サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

発行物:ポジションペーパー「COP26:気候カオス回避のため、企業に求められる行動」(2021/10/29)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、29日、ポジションペーパー「COP26 気候カオス回避のため、企業に求められる行動(和訳)」(英語版は9月28日発行)を発行しました。

「CODE RED: 人類への非常事態警報」NY国連本部前でのアクション、2021年10月27日 PHOTO: Erik McGregor

ーー202110月31、パリ協定の締結以降、最も重要な気候変動会議が英国スコットランドのグラスゴーで始まる。しかし、先住民族の人々や最貧国の代表者、世界中の有色人種コミュニティを代表する人々が会議に出席し、その声を確実に届けることができるかどうかは、いまだ疑問視されている。新型コロナウイルスのワクチン接種の機会のみならず、締約国会議(COP)への渡航と参加の仕組みにも不公平さがあるためだ。

COPの目的は、私たちみんなが直面している、世界で同時に起きている気候危機への解決策を構築することだ。しかし、化石燃料および森林破壊産業による極端な気候変動や人権侵害について、最も責任のないコミュニティが最も直接的に大きな影響を受け、ここでもまた、制度的な不正義によって深刻な悪影響を受けていることを記しておきたいーー

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、パリ協定の目標達成に向けて地球温暖化を1.5度に抑えるため、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のグラスゴーでの締約国会議(COP26)で実質的な成果を求める協力者たちの世界的なネットワークに参加する

今年の気候サミットは金融に焦点が置かれるーーそれは当然だ。金融が重要なのは、途上国が異常気象に対処し、クリーンエネルギーの未来へと移行するのを支援するためだけではない。銀行や保険会社もまた、化石燃料拡大および、産業が引き起こす森林破壊を助長する資金の流れを直ちに断ち切る必要があるからだ。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は『第6次評価報告書』の中で、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と宣言した。向こう数十年の間に二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は1.5度および2度を超えるという。

つまり、手つかずの森林や泥炭地、自然生態系、先住民族の領域で、森林破壊のリスクがある産品(以下、森林リスク産品)の生産拡大を推し進める大手銀行や消費財企業は、森林と森の民の人権を守り、権利を擁護する方針を直ちに採用して実施しなければならないということだ。パーム油や紙パルプ、木材、大豆、牛肉生産は森林減少の最大の要因であり、気候危機に拍車をかけている。大手銀行や消費財企業は、そうした目的のために商業伐採や植林地・牧草地の天然林への拡大を推進している顧客企業あるいはサプライヤーとの関係を断ち切らなければならない。

そして私たちは、化石燃料に依存する経済から直ちに脱却する必要がある。保守的な国際エネルギー機関(IEA)でさえ、人間が暮らしやすい未来を守るためには、各国は化石燃料の全ての新規探査および生産を停止し、化石燃料への補助金を打ち切るべきであると明言している。それでも、ウォール街をはじめ世界中の銀行は、化石燃料セクターに数十億ドルを投じ続けている。

森林や、炭素を豊富に含む泥炭地に火が入れられブルドーザーで一掃される場合、または化石燃料が抽出され燃焼された場合、膨大な量の温室効果ガスが大気中に放出される。そして、炭素吸収源として機能するはずの森林や泥炭地は、破壊されるだけでなく、逆に二酸化炭素を放出して気温上昇をもたらす要因となる。非常識かつ無責任である。こうした脅威の存在に加担している企業や金融機関が責任を負うための気候変動のための合意が、地球には必要なのである。

気候危機の規模に応じた対応を取る

指針としての「リアルゼロ」

「2050年までにネットゼロ」はCOP26開催に至るまでの間、官民関係組織の常套句となってきた。しかし、2050年までにネットゼロでは「少なすぎ、遅すぎる」。2050年までに、すでに炭素排出量が壊滅的な影響を引き起こすレベルに達してしまう可能性がある。

FoE (Friends of the Earth)インターナショナルが、気候正義を求める複数団体の支援を受けて発行した報告書の中で述べているとおり、「リアルゼロ」とは「可能な限りゼロとなるよう排出量を削減し、生態学的アプローチを用いて残留排出量を除去する」ことを意味する。つまり、化石燃料が世界全体の排出量の主たる要因である以上、企業や政府が化石燃料の拡大を即時停止し、可能な限り早急に化石燃料全体を段階的に廃止する明確で実行可能な計画を示さない限り、そのネットゼロの約束を信用することはできないということだ。

森林減少や自然生態系の劣化は、世界全体の排出量の大きな要因となっている。炭素吸収源の役目を果たし、大気から最も多くの炭素を除去できる森林を保護することは、排出量を削減する最も安価で早い手段のひとつだ。したがって、世界の消費財企業――つまり、森林リスク産品の調達によって森林破壊につながる需要を推進している企業――に見られる多くのネットゼロの約束も、サプライチェーンで関わる森林やその他の自然生態系への商業伐採や単一作物のプランテーション、牧場の拡大を即時停止すると証明しない限り、信用することはできない。

あまりにも頻繁に「2050年までにネットゼロ」という言葉はPR戦術として使われ、政府や金融機関、企業は実質的かつ意味のある行動を遅らせている。気候変動対策の遅れは、気候変動による影響を否定するのと本質的には同じことである。

「リアルゼロ」の達成には、次の行動が必須となる。

●あらゆるセクターで最前線のコミュニティの権利を尊重し、暴力を終わらせる

IPCCは『土地関係特別報告書の中で、強力かつ組織化された地域コミュニティや先住民族コミュニティは森林減少と生態系崩壊に対する重要な防御であると確認している。こうしたコミュニティは、土地や文化、生活を守り、数世代にもわたってその営みを続けてきた。先住民族の人々が管理しているのは地球上の土地の約2割に過ぎないが、世界の生物多様性の8割を保護している。優先すべきは、人権を中心に据えて擁護し、先住民族の土地権を保証し、先住民族の権利を尊重する気候変動対策だ。それが正しい行動指針だからというだけでなく、最も有効なアプローチでもあるからだ。

