サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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共同プレスリリース:日本企業に気候変動対策を求める投資家の圧力、一段と強力に(2023/6/29)

国際環境NGO マーケット・フォース
国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

2023年6月29日(木) : 気候変動関連の株主提案は年々増えており、2023年の株主総会シーズンは日本企業に対して提出されたネットゼロの達成に向けた行動と透明性の向上を求める株主提案の数が過去最多となりました。

先週から本日にかけて実施された三菱商事、日本最大の発電事業者であるJERAの株を共同所有する東京電力ホールディングスと中部電力、メガバンク3行(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ)の株主総会で気候変動に関する株主提案が決議されました。

株主提案を行ったのは環境NGOの気候ネットワーク、マーケット・フォース、 またFoE Japan、レインフォレスト・アクション・ネットワークに所属する個人です。株主提案を通じて、対象企業に対して短期を含めた排出削減目標の設定やさらなる引き上げ、気候関連リスクの管理の改善を求めました。

上記の株主提案の議決結果は、気候変動に関するリスクへの対処に関して課題を抱える企業に対して、引き続き厳しい目が向けられていることを意味します。

三菱商事

「今年の三菱商事の株主総会では、約2兆円(140億米ドル)に相当する投資家の約20%が、我々が提出した株主提案の1つに賛成票を投じました。これは、投資家が三菱商事の気候変動に関する情報開示の進展にまだ満足しておらず、2050年までのネット・ゼロへの実行可能な道筋があると結論づけるには不十分であることを示しています」
福澤恵(マーケット・フォース エネルギー・ファイナンス担当)

「昨年の株主提案以降、三菱商事は情報開示内容を拡充するなど、一定の進展がみられた一方で、気候危機を食い止めるために十分な削減目標などを設定していません。さらに、昨今のエネルギー危機は、化石燃料への依存を深めることは気候変動を悪化させるだけでなく、エネルギー安全保障をも悪化させるということを示しました。提案は否決されましたが、引き続き三菱商事の方針強化を求め対話を継続していきます」
深草 亜悠美 (FoE Japan気候変動・エネルギー担当/事務局次長)

中部電力

「中部電力の2050年に向けたロードマップは、実現性・具体性に欠けています。低効率石炭火力のフェードアウト、高効率のアンモニア混焼化などで目標を達成すると主張していますが、具体的な削減策は示されていません。持株会社であるJERAが、国内外で新規の化石燃料事業に関与し、GXのもとで脱炭素策としてのアンモニア混焼を広げようとしていることも問題です。中部電力およびJERAが2050年ネットゼロ目標を達成するための責任を果たすことを引き続き求めていきます」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

東京電力HD

「東京電力では、2050年CO2排出ゼロを掲げながら、そのロードマップは具体性に欠け、根拠となる情報開示がなされていません。特にグループ会社であるJERAは国内最大の排出事業者であり、昨年の武豊火力に続き、今年、来年は横須賀火力と、次々と対策のとられていない石炭火力発電を新規稼働させる予定で、排出量は増大する見通しですが、その説明責任を果たしていません。私たちの提案は否決されましたが、引き続き情報開示を求めていきます」
桃井貴子 (気候ネットワーク理事・東京事務所長)

MUFG、三井住友FG、みずほFG

「MUFG の株主総会では、木質バイオマス発電は石炭などの化石燃料への融資に比べて相対的に少ないため、重要性(マテリアリティ)が少ないという発言が担当者からありました。続けて『マテリアティが増せば対応を検討する』との発言もあり、これは一歩前進したといえます。メガバンク全体では、木質バイオマス発電問題について少しずつ理解が進んでいますが、排出量の算定と厳格な方針策定には至っていません。今後、石炭火力発電への木質燃料の混焼が増えれば、排出量は確実に増え、石炭火力発電の延命につながります。このままでは脱炭素への適切な移行ができません」
川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)

「みずほの株主のおよそ2割の賛同を得られたことは、同行の化石燃料セクターの投融資方針と削減目標が2050年ネットゼロの公約と整合していないことに対する投資家の強い懸念が表明されたと言えます。また、株主総会開催前の段階でMUFGとSMFGの提案にはそれぞれイタリア最大手のアセット・マネージャーであるANIMAをはじめ、運用資産額1870億ユーロ(MUFG)、2780億ユーロ(SMFG)相当を保有する機関投資家がすでに賛同を表明しています。特に脱炭素へのトランジション(移行)の名の下に、新規のガス開発やLNG設備への支援を継続することは、気候科学に真っ向から矛盾し、グリーンウォッシュであるだけでなく、投資家に容認できない多額の財務リスクをもたらします。リスク軽減のためには、適切な財務およびESGリスク評価を行うとともに、気候科学に整合しない政府政策に依存するのではなく、科学に基づき株主が求めている新規の石油・ガスへの投融資を制限する方針を早急に掲げる必要があります」
渡辺瑛莉 (マーケット・フォース, 日本エネルギー金融キャンペーナー)

「3メガとも、年々ポリシーを改定あるいは強化を進めてきているとは云え、総会で経営陣の説明や質疑応答を聞いていると、気候危機、および気候変動の主要因となっている化石燃料に資金提供することについての危機感にギャップがあると感じざるを得ません。日本政府の方針に従っているのでは、ネットゼロに向かう世界の動きから取り残されてしまいます。銀行に限らず、民間各社が日本の脱炭素対策を牽引するようになってくれることを切に願っています」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

報道機関関係者の皆様へ

気候変動に関する株主提案、2023年も日本は最多更新見込み

2023年、多くの投資家がグローバル企業の気候変動対策の遅れに対して、深刻な懸念を表明しました。化石燃料事業への投融資を続ける金融機関や脱炭素対策に遅れが見られる企業に対して、炭素集約型ビジネスへの関与から低排出セクターへの包括的な移行を求める声は強まる一方です。特に、金融機関の取り組みに対しては厳しい視線が向けられており、今年米国のJPモルガン(35%)やウェルス・ファーゴ(31%)、ゴールドマン・サックス(30%)、バンク・オブ・アメリカ(29%)に対して提出された気候変動対策における移行計画を求める株主提案の賛成比率(かっこ内の数字)は軒並み高水準となりました。2023年、日本のメガバンク3行に対して同時に気候変動に関する株主提案を提出した背景には、国際的な投資家や株主が共有する気候危機への強い危機感と、日本の銀行も早急に1.5℃目標に整合する対策を講じるべきとの考えがあります。

日本では、欧州の機関投資家・年金基金計3社からトヨタ自動車に対して気候変動対策における渉外活動に関する年次報告書を作成することを求める株主提案が提出され、国際的な注目を集めました。加えて、電源開発にも2年連続で仏・アムンディ、英・HSBCアセットマネジメント、豪・ACCR(Australasian Centre for Corporate Responsibility)から気候変動に関する株主提案が提出されています。そのほかの企業に提出された議案も含め、2022年に続き今年も気候変動に関する株主提案は過去最多となる見込みです。

