サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘プレスリリース’カテゴリーの記事一覧

声明:世界初、ネスレ「森林フットプリント」開示を歓迎(2020/12/11)

インドネシア・パーム油サプライチェーンで影響を受ける森林面積を公表

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日11日、世界最大の食品飲料企業ネスレがインドネシア・アチェ州のパーム油サプライチェーンにおける「森林フットプリント」を7日(米国時間)に開示した(注1)ことを受けて、「重要な前例となる」と歓迎しました。ネスレは特定地域におけるパーム油サプライチェーンの森林フットプリントを開示した最初の企業となり、高まる世論の声に応える形で公表されました。

ネスレが森林フットプリントを開示したアチェ州に広がる「ルーセル・エコシステム」

「森林フットプリント」とは、消費財企業による森林をリスクにさらす産品利用や、銀行による同産品への資金提供によって影響を受ける、または今後受ける可能性がある森林と泥炭地の総面積をいいます(別紙参照)。

今回のネスレの森林フットプリント分析は、自社サプライチェーン内で、皆伐の危機にさらされているアチェ州の森林および泥炭地の場所と面積を特定しています。その中にはアジア最大の熱帯林の一つである「ルーセル・エコシステム」注2)内の同社事業地も含まれています。また、パーム油の搾油工場はアブラヤシ農園の近くに併設される必要があることから、搾油工場から50キロメートル圏内でアブラヤシ栽培に適した森林地帯も特定しています。さらに先住民族や地域住民の権利が影響を受けてきたり、受ける可能性のある地域の特定も含んでいます。

●森林(89,667ヘクタール)
●泥炭地(8,000ヘクタール)
●搾油工場から50km圏内のアブラヤシ栽培に適した森林地帯(145万ヘクタール)

RAN森林政策ディレクター ジェマ・ティラック コメント

「ネスレがアチェ州の森林フットプリントを開示したことは重要な前例となります。森林保護はこれまで以上に喫緊の課題であり、気候危機による最悪の影響を止めるためには10年も残されていません。

これまで多くの企業が『森林破壊ゼロ』を約束し、2020年までに実現するはずでした。しかし現時点では森林をリスクにさらす産品の使用や、そのような産品事業への資金提供で受ける森林や地域コミュニティの影響について、正確で透明性ある説明をしている企業はありません。そのような中、ネスレが重要な森林地域の一つである『ルーセル・エコシステム』への影響を理解するための第一歩を踏み出したことは重要です。

今回の開示で重要な点は、ネスレが、地域コミュニティによって慣習的に利用されてきた森林を特定することの重要性と、自社パーム油サプライチェーンで地域住民が直面するリスクについて理解することの重要性を認識した点です。ネスレはまた、森林や泥炭地を劣化や破壊から守る上で、地域コミュニティが重要な役割を果たしていることも認識しています」

RAN日本代表  川上豊幸 コメント

「日清食品や花王といった日本企業もネスレの後に続く必要があります。両社のパーム油サプライチェーンには熱帯林や人権を犠牲にした生産に関与している問題企業が含まれていると考えられます。

消費財企業が森林フットプリント開示を進めるための最初の一歩として、まずはパーム油サプライチェーンにおける搾油工場リストなどの情報を開示する必要があります。しかし日清食品は搾油工場リストを公表していません。一方、花王は搾油工場リストを開示していますが、その情報開示は透明性を確保した形で適正かつ定期的に行わなければ、調達実態や対応状況の確認が困難になります。両社ともグローバル企業を目指すからには、サプライヤー企業を公表し、森林フットプリントを公開する必要があります」

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ネスレが森林フットプリントを開示したアチェ州に広がる「ルーセル・エコシステム」は、スマトラ・オランウータン、ゾウ、サイ、トラが野生下で共に生息する貴重な熱帯林です。同生態系は 400万人以上の地域住民に水と生計を提供し、炭素吸収源としても世界的に重要な生態系です。残された熱帯林の「管理人」として、先住民族と地域コミュニティの人々の土地権を確実にすることがこれまで以上に重要になっています。

ネスレは自社のアプローチを「森林破壊ゼロ戦略」から「フォレスト・ポジティブ」戦略への進化と呼んでいますが、今後、ネスレには以下のような取り組みが期待されます。

●調達先のパーム油企業による森林および泥炭地保護の促進に関わって計画を策定・実行し、地域コミュニティや現地政府と協力して住民の権利が法的に認められるように保証すること
●慣習林地域を特定する地図を作成し、地域コミュニティの土地使用権、土地権問題、未解決の紛争(コミュニティの土地でのアブラヤシ農園開発に反対する権利を尊重せず、そのために起こる対立)に理解を深めるために早急な措置を講じること
●今回の試験的取り組みを進め、世界の森林フットプリント分析・評価に拡大すること

