サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘気候変動’カテゴリーの記事一覧

プレスリリース:新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し「気候危機」を加速〜 (2020/1/29)

〜インドネシア森林火災、熱帯林と泥炭地破壊、違法行為や人権侵害への資金提供を調査〜

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日29日、新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク:東南アジア顧客企業3社の事例」(注1)を発表し、日本のメガバンクが2019年のインドネシア森林火災と煙害(ヘイズ)に関与した農業関連企業や、森林と泥炭地を違法皆伐した農園開発企業への資金提供を通じて「気候危機を加速させている」と批判しました。

火災が起きている泥炭地に放水するヘリコプター、インドネシア・南スマトラ、2019年
提供:NOPRI ISMI/ MONGABAY INDONESIA

本報告書は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)3メガバンクの銀行業務について調査し、分析からは以下が明らかになりました。

  • ●3メガバンクは、2019年の森林火災への関与が理由でインドネシア政府に農園事業を凍結された農業関連企業に、合計で10億米ドルを超える融資・引受を2017年から2019年8月に行っていた。
  • ●上記企業への資金提供額は、みずほが最も多く4億6,600万米ドル、MUFGが4億1,500万米ドル、SMBCが2億100万米ドルだった。
  • ●3メガバンクと財務的つながりが特に強いのはシナルマス・グループ(3行合計で3億6,500万米ドルの資金提供)、サリム・グループ(同じく6億400万米ドル)、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(7,900万米ドル)といった、リスクの高い事業を展開している東南アジアの企業グループである。
2019年のインドネシア森林火災に関与した企業へのメガバンクからの資金の流れ
(2017年〜2019年8月の融資・引受額、単位:百万米ドル、出典:「森林と金融」データベース

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「3メガバンクは世界中の石炭火力発電所建設に資金提供すると同時に、地球で最も重要な炭素吸収源である熱帯林と泥炭地の破壊にも資金提供しています。つまり、二重に気候危機を加速させているのです」と批判しました。2019年のインドネシアの火災で7億900万トンの温室効果ガスが排出されたと推計され(注2)、同国は一連の火災だけで世界6位の二酸化炭素排出国となりました。

また本報告書はシナル・マス・グループ、サリム・グループ、ジャーディン・マセソン・グループの3社を事例とし、熱帯林と泥炭地破壊、違法行為、汚職、土地権と労働権侵害の証拠がありながらメガバンクが資金提供を続けている現状も解説しています。ハイネケンは「3メガバンクは国連『責任銀行原則』(注3)に署名することで、経営戦略を『持続可能な開発目標』とパリ協定と合致させることを約束しました。しかし3メガバンクの現行の銀行業務は内部コンプライアンスが機能していないことを表し、このようなリスクは投資家にはほとんど開示されていません。メガバンクは口先だけでなく行動で示すときです」と訴えました。

本来、森林と土地は強力な炭素吸収源ですが、森林破壊と森林劣化によって農業や林業などの土地利用部門はエネルギー部門に次いで2番目に大きな排出源になっています。特に熱帯林と泥炭地は重要な炭素吸収源であり、泥炭地は1ヘクタールあたり2,600炭素トン以上(注4)を貯留してくれます。しかし紙パルプやパーム油生産におけるインドネシアの泥炭地破壊関連の二酸化炭素の年間排出量は大きく、石炭火力発電所70基分(注5)に相当します。

注1)RAN『森林火災・違法行為とメガバンク:東南アジア顧客企業3社の事例〜SDGsとパリ協定に沿った資金提供を〜』

注2)Yoga Rusmana, “Forest Fire Emissions From Indonesia Worse Than Amazon, EU Says”, Bloomberg, 2019年11月27日 (英語)

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜」2019年9月23日

注4)Frances Seymour and Jonah Busch, “BRIEFS: Why Forests? Why Now? A Preview of the Science, Economics, and Politics of Tropical Forests and Climate Change”, Center for Global Development, 2014年10月11日(英語)

注5)Nancy Harris Nancy Harris and Sarah Sargent, “Destruction of Tropical Peatland Is an Overlooked Source of Emissions”, 世界資源研究所、2016年4月21日

