火力発電への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業向けの融資、株式や債券の引受・投資など。

注5) パリ協定と整合的な目標設定とロードマップを示そうとしている例として、仏BNPパリバの取り組みが挙げられる。https://350jp.org/tcfd/

注6) IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の2019年「土地関係特別報告書」(https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/190809.html)では、農業、林業、その他土地利用による排出量が、人間活動による排出量の約23%を占めており、このうち、熱帯林減少による排出量が最も問題であるとされた。http://japan.ran.org/?p=1517

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 渡辺瑛莉 japan@350.org

‘Inadequately aligned with Paris Agreement, Mitsubishi UFJ Financial Group lags far behind its international peers’

No Coal Japan coalition responds to banking giant’s new climate goals

Joint Press Statement
October 16, 2020

350.org
Kiko Network
Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Friends of the Earth Japan
Mekong Watch
Rainforest Action Network
Greenpeace Japan

Japan — Today, Mitsubishi UFJ Financial Group (MUFG), the largest banking institution in Japan, released its Sustainability Report (Japanese version only), stating its goal of erasing US$3.58 billion loan balances for coal-fired power projects by 2040. This announcement follows those of its Japanese peers, Mizuho Financial Group and Sumitomo Mitsui Financial Group, which set the same goal in April (1) and July this year respectively.

In response to the announcement, the No Coal Japan coalition, formed by several civil society groups, including 350.org, Kiko Network, JACSES, FoE Japan, Mekong Watch, Rainforest Action Network and Greenpeace Japan, said:

“While this is a step forward for MUFG, this goal is inadequate given the urgency of the climate crisis, and the impact of coal-fired power plants and other fossil fuels on health amidst the COVID-19 pandemic. There is an urgent need for stricter goal setting and fundamental policy revisions in Japan’s financial sector.

The standard of Japanese banks’ coal policies including MUFG remains low as compared to overseas financial institutions. MUFG is also one of the signatories of the UN Principles for Responsible Banking (PRB), which stipulates that the signatory banks should align their business strategies with the Paris Agreement and the Sustainable Development Goals (SDGs).

The goal set by MUFG is problematic in both a lengthy timeline and narrow scope. According to the best available science, coal-fired power plants need to be completely shut down by 2030 in developed countries and by 2040 in the rest of the world to limit the warming of the Earth to1.5 degrees, aligning with the Paris Agreement. Given that coal-fired power plants will continue to operate for decades beyond the redemption period, a zero-loan balance needs to be achieved much sooner.

In addition, the goal still leaves room for financing new coal fired power projects. It is scientifically clear that there is no room for the construction of any new coal-fired power plant in the world. However, there are concerns that Japanese banks are considering new loans such as the coal-fired power station Vung Ang 2 in Vietnam.

“Not only is the project inconsistent with the goal of the Paris Agreement, it lacks economic profitability, and will pollute the local environment and violate the basic human rights of the local communities. To align with Paris goals, MUFG should urgently put in place a policy to suspend financing for all the new coal-fired power projects without exception.

The scope of the goal set by MUFG is limited to project financing and not applied to corporate financing. Corporate financing (2), which covers the entire value chain of coal-fired power including coal mining, should be included along with a phase-out strategy with a timeline consistent with the Paris Agreement. Internationally, there is an accelerating trend where banks ask their customers to submit a transition plan on a timeline consistent with the Paris Agreement, and divest from clients with inadequate transition plans. To effectively facilitate this process, financial institutions must first set a roadmap of strategies and goals that are consistent with the Paris Agreement.

Furthermore, in addition to coal-fired power, policies to stop funding other high carbon emitting sectors such as other fossil fuel sectors and land-use-related sectors (3), and targets to phase-out from those sectors should be put forward.

Notes to editors:

(1) In April, Mizuho Financial Group announced its goal of erasing its outstanding credit balance for coal-fired power projects by 2050. However, during its Annual Shareholders’ Meeting in June 2020, the group commented that this goal could be achieved by 2040.

(2) Loans, underwritings, equity and bond investments for companies heavily reliant on coal mining/coal-fired power and companies who have expansion plans for new coal mining/coal-fired power plants and related infrastructures.

(3) According to the IPCC Special Report on Climate Change and Land (2019), emissions from agriculture, forestry and other forms of land use make up 23% of total emissions from human activities, with deforestation in tropical regions being singled out as the biggest carbon emitter from the land-use.

