サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

ブリーフィングペーパー:MUFGによる森林リスク産品への資金提供について (2025/8/28)

日本最大手の銀行グループである、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、生物多様性や気候変動を緩和する上で重要な役割を担っている熱帯林を破壊して生産されるリスクが高い「森林破壊リスク産品」に資金提供を行う世界最大の銀行グループの一つです。2016年から2024年6月の間、MUFGが東南アジアの森林リスク産品に提供した資金は、OECD加盟国の銀行として最大であり、世界13位の規模であったことがわかりました。このように社会的・環境的に配慮の欠ける資金提供によって、気候変動の悪化、生物多様性の喪失、先住民族コミュニティへの人権侵害などの問題が助長されています。

現在のMUFGの方針は、森林保護の国際基準である「森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止(NDPE)方針」の適用範囲が限定的であるために、このような方針を持っているにもかかわらず問題のある顧客への投融資を防ぐことができていません。

MUFGのインドネシア子会社であるバンクダナモンは、2020年から2023年の間、炭素を多く蓄える「泥炭地」を大規模に転換した農園企業を支配下に置くグループ会社、トゥナス・バル・ランプン(TBLA)に2億8,000万ドルを超える資金を提供しました。この間、この農園企業は7,800ヘクタールの広大な泥炭地を転換し、膨大な温室効果ガスの排出と、度重なる大規模火災を引き起こしました。2024年には、インドネシア政府が、生態系への損害と経済的損失に対して4,150万米ドルの賠償を求めて、この農園企業を提訴しています。

また、MUFGの顧客であるRGEグループは、長年にわたってインドネシアの熱帯林を皆伐し、先住民族や地域コミュニティの権利を侵害してきました。2024年に発表された調査では、スマトラ島で同グループの関連会社が森林破壊を伴う開発を続けていたことが明らかになりました。また、北カリマンタンに建設中の巨大パルプ工場は、同グループの管理下にある可能性が高く、この工場が本格的に稼働すれば、ボルネオとパプアの太古の熱帯林60万ヘクタール(サッカー場8,400個分に相当)が危機に瀕すると懸念されています(RAN)。

こちらの調査書では、MUFGの「森林破壊リスク産品」への資金提供の分析、現在の投融資方針の分析および改善点、問題のある投融資先の事例紹介などをまとめています。こちらからダウンロードできます。

日本語版

英語版

ブログ:2025年MUFG株主総会、世界各地でMUFGの問題ある資金提供に抗議(8月26日)

〜RAN、他NGOと共に株主総会会場周辺にてアピール活動を実施〜

6月27日、都内で三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の年次株主総会が行われました。

RANは他の環境NGOと共に、気候変動をはじめ先住民族の権利侵害や熱帯林の破壊を行う事業者に対し、MUFGが資金提供を行なっている件について会場入りする株主にスピーチやチラシの配布を行い、問題提起を行いました。

MUFG株主総会会場前におけるアピール活動 2025年6月27日 ©︎ RAN / Masaya Noda

今回は超小型EV(電気自動車)の移動広告を利用したことで、より多くの方の注目を得ることができました。配布したチラシも多くの個人株主の方々に手に取っていただきました!ありがとうございました。

MUFG株主総会周辺にてチラシを配布し問題提起を行った 2025年6月27日 ©︎ RAN / Masaya Noda

MUFGは、現地の先住民族が反対している米国テキサス州のリオ・グランデLNG事業の世界最大の資金提供者であり、また南太平洋のパプアニューギニアにおいても先住民族の同意を得ずに計画が進められ問題となっているパプアLNG財務アドバイザーを務めています。

MUFG株主総会会場前におけるスピーチ 2025年6月27日 ©︎ RAN / Masaya Noda

またRANでは今年も、環境NGOマーケット・フォース、気候ネットワークと共同で、MUFGを含めた3メガバンクに対して株主提案を行いました。残念ながら否決されてしまいましたが、以前からの提案である「顧客の移行計画の評価に関する情報開示」に加えて、今年は「監査委員会の財務リスク監査に係る情報開示」を提案し、総会にて提案の説明を行いました。

株主からの質問受付の時間でRANは、リオ・グランデLNGやパプアLNGなどの気候変動や先住民族の権利侵害のリスクが高い事業への関与によって発生した負の影響について、MUFGではどのような是正措置や救済措置が可能かという質問をしました。MUFGがホームページ上に公開した回答によると、「融資実行時には…先住民族の人権への配慮等も確認しており…お客さまが斯かる配慮に十分対応できていないことを認識した場合は、融資を行わない方針です」と回答がありました。株主総会の場でこの方針を再確認できた点は良かったですが、投融資の結果発生した負の影響を取り除くための是正措置や救済措置について、MUFGで何かできるかという点について具体的な回答はありませんでした

