ボルネオ島の消えゆく森を守る 〜先住民族「ロング・イスン」の闘い〜
Klik disini untuk lihat halaman Bahasa Indonesia >>
Read this article in English >>
インドネシアのロング・イスン村の先住民族コミュニティは、ボルネオ島の森林破壊の最前線にいます。
10年以上にわたって、ロング・イスンの人びとは先祖代々の土地で起こる森林伐採やパーム油の農園開発と闘ってきました。そこは、インドネシア・東カリマンタン州で最後に残る手つかずの熱帯林のひとつです。
ロング・イスン村のコミュニティは、ボルネオ島に残る最後の手つかずの熱帯林をモンデリーズやプロクター&ギャンブル(P&G)と関わりのある企業から守るために闘っています。いま、あなたの助けを必要としています。
ロング・イスン村コミュニティ
ロング・イスン村の人びとは先住民族ダヤック・バハウ族に属し、森の庭で育てる野菜、食用に狩る魚や動物、薬として使うさまざまな植物、教育や医療といった必需品を賄うために売る換金作物など、すべてを森に依存しています。
しかし、彼らの生活は脅威にさらされています。インドネシアで最も大きな権力を持つパーム油・木材企業帝国のひとつであるハリタ・グループは、ロング・イスン村コミュニティの熱帯林を伐採し、土地との神聖な関係を破壊すると脅しているのです。ハリタ・グループのコントロール下にある企業は、モンデリーズやP&Gなどの大手消費財企業にパーム油を供給しています。
ロング・イスン村の住民は、ハリタ・グループから原材料を調達する大手多国籍消費財企業に「先住民族の権利を尊重する」という約束を守るよう求めています。これらの消費財企業はその影響力を行使して、同コミュニティが慣習的に使ってきた森林領域について法的な承認を得られるよう支援する必要があります。同時に、ハリタ・グループがコミュニティの土地を同意なく(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意:FPIC)占拠した責任を追及しなければなりません。
破壊の連鎖
多国籍消費財企業は「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針を広く採用しているにもかかわらず、長年にわたりサプライヤーを通じて、世界各地で森林破壊と先住民族の権利侵害に関与してきました。
ロング・イスンはその一例です。ハリタ・グループの木材事業管理地のためにロング・イスンの森林が危機にさらされ、その間もモンデリーズ、P&G、ネスレ、コルゲート・パーモリーブ、日清食品、ペプシコ、ユニリーバといった食品・日用品メーカーは同グループからパーム油を購入しているのです。ハリタ・グループはインドネシアの有力な複合企業で、同国のパーム油、林業、鉱業の各分野において大きな影響力を持っています。同グループの事業による被害は、インドネシアの森林や最前線のコミュニティの至る所に及んでいます。
ロング・イスン村コミュニティの土地
ロング・イスン村はインドネシア・東カリマンタン州にあり、広大なマハカム川の上流、マハカムウル県に位置しています。この歴史的に遠く離れた辺境の地は「ハート・オブ・ボルネオ」と呼ばれる場所にあります。この地域はマレーシア、ブルネイ、インドネシアの三国にまたがる広大な森林で、世界的に重要な文化的・生物多様性のホットスポットです。
ロング・イスンの人びとの慣習林は8万ヘクタール以上(東京23区の約1.3倍)に及びます。そのほぼすべてが、同コミュニティが何世代にもわたって管理し、守られてきた森林です。 ロング・イスンは、マハカム川沿いで手付かずに残る先祖代々の森を有する最後の先住民族コミュニティのひとつです。この森は、ボルネオ・オランウータンやサイチョウなどの絶滅危惧種の重要な生息地で、下流に住む数千人の人びとを壊滅的な洪水や干ばつ、作物の損失から守っています。
ロング・イスンの住民は、何世紀にもわたって豊かな土地管理システムによって森林を保全してきました。そのシステムは精神的な信念と、自然保護の原則に根ざした慣習法に基づいています。このシステムには居住区域、生産区域、狩猟区域、薬用区域、保護区域など11種類の森林利用が含まれています。
近年、マハカムウル県の大部分は、グローバル市場と大手消費財企業への木材やパーム油、紙パルプの供給を狙うアグリビジネス企業の手にわたってしまいました。これらの事業管理地の一部は、特に県南部において、他の先住民族コミュニティとその森林を空洞化させています。ハリタ・グループの2つの木材事業管理地は、ロング・イスンの領域の4分の1以上を占め、破壊の波は今、ロング・イスンの目の前まで迫っています。
