サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース:『森林と金融』グローバルのデータベース発表〜パリ協定後、森林破壊企業に1,500億ドルの資金が流入〜(2020/9/2)

紙パルプ、パーム油部門等、世界三大熱帯林での合計額を初分析〜銀行の資金提供額でみずほ世界5位、三菱UFJはパーム油部門で上位一行に〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他5団体は、9月1日に『森林と金融』データベースの調査範囲を東南アジア限定からグローバルに拡大し、日本の3メガバンクを含む世界の銀行が、2016年以降、世界三大熱帯林分布地域での森林破壊と土地劣化を加速させている産品の生産や取引に約1,540億米ドルの融資と引受を行ったことを明らかにしました1

『森林と金融』は、東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地を含む)における紙パルプやパーム油などの産品への資金流入を包括的に分析した初のデータベースです。データ分析の結果、銀行による対象事業への融資と引受はパリ協定が締結された2015年12月以降も40%増加し、同時に、機関投資家が370億米ドルの資産を対象企業の株式や債券で保有していることが分かりました(2020年4月時点、対象事業を特定して計算)。今年もインドネシアやアマゾンで森林火災が発生し、煙害や健康被害の不安が高まる中で新型コロナウイルスの感染拡大が重なることから、金融機関の責任が問われます。

【概要】
RANを含む6団体で構成される「森林と金融連盟」による共同プロジェクト。世界三大熱帯林地域で、森林に影響を及ぼす事業を行う企業約300社へ流入する資金を明らかにするオンラインツール。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年度、部門別に検索が可能。
●対象事業地域:東南アジア、ブラジル、中央・西アフリカ(コンゴ盆地含む)
●対象産品:紙パルプ 、パーム油、牛肉、大豆、天然ゴム、木材
●対象期間:2013年から2020年4月

 【主な分析結果】
●パリ協定締結以降、森林に影響を及ぼすリスクのある事業に流れた融資・引受は1,540億米ドルにのぼり、その約60%が15銀行のみで占められている(※)

●上記15銀行のうち8行が、3メガバンクも含め、国連の「責任銀行原則(PRB)」の署名企業で、銀行の事業戦略を「パリ協定」と「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿ったものとすることを約束している。特にSDGs目標15では「2020年までの森林減少阻止と劣化した森林の回復」をターゲットにしている。

●資金の流れは、ブラジル、中国、インドネシア、マレーシア、米国、日本の銀行からが大きい。この分析結果は、金融セクターを世界の環境および社会的優先事項に合致させるために必要な規制と企業方針が不足していることを表している。

●全体で、ブラジル銀行が最大の資金提供者である。2016年以降、森林リスクのある産品事業に300億米ドルを提供したが、ブラジルで事業を行っている企業にほぼ限定。牛肉、大豆、紙パルプ事業に資金提供されている。

●みずほフィナンシャルグループ(みずほ)は全体で世界5位で55億米ドルの融資・引受を提供。紙パルプへの資金提供が大半を占めている。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG )の融資・引受額はそれぞれ29億米ドルで13位、14位とつづいた。MUFGはパーム油部門で世界最大の資金提供者の一つである。

【背景】
様々な多国間方針や業界の方針が森林破壊ゼロを約束しているにも関わらず、熱帯林の消失面積は過去10年間でほぼ倍増した。主な原因は農業目的の皆伐で、多くの場合が不法に行われ、汚職、脱税、組織犯罪と深いつながりがある。森林を犠牲にして生産される産品は総称して「森林リスク産品」と呼ばれ、牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材が含まれる。2019年だけで1,190万ヘクタールの熱帯林が失われた(注2)。国連環境計画によると、森林破壊および関連する野生生物の生息地喪失は、新型コロナウイルスのような人獣共通感染症の出現における重要な要素となっていながら(注3)、コロナ感染拡大中、森林破壊は50%以上も増している(注4)。融資と引受、そして投資は森林破壊に責任がある企業の事業拡大と日々の事業に非常に重要である。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「いま、世界に残る最後の熱帯林では、意図的な火入れが原因で火災が起きています。紙やパーム油などの産品を生産する農地開墾のために『安価な』方法として火が使われているからです。日本のメガバンクは、顧客企業の農業生産事業が森林火災に拍車をかけていることを知りながら資金を提供し、化石燃料に資金を提供することによって気候危機と火災のリスクを悪化させています。このような資金提供は、PRBに署名した際の約束と合致していません」と指摘しました。