MUFGの回答には、融資後も顧客と問題対処について対話を行っている点や、苦情処理システムのプラットフォームであるJaCER(ビジネスと人権対話救済機構)を使用している点などが共有されました。しかし、これらは苦情処理プロセスにおける入り口の段階の取り組みであり、負の影響を受けている現地コミュニティの求める是正・救済には至っていません。

昨年9月、RANはテキサス州リオ・グランデ・バレー地域の先住民族カリゾ・コメクルド族を含むコミュニティ代表団とJaCERに苦情を提出しました。苦情には、『求める救済』は「カリゾ・コメクルド族とMUFGとの間で、一連の協議を実施することを期待する」と記入しましたが、MUFGとコミュニティとの間での協議は昨年10月の代表団の訪日以降、行われていません(是正と救済に関するより詳しい情報は国連『ビジネスと人権に関する指導原則』の原則2225をご参照ください;英語版日本語版

同日、現地でも抗議活動が

MUFGの株主総会と同じ日に、テキサス州リオ・グランデLNG施設に天然ガスを供給する予定のリオ・ブラボー・パイプラインの建設現場前でも、カリゾ・コメクルド族を含む現地コミュニティによる抗議活動が行われました。

リオ・ブラボー・パイプライン敷設地周辺における現地コミュニティによる抗議活動(写真©︎SOTXEJN)

パイプライン事業者はここ数カ月にわたり、パイプライン建設予定地の一部を所有するカリゾ・コメクルド族に対し、「(事業者の)収用権を行使し、一族の土地を取得する考えである」といった内容の文章を送り続けているというのです(南テキサス正義ネットワークのInstagram投稿)。

カリゾ・コメクルド族チェアマンのフアン・マンスィアス氏は以前から、この地域周辺の地下に一族の文化財や遺骨が眠っている可能性が高いと指摘しています。文化遺跡の保護は、『先住民族権利に関する国際連合宣言』に基づく人権問題です地元コミュニティ代表は、リオ・グランデLNGの世界最大の資金提供者であるMUFGに対し、今後のリオ・グランデLNGの拡張事業やリオ・ブラボー・パイプラインなどの事業に資金提供しないよう求めています。

リオ・ブラボー・パイプライン事業に抗議するマンスィアス氏(写真©︎SOTXEJN)

アジア諸国からもメガバンクの化石燃料事業への資金提供に批判の声

さらに、3メガバンクの株主総会と「ジャパン・エネルギー・サミット」が5月に東京で行われたことを受け、6月、フィリピン、インドネシア、バングラデッシュ、インドの各地では、多くの参加者が集まり抗議デモが行われました。フィリピン、マカティではAPMDDPMCJなどのNGOや市民団体が、「日本の3メガバンクとJERAは数十億ドルの資金提供と長期的なLNG契約を通じて、アジアにおける化石燃料の拡大を助長し、地域社会にリスクをもたらすヴィラン(悪者)であると抗議しました。

フィリピン、マカティでのNGOと市民団体による抗議活動(Photo©︎APMDD)

「MUFG、SMBC、みずほ、ガス事業拡大への資金提供をやめて」と書かれたプラカードを持つ女性(Photo©︎APMDD)

今年の夏は記録的な猛暑が各地で続いています。気候変動の影響を抑え、人々の暮らしを守るために、あなたにできることがあります。RANではオンライン署名「MUFGにリオ・グランデLNG施設への資金提供停止を伝えよう!」を展開中です。現在、1万3,000筆を超える署名が世界から集まっています。

あなたの力が必要です。ぜひ署名に参加して、日本からもMUFGにリオ・グランデの自然と歴史、人々の暮らしを守ってほしいという声を届けましょう!

< 記入方法 >

名字(First Name)、名前(Last Name)、メールアドレス(Email)、郵便番号(Zip or Postal Code)、電話番号(Mobile Phone Number)を記入し、Take Actionをクリック

 

RAN「責任ある金融」キャンペーナー 麻生里衣

プレスリリース:MUFG株主総会でアピール「気候変動に投融資しないで」(2025/6/27)

