サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

声明:メガバンクが支援する北米パイプライン「ライン3」、活動家らの封鎖で工事中断(2021/7/7)

エンブリッジ社パイプラインに反対する先住民族の抵抗に全米の支持が高まる、活動家らは重罪起訴

RAN事務局長ジンジャー・キャサディ(左)とスタッフ

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、以下RAN)は、2日(現地時間)、「ライン3」オイルサンド・パイプライン建設への抗議の高まりを受けて、以下の声明を発表しました(日本語訳)。

米国ミネソタ州パーク・ラピッズ発——先住民族アニシナアベ族の条約保護地域で建設が進む、エンブリッジ社「ライン3」パイプラインを停止する運動が全米で高まる中、多大な弊害をもたらす同化石燃料プロジェクトの建設を止めるために、各地から集まった活動家が逮捕されるリスクを冒して抗議しています。RAN事務局長ジンジャー・キャサディらは、7月1日、建設に抗議するために平和的な市民不服従運動に参加して重罪に問われています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク事務局長ジンジャー・キャサディ

「ライン3パイプラインは、先住民族と、彼らの権利に対する暴力的行為です。ライン3は、アニシナアベ族や他の部族の人々が条約で保護されている先住民族の権利を侵害しています。この無謀なパイプラインは論理的ではなく、科学的にも理にかなっていません。手つかずの湿地を横切り、ミシシッピ川の源流を通り、地球上で最も汚れた化石燃料であるオイルサンドを1日あたり100万バレル近く運ぶ計画です」
(拘束前に発表した声明より)

抵抗運動への警察による強硬手段に加え、ミネソタ州ハバード郡は保釈金の10%を現金で支払えば釈放するという、従来からある選択肢を認めず、その代わりに5千米ドルの条件付き保釈金と1万米ドルの無条件保釈金の支払いを要求しています。

タラ・ホウスカ ギニウ・コレクティブ創立者
(ライン3パイプラインに反対する先住民運動リーダーの1人)

「最近、シアトル州では13人以上が猛暑で亡くなり、オレゴン州では60人が死亡しました。海岸は燃えています。ここミネソタでは川や湖が干ばつに見舞われています。エンブリッジ社が、むき出しになった川岸からライン3掘削に使用する泥水を吸い上げているからです。正気の沙汰ではありません。合衆国政府は『健全な気候政策』と言っていますが、ライン3は連邦政府の環境影響評価報告書のない状態で建設されています。ライン3建設は犯罪行為です。土地を守る人々はリスクを冒し、切りがなく続くように見える工事用機械に自らの体を鎖でつないで抗議しています。残されたいかなる水をもあきらめないリーダーシップが必要です。環境運動は言葉だけでなく、聖地のために立ち上がらなければいけません。ライン3の建設を止めましょう」

ライン3パイプライン事業は国際エネルギー機関(IEA)が2021年に発表した報告書にも真っ向から反しています。報告書は、さらなる気候変動の壊滅的影響を防ぐためには化石燃料プロジェクトの新規および拡大計画の全てを停止する必要があると明確に述べています。ライン3のような事業が稼働した場合、今後数十年にわたって化石燃料生産が固定されます。短期的にはパイプラインからの石油漏出や流出が予測され、先住民族のオジブワ族居留地の土地や、地域コミュニティが条約によって保護されてきた狩猟、漁業、ワイルドライス耕作の権利がある先祖代々の土地を不必要に壊滅させることになります。

RANスタッフ ローレル・サザリン
(平和的抗議運動に参加した罪で起訴中)

「いま、世界はミネソタ州で起きていることに注目する必要があります。これは喫緊の課題です。だからこそ私たちは、建設中止を求める地域リーダーたちを応援するために自らの体を工事機械に鎖でつなげて抗議しています。ライン3を支援している大手銀行は、スタンディング・ロック居留地のダコタ・アクセス・パイプラインに資金提供した銀行と同じです。銀行にとってライン3事業を支援することは、警察による強行かつ暴力行為を支援することを意味します。銀行は直接、暴行と権利侵害、そして何世代も続く気候災害に加担していることになります。銀行や保険会社は今すぐ、ライン3事業から撤退する必要があります」

*日本語版追記

カナダのパイプライン大手エンブリッジ社が建設する「ライン3」は、カナダのアルバータ州から米国のミネソタ州経由でウィスコンシン州を結ぶパイプライン。1日約76万バレルのオイルサンド原油の輸送を計画している。計画中の事業では、大気中への温室効果ガス排出量が年間1億9,300 万トンが増えると推定され、これは石炭火力発電所の年間排出量の50基分に相当する。

ライン3は猛烈な反対を受けながらもウィスコンシン州とカナダでは建設が完了し、ミネソタ州にパイプラインを延長すれば全ての建設が終了することから、現在、抗議運動が激化している。エンブリッジ社は2020年11月にミネソタ州汚染管理局から同パイプラインの最終認可を取得し、20年12月から同州の区間で建設が始まっている。

ライン3への支援には北米の銀行に加え、日本のメガバンクの3行全てが参加している。その中でも三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はアジア最大の資金提供者であり、みずほフィナンシャルグループは10億ドルの融資の主幹事銀行として重要な役割を果たしている。

ライン3には同プロジェクトに特化したファイナンスがなく、エンブリッジ社は数十社の大手銀行から「一般的な事業目的」に使用できる数十億ドルの融資を受けている。このプロジェクトへの融資は銀行が最近打ち出したネットゼロ公約や人権を尊重するという方針に明らかに逆らっていると言える。ちなみに、ダコタ・アクセス・パイプラインには、MUFGとみずほが主幹事銀行として関わった。

写真:©︎Giniw Collective

参考:

RANブリーフィングペーパー『北米パイプライン「ライン3」と「キーストーンXL」の黒幕〜オイルサンド・パイプライン建設を支援する世界の銀行』、2020年12月16日発行

ブログ「バイデン政権、気候変動対策強化〜『キーストーンXL』パイプライン認可取り消しで高まるメガバンクの政治リスク〜」、2021年1月29日

動画:The Years Project「『ストップ! ライン3』石油パイプラインがもたらす弊害」

英語のプレスリリースはこちら:“Line 3 Construction Halted As Activists Lock Down, Charged with Felonies; National Support of Indigenous Fight Against Enbridge Pipeline Grows”

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org