サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

NGO共同声明:三井住友が石炭火力への貸出残高ゼロ目標(2040年目途)を発表~依然パリ協定から乖離〜(2020/7/29)

SMBC Group announces it will reduce its credit balance of coal power project finance to zero by 2040, but it’s still not aligned with the Paris Agreement (English follows)

本日、三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)が統合報告書2020 (注)を公表し、2040年を目途に石炭火力発電向けの貸出金残高をゼロにするとの目標を掲げました。与信残高ゼロに向けた目標スケジュールの設定はみずほFGに続いて邦銀として2行目で、一定の前進を歓迎します。しかし、依然としてパリ協定の長期目標から乖離しており、更なる方針強化が必要です。

パリ協定の長期目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。しかし、2040年に与信残高をゼロにしたとしても、融資を行った石炭火力発電所はその後も運転することが想定されています。パリ協定の長期目標との整合性を確保するためには、返済完了後の運転期間も想定した上で、より早期の与信残高ゼロを達成することが求められます。

プロジェクト・ファイナンスの返済期間は通常15年程度と想定されることから、新方針は当面の間、新規の融資契約を行う余地を残しています。例えば、ブンアン2(ベトナム)やマタバリ5-6号機(バングラデシュ)がその余地に含まれていると考えられますが、これらの案件は、パリ協定の長期目標と整合しない他にも、支援対象国における電力供給過剰状態の深刻化や、再エネのコスト低下に伴う経済合理性の欠如、現地の環境汚染や住民への人権侵害など、様々な問題が指摘されています。したがって、これらの融資決定は行うべきではありません。

さらに、SMBCグループの新方針の対象は石炭火力発電のプロジェクト・ファイナンスのみに限定されており、石炭火力発電への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業向けの融資、引受、株式・債券投資については削減の対象としていません。気候危機を悪化させている石炭採掘や他の化石燃料関連事業、更に森林破壊についても、資金提供の停止や残高削減の方針は示されていません。これらの点で、海外金融機関の投融資方針の水準と比べると、依然遅れをとっています。

したがって、新規石炭火力発電事業への融資については、早急に例外なく停止する方針を掲げるとともに、石炭火力発電や石炭採掘への依存度が高い企業・新規発電所および関連インフラ建設を計画中の企業への投融資(企業融資、株式・債券の引受及び保有)から撤退する方針を掲げるべきです。また、科学的知見およびパリ協定の目標に基づき、石炭のみならず、炭素排出量の多い他の化石燃料産業や林業・農業関連企業への投融資の抑制方針を掲げることが重要です。SMBCグループには、さらなる方針の強化を求めます。

<脚注>
https://www.smfg.co.jp/investor/financial/disclosure.html

環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

本件に関する問い合わせ先
「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 田辺有輝 tanabe@jacses.org

July 29, 2020

SMBC Group announces it will reduce its credit balance of coal power project finance to zero by 2040, but it’s still not aligned with the Paris Agreement

On July 29, Sumitomo Mitsui Financial Group (SMBC Group) published its 2020 Annual Report (FY2019), and stated that it will reduce its credit balance of project finance related to coal-fired power generation to zero by 2040. We welcome SMBC Group’s step forward with its coal policy, which leads SMBC Group to be the second Japanese bank after Mizuho Financial Group for setting a timeline for reducing its coal-related credit balance to zero. However, the new policy still does not align with the Paris Agreement’s long-term goals, and needs to be strengthened further.

To achieve the Paris Agreement’s long-term goals, developed countries need to completely stop the operation of coal-fired power plants by 2030, and developing countries by 2040. Even if SMBC Group reduces its credit balance to coal-fired power generation to zero by 2040, the coal-fired power plants SMBC Group financed would likely continue to operate after 2040. In order to ensure consistency with the Paris Agreement’s long-term goals, SMBC Group needs to reduce the credit balance to zero earlier than 2040, taking into account the duration of operation of the coal plants after the loans are repaid.

Since the repayment period of project finance is usually expected to be about 15 years, the new policy leaves room for financing new coal-fired power projects for the time being. These would include, for example, Vung Ang 2 in Vietnam and Matarbari unit 5 and 6 in Bangladesh. However, these projects are already facing serious problems, including inconsistency with the Paris Agreement’s long-term goals, an excess supply of electricity in the host countries, the lack of economic justification due to the ever-falling costs of renewable energy, environmental pollution at the proposed sites, and human rights violations affecting local residents. Therefore, SMBC Group should not finance these projects.

Furthermore, the new policy of SMBC Group is only limited to project finance for coal-fired power plants, and does not cover corporate loans, underwriting, or investments in debt and equity of companies that are heavily dependent on coal-fired power generation or companies planning to build new coal-fired power plants or associated infrastructure. Also, there is no mention of any policy to terminate financing or reduce the credit balance of coal mining, other fossil fuel industries or deforestation, all of which accelerate climate change. In this respect, SMBC Group’s policy still lags behind the investment and loan policies of international financial institutions.