〜化石燃料支援継続とガバナンス問題を指摘、気候変動株主提案は否決〜

「MUFGさん、気候変動に投融資しないで」超小型電気自動車による移動広告でアピール ©︎ RAN / Masaya Noda

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日27日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)株主総会に参加し、気候変動を加速させる化石燃料と森林破壊への支援停止を求め会場前でアピールしました。今年4月、RANを含む環境NGO3団体は、MUFGを含むメガバンク3行に気候変動対策の強化を求める株主提案を提出しました(注1)。総会で提案は否決されるも、人権デューデリジェンス(相当の注意による適正評価)で問題が改善しない事業には資金提供をしないことを、RANの質問によって改めて確認できました。また、気候変動など重大なリスクに対応するガバナンス体制が不十分で、問題ある化石燃料企業や森林破壊企業への資金提供が継続している点も指摘しました。

RANは、集まった環境NGOとともに、会場のグランドプリンスホテル新高輪前で「MUFGさん、気候変動に投融資しないで」などのバナーを掲げてスピーチを行い、株主に関連資料を配布してアピール行動を行いました。同時に、会場周辺で超小型電気自動車による移動広告を用い(写真、注2)、液化天然ガス(LNG)事業による環境破壊や先住民族の権利侵害などの悪影響を伝えました。広告には、昨年10月に来日した、米国テキサス州「リオ・グランデLNG」事業に反対する地域住民の写真を使用。住民は来日中にMUFG担当者と面会し、同事業への支援停止を求めていました。RAN は総会に先立ち、オンライン署名「MUFGにリオ・グランデLNGへの資金提供停止を伝えよう!」(英語)を展開し、現在は1万3,000筆を超える署名が集まっています(注3)

「MUFGさん、気候変動に投融資しないで、米国リオ・グランデLNG事業に投資しないで」環境NGOによるアピール©︎ RAN / Masaya Noda

今年4月、マーケット・フォース、気候ネットワーク、RAN(個人株主)の環境NGO3団体はメガバンク3行に気候変動対策と監査体制に関する情報開示を求める株主提案を提出しました。本日のMUFG総会では、第3号議案(監査委員会の財務リスク監査に係る情報開示)、第4号議案(顧客の気候変動移行計画の評価に関する情報開示)とも否決されました。一方、RANからの「先住民族の同意を得ずに進めている化石燃料事業(注4)への関与は人権問題であるが、どのような是正措置や救済措置を取ることが可能か」という質問に対し、MUFGの横幕勝範執行役常務 グループCROは「人権面で問題のある事業についてデューデリジェンスを実施しても改善しない場合には資金提供を行わない方針である」との回答がありました。

RAN日本シニアアドバイザーの川上豊幸は、第3号、4号議案について総会中に説明しました。総会での決議結果を受けて私たちの株主提案が否決されても、MUFGのガバナンス体制が弱く、監督機能が不十分であることには変わりありません。株主総会の場で、デューデリジェンスを実施しても改善しない場合には資金提供をしないと再確認したのは意味があります。しかし、すでに提供したファイナンスに関する人権侵害への是正措置や救済措置の対応についての明確な返答はありませんでした。私たちは気候変動対策や森林減少、人権面でリスクのある事業や企業への資金提供を事前に食い止めるとともに、すでに引き起こされた問題への対応も可能となるよう、MUFGとのエンゲージメントを継続していきます」と強調しました。

MUFG株主総会の会場前を走行する超小型電気自動車による移動広告 ©︎ RAN / Masaya Noda

RANなどが今月発表した「化石燃料ファイナンス報告書2025」(注5)によると、2021年から2024年のMUFGによる化石燃料産業への融資・引受額は世界4位で、2024年単年では6位でした 。国際エネルギー機関(IEA)の調査報告書では、2021年以降、全ての化石燃料拡大事業はパリ協定の1.5度目標に整合しないという分析結果が出ています。しかしその後も、MUFGは化石燃料の拡大計画を有する企業への資金提供で上位に名を連ねています。新規LNG事業への巨額の投融資など、パリ協定の1.5度目標に整合しないプロジェクトへの資金提供も継続しています。その一つが米国テキサス州の「リオ・グランデLNG事業」です。

川上は「私たちはリオ・グランデLNG事業について、MUFGが利用している苦情処理プラットフォームのJaCER(ビジネスと人権対話救済機構)に人権侵害事例として昨年9月に申し立てを行いました。しかしその後も状況に改善はみられず、事業者のネクスト・ディケイドは、計画地周辺に聖地があるカリゾ・コメクルド族と協議をしていません。先住民族には、事前に十分な情報が提供され、彼らの自由意志に基づいて開発事業に同意するかどうかを決める権利が国際的に認められています。融資先の事業者がこのプロセスを怠っていることは、MUFGが採択している『赤道原則』にも明らかに違反しています。このように、環境や社会面で問題ある事業や顧客企業への資金提供を事前に防ぐことができていなく、さらに、問題を指摘されても継続している現状は、方針違反に当たる業務執行上の問題を執行役員、監査役員が共に認識できていなく、本来のガバナンス機能を果たしていないと考えられます」と問題を提起しました。