Contacts:
Asia Pacific: Nicole Han, +65 9828 1538, nicole.han@350.org
Global: Nathalia Clark, +55 61 991371229, nathalia@350.org

プレスリリース:花王と三菱UFJ、インドネシア「ルーセル・エコシステム」森林破壊に加担 (2020/9/29)

取引先 RGEグループが森林破壊企業からパーム油調達

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、インドネシアで現地調査を実施し、スマトラ島の貴重な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」での森林破壊に、花王と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が加担していることを明らかにしました注1)。「ルーセル・エコシステム」はアジア最大の熱帯林の一つで、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが共存する、地球で最後の場所です。

ルーセル・エコシステムで造成作業をする掘削機、インドネシア ・アチェ州、2020年6月10日

本調査では、花王のパーム油サプライチェーンにある搾油工場が、「ルーセル・エコシステム」で森林破壊を起こしている生産者から調達していることが明らかになりました。同搾油工場は、花王が合弁事業をもつアピカルの子会社のパーム油精製工場にも供給しています。アピカルは複合企業ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループのパーム油子会社で、RGEグループはMUFGの顧客企業です。この生産者はこの地域で事業を行う企業で最も悪質な一社で、同社の皆伐率は過去半年で3倍になり、新型コロナウイルスの発生以来、同地域で急増する森林減少の証拠を示しています。

RGEグループ子会社のアピカルは、国内日用品・化粧品大手の花王と合弁会社を持っています注2)。花王は「森林破壊ゼロ」方針を日本で初めて採用し、国内の消費財メーカーでは先駆者的な存在と見なされています。花王はパーム油調達先の搾油工場リスト(2019年版)を公開しましたが(注3)、上記搾油工場の PT. SS が含まれ、同搾油工場から調達している可能性があります。花王がサプライチェーン全体で「森林破壊ゼロ」方針をしっかりと実施するためには、取引関係の見直しを含む迅速な対応が必要です。

また、不二製油と親会社の伊藤忠グループの搾油工場リストにもPT. SSが含まれていることから、日清食品を含む日本企業でも国内および海外での製造に問題あるパーム油が使われているリスクがあります。日清食品は、持続可能なパーム油調達で遅れを見せていましたが、今年8月に「森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止方針」への支持を表明したばかりです(注4)。花王およびMUFGとともに日清食品は、RANが2020年から開始した「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーンで注力している日本企業です(注5)。

RGEグループは、多国籍銀行から紙パルプ事業に2017年から2020年4月の期間で26億米ドル近くの融資を受け、そのうち18億ドルが同グループの紙パルプ企業であるエイプリル社に向けられました。MUFGはRGEグループへの最大の貸し手の一つです。MUFGは国連「責任銀行原則」(PRI)の署名銀行(注6)で、かつ、持続可能なパーム油への資金提供についての方針を制定しているにもかかわらず、同グループに7件の融資をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「日本の消費財企業や銀行の評判は、RGEグループとの提携や取引によって、深刻なリスクにさらされています。 花王、日清食品、三菱UFJは、RGEグループの『森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止方針』の遵守が確実になるまで、グループ企業や関連会社、合弁会社からの原料調達の停止と、同様に資金提供を停止する必要があります」と訴えました。

RGEグループは、インドネシアの「タイクーン」(大物実業家)であるスカント・タノトが設立した企業グループです。 子会社が管理するアブラヤシ農園とパルプ材植林地造成のために広大な地域を大々的に開発してきたことから、長年にわたって森林破壊との関わりが指摘されてきました。本調査で判明したアピカル社と「ルーセル・エコシステム」の森林破壊とのつながりは、同グループがグローバル・サプライチェーンで「森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止」(NDPE)基準を遵守できなかった一例にすぎません。このような問題が繰り返し起きるのは、RGEグループが方針を遵守していないにも関わらず、顧客企業や合弁事業パートナーが取引を続け、金融機関が資金提供を続けている実態があります。同グループが方針を強化して生産および調達を実践するまで、上記企業は取引を停止することが必要です。

さらに、同グループ紙パルプ部門のエイプリル社が保有するパルプ材植林地だけでも、500以上の地域コミュニティに悪影響を及ぼしています。今も 100を超える地域コミュニティが同グループや調達企業と対立中、あるいは対立したことがあります。例えば、先住民族のバタク族が先祖代々の土地としてきた北スマトラのトバ湖地域では、20以上の地域コミュニティで3,000以上の家族が、トバ・パルプ・レスタリのパルプ事業で被害を受けています。上記のコミュニティの多くは土地を取り戻すための抗議を続け、森林と慣習的に利用している土地は2万5千ヘクタールにもおよびます。

