サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

共同プレスリリース:国内外の環境NGOが国内4企業に株主提案 〜日本企業は過去最多の気候変動関連株主提案に直面〜

マーケット・フォース
国際環境NGO 350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

4月11日、国内外の環境NGOとその代表者を含む個人株主(注)が、金融、商社、電力の3業界の4企業(三井住友フィナンシャルグループ、三菱商事、JERAの株主である東京電力ホールディングスと中部電力)に対し、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出いたしました。

4企業に対する今回の株主提案は、パリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定、あるいは、2050年炭素排出実質ゼロ(ネットゼロ)への移行に向けた資産の耐性の評価および開示などを企業に求めるものです。

近年、公的部門や民間部門によるネットゼロへのコミットメントが増加しています。海外の機関投資家は石炭火力発電事業、さらには化石燃料関連事業への支援中止や投融資からの撤退を進めており、昨年のCOP26でも脱炭素や森林破壊停止に向けた流れが明確に示されました。世界経済は、気候危機の脅威と状況に適応する必要に迫られており、日本はこの転換の最前線にいます。変化が急速に進む中、気候変動に対する戦略の策定、および実質的な対策を怠っている企業は、座礁資産の増加や訴訟、ブランド価値の毀損など将来に対する重大なリスクを抱えていると言えます。投資家は、こうした脅威を懸念し、企業が行動を起こすことを求めているのです。

気候変動への対策を求める株主行動が世界的に増加しています。我々の提案も、パリ協定の目標や2050年までのネットゼロ目標に反して、新たな化石燃料事業への開発を支援したり、融資を継続したりしている企業に行動を促すことを目的としています。

今回、株主提案の対象とした企業(東京電力と中部電力、三菱商事、三井住友フィナンシャルグループ)はそれぞれ環境関連方針を表明している一方で、国内外で化石燃料事業への関与を継続しています。JERA、東電設計(TEPSCO:東京電力ホールディングスのグループ会社)、三菱商事、三井住友フィナンシャルグループの4社が関与している10件のガス事業(計1,780万kW)の運転期間中のライフサイクル排出量は、12億トン(CO2換算)と試算されています。この数字は、日本の2030年までの温室効果ガス排出削減目標のほぼ2倍に相当する量であり、パリ協定と整合しないことは明らかです。

国連や国際的な研究機関は、パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、2020年から2030年の間に、世界の石油生産量は年4%、ガスは年3%減少させなければならないと明らかにしています。また、国際エネルギー機関(IEA)の「Net Zero by 2050(2050年ネットゼロ報告書)」は、新たな化石燃料事業への投資はネットゼロシナリオに整合しないと明言し、低炭素ソリューションに投資していくことを重視しています。

こうした科学的な分析に基づき、機関投資家が企業の気候危機対策を重視する傾向が高まっています。投資家グループ「Climate Action 100+」は、2021年に提出された49件という記録的な数の気候変動に関連する株主提案が「歴史的成功」を収めたと評価しています。この中には、エクソンモービルの取締役会で3人の気候変動への関心が高い取締役が新たに選出された特筆すべき決議も含まれています。

世界中でネットゼロへの関心は高まっており、機関投資家は、既に金融機関や企業のゼロ・エミッションに向けた行動に注目し、目標達成に向けた行動を促しています。図らずもウクライナ情勢がエネルギー供給における地政学リスクを顕在化させている中、輸入に大きく依存する化石燃料からの早期撤退が一層必要となっています。

企業が我々の提案を真摯に受け止め、気候変動対策をさらに強化し、脱炭素社会に向け、企業価値の向上を図ることを期待しています。

4社に対する提案はこちら

三井住友フィナンシャルグループへの株主提案(PDF)
三菱商事への株主提案(PDF)
東京電力ホールディングスへの株主提案(PDF)
中部電力への株主提案(PDF)

注) 各株主提案の提出団体および個人株主は以下の通り。なお、個人株主の所属団体は各株主提案を支持している。

三井住友フィナンシャルグループへの株主提案
団体としては、NGOマーケット・フォース(豪)、気候ネットワーク(日)、個人としては、横山隆美(350.org Japan代表)及び渡辺瑛莉(同シニア・キャンペーナー)、川上豊幸(米NGO RAN日本代表)が共同提案に参加。

三菱商事への株主提案
法人としては、マーケット・フォース、気候ネットワーク、個人としては、深草 亜悠美 (FoE Japan 気候変動・エネルギー担当) が共同提案に参加。

東京電力ホールディングスおよび中部電力への株主提案
マーケット・フォース、気候ネットワークが共同で提案。

 

連絡先

マーケット・フォース(Market Forces) https://www.marketforces.org.au
担当者:鈴木幸子 E-mail: sachiko.suzuki[@]marketforces.org.au
担当者:福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa[@]marketforces.org.au

国際環境NGO 350.org Japan https://world.350.org/ja/
担当者:伊与田昌慶 E-mail: japan[@]350.org

国際環境NGO FoE Japan https://www.foejapan.org/
担当者:深草亜悠美 E-mail: fukakusa[@]foejapan.org

気候ネットワーク https://www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

共同プレスリリース:MUFGが気候関連ポリシー改定と電力・石油ガスセクターの2030年脱炭素目標を公表 (2022/4/1)

〜1.5℃にいまだ整合せず〜

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、①「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」の改定について、並びに②MUFG Progress Reportを公表しました。