日本と気候変動に関する株主提案の効果

マーケット・フォースは2021年、住友商事に対してパリ協定の目標に沿った事業活動のための事業戦略を記載した計画の策定、及び開示を求める株主提案を提出しました。提案は20%の賛成票を獲得し、その後の石炭火力に関するポリシーの改善につながりました。さらに住友商事は2022年2月にバングラデシュのマタバリ2 石炭火力発電所から撤退することを発表しました。

2020年、気候ネットワークがみずほFGに株主提案を行い、みずほFGは日本の銀行として初めて、2050年までの石炭火力フェーズアウト目標(後に2040年に変更)を設定しました。他の2メガバンクもこの動きに追随しています。

2021年、350.org Japan、RAN、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、株主提案を提出しました。決議後、MUFGは2050年までにポートフォリオ全体でネットゼロを目指すことを発表し、日本の銀行として初めてネットゼロバンキングアライアンスに加盟しました。その後、みずほFG、三井住友FGも追随しています。

2022年、350.org Japan、RAN、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三井住友FGに対して気候変動に関する株主提案を2件提出しました。株主提案の提出後、同社は石炭採掘部門の投融資方針を強化し、新規および既存プロジェクトの拡張と関連するインフラ開発への投融資を制限しました。2023年5月には、同社はEACOP(東アフリカ原油パイプライン)に関与していないことを発表しました。

気候変動対策を求める企業と株主の対話は、これまで上記のような形で株主提案に至りましたが、これらの議案は企業の取り組みの改善に重要な役割を果たしました。今年の株主提案の対象となった企業も、これまでに情報開示の改善を行っており、今年に統合報告書が公開されれば、さらに改善されることが予想されます。

 

Photo credit: 350 Japan

関連情報

株主提案に関するより詳しい情報(投資家向け説明資料など)は以下のページを御覧ください
Asia Shareholder Action

共同プレスリリース「国内外の環境NGOが東証プライム6企業に株主提案 〜メガバンク全3社含む日本企業の気候変動対策に問題提起〜」2023年4月11日

株主提案の内容に関するお問合せ先

□ マーケット・フォース(Market Forces) https://www.marketforces.org.au
担当者:Antony Balmain E-mail: contact[@]marketforces.org.au

□ 国際環境NGO FoE Japan https://www.foejapan.org/
担当者:深草亜悠美 E-mail: fukakusa[@]foejapan.org

□ 気候ネットワーク https://www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

□ レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

ブログ:ボルネオとパプアで森林破壊の新たな動き〜背後にひしめく悪しきプレイヤーたち〜(2023/5/22)

インドネシア北カリマンタンに新巨大パルプ工場 60万ヘクタールの熱帯林が危機に

投稿者:RAN, EPN, Auriga, Greenpeace and Woods and Wayside

インドネシアで新たな森林破壊の脅威が浮上

地球の未来を賭けたギャンブルをしてはならない。リスクが高すぎて、私たちの手に負えないからである。インドネシアでは最近、森林保護に一定の進展が見られるようになったが、無謀な企業行動によって利益を得ようとする人々に対する警戒を怠ってはならない。

インドネシアでは、数十年にわたって大規模なアブラヤシ農園やパルプ材用植林地、伐採による森林破壊が容赦なく拡大され続けていたが、森林破壊を減らすための努力が実を結び始めた。この変化は、原生林地域における新規事業許可の一部停止、森林法のより良い実施、国際的なサプライチェーンから要求された一層高い基準により、もたらされている。

しかし、新しい調査報告書『パルピング・ボルネオ(Pulping Borneo)』(パルプ材に変わるボルネオの森)は、この傾向を脅かす不穏な出来事を暴露している。そのひとつは、インドネシア東部の小さな島、タラカン島に建設中の巨大パルプ工場である。この工場がフル稼働すれば、年間330万トンの木材が破砕されることが予測されている。これは年間でトラック10万台分以上の丸太に相当し、ボルネオとパプアの太古の熱帯林60万ヘクタールが危機に瀕することになる。

熱帯林や周辺に住む先住民族コミュニティ、熱帯林が今も支える驚異的な生物多様性、そして気候の安定やインドネシア自身の気候変動への公約に対する熱帯林の重要な貢献にもかかわらず、企業が減少しつつあるインドネシアの熱帯林から利益を得ようとし続けることに驚くことではない。

しかし注目すべきは、この破滅的なゲームに参加している悪しきプレイヤーたちである。それは、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(RGEグループ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、そしてプロクター&ギャンブル(P&G)だ。

写真:Ulet Ifansasti/Greenpeace

「森林破壊のエース」 RGEグループ

トランプの1枚目、つまり最初のプレイヤーは、ケイマン諸島で登記された会社で、タラカン新工場の代表者、フェニックス・リソーシズ・インターナショナル(PT Phoenix Resources International)である。調査の結果、同社はインドネシアで最も裕福かつ最も物議を醸している大物実業家の一人、スカント・タノト氏の支配下にある可能性が高いことが明らかになった。タノト氏はRGEグループの実質的所有者である。

オフショアを通じて、所有権が複数の層から成る複雑な企業構造を構築する企業は珍しくない。この仕組みは、実際に事業を行っている国での税収を大抵の場合は犠牲にして減らし、大企業が税負担を軽減または回避する方法を提供する。それに加えて、企業グループは「シャドーカンパニー(影の会社)」を運営する能力も得られる。「シャドーカンパニー」とは、親会社である企業グループの慎重に管理された対外的イメージに反するような、物議を醸す活動を水面下で行う企業のことである。

RGEグループは、長年にわたりインドネシアの熱帯林を皆伐し、先住民族や地域コミュニティの権利を侵害してきた破壊的な歴史を持つ。しかし2015年以降、RGEグループとその主要構成会社であるAPRIL(紙パルプ会社)、アジアン・アグリ(パーム油生産・精製会社)、アピカル(パーム油加工・販売会社)はいずれも「森林伐採ゼロ」の誓約を含む持続可能性へのコミットメントを強調して宣伝している。RGEグループは、自社の方針は「金銭的関与を問わず、RGEグループが所有、管理、あるいは投資する」すべての企業に対し「例外なく」適用され、「すべての繊維、木材、パルプの第三者供給業者」を含むと主張している。しかし、このコミットメントの信憑性には大いに疑問がある。

「キャッシュの王様」 MUFG 

RGEグループの継続的な拡大の要は、タラカン島の新工場のような資本集約的な事業の資金を銀行に依存していることである。「森林と金融」連合がまとめたデータによると、2016年以降、RGEグループの取引銀行のうち上位15行が、RGEグループの森林セクター事業に合計で50億米ドル以上の融資を行っている。なかでもRGEグループにとって極めて重要な取引銀行のひとつが、日本最大の銀行である三菱UFJフィナンシャル・グループ(東証:MUFG)である。