RANは「キープ・フォレスト・スタンディング〜森林と森の民の人権を守ろう〜」キャンペーン対象企業(注3)を含め 、熱帯林破壊と人権侵害を助長する上で最も影響力のある企業に森林フットプリントを把握し、開示するよう呼びかけます。

注1) ネスレのウェブサイト “Towards a forest positive future”(英語)
アチェ州の森林フットプリント分析(英語)

注2)「ルーセル・エコシステム」は、インドネシア・スマトラ島のアチェ州と北スマトラ州に位置する260万ヘクタールの熱帯低地林である。世界クラスの生物多様性のホットスポットで、科学的に記録されている最も古く、生命豊かな生態系の一つである。

参考:RAN「インドネシア『ルーセル・エコシステム』をまもる」

注3)『キープ・フォレスト・スタンディング』キャンペーン対象企業
【消費財企業(10社)】日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース
【銀行(7社)】MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

関連プレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜 」(2020/4/1) 

別紙「森林フットプリントについて

「森林フットプリント」とは?

森林フットプリントとは、消費財企業の森林リスク産品(※)利用や銀行による森林リスク産品への資金提供によって、これまでに影響を与えたり、今後与える可能性がある森林と泥炭地の総面積をいう。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、サプライヤー企業や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらにサプライヤー企業や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。上記の森林および泥炭地が、先住民族と地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

リスクにさらされている地域には、供給業者、投融資先企業、またはそれらに原料を供給する独立系企業の管理下にあるプランテーション(大規模農園や植林地)開発区域内の森林と泥炭地、そして上記企業のグローバルサプライチェーンの原料調達(工場、精製所、加工処理施設など の周辺地域)における伐採予定地や農業開発用に割り当てられた地域が含まれる。これらの全てが把握され、公開されている必要がある。

RANは、消費財企業および銀行が森林フットプリントを把握し開示するためには以下のようなステップを提案している。

1.情報開示
・自社サプライチェーンで森林リスク産品を調達している国、金融機関の場合は顧客企業の事業が森林リスク産品関連事業で活動している国を特定し、自社の年次報告書やサステナビリティレポートなどで情報開示する。
・優先すべき森林リスク産品の調達を行っている国・地域を選択する。当該地域で森林リスク産品を生産、加工、取引しているサプライヤー企業を特定し開示する。

2.森林・泥炭地減少へのリスクを調べる
・特定されたサプライヤー企業・企業グループからの調達や、当該企業への投融資によって、これまで影響を与えたり、今後与える可能性のある森林や泥炭地の総面積と位置を把握するために空間分析を行い、地図を作成する。
・作成した地図を自社の年次報告書、サステナビリティレポート、企業ウェブサイトなどで開示する。

3.地域域コミュニティの権利・土地紛争
・選択した調達国・地域でサプライヤー企業や投融資先企業の事業によって影響を受ける森林や泥炭地に居住する、先住民族や地域コミュニティの権利に及ぼす影響に関する情報を調査する。
・情報には先住民族や地域住民が伝統的に所有する森林や泥炭地に関する土地への権利、アクセス、利用および保全への影響を含む。
・これまで影響を与えたり、今後与える可能性のある森林や泥炭地の総面積と位置を把握するために空間分析を行い、地図を作成する。

4.2と3の統合
・森林減少のリスクに関して得た情報と、地域コミュニティへの影響と土地紛争に関するリスクをまとめた、国や地域ごとの「森林フットプリント地図」を完成し、開示する。

※森林リスク産品:森林破壊の原因の多くはパーム油、紙パルプ、木材製品などの産品生産で、これらの産品は森林を破壊するリスクがあることから「森林リスク産品」と呼ばれている。
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レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。 

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:日清食品に新署名開始「2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!」(2020/11/13)

「持続可能なパーム油100%」2030年目標の前倒しを求め〜熱帯林および生態系保護、人権尊重など、パーム油調達方針強化を〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日13日、日清食品ホールディングスにパーム油調達方針のさらなる強化を求めて、「日清食品さん、2030年まで問題のあるパーム油を使い続けないで!〜地球と未来のために今すぐ『チャレンジ』を〜」署名を開始しました(注1)。

日清食品は今年6月、2030年度までの「持続可能なパーム油調達比率100%」実現に向けてチャレンジするという目標を掲げました注2)。しかし2030年度の達成では熱帯林保護、生態系保護、人権尊重における対応は遅く、高まる消費者の期待に応えることができていません。本署名では、日清食品に目標年の前倒しと、自社サプライチェーン(供給網)から問題あるパーム油を排除するための実施計画策定および公表などを求めます。

【署名について】
本署名は署名サイト「change.org」で展開し、日清食品ホールディングス安藤宏基取締役社長 CEOとアメリカ日清 マイケル・プライス社長に以下3点を要望しています。