環境NGO6団体は、MUFGの気候変動関連ポリシーおよび脱炭素に向けたセクター別2030年の定量目標の設定について、一定の前進を歓迎するものの、以下のような問題点があると考えます。

 

1.石炭火力発電所向けコーポレートファイナンス残高目標の設定

従来の「2040年までに石炭火力発電所向けプロジェクトファイナンスの残高目標をゼロにする」から、電力セクターの顧客向けコーポレートファイナンスに範囲を拡大したことは前進です。一方で、プロジェクト紐付け以外のコーポレートファイナンスは継続できると解釈できます。新規および既存発電所の拡張計画を持つ企業へのあらゆるファイナンスを制限する方針を持つ海外の銀行の方針と比べてもいまだ不十分です[1]

さらに、「脱炭素社会への移行に向けた取り組みに資する案件は除外」としていることから、CCUS(炭素回収・有効利用・貯留)やアンモニア・水素混焼等の技術を用いた石炭火力発電所案件が対象外となっていることも問題です。こうした技術は不確実性が大きく、2030年までの排出削減にほとんど寄与せず、既存発電所の延命に繋がる恐れがあります[2]

また、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるためには、石炭火力発電所の稼働を先進国で2030年、世界全体で2040年にはゼロにする必要があります。地域別のアプローチをとっている海外の銀行と比べ、MUFGの方針はいまだ不十分であり、1.5℃目標に整合するとは言えません。

2.「電力」および「石油・ガス」部門の2030年中間目標の設定

2050年投融資ポートフォリオのネットゼロに向けた ①「電力」および②「石油・ガス」セクターにおいて、2030年中間目標を設定したことは、他の邦銀に先駆けての公表であり、一定の前進として歓迎します。一方で、「電力は排出原単位を349gCO2e/kWhから156-192gCO2e/kWhに削減」としていますが、排出原単位を目標とすることは、化石エネルギー電力を増やすことができるという意味において不十分であり、絶対量での削減目標の設定が必要です。また、「石油・ガスは絶対排出量を83MtCO2eから15%-28%削減する目標 」とし、IEAの2℃シナリオまた1.5℃シナリオに整合的だとしていますが、IEAのシナリオはオフセット技術に大きく依拠していることから、COP26で改めて確認されたように、少なくとも世界全体で2030年までの排出量半減が求められます[3]。また、対象範囲を「上流生産事業」に限定しており、石油・ガスパイプラインやLNGターミナル、石油・ガス火力発電所といった化石燃料インフラへの支援は対象外だと解釈できます。こうした中流・下流部門も対象にすべきです。

3.鉱業(石炭)セクターポリシーの改定

従来の「山頂除去採掘方式のみ、石炭採掘事業向けファイナンスを禁止」から、「発電事業向けの新規の一般炭採掘事業へのファイナンスを禁止」としたことは前進ですが、既存案件の拡張事業や、石炭採掘企業向けのコーポレートファイナンスなどは依然として可能であることなどの抜け穴を残しており、1.5℃目標と整合しません。例えば、石炭採掘セクターにおいて拡張計画をもつ、オーストラリアのホワイトヘイヴン・コールやインドネシアのアダロ・エネルギーなどの石炭採掘専業企業に資金提供を継続することが可能です。

なお、みずほフィナンシャルグループはすでに昨年春、今般のMUFGの改訂方針と同様の方針を掲げています。

4.石油・ガス(シェールオイル・ガス、パイプライン)セクターの追加

「ファイナンスに際して特に留意する事業」に、石油・ガスセクターのうち、従来の「オイルサンド」、「北極開発」に加えて、今回新たに「シェールオイル・ガス」、「パイプライン」を追加しましたが、いずれも環境・社会リスクの影響評価に留まり、ファイナンスを禁止するに至っていないことから、そうした方針を持つ海外の金融機関と比べても大きく遅れをとっていると言えます[4]

<共同リリース団体よりコメント>

国際環境NGO 350.org Japan、シニア・キャンペーナー、渡辺瑛莉

「方針発表の前日、MUFGはパリ協定採択以降の化石燃料部門への資金提供で、世界第6位、アジア第1位のワースト銀行であることが国際NGOの調査で明らかになりました[5]。MUFGが今般の発表でいくつかの前進を見せたものの、期限の遅さや抜け穴を多く残していることで、1.5℃に気温上昇を抑えるための気候科学に沿っているとは見なされません。また、今般、邦銀として初めて電力セクターおよび石油・ガスセクターのネットゼロに向けた2030年排出削減目標を公表しましたが、それらも1.5℃目標を守るには不十分であり、さらなる目標の上積みが必要です。気候危機に人類が対応するためには、新規化石燃料インフラや既存設備の拡張事業の開発余地は残されておらず、銀行もそのような事業やそれらを推進する企業へのファイナンスを行わない方針を早急に掲げるべきです。」

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、プログラム・ディレクター、田辺有輝

「この方針を発表する前日の3月31日に、三菱UFJ銀行は子会社のBank of Ayudhya(現地呼称クルンシィ)を通じて、タイで計画されているヒンコンガス火力発電事業への融資契約を締結したと報道されています。昨日の融資決定は、本日の方針・目標強化の発表に泥を塗ることになった上、発表した石油・ガスセクターに関する方針がパリ協定の目標達成に不十分であることに、改めてスポットライトを当てることになりました。新規石油・ガス事業への融資を早急に停止することが必要です。」