For the above reasons, we urge SMBC Group to establish a policy that immediately stops financing for all coal-fired power projects, without any exceptions. We also urge SMBC Group to declare a policy of withdrawing from loans and investments (corporate lending, underwriting and holding of debt and equity) for companies that are heavily dependent on coal (power generation, mining, etc.), and companies planning to build new coal-fired power plants or associated infrastructure. It is also important to establish policies that restrict financing of not only coal-related industries, but also other fossil-fuel-related industries as well as forestry and agribusiness companies, based on science and the Paris Agreement targets, as they are also major sources of carbon emissions. We call upon SMBC Group to further strengthen its policies and reflect the concerns indicated above.

Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Kiko Network
Friends of the Earth Japan
350.org Japan
Mekong Watch
Rainforest Action Network (RAN)

Contact:
Yuki Tanabe, Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Email: tanabe@jacses.org

プレスリリース:日清食品を東京五輪調達コード違反で通報〜ライセンス商品のパーム油について〜 (2020/7/1)

【7月8日追記】東京2020組織委員会より7月7日付けで、通報した日清食品製品は東京五輪ライセンス商品ではないため、通報受付の処理を開始しない旨の回答がありました。当団体の事前確認が不十分だったため、事実と異なる情報を発信したことをお詫びいたします。

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、6月24日、日清食品の東京五輪ライセンス商品におけるパーム油調達が東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」に違反する疑いがあるとして、東京2020組織委員会に通報を行いました。

破壊されたシンキル泥炭林、インドネシア・アチェ州

通報の対象(注1)は、日清食品ホールディングスが販売している「日清 東京2020オリンピック応援デザイン 黄金鶏油トリオ」3商品です(注2)。東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」(注3) と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」(注4)(以下、調達コード)では、法令遵守、環境保全、先住民族等の権利尊重の基準を満たした形での生産を求めているため、RANが報告書を発表したインドネシアでの調査事例を元に、調達コードに違反するパーム油が同社の五輪ライセンス製品に含まれていた可能性を指摘しています。

【通報の概要】

通報者:レインフォレスト・アクション・ネットワーク

被通報者:日清食品ホールディングス

通報先:東京2020組織委員会

内容:日清食品が調達しているパーム油における調達コード違反の可能性について、同社のサプライヤー企業(不二製油)のパーム油調達先(搾油工場や農園)で起きている環境・社会問題を指摘。

詳細:
不二製油の公開している搾油工場リスト(注5)および苦情処理リスト(注6)には、環境・社会面での諸問題が判明している搾油工場・農園企業が含まれています。東京五輪のパーム油調達コードでは、法令遵守、環境保全、先住民族等の権利尊重の基準を満たした形での生産を求めているため、調達コードに違反するパーム油が日清食品の東京五輪のライセンス製品に含まれていた可能性があります。

インドネシアの搾油工場・農園企業の主な事例:
スマトラ島北部にある「ルーセル・エコシステム」内のシンキル・ベンクン地帯では、以下の調査事例がRANの報告書で明らかになっています。保護区の近隣にある搾油工場では、農園企業の生産状況について十分な確認が行われていなく、下記のような問題を抱えるパーム油が調達されていました。

1) 「ラワ・シンキル野生生物保護区」内での違法農園開発(注7
2) 生態系を保全せず、また泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域の適切な保全をせずに熱帯林破壊を行なっている農園企業からの調達(注8
3) 農園企業による地域住民の土地権侵害(注9)、など。

通報の背景・日清食品とのやりとり:
RANは昨年、日清食品との会合において、上記のような問題のある調達先がサプライヤーに含まれているかどうかを問い合わせたところ、「取引業者との契約があるので、問題のある搾油工場からの調達の有無については回答できない」という返答でした。しかしサプライヤーに含まれないのであれば、そのような契約に基づく制約はないと考えられます。「日清食品の調達先に含まれていない」との明確な返答ではなかったため疑念を持ち、今回の通報に至りました。

通報の目的:
現在の日清食品の調達方針(注10)と取り組みでは(注11)、東京五輪の調達コードに合致していないパーム油が利用されるリスクを排除できず、今後も問題のあるパーム油が利用される可能性があります(注12)。今回の通報によって、日清食品の不十分な調達方針とサプライチェーン管理を改善するとともに、五輪調達の持続可能性に配慮した基準の担保方法として不適切な認証システム(RSPO「持続可能なパーム油のための円卓会議」マスバランス)に依存している状況を示すことができます。さらに長期的な視点では、東京五輪のレガシーとして、パーム油調達実態の改善を促したいと考えています。