多国籍企業や政府が人権を優先課題として擁護できないと、最前線のコミュニティや人権擁護者が受ける暴力、脅迫、不当な犯罪者扱いが増加する。この相関性はアグリビジネスセクターと化石燃料セクターで最も顕著だが、これは居住地で計画中あるいは進行中の開発事業による影響を受ける先住民族やコミュニティの土地保有権、土地利用権、またそれらの事業に対して「FPIC原則」(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意を与える、または拒否する権利、FPIC=Free, Prior and Informed Consent)との関連がとりわけ深いからだ。土地紛争では、自分たちの領域やコミュニティのこれまでの暮らしを守ろうとする先住民族の人々や女性、活動家たちが、社会的抗議を不当告発されたり、嫌がらせを受けたり、投獄されたりすることが珍しくない。最近のグローバル・ウィットネスの報告書『Last Line of Defence(仮邦題:最後の砦)』によれば、2020年だけで200人もの環境保護活動家が殺害されている。

化石燃料拡大への財政支援を停止し、化石燃料の段階的廃止を開始する

IEAは最近の報告書『IEAロードマップ(Net Zero by 2050)』の中で、2021年以降、新規の石油、ガス、石炭を供給してはいけないとする、これまでの結論を強調している。この主張からも、2050年までのネットゼロを約束している全ての企業が、化石燃料拡大への支援を即時停止すべきであることは明らかだ。化石燃料拡大への支援を続ける銀行や保険会社による「2050年までにネットゼロ」の約束を信用すべきではない。

優先課題として、銀行および保険会社は、人権や環境破壊、炭素排出量の多さに関して悲惨な記録が残るオイルサンド部門への支援を停止すべきである。また石炭産業への支援を即刻停止し、経済協力開発機構(OECD)加盟国とEU諸国では遅くとも2030年まで、他の各国では2040年までに完全撤退する必要がある。

銀行はこれらの短期的な取り組みと並行して、化石燃料融資の完全で管理された公平な段階的停止と、影響を受ける全ての労働者とコミュニティの公正な移行(ジャスト・トランジション)を計画し、スタートさせなければならない。同様に保険会社は、化石燃料に関する保険全体の段階的廃止を計画しなければならない。これらを果たさない約束は全てグリーンウォッシュになる。

森林と泥炭地の保護を優先する

森林と泥炭地は、すでに進行している重大な気候変動に世界が適応していくうえで不可欠であり、今後もその事実は変わらない。健全な森林は河川流域を維持し、海面上昇への影響を軽減し、気温の上昇を抑えるのに必要な植生をもたらし、生物多様性を維持・向上させ、二酸化炭素を吸収するが、こうした便益はほんの一例に過ぎない。天然林と泥炭地の保護は、企業の見せかけの「植林」プロジェクトであってはならず、その土地に根差した気候緩和・適応計画の中で何よりもまず優先されるべきものである。劣化した森林の回復は、炭素の吸収・貯留に極めて重要な役割を果たすため、手つかずの森林を守る取り組みを続ける必要がある。土地利用の転換を阻止し、森林リスク産品サプライチェーンを「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE:No Deforestation, No Peat and No Exploitation)の取り組みと整合するよう改革することも、同じく現存する炭素貯蔵量の増加と保護につながる。逆に、森林の減少と劣化が続けば、気候変動や生物多様性の損失が加速するだけでなく、森林コミュニティは気候変動に対処する力を削がれ、不公平かつ深刻な影響をさらに被ることになる。

気候危機に対する世界規模の方針と介入     は、林業や産品生産、化石燃料の採掘を望む企業に先住民族コミュニティの土地を引き渡すのではなく、自らの土地に対してコミュニティが持つ法的権利を保証し、拡大することを目指さなければならない。最後に残された手つかずの森林景観や天然林および生態系で、林業や産業型の産品生産、そして化石燃料の採掘を拡大することは直ちに停止しなければならない。

産品生産による森林破壊を阻止する

政府と企業は、自らの森林リスク産品の調達や資金提供が、森林減少や森林劣化、権利侵害の原因とならないよう徹底しなければならない。パリ協定の履行に対する包括的方針には、企業によるNDPE方針採用に関する明確な要件を記載する必要がある。その一環として、政府は企業のサプライチェーンおよび金融セクターへの強い規制を採用すべきである。

世界の森林減少の40%は、パーム油や紙パルプ、牛肉、大豆、カカオ、木材製品などの産品生産に起因する。森林リスク産品によって利益を得ている消費財企業や銀行は、森林減少を食い止めるだけでなく、先住民族の土地権を保証して、森林伐採や産業型農業、牧場の拡大による影響を受ける先住民族と地域コミュニティの権利を尊重する厳格な方針を採用し、遵守しなければならない。

さらに、家畜の生産はメタン排出の極めて大きな要因となっている。気候変動の主たる要因に完全に対処するためには、世界の食料システムもまた、破壊的で集約的な農法からアグロエコロジー(農業生態学)的な農法へと転換し、野菜中心の食事を奨励する必要がある。

 

偽りの解決策を防止する

カーボンオフセットは、気候変動の解決策にはならない。

現実的なリスクとして、COP締約国が、偽りの解決策の定着や奨励を狙いとするルールブックを承認する可能性がある。例えばネットゼロ目標達成のためのカーボンオフセット容認や、再生可能エネルギーのポートフォリオに組み込まれた発電用森林バイオマスの大規模燃焼、さらにネガティブエミッション技術といったものが該当する。世界は企業や政府のグリーンウォッシュを認める余裕はない。