<本件に関するお問い合わせ>

Email: japan@350.org (担当:渡辺)


[4] 世界の66の金融機関・機関投資家が、オイルサンド、北極圏、シェールオイル・ガス、超深海など、技術的にも費用的にも実用化が比較的難しく環境負荷もより大きい非在来型の化石燃料セクターへの支援を制限する方針を有する。既存の技術で採掘が容易で経済的にも利用しやすい在来型の化石燃料も含めて支援を制限するセクター方針を持つ金融機関は14社。https://world.350.org/ja/press-release/20220322/

共同プレスリリース:「化石燃料ファイナンス報告書2022」発表 〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に4.6兆ドルを資金提供〜(2022/3/31)

三菱UFJとみずほがトップ10入り、「ネットゼロ」宣言にも関わらず化石燃料拡大を支援

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)をはじめとするNGOは、30日(米国東海岸時間)、新報告書『化石燃料ファイナンス報告書2022〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』(第13版注1)を発表しました。

本報告書は世界の主要民間銀行による化石燃料への融資・引受をまとめたもので、分析の結果、邦銀4行を含む世界の60銀行は、パリ協定採択後の6年間で約4.6兆米ドルを化石燃料に資金提供し、2021年はパリ協定採択翌年の2016年よりも多い7,420億ドルが提供されたことが明らかになりました。化石燃料産業へ従来通り多額の資金提供が行われたことから、NGOは、気候変動対策の公約と実際の資金提供に大きなズレがあると批判しました。

図1:化石燃料への融資・引受総額(2016年〜2021年、単位:B=十億米ドル)

 

図2:パリ協定以降のワースト12銀行(化石燃料への融資・引受額、2016年〜2021年合計、単位:B=十億ドル)*JPモルガン・チェースが2位に34%の差をつけてトップ

*他の邦銀順位は、18位 三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)、60位 三井住友トラスト・ホールディングス。

『化石燃料ファイナンス報告書2022』概要

●世界の主要民間銀行60行が化石燃料部門に行った資金提供を示した包括的な報告書。石炭、石油、ガス部門の約2,700社(親会社1,635社)に対する2016年〜2021年の6年間の融資・引受を分析の対象としている。

世界の主要60銀行は、パリ協定採択後の6年間(2016年〜2021年)で合計4.6兆米ドルを化石燃料部門に資金提供し、2021年だけで7,420億ドルが提供された。2020年に続き、2021年の融資・引受額もパリ協定採択翌年である2016年の金額を上回った。また、対象の60行は新規建設・計画など化石燃料を拡大している企業の上位100社に昨年だけで1,855億ドルを提供した。

●全化石燃料部門への資金提供額の上位を独占したのは、前回に引き続き、以下の米国の4行だった。JPモルガン・チェース、シティ、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカの融資・引受額の合計は、パリ協定採択後の6年間(2016年〜2021年)に確認された総額の4分の1だった。

JPモルガン・チェースは今回も化石燃料への融資・引受額が最多で、気候変動カオス(混乱)を引き起こす世界ワースト銀行だった。

●地域別上位銀行は、カナダでロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)、ヨーロッパで英バークレイズ、アジア及び日本では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

●2020年から2021年に化石燃料への資金提供を増やした銀行は、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、みずほフィナンシャルグループ、MUFGそしてカナダの5行だった。

●ロシアのウクライナ侵攻で世界の石油・ガス市場が揺れる中、本報告書で取り扱ったロシア国営エネルギー大手のガスプロムへの融資・引受額が最も多かった銀行はJPモルガン・チェースで、2016年から2021年の合計、そして昨年だけでも最大の資金提供者だった。JPモルガン・チェースは2021年にガスプロムに11億ドルの化石燃料ファイナンスを行った。SMBCグループ2016年から2021年は世界3位で、2021年世界で同率2位。

RAN気候変動・エネルギー部門 政策方針・リサーチマネジャーのアリソン・カーシュは「化石燃料のさらなる拡大は、人類を何世代にもわたって気候変動による災害に陥れる危険性があります。しかし、世界の大手銀行が顧客とする化石燃料企業は掘削や採掘、フラッキング(水圧破砕)など化石燃料開発を積極的に拡大しながら、依然として数百億ドルもの資金提供を浴びるように受けています。ウォール街の銀行、そしてMUFGを始め世界の銀行は、気候の安定した未来を台無しにすることに直接加担しています。今すぐ、これ以上の化石燃料インフラ拡大への支援は終わりにしなければなりません」と訴えました。

RAN日本代表 川上豊幸は「化石燃料インフラの拡大を行う企業へのパリ協定後の支援は、3メガバンク共に減少傾向にありますが、停止することなく継続しています。例えば、3メガバンクはサウジアラビアの国有石油会社のサウジアラムコに資金提供を続けています。このままではパリ協定の1.5度目標の達成が困難になります。またSMBCグループによる化石燃料ファイナンスの総額ではパリ協定採択から2020年まで増加し、2021年には減少に転じましたが、ロシア国営企業のガスプロムへの融資・引受額が2021年は世界2位、2016年から2021年は世界3位でした。一方、MUFGみずほは2020年から2021年にかけて融資・引受額がむしろ増えています」と批判しました。


化石燃料部門別の傾向

●オイルサンド:警戒すべきことに、オイルサンドの資金提供額は2020年から2021年に51%増加して233億ドルに達した。大幅な増加はカナダの銀行であるRBCトロント・ドミニオン(TD)によるもので、JPモルガン・チェースは引き続き主要な資金提供銀行だった。