最近のMUFGの融資に関連して、RGEグループの社長は次のように述べている。 「持続可能性は当社のビジネスモデルの中核であり、サステナブルファイナンス(持続可能な社会を実現するための金融)はRGEにとって進むべき道です。私たちはパートナー銀行からの支援と関心を得ており、2022年に総額16億米ドルの持続可能性に関連した融資を確保しました」。 この声明は、むしろグリーンウォッシュ(訳註:上辺だけの環境配慮アピール)の協定に読める。

MUFGによるRGEグループ企業への多額の資金援助は、「保護価値の高い地域における森林破壊(deforestation)が行われていないこと」を顧客に求めるというMUFG自身の森林セクター方針と矛盾しているように見える。 『パルピング・ボルネオ』報告書は、2015年から2022年にかけて、オランウータンの生息地を含む3万7000ヘクタール以上の自然林を皆伐して得た木材を、RGEグループが関連する別の工場である バリクパパン・チップ・レスタリ(PT Balikpapan Chip Lestari)が加工していたことを明らかにしている。そして2021年には、RGEのパーム油が、スマトラ島の熱帯低地林である「ルーセル・エコシステム」内の原生林を皆伐して栽培されたアブラヤシから生産されたことが暴露されスキャンダルとなっている。他にも問題事例が後を経たないが、残念なことにMUFGからの資金提供は続いている。 

有害な活動につながりのある銀行は総じて、自社のサステナビリティ方針は、幅広い企業グループの中の特定の子会社にのみ適用されると言い訳をする。しかしこのようなあからさまな抜け穴は、森林保護へのコミットメントを事実上無意味なものにしてしまう。また、OECD多国籍企業ガイドラインのような国際基準や、汚職などの問題に関して国際機関が発行したその他の金融基準にも抵触している。

近年、ますます多くの銀行がRGEから手を引いていることは、多くを物語っている。MUFGが掲げる持続可能性へのコミットメントが信じるに値するものなのであれば、MUFGも毅然とした態度でRGEとの関係を断ち切らなければならない。しかし、資金の流れを止めることは解決策の一部に過ぎない。RGEグループや類似するグループの拡大に手を貸した銀行には、被害を受けた地域コミュニティや生態系を救済する責任があるはずである。

写真:北カリマンタン州のタラカン島にあるフェニックス・リソーシズ・インターナショナル社の建設現場、2022年12月 ©️Environmental Paper Network(3°22’57.55 “N-117°31’15.94 “E)

「化粧品の女王」 P&G

次のプレイヤーは消費財企業である。消費財企業は、搾取された土地や人々から調達された安価な原料の需要を牽引する主要な役割を果たしている。例えばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、RGEグループのパーム油部門から原料を調達し、最終的に衛生用品や化粧品などの様々なパーソナルケア製品に使用している。P&Gは「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE)方針を掲げているが、MUFGと同様に不十分で、すべての森林リスク産品に関して取引先企業が関連する企業グループ全体に方針を適用していない。

P&Gは利益を上げ続ける一方で、RGEのような企業グループとのビジネスの代償を、インドネシア全土で森林破壊に立ち向かう地域コミュニティに支払わせている。その事例の一つが、北スマトラ州のコミュニティ「パルガマナン・ビンタン・マリア」に対する、RGEグループの関連企業であるトバ・パルプ・レスタリ(TPL)による土地収奪である。

パルガマナン・ビンタン・マリア」集落は、TPL(紙パルプ生産企業)の操業による影響を受けている数十のバタク先住民族コミュニティの一つである。TPLが収奪した土地は同コミュニティの先祖代々の土地の40%と重なり、その3分の1はすでに同社工場に供給するために産業用パルプ材に転換されている。このプロセスは、コミュニティの十分完全な同意なしに行われた。干ばつの増加や洪水、森林に依存した生活の衰退など、悲惨な影響がすでに生じている。地域コミュニティは組織化して、P&Gのような世界的な消費財企業に対して、TPL社が彼らの慣習林を返還し、先住民族コミュニティを犯罪者扱いする不当行為や脅迫を止めるまで、RGEグループ全体との取引を停止するよう求めている。

破滅的なゲームに終止符を打つ

今、P&GやMUFGのような消費財企業や銀行が、方針の抜け穴を悪用するのを止めるべき時が来ている。国際企業や金融機関のサステナビリティ方針は、森林や泥炭地の破壊、あるいは地域コミュニティや労働者の搾取に関与する企業グループとの取引を禁止しなければならない。そしてその方針は、1)森林リスクがあるセクターにおける全ての産品を対象とし、2)取引先企業が関連する企業グループ全体に適用されなければならない。この二つの要件を持たない方針は全て、消費財企業や銀行が引き起こしている真の被害から意図的に目をそらすための巧妙なごまかしにすぎない。

朗報は、消費財企業や銀行が、顧客や供給業者の企業グループの全容を評価するために、特別に考案された詳細な方法論が存在することである(訳註:『Shining Light on the Shadows(影に光を当てる)』で説明)。この方法論は、アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFI)による「企業グループ」の定義ーー「当事者のいずれかが他方の行動や業績を監督するという関係によって企業が提携する法人の総体」ーーを用いている。 このアプローチは、消費財企業や銀行の方針範囲の基礎となるべきである。

森林破壊に関する課題と解決策は、熱帯林が広大であるのと同じくらい複雑であるが、ひとつ確かなことがある。「森林と森の民の人権を守る(キープ・フォレスト・スタンディンク)」ためには、消費財企業や銀行は「環境に配慮しているふり」をやめ、しっかりとした方針を打ち出し、真剣に取り組む必要がある。陰で森林を切り倒し、地域コミュニティを破壊する企業グループに現金を提供し、契約書を交わすことは「持続可能」とは言えない。 私たちはその行為を実態に即して呼ぶ必要がある。それは「単純明快な不正行為」であると。

*本記事は、英文 ”The Players Behind a New Wave of Deforestation in Borneo and Papua”(2023年5月22日)の和訳版です(2024年2月15日投稿)。

 

共同プレスリリース:パリ協定に整合する気候変動対策の強化を求める株主提案の議決権行使結果(2022/11/8)

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
国際環境NGO 350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

2022年4月、国内外の環境NGOとその代表者を含む複数の個人株主が、金融、商社、電力の3業界の4社(三井住友フィナンシャルグループ、三菱商事、JERAの株主である東京電力ホールディングスと中部電力)に対して気候変動対策の強化を求める株主提案を提出しました。これらの提案は、6月後半の各社の株主総会にて否決されましたが、表2に示すように一定数の賛同を得ることができました。提案は主に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)勧告の内容に沿って、ネットゼロ達成のための具体的な計画の設定・開示を求めるものでした。

