サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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NGO共同プレスリリース:3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約1,860億ドルを資金提供〜RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版発表〜(2019/4/8)

〜新方針は気象災害を回避するには不十分〜

環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、350.org Japan、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、「気候変動とSDGs」がテーマの社会的責任投資に関する世界最大級の国際会議『RIアジア・ジャパン2019』の東京での開催を前に、気候変動の影響が悪化しているにも関わらず、日本の銀行は世界中の石炭火力発電その他化石燃料に資金提供しており、「国際社会の厳しい監視に直面している」と喚起を促しました。

RAN他が本日8日に発表した新報告書「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版(注1)によると、メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、2015年のパリ協定採択後の3年間で合計1,860億ドルを世界の化石燃料部門に資金提供したことが明らかになりました。その事実を受けてNGO3団体は、3メガバンクは重大な評判リスクに加え、化石燃料インフラが座礁資産となるリスク、そして適切に開示されていないために最終的には投資家に悪影響を及ぼす可能性のある気候変動関連の金融リスクにさらされていると警告しました。

【化石燃料ファイナンス成績表2019】概要・調査結果

本報告書は、世界の主要銀行による化石燃料への資金提供をまとめたもので、今年で10回目の発表となります。今回は化石燃料部門の分析対象を広げ、世界の銀行(カナダ、中国、ヨーロッパ、日本、米国)による化石燃料セクター1,800社への資金提供を初めて分析しました。結果は厳しく、パリ協定締結後の2016年から2018年の3年間で、日本の3メガバンクを含む33行が石炭、石油、ガス分野で1.9兆米ドルの融資・引受を行ない、さらに過去2年間は融資・引受額が増加していたことがわかりました。1.9兆ドルの内、合計6,000億ドルが日本の電源開発(J-POWER)など化石燃料を積極的に拡大している企業100社に資金提供されました。 以下は、メガバンクに関する主な調査結果です。

MUFGみずほは、化石燃料セクターへの融資・引受額、及び化石燃料を拡大している上位100社への融資・引受額で、世界で上位10行に入る。
・MUFGは、化石燃料産業全体への日本最大の資金提供者で、メガバンクの中で気候変動を加速しているワースト銀行である。パリ協定締結以降800億ドルの資金を化石燃料に提供してきた。
MUFGみずほは、石炭火力発電関連企業の上位30社に資金提供している世界の上位10行に入り、パリ協定締結以降、それぞれ35億ドルと30億ドルを提供してきた。
SMBCは、北極圏の石油・ガス開発事業への世界3位の融資・引受元で、脆弱な北極圏の生態系と、先住民の暮らしと文化を脅かしている。
SMBCは、LNG輸出入ターミナルへの世界3位の融資・引受元で、アフリカのモザンビークの大規模輸出ターミナルに資金を提供している。同プロジェクトは、強制的に数千もの人々を移住させ、ユネスコ生物圏保存地域の生態系を脅かしている。

 

日本のメガバンクの方針格付について】

本報告書はまた、日本の銀行が昨年に発表した与信方針を格付けし、その結果、「パリ協定の目標に合致しているメガバンクはない」ことがわかりました。

「化石燃料拡大」への融資制限:SMBCの格付は、一部の石炭事業に融資等を禁止していることから「D−」となった。一方、MUFGみずほは明確な融資制限がないことから「F」(不可)となった。
・「石炭火力」への融資制限:石炭火力発電に関する新融資方針を3行が採用した結果、格付は昨年からわずかに高くなったが、石炭への継続的な資金提供を可能にする抜け穴があった。SMBCのみが石炭火力発電プロジェクトへの融資を部分的に禁止しているため、格付は「C−」となった。しかしMUFGみずほは、融資に関するデューデリジェンス(相当の注意による適性評価)方針の公開のみに止まったため「D +」となった。

格付を受けて、レインフォレスト・アクション・ネットワーク「 責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「日本の銀行の新しい融資方針は、気候変動の緊急事態に対処するにはまったくもって不十分です。このような状況は、投資家にとって注意を払わなければならない『危険信号』となるはずです」と指摘しました。

※「化石燃料セクター」と「化石燃料拡大」の格付(一部。
詳しくは報告書をご覧ください)

日本の銀行が、国内外で石炭火力発電所やその他の化石燃料事業の開発に資金提供を続ける一方で、世界中で、化石燃料事業からのダイベストメントに向けてのスピードは速くなり、重要性も高くなっています。 グリーンピース・ノルディックの持続可能な金融キャンペーン・ディレクターのマーティン・ノーマンは、「100以上の世界的な金融機関が、燃料炭からの撤退または資金調達の制限を行っています。 その中には、世界トップ40の銀行の4割(16行)と、世界的な主要保険会社20社を含みます。また、進歩的な金融機関がダイベストメント決定のために設定する基準はますます厳しくなっています。現在、日本の銀行は世界の中で遅れを取っています」と語りました。

昨年、3メガバンクは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。しかし、同提言に遵守する形での投融資ポートフォリオにおける炭素関連資産の開示、及びパリ協定が定めた二酸化炭素削減目標に沿った事業戦略は明確化されていません(注2)国際環境NGO350.orgの日本支部代表 古野真は「パリ協定が定める1.5〜2℃未満目標達成に整合した与信方針を策定することは、科学的知見に基づき、最もCO2排出量の多い石炭火力発電やその他化石燃料開発への新規投融資を停止し、自然エネルギー社会への公平・公正な移行を促す銀行業務を実施することである」と指摘しました。