【調査結果】
●RANの現地調査員は、RGEグループのパーム油精製所が、問題ある生産者からのパーム油を、PT. Syaukath Sejahtera(PT. SS)という搾油工場経由で購入していることを突き止めた。この問題ある生産者PT. Tualang Raya(PT. TR)は、ルーセル・エコシステムで事業を行う企業でも最も悪質な一社で、同社の皆伐率は過去半年で3倍になった。

●2020年6月、PT. TRの事業許可地に掘削機が見つかり、同社がルーセル・エコシステムで土地を造成していたことの証拠となった。調査員はまた、同社の事業許可地で栽培され収穫されたアブラヤシの実がPT. SSの運営する搾油工場に輸送されるのを目撃した。

●調査により、PT. TRからパーム油を調達しているPT. SSの搾油工場は、アピカルの子会社であるPT. Sari Dumai Sejati Tangki Timbun が操業する精製所のサプライヤーであるという証拠が示された。 アピカルは、RGEグループのパーム油企業の1社である。

注1)RAN報告書(英語)「Royal Golden Eagle Group Links Global Brands and Financiers to Deforestation In the Leuser Ecosystem」、2020年9月21日
https://www.ran.org/leuser-watch/group-links-global-brands-and-financiers-to-deforestation-in-the-leuser/

注2)アピカル「サステナビリティレポート 2018」(英語)

注3) 花王「2019年の進捗:「持続可能なパーム油」の調達ガイドラインの進捗 目標1」(2020年9月21日閲覧)

注4) RANプレスリリース「日清食品、パーム油調達で森林破壊・泥炭地開発・搾取ゼロを約束〜「正しい方向への一歩」と歓迎、ただし達成目標2030年度では遅すぎる〜」、2020年8月20日

注5) RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」、2020年4月1日

注6)国連「責任銀行原則」(PRI)の署名銀行(英語)

【10月13日追記】

●訂正:「花王は2019年、パーム油調達先の搾油工場リストを公開」とありましたが、正しくは「パーム油調達先の搾油工場リスト(2019年版)を公開」でした。

●「注3」に閲覧日を追加しました。

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:『森林と金融』グローバルのデータベース発表〜パリ協定後、森林破壊企業に1,500億ドルの資金が流入〜(2020/9/2)

紙パルプ、パーム油部門等、世界三大熱帯林での合計額を初分析〜銀行の資金提供額でみずほ世界5位、三菱UFJはパーム油部門で上位一行に〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他5団体は、9月1日に『森林と金融』データベースの調査範囲を東南アジア限定からグローバルに拡大し、日本の3メガバンクを含む世界の銀行が、2016年以降、世界三大熱帯林分布地域での森林破壊と土地劣化を加速させている産品の生産や取引に約1,540億米ドルの融資と引受を行ったことを明らかにしました1

『森林と金融』は、東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地を含む)における紙パルプやパーム油などの産品への資金流入を包括的に分析した初のデータベースです。データ分析の結果、銀行による対象事業への融資と引受はパリ協定が締結された2015年12月以降も40%増加し、同時に、機関投資家が370億米ドルの資産を対象企業の株式や債券で保有していることが分かりました(2020年4月時点、対象事業を特定して計算)。今年もインドネシアやアマゾンで森林火災が発生し、煙害や健康被害の不安が高まる中で新型コロナウイルスの感染拡大が重なることから、金融機関の責任が問われます。

【概要】
RANを含む6団体で構成される「森林と金融連盟」による共同プロジェクト。世界三大熱帯林地域で、森林に影響を及ぼす事業を行う企業約300社へ流入する資金を明らかにするオンラインツール。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年度、部門別に検索が可能。
●対象事業地域:東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地含む)
●対象産品:紙パルプ 、パーム油、牛肉、大豆、天然ゴム、木材
●対象期間:2013年から2020年4月

 【主な分析結果】
●パリ協定締結以降、森林に影響を及ぼすリスクのある事業に流れた融資・引受は1,540億米ドルにのぼり、その約60%が15銀行のみで占められている(※)

●上記15銀行のうち8行が、3メガバンクも含め、国連の「責任銀行原則(PRB)」の署名企業で、銀行の事業戦略を「パリ協定」と「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿ったものとすることを約束している。特にSDGs目標15では「2020年までの森林減少阻止と劣化した森林の回復」をターゲットにしている。

●資金の流れは、ブラジル、中国、インドネシア、マレーシア、米国、日本の銀行からが大きい。この分析結果は、金融セクターを世界の環境および社会的優先事項に合致させるために必要な規制と企業方針が不足していることを表している。