今回の調査からは、1) 定款変更という形式への課題が残る一方で、気候変動対策の強化を求める株主提案への支持が国内外の投資家の間で広がっていること、2) パリ協定と整合する経営戦略の策定・開示を求める提案への支持がより集まった一方で、企業のビジネスモデルの根幹に影響をおよぼし得る株主提案への支持も一定程度集まったこと、3) 大手議決権行使助言会社の判断に関わらず、企業との建設的対話(エンゲージメント)を通じて独自の判断を下す投資家が増えてきていること、が見てとれました。

ここに各提案に対する議決権行使の調査結果を報告致します。 

 

株主提案に対する議決結果

4社の提案に対する機関投資家の議決権行使状況を公開情報から調査した結果、2022年10月31日までに把握できたそれぞれの提案に対する賛否(企業・団体の数)は表1のとおりです。(提案詳細は表2を参照)

*分裂とは、企業またはグループ会社の中で議決権行使の賛否が分かれているケース。合計とは、各提案に対して議決権行使を行った投資家の中で、今回の調査で結果が確認できた企業・団体の数の集計。

気候変動に関連する株主提案は世界でも増加しています。こうした提案に対し、長期的な気候変動リスクに適応する戦略の策定および開示は企業価値の向上に資するとする賛成の意見がある一方、中長期的な企業価値に対する気候変動リスクは重要だが定款に入れ込むのは対象企業の業務執行に具体的な制約を加える懸念があるといった反対意見も見受けられました。

日本の会社法の下で株主からの提案を議題に載せるには、定款変更を求めるものに縛られている状況を踏まえると「定款への記載が妥当ではない」ことが判断理由とされてしまう点は課題です。一方で議決権行使結果を見ると、気候変動問題の重要性に対する理解は着実に広がっていることが見てとれます。

 

議案に対する賛成率

議案に対する賛成率からは、パリ協定と整合する経営戦略の策定・開示を求める提案(SMBCグループ議案4・三菱商事議案5)に対して、投資家からの賛成が得やすい傾向が見られます。とはいえ、企業の事業戦略(ビジネスモデル)の根本にも影響し得るネットゼロに向けた移行を求める株主提案にも10~20%程度の支持が得られていることは注目に値します。議決権の2/3以上の賛成を得られていない以上、法的拘束力はありませんが、企業としても無視できない数の機関投資家が気候変動対策の強化を求めていることを示唆しています。

大手助言会社や国内外の運用受託機関の判断

今年は、投資家の議決権判断に一定の影響力を有すると言われている、議決権行使助言会社大手のグラスルイス(Glass Lewis)とインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)の判断も大きく分かれました。

SMBCグループの議案4、三菱商事の議案5、6については、助言会社の意見が割れていたにも関わらず、株主から一定の賛同を得られたのは、2050年ネットゼロという明確な目標に向け、気候変動対策に関する方針に対して独自の判断を下す機関投資家が増えてきていることや、機関投資家が議決権行使前に企業とサステナビリティ(持続可能性)に関する建設的な対話(エンゲージメント)をする機会が増えていることが背景にあると思われます。

2020年にみずほフィナンシャルグループに株主提案を出した時点では、国内の機関投資家が助言会社以外の国外の機関投資家の動向に追随する動きは限定的でした。2020年に日本版スチュワードシップ・コードが改訂されて以降、日本の機関投資家にとっても「気候変動対策と経営戦略」のつながりについての認識が変化してきているように見受けられます。

定款変更に記載する内容として適切かという議論は残るものの、気候変動問題の重要性や、中長期的な計画が企業価値に影響をおよぼすとの認識への理解は広がってきています。その傾向は、国外の主な機関投資家の提案に対する議決権行使結果を見るとより明らかです。

国内投資家に比べると国外投資家は賛成票が多くなっています。一方で、エネルギー危機の中で脱炭素の機運が弱まりかねない状況下において、すべての提案に一括して「反対」した国外の大手資産運用会社があったことは懸念されます。

 

今後に向けて

国内外の機関投資家の多くは、2050年ネットゼロを目指す資産運用会社の国際的な枠組みである「ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブ(NZAMI)」に署名しています。NZAMIのコミットメントを達成できるかどうかは投資先企業の行動に大きく依存するため、機関投資家は投資先企業に対し脱炭素化に向けた取り組みの強化・加速化を促していく必要があります。

企業側は、TCFDレポートを作成して情報開示を進めたり、2050年に向けた長期目標を設定し、独自の気候変動対策計画を公開するなど、一定の取り組みは進めていますが、株主提案の対象となったいずれの企業も2050年の目標達成に向けた具体的な計画を示すには至らず、対策は不十分なままです。各社は、株主提案への議決権行使結果も踏まえ、脱炭素目標に向けて現実的かつ具体的な行動を盛り込んだ計画を示し、行動を加速させていくことが強く求められています。

 

集計結果

株主提案への議決権行使結果(PDF)

 

関連情報

【プレスリリース】国内外の環境NGOが国内4企業に株主提案(2022年4月13日)

【共同プレスリリース】三菱商事への株主提案は否決:三菱商事は情報開示と気候変動対策の強化を(2022年6月24日)

【共同プレスリリース】 株主総会にて東電・中電とも否決、ただし東電は約9.55%(速報値)獲得(2022年6月28日)

【共同プレスリリース】投資家たちが日本企業に迅速な気候変動対策を要求(2022年6月29日)

本件の連絡先

気候ネットワーク   https://www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

共同プレスリリース:投資家たちが日本企業に迅速な気候変動対策を要求(2022/6/29)

マーケット・フォース
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
国際環境NGO 350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

写真:SMBCに気候変動株主提案を提出した団体と個人株主

2022年6月29日(水)、 日本企業に対しネットゼロの達成に向けた行動と透明性の向上を求める株主提案を支持した株主の数が過去最多となりました。

本日から先週にかけて、220億ドル(3兆円)の資産を保有する株主が、三菱商事、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)、そして日本最大の火力発電事業を保有するJERAを共同所有する東京電力ホールディングスと中部電力の4社に対し、気候リスクの管理を改善するよう訴えました。

株主提案の提案元には気候ネットワーク、マーケット・フォースが団体として、350.org Japan、 FoE Japan、レインフォレスト・アクション・ネットワークに所属する個人が含まれています。

これらの株主提案の議決結果は、気候変動によるリスクの高まりとビジネス慣行を一致させることに課題を抱える企業に対して、これまで以上に厳しい目が向けられていることを意味します。このような深刻な脅威に対抗するための行動を求める機関投資家や株主の強い機運が高まっているのです。

 