 1.「持続可能なパーム油100%」達成を2030年から大幅に前倒しし、自社サプライチェーン(供給網)から問題あるパーム油を確実に排除するために、拘束力があり、達成期限を定めた実施計画を直ちに策定し、発表すること

 2.パーム油供給業者の全リストを公開して、「持続可能なパーム油の調達へのコミットメント」を実施し、進捗を公表すること

 3.パーム油供給企業が方針を遵守しているかモニタリングし、独立検証できる新たな仕組みを構築して、上記コミットメントを実施し、進捗を公表すること

RAN 日本代表部 川上豊幸は「国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、2020年までに森林減少を阻止することを掲げています。日清食品の目標はSDGsにも合致していません。日清食品が今後10年間も環境・社会面での配慮の確認が不十分なパーム油調達を続ければ、サプライチェーンで発生している気候危機や生物多様性の損失、人権や労働権、および土地権の深刻な侵害が今後も続き、対応を先送りすることになります。問題の喫緊性を考えると、2030年度までの『持続可能なパーム油調達比率100%』目標では遅すぎます」と批判しました。

【背景:日清食品のパーム油調達における動き】

日清食品は2020年8月にパーム油調達方針を改定し、「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE:No Deforestation、No Peat、No Exploitation)の支持を表明しました注3)。改定方針には、責任あるパーム油生産に欠かせない国際基準である「NDPE」に沿った項目が含まれ、森林破壊や森林火災、そして炭素を豊富に含む泥炭地開発の禁止、また先住民族および地域住民の権利尊重と土地権侵害の禁止が明記されました。

方針強化の背景には、高まる消費者の懸念があります。2019年、RANはインドネシアで現地調査を行い、日清食品を含む大手消費財企業が、スマトラ島の貴重な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」で熱帯林および泥炭地破壊を引き起こしている企業からパーム油を調達している可能性を明らかにしました(注4)。

RANは同年8月、日清食品に対して、問題あるパーム油を調達しないよう方針強化を求めて「日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜問題あるパーム油を使わないで〜」署名を実施し、今年10月には約3万人の署名を同社に提出しました注5)。また、RANの呼びかけに応えて日清食品ウェブサイトの問い合わせフォームに環境や生態系への懸念や意見を寄せた消費者もいました。

日清食品は「持続可能性」を追求する東京2020五輪・パラリンピックの「オフィシャルパートナー」(スポンサー)であることからも、環境面・社会面におけるパーム油調達方針の強化が求められます。パーム油は同社の看板商品である『カップヌードル』の揚げ油として利用されていますが、アブラヤシ農園開発による熱帯林破壊や、生産国での人権侵害など多くの問題が指摘されています。

2020年3月時点で、同社はグループ全体の「RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議)」認証パーム油調達比率を約20%と公表しています。しかし、日清食品が採用しているRSPOの「マスバランス」方式では認証農園で生産されたパーム油と、生産地の追跡ができない問題あるパーム油が混合され、森林破壊や人権侵害との関与への対処が困難です。

●RANは今年4月、「キープ・フォレスト・スタンティング」キャンペーン注6)を開始し、自社サプライチェーンでの森林破壊および人権侵害への対処において重要な役割を果たす必要があり、国際的に影響力のある消費財企業として10社を挙げました。日清食品はその1社ですが、キャンペーン開始時にNDPE基準を採用していなかった唯一の消費財企業でした。日清食品のNDPE基準採用は大きな一歩ですが、さらなる方針強化と目標達成のためには、目標の前倒しと実施計画の策定および公表が必須です。

注1)署名URL: http://chng.it/fPL9gLxkV6
英語版署名「NISSIN: CLEAN UP YOUR CUP NOODLES」

注2)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略『EARTH FOOD CHALLENGE 2030』始動!」(2020年6月9日)より抜粋

「森林破壊の防止、生物多様性の保全、および農園労働者の人権に配慮された持続可能なパーム油の調達を進めます。2020年3月現在、グループ全体における「RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議)」認証パーム油の調達比率は約20%です。2030年度には、RSPO認証パーム油の調達に加え、独自アセスメントにより持続可能であると判断できるパーム油のみを調達することを目指します」

注3)日清食品ホールディングス「持続可能な調達:持続可能なパーム油調達コミットメント」より抜粋:

日清食品グループは、NDPE (No Deforestation、No Peat、No Exploitation=森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ) を支持し、取引先等のステークホルダーの協力を得て、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油を調達します。
 ・保全価値の高い (HCV: High Conservation Value) 地域および炭素貯蔵力の高い (HCS: High Carbon Stock) 森林の保護、森林破壊ゼロ
 ・深さに関わらない泥炭地の新たな開発禁止
 ・植栽や土地造成、その他開発のための火入れ禁止
 ・先住民族・地域住民の権利尊重・土地権侵害の禁止
 ・RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議) が定める「原則と基準」の遵守
 ・農園まで含めたトレーサビリティの確認