RANは同日、MUFGのアメリカ本部前(ニューヨーク市マンハッタンの大通り「アベニュー・オブ・ザ・アメリカス」)で、同社に熱帯林火災への資金提供を止めるよう求めてアピール行動を行いました。ハイネケンは「三菱UFJはパーム油産業への世界最大の資金提供者の一つです。パーム油産業は継続的な森林や泥炭地の破壊と、インドネシアで毎年起こる森林火災に大きな責任があります。しかし、三菱UFJのパーム油に関する与信方針は森林や泥炭地、人権を十分に保護していなく、さらにインドネシア現地の子会社であるバンク・ダナモンには適用されていません。三菱UFJにESG方針の早急な強化を求めます」と強調しました。

Photo by Erik McGregor for Rainforest Action Network

TuKインドネシア事務局長 エディ・スカルノ氏は「インドネシアで事業をする銀行と機関投資家は、森林破壊、泥炭地破壊、人権侵害に、顧客企業の事業を通して日常的に資金提供をしています。しかし銀行は、毎年のように大きな健康被害をもたらす煙害(ヘイズ)を含め、自社事業の直接的な影響を市民、そして株主や規制当局に開示していません」と批判し、「金融セクターの監視を強化し、銀行にはより厳しい貸付基準の導入を強いるといった、緊急の改革が必要です」と続けました。

ブラジルの環境保護団体アマゾン・ウォッチ プログラム・ディレクター クリスチェン・ポワイレ氏は「アマゾン先住民族の人々は、壊滅的な火災の季節に、新型コロナウイルス感染拡大による犠牲者が出る悲劇にも直面しています。ブラジルのアマゾン全域で発生した火災は、過去10年間で最も多く、先住民族の土地で昨年以降は77%も増加しています。この急激な増加は、非合法な森林破壊と、森林にリスクを及ぼす産品生産による火入れの産物で、大手グローバル金融機関によって資金が提供されています。世界の銀行と投資家には、『森林と金融』データベースは災害の共犯者を明らかにしていると伝えたいです」と訴えました。

※15銀行の一覧は別紙「【世界】上位15銀行 部門別の融資と引受」を参照ください。

注1)「森林と金融」ブリーフィングペーパー(2020年9月更新版)

「森林と金融」データベース

方法論:各熱帯林分布地域で森林破壊や土地劣化のリスクを及ぼす事業を行う企業を特定した上、同企業の生産、一次加工、貿易、製造部門に流れる投融資として合理的に考えられる金額を計算しています。

協力団体:レインフォレスト・アクション・ネットワーク、TuKインドネシア、プ ロフンド(Profundo)、レポーターブラジル、アマゾン・ウォッチ、バンクトラック

注2)世界資源研究所、“We Lost a Football Pitch of Primary Rainforest Every 6 Seconds in 2019”、2020年6月2日

注3)国連環境計画、“Preventing the next pandemic – Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission”、2020年7月6日

注4)フィナンシャルタイムズ、“Global deforestation accelerates during pandemic: Tree cover losses increase 77% as collapse in economies pushes exploitation of resources”、2020年8月9日

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※追記:「森林と金融」ブリーフィングペーパーへのリンクを追加しました(2020年9月4日)

プレスリリース:三菱UFJ、他大手銀行・消費財企業、インドネシア「紛争パーム油」生産に加担(2020/8/28)

地域住民から略奪された土地で生産

インドネシアーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、インドネシアNGO2団体、LBHバンダアチェとWalhi(ワルヒ)アチェと現地調査を行い、大手パーム油企業ゴールデン・アグリ・リソーシズ(GAR)が地域住民の土地権を侵害して生産された「紛争パーム油」を大手消費財企業に供給していることを明らかにしました(注1)。GARの供給先にはネスレ、マース、モンデリーズ、ペプシコ、ユニリーバなどが含まれます。また、GARは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の顧客企業であり、MUFGはESG(環境、社会、ガバナンス )方針で違法事業への融資禁止などを約束していることから、自社方針違反についての対処が求められます。