三菱商事

「三菱商事は、エネルギー移行を支援すると主張しておきながら、環境負荷もリスクも高いLNGセクターへの大きな投資を続けています。つまり、エネルギー移行と相反する事業に、株主の資産をつぎ込んでいるのです。我々の三菱商事に対し情報開示の拡充を求めた第5号、第6号議案に対してそれぞれ1.2兆円、9600億円に相当する株を保有する投資家から賛同を得ました。この賛同は、同社が新たなLNG計画を進める前に、その計画が2050年ネットゼロ達成のコミットメントに整合したものであるかを証明する必要があるという投資家の明確な支持表明です。」

福澤恵(マーケット・フォース エネルギー・ファイナンス担当)

 

「三菱商事は2050年のネットゼロ目標を掲げていますが、その内容は不明瞭で不十分なものでした。気候変動目標と現状の企業経営のギャップ、対策のあるべき姿について、対話を通じ互いの理解を深めることがある程度できたと感じていますが、必要とされる行動とスピード感がまだまだ足りていません。気候危機は社会全体に影響を及ぼしており、企業自体もその影響を受けます。引き続き、対話やさまざまな手法を通じ、企業に対し行動変容を求めていきたいと思います。」

深草 亜悠美 (FoE Japan気候変動・エネルギー担当)

中部電力

「中部電力とも対話を続けてきましたが、まだまだ気候変動の危機感や世界の脱炭素に向けた流れについての理解に溝があるという印象であり、同社は株主総会でも電力の安定供給を重視し、および国の政策に従うとの会社の方針が主張していました。とはいえ、今回の中部電力と東京電力への株主提案に一定数の賛同が得られたということ、さらに電源開発(J-POWER)に対する国外の機関投資家からの脱炭素戦略の強化を求める株主提案(3つの議案)に各々約26%、約18%、約19%の賛成率を獲得していることからも、両社および2社が株式を保有するJERAの事業経営に影響を及ぼすと期待しています。」

鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター) 

「石炭とLNGを拡大するJERAの計画は、中部電力の株主に容認できないリスクをもたらします。世界が気候目標に沿って動くにつれ、中部電力グループの化石燃料関連資産が座礁するリスクが高まります。 JERAへの投資を通してもたらされる気候関連の財務リスクがどの程度なのかより良く理解するため、中部電力の2割もの投資家が、中部電力に明確な開示を要求することに賛同したのは当然とも言えます。」

鈴木幸子(マーケット・フォース 気候とエネルギー調査担当)  

 

東京電力HD

「東電・中電が50%ずつ株式を保有しているJERAは、日本最大の火力発電事業者であり、世界の脱石炭の潮流に逆行して、今なお対策のとられていない巨大な石炭火力発電所を神奈川県横須賀市や愛知県武豊町に建設しています。また、ゼロエミッションを目指すとしながらも、その内容は実用化の目途もたたない水素・アンモニア混焼やCCUS技術に投資を振り向け、 保有する火力発電設備を将来温存する意向です 。このことは、将来の火力発電所の座礁資産化を招く可能性が高く、株主に甚大な不利益をもたらすリスクそのものです。とりわけ東京電力は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が54.74%の株を保有し、事実上国有化された企業です。今回、我々の提案は9.55%の賛成を得ましたが、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の持つ54.74%を差し引けば、単純計算で21.1%の賛成があったことを意味し、気候リスクの財務情報開示の重要性が高く認識されていると考えられます。東電・中電および国は、JERAへの投資に対する気候関連の財務リスクを開示することが日本最大のエネルギー企業としての責務であることを認識すべきです。

桃井貴子 (気候ネットワーク理事・東京事務所長)

「今日の結果は、2050年実質排出量ゼロへの道筋で、新規の石炭・ガス火力発電所、新規ガス田と関連インフラを積極的に開発しているJERAのような会社を抱える東京電力に対する株主からの非難の表れです。東京電力に対し情報開示の拡充を求めた私たちの株主提案に、848億円に相当する株を保有する投資家から賛同を得ました。 政府が東京電力の株式の過半数を保有してることを考慮すれば、いかに多くの機関投資家が我々の提案に賛同したかを示しています。」

鈴木幸子(マーケット・フォース  気候・エネルギー調査担当)

 

三井住友フィナンシャルグループ

「議案4は、同趣旨の去年の三菱UFJの23%よりも高い賛同率を得られました。ウクライナ戦争とエネルギー危機による化石燃料価格の高騰が続く状況にあり、また、大手議決権行使助言会社2社が評価した計6つの助言項目のうち、議案4の1つを除き、すべての助言は反対を推奨していたにも関わらずです。このことは、投資家が現状のSMBCグループの脱炭素への取り組みが不十分であり、取り組みを加速すべきだとの強いメッセージを取締役会に突きつけたと言えるでしょう。議案5については全く新しいタイプの提案であり、欧米の金融機関に今シーズンに出された類似の提案と同レベルの賛同率となりました。SMBCグループは投資家の要請に応え、短期・中期目標を含む事業計画を策定し、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)をはじめとした化石燃料計画への資金提供からフェーズアウトしていくことで、気候関連リスクの管理を強化するべきです。」

渡辺瑛莉(350 org. Japan シニア・キャンペーナー)

 

「三井住友銀行フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の株主の27%が、同社が気候変動リスクを管理できていないことを懸念しています。つまり、27%は資産額で1.5兆円にものぼり、SMBCの事業計画が化石燃料産業からシフトしていることを示す具体的な行動なしに、2050年のネットゼロ目標やパリ協定を支持するというSMBCの主張が空虚であることを懸念しているのです。 これは、SMBCとその取締役会のみならず、他の日本のメガバンクに対して、強い警鐘を鳴らすものです。」

鈴木幸子(マーケット・フォース  気候・エネルギー調査担当)

 

「太田純CEOは株主総会で、森林セクターを重要視していること、そして排出の多いセクターから随時算定していくと発言しました。しかし、SMBCの電力セクターにおける2030年の温室効果ガス削減目標には、木質バイオマス発電や石炭混焼による森林セクターからの排出は含まれていません。このままでは燃料燃焼時の排出がどこにもカウントされないままになり、脱炭素への誤った移行ファイナンスが行われてしまいます。SMBCは電力セクターの排出量算定を見直すと同時に、森林およびパーム油などの農業セクターの排出量を早急に算定し、短期・中期の排出削減目標を策定すべきです。」

川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)

各社株主総会の決議結果


SMBC株主総会後の記者会見


SMBC株主総会会場前でのアピール行動


SMBC株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち


SMBC株主総会会場前でのアピール行動

写真:©️Taishi Takahashi / 350 Japan

編集者・記者のみなさま向けに

2022年、気候変動関連の株主提案が過去最多を記録

環境NGOグループ(マーケット・フォース、気候ネットワーク、350.org Japanの団体と個人)は、今年、日本企業4社に対して、合計6件の株主提案を行っています。6件自体はこれまでで最多ですが、今期は機関投資家を含む他の団体による気候変動関連議案の提出もありました。 

 