カーボンオフセットは、IPCCの定義によれば、「他の場所で発生した排出量を相殺するために削減、回避または隔離される二酸化炭素換算排出量の単位」とされる。オフセットは取引可能なクレジットとしてパッケージ化され、販売されている。金融機関や消費財企業、政府に気候変動対策を求める圧力が高まる中、これらの組織は事業活動での排出量削減とは別物のカーボンオフセットに頼っている。化石燃料セクターにおける最大の汚染者である多くの企業が、ネットゼロ目標の達成に向けて森林カーボンオフセットの利用を検討している。

COP26に向けて大規模汚染企業が示している提案の多くは、カーボンオフセットの仕組みが、森林減少に歯止めをかけて排出量を削減するための市場本位のメカニズムとなる可能性を示唆するものである。しかし、その仕組みは機能しておらず、今後も機能するはずがない。むしろ、あらゆるカーボンオフセットのメカニズムには深刻な問題があることがこれまで明らかになっており、排出量を削減できなかったり、人権侵害や酷使に拍車をかけたりしているケースも多い。エネルギーセクターのネットゼロ目標達成のために、土地・森林によるオフセットの利用を認めてはならない。排出量を相殺するのではなく、削減できる場所で削減することが重要である。

発電用に木材を燃焼した場合、燃焼時のエネルギー当たりの排出量は、石炭よりも多くの二酸化炭素が排出される。さらに、バイオマス産業が推進している炭素回収技術は規模の大きな検証は行われていないため、大規模集中型発電での利用は、気候変動の解決策として認めることはできない。石炭火力発電の廃止が依然として優先事項であり、木質バイオマスを代替燃料として使うことは解決策にならないことを強調しておきたい。

COPの優先課題の一つは、欠陥のある「市場本位の解決策」から、人と地球の双方に利益をもたらすために、多様な生物が暮らす生態系を真に保護・管理し、回復させる一連の「自然本位の解決策」へと転換することだ。今回のCOPでは、偽りの解決策を停止すること、そしてオフセット、森林伐採、単一作物プランテーションの拡大、ネガティブエミッション技術の提案を認めないことを、全世界の合意事項としなければならない。

RANは、オフセットではなく、独立した基金を創設することで資金を調達する非市場型アプローチについて、CLARA(Climate Land Ambition and Rights Alliance)の提案を支持している。このような基金は、委任信託のように、土地・森林による大量のカーボンオフセットを発生させずに、権利を保証し、森林保護のために必要な資金を提供できるだろう。カーボンオフセットは、化石燃料由来の排出量削減に必要な投資を遠ざけ、遅らせるだけである。

パリ協定第6条8項では「総合的及び全体的であり、並びに均衡のとれた非市場型アプローチ」の正当性を強く示しており、これこそCOP26会期中に合意されるべきものである。これらの解決策は第6条2項および第6条4項で目指している定義がやや曖昧なアプローチとは異なる。第6条8項の非市場型解決策もまた保護と回復の優先を基本とし、自分たちの土地の持続可能な管理に対する先住民族コミュニティの法的権利の保証と拡大を目指す必要がある。

提言:気候変動、生物多様性、人権の危機に拍車をかけている銀行、保険会社、消費財企業へ

COP26の開幕までに、全ての金融機関および消費財企業は以下を行う必要がある。

●人権および先住民族の主権を尊重すること

金融機関は、人権および土地権を侵害する事業や企業、また、人種差別の慣行に関与し、条約が保護する先住民族の権利、主権、FPIC原則(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意を与える、または拒否する権利)を尊重しない事業や企業には、全ての金融サービスおよび投資を停止しなければならない。

消費財企業は、FPIC原則をはじめとする先住民族およびコミュニティの権利を擁護する方針や手順に実効性を持たせることで、人権や土地権が侵害されることのないよう積極的な役割を果たさなければならない。消費財企業は、FPIC原則の権利尊重を検証するために、人権モニタリング(監視)とデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)システム、現地調査に基づく方法を構築しなければならない。これは、インドネシアやアマゾン、コンゴ盆地の熱帯林を含む、林業やプランテーション拡大のために新たな開発が進む地域において特に重要である。消費財企業は、国際的な人権規範に従って、先住民族の土地権およびFPIC原則を保証する法的枠組みを推奨すべきであり、そうした枠組みを揺るがすことがあってはならない。消費財企業はまた、土地権の擁護者に対する暴力、不当告発、脅迫、殺害を防止するために、そのような行為を決して容認しない「ゼロトレランス」手順を制定しなければならない。

●森林破壊に関わる支援を停止すること

金融機関は、サプライチェーン全体を見て森林破壊や自然地域の転換、泥炭地破壊に関わりのある顧客企業には、あらゆる金融サービスおよび投資を即時停止しなければならない。

消費財企業は、サプライチェーン全体を見て、森林破壊や自然地域の転換、泥炭地破壊に関与している企業からの全ての調達と、こうした企業への投資を即時停止しなければならない。

●化石燃料への支援を停止すること

金融機関は、化石燃料産業への全ての金融サービスおよび投資の段階的廃止を始めなければならない。これには、化石燃料の採掘や生産および輸送の拡大に関与している事業や企業への全支援の即時停止を含む。

参考情報として、60団体を超える世界の気候変動団体および人権団体が2020年9月に発表した『パリ協定と整合性のある金融機関原則』では、パリ協定との整合性を図ろうとする金融機関の行動を評価するための基準をいくつか提供している。

さらに、RANが2021年4月に発表した『キープ・フォレスト・スタンディング 森林&人権方針ランキング2021』では、影響力のあるグローバル銀行および消費財企業各社(※)が、森林リスク産品セクターで森林破壊と人権侵害を助長している現状に対処するために採用した方針と行動を評価している。