注4)RANプレスリリース「三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜」 (2019/10/18)

注5)RAN「日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜 問題あるパーム油を使わないで〜」署名 (2019年8月21日から2020年10月5日実施)

注6)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜 (2020/4/1)

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。 

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

発行物:パリ協定と整合性のある金融機関原則(2020/10/30)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、10月30日、国連「責任銀行原則」(PRB)発足から1年を受けて、「パリ協定と整合性のある金融機関原則」を発表しました。

2020年10月26日、日本政府は「温室効果ガスを2050年までに実質ゼロ」にすると発表しました。政府の新目標は世界から遅れを取りながらも、一歩前進したと言えます。しかし実現のためには具体的な対策強化が課題となると同時に、炭素吸収源としての森林の保護も極めて重要となります。

この数カ月、世界の銀行でも気候変動対策に関する公約を発表する動きが続いています。HSBCとモルガン・スタンレーは温室効果ガスの実質ゼロを約束し、JPモルガン・チェース、バークレイズをはじめとする銀行ではパリ協定に整合性のあるファイナンスを約束しています。日本のメガバンクの対応に注目が集まります。

日本のメガバンクを含むPRB署名銀行は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束しています。公約を果たすためには、化石燃料の拡大、森林破壊および泥炭地破壊を引き起こす事業への投融資を直ちに停止する必要があります。

「パリ協定と整合性のある金融機関原則」では、金融機関がポートフォリオを「1.5度目標」と整合させるためにとるべき行動を提言しています。本原則にはRANを含む60の市民団体が賛同しています。

「パリ協定と整合性のある金融機関原則」(PDF)

NGO共同声明:三菱UFJ、石炭火力向けプロジェクトファイナンス残高ゼロ目標 (2020/10/16)

依然パリ協定と整合せず、邦銀の遅れ目立つ

(English follows Japanese)

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)がサステナビリティレポートを公表し(注1)、「2019年度末時点で3,580百万米ドルの石炭火力発電向けプロジェクトファイナンスの貸出金残高を2030 年度に2019 年度比 50% 削減、2040年度を目途にゼロにする(但し、MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークに基づき、脱炭素社会への移行に向けた取り組みに資する案件は除外)」との目標を掲げました。これは、本年4月および7月にそれぞれ同様の目標を掲げた、みずほフィナンシャルグループ(注2)、三井住友フィナンシャルグループに続いての発表であり、邦銀大手3行の足並みが揃った形となります。

 これは一定の前進ではあるものの、気候危機の緊急性を鑑みれば、不十分な目標設定としか言わざるを得ません。早急にさらなる厳格な目標設定と方針改訂が求められます。MUFGも署名している国連責任銀行原則(PRB)では、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)にビジネス戦略を整合させることが謳われていますが、この度MUFGが掲げた目標は、時間軸の長さ、並びにスコープの狭さの両面で大きな問題があります。また、邦銀の石炭方針は、海外の金融機関と比べても依然低い評価に留まっています(注3)。

 最新の科学によれば、パリ協定の1.5度目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。償還期間を過ぎても何十年も石炭火力発電所が稼働し続けることを鑑みれば、与信残高ゼロはより早期に達成される必要があります。また、今回の目標では依然として、新規の融資契約の余地が残されています。新規の石炭火力発電所は、世界中で1基たりとも建設の余地のないことが科学的にも明らかとなっていますが、邦銀によるブンアン2(ベトナム)などの新規融資検討が懸念されています。同事業はパリ協定の目標と整合しないだけでなく、経済合理性の欠如、現地の環境汚染や住民への人権侵害など、様々な問題が指摘されています。新規石炭火力発電事業への融資を例外なく停止する方針を早急に掲げるべきです。

 また、スコープをプロジェクトファイナンスに限定し、コーポレートファイナンスを対象外としていることも問題です。石炭採掘を含む石炭火力のバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンス(注4)も対象に含めるべきであり、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を掲げるべきです。海外では、顧客にパリ協定に整合的な時間軸での移行計画の提出を求めるエンゲージメントを行い、計画が不適格であればダイベストメントするという流れが加速しています。これは一例ですが、エンゲージメントを効果的に行うためにも、まず金融機関がパリ協定に整合的な戦略・目標のロードマップを示す必要があります。注5