●シェールオイル・ガス:昨年に621億ドルの融資・引受が行われ、ウェルズ・ファーゴを筆頭とする北米の銀行が中心となった。

●北極圏の石油・ガスJPモルガン・チェース、SMBCグループ、インテーザ・サンパオロが、昨年の融資・引受額で上位だった。

●液化天然ガス(LNG)モルガン・スタンレー、RBC、ゴールドマン・サックスが2021年のLNG部門における融資・引受額で上位だった。この部門は一連の大規模インフラ事業を推進するために、銀行を当てにしている。

●海洋の石油・ガス:大手銀行は昨年、529億ドルをこの部門へつぎ込み、2021年は米国のシティJPモルガン・チェースの資金提供額が最多だった。

●石炭採掘:中国の銀行が石炭採掘の融資・引受を牽引し、中国光大銀行中信銀行が2021年の融資・引受額が最多だった。

※「メガバンクの部門別ファイナンス順位(2016-2021年)と2021年の傾向(2020年比)も参照のこと(注3)。

なお本報告書には、昨年ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA、注2ネット・ゼロのためのグラスゴー金融同盟<GFANZ>の一部)に加盟した銀行が、一方で、最も悪評高い石油・ガス拡大企業への資金提供していた事例も時系列で記載しています。こういった資金提供は、今後数十年にわたって地球が温室効果ガス排出継続に陥ることを促す可能性があります。2021年4月のNZBA発足からすぐに、多くの加盟銀行と加盟予定銀行が「ネットゼロ」達成に逆行するような以下の巨額の取引を行いました。

●2021年5月

○サウジアラムコ:100億ドル(シティ、JPモルガン・チェース
○アブダビ国営石油:15億ドル(シティ、JPモルガン・チェース
○サウジアラムコ:10億ドル(シティ、JPモルガン・チェー

●2021年6月
○カタール・エナジー:1,250億ドル(シティ、JPモルガン・チェース、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス

●2021年8月
○エクソンモービル:1000億ドル(シティ、JPモルガンチェース、バンクオブアメリカ、モルガンスタンレー

本報告書で対象とした60行の内44行は、「2050年までのネット・ゼロ・ファイナンス」による排出量削減を約束しています。上記邦銀4行も参加しています。また28行には、いまだ化石燃料産業のどの部門についても拡大を制限する重要な方針がありません。

世界の第一線の気候科学者たちは、化石燃料の埋蔵量は、残された「カーボンバジェット」(炭素予算)を超えてパリ協定が目標とする1.5度はおろか、世界を2度以上の温暖化に追いやり、気候変動による大災害を引き起こすのに十分すぎるほどの排出量を含んでいると結論づけました。

「世界の脱石油&ガスリスト」最新版は、上流の石油・ガス生産者の事業拡大は限られた企業に非常に集中している事実を明らかにしています(上位20社が化石燃料の開発・探査の半分以上を担っている)。そして本報告書でも、それらの上流の石油・ガス生産企業への銀行の支援も非常に集中していることを示しています(上位20社に資金提供している上位10行は、パリ協定採択以降、大手銀行から上記企業への融資・引受の63%に関与している)。上位10行はいずれも2050年までのネット・ゼロ実現を正式に約束しています。上位10行とは、JPモルガン・チェース、シティ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、HSBC、バークレイズ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、クレディ・アグリコル、ソシエテ・ジェネラルです。

賛同団体からのコメント

気候ネットワーク プログラム・コーディネーター 鈴木康子

「パリ協定締結後、多くの金融機関は気候変動対策を打ち出し、TCFD提言支持を表明しました。しかし本報告書では、日本のメガバンクが気候関連リスクを優先事項と位置づけながらも、化石燃料関連の事業や企業への資金提供を続けている実態が明らかとなっています。気温上昇を1.5℃に抑えるために残された時間が着々と少なくなっている今こそ、気候危機を回避するためにSBT(科学的根拠に基づく目標)に基づく脱炭素・再エネの主力化を最優先で加速させる必要があります」

国際環境NGO 350.org Japanシニア・キャンペーナー 渡辺瑛莉

「本調査により、パリ協定の採択から6年を経てもなお、日本のメガバンク3行が、世界の化石燃料部門に多額の資金提供を続けていることが明らかとなりました。化石燃料の新規および拡張計画への資金提供を継続できる、銀行の現在の方針は、パリ協定の1.5度目標はおろか、銀行自らが掲げるネットゼロ宣言とも整合しません。1.5度目標を守るためには、プロジェクトレベルだけでなく、化石燃料ファイナンスの大部分を占めるコーポレートファイナンスも含めた厳格な方針の策定が急務です。銀行が気候危機の解決と気候関連リスクの管理に真剣ならば、脱石炭方針の抜け穴を塞ぐとともに、ガス・石油を含む化石燃料部門への投融資方針を気候科学に基づき、早急に改めるべきです。」

注1)「化石燃料ファイナンス報告書2022」
全文(英語)
https://www.bankingonclimatechaos.org

日本語要旨
https://www.bankingonclimatechaos.org/wp-content/themes/bocc-2021/inc/bcc-data-2022/日本語要旨Japanese%20%20Summary_Banki%20ng%20on%20Climate%20Chaos%202022.pdf