*報道関係の皆様:通報文書の閲覧をご希望の場合はご連絡ください。

注1)東京2020組織委員会「『持続可能性に配慮した調達コード』に係る 通報受付窓口 業務運用基準」
※対象案件は「本通報受付窓口は、東京 2020 組織委員会の調達する物品・サービス及びライセンス商品(以下「調達物品等」といいます。)に関する案件であって、調達コードの不遵守に関する通報(調達コードの不遵守又はその疑いを生じ得る事実をその内容とするもの) について取り扱うことができるものとします」と定義されています。(太字はRANで強調)

注2)日清食品ホールディングス「日清 東京2020オリンピック応援デザイン 黄金鶏油トリオ」(2月3日発売)」、2020年1月17日

注3)東京2020組織委員会「持続可能性に配慮した調達コード」

注4)東京2020組織委員会「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」

①生産された国または地域における農園の開発・管理に関する法令等に照らして手続きが適切になされていること。

②農園の開発・管理において、生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること。

③農園の開発・管理において、先住民族等の土地に関する権利が尊重され、事前の 情報提供に基づく、自由意思による合意形成が図られていること。

④農園の開発・管理や搾油工場の運営において、児童労働や強制労働がなく、農園 労働者の適切な労働環境が確保されていること。

注5)不二製油の搾油工場リスト(2020年5月19日、英語)

注6)不二製油の苦情処理リスト(2020年5月25日更新、英語)

参考:不二製油「責任あるパーム油調達に関する取組み状況について」2019年12月25日

注7)RANプレスリリース「三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜炭素を豊富に含む『ルーセル・エコシステム』のシンキル保護区で違法栽培」 (2019年10月18日)

注8)RAN, “Major Brands Again Caught Sourcing Deforestation-Linked Palm Oil” (2019年10月29日、英語)

注9)RAN, “Community Struggles for Land Rights and Livelihoods in Singkil-Bengkung region” (2019年11月25日)

他の事例とRAN報告(英語)へのリンクは以下の通り
●調達している搾油工場は不明だが、残された天然林の皆伐を継続している企業がパーム油原料のアブラヤシの実の出荷を開始した。日本にも供給される可能性がある。
https://www.ran.org/leuser-watch/chainsaws-enter-indonesias-orangutan-capital/

●絶滅危惧種(スマトラゾウ)の生息地の皆伐と違法な火入れや森林破壊を続けている農園企業の事例。
https://www.ran.org/leuser-watch/elephant-habitat-under-fresh-attack/ 

●泥炭地での絶滅危惧種(オランウータン)の生息地への違法な火入れを行ったことで罰金支払い判決がでている農園企業の事例。https://www.ran.org/leuser-watch/will-nestle-and-mars-intervene-to-protect-indonesias-peatlands/

注10)日清食品「持続可能な調達」

注11)日清食品「地球のために、未来のために。環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」始動!」

注12)RANプレスリリース「日清食品株主総会で森林・人権保護方針強化を求めてアピール『問題あるパーム油を使わないで』〜持続可能パーム油100%、2030年では遅すぎる〜」 (2020/6/25)

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:MUFG、株主総会でパリ協定に整合する投融資を約束せず (2020/6/29)

〜メガバンクで最も弱いESG方針〜

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日29日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が15期定時株主総会に株主として参加しました。同社はRANの質問に対して、化石燃料および森林破壊への投融資について、パリ協定との整合に必要な段階的廃止を表明せず、国連責任銀行原則(PRB)が求める行動を満たしていない状況が判明しました(注1)

RANら環境NGOは、会場のグランドプリンスホテル新高輪前で化石燃料への投融資に反対するバナーを掲げ、株主にアピールしました。環境NGOはメガバンク全ての株主総会で気候危機を加速させる投融資に反対するアピール行動を行いました。 特に、25日のみずほフィナンシャルグループの株主総会では、環境NGO「気候ネットワーク」が日本初の気候危機に関する議案を提出し、株主の三分の一以上が議案に賛成しました(注2)。

MUFG の株主総会に参加したRAN日本代表の川上豊幸は「三菱UFJフィナンシャル・グループは、石炭だけでなく、石油・ガスなどの化石燃料や熱帯林破壊による気候危機を加速させている企業へ多額の投融資をしています。株主総会では、パリ協定の目標達成に必要なタイムラインに沿って、あらゆる化石燃料と森林破壊への資金提供を段階的に廃止することを約束すべきではないかと質問しましたが、質問に答えることはなく、方針を復唱しただけでした。このような不誠実な姿勢では、今年のみずほと同様に、来年はMUFGが厳しい株主提案を受ける可能性もあります」と批判しました。MUFGは国連が支援する責任銀行原則(PRB)に昨年9月に署名し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束しています(注3)。

RANの「化石燃料ファイナンス成績表2020」によると、2015年12月のパリ協定採択以降のMUFGによる化石燃料部門への融資・引受額は世界6位で、みずほと三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)を上回っています (注4)。炭素予算(排出可能と考えられる炭素量)には化石燃料採掘やインフラ拡大の余地がないことを考えると、化石燃料拡大への資金提供は特に問題です。