株主提案の効果

マーケット・フォースは2021年、住友商事に株主提案を提出しました。その結果、20%の賛成票を獲得し、石炭火力に関するポリシーの改善につなげ、2022年2月にバングラデシュのマタバリ2 石炭火力発電所から撤退することを発表しました。

同年、350.org Japan、RAN、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、株主提案を提出しました。決議後、MUFGは2050年までにポートフォリオ全体でネットゼロを目指すことを発表し、日本の銀行として初めてネットゼロバンキングアライアンスに参加しました。その後、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループも追随しています。

2020年、気候ネットワークがみずほFGに株主提案を行い、みずほは日本初の銀行として2050年までの石炭火力フェーズアウト目標(後に2040年に変更)を設定。他の2メガバンクもこの動きに追随しています。

株主提案の対象となった企業も、これまでに情報開示の改善を行っており、今年に統合報告書が公開されれば、さらに改善されることが予想されます。

 

参考資料

三菱商事 株主提案原文 (JP/EN)

三菱商事 投資家向け説明資料 (EN)

三菱商事 投資家向け説明資料 (JP)

三菱商事 投資家向け説明資料, アップデート (EN) 2022年5月

三菱商事 投資家向け説明資料, アップデート (JP) 2022年5月

中部電力 株主提案原文 (JP/EN)

東京電力 株主提案原文 (JP/EN)

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料(EN)

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料(JP)

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料 アップデート (EN) 2022年5月

東京電力HD/中部電力 投資家向け説明資料 アップデート (JP) 2022年5月

三井住友フィナンシャルグループ 株主提案原文 (JP/EN)

三井住友フィナンシャルグループ 投資家向け説明資料 (EN)

三井住友フィナンシャルグループ 投資家向け説明資料 (JP)

三井住友フィナンシャルグループ  投資家向け説明資料, アップデート (EN) 2022年5月

三井住友フィナンシャルグループ  投資家向け説明資料, アップデート (JP) 2022年5月

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

共同プレスリリース:「化石燃料ファイナンス報告書2022」発表 〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に4.6兆ドルを資金提供〜(2022/3/31)

三菱UFJとみずほがトップ10入り、「ネットゼロ」宣言にも関わらず化石燃料拡大を支援

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)をはじめとするNGOは、30日(米国東海岸時間)、新報告書『化石燃料ファイナンス報告書2022〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』(第13版注1)を発表しました。

本報告書は世界の主要民間銀行による化石燃料への融資・引受をまとめたもので、分析の結果、邦銀4行を含む世界の60銀行は、パリ協定採択後の6年間で約4.6兆米ドルを化石燃料に資金提供し、2021年はパリ協定採択翌年の2016年よりも多い7,420億ドルが提供されたことが明らかになりました。化石燃料産業へ従来通り多額の資金提供が行われたことから、NGOは、気候変動対策の公約と実際の資金提供に大きなズレがあると批判しました。

図1:化石燃料への融資・引受総額(2016年〜2021年、単位:B=十億米ドル)

 

 

図2:パリ協定以降のワースト12銀行(化石燃料への融資・引受額、2016年〜2021年合計)

*他の邦銀順位は、18位 三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)、60位 三井住友トラスト・ホールディングス。

『化石燃料ファイナンス報告書2022』概要

●世界の主要民間銀行60行が化石燃料部門に行った資金提供を示した包括的な報告書。石炭、石油、ガス部門の約2,700社(親会社1,635社)に対する2016年〜2021年の6年間の融資・引受を分析の対象としている。

世界の主要60銀行は、パリ協定採択後の6年間(2016年〜2021年)で合計4.6兆米ドルを化石燃料部門に資金提供し、2021年だけで7,420億ドルが提供された。2020年に続き、2021年の融資・引受額もパリ協定採択翌年である2016年の金額を上回った。また、対象の60行は新規建設・計画など化石燃料を拡大している企業の上位100社に昨年だけで1,855億ドルを提供した。

●全化石燃料部門への資金提供額の上位を独占したのは、前回に引き続き、以下の米国の4行だった。JPモルガン・チェース、シティ、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカの融資・引受額の合計は、パリ協定採択後の6年間(2016年〜2021年)に確認された総額の4分の1だった。

JPモルガン・チェースは今回も化石燃料への融資・引受額が最多で、気候変動カオス(混乱)を引き起こす世界ワースト銀行だった。

●地域別上位銀行は、カナダでロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)、ヨーロッパで英バークレイズ、アジア及び日本では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

●2020年から2021年に化石燃料への資金提供を増やした銀行は、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、みずほフィナンシャルグループ、MUFGそしてカナダの5行だった。

●ロシアのウクライナ侵攻で世界の石油・ガス市場が揺れる中、本報告書で取り扱ったロシア国営エネルギー大手のガスプロムへの融資・引受額が最も多かった銀行はJPモルガン・チェースで、2016年から2021年の合計、そして昨年だけでも最大の資金提供者だった。JPモルガン・チェースは2021年にガスプロムに11億ドルの化石燃料ファイナンスを行った。SMBCグループ2016年から2021年は世界3位で、2021年世界で同率2位。

RAN気候変動・エネルギー部門 政策方針・リサーチマネジャーのアリソン・カーシュは「化石燃料のさらなる拡大は、人類を何世代にもわたって気候変動による災害に陥れる危険性があります。しかし、世界の大手銀行が顧客とする化石燃料企業は掘削や採掘、フラッキング(水圧破砕)など化石燃料開発を積極的に拡大しながら、依然として数百億ドルもの資金提供を浴びるように受けています。ウォール街の銀行、そしてMUFGを始め世界の銀行は、気候の安定した未来を台無しにすることに直接加担しています。今すぐ、これ以上の化石燃料インフラ拡大への支援は終わりにしなければなりません」と訴えました。

RAN日本代表 川上豊幸は「化石燃料インフラの拡大を行う企業へのパリ協定後の支援は、3メガバンク共に減少傾向にありますが、停止することなく継続しています。例えば、3メガバンクはサウジアラビアの国有石油会社のサウジアラムコに資金提供を続けています。このままではパリ協定の1.5度目標の達成が困難になります。またSMBCグループによる化石燃料ファイナンスの総額ではパリ協定採択から2020年まで増加し、2021年には減少に転じましたが、ロシア国営企業のガスプロムへの融資・引受額が2021年は世界2位、2016年から2021年は世界3位でした。一方、MUFGみずほは2020年から2021年にかけて融資・引受額がむしろ増えています」と批判しました。


化石燃料部門別の傾向

●オイルサンド:警戒すべきことに、オイルサンドの資金提供額は2020年から2021年に51%増加して233億ドルに達した。大幅な増加はカナダの銀行であるRBCトロント・ドミニオン(TD)によるもので、JPモルガン・チェースは引き続き主要な資金提供銀行だった。