●全体で、ブラジル銀行が最大の資金提供者である。2016年以降、森林リスクのある産品事業に300億米ドルを提供したが、ブラジルで事業を行っている企業にほぼ限定。牛肉、大豆、紙パルプ事業に資金提供されている。

●みずほフィナンシャルグループ(みずほ)は全体で世界5位で55億米ドルの融資・引受を提供。紙パルプへの資金提供が大半を占めている。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG )の融資・引受額はそれぞれ29億米ドルで13位、14位とつづいた。MUFGはパーム油部門で世界最大の資金提供者の一つである。

【背景】
様々な多国間方針や業界の方針が森林破壊ゼロを約束しているにも関わらず、熱帯林の消失面積は過去10年間でほぼ倍増した。主な原因は農業目的の皆伐で、多くの場合が不法に行われ、汚職、脱税、組織犯罪と深いつながりがある。森林を犠牲にして生産される産品は総称して「森林リスク産品」と呼ばれ、牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材が含まれる。2019年だけで1,190万ヘクタールの熱帯林が失われた(注2)。国連環境計画によると、森林破壊および関連する野生生物の生息地喪失は、新型コロナウイルスのような人獣共通感染症の出現における重要な要素となっていながら(注3)、コロナ感染拡大中、森林破壊は50%以上も増している(注4)。融資と引受、そして投資は森林破壊に責任がある企業の事業拡大と日々の事業に非常に重要である。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「いま、世界に残る最後の熱帯林では、意図的な火入れが原因で火災が起きています。紙やパーム油などの産品を生産する農地開墾のために『安価な』方法として火が使われているからです。日本のメガバンクは、顧客企業の農業生産事業が森林火災に拍車をかけていることを知りながら資金を提供し、化石燃料に資金を提供することによって気候危機と火災のリスクを悪化させています。このような資金提供は、PRBに署名した際の約束と合致していません」と指摘しました。

RANは同日、MUFGのアメリカ本部前(ニューヨーク市マンハッタンの大通り「アベニュー・オブ・ザ・アメリカス」)で、同社に熱帯林火災への資金提供を止めるよう求めてアピール行動を行いました。ハイネケンは「三菱UFJはパーム油産業への世界最大の資金提供者の一つです。パーム油産業は継続的な森林や泥炭地の破壊と、インドネシアで毎年起こる森林火災に大きな責任があります。しかし、三菱UFJのパーム油に関する与信方針は森林や泥炭地、人権を十分に保護していなく、さらにインドネシア現地の子会社であるバンク・ダナモンには適用されていません。三菱UFJにESG方針の早急な強化を求めます」と強調しました。

Photo by Erik McGregor for Rainforest Action Network

TuKインドネシア事務局長 エディ・スカルノ氏は「インドネシアで事業をする銀行と機関投資家は、森林破壊、泥炭地破壊、人権侵害に、顧客企業の事業を通して日常的に資金提供をしています。しかし銀行は、毎年のように大きな健康被害をもたらす煙害(ヘイズ)を含め、自社事業の直接的な影響を市民、そして株主や規制当局に開示していません」と批判し、「金融セクターの監視を強化し、銀行にはより厳しい貸付基準の導入を強いるといった、緊急の改革が必要です」と続けました。

ブラジルの環境保護団体アマゾン・ウォッチ プログラム・ディレクター クリスチェン・ポワイレ氏は「アマゾン先住民族の人々は、壊滅的な火災の季節に、新型コロナウイルス感染拡大による犠牲者が出る悲劇にも直面しています。ブラジルのアマゾン全域で発生した火災は、過去10年間で最も多く、先住民族の土地で昨年以降は77%も増加しています。この急激な増加は、非合法な森林破壊と、森林にリスクを及ぼす産品生産による火入れの産物で、大手グローバル金融機関によって資金が提供されています。世界の銀行と投資家には、『森林と金融』データベースは災害の共犯者を明らかにしていると伝えたいです」と訴えました。

※15銀行の一覧は別紙「【世界】上位15銀行 部門別の融資と引受」を参照ください。

注1)「森林と金融」ブリーフィングペーパー(2020年9月更新版)

「森林と金融」データベース

方法論:各熱帯林分布地域で森林破壊や土地劣化のリスクを及ぼす事業を行う企業を特定した上、同企業の生産、一次加工、貿易、製造部門に流れる投融資として合理的に考えられる金額を計算しています。

協力団体:レインフォレスト・アクション・ネットワーク、TuKインドネシア、プ ロフンド(Profundo)、レポーターブラジル、アマゾン・ウォッチ、バンクトラック

注2)世界資源研究所、“We Lost a Football Pitch of Primary Rainforest Every 6 Seconds in 2019”、2020年6月2日