※消費財企業(10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース
銀行(7社):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

 

引用資料、参考資料

IPCC第6次評価報告書、全文はこちら

国際自然保護連合(IUCN)の方針声明:手つかずの森林景観を含む原生林について(仮邦題)

生物多様性と気候変動に関するIPCC-CBD(生物多様性条約)共同報告書、要約はこちら

Chasing Carbon Unicorns: The deception of carbon markets and “net zero”(仮邦題:炭素のユニコーン(幻の生き物)を追う~炭素市場の欺瞞と「ネットゼロ」)

IEAロードマップ

Last Line of Defence(仮邦題:最後の砦)』

CLARA(Climate Land Ambition and Rights Alliance)、ウェブサイト入手可能な発行物

『The Final Warning Bel(仮邦題;最後の警報)』

英語版はこちら

“COP26 Glasgow: What’s Needed Now to Avert Climate Chaos”

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

声明:三井住友FG、2050年排出量ネットゼロを約束 (2021/9/3)

「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」もパーム油など農園開発に要求
〜「TCFDレポート2021」発表に伴い方針強化、待たれる人権尊重〜

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日3日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が「SMBCグループ TCFDレポート 2021」を8月31日に公表(注1)したことを受けて以下の声明を発表し、パリ協定の目標に向けての方針強化であると歓迎しつつも、中期目標の設定を先送りしていると批判しました。

RAN日本代表 川上豊幸

まず、SMBCが2050 年までに投融資ポートフォリオで温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにすると約束したことは、パリ協定の目標達成に向けた方針強化と受け止めて歓迎します。「2050年ネットゼロ」は気温上昇を1.5度に抑えるために必要な長期目標で、日本政府も同様の目標を掲げています。気候危機を加速させている化石燃料への資金提供額がアジア5位のSMBCが、アジア首位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(注2)に次いでコミットしたことは重要です。

しかし、投融資ポートフォリオのGHG排出量把握と中長期削減目標の開示は行われず、中期目標の開示は2023年に先送りされたことから、パリ協定への整合性を確認することができません。そして2030年までの限られた数年を目標策定に費やすことになり、緊急性に欠けます。また、投融資ポートフォリオGHG排出量の算定には、石油・ガス、電力セクターに加え、GHG排出に大きな影響を与えている石炭採掘を含めた化石燃料セクター全般、およびパーム油を含む森林関連セクターを早期に追加することが求められます。

第二に、今回のレポートでは、森林破壊の要因となるパーム油などの農園開発事業に対し、「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ方針」(※NDPE方針)を遵守する旨の公表を求めました。しかし、取引先には遵守の公表を求めるだけではなく、グループ全体およびサプライチェーンを含めた遵守状況をモニタリングし、不遵守状況への対応等を通じて、方針の実施と強化を進めることが必要です。また同基準は農園開発事業に限定され、各産品の購入企業には適用されていないことも課題です。MUFGも今年4月にパーム油セクターにNDPEを適用しましたが、同様の問題があります(注3)
※No Deforestation, No Peat and No Exploitationの略

一方、森林伐採事業セクターでは違法労働への支援を行わないことを明記したものの、労働者の権利尊重や地域住民や先住民族の土地権尊重といった人権尊重が明記されていません。特に「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC:Free, Prior and Informed Consent)(注4)の要件は追加されませんでした。NDPEと同様、FPIC 基準は国連「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成や「国連ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)への遵守に不可欠です。

SMBCは前述の通り、パリ協定締結以降の化石燃料への資金提供額がアジア5位、世界18位であることが明らかになっています。また、3メガバンクは東南アジアの森林減少に加担している企業への最大の資金提供者に含まれます(注5)。 SMBCの融資先には、問題案件となっているベトナムおよびインドネシアの新規石炭火力発電所建設、インドネシアで人権侵害を伴うパーム油の農園(注6)、米国で先住民族らによる抵抗が続くオイルサンド・パイプライン(注7)等が含まれています。

注1 ) 三井住友フィナンシャルグループ、「SMBCグループ TCFDレポート 2021」の発行について」、2021年8月31日

「SMBCグループ TCFDレポート 2021」

注2)RAN他プレスリリース「『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」、2021年3月24日

注3)NGO共同声明「MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず」、2021年4月26日

注4)FPIC(エフピック)とは、先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、自由意志による、事前の、十分な情報を得た上で同意する、または同意しない権利のことをいう。

注5)RAN他「森林と金融データベース」より
参照:​​RAN他プレスリリース「『森林と金融』メガバンク等の森林方針の評価を発表」、2021年6月22日

注6)RAN、インドフードまたは同社グループ企業への投融資に関する銀行・投資家向けレター、2020年11月13日

注7)RAN声明「メガバンクが支援する北米パイプライン『ライン3』、活動家らの封鎖で工事中断」、2021年7月7日

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同プレスリリース:MUFG株主提案、23%の支持を獲得(速報値)(2021/6/29)

~株主のプレッシャーがMUFGの気候対策を動かす~

MUFG株主総会に気候変動株主提案を提出した気候ネットワークと個人株主 ©︎RAN

気候ネットワークおよび3人の個人株主が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して提出した株主提案は、可決に必要な3分の2の株主の支持を得ることはできませんでしたが、株主らがMUFGに対し、気候変動に対する明確な警告を示し、投資家による圧力の影響を今一度指し示す結果となりました。速報値では23%の株主の賛成が得られました。

本日のMUFGの株主総会の議案の一つとして採決された株主提案は、気候ネットワークおよびマーケット・フォース、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japanの3人の個人株主による共同提案であり、パリ協定の目標に整合させるために必要な指標と目標を備えた計画を決定し、開示することを求めたものです。