世界気象機関(WMO)は先月、人為的な気候変動が加速し、2018年に起きた異常気象が世界中で6200万人を襲い、200万人が移住を余儀なくされたと発表しました(注3)。昨年発表された、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「1.5度特別報告書」(注4) は、化石燃料の急速な段階的廃止の必要性を明確に説明し、クリーンエネルギーへの世界の投資需要は2035年までに年間2.4兆ドルになると推定しています。気候変動対処への緊急性から判断すると、日本の銀行の株主である主要投資家は、世界の気温上昇を1.5度に抑えるべく明確なスケジュールにそって、あらゆる化石燃料拡大プロジェクトおよび化石燃料の開発と関連インフラを拡大する企業への融資を全て禁止し、化石燃料の開発と関連インフラへの投資の段階的廃止を約束しなければなりません(注5)。

〜「化石燃料ファイナンス成績表2019」調査方法について〜

・対象銀行:米国、カナダ、日本、中国、欧州の33の民間銀行

・対象部門:世界の化石燃料事業全体、化石燃料事業の拡大、タールサンド、北極圏の石油・ガス、超深海の石油・ガス、シェールオイル・ガス、液化天然ガス(LNG輸出入ターミナル)、石炭採掘、石炭火力発電

・対象化石燃料企業:世界の化石燃料関連企業(約1,800社)。2016年から2018年まで3年間の民間主要銀行による融資・引受額を算定。化石燃料事業の拡大(上位100社)、各部門の上位30〜40社は1,800社に含まれる。

・融資・引受額は、対象となる化石燃料関連企業の当該部門の事業活動に基づいて割引して算出

注1)RAN、バンクトラック、シエラクラブ、オイル・チェンジ・インターナショナル、先住民族環境ネットワーク、オナー・ジ・アース、「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版
英語要約版
報告書全文(英語)
※350.org Japanとグリーンピース・ジャパンは、本報告書を支持する163団体に含まれます。

注2)350.org Japan「メガバンク3社の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応について」 

注3)世界気象機関(WMO)” State of the Global Climate 2018 report”, 2019年3月28日

注4)IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約、2018年10月

注5)グリーピース・インターナショナルと研究者の国際ネットワーク、コール・スワームによる、『地球温暖化を1.5℃未満に抑えるために石炭を段階的に廃止する道すじ』は、2050年までに世界中でどのように石炭火力発電所を廃止するかのシナリオを示す。

※4月25日、日本語要約版の英訳 “Banking on Climate Change: Fossil Fuel Finance Report Card 2019 – Summary Version” を追加しました。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

国際環境NGOグリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開してます。

350.org Japanは米国ニューヨークに拠点おく国際環境NGO 350.orgの日本支部として2015年4月に設立されました。350.org Japanは気候変動防止に向けた化石燃料への投資撤退「ダイベストメント」を広めるために、「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンを展開しています。このキャンペーンを通じて、「パリ協定」で定められている気温上昇を1.5-2℃未満に抑える目標に整合した投融資方針を策定することを邦銀に市民とともに呼びかけています。350.orgは180を超える国と地域で活動を展開しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース: 3メガ融資先 インドネシア食品大手「インドフード」のパーム油部門 労働権侵害でRSPO認証停止 (2019/3/6)

〜NGO、大手グローバル銀行と投資家が違法行為・労働酷使に加担していると批判〜

パーム油認証制度の「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)が、パーム油生産企業サリム・イボマス・プラタマ(SIMP)とその子会社ロンドン・スマトラ(ロンサム)の会員資格停止を3月1日に発表したことを受けて(注1)、本日6日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、「メガバンクが制定した方針を実行するための試金石となる」とコメントを発表しました。SIMPはRSPOで4番目に大きい会員企業で、インドネシア最大の食品会社及び世界最大の即席麺企業としても知られるインドフードのパーム油部門です。インドフードは、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

今回の資格停止決定に先立ち、RSPOは昨年11月、ロンサムが所有するアブラヤシ農園で確認された20件以上のRSPOの基準違反と10件のインドネシア労働法違反に対処するための是正措置計画の提出を求めていました(注2)。しかし、ロンサム、SIMPそしてインドフードはその勧告に従うことなく、1月にRSPO認証制度から脱退することを一方的に告知(注3)していました。

RAN責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは 「RSPOが基準を実行したことを歓迎します。インドフードとその子会社は、RSPO基準、国際的規準、インドネシアの法律を長期にわたって軽視してきました。今こそ、インドフードと取引を続けている全ての銀行や投資家、企業は、違法行為や労働搾取を助長しないよう、自社方針に従ってインドフードとの取引をただちに停止するべきです」と訴えました。

インドフードの事業は、大手グローバル銀行や投資家からの数十億ドルの資金調達によって支えられています。一方で、多くの銀行と投資家は違法行為への資金提供に関する明確な方針を持っています。インドフードへ多額の融資をしているSMBC、みずほ、MUFGも例外ではありません。他の2行と比べ、SMBCの方針は『人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止』し、『RSPO、或いはそれに準ずる認証機関の認証を受けている(略)パーム油農園開発を支援します』と明確に定めています。今回のインドフードのRSPO認証停止を受けて、融資を続けることは方針違反になりかねません。インドフードへの最大の投資家には、ブラックロックや日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も含まれます。