注3)国連環境計画、“Preventing the next pandemic – Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission”、2020年7月6日

注4)フィナンシャルタイムズ、“Global deforestation accelerates during pandemic: Tree cover losses increase 77% as collapse in economies pushes exploitation of resources”、2020年8月9日

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※追記:「森林と金融」ブリーフィングペーパーへのリンクを追加しました(2020年9月4日)

プレスリリース:三菱UFJ、他大手銀行・消費財企業、インドネシア「紛争パーム油」生産に加担(2020/8/28)

地域住民から略奪された土地で生産

インドネシアーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、インドネシアNGO2団体、LBHバンダアチェとWalhi(ワルヒ)アチェと現地調査を行い、大手パーム油企業ゴールデン・アグリ・リソーシズ(GAR)が地域住民の土地権を侵害して生産された「紛争パーム油」を大手消費財企業に供給していることを明らかにしました(注1)。GARの供給先にはネスレ、マース、モンデリーズ、ペプシコ、ユニリーバなどが含まれます。また、GARは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の顧客企業であり、MUFGはESG(環境、社会、ガバナンス )方針で違法事業への融資禁止などを約束していることから、自社方針違反についての対処が求められます。

土地を守るために村に残った、パンテ・チェルミンの人々

今回の調査によって判明したのは、GARと別の1社(Permata Hijauグループ)を通じ、問題となっているパーム油企業 PT. Dua Perkasa Lestari (DPL、注2)の紛争パーム油が供給されたという点です。DPL社はパンテ・チェルミン村(アチェ 州西南アチェ県)のコミュニティとの間に数十年にわたる未解決の紛争があり、以下の紛争が調査で明らかになりました。

 ●DPL社は、最初の事業地で適切な事業許可を取得していなかった
 ●コミュニティが慣習的に利用してきた土地の収奪が記録されていた
 ●DPL社はコミュニティから「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得ず、住民たちの農作物に壊滅的な被害を与えた
 ●DPL社はコミュニティの人々を脅迫して立ち退かせるために、インドネシア総務省の方針に違反して、軍隊を組織的に使用した、など。

LBHバンダアチェ ディレクターのSyahrul氏は「DPL社の事業許可が2008年に発行されて以来、地域コミュニティは自分たちの土地から強制的に立ち退かされる脅威にさらされてきました。 住民のほとんどは経済的制約など様々な理由でそこで生活を続けることができませんでしたが、まだ多くの人が自分たちの土地のためにたたかうことを誓っています。 LBHは、この事件を西南アチェ県政府、アチェ州政府、アチェ州議会、インドネシア大統領府にも報告しましたが、紛争は解決されず、誰もコミュニティの土地権の申し立てを検証していません。新型コロナウイルス の感染が拡大する中、地域コミュニティの土地権を保護し、食料と生活を維持することはこれまで以上に喫緊の課題となっています」と訴えました。

MUFGは、2018年から2020年4月の間、DPL社から紛争パーム油を購入したGARとその子会社に対して合計3億ドルの融資を行っています(注3)。一方で融資などに関するESG方針を2018年に策定し、翌年にはパーム油部門への資金提供についての方針を追加しました。ESG方針の中で「違法または違法目的の事業」への融資の禁止、持続可能なパーム油事業の支援、そして「非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業」の場合は顧客企業の環境・社会配慮が十分であるか確認することを約束しています(注4)。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三菱UFJフィナンシャル・グループは、GARのような、自社およびサプライチェーンで繰り返し人権侵害を起こしている企業には融資すべきではありません。 GARへの融資は三菱UFJのESG方針に違反しています」と指摘しました。

消費財企業や銀行は、サプライチェーンにおける供給業者や融資先企業に対し、パンテ・チェルミン村の住民への土地返還が合意されるまで、DPL社との取引停止を求める責任があります。 ハイネケンは「三菱UFJフィナンシャル・グループは、GARが責任あるパーム油のみの調達を確実にするために、資金提供の必要条件として監視強化や、サプライチェーンのコンプライアンス管理体制強化を徹底させるべきです」と強調しました。

GARはインドネシアの大手財閥、シナルマス・グループのパーム油子会社で、創業家のウィジャヤ・ファミリーが支配しています。 シナルマスのパーム油部門は、2016年から2020年4月まで、インドネシアの銀行のバンクネガラインドネシア(BNI)、バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)、オランダの銀行のABNアムロ、MUFGなどから35億米ドルを超える融資と引受を受けました。これはDPL社による人権侵害と森林破壊の証拠がGARに提起されたのと同じ時期です。