総会に参加する株主たち ©︎ RAN / Masaya Noda

また、MUFGは東南アジアで森林破壊を起こしている産品セクターに、経済協力開発機構(OECD)加盟国の銀行で最も多額の融資・引受を行っています(注6)。紙パルプやパーム油などの産業は、炭素を吸収し貯留する熱帯林の破壊や土地紛争とも結びついています。RANは4月、MUFG子会社のバンクダナモンを通して、大規模な森林火災を繰り返し発生させているアブラヤシ農園企業を支配下に置く企業グループに融資を継続している事例も公開しました(注7)

RANは株主総会後も、MUFGを含めたメガバンクに、現地の情報提供、環境・社会方針やガバナンス体制についての提言、そして銀行の支援で負の影響を受けている地域の人々の声を伝えるなどのエンゲージメント(対話)を定期的に実施していきます。

参考:「MUFGの投資リスクをご存知ですか?」(RANのキャンペーン特設Webページ)https://fossilfreejapan.org/ja/campaigns/mufg/

 

注1)共同プレスリリース「東証プライム7企業に対して気候変動対策に関する株主提案〜全7社が勧告的決議案を拒んだことを受け、定款変更議案を提出〜」、2025年4月15日

注2)環境に配慮し、化石燃料車ではなく電気自動車(EV、電動ミニカー:第一種原動機付自転車)を使用。使用した広告宣伝車は、東京都屋外広告物条例の規制対象外であるが、委託企業は管轄警察署など関係各所に相談・報告しながら走行ルートの策定などを行った。午後には金融街の中心地である丸の内・大手町でも1時間程度走行した。

注3)オンライン署名「Tell MUFG to Defund Rio Grande LNG!」(英語)。6月24日時点での署名数は 13,225 筆。

注4)リオ・グランデLNGをはじめ、パプアLNG、スカボローガス、バロッサガス田など

注5)共同プレスリリース「化石燃料ファイナンス報告書 2025」発表 〜世界65銀行の化石燃料への資金提供額、2024年は8,694億ドルに急増〜」、2025年6月18日

注6)共同プレスリリース「『生物多様性崩壊をもたらす金融業務』日本語要約版発表 〜メガバンクら邦銀、森林リスク産品にパリ協定以降215億ドルを提供〜」、2025年4月10日

注7)RAN「MUFG、インドネシア泥炭地で大規模『炭素爆弾』に融資 〜子会社銀行、アブラヤシ農園企業グループに2億8100万ドルを提供〜」、2025年4月10日

 

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:「森林&人権方針ランキング2024」発表 〜ユニリーバがトップ 日清食品やP&Gは取り組みが遅れ最下位〜(2024/12/6)

大手消費財企業、森林破壊と人権侵害を依然として助長〜グローバル企業10社の森林及び人権方針を評価〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日6日、「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2024」を発表し(注1)、グローバル消費財企業はサプライチェーン(供給網)で調達するパーム油や大豆、包装紙といった森林破壊リスクが高い産品の生産を通して、森林破壊と人権侵害を依然として助長していると指摘しました。

本ランキングは、熱帯林地域で森林破壊と人権侵害のリスクが高い産品に関与している大手消費財企業10社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価・分析している年次報告です。サプライチェーンでの森林破壊と人権侵害を阻止するための取り組みを詳細な基準で比較評価したところ、どの企業も昨年と大きな変化はなく、合格点といえる「C」評価を得たのはユニリーバのみでした。最下位はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で、日本企業は花王が「D(3位)」、日清食品ホールディングスが5段階で最低ランクの「不可(同点7位)」でした。

評価方法は、各社の方針と取り組みについて森林と人権分野の12項目を24点満点で評価しています合計得点に合わせてA(21〜24点)、B(17〜20点)、C(12〜16点)、D(6〜11点)、不可(0〜5点)で評価しました。パーム油、紙パルプ、大豆、牛肉、カカオ、木材製品など、森林を破壊するリスクのある産品(森林リスク産品)のセクターにおける傾向や動向を分析しています。10社のランキングの詳細は以下の通りです。

*Y=ありor全て(2点)、P=一部(1点)、N=なし(0点)

【森林&人権方針ランキング2024】調査概要

▪️調査対象企業:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
▪️調査期間2024年10月〜11月
▪️調査方法:各社の環境及び人権に関する方針を調査・分析(ウェブサイトなどで公開されている最新版)、各社へのヒアリング
▪️主な森林・人権方針の評価項目(全12項目、各2点)