ハイネケンは「日本のメガバンクは、インドフードとその子会社にとって主要な金融機関です。 インドフードは2018年9月30日の時点で、3メガバンクから730億円以上の融資を受けています(注4)。3行は2018年5月と6月に社会と環境に配慮した投融資方針を初めて発表し、全ての銀行が違法行為への融資を禁止しています。3メガバンクのインドフードに対する今後の対応は、制定した方針を実行するための試金石となるでしょう」と強調しました(注5)。

【これまでの経緯】

●インドフード子会社のアブラヤシ農園での調査は、RAN、国際労働権フォーラム(ILRF)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注6)がきっかけとなって実施されました。3団体の調査で、同社が所有・運営する農園で非常に高いノルマが課せられるために児童労働が行われたり、無給労働や不安定雇用、有害物質への曝露など深刻な労働権侵害が明らかになっていました。このような労働者の酷使は、これまで独立監査によっても確認されています。

●ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、そしてマースなど、多くのパーム油購入企業は、インドフードとの取引をすでに停止しています。しかし、インドフードの合弁パートナーであるペプシコ、ウィルマー、ヤム・ブランズなど多くの企業は現在もインドフードと合弁関係を継続しており、労働酷使とのつながりが残ったままとなっています。

●インドフードは、インドネシアの大財閥サリムグループ の一社で、商品の開発から生産、販売までをグループ企業内で総合的に行う垂直統合型企業です。パーム油事業は、アブラヤシ農園企業のインドフード・アグリ・リソーシズ(インドアグリ)の下で運営され、SIMPはインドアグリの子会社です。労働権侵害が問題となった農園は、SIMPの子会社のロンドン・スマトラによって運営されています。サリム・グループは、近年で最大級の熱帯林違法皆伐との関与も指摘され(注7)、金融セクターには迅速な対応が求められています。

注1)RSPO, “RSPO Secretariat’s statement on complaints panel decision regarding PT Salim Ivomas Pratama TBK”, 2019年3月1日

注2)RAN、「緊急プレスリリース:パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置 」、2018年11月5日

注3)インドフードからRSPO宛の手紙

注4)インドフードへ資金提供する金融機関については、同社の財務報告(2018年9月30日、英語)を参照のこと

注5)3メガバンクの方針について
・インドフードへの最大の貸し手であるみずほは、「責任ある投融資等の管理態勢強化について」(2018年6月)で、パーム油と木材に特化し、「人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や(略)先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行います」としている。
・SMBCは「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」(2018年6月)で、パーム油の農園開発向けの融資について「違法伐採や児童労働などの人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止します」と明記している。また、パーム油関連の顧客企業がRSPO、あるいはそれに準ずる認証機関の認証を取得しているかどうかを確認することも方針の中でも明記している。
・MUFGは「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」(2018年5月)で、「ファイナンスを禁止する事業」として「違法または違法目的の事業」「公序良俗に反する事業」を筆頭にあげています。

注6)3団体による苦情申し立て文書(英語)
苦情申し立ての概要(英語、2016年10月12日付け)

注7)RAN、「プレスリリース:新報告書『サリム・レポート』発表 日本のメガバンク3行、近年最大級の熱帯林違法皆伐とのつながりが判明」、2018年4月13日

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
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広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:3メガ融資先のパーム油大手インドフード子会社、RSPO認証脱退を通知 (2019/1/28)

〜RSPOはインドフードの会員資格停止を警告〜
NGO、インドフードとの取引関係の停止をペプシコ、ウィルマー、銀行に訴え

サンフランシスコ発 ー インドネシアのパーム油大手インドフードの子会社が、世界最大のパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から脱退する計画を発表したことを受けて(注1)、25日(現地時間)、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKはコメントを発表しました。インドフードはインドネシア最大の食品会社で、世界最大の即席麺企業の一つです。また同社は、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

インドフードの農園で肥料袋を補充する女性労働者 ©︎RAN

インドフードは昨年11月、所有・運営するアブラヤシ農園におけるRSPO「原則と基準」での20件以上の違反とインドネシア労働法での10件の違反に対し、RSPOから是正措置計画の提出を求められていました(注2)。しかし期限を過ぎても提出がありませんでした。

OPPUKの専務理事ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「今こそインドフードの実情を批判すべき時です。同社は、高い基準では知られていないパーム油業界でも、特に悪質な労働習慣を持つ会社です。インドフードが『持続可能』とは程遠い企業であることは、私たちにとっては何年も前から周知の事実でした。今こそRSPOは自らの認定基準と会員規則を適用する時です。インドフードのRSPO認証からの脱退通知は、同社が組織的な労働搾取への対処を拒否していることを示す新たな証拠です」と批判しました。

RSPOによるインドフードのアブラヤシ農園の調査は、RAN、OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)の3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注3)がきっかけとなって実施されました。RSPOがインドフードの会員資格を停止すると考えられますが、まだ実施には至っていません。RSPOはインドフード子会社の脱退計画の通知を受けて同社に手紙を送り(注4)、1月24日の17時まで(ジャカルタ現地時間)に説明の返答を求めていました。インドフードはインドネシア最大のパーム油企業の一社ですが、RSPOが認証停止を実行した場合、RSPO会員資格を失う最大の企業になります。NGOはインドフードの動きを、労働者の権利を尊重する責任から免れるための企てであると批判していますーー RSPOも、会員企業が認証を脱退することで責任を逃れようとする動きを警告しています(注5)