 さらに、石炭火力だけでなく、炭素排出量の多い他の化石燃料関連事業や土地利用に関わる(注6)事業および企業に対する資金提供の停止や残高削減の方針も掲げるべきです。

注1) https://www.mufg.jp/dam/csr/report/2020/ja_all.pdf

注2) 4月公表の同グループの方針では、2050年までの目標設定だったが、6月に開催された年次株主総会で2040年を目処に達成できるという趣旨の発言がなされた。

注3) 欧州やアメリカ、シンガポールの銀行と比べても邦銀の石炭方針は低い評価となっている。https://coalpolicytool.org/ 
(参考:https://world.350.org/ja/press-release/200908/

注4) 石炭火力発電への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業向けの融資、株式や債券の引受・投資など。

注5) パリ協定と整合的な目標設定とロードマップを示そうとしている例として、仏BNPパリバの取り組みが挙げられる。https://350jp.org/tcfd/

注6) IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の2019年「土地関係特別報告書」(https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/190809.html)では、農業、林業、その他土地利用による排出量が、人間活動による排出量の約23%を占めており、このうち、熱帯林減少による排出量が最も問題であるとされた。http://japan.ran.org/?p=1517

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 渡辺瑛莉 japan@350.org

‘Inadequately aligned with Paris Agreement, Mitsubishi UFJ Financial Group lags far behind its international peers’

No Coal Japan coalition responds to banking giant’s new climate goals

Joint Press Statement
October 16, 2020

350.org
Kiko Network
Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Friends of the Earth Japan
Mekong Watch
Rainforest Action Network
Greenpeace Japan

Japan — Today, Mitsubishi UFJ Financial Group (MUFG), the largest banking institution in Japan, released its Sustainability Report (Japanese version only), stating its goal of erasing US$3.58 billion loan balances for coal-fired power projects by 2040. This announcement follows those of its Japanese peers, Mizuho Financial Group and Sumitomo Mitsui Financial Group, which set the same goal in April (1) and July this year respectively.

In response to the announcement, the No Coal Japan coalition, formed by several civil society groups, including 350.org, Kiko Network, JACSES, FoE Japan, Mekong Watch, Rainforest Action Network and Greenpeace Japan, said:

“While this is a step forward for MUFG, this goal is inadequate given the urgency of the climate crisis, and the impact of coal-fired power plants and other fossil fuels on health amidst the COVID-19 pandemic. There is an urgent need for stricter goal setting and fundamental policy revisions in Japan’s financial sector.

The standard of Japanese banks’ coal policies including MUFG remains low as compared to overseas financial institutions. MUFG is also one of the signatories of the UN Principles for Responsible Banking (PRB), which stipulates that the signatory banks should align their business strategies with the Paris Agreement and the Sustainable Development Goals (SDGs).

The goal set by MUFG is problematic in both a lengthy timeline and narrow scope. According to the best available science, coal-fired power plants need to be completely shut down by 2030 in developed countries and by 2040 in the rest of the world to limit the warming of the Earth to1.5 degrees, aligning with the Paris Agreement. Given that coal-fired power plants will continue to operate for decades beyond the redemption period, a zero-loan balance needs to be achieved much sooner.

In addition, the goal still leaves room for financing new coal fired power projects. It is scientifically clear that there is no room for the construction of any new coal-fired power plant in the world. However, there are concerns that Japanese banks are considering new loans such as the coal-fired power station Vung Ang 2 in Vietnam.

“Not only is the project inconsistent with the goal of the Paris Agreement, it lacks economic profitability, and will pollute the local environment and violate the basic human rights of the local communities. To align with Paris goals, MUFG should urgently put in place a policy to suspend financing for all the new coal-fired power projects without exception.

The scope of the goal set by MUFG is limited to project financing and not applied to corporate financing. Corporate financing (2), which covers the entire value chain of coal-fired power including coal mining, should be included along with a phase-out strategy with a timeline consistent with the Paris Agreement. Internationally, there is an accelerating trend where banks ask their customers to submit a transition plan on a timeline consistent with the Paris Agreement, and divest from clients with inadequate transition plans. To effectively facilitate this process, financial institutions must first set a roadmap of strategies and goals that are consistent with the Paris Agreement.

Furthermore, in addition to coal-fired power, policies to stop funding other high carbon emitting sectors such as other fossil fuel sectors and land-use-related sectors (3), and targets to phase-out from those sectors should be put forward.

Notes to editors:

(1) In April, Mizuho Financial Group announced its goal of erasing its outstanding credit balance for coal-fired power projects by 2050. However, during its Annual Shareholders’ Meeting in June 2020, the group commented that this goal could be achieved by 2040.

(2) Loans, underwritings, equity and bond investments for companies heavily reliant on coal mining/coal-fired power and companies who have expansion plans for new coal mining/coal-fired power plants and related infrastructures.

(3) According to the IPCC Special Report on Climate Change and Land (2019), emissions from agriculture, forestry and other forms of land use make up 23% of total emissions from human activities, with deforestation in tropical regions being singled out as the biggest carbon emitter from the land-use.