 MUFGはまた、熱帯林の破壊を引き起こしているパーム油産業の日本最大の資金提供者であり、世界中の森林破壊を推進する最も影響力のある銀行の一つであると指摘されています(注5)。今年はオイルサンドと北極圏の石油・ガスについての方針を採用し、ここ数年は石炭とパーム油に関する方針を採用しました (注6)。しかしながら、問題のある企業やプロジェクトへの資金提供を継続し、MUFGの方針や投融資の実施状況は気候危機やその他のESGリスクを適切に対応するには不十分であることを示しています。

川上は「MUFGは、熱帯林や泥炭地を破壊し、人権を侵害している主要なパーム油および紙パルプ企業に融資し続けています。 MUFGはまた、主要な新しい石炭インフラだけでなく、北米のキーストーンXLを含むオイルサンド・パイプラインにも融資等をしています。大統領候補のジョー・バイデン氏は、自身が当選した場合、気候危機への対応のためにこの事業の建設中止を公約しています。 MUFGが持続可能性リーダーシップを示すことができなければ、さらに国内外の投資家から大きな圧力を受けることになるでしょう」と続けました。

注1)RANの質問概要とMUFGの回答は以下の通り。
RANの質問:「今年3月の朝日新聞記事(※)では、MUFGがインドネシアでの違法な熱帯林破壊に加担していることが報道されました。MUFGによるパーム油産業への多額の融資のためです。MUFGはまた、化石燃料に資金提供する日本最大の銀行であり、アメリカで大勢の先住民族による反対運動に直面しているオイルサンドのパイプライン建設にも多額の融資をしています。残念ながら、MUFGのESGに関する与信方針は、他の2メガバンクの方針よりも弱くなっています。 そこで質問ですが、MUFGは持続可能性リーダーシップを取り戻し、パリ協定の目標を達成するために必要なタイムラインに沿って、全ての化石燃料と森林破壊への資金提供を段階的に廃止することを約束すべきではないでしょうか?」

MUFGの回答:「留意する事業として位置付けている森林セクター、パームオイルセクターにおいては、お客様の環境社会の配慮の実施状況を確認する意味で、その認証の取得を目指したり、認証取得の計画の提出への取り組みをしている。オイルサンドについては、今年発表した環境社会ポリシーフレームワークで新たに留意する事業に追加しました。地域の生態系への影響、先住民族の地域社会への影響をお客様の環境社会への配慮の状況をしっかり確認するなど、MUFGとしては、これらの様々なポリシーに基づいて持続可能な環境社会の実現、パリ協定の合意事項の実現に向け貢献していきたい」

※朝日新聞記事「環境 転換点2030:農園開発、地球脅かす パーム油、持続可能な生産模索 奪われた原生林、取り戻せるか」(2020年3月22日朝刊)

注2)気候ネットワーク「プレスリリース:多数の海外投資家がみずほFGに対する気候ネットワーク株主提案を支持」、2020年6月25日

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連『責任銀行原則』発足をうけて〜」 (2019/9/23)
※責任銀行原則には、日本では3メガバンクと三井住友信託銀行が署名している。

注4)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り」2020年3月18日

2016年から2019年の間に、MUFGは化石燃料の全セクターに119億ドル、みずほは103億ドルを提供した。 セクター別に見ると、MUFGはオイルサンド、北極圏の石油・ガス、フラッキング、石炭採掘、石炭火力それぞれのトップ30〜40企業の中で日本最大の資金提供者です。

注5)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」2020年4月1日

注6)三菱UFJフィナンシャル・グループ、「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2020年5月13日

※参考:RAN声明「三菱UFJ、新ESG方針を発表するも『期待外れ』〜気候変動対策・森林保護、3メガで最も進展のない方針改訂〜」2020年5月14日

RANはMUFGの資金提供について以下の点を指摘してきました。
●環境・人権面で諸問題を抱える「紛争パーム油」への世界最大の資金提供者の一つで、気候危機を加速させた昨年のインドネシア森林火災にも加担した。
●今年3月にRANらが発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表 2020」では、パリ協定締結以降の化石燃料事業への融資・引受額が世界で6番目に大きく、2016年から2019年に1,188億米ドルの資金提供が行われたことが明らかになった。
●MUFGは北米のオイルサンド・パイプライン企業への主要な資金提供者であり、資金提供先にはエンブリッジ社が建設するライン3石油パイプライン、TCエナジー社が建設するキーストーンXLパイプラインが挙げられる。さらに、気候災害と先住民族の権利侵害と明確なつながりが指摘されているにも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の最中に両社へ新規の資金提供を約束した。
●北極圏での石油・ガス開発への資金提供額における世界4位の金融機関で、新規の石炭火力発電所へのファイナンスの原則的な停止を約束したにもかかわらず、議論を呼んでいるベトナムのブンアン 2のような新規石炭火力発電事業への資金供給を続けている。