・取引データはブルームバーグ端末のリーグテーブル機能を用い、融資と引受(株式・債券発行)を集計している。融資・引受額は、対象となる化石燃料関連企業の当該部門の事業活動に基づいて割引して算出している。詳細は英語の「方法論」を参照のこと。
https://www.bankingonclimatechaos.org/wp-content/themes/bocc-2021/inc/bcc-data-2022/Methodology_FAQ_Banking_on_Climate_Chaos_2022.pdf

・本報告書はRAN、バンクトラック、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェンジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラクラブ、ウルゲバルトが執筆し、世界50カ国500以上の団体が賛同している。

注2)日本でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラストホールディングスなどが加盟している。
https://www.unepfi.org/net-zero-banking/

注3)メガバンクの部門別ファイナンス順位と2021年の傾向(2016年比)

 

*英文プレスリリース及び他の賛同団体のコメントは以下を参照ください。
https://www.ran.org/press-releases/new-report-shows-worlds-biggest-banks-continued-to-pour-billions-into-fossil-fuel-expansion-in-2021/

訂正:注3)「メガバンクの部門別ファイナンス順位と2021年の傾向」について、「化石燃料拡大100社」の各行傾向が「↓(下降)」となっていましたが、正しくは「↑(上昇)」でした(2022年4月1日)。

 

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

 

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

声明:三井住友FG、2050年排出量ネットゼロを約束 (2021/9/3)

「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」もパーム油など農園開発に要求
〜「TCFDレポート2021」発表に伴い方針強化、待たれる人権尊重〜

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日3日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が「SMBCグループ TCFDレポート 2021」を8月31日に公表(注1)したことを受けて以下の声明を発表し、パリ協定の目標に向けての方針強化であると歓迎しつつも、中期目標の設定を先送りしていると批判しました。

RAN日本代表 川上豊幸

まず、SMBCが2050 年までに投融資ポートフォリオで温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにすると約束したことは、パリ協定の目標達成に向けた方針強化と受け止めて歓迎します。「2050年ネットゼロ」は気温上昇を1.5度に抑えるために必要な長期目標で、日本政府も同様の目標を掲げています。気候危機を加速させている化石燃料への資金提供額がアジア5位のSMBCが、アジア首位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(注2)に次いでコミットしたことは重要です。

しかし、投融資ポートフォリオのGHG排出量把握と中長期削減目標の開示は行われず、中期目標の開示は2023年に先送りされたことから、パリ協定への整合性を確認することができません。そして2030年までの限られた数年を目標策定に費やすことになり、緊急性に欠けます。また、投融資ポートフォリオGHG排出量の算定には、石油・ガス、電力セクターに加え、GHG排出に大きな影響を与えている石炭採掘を含めた化石燃料セクター全般、およびパーム油を含む森林関連セクターを早期に追加することが求められます。

第二に、今回のレポートでは、森林破壊の要因となるパーム油などの農園開発事業に対し、「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ方針」(※NDPE方針)を遵守する旨の公表を求めました。しかし、取引先には遵守の公表を求めるだけではなく、グループ全体およびサプライチェーンを含めた遵守状況をモニタリングし、不遵守状況への対応等を通じて、方針の実施と強化を進めることが必要です。また同基準は農園開発事業に限定され、各産品の購入企業には適用されていないことも課題です。MUFGも今年4月にパーム油セクターにNDPEを適用しましたが、同様の問題があります(注3)
※No Deforestation, No Peat and No Exploitationの略

一方、森林伐採事業セクターでは違法労働への支援を行わないことを明記したものの、労働者の権利尊重や地域住民や先住民族の土地権尊重といった人権尊重が明記されていません。特に「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC:Free, Prior and Informed Consent)(注4)の要件は追加されませんでした。NDPEと同様、FPIC 基準は国連「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成や「国連ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)への遵守に不可欠です。

SMBCは前述の通り、パリ協定締結以降の化石燃料への資金提供額がアジア5位、世界18位であることが明らかになっています。また、3メガバンクは東南アジアの森林減少に加担している企業への最大の資金提供者に含まれます(注5)。 SMBCの融資先には、問題案件となっているベトナムおよびインドネシアの新規石炭火力発電所建設、インドネシアで人権侵害を伴うパーム油の農園(注6)、米国で先住民族らによる抵抗が続くオイルサンド・パイプライン(注7)等が含まれています。

 

注1 ) 三井住友フィナンシャルグループ、「SMBCグループ TCFDレポート 2021」の発行について」、2021年8月31日

「SMBCグループ TCFDレポート 2021」

注2)RAN他プレスリリース「『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」、2021年3月24日

注3)NGO共同声明「MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず」、2021年4月26日

注4)FPIC(エフピック)とは、先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、自由意志による、事前の、十分な情報を得た上で同意する、または同意しない権利のことをいう。

注5)RAN他「森林と金融データベース」より
参照:​​RAN他プレスリリース「『森林と金融』メガバンク等の森林方針の評価を発表」、2021年6月22日

注6)RAN、インドフードまたは同社グループ企業への投融資に関する銀行・投資家向けレター、2020年11月13日

注7)RAN声明「メガバンクが支援する北米パイプライン『ライン3』、活動家らの封鎖で工事中断」、2021年7月7日

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:みずほ、石炭採掘・化石燃料コーポレートファイナンスなどで進展するもパリ協定の目標達成の水準にはなお及ばず(2021/5/14)