●シェールオイル・ガス:昨年に621億ドルの融資・引受が行われ、ウェルズ・ファーゴを筆頭とする北米の銀行が中心となった。

●北極圏の石油・ガスJPモルガン・チェース、SMBCグループ、インテーザ・サンパオロが、昨年の融資・引受額で上位だった。

●液化天然ガス(LNG)モルガン・スタンレー、RBC、ゴールドマン・サックスが2021年のLNG部門における融資・引受額で上位だった。この部門は一連の大規模インフラ事業を推進するために、銀行を当てにしている。

●海洋の石油・ガス:大手銀行は昨年、529億ドルをこの部門へつぎ込み、2021年は米国のシティJPモルガン・チェースの資金提供額が最多だった。

●石炭採掘:中国の銀行が石炭採掘の融資・引受を牽引し、中国光大銀行中信銀行が2021年の融資・引受額が最多だった。

※「メガバンクの部門別ファイナンス順位(2016-2021年)と2021年の傾向(2020年比)も参照のこと(注3)。

なお本報告書には、昨年ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA、注2ネット・ゼロのためのグラスゴー金融同盟<GFANZ>の一部)に加盟した銀行が、一方で、最も悪評高い石油・ガス拡大企業への資金提供していた事例も時系列で記載しています。こういった資金提供は、今後数十年にわたって地球が温室効果ガス排出継続に陥ることを促す可能性があります。2021年4月のNZBA発足からすぐに、多くの加盟銀行と加盟予定銀行が「ネットゼロ」達成に逆行するような以下の巨額の取引を行いました。

●2021年5月

○サウジアラムコ:100億ドル(シティ、JPモルガン・チェース
○アブダビ国営石油:15億ドル(シティ、JPモルガン・チェース
○サウジアラムコ:10億ドル(シティ、JPモルガン・チェー

●2021年6月
○カタール・エナジー:1,250億ドル(シティ、JPモルガン・チェース、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス

●2021年8月
○エクソンモービル:1000億ドル(シティ、JPモルガンチェース、バンクオブアメリカ、モルガンスタンレー

本報告書で対象とした60行の内44行は、「2050年までのネット・ゼロ・ファイナンス」による排出量削減を約束しています。上記邦銀4行も参加しています。また28行には、いまだ化石燃料産業のどの部門についても拡大を制限する重要な方針がありません。

世界の第一線の気候科学者たちは、化石燃料の埋蔵量は、残された「カーボンバジェット」(炭素予算)を超えてパリ協定が目標とする1.5度はおろか、世界を2度以上の温暖化に追いやり、気候変動による大災害を引き起こすのに十分すぎるほどの排出量を含んでいると結論づけました。

「世界の脱石油&ガスリスト」最新版は、上流の石油・ガス生産者の事業拡大は限られた企業に非常に集中している事実を明らかにしています(上位20社が化石燃料の開発・探査の半分以上を担っている)。そして本報告書でも、それらの上流の石油・ガス生産企業への銀行の支援も非常に集中していることを示しています(上位20社に資金提供している上位10行は、パリ協定採択以降、大手銀行から上記企業への融資・引受の63%に関与している)。上位10行はいずれも2050年までのネット・ゼロ実現を正式に約束しています。上位10行とは、JPモルガン・チェース、シティ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、HSBC、バークレイズ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、クレディ・アグリコル、ソシエテ・ジェネラルです。

賛同団体からのコメント

気候ネットワーク プログラム・コーディネーター 鈴木康子

「パリ協定締結後、多くの金融機関は気候変動対策を打ち出し、TCFD提言支持を表明しました。しかし本報告書では、日本のメガバンクが気候関連リスクを優先事項と位置づけながらも、化石燃料関連の事業や企業への資金提供を続けている実態が明らかとなっています。気温上昇を1.5℃に抑えるために残された時間が着々と少なくなっている今こそ、気候危機を回避するためにSBT(科学的根拠に基づく目標)に基づく脱炭素・再エネの主力化を最優先で加速させる必要があります」

国際環境NGO 350.org Japanシニア・キャンペーナー 渡辺瑛莉

「本調査により、パリ協定の採択から6年を経てもなお、日本のメガバンク3行が、世界の化石燃料部門に多額の資金提供を続けていることが明らかとなりました。化石燃料の新規および拡張計画への資金提供を継続できる、銀行の現在の方針は、パリ協定の1.5度目標はおろか、銀行自らが掲げるネットゼロ宣言とも整合しません。1.5度目標を守るためには、プロジェクトレベルだけでなく、化石燃料ファイナンスの大部分を占めるコーポレートファイナンスも含めた厳格な方針の策定が急務です。銀行が気候危機の解決と気候関連リスクの管理に真剣ならば、脱石炭方針の抜け穴を塞ぐとともに、ガス・石油を含む化石燃料部門への投融資方針を気候科学に基づき、早急に改めるべきです。」

注1)「化石燃料ファイナンス報告書2022」
全文(英語)
https://www.bankingonclimatechaos.org

日本語要旨
http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2022/03/BOCC_2022_Summary_vJPN.pdf

・取引データはブルームバーグ端末のリーグテーブル機能を用い、融資と引受(株式・債券発行)を集計している。融資・引受額は、対象となる化石燃料関連企業の当該部門の事業活動に基づいて割引して算出している。詳細は英語の「方法論」を参照のこと。
https://www.bankingonclimatechaos.org/wp-content/themes/bocc-2021/inc/bcc-data-2022/Methodology_FAQ_Banking_on_Climate_Chaos_2022.pdf

・本報告書はRAN、バンクトラック、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェンジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラクラブ、ウルゲバルトが執筆し、世界50カ国500以上の団体が賛同している。

注2)日本でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラストホールディングスなどが加盟している。
https://www.unepfi.org/net-zero-banking/

注3)メガバンクの部門別ファイナンス順位と2021年の傾向(2016年比)

 

*英文プレスリリース及び他の賛同団体のコメントは以下を参照ください。
https://www.ran.org/press-releases/new-report-shows-worlds-biggest-banks-continued-to-pour-billions-into-fossil-fuel-expansion-in-2021/

訂正:注3)「メガバンクの部門別ファイナンス順位と2021年の傾向」について、「化石燃料拡大100社」の各行傾向が「↓(下降)」となっていましたが、正しくは「↑(上昇)」でした(2022年4月1日)。

※更新:「化石燃料ファイナンス報告書 2022」日本語要約版を追加しました。同時に、図1および2を日本語版に差し替えました(2022年9月13日)。

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

 

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:MUFGとみずほが「ネットゼロ」不履行、 インドネシア紙パルプ大手の事業拡大に資金提供(2022/1/31)

RAN日本代表 川上豊幸/「責任ある金融」シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

(本ブログはRIEF環境研究機構に1月28日に寄稿したものです)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFGみずほフィナンシャルグループ(みずほ)が深刻なマテリアルリスクと評判リスクに直面している。それはインドネシア紙パルプ大手2社、APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)とエイプリル社(APRIL:アジア・パシフィック・リソース・インターナショナル)への多額の融資に関係している。金融機関は「ネットゼロ」の約束を果たすのであれば、環境・社会面でのリスクを伴う両社の拡大計画には資金提供すべきでない。