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プレスリリース:日清食品株主総会で森林・人権保護方針強化を求めてアピール「問題あるパーム油を使わないで」 (2020/6/25)

〜持続可能パーム油100%、2030年では遅すぎる〜

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日25日、日清食品ホールディングスの第72期定時株主総会に参加し、株主に向けて、パーム油調達の方針強化を同社に求めるよう会場前でアピールしました。また、同社新環境戦略で示されたパーム油調達目標「2030年度に持続可能パーム油100%達成」は遅すぎると指摘し、総会では「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE方針)を正式な調達方針として採用することを求めましたが、曖昧な回答しか得られませんでした。

RANと「ウータン・森と生活を考える会」のスタッフとボランティアは、オランウータンの着ぐるみとともに、会場のホテルニューオータニ大阪前で「日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に 」と書かれたバナーを掲げ、同社が「持続可能性」を追求する東京2020大会のスポンサーでもあることから、環境面・社会面でのパーム油調達方針の強化を求めました。RANはこれまで同社に、消費財企業の国際基準となっているNDPE方針をパーム油調達方針に採用するなど、責任ある調達に早急に取り組む必要があると提案してきました。

日清食品が今月9日に公表した新環境戦略「Earth Food Challenge 2030」(注1)では「持続可能なパーム油の調達を進める」とありますが、以下の問題点が挙げられます。

●「2030年度には、RSPO認証パーム油の調達に加え、独自アセスメントにより持続可能であると判断できるパーム油のみを調達することを目指します」と約束しているが、今後10年にわたって日清食品の調達が森林減少、泥炭地劣化、人権侵害といった問題に直面し続ける懸念がある。

●持続可能なパーム油には、国際的なパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」の認証油に加え、同社の独自アセスメント(評価)によって持続可能であると判断されたパーム油も含まれる。しかし評価方法次第では、低い基準や曖昧な基準で評価され、持続可能であると判断されてしまう恐れがある。さらに、同社のRSPO認証油の定義には、非認証油を混入する方式のパーム油も含まれる可能性がある。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「日清食品が、今後10年間も環境・社会面での配慮の確認が不十分なパーム油調達を続けることになれば、サプライチェーンで発生している気候危機や生物多様性の損失、人権や労働権、および土地権の深刻な侵害が今後も続き、問題を先送りすることになります。日本だけでなく、同社が事業展開する世界中の消費者やESG(環境・社会・ガバナンス)課題に取り組む投資家にとっても受け入れられるものではありません。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標15.2では、2020年までに森林減少を阻止することを掲げています。その目標にも合致していません」と批判しました。

RANは、株主として総会で発言し、「2030年度までに持続可能なパーム油のみを調達するという目標では、他のグローバル企業が2020年を森林減少阻止の目標年にしている点から大きく見劣りする」と指摘しました。また、日清食品が22日、NDPE方針への支持をウェブサイトで表明した件について(※)「NDPE方針を持続可能なパーム油の調達における独自アセスメントの内容として組み込むとともに、調達方針として採用すべきだ」と提案しました。

それに対して日清食品は「(持続可能なパーム油のみの調達達成を)2030年まで待ち続けているわけではなく、できるだけ早く進めていく」と述べ、「独自アセスメントは、外部のNPOと客観的な認証が確保できる形で進める」としました。また「(NDPE方針を)支持しているということは、パーム油原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油のみを調達するよう、最善の努力を尽くすということだ」との曖昧な返答でした。

川上は、「日清食品は『最善の努力を尽くす』というのであれば、持続可能性の確認を進めるために、NDPE方針をパーム油調達方針として定め、独自アセスメントに明確に組み込むことが不可欠です。また、パーム油を調達する搾油工場リストの情報開示を通じて、アブラヤシ農園などで起きている問題について、現地NGOなど外部に情報提供を求めることで早急に問題を発見し、早期の解決に取り組む体制づくりが必要です。世界が日本のリーダーシップに期待している今、五輪スポンサーでもある日清食品が他社に見劣りするような『最善の努力』では、消費者や投資家からの納得は得ることは難しくなります」と批判しました。

【森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針(NDPE方針)について】

RANは日清食品に対して、今年の株主総会までに、NDPE方針に合致した調達方針の強化の公表を求めてきました。具体的な内容としては、森林破壊ゼロを基本に、インドネシアやマレーシアなどパーム油生産国の熱帯林及び泥炭地の保護、アブラヤシ農園での労働権保護、先住民族や地域コミュニティの土地権を含む人権尊重が挙げられます。また、企業全体で供給業者の事業活動がNDPE方針の要求事項に合致していることを迅速かつ独立して検証することを目的に、信頼できる体制の構築にも取り組むよう再三求めています。NDPE方針は、国連責任投資原則(PRI)に関わる機関投資家56機関が支持を表明しています(注2)。投資機関も方針採択と実施に関心を寄せているという点で、非常に重要な調達基準となっています。