RAN日本代表の川上豊幸は「インドフードといまも取引を続けている企業にとって、取引停止を考える最終段階に来ていることは間違いありません。ペプシコとウィルマーは、インドフードの子会社であるインドアグリからのパーム油調達を停止しています。両企業はインドアグリとの合弁事業の提携も解消すべきです。そして、日本の3メガバンクはインドフードへの融資を停止すべきです。そうでなければ、違法で非倫理的な行為を平気で行なっている企業との取引を、それと知りながら故意に続けていることになります」と訴えました。

昨年11月のRSPOによるインドフードへの制裁措置に先立ち、ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、そしてマースなど多くのパーム油購入企業は、インドフードとの取引をすでに停止しています。しかし、インドフードの合弁パートナーであるペプシコ、ウィルマー、ヤム・ブランズなど多くの企業は現在もインドフードと取引関係を継続しており、労働搾取とのつながりが残ったままとなっています。インドフードへの投資家や貸し手には、ブラックロック、ラボバンク、日本のメガバンクのSMBC、みずほ、MUFGが含まれます。

インドフードは、持続可能性への取り組みをインドネシア政府が導入する「持続可能なパーム油のインドネシア国内規定(ISPO)」に集中させると、RSPOへの告知文で述べています。しかしインドネシアの市民団体は、ISPO認証は持続可能なパーム油の実践を確かなものにするには不十分であると批判してきました。

RAN、ILRF、OPPUKの3団体はインドフードに対して、今も続く労働法違反への対処を引き続き求めていきます。また同社に対して、包括的な「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を導入し、自社だけでなく、同社を傘下に持つインドネシア最大の財閥であるサリム・グループ全体、そして独立系の供給業者にも適用するよう求めていきます。

注1)インドフードからRSPO宛の手紙

注2)RANプレスリリース「パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置」、2018年11月5日

注3)3団体による苦情申し立て文書(英語)、苦情申し立ての概要(英語、2016年10月12日付け)

注4)RSPO, “RSPO CEO’s Response to Letter from PT PP London Sumatra Indonesia Tbk (subsidiary of Salim Ivomas Pratama Tbk)”、 2019年1月24日

注5)RSPO、第15回年次総会 決議「GA15-6d」、2018年11月15日

参考
●インドフード社のESGリスクについての分析はRANブログ「3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク:インドフード社の事例」(2018年6月6日)参照のこと

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
http://japan.ran.org

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク: インドフード社の事例(2018/6/6)

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

(本ブログは、RIEF環境研究機構に2018年6月6日に寄稿したものです)

インドフード・スクセス・マクムル社(インドフード:IDX: INDF)は、インドネシア最大の食品会社です。インドネシアの大財閥であるサリム・グループの一社で、同財閥の最高経営責任者のアンソニー・サリム氏はインドフードの最高経営責任者でもあり、インドネシア第4位の富豪です。日系企業ではアサヒグループホールディングス、王子製紙ともそれぞれジョイントベンチャーを設立しています。

2016年以降、インドフードはパーム油事業に関連する深刻な人権侵害について、買い手企業、金融機関や投資家、NGOなどから厳しい監視を受けています。最近では人権侵害以外にも、サリム氏が間接的にコントロールする企業が過去5年で、インドネシアの約1万ヘクタールの泥炭地を違法に皆伐したことが明らかになりました。炭素集約度の高い泥炭地では、1ヘクタール当たり、多いもので100トンの二酸化炭素を排出するという分析もあります。1万ヘクタールでは毎年100万トンを排出する計算になり、これは230万バレルの石油を燃やすのとほぼ同じ排出量になります。

このような問題があるにもかかわらず、同社は前述のように様々な日本企業とビジネス関係を持ち、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を含む、社会的責任や環境への責任を掲げる多くの銀行や投資家から多額の投融資を受けています。またシティグループ、ブラックロックなどの大手金融機関や投資家も多額の投融資をしています。

投融資の決定において「環境、社会、ガバナンス」(ESG)の重要性を認識する銀行や投資家が増えている中で、インドフードの事例はESGへの配慮がまだまだ不十分であることを示しています。

 

森林リスク産品セクターにおけるESGリスクと金融セクターのエクスポージャー

東南アジアは現存する世界最大の熱帯林地域の一つです。しかし急速な森林減少が続いており、その大部分はパーム油、紙・パルプ、木材、天然ゴム(以下、「森林リスク産品」と総称)などの少数の産品によって引き起こされています。これらの森林リスク産品セクターは気候変動、生物多様性の損失、土地収奪、労働者の酷使、贈収賄、違法行為など重大なESGの問題に直面しています。こういったリスクは、業務停止、買い手企業からの契約解除、訴訟などの重大なリスクを引き起こすことで、金融セクターに直接的な影響をもたらし、最終的には顧客企業の債務不履行や投資収益率の悪化だけでなく、金融機関自身の評判低下など、様々なリスクの結果として、投資家や銀行に財政的な損失を与えます(詳細はRANのレポート「投資家には責任がある」をご参照ください)。

これらのリスクにもかかわらず、RANの「森林と金融」の調査によると、大手銀行や投資家、特にアジアの銀行・投資家は、インドフードのようなESGリスクが大きな企業を含めて、このセクターに多額の投融資を行っていることが明らかになっています(下記参照)。