Contacts:
Asia Pacific: Nicole Han, +65 9828 1538, nicole.han@350.org
Global: Nathalia Clark, +55 61 991371229, nathalia@350.org

プレスリリース:花王と三菱UFJ、インドネシア「ルーセル・エコシステム」森林破壊に加担 (2020/9/29)

取引先 RGEグループが森林破壊企業からパーム油調達

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、インドネシアで現地調査を実施し、スマトラ島の貴重な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」での森林破壊に、花王と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が加担していることを明らかにしました注1)。「ルーセル・エコシステム」はアジア最大の熱帯林の一つで、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが共存する、地球で最後の場所です。

ルーセル・エコシステムで造成作業をする掘削機、インドネシア ・アチェ州、2020年6月10日

本調査では、花王のパーム油サプライチェーンにある搾油工場が、「ルーセル・エコシステム」で森林破壊を起こしている生産者から調達していることが明らかになりました。同搾油工場は、花王が合弁事業をもつアピカルの子会社のパーム油精製工場にも供給しています。アピカルは複合企業ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループのパーム油子会社で、RGEグループはMUFGの顧客企業です。この生産者はこの地域で事業を行う企業で最も悪質な一社で、同社の皆伐率は過去半年で3倍になり、新型コロナウイルスの発生以来、同地域で急増する森林減少の証拠を示しています。

RGEグループ子会社のアピカルは、国内日用品・化粧品大手の花王と合弁会社を持っています注2)。花王は「森林破壊ゼロ」方針を日本で初めて採用し、国内の消費財メーカーでは先駆者的な存在と見なされています。花王はパーム油調達先の搾油工場リスト(2019年版)を公開しましたが(注3)、上記搾油工場の PT. SS が含まれ、同搾油工場から調達している可能性があります。花王がサプライチェーン全体で「森林破壊ゼロ」方針をしっかりと実施するためには、取引関係の見直しを含む迅速な対応が必要です。

また、不二製油と親会社の伊藤忠グループの搾油工場リストにもPT. SSが含まれていることから、日清食品を含む日本企業でも国内および海外での製造に問題あるパーム油が使われているリスクがあります。日清食品は、持続可能なパーム油調達で遅れを見せていましたが、今年8月に「森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止方針」への支持を表明したばかりです(注4)。花王およびMUFGとともに日清食品は、RANが2020年から開始した「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーンで注力している日本企業です(注5)。

RGEグループは、多国籍銀行から紙パルプ事業に2017年から2020年4月の期間で26億米ドル近くの融資を受け、そのうち18億ドルが同グループの紙パルプ企業であるエイプリル社に向けられました。MUFGはRGEグループへの最大の貸し手の一つです。MUFGは国連「責任銀行原則」(PRI)の署名銀行(注6)で、かつ、持続可能なパーム油への資金提供についての方針を制定しているにもかかわらず、同グループに7件の融資をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「日本の消費財企業や銀行の評判は、RGEグループとの提携や取引によって、深刻なリスクにさらされています。 花王、日清食品、三菱UFJは、RGEグループの『森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止方針』の遵守が確実になるまで、グループ企業や関連会社、合弁会社からの原料調達の停止と、同様に資金提供を停止する必要があります」と訴えました。

RGEグループは、インドネシアの「タイクーン」(大物実業家)であるスカント・タノトが設立した企業グループです。 子会社が管理するアブラヤシ農園とパルプ材植林地造成のために広大な地域を大々的に開発してきたことから、長年にわたって森林破壊との関わりが指摘されてきました。本調査で判明したアピカル社と「ルーセル・エコシステム」の森林破壊とのつながりは、同グループがグローバル・サプライチェーンで「森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止」(NDPE)基準を遵守できなかった一例にすぎません。このような問題が繰り返し起きるのは、RGEグループが方針を遵守していないにも関わらず、顧客企業や合弁事業パートナーが取引を続け、金融機関が資金提供を続けている実態があります。同グループが方針を強化して生産および調達を実践するまで、上記企業は取引を停止することが必要です。

さらに、同グループ紙パルプ部門のエイプリル社が保有するパルプ材植林地だけでも、500以上の地域コミュニティに悪影響を及ぼしています。今も 100を超える地域コミュニティが同グループや調達企業と対立中、あるいは対立したことがあります。例えば、先住民族のバタク族が先祖代々の土地としてきた北スマトラのトバ湖地域では、20以上の地域コミュニティで3,000以上の家族が、トバ・パルプ・レスタリのパルプ事業で被害を受けています。上記のコミュニティの多くは土地を取り戻すための抗議を続け、森林と慣習的に利用している土地は2万5千ヘクタールにもおよびます。