RANが今年4月に発表した報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」注3)でも、グローバルサプライチェーンにおける森林を犠牲にする産品の拡大による森林破壊と土地権侵害を止めるよう日清食品に提言しています。報告書の中で、取り上げている消費財企業10社のうち、NDPE方針を採択していないのは日清食品だけです。

【「五輪スポンサー日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 」署名について】

本署名(注4)は、日清食品に、東京五輪スポンサー企業としてパーム油調達方針の強化を求めたもので、2019年8月21日の開始以来、約29,500人の賛同が集まっています。署名サイト「change.org」で展開し、宛先は日清食品ホールディングス安藤宏基取締役社長 CEOです。米国でも5月にメールキャンペーンを実施し、アメリカ日清宛に約17,000通のメールが送信されました。日米で合計5万人近い方々が同社のパーム油調達について懸念を持ち、アクションに参加したことは画期的です。

日清食品は、このような消費者の声を真摯に受け止めて、NDPE方針に基づく調達方針のさらなる改訂に早急に取り組むことが求められます。

※【6月26日追記】6月22日、日清食品「持続可能な調達:原材料ごとの実施状況 パーム油」に「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ (NDPE) を支持しており、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油のみを調達するよう、最善の努力を尽くしています」が加えられました。

注1)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」始動!」

注2)2019年4月、責任投資原則(PRI)に関わっている機関投資家56機関、合計運用資産総額7.9兆米ドルがRSPOへの支持を表明し、銀行を含むパーム油バリューチェーン全体の全ての企業に対して、公表する形で「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」の採用と実施を求めた。
PRI, “Fifty-six investors sign statement on sustainable palm oil”, 3 April 2019

注3)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」(2020/4/1) 

注4)RAN署名「五輪スポンサー日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜問題あるパーム油を使わないで〜」

【訂正】「米国でも5月にメールキャンペーンを実施し、安藤CEO宛に約17,000通のメールが送信されました」とありましたが、「アメリカ日清宛に」の誤りでした。お詫び申し上げます(6月26日)。

ブログ:新型コロナウイルスとつながる熱帯林破壊、メガバンクらの対応分かれる(2020/5/28更新)

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン
(本ブログはRIEF環境研究機構に4月29日に寄稿したものです。5月28日更新)

写真:インドネシアの泥炭地での違法皆伐、2017年 AIDENVIRONMENT提供

現在、世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス。実は、東南アジアなどに広がる熱帯林の破壊と大きく関係している。日本の金融機関は投融資を通じて、東南アジアの熱帯林破壊を助長してきた。

日本の金融機関の責任が問われる中、4月中旬に発表されたみずほフィナンシャルグループ(みずほ)と三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の方針改定では、この問題に真摯に対応し始めていることが見受けられる。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は林業とパーム油に関する方針を昨年策定した。今後の改訂方針で強化される可能性はあるが、2行と比べて対応が遅れている(*)。

そこで大きな課題となるのは、各銀行がどのような基準を設け、その基準がどのように実施されるかという点だ。ここではメガバンク3行をはじめ、東南アジアへの投融資が比較的多い三井住友信託銀行、農林中央金庫と野村グループも加え、各社のエクスポージャーと対策を比較してみる。

熱帯林保護は感染症予防策


今年4月、国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、新型コロナウイルスの感染拡大について、「自然を上手く管理すれば、人間の健康も維持できる(”The better we manage nature, the better we manage human health”)と見解を発表した

壊れやすい生態系に人間が入り込むことで、人間と野生生物の接触がかつてないほど増大していることや、違法な野生生物取引が深刻な感染症を悪化していると説明している。新しい感染症の約75%は人畜共通感染症であり、こういった感染症から毎年約10億の事例と数百万人の死者が発生していると警鐘を鳴らしている。

「動物由来感染症の危機を拡大させる要因(動物から人間にうつる病気)」
森林破壊や他の土地利用転換
規制が弱く違法な野生生物取引
農業と家畜生産の増大
細菌の薬剤耐性
気候変動
出典:国連環境計画 *RANによる仮訳

パーム油、紙パルプ、木材、大豆、牛肉などの産品は、森林を犠牲にして生産されることから、総称して「森林リスク産品」と呼ばれる。農園や植林地開発のために森林は伐採され、開発に伴う道路建設はさらなる森林破壊を引き起こし、違法伐採等の事業活動のために森林へのアクセスを容易にする。森林を分断して野生生物の移動ルートを遮断し、生息地を断片化する。