昨日13日、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)が「サステナビリティアクションの強化について」を発表し(注1)、パリ協定の目標と整合するポートフォリオへの転換、化石燃料企業の移行リスクへの対応強化、新規炭鉱採掘への投融資禁止などの方針を明らかにしました。みずほのポリシー改定は、いくつかの点で他のメガバンクよりも前進しており、脱炭素化に向けた方針強化を歓迎します。一方で、現時点でそこに届かない点もあります。今改定をもってしてもパリ協定と整合的であると判断することは難しく、気候危機の緊急性を踏まえて、より具体的な目標や指標、ロードマップの早急な策定が求められます。

みずほ株主総会会場前での環境NGOアクション、2020年6月25日、東京

石炭採掘(一般炭)セクター方針の改定
今般、「新規の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする投融資等は行わない」としたことは他の邦銀に先駆けた方針強化として歓迎します。一方で、「既存の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする案件については、パリ協定と整合的な方針を表明している国のエネルギー安定供給に資する案件に限り、慎重に検討の上、対応する可能性あり」と例外を残したことは不十分です。

石炭火力セクター方針は抜け穴残す
石炭火力発電所の投融資等停止の例外として「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠、且つ、リプレースメント案件は慎重に検討」「革新的、クリーンで効率的な次世代技術の発展」等の規定を残したことは問題です。現在実用化されていないCCUSやアンモニア・水素混焼等は、2030年までの排出削減にほとんど寄与せず、石炭火力を延命させるものになりかねず、パリ協定1.5度目標に必要な中期目標と整合しません。OECD諸国では2030年までに、世界全体では2040年までに石炭火力発電所を全廃するための具体的なロードマップを描くべきです。

化石燃料企業の移行リスクをセクター方針に追加
「石炭火力発電、石油火力発電、ガス火力発電、石炭鉱業および石油・ガスを主たる事業とする企業は、脱炭素社会に向けた移行が適切になされない場合、移行リスクに晒される可能性があり」「〈みずほ〉は、気候変動に伴う移行リスクへの対応が進展するよう、取引先とエンゲージメントを行い、一定期間を経過しても、移行リスクへの対応に進捗がない取引先への投融資等は、慎重に取引判断を行います」と発表したことについては、今回初めて化石燃料に依存する企業に対するコーポレートファイナンスに踏み込んで対応しようとする姿勢がみられます。ただし、その具体性には欠けています。エンゲージメントの実効性を担保するためにも、パリ協定と整合的な目標・指標を含む具体的なロードマップを示す必要があります。

パリ協定の目標と整合するポートフォリオ
「環境方針」の改定として、「パリ協定における世界全体の平均気温上昇を抑制する目標達成に向けた資金の流れをつくり、 同目標に整合したファイナンスポートフォリオへと段階的に転換を図っていきます」と明確化したことは歓迎されます。一方で、1.5度目標に整合するには(注2)、石炭火力向け与信残高削減目標をコーポレートファイナンスへ適用拡大、より早期の実現、石油・ガスおよび森林関連セクターへ拡大することが求められます。今回、北極圏での石油・ガス採掘事業、オイルサンド、シェールオイル・ガス事業を明記しましたが、環境・社会リスク評価の実施に留まり、パリ協定の整合性に必要な具体的禁止事項が示されるべきです。
また、SMBCグループが投融資ポートフォリオのGHG排出量把握(Scope3)にコミットしたことは重要であり、みずほも続くべきです。

大規模農園(大豆等)セクター、パームオイルセクター
パーム油および木材・紙パルプセクターの顧客企業に限定されていた「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE)等の環境・人権方針の策定や、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC、注3)の尊重が、大規模農園(大豆等)セクターにも拡大された点は歓迎します。一方パーム油セクターでは、顧客農園企業に全農園での「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)認証取得を求めるものの、取得予定のない企業との取引も「同水準の対応」であれば可能とし、抜け穴になる可能性があります。方針は顧客の独立系サプライヤーやパーム油購入企業には適用されないため、人権侵害や環境破壊への加担を避けることは困難です。そしてNDPE方針の策定やFPICの尊重を求めるだけでなく、遵守状況の確認も求められます。さらに農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは気候対策面から大きな失敗です。

<各団体からのコメント>
国際環境NGO 350.org Japanキャンペーナーの渡辺瑛莉は「今般のみずほの方針は、石炭採掘の新規投融資停止など、邦銀の中では最も先進的だと言えますが、世界の主要銀行と比べると低い水準に留まっています。パリ協定と整合的なポートフォリオへ転換、化石燃料企業と移行リスクエンゲージメント強化などは具体的な中期目標や指標の設定・公表、化石燃料セクターからのフェーズアウト方針などがなければ、実効性あるポリシーとは見なされません。今後のさらなる方針強化に期待します」と述べました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「昨年、私たちの株主提案は否決されましたが、提案していたパリ協定との整合性を図ることに向けて方針を強化し、コーポレートファイナンスにも踏み込んで対応しようとする姿勢は重要な進展だと考えます。しかしその具体的目標設定に至らなかったこと、石炭火力の延命の可能性を残していることなど、対応はまだ不十分であり、更なる強化が必要です」と指摘しました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク「責任ある金融」シニアキャンペーナーのハナ・ハイネケンは、「投融資先企業との対話を通じてパリ協定と整合する事業を促す意図は評価できますが、気候危機を回避するためには化石燃料の拡大、森林破壊、泥炭地の破壊などを直ちにやめなければいけません。化石燃料及び森林破壊を起こす産品産業への資金提供者として世界トップ10に入るみずほは、現在のポートフォリオを大胆に変えることが必須です」と指摘しました。