企業融資および引受(国別・セクター別)2010-2016年。単位は10億米ドル
出典: forestsandfinance.org

インドフードおよび関連企業のESGリスク インドフードのサプライチェーン上流におけるパーム油事業のESGリスクは、どの銀行や投資家にとっても憂慮すべきことです。重要なリスクには以下が含まれます。

  • 労働者の酷使:児童労働の使用、危険な労働条件、最低賃金以下の賃金など、インドネシアの20の労働法への組織的な違反についての証拠があります。このような労働者の酷使状況は2016年6月に初めて明らかにされ、2017年11月にRANとパートナー団体によって行われた調査を含めて繰り返し確認されており(詳細はこちら)、また、今年3月を含めて2度、独立監査によって確認されています。
  • RSPO認証基準の違反:インドフードのパーム油生産子会社は、労働搾取の嫌疑について「持続可能なパーム油に関する円卓会議」(RSPO)から苦情申立によって調査されており、認証停止を勧告されるリスクがあります。RSPOがパーム油生産のIOIグループに対して認証一時停止を勧告したときは、27社のバイヤーが取引を停止し、株価が20%下落しました。インドフードの有力な合弁パートナーであるペプシコ社は最近、インドフードのパーム油生産子会社からのパーム油の直接購入を中止しました。他のバイヤー(ケロッグ 、ゼネラルミルズ 、マーズ 、ハーシー 、ロレアル など)もエクスポージャーの軽減に動いています。今年6月にはRSPOの監査が予定されており、100の機関投資家(その資産は合計3.2兆米ドル)がその結果を注視していることを公表しています。
  • 問題のある土地利用:インドフードの子会社であるインドフード・アグリ・リソーシズ(インドアグリ)の農園用地の42%、つまり23万ヘクタールの土地は、地域コミュニティとの紛争、労働争議、開発を制限する環境規制、事業管理地の地図の未公開などのためにその正当性が疑われています。森林リスク産品のESGリスク分析を専門とする研究イニシアチブであるチェーン・リアクション・リサーチによると、これはインドフードおよびインドアグリと、インドフードの親会社であるファーストパシフィックに大幅な株価下落のリスクをもたらしています。
  • 供給源の非公開:インドアグリの製油所で生産される未精製のパーム油の36%は原料の供給源が公開されていないことが判明しており、このことは買い手企業および投資家や銀行にサプライチェーン及びレピュテーションリスクをもたらすと分析されています。

インドフードとサリム・グループ傘下企業は、コーポレート・ガバナンスの欠陥 についても批判されており、これは森林減少リスクを助長する「リスク乗数」とみなされています。 ワシントンDCを拠点とするコンサルティング会社のクライメート・アドバイザーとインドネシアの政策研究団体アウリガは、「企業はインサイダー情報や複雑な企業構造を利用して業績不振や違反行為を隠蔽することができます。リスクが隠されることで投資家や融資機関が十分な情報に基づく投融資決定を行うのが困難になり、アカウンタビリティが低下します」と説明しています。彼らの調査によると、インドフードの子会社で、上場しているパーム油製造企業の2社、サリム・イボマス・プラタマとロンドン・スマトラは「インドネシアの1999年の独占禁止法違反の嫌疑がかけられている」ことが指摘されています。

インドフードの最高経営責任者のアンソニー・サリム氏はまた、インドネシアの熱帯林と泥炭地の皆伐を続けている民間プランテーション事業への関与をめぐって、人々の関心を広く集めています。今年4月、サリム氏がアブラヤシ農園企業のドゥタ・レンドラ・ムルヤ(PT Duta Rendra Mulya:DRM社)とサウィット・カトゥリスティワ・レスタリ社(PT Sawit Khatulistiwa Lestari: SKL社)を財務面で間接的にコントロールしていたり、共同出資者を通じてつながっていることが明らかにされました。これらの企業は2013年から2017年までの期間、ボルネオ島のケタンガウ(Ketungau)で約1万ヘクタールの炭素集約度の高い泥炭地を不法に皆伐したことが明らかにされています。その多くはインドネシア政府によって保護対象として区分されている区域でした。これらのプランテーション資産は、買い手企業の「森林破壊なし、泥炭地なし、搾取なし」( No Deforestation, No Peatland and No Exploitation:NDPE)の方針、およびインドネシア政府の泥炭地および森林保護の法律・規則のために座礁資産化するリスクがあります(詳細についてはこちらをご参照ください)。

SKL社によって皆伐された土地のドローンによる検証(2017年11月4日)
出典:Aidenvironment, Palm oil sustainability assessment of Salim-related companies in Borneo peat forests, April 2018

金融セクターのエクスポージャーと対応(または不対応)

サリムグループ企業が直面する様々なESGリスクへの金融セクターの対応は弱々しく、期待外れです。これは彼らの持続可能性と人権へのコミットメント、さらには合法性へのコミットメントに対してさえ、重大な懸念をもたらすものです。

サリム・グループの主な融資元、引受機関、投資者。
出典: forestsandfinance.org, Indofood Financial Statements & Bloomberg

 

上の図が示すように、有名な銀行や投資家がサリム・グループの傘下企業に数十億ドルを投融資しています。貸し手のトップ3は、インドネシアの大手銀行のバンク・セントラル・アジア、みずほ、SMFGです。また、三菱UFJはインドフードに直接融資しており、GPIFはインドフード、ファーストパシフィック及び関連会社のインドフードCBPに投資しています。サリム・グループの複雑な企業構造や所有構造のため、金融機関は融資した資金が実際にどのように使われているか知るのが難しくなっています。