本株主提案は、Federated Hermes EOSを含む、資産運用総額で数兆ドルに及ぶ機関投資家からの支持を得たことに留まらず、MUFGが2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロを約束する「MUFGカーボンニュートラル宣言」の発表につながる動きを後押ししました。

国際的な大手議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、株主総会に向けた助言の中で、「銀行の動きは外部からのプレッシャーと無関係ではないように見えることは指摘しておきたい。MUFGは、気候ネットワークが今年3月に株主提案を提出した後に、カーボンニュートラル宣言を発表しており、グループからのプレッシャーがこの動きを後押ししたと考えられる。このことは、気候ネットワークのMUFGに対する働きかけ(エンゲージメント)が既に実を結んでいることを示していると言えるだろう」と述べています。

 気候ネットワークの国際ディレクター平田仁子は、「大手議決権行使助言会社が会社提案を支持したにもかかわらず、4分の1に迫る23%の株主が私たちの提案を支持したことは大変心強い結果です。投資家が、今のMUFGの方針ではまだ不十分であることを突きつける結果になったたと考えます。今日の議決権行使は、経営者をさらに追及するものであり、MUFGに対するプレッシャーは今後一層高まると考えています。」

 「また、気候危機の物理的・経済的影響は明らかであり、投資家は、MUFGに対し、さらに迅速に大胆に行動することの必要性を求めていくことになるでしょう」と述べています。

MUFG株主総会会場前で株主提案について説明する気候ネットワーク国際ディレクター 平田仁子氏 ©︎Taishi Takahashi

アジアの主要銀行で化石燃料に最多の額を提供しているMUFGの現状を踏まえると、提案者は5月17日に発表されたネットゼロ宣言を歓迎しながらも、MUFGが以下のような欠陥を残していると考えます。

  • ●パリ協定と整合するために必要な短期・中期の目標が定められておらず、「2030年の中間目標は2022年度に設定・公表する」と表明するに留まっている。すべての投融資に伴う排出量の測定および開示を行うとの明確なコミットがなされていない(スコープ3)。
  • ●第26回 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)議長の最近の要求に反して、石炭に対するファイナンスのフェーズアウト(段階的廃止)目標を定めていない。
  • ●石油・ガスの事業の拡大、または森林と泥炭地の破壊といった非常に炭素集約度の高い事業に対するファイナンスを止めるという包括的なコミットメントは出されていない。

350.org Japan 代表の横山隆美は、「MUFGが新しい方針を公表したことにより、一部の株主にとっては、銀行が正しい方向に進んでいることが一時的には保障されたわけですが、本日の投票は大きな不満と懸念を残すものとなりました。私たちの議案が否決されたとはいえ、相当数の賛成票があった訳であり、コーポレート・ガバナンス・コードが示す通り、MUFGは株主の賛成の理由や多くの票が集まったことの分析を行い、株主との対話をさらに深めることが必要です」と述べています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸は「MUFGは化石燃料への資金提供で世界6位の銀行であり、森林破壊をもたらす産品への資金提供でもトップ銀行の一つです。そのことを考えれば、現在の約束では自社の投融資による膨大な炭素排出への影響力に対して適切に対処ができていません。この株主の賛同への動きをMUFGは真摯に受け止めて、迅速に対処することが必要です」 と指摘しています。

マーケット・フォースのエネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「世界は急速にクリーンエネルギーへと移行していますが、MUFGは過去にこだわり続けています」「投資家にはプレッシャーをかけ続ける責任があり、MUFGが言葉だけでなく真の行動へと確実に移行するために、今後も引き続き厳しい目を向けていくことが重要です」と述べました 。

MUFG株主総会後の記者会見 ©︎350 Japan
MUFG株主総会会場前でのアピール行動 ©︎ Taishi Takahashi
MUFG株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち ©︎ Taishi Takahashi
MUFG株主総会会場前でのアピール行動に参加した若者たち ©︎ Taishi Takahashi

株主総会前アクション・記者会見の写真はこちら

参考:NGO共同プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出〜昨年のみずほFGに続く日本での株主アクション〜」(2021/3/29)

英語のプレスリリース:“Shareholders send MUFG a stark climate warning”

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

気候ネットワーク 平田仁子 E-mail: khirata@kikonet.org
マーケット・フォース 福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa@marketforces.org.au
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 E-mail: yuki.sekimoto@ran.org
350.org Japan 渡辺瑛莉 E-mail: eri.watanabe@350.org

NGO共同プレスリリース:三菱UFJ株主総会を前に世界同時アクション実施(2021/6/23)

〜気候変動を悪化させる投融資の中止を求め〜

2021年6月23日
国際環境NGO 350.org Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
Oil Change International
Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)
BankTrack

東京ー6月17日〜22日まで、化石燃料部門や森林破壊など気候危機への資金提供でアジア最大の銀行である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して、化石燃料、森林破壊や人権侵害への支援をやめるように求める世界一斉アクションが、東京のMUFG本店、およびマニラ、ジャカルタ、ニューヨーク、アムステルダム、バルセロナ、ブラジルなど各国のグローバル拠点で行われました。アクションはMUFG年次株主総会の1週間前に行われました。株主総会では、同行に対する史上初の気候変動株主提案に対して、投資家が投票を行います。

活動家たちは、MUFGがパリ気候協定の採択以降、アジアで最大の化石燃料への資金提供者であり、世界中で石炭、石油、ガスの拡大に資金を提供し続けていると訴えました。MUFGが関与するプロジェクトとして特に注目を集めたのは、物議を醸しているライン3タールサンドパイプライン東アフリカ原油パイプライン(EACOP)、およびアジアにおける石炭火力発電事業でした。活動家たちはまた、MUFGとインドネシアの子会社であるバンクダナモンが、同国において熱帯林の破壊、石炭採掘、人権侵害に資金提供を行なっていると非難しました。