土地を守るために村に残った、パンテ・チェルミンの人々

今回の調査によって判明したのは、GARと別の1社(Permata Hijauグループ)を通じ、問題となっているパーム油企業 PT. Dua Perkasa Lestari (DPL、注2)の紛争パーム油が供給されたという点です。DPL社はパンテ・チェルミン村(アチェ 州西南アチェ県)のコミュニティとの間に数十年にわたる未解決の紛争があり、以下の紛争が調査で明らかになりました。

 ●DPL社は、最初の事業地で適切な事業許可を取得していなかった
 ●コミュニティが慣習的に利用してきた土地の収奪が記録されていた
 ●DPL社はコミュニティから「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得ず、住民たちの農作物に壊滅的な被害を与えた
 ●DPL社はコミュニティの人々を脅迫して立ち退かせるために、インドネシア総務省の方針に違反して、軍隊を組織的に使用した、など。

LBHバンダアチェ ディレクターのSyahrul氏は「DPL社の事業許可が2008年に発行されて以来、地域コミュニティは自分たちの土地から強制的に立ち退かされる脅威にさらされてきました。 住民のほとんどは経済的制約など様々な理由でそこで生活を続けることができませんでしたが、まだ多くの人が自分たちの土地のためにたたかうことを誓っています。 LBHは、この事件を西南アチェ県政府、アチェ州政府、アチェ州議会、インドネシア大統領府にも報告しましたが、紛争は解決されず、誰もコミュニティの土地権の申し立てを検証していません。新型コロナウイルス の感染が拡大する中、地域コミュニティの土地権を保護し、食料と生活を維持することはこれまで以上に喫緊の課題となっています」と訴えました。

MUFGは、2018年から2020年4月の間、DPL社から紛争パーム油を購入したGARとその子会社に対して合計3億ドルの融資を行っています(注3)。一方で融資などに関するESG方針を2018年に策定し、翌年にはパーム油部門への資金提供についての方針を追加しました。ESG方針の中で「違法または違法目的の事業」への融資の禁止、持続可能なパーム油事業の支援、そして「非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業」の場合は顧客企業の環境・社会配慮が十分であるか確認することを約束しています(注4)。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三菱UFJフィナンシャル・グループは、GARのような、自社およびサプライチェーンで繰り返し人権侵害を起こしている企業には融資すべきではありません。 GARへの融資は三菱UFJのESG方針に違反しています」と指摘しました。

消費財企業や銀行は、サプライチェーンにおける供給業者や融資先企業に対し、パンテ・チェルミン村の住民への土地返還が合意されるまで、DPL社との取引停止を求める責任があります。 ハイネケンは「三菱UFJフィナンシャル・グループは、GARが責任あるパーム油のみの調達を確実にするために、資金提供の必要条件として監視強化や、サプライチェーンのコンプライアンス管理体制強化を徹底させるべきです」と強調しました。

GARはインドネシアの大手財閥、シナルマス・グループのパーム油子会社で、創業家のウィジャヤ・ファミリーが支配しています。 シナルマスのパーム油部門は、2016年から2020年4月まで、インドネシアの銀行のバンクネガラインドネシア(BNI)、バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)、オランダの銀行のABNアムロ、MUFGなどから35億米ドルを超える融資と引受を受けました。これはDPL社による人権侵害と森林破壊の証拠がGARに提起されたのと同じ時期です。

DPL社の事業管理地は世界的に重要な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」内に位置し、同熱帯林には高濃度の炭素を蓄えた泥炭地があります。同社はその一つのトリパ泥炭地に事業地を保有し、パンテ・チェルミン村はトリパ泥炭地域にあります。

注1)詳細はこちら:“Major Brands and Banks Complicit in the Production of Conflict Palm Oil on Stolen Community Lands in Indonesia”(英語)

注2)アチェ州議員 Said Syamsul Bahri 氏が所有

注3)RAN「森林と金融」データベース

注4)「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org