陸上生物種の大半が熱帯林に生息していることを考えると、感染症の予防策として、熱帯林を保護することは特に重要である。また、熱帯林は二酸化炭素の吸収など、気候の安定にも極めて重要な役割を果たす。周辺で暮らす数百万人もの地域住民や先住民族にとっては住居であり、生活の柱であり、宗教的または精神的な拠り所でもある。そのため、国連「持続可能な開発目標」(SDGs)目標15では「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な管理の実施を促進し、森林破壊を阻止し、劣化した森林を回復」するという目標を掲げているのだ。

日本の金融機関の熱帯林破壊との関わりと対応

では、メガバンクをはじめ、東南アジアの熱帯林にエクスポージャーがある日本の金融機関は熱帯林破壊にどのように関わり、どのように対応しているのだろうか。

日本の金融機関の中でも、特にメガバンクの投融資先には、東南アジアの熱帯林や泥炭地を破壊し、人権侵害に関与している企業が複数ある。そこには東南アジアで事業展開している紙パルプ企業やパーム油企業だけでなく、現地でパルプ、木材、天然ゴムを生産または加工している王子製紙、丸紅、住友林業、伊藤忠住友ゴムといった日本企業も含まれる。

以下の表は、東南アジアの熱帯林に悪影響を及ぼしている100社のうち、資金提供金額が最も多い上位10企業の森林リスク部門に、日本の金融機関が行った投融資の流れと金額を示している(2017年〜2019年8月)。

このうち、最も資金調達が多いのは王子製紙である。実は、同社は世界中で紙パルプ事業を展開し、インドネシアでの合弁パートナー3社(コリンド社インドフード社/サリム・グループAPP社/シナルマス・グループ)は「ブラック企業」と言われるほど、熱帯林破壊や違法性、人権侵害を含む環境・社会問題が長年指摘されてきた。しかし合弁事業は継続または開始されている。SMBC三井住友信託銀行が主な資金提供者である。

また、MUFGは他の金融機関と比べて、東南アジアを拠点とする企業、特にシナルマス・グループおよびサリム・グループのパーム油企業への投融資が多いことが特徴的である。これらの企業グループは、2019年の森林火災への関与が理由で、インドネシア政府に農園事業を凍結された農業関連企業に含まれる。

日本の金融機関から東南アジアの熱帯林破壊に関与している企業への資金の流れ(2017年〜2019年8月)
左:金融機関名の左に表記されているのは融資・引受・投資額
右:企業名の右に表記されているのは資金提供を受けた金額
単位:百万米ドル、森林リスク事業のみの金額に調整済み
出典:「森林と金融データベース」(forestsandfinance.org)

みずほ、邦銀で最も厳しいESG方針を発表

4月15日に発表されたみずほの方針改定では、熱帯林破壊の阻止に重要な対策が新規に採用されている。東南アジアの熱帯林破壊の8割は農業用の土地転換が要因であり、その多くはパーム油、紙パルプ、林業の生産のための大規模開発によるものだ。

今回の方針では、パーム油、木材・紙パルプ 部門への投融資において、グローバル・ベストプラクティスである「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)の策定を投融資先に要求し、地域住民等への「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)の尊重を求めることにしている。また、MUFGの方針から見習って、セクターを横断して、児童労働・強制労働を行っている事業、ラムサール条約指定湿地およびユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業、そしてワシントン条約に違反する事業には投融資等を行わないことにし、先住民族の地域社会に負の影響を与える事業や非自発的住民移転につながる土地収用を伴う事業に対しては取引先の対応状況を確認するとしている。

邦銀でNDPEとFPICを投融資先に明確に求めているのは、みずほの方針が初めてだ。画期的な方針といえ、他のメガバンク2行、三井住友信託、農林中金、野村グループの方針を超えた基準であることは明らかだ。

環境と社会に対してポジティブ・インパクトを及ぼすためには?

以下に、各金融機関の「森林リスク産品部門」に関する方針内容をまとめた。

森林リスク産品部門における各金融機関の方針

各金融機関の方針サイトへのアクセス
みずほ SMBC MUFG 三井住友信託 野村グループ 農林中金

上記の通り、この2年間で日本の金融機関の対応は確実に強化された。しかし、環境と社会に対してポジティブ・インパクトを及ぼすためには、みずほが採用した「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE基準)を含む方針の強化、そしてその徹底的な実行が重要だ。

MUFGの森林セクターについての方針改訂は、NDPE方針を含むかどうかが評価の目安の一つとなる。MUFGは日本最大の銀行として、東南アジアも含め、世界中で銀行業務を展開している上でも、3メガで最も厳しいESG方針を策定することが期待される。同時に日本を代表する銀行として、世界の銀行と競い合っていくという、他の銀行にはない大きな責任も負っている。

*MUFGは5月13日にESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針を改定したが、NDPE基準やFPICといった国際的なベストプラクティスは策定されず、不十分な改訂となった(5月28日更新)。

参考:NDPE方針、FPICについてはRAN報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」を参照ください。