投資引き上げを実施した最初の投資家の一つは、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金グローバルです。同基金はインドアグリファーストパシフィックが「持続可能でない方法でパーム油を生産している」ことを理由に、これらの企業への投資を引き上げました。銀行では、ドイツ銀行がインドフードとその子会社に対して、労働者の酷使状況が暴露された後に融資を中止したことが最初だと考えられます。今年4月にシティグループはインドアグリへの融資を中止しましたが、一方でインドフードのパーム油関連でない別の事業への融資を継続しています。注目すべき点として、ドイツ銀行シティの両行は強制労働と児童労働を明確に禁止しています。

他の金融機関も、インドフードの顕著なESGリスクを考えれば、特に自らが明確に掲げる基準をインドフードが満たしていない場合には、相応の対応をすべきです。最近ではSMFGが人権方針を発表し、みずほは人権に関するデューデリジェンス方針を強化しました。また、5月15 日に三菱UFJが発表した新融資・引受方針では、「児童労働・強制労働を行っている事業」に対して「環境・社会に対するリスクまたは負の影響を認識した場合はファイナンスを実行しません」と明記しています。

これらの動きは称賛に値しますが、3メガバンクのインドフードに対する対応は、その方針を実施するための試金石となるでしょう。また、ブラックロックはすべての投資先企業に対して「社会へのポジティブな貢献」と「すべてのステークホルダーの利益」を求めています。そのためにはインドフードに対する連携した働きかけと、場合によっては投資引き上げが必要となります。

 

必要とされる対策

インドフードとその他のサリム・グループ企業に金融サービスを提供する機関は、同社及び同グループのパーム油事業に起因する環境および人権への有害な影響に対して、責任の一端を負っています。これは多国籍企業に関するOECDガイドラインおよびビジネスと人権に関する国連指導原則に沿った判断です。銀行や投資家はアンソニー・サリム氏に対して、サリム・グループと同氏の”隠れた関連企業”に適用される「森林破壊なし、泥炭地なし、搾取なし」方針の採用を要求し、信頼できる苦情申立メカニズムの確立、確認された労働法違反や継続中の土地紛争を解決するための独立した検証を伴う是正処置、を強く求める最後通告を即座に発行する必要があります。継続的なリスクに対処するためには、金融機関はすべての新規プランテーション開発の即時中止、高炭素貯留(HCS)アプローチの要求事項の遵守、劣化した泥炭地の回復への投資を確約する期限付きの実施計画の公表を要求する必要があります。

残されている熱帯林と泥炭地を保護および回復し、パーム油事業に関連する人権を尊重することは、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の目標実現のために決定的に重要です。金融セクターは問題解決の一翼を担うことを、十分かつ公的に約束するべき時です。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

プレスリリース:新報告書「サリム・レポート」発表 日本のメガバンク3行、近年最大級の熱帯林違法皆伐とのつながりが判明(2018/4/13)

〜インドネシア財閥サリム・グループの関連企業、パーム油生産のための熱帯林皆伐が明らかに〜

サンフランシスコ発ーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、11日、「サリム・レポート:ボルネオ島泥炭林でのサリム財閥関連企業のパーム油に関する持続可能性評価報告書」(”Palm oil sustainability assessment of Salim-related companies in Borneo peat forests” 、注1)を発表し、インドネシアの最大財閥であるサリム・グループの関連企業が、ボルネオ島の熱帯林で続いている違法皆伐において、近年では最大級の事例に関係していたことを明らかにしました。インドネシア政府は泥炭地開発と森林減少を規制し、同グループもその遵守を約束していましたが、約1万ヘクタールの泥炭林がアブラヤシ農園のために違法に開発されていました。本報告書では、同グループ企業に日本のメガバンク3行が多額の資金提供をしていることにも言及し、サリム・グループに働きかけるなど、迅速に対応することを銀行に求めています。

同報告書は、この泥炭地破壊に責任のある2つのアブラヤシ農園企業が、インドネシアの大物実業家であるアンソニー・サリム氏がコントロールしている会社または関係会社であることを明らかにしています。サリム氏はインドネシア最大財閥のサリム・グループを率い、その幅広い企業ネットワークにはインドフード・スクセス・マクムル社(インドフード)と、その親会社のファーストパシフィック社があります。インドフードは世界最大のパーム油生産会社の一つで、インドネシア最大の食品会社であり、食品大手のペプシコとネスレの合弁事業パートナーでもあります。インドフードとファーストパシフィック社は両社とも、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)と、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)から多額の融資を受け、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からの投資も受けています。インドフードは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)からも融資を受けています。

進行する森林減少についてサリム・グループが初めて知らされたのは2016年2月でした。しかし、インドネシア政府から繰り返し泥炭地開発の停止を指示されていたにもかかわらず、介入をしませんでした。それどころか、同グループの子会社は、本報告書内で指摘しているように、当初、インドネシア政府の泥炭復興庁(BRG)が、ほとんどの開発対象地を「優先的に保護すべき泥炭地」と指定していたにもかかわらず、インドネシア政府の泥炭地開発の凍結対象地域を示す地図の区分を開発可能となるよう変更してもらうなどしていました。邦銀とインドネシアの銀行は、このような破壊活動を禁止する方針がないため、最もリスクにさらされている主要な貸し手として目立っています。日本のメガバンク3行はサリム・グループに最大で10億米ドル以上の融資を行っており、中でもみずほは最大の貸し手です。