*2点:方針あり/ 全体に採用、1点:一部に採用、0点:方針・計画なし

  • 「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針・適用範囲:パーム油や紙パルプなど森林リスク産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準(注3)。特に、個別産品だけではなく森林リスク産品全般への適用、供給業者の企業グループ全体への適用を重視している
  • 「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注4)
  • 人権擁護者への暴力や脅迫への「ゼロトレランス」(不容認)方針の有無(注5)
  • サプライチェーンの透明性:EUDR要件(注6)である、原料生産地までのフルトレーサビリティ達成の取り組みも含む(2023年版から追加)
  • 森林フットプリントの開示(注7)、など

全体の評価・傾向

「リーダー企業」(C評価)

  • ユニリーバは、昨年と同様の「C」評価を維持し、「リーダー企業」としての存在感を見せました。産品横断的な苦情対応進捗表を公表することで、リーダーシップを発揮しました。 

「中位企業」(D+、D、D -評価)

  • コルゲート・パーモリーブは、「中位企業」の中で高い実行力を見せました。特筆すべき点は苦情処理記録を公表し、人権擁護者への暴力や脅迫を一切容認しないことを約束してリーダー企業と肩を並べました。
  • 花王マースは、昨年は少し前進が見られましたが、今年は実行力を改善することができませんでした。上記3社は、森林破壊の流れを止めるために断固とした行動をとる必要があります。
  • ペプシコは「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針遵守の独立した検証を進めず、苦情対応追跡表も公表しなかったことから、今回のランキングでは後退しました。
  • ネスレも後退し、サプライチェーンにおいて森林破壊を起こしている悪質業者の責任を追及する項目では後戻りしました。

「不可企業」(F評価)

  • フェレロ、モンデリーズ、日清食品、プロクター・アンド・ギャンブルの4社は、森林破壊と人権侵害への対応で下位グループにランクされ、依然として実行力の評価は低いままとなりました。4社は森林破壊に歯止めをかけ、先住民族コミュニティを搾取から守るために必要な組織的な改革を起こすことができませんでした。

日本企業の評価

  • 総合点は日清食品が不可(5点)、花王はD(8点)で、昨年とスコア及び点数は同じでした。
  • 昨年同様、両社とも「NDPE方針」を既に採用し、2点の評価を得ています。
  • 「NDPE適用の範囲」については、花王は昨年、森林リスク産品全般の供給業者とその企業グループ全体も適用対象としていることが確認できたため、評価は満点の2点です。一方、日清食品は一昨年から得点はなく、グループ調達方針の環境分野にNDPE支持を記載していますが、NDPE主要項目が明記されているのはパーム油事業のみで森林リスク産品全般ではありません。また、供給業者にNDPEの採用を義務化していなく、供給業者の企業グループ全体も適用範囲に含んでいません。
  • 「森林フットプリントの開示」については、花王が今年5月にインドネシア・リアウ州の分析(英語)を公表しましたが、地域が限定的であることから1点にとどまりました。日清食品は実施を表明したことで1点を得ましたが、まだ開示がなく、明確な開示期日も不明です。
  • 「問題企業の責任追及」では、日清食品は昨年「苦情処理リスト」を公開し、違法パーム油生産農園との取引停止や対応状況を公表しました。今年6月にも情報を更新し1点を得ていますが、方針違反への対応手順が公表されていません。花王は小規模農家生産者を対象とした苦情処理メカニズムはありますが、大規模農園・植林企業などを対象としたリストは依然として開示がなく得点はありません。

RAN日本シニアアドバイザーの川上豊幸は「花王は、今年はNDPE方針の実施体制強化を示すことができませんでした。パーム油事業について2025年までに『使用するパーム油をRSPO認証油に100%切り替えをめざす』と表明していますが、その中身は非認証油が混入するマスバランス方式や、認証油のクレジットを取引するブック・アンド・クレーム(B&C)方式としています。また、サプライヤーなど取引先企業の独立監査を伴っていなく、実施体制の強化とは判断できませんでした」と評価しました。

続けて「日清食品は引き続き『不可』評価でした。NDPE方針遵守が森林リスク産品全般に適用されず、パーム油に限定されたままです。またNDPE方針の採用を供給業者に義務化していません。そして持続可能なパーム油のみを2030年までに調達するとの約束は前倒しされていませんし、サプライヤーへの独立監査も求めていなく、改善は見られませんでした」と指摘しました。

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーン

2020年4月の開始以来、評価分析を毎年実施し、今年で5回目の発表となります。グローバル企業に対し、世界最後の熱帯林への産品供給源の拡大を阻止し、企業の搾取から自分たちの土地を守るために闘う先住民族コミュニティの保護を確保するため、直ちに具体的な行動をとるよう求めています。