注1)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティアクションの強化について」2021年5月13日

注2)詳細はRAN「パリ協定と整合性のある金融機関原則」を参照。

注3)Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 担当:渡辺 japan@350.org
気候ネットワーク 担当:平田 khirata@kikoent.org
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN) 担当:関本 yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:三井住友フィナンシャル、石炭火力方針を改定もなお抜け穴〜パリ協定と整合せず〜(2021/5/12)

(English follows Japanese)

本日、三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)が「気候変動問題への対策強化について」(注1)を発表し、石炭火力セクター方針の改定、グリーンファイナンス及びサステナビリティに資するファイナンス目標の改定などを明らかにしました。環境NGOは、脱炭素化に向けた一定の方針強化を歓迎するものの、パリ協定と整合的なビジネス戦略としてはなお課題が多いとの認識の下、下記の声明を発表しました。

三井住友フィナンシャルグループ株主総会会場前でのアピール行動、2018年6月25日

石炭火力セクター方針の改定
「石炭火力発電所の新設および拡張案件への支援は行いません」と明記し、従来の超々臨界圧(USC)技術などの例外規定を取り除きました。しかし、方針には明記されていないものの、NGOとのやり取りにおいて、「CCUSやアンモニア・バイオマス混焼等、トランジションに資するものについては支援を検討可としている」と明らかにしました。これらの技術はいまだ実用化されておらず、2030年に温室効果ガスを半減するという、パリ協定1.5度目標に必要な中期目標の達成には何ら寄与しません。アンモニアや水素の混焼については、1-2割程度の混焼が目指されているところであり、全く解決策にはなりません。1.5度目標達成のためには、OECD諸国では2030年までに、世界全体では2040年までに石炭火力発電所は稼動を停止する必要があり、単にCCUSや混焼の技術を備えていることを例外扱いするのではなく、1.5度目標と整合的かどうかを厳格に判断する基準が必要です。

投融資ポートフォリオ排出量(Scope3)の把握
SMBCグループが「2050年カーボンニュートラルに向けた長期行動計画および具体的な施策を定めていく」とし、「投融資ポートフォリオのGHG排出量把握(Scope3)と中長期目標の設定」を行うと発表したことは、他の邦銀に先駆けた取り組みとして歓迎します。電力・石油・ガスセクターのScope3の把握を始めるとのことですが、石炭採掘を含めた化石燃料セクター全般およびパーム油を含む森林関連セクターのバリューチェーン全体に今後スコープを拡大していくことを期待します。また、三井住友DSアセットマネジメントなどの運用会社を含めたグループ全体での取り組みが重要です。

中長期目標は設定せず
一方で、欧米の銀行が投融資ポートフォリオの排出量ネットゼロに相次いでコミットしていることと比べて(注2)、同グループの今次改定が「今後の目標設定」に留まったことは懸念されます。昨年同グループが定めた「2040年度に石炭火力発電向けプロジェクトファイナンスの残高をゼロにする」という目標は、パリ協定に整合するために、石炭火力セクターのコーポレートファイナンスにも適用を拡大し、より早期に実現されなければなりません。また、石油・ガス、およびパーム油を含む森林関連セクターに関する改定が何ら行われなかったことは大きな懸念です。これらのセクターも含め、パリ協定と整合する具体的な指標と中長期目標の速やかな設定が求められます。

<各団体からのコメント>
国際環境NGO 350.org Japan代表の横山隆美
は「気候危機の緊急性に比べて、今般のSMBCグループの方針改定は遅々としていると言わざるを得ません。1.5度目標を守るためには、科学の要請に基づいて早期に脱石炭・脱化石燃料を実現する必要があります。現状を見て積み上げるのではなく、あるべき姿からバックキャスティングを行うための強力なリーダーシップが求められます」と述べました。

気候ネットワークの国際ディレクター平田仁子は「今回の方針強化は、パリ協定の下での行動強化の必要性を認識したものと受け止めたいが、SMBCグループのファイナンスがなおパリ協定に整合するものとは評価できません。特に石炭火力セクターにおいて、明示的に書かれていないものの、CCUSやアンモニア・水素混焼技術を容認していることにより、石炭火力の延命を支援することにつながることが大いに懸念されます」と述べています。

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、プログラム・ディレクターの田辺有輝は、「石炭火力発電事業への支援停止について、SMBCグループはNGOとのやり取りにおいて、CCUSやアンモニア・バイオマス混焼等を例外としていることを明らかにしましたが、公開されている方針の文言から、このような例外規定があることを想定することは不可能です。このような例外規定があるのであれば、あらかじめ方針で明示するべきです」と述べています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、責任ある金融シニア・キャンペーナーのハナ・ハイネケンは、「SMBCグループは、ファイナンスによる温室効果ガス排出量の算定を約束したことで、他の邦銀から一歩先に踏み出しました。しかしSMBCの気候フットプリントの重要性を考えると、同グループが化石燃料全般、森林破壊および泥炭地破壊への資金提供停止を含め、1.5度目標のタイムラインに基づいて排出量ゼロを明確に誓約しない限り、真剣に受け止めることはできません」と指摘しました。