RAN責任ある金融シニア・キャンペーナーのハナ・ハイネケンは「この報告書は、熱帯林が紛争パーム油のために破壊され続けているにもかかわらず、ビジネスのトップレベルでの怪しい取引や問題対処への怠慢について明確な証拠を示しています。一方、サリム・グループの顧客企業や資金提供者は、何も問題がないかのように同グループと取引を続けており、違法な森林破壊に加担しているのです。みずほ、MUFG、SMFGは、サリム・グループがインドネシアの法律や、森林破壊を伴わない持続可能な開発の規範を遵守するよう促すか、または同グループとの取引関係を解消する責任があります」と訴えました。

RANは昨年11月、インドネシアの労働権擁護団体OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)とともに、インドフードのアブラヤシ農園で労働搾取が続いていることを発表したばかりです(注2)。調査で確認された労働者酷使の事例では、児童労働や強制労働の状況が起きている可能性が高いだけでなく、労働者が日常的に危険性の高い農薬の暴露を受け、給料は最低賃金以下で、違法に臨時雇用者に中心的な役割を果たす仕事をさせ、独立した労働組合の結成を阻止することが含まれます。このような違法な労働行為が起きていたことは最近、独立監査(注3)によって裏付けられました。

ハイネケンは、「サリム氏が継続的な違法労働搾取、そして今は違法な森林破壊に関係していたにもかかわらず、数十億米ドルもの企業融資、債券や株式からの資金が全てサリム・グループの企業に流れています。本報告書は、メガバンクを含む主要銀行が炭素集約度の高い泥炭地破壊促進の役割に加担していたという失敗を明らかにしています。その中には、サリム・グループの環境、社会およびガバナンスのリスクについて繰り返し警告を受けてきた銀行も含まれています。銀行は気候変動に対応する誓約を強化し、泥炭地破壊への資金提供を止める必要があります」と強調しました。

メガバンクと比較して、パーム油に関する融資方針をもつシティグループの対応は素早く、サリム・グループの子会社であるアブラヤシ農園企業のインドフード・アグリ・リソーシズ社とその子会社への全融資をキャンセルし、関係を解消するとともに、本報告書で問題視されているパーム油企業へのエクスポージャーの有無を確認していることを先日通知してきました。

泥炭地は、火災のリスク(農園開発のために排水された後、乾燥して火がつきやすくなる)と気候調節の重要性から、インドネシアの法規制では特別に保護されています。一度火がつくと消化はほぼ不可能です。また、泥炭地は重要な炭素吸収源であり、炭素を地中に蓄えています。アブラヤシ農園開発のために排水された泥炭地では、1ヘクタール当たりで平均55トンの二酸化炭素が毎年排出され(注4)、6,000ガロン以上のガソリンを燃やすのとほぼ同じ量です。よって、今回開発された1万ヘクタールの泥炭地で排出される二酸化炭素の量は、毎年55万トンになります。ちなみに平均的な乗用車は毎年約5トンの二酸化炭素を排出しています(注5)。

また、本報告書ではサリム氏の企業統治に対して深刻な懸念を提起しています。サリム・グループのビジネス帝国は、グループが管理する上場企業と、隠れた関連企業(インドネシアでは「ビジネス・オン・ザ・サイド」と呼ばれる非上場企業)とに分けられます。上場企業は透明性と持続可能性への誓約をしていますが守ることはできず、隠れた関連企業は熱帯林と保護すべき泥炭地を破壊しています。サリム・グループは「インドフード帝国」という表向きの顔とは懸け離れ、破壊的な事業を続けています。パーム油購入企業は、熱帯林を保護して人権を尊重する責任ある生産者からのみ購入する責任があります。同時に、サリム・グループ企業に資金提供している銀行は気候変動に対応するための方針の採択を含め、デューデリジェンスを強化する責任が問われます。

注1)「サリム・レポート」(報告書全文、英語)

本報告書は、持続可能な生産と取引を調査するコンサルタント「AidEnvironment」がまとめた調査に基づき、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、レインフォレスト・ファンデーション・ノルウェー(RFN)、サムオブアス(SumOfUs)が作成しました。

注2)RANプレスリリース「労働搾取、貧困水準の賃金、有毒な健康被害を起こし続けるインドネシアのアブラヤシ農園への邦銀からの融資について、最新レポート発表」、2017年11月28日

注3)“ASI Final Assessment Report”

注4)World Resources Institute, “Destruction of Tropical Peatland Is an Overlooked Source of Emissions”, April 21, 2016

注5)U.S. Environmental Protection Agency (EPA), “Greenhouse Gas Emissions from a Typical Passenger Vehicle”, March 2018

 

 

「サリム・レポート」詳細

報告書全文はこちらから

本報告書は、インドネシアのボルネオ島シンタン地区で操業している2つのアブラヤシ農園企業の森林破壊行為を調査しています。

2つの農園企業とは、アンソニー・サリム氏が株式の過半数を保有しているドゥタ・レンドラ・ムルヤ社(PT Duta Rendra Mulya : DRM社)と、共同出資者を通じてサリム氏と関連のあるサウィット・カトゥリスティワ・レスタリ社(PT Sawit Khatulistiwa Lestari: SKL社)です。