オフラインのアクションに加え、SNS上でのアクションも行われ「#気候変動への支援をやめてください」「#EndFossilFinance」「#DefundDeforestation」などのハッシュタグとともにツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどで投稿が行われました。ニューヨーク市では、森林と人権に対するより強化された行動を要求する約20,000筆の署名が提出されました。また、MUFGに対し、30を超える国・地域の143団体は、化石燃料への投融資のフェーズアウト(段階的撤退)などを求める署名を提出しました。

アクションの写真やビデオはこちらからご覧いただけます。(日付、撮影場所、撮影者の名前を記載)

各国参加者からのコメント:

<東京>

350 Japanボランティアによるローカルグループで、石炭火力発電所の問題に特化したキャンペーンを展開する、350 New Enerationの山崎鮎美は「残念ながら日本の銀行が、アジアや世界レベルで見ても、化石燃料産業への支援に大きく加担してしまっていることは、日本では積極的に情報をとりにいかない限り、その恐ろしい事実を感じることができません。MUFGさんの公式サイトやSNSはクリーンなイメージで、一見、気候危機と何も関係がないように見えます。だからこそ、私たちはずっと声を上げ続けなければいけないと思います。#気候変動への支援をやめてください」と訴えました。

<サンフランシスコ、ニューヨーク>

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)のハナ・ハイネケンは「MUFGは、熱帯林や泥炭地の破壊、ライン3パイプラインのような化石燃料の拡張プロジェクトに対して無謀な資金提供を続けながら、漠然とした2050年ネットゼロを公約することによって、気候破壊的な資金提供をグリーンウォッシュしようとしています。私たちはもうこんなことは懲り懲りだと伝えるために、ここにやってきました。真の気候変動対策は今すぐ始める必要があります」と訴えました。

<マニラ>

Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)のコーディネーターのリディ・ナクピルは「MUFGの環境ポリシーの例外規定、特にCCUS、混焼などの技術を用いる石炭火力へのファイナンスに対して、私たちは警鐘を鳴らします。これらの技術を装備した場合でも、石炭火力発電所からの温室効果ガス排出量は、人々や地球が許容できないレベルに達します。株主総会を控えた今、気候危機の緊急性に鑑みて、MUFGに例外なく石炭火力へのファイナンスを停止し、アジアにおけるガスおよび石油プロジェクトへの関与を段階的に廃止するよう要請します」とコメントしました。

Asian Energy Networkのコーディネーターであるスザンヌ・タグルは、「MUFGは、アジアだけでなく世界中で、化石燃料プロジェクトのトップの資金提供者であり続けています。これが、アジアの「ダーティ・カンパニー」の1つとして特定した理由です。MUFGの政策は、パリ協定の目標を達成するために必要な野心と緊急性を欠いています」とコメントしました。

<ジャカルタ> 

インドネシアの若者コミュニティであるFossil Free Universitas Indonesiaに所属する大学生のナイファ・ウズラは、「私たちはNoCoal Japanと連帯し、MUFGが地球と私たちの世代の未来を破壊している石炭とパーム油への資金提供を終了することを求めています。汚染企業への資金の流れを遮断することで、私たちの国および世界の気候災害を悪化させるプロジェクトを阻止できることを願っています」と述べました。

MUFGとインドネシア子会社のバンクダナモン、インドネシア金融庁(OJK)に対する請願を始めたTuKインドネシアの事務局長エディ・ストリスノは、「MUFGがインドネシアにダブル・スタンダードを適用し、同社の子会社が世界の他の地域よりも低い基準を用いて、気候を破壊する企業を支援することを許可していることは恥ずべきことです。投資家は株主総会で、『MUFGの長期的なコミットメントは、熱帯林の破壊、森林火災、人権侵害への資金提供を停止するための早急な対策とは代替できない』という明確なメッセージを送るべきです」とコメントしました。

<アムステルダム、バルセロナ>

アムステルダムでの行動に参加したBanktrackヘンリケ・ブティジンは次のように述べています。「MUFGのネットゼロの発表と責任銀行原則へのコミットメントは、銀行が新しい化石燃料プロジェクトや東アフリカ原油パイプライン(EACOP)のような人権に深刻な影響を与えるプロジェクトを除外しない限り、空虚な約束のままです。EACOPのパイプラインは、地域社会に広範な悪影響を及ぼし、野生生物や水源を脅かし、新たな炭素排出源となるでしょう。だからこそ、MUFGにEACOPへの融資を公に除外するよう呼びかけているのです。」

本件に関するお問い合わせ

350.org Japan  担当:渡辺瑛莉  japan[@]350.org

RAN  担当: 関本幸 yuki.sekimoto[@]ran.org

NGO共同声明:MUFG、邦銀初の2050年カーボンニュートラル宣言発表を受けて(2021/5/18)

パリ協定と整合的な具体策は示さず、株主提案は継続へ

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

環境NGO4団体は本日18日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が17日に「MUFG カーボンニュートラル宣言」(注1)を公表し、2050 年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をネットゼロにすることなどを発表したことを受け、以下の声明を発表しました。

写真:気候ネットワークと個人株主3名がMUFGに株主提案を提出、2021年3月、東京

今般のMUFGの発表は先月のポリシー改定に続き、3月に気候ネットワークおよび他環境NGO3団体に所属する個人株主3名(以下、共同提案者)が、MUFGに対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定・開示することを求めた株主提案を提出した後に発表されました。