DPL社の事業管理地は世界的に重要な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」内に位置し、同熱帯林には高濃度の炭素を蓄えた泥炭地があります。同社はその一つのトリパ泥炭地に事業地を保有し、パンテ・チェルミン村はトリパ泥炭地域にあります。

注1)詳細はこちら:“Major Brands and Banks Complicit in the Production of Conflict Palm Oil on Stolen Community Lands in Indonesia”(英語)

注2)アチェ州議員 Said Syamsul Bahri 氏が所有

注3)RAN「森林と金融」データベース

注4)「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:日清食品、パーム油調達で森林破壊・泥炭地開発・搾取ゼロを約束(2020/8/20)

〜RAN「正しい方向への一歩」と歓迎、ただし達成目標2030年度では遅すぎる〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日20日、日清食品ホールディングスが7日にパーム油調達方針(注1)で「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE、注2)の支持を明確に表明したことを受けて、「正しい方向への一歩」を踏み出したと歓迎しました。一方で、2030年度までに持続可能なパーム油のみを調達するという目標設定では、熱帯林および生態系保護、人権尊重において対応が遅く、高まる消費者の期待に応えることができていないと指摘しました。

日清食品のパーム油方針強化は、8月7日、同社のウェブサイト「持続可能なパーム油調達コミットメント」で公表されました。方針には責任あるパーム油生産に欠かせない国際基準である「NDPE」に沿った項目が含まれ、森林破壊や森林火災、そして炭素を豊富に含む泥炭地開発の禁止、また先住民族および地域住民の権利尊重と土地権侵害の禁止が明記されています。

RANはこれまで、食品・菓子企業20社を対象にパーム油調達方針強化と問題あるパーム油の排除を求めて「スナック食品 20キャンペーン」を2013年に開始しました。他社がNDPE基準に沿った方針を策定するなか、日清食品は対応が遅れ、今回の方針強化でその遅れにようやく対処する形になりました。また今年4月、新たに「キープ・フォレスト・スタンティング」キャンペーン(注3)を開始し、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」サプライチェーンでの森林破壊および人権侵害への対処において継続的な役割を果たす必要があり、かつ国際的に影響力のある消費財企業として10社を挙げました。日清食品はその1社ですが、キャンペーン開始時にNDPE基準を採用していなかった唯一の消費財企業でした。

RAN 日本代表部 川上豊幸は「日清食品は正しい方向に一歩進みました。アブラヤシ農園拡大の最前線にある地域コミュニティや森林保護にとって重要なのは、企業が策定した方針を即座に実行に移すことです。そうでないと、日清食品のパーム油調達が、世界的な生物多様性ホットスポットである『ルーセル・エコシステム』を含め、インドネシア各地に残る熱帯林の破壊を今後も引き起こす可能性があるからです」と警鐘を鳴らしました。また「喫緊の問題として、日清食品はパーム油を供給する全企業のリストを開示して、透明性を高めていくことが重要です。そして、絶滅危惧種のスマトラオランウータン、ゾウ、サイ、トラが生息できる最後に残された熱帯林であるルーセル・エコシステムの破壊について緊急に対処する取り組みを公表を含めて、新方針の実施状況を示さなければなりません」と指摘しました。

今回の方針改訂に先立ち、日清食品は新環境戦略 Earth Food Challenge 2030(注4)を6月に発表し、2030年度までに「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)認証パーム油と、自社の独自アセスメントにより持続可能と判断できるパーム油のみを調達するという目標を掲げました。

川上は「インドネシア各地で新型コロナウイルスの影響が悪化している時にも、日清食品のようなグローバル企業のパーム油サプライチェーンで森林減少や森林火災、人権侵害が拡大し続けています。人々の健康、気候危機、生物多様性の危機の規模と緊急性、そして自らの土地を守ろうとする住民への暴力の増大を総合的に考えると、2030年までに調達方針を実施するという目標は遅すぎ、断じて受け入れることはできません」と強調しました。

RANは今後、日清食品に対して、拘束力ある期限付きの実施計画の作成と公表を要請していきます。実施計画には、2030年ではなく、すぐに、同社製品が問題のあるパーム油をサプライチェーンに含まないことを確実にするための対応策の詳細も含めることが必要です。また、日清食品が調達しているRSPOパーム油は、いわゆる「持続可能な」パーム油と称される「マスバランス方式」です。追跡不可能で問題あるパーム油が認証油に混合されているため、森林減少や人権侵害との関係に対処していません。まだRSPOの保証システムは信用できないため、日清食品の方針の実施体制は供給業者の方針遵守状況を監視し、独立検証を行う必要があります。