2024年版のランキングは、気候変動と生物多様性危機の緊急性が高まる中、多くの消費財企業が意味のある変化を実施できていないことを浮き彫りにしています。そして今回のランキングは森林と人権にとって重要な時期に発行されました。まず、2024年末に施行が予定されていた欧州連合の森林破壊防止法(EUDR)が1年延期され、消費財関連の森林減少を規制する取り組みがさらに先送りされました。人権面では、国際NGO「グローバル・ウィットネス」が毎年発表する報告で、世界各地で起こる土地や環境を守る人々の殺害増加の原因として、アグリビジネスセクターが上位に挙げられています。 

RANフォレスト・キャンペーン・ディレクターのダニエル・カリーヨは「森林保護活動家は増大する脅威に直面しています。2023年だけで196人が殺害されました。企業がサプライチェーンで責任を果たしていないことは、先住民族のリーダーや活動家への暴力の増大に直接つながっています。世界の大手消費財企業は、森林保護と人権尊重のために真の行動に踏み出す時です。気候危機が加速するなか、企業はその方針と行動を緊急事態に合わせなければなりません。森林は減少の一途をたどり、最前線のコミュニティは包囲されています。消費者、投資家、市民社会は今、ただの約束ではない、それ以上の行動を求めています」と強調しました。

調査対象の大手消費財企業10社は、いずれも世界で続く森林破壊や人権侵害に関与しています(注8)。RANは、消費財企業が森林伐採や土地の権利侵害を助長し、環境保護活動家や人権擁護者が直面する脅威を増大させているとして、これからも責任を問うていきます。 

脚注

注1)「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行に実際の行動を起こすよう要求しています:www.ran.org/kfs-scorecard-jp/

ランキング評価方法論

注2)消費財企業10社:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
*10社全社が全容を報告している唯一の産品であるパーム油を例にとると、10社合計で約230万トンのパーム油と、約140万トンのパーム核油およびその派生物を購入している(2022年)。パーム油世界市場の約3%、パーム核油世界市場の約17%に相当する(2023年版報告書より)。

注3)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い<High Carbon Stock:HSC>森林の保護、保護価値の高い<HCV: High Conservation Value>地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止といった要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。

*参考:「『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針とは?」ブリーフィングペーパー

注4)「FPIC」(エフピック)とは Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注5)「ゼロトレランス・イニシアティブ」ウェブサイトを参照のこと

注6)EUの「森林破壊フリー製品に関する規則」(EUDR:通称「森林破壊防止法」):EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注7)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注8)以下を参照のこと

RANプレスリリース「RAN新調査報告書『包囲下のオランウータンの首都』発表〜違法パーム油、日清食品などのサプライチェーンに混入の可能性が継続〜」(2024/11/22)

RANプレスリリース「新報告書『RGEグループの実態:無秩序に広がる破壊の帝国を暴く』発表〜止まらない環境破壊と違反行為、消費財企業と銀行に同グループとの取引停止を求め〜」(2024/3/18)

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

メディア掲載:朝日新聞パーム油サステナビリティ記事でRAN川上がコメントしました(2024/1/16)

朝日新聞「パーム油、持続可能な調達へ 環境や社会重視、本業でこそ試される」(2024年1月16日)〜RAN日本シニア・アドバイザー川上豊幸がコメントしました。

「環境や人権、労働環境の改善など社会的な課題の解決にどう貢献できるかが、企業の価値を左右しつつある」

記事では、先行する欧米の基準強化を踏まえて以下のようにコメントしています。

「こうした現状に、NGOの視線は厳しい。『日本政府も欧米のように規制に動くべきだ。このままでは欧米に輸出できない問題あるパーム油が、日本に大量に流れてくる可能性がある』。レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本の川上豊幸さんは、そう警告する。>>続きを読む

関連プレスリリース

「新報告書『森林&人権方針ランキング2023』発表」(2023/11/17)

プレスリリース:新報告書『生物多様性崩壊をもたらす金融業務』発表〜メガバンクら銀行、森林リスク産品に3070億ドルの資金提供〜(2023/12/7)

森林破壊・生物多様性損失・気候カオス・権利侵害を加速

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部サンフランシスコ、以下、RAN)を含む8団体で構成する「森林と金融」連合は、第28回国連気候変動会議(COP28)で「金融」がテーマである4日、新報告書「生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡」を発表しました。本報告書は、大手金融機関が熱帯林地域における森林破壊、生物多様性の損失、気候変動、人権侵害をいかに助長しているかについて包括的に考察するもので、分析の結果、銀行がパリ協定締結以降の2016年から2023年9月、熱帯林破壊に関係している高リスク林業・農業企業に3070億ドル以上の資金を提供していることを明らかにしました。この結果は、世界の大手銀行と投資家の掲げる森林関連ESG方針が、森林と生物多様性の広範かつ継続的な損失を防止できていないことを示しています(注1)