環境NGO4団体は、MUFGによるパリ協定の目標に向けた方針強化を一定の前進と受け止め、歓迎します。

しかし、本方針では株主提案が要求する具体的な指標や短・中期目標が示されず、なおパリ協定との整合性が取れていると判断することはできません。共同提案者はMUFGへの株主提案を継続することとし、引き続きMUFGへのさらなる行動強化を求めていく予定です。

以下は、各目標およびセクター別方針における主な課題点です。

短・中期の目標の設定は先送りに
MUFGは邦銀として初めて、2050年にファイナンスによる排出量をネットゼロにするカーボンニュートラル目標を公表し、同目標を掲げる国際的イニシアティブのNet-Zero Banking Alliance(NZBA、注2)への加盟を発表しました。2050年ネットゼロは気温上昇を1.5度に抑えるために必要な長期目標であり、日本政府が掲げた目標でもあります。気候危機を加速する化石燃料へ資金提供を行うアジアのトップ銀行(注3)であるMUFGがネットゼロにコミットしたことは歓迎されます。しかし、短・中期の目標を設定することなしに、「2030年の中間目標は2022年度に設定・公表する」と表明することに留まっています。気候変動の緊急性、並びに、1.5度目標達成のためには2030年までの排出量半減が必要という科学的コンセンサスを鑑みれば、MUFGが短・中期の目標を今回掲げなかったことにより、パリ協定の整合性を確認することができないままであることは懸念されます。また、目標の達成のためには、全ての投融資ポートフォリオのGHG排出量(Scope3)の計測・公表が必要ですが、MUFGはこの点をより明確にするべきです。

石炭火力発電からのフェーズアウト目標
MUFGは昨年度、2040年度に石炭火力発電向けプロジェクトファイナンス残高をゼロにする削減目標を掲げましたが、今後、「事業に占める石炭火力発電の比率が高いお客さま向けコーポレート与信の残高目標を開示する方針」を明らかにしました。プロジェクトファイナンスのみならず、コーポレートファイナンスに踏み込む削減目標の開示方針を明らかにしたことは前進ですが、1.5度目標達成のために、2030年にOECD諸国で、2040年に世界全体で石炭火力発電所の全廃が必要とされる中で、MUFGが石炭火力発電の全廃にコミットしなかったことは科学に反するだけでなく、COP26議長国によって表明された要請とも反します。

石油・ガスセクター、森林関連セクターは進展なし
先月のポリシーフレームワークの改定時と同様に、本発表でも炭素集約的な石油・ガスセクターの拡大および森林・泥炭地破壊を止める包括的なコミットメントが示されませんでした。パリ協定の目標に整合するには、これらのセクターの新規開発・拡張および自然生態系の劣化を加速する余地はありません。MUFGが、化石燃料への資金提供者として世界第6位の銀行であり、森林破壊を伴う産品への世界最大の資金提供者に数えられることに鑑みれば、最近のコミットメントをもってしても、投融資ポートフォリオからの過大な炭素集約度を管理することができているとは言えません。

株主からのコメント

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「2050年ネットゼロのゴールを明確にし国際的な連盟に参加したことは、大きな一歩です。しかし、そこに向けて、投融資を通じた石炭火力からの排出削減やコーポレートファイナンスの脱炭素化を短中期にいかに着実に実現するのかの具体的な指標と目標は定まっていません。パリ協定の整合性を図るためにはさらなる方針強化とその加速が必要です」と述べました。

国際環境NGO 350.org Japan代表である横山隆美は、「MUFGが2050年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス(GHG)排出量のネットゼロを宣言したことは邦銀初の試みであり、一定の前進です。しかし、1.5度目標との整合性に必要な短・中期目標を設定しなかったことは大きな懸念です。気候危機の解決に寄与するためには、新規の化石燃料への投融資を直ちに止め、石炭火力を筆頭に科学の要請に沿った化石燃料の包括的なフェーズアウト戦略を早急に構築すべきです」と指摘しました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「MUFGの『ネットゼロ宣言』は、自社が多大な二酸化炭素の排出源であると認識しているという点で重要です。しかしネットゼロの約束は、化石燃料の拡大と森林破壊への資金提供をすぐに停止しなければ意味がなく、問題の多いカーボンオフセットへの依存も容認できません。また、MUFGの方針は炭素集約型産業への重要な資金提供銀行となっているインドネシアの子会社には適用されていない点も大きな懸念です」と強調しました。

マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGは『カーボンニュートラル宣言』によって気候変動へ真剣に取り組んでいることを投資家向けにアピールしたつもりかも知れませんが、十分なアピールになっていません。改定されたポリシーを持ってしても化石燃料や石炭火力発電事業者へ投融資を継続できます。MUFGは深刻さと緊急性を増す気候危機問題の表面を取り繕っているに過ぎず、解決にはほとんど貢献しません」と述べました。

注1)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ「『MUFG カーボンニュートラル宣言』について」2021年5月17日
注2)国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」
注3)RANプレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」2021年3月24日

本件に関するお問い合わせ
気候ネットワーク 平田仁子 khirata@kikonet.org
マーケット・フォース 福澤恵 meg.fukuzawa@marketforces.org.au
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 yuki.sekimoto@ran.org
国際環境NGO 350.org Japan 渡辺瑛莉 japan@350.org

英語の声明はこちらから:
“MUFG Commits to Carbon Neutrality by 2050 but Punts Detailed Plan on Paris Alignment – Shareholders Will Not Withdraw Climate Resolution”

NGO共同声明:みずほ、石炭採掘・化石燃料コーポレートファイナンスなどで進展するもパリ協定の目標達成の水準にはなお及ばず(2021/5/14)