【調査結果】
●RANの現地調査員は、RGEグループのパーム油精製所が、問題ある生産者からのパーム油を、PT. Syaukath Sejahtera(PT. SS)という搾油工場経由で購入していることを突き止めた。この問題ある生産者PT. Tualang Raya(PT. TR)は、ルーセル・エコシステムで事業を行う企業でも最も悪質な一社で、同社の皆伐率は過去半年で3倍になった。

●2020年6月、PT. TRの事業許可地に掘削機が見つかり、同社がルーセル・エコシステムで土地を造成していたことの証拠となった。調査員はまた、同社の事業許可地で栽培され収穫されたアブラヤシの実がPT. SSの運営する搾油工場に輸送されるのを目撃した。

●調査により、PT. TRからパーム油を調達しているPT. SSの搾油工場は、アピカルの子会社であるPT. Sari Dumai Sejati Tangki Timbun が操業する精製所のサプライヤーであるという証拠が示された。 アピカルは、RGEグループのパーム油企業の1社である。

注1)RAN報告書(英語)「Royal Golden Eagle Group Links Global Brands and Financiers to Deforestation In the Leuser Ecosystem」、2020年9月21日
https://www.ran.org/leuser-watch/group-links-global-brands-and-financiers-to-deforestation-in-the-leuser/

注2)アピカル「サステナビリティレポート 2018」(英語)

注3) 花王「2019年の進捗:「持続可能なパーム油」の調達ガイドラインの進捗 目標1」(2020年9月21日閲覧)

注4) RANプレスリリース「日清食品、パーム油調達で森林破壊・泥炭地開発・搾取ゼロを約束〜「正しい方向への一歩」と歓迎、ただし達成目標2030年度では遅すぎる〜」、2020年8月20日

注5) RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」、2020年4月1日

注6)国連「責任銀行原則」(PRI)の署名銀行(英語)

【10月13日追記】

●訂正:「花王は2019年、パーム油調達先の搾油工場リストを公開」とありましたが、正しくは「パーム油調達先の搾油工場リスト(2019年版)を公開」でした。

●「注3」に閲覧日を追加しました。

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:『森林と金融』グローバルのデータベース発表〜パリ協定後、森林破壊企業に1,500億ドルの資金が流入〜(2020/9/2)

紙パルプ、パーム油部門等、世界三大熱帯林での合計額を初分析〜銀行の資金提供額でみずほ世界5位、三菱UFJはパーム油部門で上位一行に〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他5団体は、9月1日に『森林と金融』データベースの調査範囲を東南アジア限定からグローバルに拡大し、日本の3メガバンクを含む世界の銀行が、2016年以降、世界三大熱帯林分布地域での森林破壊と土地劣化を加速させている産品の生産や取引に約1,540億米ドルの融資と引受を行ったことを明らかにしました1

『森林と金融』は、東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地を含む)における紙パルプやパーム油などの産品への資金流入を包括的に分析した初のデータベースです。データ分析の結果、銀行による対象事業への融資と引受はパリ協定が締結された2015年12月以降も40%増加し、同時に、機関投資家が370億米ドルの資産を対象企業の株式や債券で保有していることが分かりました(2020年4月時点、対象事業を特定して計算)。今年もインドネシアやアマゾンで森林火災が発生し、煙害や健康被害の不安が高まる中で新型コロナウイルスの感染拡大が重なることから、金融機関の責任が問われます。

【概要】
RANを含む6団体で構成される「森林と金融連盟」による共同プロジェクト。世界三大熱帯林地域で、森林に影響を及ぼす事業を行う企業約300社へ流入する資金を明らかにするオンラインツール。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年度、部門別に検索が可能。
●対象事業地域:東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地含む)
●対象産品:紙パルプ 、パーム油、牛肉、大豆、天然ゴム、木材
●対象期間:2013年から2020年4月

 【主な分析結果】
●パリ協定締結以降、森林に影響を及ぼすリスクのある事業に流れた融資・引受は1,540億米ドルにのぼり、その約60%が15銀行のみで占められている(※)

●上記15銀行のうち8行が、3メガバンクも含め、国連の「責任銀行原則(PRB)」の署名企業で、銀行の事業戦略を「パリ協定」と「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿ったものとすることを約束している。特にSDGs目標15では「2020年までの森林減少阻止と劣化した森林の回復」をターゲットにしている。

●資金の流れは、ブラジル、中国、インドネシア、マレーシア、米国、日本の銀行からが大きい。この分析結果は、金融セクターを世界の環境および社会的優先事項に合致させるために必要な規制と企業方針が不足していることを表している。

●全体で、ブラジル銀行が最大の資金提供者である。2016年以降、森林リスクのある産品事業に300億米ドルを提供したが、ブラジルで事業を行っている企業にほぼ限定。牛肉、大豆、紙パルプ事業に資金提供されている。