 

表「森林リスク産品への融資・引受額 上位20銀行」
(2016-2023年9月、単位:百万米ドル)

*森林リスクセクター約300社(東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカ)への融資・引受額、傾向。
日本のメガバンクはみずほ(8位)、MUFG(12位)、SMBC(17位)。

本報告書「生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡」は、世界の熱帯林破壊の大部分を引き起こしている「森林リスク産品」セクターの6品目(牛肉、パーム油、紙パルプ、ゴム、大豆、木材)に携わる約300社の森林部門事業に対する商業資金の流れを概説・分析しています。報告書では、森林リスク産品セクターへの融資・引受と債券・株式保有において、どの銀行と投資家が最も大きな役割を果たしているかを明らかにしています。森林破壊を引き起こすリスクの高い銀行、つまり資金提供額上位30行のなかには、ブラジルやインドネシアなどの熱帯林諸国の大手銀行や、米国、欧州連合(EU)、日本、中国といった輸入および財政的に重要な管轄区域の大手銀行が含まれます。

報告書では同時に、影響の大きいセクターへの投資に適用される方針の内容についても評価しています。100を超える銀行と投資家の投融資方針を、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連基準の38項目に基づき採点しています。残念ながら平均評価は100点満点中わずか17点と低く、30点以上の評価を受けた銀行と投資家は20社のみで、50点を超えた銀行はわずか2行でした。森林リスク産品セクターに提供される資金の量と、甚大な森林破壊と権利侵害の防止措置である投融資方針との間に大きな隔たりがあることが明白になりました。

報告書で明らかになったのは、森林リスク産品への資金提供者のトップはブラジル銀行とブラデスコ銀行です。両行は主にブラジルの牛肉セクターと大豆セクターに融資していますが、森林伐採と権利侵害を防止するための最低限の方針しかありません。米ウォール街の巨大金融機関であるJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループは紙パルプやパーム油セクターに多額の資金を提供していますが、各行の森林ESG方針は弱く、森林や生物多様性、人権を保護できていません。バンク・オブ・アメリカは100点満点中22点、シティグループは37点、JPモルガンはわずか15点と評価され、3社とも極めて低い評価となりました。

日本の金融機関は紙パルプとパーム油に多くの資金を提供しています。メガバンクではみずほフィナンシャルグループが約74億ドルと最も多く、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG、約58億ドル)、SMBCグループ(約46億ドル)と続き、3行ともトップ20銀行に入りました(表を参照)。方針評価については、日本の金融機関の平均得点は21点で、インドネシアやマレーシアの金融機関よりも低い評価となりました。日本の金融機関の方針は総じて環境・社会面よりもガバナンスに関して強い傾向にあります。みずほが38点で最も高く、SMBCが36点、野村グループが27点、MUFGが24点、三井住友トラスト・グループ(22点)、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2点、公立学校教職員共済組合は0点でした(注2)。

また今回の調査結果は、主要な管轄区域において金融機関に強固な規制が適用されることが緊急に必要であることも浮き彫りにしています。報告書は、各国政府と金融機関が、パリ協定第2条1(c)と「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」のターゲット14と15の下で、気候変動と生物多様性に関する公的目標を達成すべく資金の流れを調整する責任を負っていると強調しています。しかし調査データによると、パリ協定締結後の2016年から2023年9月までの間、年間の融資・引受総額と投資総額は多少変動しているものの、森林リスク産品の継続的な生産拡大を促進している資本には減少傾向が見られないことを示しています。

「森林と金融」コーディネーターのメレル・ヴァン・ダー・マークは、「多くの人は、環境犯罪に関与している企業に金融機関が融資することが、ほとんどではないにせよ、多くの地域で法的に問題がないことを知ればショックを受けるでしょう。今回の調査結果は、国連のPRI(責任投資原則)やPRB(責任銀行原則)のような持続可能性イニシアティブに加盟している金融機関や、ネットゼロ(注3)を誓約している金融機関が、これらの目標の達成を不可能にしてしまうような企業に融資を続けているという、明らかな偽善を示しています。金融機関に独自のESG基準を設定するよう任せるだけでは、資金の流れを持続可能なビジネス慣行へ転換させるには不十分です。最終的には各国政府が、社会と私たちみんなが依存している生態系を守るために必要な政策と罰則措置を講じる必要があります」と強調しました。