ハナ・ハイネケン(Hana Heineken)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)「責任ある金融キャンペーン」 シ二ア・キャンペーナー。米プリンストン大学、ベースロースクール卒業。東京生まれ。

声明:三菱UFJ、新ESG方針を発表するも「期待外れ」 (2020/5/14)

〜気候変動対策・森林保護、3メガで最も進展のない方針改訂〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日14日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針を13日に改定した(注1)ことを受けて、国内外の銀行、特にみずほフィナンシャルグループ(みずほ)および三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)と比べて「改訂は不十分で期待外れである」と批判しましたRANはMUFGに対して、熱帯林に壊滅的な影響をもたらすパーム油事業や国内外での化石燃料事業拡大への資金提供について、数年にわたって様々なESG問題を指摘してきました。

写真:MUFG子会社ユニオン・バンク本社前でのアピール行動、サンフランシスコ、2019年6月

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケン

「新型コロナウイルスの感染拡大は森林破壊と関係があり、国連環境計画(UNEP)は生態系や野生生物への脅威に取り組む必要性はかつてないほど高まっていると指摘しています(注2)。その最中に発表された今回の改訂は、三菱UFJが環境・社会面でのリーダーシップを取ることに失敗したことを意味し、期待外れで失望しています。新たな感染症拡大を防ぐためにも気候危機への対応と熱帯林保護が重要ですが、今回の方針改訂で、三菱UFJは気候の安定化と地球に残る最後の熱帯林よりも自社利益を優先するという決定を下したことは批判されるべきです」

他のメガバンクの与信方針と比較した重要な違いは以下の通りです。

●みずほ方針との違い:石炭火力発電事業への資金提供における段階的廃止のスケジュールが約束されていない。また「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE方針:No Deforestation, No Peat and No Exploitation)、地域コミュニティの権利を尊重する「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)に代表される、森林セクターでの資金提供における国際的なベストプラクティスが策定されていない。
●SMBC方針との違い:パーム油向け新規農園開発時に森林および生物多様性の保護を公約していない。また、森林伐採での土地開墾の際の火の不使用を確認する記述もなく、持続可能性の評価に脆弱な認証システムに頼っている。

MUFGは、RANが4月に開始した新キャンペーン「キープ・フォレスト・スタンディング〜森林と森の民の人権を守ろう〜」の対象企業で、唯一の邦銀です(注3。気候、生物多様性や先住民族にとって重要な熱帯林と泥炭地に大きな影響を及ぼしている企業として選ばれ、RANはMUFGの資金提供について以下の点を指摘してきました。

●環境・人権面で諸問題を抱える「紛争パーム油」への世界最大の資金提供者の一つで、気候危機を加速させた昨年のインドネシア森林火災にも加担した(注4)。
●今年3月にRANらが発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表 2020」では、パリ協定締結以降の化石燃料事業への融資・引受額が世界で6番目に大きく、2016年から2019年に1,188億米ドルの資金提供が行われたことが明らかになった(注5)。
●MUFGは北米のオイルサンド・パイプライン企業への主要な資金提供者であり、資金提供先にはエンブリッジ社が建設するライン3石油パイプライン、TCエナジー社が建設するキーストーンXLパイプラインが挙げられる。さらに、気候災害と先住民族の権利侵害と明確なつながりが指摘されているにも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の最中に両社へ新規の資金提供を約束した(注6)。
●北極圏での石油・ガス開発への資金提供額における世界4位の金融機関で、新規の石炭火力発電所へのファイナンスの原則的な停止を約束したにもかかわらず、議論を呼んでいるベトナムのブンアン 2のような新規石炭火力発電事業への資金供給を続けている(注7)。

ハイネケンのコメント(続き)

「MUFGの方針は、企業の『二枚舌』の典型的な事例です。新方針はオイルサンドと北極圏の石油・ガス開発をリスクの高いセクターと認識していますが、パリ協定と方針を合致させたいのであれば、化石燃料事業への融資制限の基準と明確な段階的廃止計画が必要です。熱帯林破壊と化石燃料開発への世界最大の資金提供者の一つとして、三菱UFJは基準強化に全力で取り組まなければ、大きなレピュテーションリスクになります」

英語の声明はこちら: “MUFG Falls Behind Peers in New ESG Finance Policy Announcement”

脚注

注1)三菱UFJフィナンシャル・グループ、「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2020年5月13日

注2)国連環境計画、「Working With the Environment to Protect People: UNEP’s COVID-19 Response」(英語)

注3 )RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」 2020年4月1日(5月14日更新:日本語要約版追加)

注4)RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜」2020年1月29日

注5)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り」2020年3月18日

注6)RAN本部プレスリリース「Reckless Keystone XL Decision by TC Energy Endorsed by JPMorgan Chase, Citi and Canadian Peers」(英語)、2020年4月3日

注7)マーケット・フォース「ブンアン2石炭火力事業に融資しないで!」

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org