(写真:銀行・投資家向け説明資料「エイプリル社の抱えるリスク」より)

 

APP社とエイプリル社の事業拡大計画と資金調達

 APP社とエイプリル社の事業拡大と資金調達について簡単に説明しよう。両社は最近、自社パルプ工場の生産能力拡大計画を発表した。APP社は150%、エイプリル社は55%の拡大を計画し、地球最大の「炭素貯蔵庫」であるインドネシアの泥炭地、熱帯林への負荷の高まりが懸念されている。両社は国外の銀行から事業拡大に必要な数十億ドルの資金調達を目指している。昨年8月、エイプリル社は6億5,000万ドルのセルフアレンジの「サステナビリティ・リンク・ローン」について複数の銀行と交渉中であると報道された。このローンにより持続可能とはいえない拡大計画が可能になる。 

2社への資金提供銀行

RANを含む市民団体(注1)は新報告書を発表し、APP社エイプリル社は木質原料生産を泥炭地に依存し、こういった慢性的な事業リスクに加え、土地紛争や森林破壊に関する深刻なリスクを正確に開示していないと指摘した。2001年のアジア金融危機の際、両社は債権者に多額の損失を与えた過去がある。エイプリル社はニューヨーク証券取引所で上場廃止となり、APP社の140億ドルにのぼる債務不履行は新興市場の歴史の中でも最大レベルだった。 みずほはその債務不履行で影響を受けた多くの銀行の一つだった。

「森林と金融」データベースの新たな分析によると、APP社とエイプリル社への主な資金提供元には、2050年までに「ネットゼロ」達成を約束している銀行や、国連責任銀行原則(UNPRB)に基づいてポートフォリオをパリ協定に整合させることを約束している銀行が10行含まれている(注2)。 MUFGみずほは両社の最大の債権者である。2018年から2020年の期間、MUFGは世界最大のエイプリル社への資金提供者で、みずほは世界4位のAPP社への資金提供者だった。それぞれ1億3,900万米ドルと9億9,000万米ドルを、森林破壊のリスクがある産品部門の事業に資金提供した(以下参照)。

 

エイプリル社について少し説明する。同社はロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループの傘下企業で、同グループはスカント・タノト氏とその一族を実質的な所有者とする国際的な複合企業である。RGEグループにはトバ・パルプ・レスタリ(TPL 、インドネシア)、アジア・パシフィック・レーヨン(APR、インドネシア)、サテリ・ビスコース・レーヨン(中国)、アジア・シンボル(中国)、Bracell(ブラジル)などの木質繊維原料の生産企業がある。

銀行と投資家に開示されていない重要なリスク

新報告書では、炭素の豊富な泥炭地における膨大な量の木質原料生産を通じて、APP社とエイプリル社が世界的に大量の温室効果ガスを排出していることも明らかにしている。泥炭地は世界最大の自然の「炭素貯蔵庫」である。開墾のために排水された泥炭地からは、世界の年間人為的二酸化炭素排出量の約5%に相当する量が排出されている。両社のパルプ工場の原料は、泥炭地を開墾した8万7,000㎢の植林地から供給されている(参考:北海道の面積は8万3,450㎢)。

「森林と金融連合」は、インドネシアの泥炭地からの温室効果ガス排出に関する最新の科学論文の研究結果に基づいて、両社の植林地が地盤沈下や火災によって年間1億1,100万トンの二酸化炭素を排出していると推定している(2015年〜2019年の平均)。この排出量の8割はAPP社のサプライヤーの植林地から、2割はエイプリル社の植林地から排出されたと推定される。これは人口2億7,400万人のインドネシアにおける、年間のエネルギー関連排出量の5分の1に相当する。APP社は市民団体からの質問に対して、自社の土地利用による排出量を測定しているかは明らかにしなかった。一方、エイプリル社は排出量の調査を行ったものの「現時点では基準となる排出量を公表していない」と述べ、泥炭地管理と火災ゼロおよび森林破壊ゼロ方針にしたがって排出を削減していると主張した。

KOARRネットワークのメンバーで、ジカラハリ(インドネシア・リアウ州)コーディネーターのマデ・アリ氏は指摘する。「APP社とエイプリル社は、東南アジア最大の環境破壊企業の2社です。さらに両社は土地の権利や人権を侵害する重大な事例の多くに関与し、熱帯林を皆伐している企業から今も原材料を調達しています。両社の事業拡大は、気候危機の真っ最中に炭素集約型のビジネス戦略を倍増させる無謀な計画です」 。

環境・社会面でのリスクを伴うAPP社とエイプリル社への融資の停止を

MUFGみずほも、インドネシアのパルプ部門関連リスクに対応するために十分な方針がなく、資金提供を通して助長している幅広い負の影響を開示していない。 MUFGのパルプ部門のファイナンス方針は、森林破壊、泥炭地開発の拡大、土地権の侵害を止めることができていない。一方、みずほによるAPP社への資金提供は同グループの方針に違反しているように見える。同時に、両グループのTCFD報告書はAPP社やエイプリル社のような顧客への資金提供が気候変動の影響を助長していることに触れていない。

日本のメガバンクはネットゼロと持続可能な未来に本当にコミットするのであれば、パルプ部門への資金提供について大幅に刷新し、泥炭地での事業から撤退する明確な計画が出るまでAPP社とエイプリル社への融資を停止する必要がある。

注1)インドネシアのKOARRネットワーク、RANも参加する「森林と金融連合」、エンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)、バンクトラック。

注2)ABNアムロ、九江銀行、CIMBグループ、クレディ・スイス、ファースト・アブダビ・バンク、中国工商銀行(ICBC)、インテーザ・サンパオロ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、マラヤン・バンキング(メイバンク)

市民団体による新報告書

●森林と金融連合、「エイプリル社の抱えるリスク:紙パルプ工場拡大への投融資、銀行・投資家にとってマテリアルリスクに」、2021年12月(和訳抜粋版、2022年1月)

●バンクトラック、エンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)「銀行・投資家向け説明資料:APP社のリスク(仮題:Asia Pulp & Paper:Risk briefing for banks and investors、2021年12月9日

参考資料

●RAN「コミュニティの権利を守る〜森林は私たちの一部〜」

インドネシアスマトラ島の事例:紙パルプ生産企業のトバ・パルプ・レスタリ(TPL:RGEグループと関係ある企業)とバタク・トバ先住民族コミュニティの対立

●RAN、TuKインドネシア、ジカラハリ、報告書「三菱 UFJ、森林リスク産品セクターの ESG 方針で後れ:インドネシア子会社 バンクダナモンは方針適用から除外」、2021 年 4 月 28 日