本報告書は資金の流れを記録し、森林セクター方針を分析することに加え、こうした資金がブラジルのアマゾンやインドネシアの森林とコミュニティに与えている負の影響を示す事例もいくつか紹介しています。今回の調査によって、森林破壊企業4社(JBS、カーギル、ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)、シナルマス・グループ)が、社会・環境面での負の影響に広く関係し、長期にわたり常習的に悪質行為を行ってきたにもかかわらず、何十億ドルもの資金を集め続けていることが明らかになっています。4社が関係する社会・環境被害は、何年にもわたって続いているものが多く、多くの記録が残っています。

報告書は結論として、金融規制当局と金融機関が社会と私たち人類が依存している生態系を守るために必要な公正な移行を促進するよう、国際的な公共政策の目標に沿って、資金の流れを調整する緊急措置を講じる必要があると述べています。そのために「森林と金融」連合は金融セクターに、以下の5つの基本原則を採用するよう求めています:1)生物多様性の損失の停止と回復、2)先住民族と地域コミュニティの権利尊重と優先、3)公正な移行の促進、4)生態系の完全性(インテグリティ)確保、5)セクターや課題、金融サービス全般にわたって、気候変動・生物多様性・権利尊重の様々な機関目標と整合させること。

「森林と金融」は、キャンペーン活動や草の根活動、調査活動を行う団体の連合体であり、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、TuK インドネシア、プロフンド(Profundo)、アマゾン・ウォッチ、レポーターブラジル、バンクトラック、サハバット・アラム・マレーシア(国際環境NGO FoE Malaysia)、FoE USによって構成されています。

 

注1)報告書全文「生物多様性崩壊をもたらす金融業務(Baking on Biodiversity Collapse)」(英語)https://forestsandfinance.org/banking-on-biodiversity-collapse/

要約版(日本語)

「森林と金融」金融調査方法論(日本語)

『森林と金融』は、東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカにおける紙パルプやパーム油など森林リスク産品への資金流入を包括的に分析したオンラインデータベース。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年、部門別に検索が可能。

  • 対象事業地域:世界三大熱帯林地域である東南アジア、ラテンアメリカ(アマゾン)、中央・西アフリカ(コンゴ盆地)
  • 対象産品:牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材(森林リスク産品)
  • 対象期間:融資・引受は2016年から2023年9月、債券・株式保有は2023年9月時点

注2)方針評価の方法論(日本語英語

熱帯林生物群系における森林リスク産品セクターに関係する大手金融機関100社以上を対象に、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連基準38項目を自社の投融資方針に盛り込んでいるかについて評価した。この基準項目は、国際的な合意やベストプラクティス(最良の手法や事例)から導き出したもので、金融機関は取引先や投資先がこれらの基準を満たすよう確保することで、ESG問題への加担を回避することが可能になる。日本からはメガバンク3行、三井住友トラスト・グループ、野村グループ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、公立学校共済組合が含まれる。

評価基準38項目の概要: 

  • 環境分野(12項目)森林破壊禁止の誓約、天然林や自然生態系の転換禁止の誓約。泥炭地、湿地、高保護価値(HC)林、保全地域、高炭素貯留(HCS)地域に関する具体的な項目。管理、汚染、農薬、温室効果ガス排出に関する項目など。
  • 社会分野(11項目):土地権の尊重、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)に関する権利の尊重、先住民族や地域コミュニティの広範な経済的・文化的権利の尊重。人権デュー・ディリジェンス・プロセス、モニタリング・システム、苦情処理メカニズムの確立。強制労働、児童労働、生活賃金、労働基本権に関する項目など。
  • ガバナンス分野(15項目):融資先企業のガバナンスに関する項目(汚職、租税回避、土地権の合法性の証明、環境・社会影響評価、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ(追跡可能性)、事業管理地の地図など)。金融機関自身のガバナンスに関する項目(取締役会による監督と報酬体系、方針の実施、苦情処理メカニズム、投融資の透明性など)。

評価は森林リスク産品の6品目別、および投融資に関して行われた。これらの詳細な評価は、金融機関の投融資ポートフォリオにおける各産品の相対的な重要性に基づいて加重平均の上、総合評価としてまとめた。

注3)温室効果ガスの排出量を、吸収量や除去量と合わせて、全体で正味ゼロにすること。

 

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-2F
関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※更新
『生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡』日本語要約版を追加しました(2023年12月15日)

『「森林と金融」金融調査方法論』(日本語)および『「森林と金融」方針評価方法論』(日本語)を追加しました(2024年2月、3月)