昨日13日、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)が「サステナビリティアクションの強化について」を発表し(注1)、パリ協定の目標と整合するポートフォリオへの転換、化石燃料企業の移行リスクへの対応強化、新規炭鉱採掘への投融資禁止などの方針を明らかにしました。みずほのポリシー改定は、いくつかの点で他のメガバンクよりも前進しており、脱炭素化に向けた方針強化を歓迎します。一方で、現時点でそこに届かない点もあります。今改定をもってしてもパリ協定と整合的であると判断することは難しく、気候危機の緊急性を踏まえて、より具体的な目標や指標、ロードマップの早急な策定が求められます。

みずほ株主総会会場前での環境NGOアクション、2020年6月25日、東京

石炭採掘(一般炭)セクター方針の改定
今般、「新規の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする投融資等は行わない」としたことは他の邦銀に先駆けた方針強化として歓迎します。一方で、「既存の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする案件については、パリ協定と整合的な方針を表明している国のエネルギー安定供給に資する案件に限り、慎重に検討の上、対応する可能性あり」と例外を残したことは不十分です。

石炭火力セクター方針は抜け穴残す
石炭火力発電所の投融資等停止の例外として「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠、且つ、リプレースメント案件は慎重に検討」「革新的、クリーンで効率的な次世代技術の発展」等の規定を残したことは問題です。現在実用化されていないCCUSやアンモニア・水素混焼等は、2030年までの排出削減にほとんど寄与せず、石炭火力を延命させるものになりかねず、パリ協定1.5度目標に必要な中期目標と整合しません。OECD諸国では2030年までに、世界全体では2040年までに石炭火力発電所を全廃するための具体的なロードマップを描くべきです。

化石燃料企業の移行リスクをセクター方針に追加
「石炭火力発電、石油火力発電、ガス火力発電、石炭鉱業および石油・ガスを主たる事業とする企業は、脱炭素社会に向けた移行が適切になされない場合、移行リスクに晒される可能性があり」「〈みずほ〉は、気候変動に伴う移行リスクへの対応が進展するよう、取引先とエンゲージメントを行い、一定期間を経過しても、移行リスクへの対応に進捗がない取引先への投融資等は、慎重に取引判断を行います」と発表したことについては、今回初めて化石燃料に依存する企業に対するコーポレートファイナンスに踏み込んで対応しようとする姿勢がみられます。ただし、その具体性には欠けています。エンゲージメントの実効性を担保するためにも、パリ協定と整合的な目標・指標を含む具体的なロードマップを示す必要があります。

パリ協定の目標と整合するポートフォリオ
「環境方針」の改定として、「パリ協定における世界全体の平均気温上昇を抑制する目標達成に向けた資金の流れをつくり、 同目標に整合したファイナンスポートフォリオへと段階的に転換を図っていきます」と明確化したことは歓迎されます。一方で、1.5度目標に整合するには(注2)、石炭火力向け与信残高削減目標をコーポレートファイナンスへ適用拡大、より早期の実現、石油・ガスおよび森林関連セクターへ拡大することが求められます。今回、北極圏での石油・ガス採掘事業、オイルサンド、シェールオイル・ガス事業を明記しましたが、環境・社会リスク評価の実施に留まり、パリ協定の整合性に必要な具体的禁止事項が示されるべきです。
また、SMBCグループが投融資ポートフォリオのGHG排出量把握(Scope3)にコミットしたことは重要であり、みずほも続くべきです。

大規模農園(大豆等)セクター、パームオイルセクター
パーム油および木材・紙パルプセクターの顧客企業に限定されていた「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE)等の環境・人権方針の策定や、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC、注3)の尊重が、大規模農園(大豆等)セクターにも拡大された点は歓迎します。一方パーム油セクターでは、顧客農園企業に全農園での「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)認証取得を求めるものの、取得予定のない企業との取引も「同水準の対応」であれば可能とし、抜け穴になる可能性があります。方針は顧客の独立系サプライヤーやパーム油購入企業には適用されないため、人権侵害や環境破壊への加担を避けることは困難です。そしてNDPE方針の策定やFPICの尊重を求めるだけでなく、遵守状況の確認も求められます。さらに農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは気候対策面から大きな失敗です。

<各団体からのコメント>
国際環境NGO 350.org Japanキャンペーナーの渡辺瑛莉は「今般のみずほの方針は、石炭採掘の新規投融資停止など、邦銀の中では最も先進的だと言えますが、世界の主要銀行と比べると低い水準に留まっています。パリ協定と整合的なポートフォリオへ転換、化石燃料企業と移行リスクエンゲージメント強化などは具体的な中期目標や指標の設定・公表、化石燃料セクターからのフェーズアウト方針などがなければ、実効性あるポリシーとは見なされません。今後のさらなる方針強化に期待します」と述べました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「昨年、私たちの株主提案は否決されましたが、提案していたパリ協定との整合性を図ることに向けて方針を強化し、コーポレートファイナンスにも踏み込んで対応しようとする姿勢は重要な進展だと考えます。しかしその具体的目標設定に至らなかったこと、石炭火力の延命の可能性を残していることなど、対応はまだ不十分であり、更なる強化が必要です」と指摘しました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク「責任ある金融」シニアキャンペーナーのハナ・ハイネケンは、「投融資先企業との対話を通じてパリ協定と整合する事業を促す意図は評価できますが、気候危機を回避するためには化石燃料の拡大、森林破壊、泥炭地の破壊などを直ちにやめなければいけません。化石燃料及び森林破壊を起こす産品産業への資金提供者として世界トップ10に入るみずほは、現在のポートフォリオを大胆に変えることが必須です」と指摘しました。

注1)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティアクションの強化について」2021年5月13日

注2)詳細はRAN「パリ協定と整合性のある金融機関原則」を参照。

注3)Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 担当:渡辺 japan@350.org
気候ネットワーク 担当:平田 khirata@kikoent.org
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN) 担当:関本 yuki.sekimoto@ran.org