注1)https://www.smfg.co.jp/news/j110309_01.html

注2)https://www.unepfi.org/net-zero-banking/

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 担当:渡辺 japan@350.org
気候ネットワーク 担当:平田 khirata@kikoent.org
「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 担当:田辺 tanabe@jacses.org
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN) 担当:関本 yuki.sekimoto@ran.org

*5月13日追記:5月12日配信内容に以下を追加しました。
●RANも13日に賛同団体として連名し、ハイネケンのコメントを追加しました。
●「森林セクター」としていましたが「パーム油を含む森林関連セクター」に変更しました。

Loopholes Remain in SMBC Group’s New Coal Policy
Japan’s Megabank Still Not Aligned with the Paris Agreement

Today, Sumitomo Mitsui Financial Group (hereinafter SMBC Group) published a statement entitled “Reinforcing Efforts against Climate Change,” (1) announcing revisions to its coal-fired power sector policy as well as updated targets for green and sustainability finance. Environmental NGOs welcomed the strengthening of policies toward decarbonization, but issued the following statement, recognizing that there are still many challenges to be addressed for the SMBC Group to set a business strategy consistent with the Paris Agreement.

Coal-fired Power Sector Policy
In the new policy, the Group stated that “Support for newly planned coal-fired power plants and the expansion of existing plants are not provided” and removed exceptions such as ultra-supercritical pressure (USC) technology from the previous policy. However, in an exchange with NGOs, the Group clarified that under the new policy, “support can be considered when (projects) will contribute to transition to decarbonization, such as CCUS and ammonia / biomass mixed combustion.” These technologies have not yet been put to practical use and will not contribute to the achievement of the medium-term goal required for the 1.5 degrees Celsius goal of the Paris Agreement, which is to halve greenhouse gases in 2030. Regarding the mixed combustion of ammonia and hydrogen, about 10-20% of the mixed combustion is aimed at, and it is not a solution at all. Coal-fired power plants need to be shut down by 2030 in OECD countries and by 2040 globally to reach the 1.5 degrees target. Instead of treating CCUS and mixed combustion technology as exceptions, the Group needs to set rigorous criteria to determine whether their clients’ businesses are consistent with the 1.5 degrees goal.

Measurement of Loan/Investment Portfolio GHG Emissions (Scope 3)
The SMBC Group announced that it will “establish a long-term action plan to contribute to a carbon neutral society by 2050 and detailed initiatives” and that it will “obtain a clear understanding of the GHG emissions generated by its loan/investment portfolio (Scope3) and set medium- to long-term targets regarding those emissions.” We welcome this as an initiative that is more progressive than other Japanese banks. The Group explains it will start with Scope 3 of power, oil and gas sectors. We urge the Group to expand the scope to the entire value chain of the fossil fuel sector including coal mining, and the forest sector including palm oil. In addition, it is important to include asset management companies such as Sumitomo Mitsui DS Asset Management and work on it as an entire group.

No Medium-To Long-Term Goal Setting
On the other hand, compared to the recent international trend that European and US banks are committing to net zero emissions in their investment and loan portfolios (2), it is a concern that the Group’s has only committed to “future target setting” of such emissions. The goal set by the Group last year to reduce its credit balance of project finance related to coal-fired power generation to zero by 2040 needs to be realized earlier and be expanded to corporate finance in the coal-fired sector in order to be consistent with the Paris Agreement. There is also great concern that no revisions have been made to the oil and gas and forest sectors. Including these sectors, it is necessary to promptly set specific indicators and medium- to long-term goals that are consistent with the Paris Agreement.

Comments by NGOs
Eri Watanabe, Japan Finance Campaigner for 350.org said “Concerning the urgency of the climate crisis, the revision of the SMBC Group’s policy is much slower. In order to meet the 1.5 degrees target, it is necessary to realize the urgent phase-out of coal and fossil fuel sectors as climate science demands. Strong leadership is required to achieve the target by backcasting, rather than by building up on the current situation.”

Kimiko Hirata, International Director at Kiko Network stated “Understanding that the SMBC Group’s recent revision is due to the recognition of the need to strengthen actions under the Paris Agreement, we cannot evaluate that the Group’s finance is consistent with the Paris Agreement. Especially in the coal-fired power sector, although not explicitly stated, there is great concern that allowing CCUS and ammonia/hydrogen mixed combustion technologies will help extend the life of coal-fired power.”

Yuki Tanabe, Program Director of JACSES said “Regarding the suspension of support for coal-fired power generation projects, the SMBC Group has made it clear that CCUS and ammonia/biomass mixed combustion are exceptions in the conversation with NGOs. It is impossible to assume that there are such exceptions from the announced policy text. If there is such an exception, it should be clearly stated in the policy to avoid misleading understanding by stakeholders.”

Hana Heineken, Senior Responsible Finance Campaigner at RAN said, “SMBC Group has stepped ahead of the other Japanese banks by committing to measure its financed emissions. But given its significant climate footprint, there is no way we can take them seriously without a clear commitment to zero out emissions based on a 1.5 degree timeline, including by stopping the financing of fossil fuels, deforestation, and peat destruction.”

(1) https://www.smfg.co.jp/news_e/e110168_01.html

(2) https://www.smfg.co.jp/news_e/e110168_01.html

Contacts
Eri Watanabe (350.org Japan) Email: japan@350.org
Kimiko Hirata (Kiko Network) Email: khirata@kikoent.org
Yuki Tanabe (JACSES) Email: tanabe@jacses.org
Yuki Sekimoto (RAN) Email: yuki.sekimoto@ran.org