ロング・イスンの森を守る闘いは、一つのコミュニティの闘い以上の意味があります。それは気候変動にとって重要なボルネオの森林を伐採から守ることで、その森を守るためには先住民族が最も適していると評価することなのです。
タイムライン:問題の背景
数十年にわたる火災、伐採、採鉱、パーム油開発により、ボルネオ島の深くうっそうとした熱帯林は3分の1も減少しました。森林減少のパターン予測によると、2032年までにさらにベルギーの2倍以上の面積が失われ、世界の生物多様性と気候に深刻な影響を与えるとされています。
ロング・イスンの熱帯林も脅威にさらされています。しかし住民は伐採とパーム油のための開発に断固として反対してきました。それは、ハリタ・グループの木材企業(ロダマス・グループ傘下)がロング・イスン村の約4分の1の領域と重なる地域で木材事業管理権を取得した2009年にさかのぼります。
インドネシア全土における多くの事例と同様に、ロダマスの木材事業管理権は、ロング・イスン村のような影響を受けるコミュニティとの協議なく発行されています。2014年、同社はロング・イスン村コミュニティの慣習地で、彼らの同意なしに伐採を開始しました。コミュニティの人びとは無防備で、慣習地の境を訪れた時に貴重な木々が伐採されているのを見て、初めて事業について知ったのです。ロダマス社との交渉を試みるも失敗に終わり、その後、紛争になり、ロング・イスン村コミュニティの活動家が投獄される事態に発展しました。
そしてロダマス社がコミュニティ慣習地からの撤退を拒否したことから、世界的な紙・木材認証制度の森林管理協議会(FSC)に正式な苦情が申し立てられました。FSC認証の基準に対する違反が確認されたとして、FSCは2017年にロング・イスンの土地紛争に関連してハリタグループ企業1社の認証を取り消しました。2023年2月には、また別のハリタグループの木材企業の認証が一時停止となり(FSC要求事項への重大な不適合のため)、FSCはハリタグループとの上記苦情に対応するために行っていた調停手続きの停止を発表しました。
報告書を読む
2018年、政府の仲介によってロダマス社がロング・イスン内での伐採を一時停止する合意がなされました。しかしハリタグループの伐採計画全てが永久中止にならない限り、そしてロング・イスン村コミュニティの土地への権利が法的に認められない限り、森林は守られないままです。コミュニティは現在、慣習法による森林保護を求めていますが、そのための複雑な法的手続きは地方行政区の段階で暗礁に乗り上げています。
上記の申し立てをハリタグループに対して行ったところ否定されました。同グループの返答はこちらから見ることができます。
RAN.org/publications/long-isun/
要求
多国籍消費財企業と、環境や住民の権利に配慮しないダーティーな生産企業は、世界の森林破壊と生物多様性の損失を悪化させ、先住民族コミュニティと地球の気候が犠牲を払っています。これらの企業は長年にわたって自主的な取り組みを約束してきたにもかかわらず、森林破壊に終止符を打つことができず、先住民族の権利を守ることもできていません。
ロング・イスン村コミュニティの要求
- 土地の返還:ハリタ・グループは、ロング・イスン村コミュニティの伝統的な領域とその資源について先住民族の権利を尊重すること。ハリタ・グループは伐採を拒否するコミュニティの決定を尊重し、グループのコントロール下にある林業会社によるロング・イスン村コミュニティ領域における伐採許可地の設置計画を今後すべて中止するよう保証すること。
- 先住民族の権利:インドネシア政府は、ロング・イスン村コミュニティが伝統的領域での資源を所有、管理、利用する権利を認め、企業の搾取からその権利を保護すること。
- 企業の行動:モンデリーズ、P&G、ネスレ、コルゲート・パーモリーブ、日清食品、ペプシコ、ユニリーバは、ハリタ・グループが事業全体を通じて先住民族の権利を尊重し、ロング・イスン村コミュニティへの過去の被害に対して是正措置を提供するよう保証すること。また、消費財企業はロング・イスンの領域承認の要求を支持すること。
署名に参加する
「ロング・イスン」コミュニティの森と人権を守る署名への賛同を募っています。
今すぐ署名する
関連記事
報告書「森林&人権方針ランキング2022」〜日清食品、三菱UFJは低評価 〜 (2022/6/15)
報告書「森林フットプリント評価 2021」〜インドネシア・ボルネオ島の森林と地域コミュニティへの影響について、大手消費財企業10社の開示状況を評価〜(2021/10/22)
報告書「FPIC実施原則の必要性」(2020/12/22)