方針強化に加え、日清食品は消費者の懸念に対応しました。同社がルーセル・エコシステムの熱帯林と泥炭地破壊を引き起こしている企業からパーム油を調達している疑いがあり、RANが実施した日清食品への署名には日本で約3万人が賛同しました(注5)、英語で実施した署名でもアメリカなど世界中で賛同が集まりました(注6)。また、RANの呼びかけに応えて日清食品ウェブサイトの問い合わせフォームに懸念や意見を寄せた日本の消費者もいました。こういった消費者からの声を受けて、日清食品は8月7日、ウェブサイトに文書(注7)を発表し、ルーセル・エコシステムを犠牲にして生産されたパーム油を同社に供給しているとRANが指摘してきた搾油工場・農園企業への対応状況の一覧(社名は非公開)を公開しました。この文書によって、問題あるパーム油をルーセル・エコシステムから調達していた企業が同社の搾油工場リストにあったという事実が確認され、今後も問題あるパーム油が調達される懸念は残ることになりました。

日清はNDPE基準支持を公表したことで、「ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム(TCGF)」の他の多国籍消費財企業にも追いつき、ようやく方針実施のスタートラインに立ちました。しかし、2020年までにパーム油、紙パルプ、大豆、牛肉生産のための森林破壊を終わらせるという自ら課した約束の期限は、日清食品だけでなく、TCGFの他の企業も守れそうにありません。森林を保護し、森林破壊の最前線にいる地域コミュニティの権利を尊重するには、より迅速な行動が必要です。日清食品は、日本および森林リスク産品グローバルサプライチェーン全体で行動を起こすために中心的役割を担っています。

RANは国内外の消費者とともに、日清食品に森林保護と、森林リスク産品の世界的消費によって影響を受けた地域コミュニティおよび労働者の人権を尊重するために迅速に対応するよう引き続き求めていきます。

「ルーセル・エコシステム」は、インドネシア・スマトラ島北部に位置し、まとまった形で残されたアジア最大の熱帯林地帯の一つです。約260万haの広大な地域に、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが大自然の中で共存する地球上で最後の場所です。

注1) 日清食品ホールディングス「持続可能な調達:持続可能なパーム油調達コミットメント」より抜粋:

日清食品グループは、NDPE (No Deforestation、No Peat、No Exploitation=森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ) を支持し、取引先等のステークホルダーの協力を得て、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油を調達します。
 ・保全価値の高い (HCV: High Conservation Value) 地域および炭素貯蔵力の高い (HCS: High Carbon Stock) 森林の保護、森林破壊ゼロ
 ・深さに関わらない泥炭地の新たな開発禁止
 ・植栽や土地造成、その他開発のための火入れ禁止
 ・先住民族・地域住民の権利尊重・土地権侵害の禁止
 ・RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議) が定める「原則と基準」の遵守
 ・農園まで含めたトレーサビリティの確認

注2)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略

注3)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」、2020年4月1日
消費財企業10社:日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース

注4)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略『EARTH FOOD CHALLENGE 2030』始動!」、2020年6月9日

注5)RAN署名「五輪スポンサー日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜問題あるパーム油を使わないで〜」、2019年8月21日開始

注6)RAN英語版署名「Olympic Sponsor Nissin Foods At Risk of Conflict Palm Oil」

注7)日清食品ホールディングス「2020年7月 当社商品の原材料(パーム油)調達に関する指摘について」2020年8月

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:三井住友が石炭火力への貸出残高ゼロ目標(2040年目途)を発表~依然パリ協定から乖離〜(2020/7/29)

SMBC Group announces it will reduce its credit balance of coal power project finance to zero by 2040, but it’s still not aligned with the Paris Agreement (English follows)

本日、三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)が統合報告書2020 (注)を公表し、2040年を目途に石炭火力発電向けの貸出金残高をゼロにするとの目標を掲げました。与信残高ゼロに向けた目標スケジュールの設定はみずほFGに続いて邦銀として2行目で、一定の前進を歓迎します。しかし、依然としてパリ協定の長期目標から乖離しており、更なる方針強化が必要です。

パリ協定の長期目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。しかし、2040年に与信残高をゼロにしたとしても、融資を行った石炭火力発電所はその後も運転することが想定されています。パリ協定の長期目標との整合性を確保するためには、返済完了後の運転期間も想定した上で、より早期の与信残高ゼロを達成することが求められます。