●みずほフィナンシャルグループ(みずほ)は全体で世界5位で55億米ドルの融資・引受を提供。紙パルプへの資金提供が大半を占めている。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG )の融資・引受額はそれぞれ29億米ドルで13位、14位とつづいた。MUFGはパーム油部門で世界最大の資金提供者の一つである。

【背景】
様々な多国間方針や業界の方針が森林破壊ゼロを約束しているにも関わらず、熱帯林の消失面積は過去10年間でほぼ倍増した。主な原因は農業目的の皆伐で、多くの場合が不法に行われ、汚職、脱税、組織犯罪と深いつながりがある。森林を犠牲にして生産される産品は総称して「森林リスク産品」と呼ばれ、牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材が含まれる。2019年だけで1,190万ヘクタールの熱帯林が失われた(注2)。国連環境計画によると、森林破壊および関連する野生生物の生息地喪失は、新型コロナウイルスのような人獣共通感染症の出現における重要な要素となっていながら(注3)、コロナ感染拡大中、森林破壊は50%以上も増している(注4)。融資と引受、そして投資は森林破壊に責任がある企業の事業拡大と日々の事業に非常に重要である。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「いま、世界に残る最後の熱帯林では、意図的な火入れが原因で火災が起きています。紙やパーム油などの産品を生産する農地開墾のために『安価な』方法として火が使われているからです。日本のメガバンクは、顧客企業の農業生産事業が森林火災に拍車をかけていることを知りながら資金を提供し、化石燃料に資金を提供することによって気候危機と火災のリスクを悪化させています。このような資金提供は、PRBに署名した際の約束と合致していません」と指摘しました。

RANは同日、MUFGのアメリカ本部前(ニューヨーク市マンハッタンの大通り「アベニュー・オブ・ザ・アメリカス」)で、同社に熱帯林火災への資金提供を止めるよう求めてアピール行動を行いました。ハイネケンは「三菱UFJはパーム油産業への世界最大の資金提供者の一つです。パーム油産業は継続的な森林や泥炭地の破壊と、インドネシアで毎年起こる森林火災に大きな責任があります。しかし、三菱UFJのパーム油に関する与信方針は森林や泥炭地、人権を十分に保護していなく、さらにインドネシア現地の子会社であるバンク・ダナモンには適用されていません。三菱UFJにESG方針の早急な強化を求めます」と強調しました。

Photo by Erik McGregor for Rainforest Action Network

TuKインドネシア事務局長 エディ・スカルノ氏は「インドネシアで事業をする銀行と機関投資家は、森林破壊、泥炭地破壊、人権侵害に、顧客企業の事業を通して日常的に資金提供をしています。しかし銀行は、毎年のように大きな健康被害をもたらす煙害(ヘイズ)を含め、自社事業の直接的な影響を市民、そして株主や規制当局に開示していません」と批判し、「金融セクターの監視を強化し、銀行にはより厳しい貸付基準の導入を強いるといった、緊急の改革が必要です」と続けました。

ブラジルの環境保護団体アマゾン・ウォッチ プログラム・ディレクター クリスチェン・ポワイレ氏は「アマゾン先住民族の人々は、壊滅的な火災の季節に、新型コロナウイルス感染拡大による犠牲者が出る悲劇にも直面しています。ブラジルのアマゾン全域で発生した火災は、過去10年間で最も多く、先住民族の土地で昨年以降は77%も増加しています。この急激な増加は、非合法な森林破壊と、森林にリスクを及ぼす産品生産による火入れの産物で、大手グローバル金融機関によって資金が提供されています。世界の銀行と投資家には、『森林と金融』データベースは災害の共犯者を明らかにしていると伝えたいです」と訴えました。

※15銀行の一覧は別紙「【世界】上位15銀行 部門別の融資と引受」を参照ください。

注1)「森林と金融」ブリーフィングペーパー(2020年9月更新版)

「森林と金融」データベース

方法論:各熱帯林分布地域で森林破壊や土地劣化のリスクを及ぼす事業を行う企業を特定した上、同企業の生産、一次加工、貿易、製造部門に流れる投融資として合理的に考えられる金額を計算しています。

協力団体:レインフォレスト・アクション・ネットワーク、TuKインドネシア、プ ロフンド(Profundo)、レポーターブラジル、アマゾン・ウォッチ、バンクトラック

注2)世界資源研究所、“We Lost a Football Pitch of Primary Rainforest Every 6 Seconds in 2019”、2020年6月2日

注3)国連環境計画、“Preventing the next pandemic – Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission”、2020年7月6日

注4)フィナンシャルタイムズ、“Global deforestation accelerates during pandemic: Tree cover losses increase 77% as collapse in economies pushes exploitation of resources”、2020年8月9日

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※追記:「森林と金融」ブリーフィングペーパーへのリンクを追加しました(2020年9月4日)