ボルネオ島シンタン地区の最も重要な泥炭地の1万ヘクタールは「ケタンガウ(Ketungau)泥炭湿地」と呼ばれ、アブラヤシ農園開発のためにラグビー場約1万個分の泥炭湿地が開発されました。

フォーブス誌によると、アンソニー・サリム氏はインドネシア4番目の富豪で、氏の共同経営者は過去に厳しい調査を求められてきました。サリム氏は様々な上場企業(ファースト・パシフィック、インドフード・スクセス・マクムル、インドフード・アグリ・リソーシズ[インドアグリ]、サリム・イボマス・プラタマ、ロンドン・スマトラ)を所有していることで知られていますが、同時に、政府の規制や、開発を禁止している自社方針に反して熱帯林と泥炭地の破壊を続けている多くの非上場グループ企業を(何層にも株主が重なっている場合が多いが)コントロールしていることでも知られています。

サリム・グループのパーム油事業への重要な資金源は銀行融資です。2017年9月30日時点でインドフードとその子会社の帳簿上に20億米ドル以上の融資記録があり、ファースト・パシフィック社には6億8千万米ドルの融資残高があリます。こうした様々な融資は直接SKL社やDRM社が受けている訳ではありません。しかし、サリム・グループの企業構造や所有構造により企業間でのお金の流れが容易になっており、貸し手はDRM社やSKL社に未だつながっていることが示されています。2017年9月30日時点で、みずほは、ファースト・パシフィック社、インドフード、その子会社に約5億米ドル、SMFGは約4億米ドルの融資をしており、三菱UFJは3億米ドル以上の融資をインドフードとその子会社に約束しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

みずほ銀行へ「無責任銀行ジャパン大賞2017」を株主総会前で贈呈

2017年6月23日

東京 —本日開催されたみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の株主総会で、NGO団体が抗議活動の一環として、みずほFGに「無責任銀行ジャパン大賞2017」を授与しました。 参加者たちは、株主に対し、みずほに危険な化石燃料、森林破壊、原子力への投融資の中止を求めるように呼びかけ、これらのリスクを管理するための包括的なESG(環境・社会・ガバナンス)方針の策定を求めました。 また、みずほFGが投融資ポートフォリオ全体におけるESGリスクを完全に開示するよう要請しました。 みずほFGの社員に扮したNGOメンバーが、「無責任銀行ジャパン大賞2017」という大きな受賞プレートを受け取り、他のメンバーは「みずほ:気候変動を加速させる銀行業務をやめよう」というバナーを持って行動に加わりました

この模擬授賞式は、NGO4団体レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japan、FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が昨日発表した「みずほフィナンシャルグループに関する2016年 ESG評価レポート」調査結果を強調するために行われました。 レポートは、みずほの無責任な銀行業務が、深刻な気候変動を増幅させ、熱帯林を脅かし、人々の健康を危険にさらし、人権侵害を促進していることを示しています。 みずほFGは、これらの問題に対処するための強力な環境、社会、ガバナンス(ESG)方針を策定・採用する点において、世界の銀行に後れを取っており、投資の重大なリスクを株主に適切に開示することができませんでした。

「みずほは、化石燃料や熱帯林破壊に関与している炭素集約度の高い企業に数十億ドルの資金を投入しています。 株主は、これをみずほが適切に開示していない重大なリスクであることを知る必要があります。」と、レインフォレスト・アクション・ネットワークの日本代表、川上豊幸は述べています。

「今日の行動の目的は、気候変動を加速させ、社会や環境問題を引き起こしているみずほFGの無責任な投融資行動に焦点を当てるためです。 みずほFGは責任ある投融資を行い、パリ協定で定められたように気温上昇を2℃以下に抑えるために、化石燃料への資金を削減すべきであります。」と、350.org Japan代表の古野真は述べています。

「みずほFGが資金を提供している幾つかの化石燃料プロジェクトにより、地元の人々の人権が侵害され、生計手段が破壊されている」とFoE Japanの深草亜悠美は語り「これらのプロジェクトがもたらしている負の影響を直視し、融資者として責任を負う必要がある。」と続けました。

NGO団体は、ESG評価レポートを株主が総会会場に入る際に配布しました。レポートでは、みずほFGは2011年と2016年の間に、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)をはるかに上回る、日本の化石燃料関連企業に380億ドル(約4兆円)以上の融資と引受けを行ったことが報告されています。 同じ時期に、東南ア
ジアの熱帯林を脅かす企業に40億ドル(約4456億円)以上の融資と引受けを行い、日本の原子力関連会社には約80億ドル(約8912億円)を拠出しました。 この報告書は、みずほのポー
トフォリオにおけるいくつかの問題点を浮き彫りにしています。そして、財務ポートフォリオ全体における重要なESGリスクに関する情報開示、気温上昇を2度未満に抑えるという目標達成に向けたポートフォリオの投資先・融資先企業における炭素排出量削減ロードマップの策定、包括的なESG方針の発表をみずほFGに要請することなど、みずほFGの株主に対する具体的な提案を記載しています。

ダウンロードは:

・みずほフィナンシャルグループに関する2016年ESG評価レポート(英文・和文):www.ran.org/mizuho_riskyinvestment

・みずほフィナンシアルグループへのメッセージ送信サイト(英語):