プロジェクト・ファイナンスの返済期間は通常15年程度と想定されることから、新方針は当面の間、新規の融資契約を行う余地を残しています。例えば、ブンアン2(ベトナム)やマタバリ5-6号機(バングラデシュ)がその余地に含まれていると考えられますが、これらの案件は、パリ協定の長期目標と整合しない他にも、支援対象国における電力供給過剰状態の深刻化や、再エネのコスト低下に伴う経済合理性の欠如、現地の環境汚染や住民への人権侵害など、様々な問題が指摘されています。したがって、これらの融資決定は行うべきではありません。

さらに、SMBCグループの新方針の対象は石炭火力発電のプロジェクト・ファイナンスのみに限定されており、石炭火力発電への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業向けの融資、引受、株式・債券投資については削減の対象としていません。気候危機を悪化させている石炭採掘や他の化石燃料関連事業、更に森林破壊についても、資金提供の停止や残高削減の方針は示されていません。これらの点で、海外金融機関の投融資方針の水準と比べると、依然遅れをとっています。

したがって、新規石炭火力発電事業への融資については、早急に例外なく停止する方針を掲げるとともに、石炭火力発電や石炭採掘への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業への投融資(企業融資、株式・債券の引受及び保有)から撤退する方針を掲げるべきです。また、科学的知見およびパリ協定の目標に基づき、石炭のみならず、炭素排出量の多い他の化石燃料産業や林業・農業関連企業への投融資の抑制方針を掲げることが重要です。SMBCグループには、さらなる方針の強化を求めます。

<脚注>
https://www.smfg.co.jp/investor/financial/disclosure.html

環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

本件に関する問い合わせ先
「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 田辺有輝 tanabe@jacses.org

July 29, 2020

SMBC Group announces it will reduce its credit balance of coal power project finance to zero by 2040, but it’s still not aligned with the Paris Agreement

On July 29, Sumitomo Mitsui Financial Group (SMBC Group) published its 2020 Annual Report (FY2019), and stated that it will reduce its credit balance of project finance related to coal-fired power generation to zero by 2040. We welcome SMBC Group’s step forward with its coal policy, which leads SMBC Group to be the second Japanese bank after Mizuho Financial Group for setting a timeline for reducing its coal-related credit balance to zero. However, the new policy still does not align with the Paris Agreement’s long-term goals, and needs to be strengthened further.

To achieve the Paris Agreement’s long-term goals, developed countries need to completely stop the operation of coal-fired power plants by 2030, and developing countries by 2040. Even if SMBC Group reduces its credit balance to coal-fired power generation to zero by 2040, the coal-fired power plants SMBC Group financed would likely continue to operate after 2040. In order to ensure consistency with the Paris Agreement’s long-term goals, SMBC Group needs to reduce the credit balance to zero earlier than 2040, taking into account the duration of operation of the coal plants after the loans are repaid.

Since the repayment period of project finance is usually expected to be about 15 years, the new policy leaves room for financing new coal-fired power projects for the time being. These would include, for example, Vung Ang 2 in Vietnam and Matarbari unit 5 and 6 in Bangladesh. However, these projects are already facing serious problems, including inconsistency with the Paris Agreement’s long-term goals, an excess supply of electricity in the host countries, the lack of economic justification due to the ever-falling costs of renewable energy, environmental pollution at the proposed sites, and human rights violations affecting local residents. Therefore, SMBC Group should not finance these projects.

Furthermore, the new policy of SMBC Group is only limited to project finance for coal-fired power plants, and does not cover corporate loans, underwriting, or investments in debt and equity of companies that are heavily dependent on coal-fired power generation or companies planning to build new coal-fired power plants or associated infrastructure. Also, there is no mention of any policy to terminate financing or reduce the credit balance of coal mining, other fossil fuel industries or deforestation, all of which accelerate climate change. In this respect, SMBC Group’s policy still lags behind the investment and loan policies of international financial institutions.

For the above reasons, we urge SMBC Group to establish a policy that immediately stops financing for all coal-fired power projects, without any exceptions. We also urge SMBC Group to declare a policy of withdrawing from loans and investments (corporate lending, underwriting and holding of debt and equity) for companies that are heavily dependent on coal (power generation, mining, etc.), and companies planning to build new coal-fired power plants or associated infrastructure. It is also important to establish policies that restrict financing of not only coal-related industries, but also other fossil-fuel-related industries as well as forestry and agribusiness companies, based on science and the Paris Agreement targets, as they are also major sources of carbon emissions. We call upon SMBC Group to further strengthen its policies and reflect the concerns indicated above.

Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Kiko Network
Friends of the Earth Japan
350.org Japan
Mekong Watch
Rainforest Action Network (RAN)

Contact:
Yuki Tanabe, Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Email: tanabe@jacses.org