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

メディア掲載:オルタナにRAN川上豊幸が寄稿しました(2019/12/27)

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナonline」にRAN川上豊幸がインドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務」を寄稿しました(2019年12月27日)

「2019年、日本でも大きく報道されたアマゾンの森林火災。しかし大規模な森林火災はアマゾンだけでなく、インドネシアでも起きていました。2019年のインドネシアの森林火災で排出された二酸化炭素の量は、アマゾンの火災による排出量を20%以上超えていました。(続きを読む)

NGO共同プレスリリース「新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜」 (2019/10/3)
〜インドネシア煙害深刻化、森林火災に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようNGOが要請〜

声明:ゴールドマン・サックス、米大手銀行で最も厳しい化石燃料融資方針を採用(2019/12/17)

石炭及び北極圏での石油開発プロジェクトを除外、石炭採掘からの撤退を約束〜日本のメガバンクは大きく立ち遅れ〜

東京——ゴールドマン・サックスが15日、化石燃料融資に対する新しい規制(注1)を発表したことを受けて、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、RAN)は、以下の声明を発表しました。同行は米国の大手銀行の中で最も厳しい化石燃料方針を掲げることになり、日本のメガバンクの大きな立ち遅れが顕著になりました。ゴールドマン・サックスは、世界中の石炭採掘および石炭火力発電所プロジェクトへの直接的な資金提供からの撤退だけでなく、北極圏の石油探査および生産への資金提供からも撤退することを決定しました。この方針では、世界的に有名な「北極圏国立野生生物保護区」の保護についても明確に言及しています。同時に、事業の多角化戦略を持たない石炭採掘企業への資金提供も段階的に終了することを約束しました。

この方針改定によってゴールドマン・サックスは、石油・ガス部門への資金提供について明確に規制を設けた米国最初の大手銀行となります。また、全世界での石炭採掘および石炭火力発電所への直接的な資金提供から撤退した、米国最初の大手銀行ともなります。他の米国銀行の石炭融資規制には、一部の地域には適用しない抜け穴があり、これは重要な前進です。また、ゴールドマンの石炭採掘に関する方針は他の米国銀行とは異なり、1)引受業務の撤退を含み、2)削減ではなく、段階的な撤退を明確に約束しています。

対照的に、日本のメガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、石炭部門および北極圏の石油・ガスに大きなエクスポージャーを抱え、リスクに対処するための方針が不十分です。3メガバンクの内、MUFGが石炭採掘と石炭火力発電所に関して最も厳しい方針(注2)を採用し、環境破壊を伴う山頂除去採掘方式で行う炭鉱採掘事業、新規の石炭火力発電所事業への資金提供は原則的に行わないとしています。しかし、受入国の状況や技術の使用に応じて新規の石炭火力発電を認める例外規定が設けられています(注3)。石炭開発を即時中止するべきだとするグテーレス国連事務総長らの呼びかけ (注4)にもかかわらず、ベトナムで計画されているブンアン2石炭火力発電所 (注5)への3メガバンクによる資金提供は、石炭への資金提供を段階的に終了するという約束についての責任欠如が明白です。

また、3メガバンクは北極圏の石油・ガス開発事業への資金提供で世界の上位7銀行 (注6)に入り、SMBCはゴールドマン、ドイツ銀行に次いで世界3位です。しかし、これらのメガバンクはいずれも北極圏—— 北極野生生物国家保護区を含むーーの石油探査と石油生産への資金提供を禁止する明確な約束をしておらず、直接的な資金提供を中止した17の国際的な銀行(注7)とは対照的です。北極野生生物国家保護区にはホッキョクグマ、ジャコウウシ、200種以上の鳥が生息し、何千年にもわたってアラスカ及びカナダ北部で暮らすグウィッチン族の生活を支えてきたポーキュパイン・カリブーの繁殖地でもあります。この地域は野生生物の重要なシンボルでもあります。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンのコメント

「ゴールドマン・サックスが石炭関連事業への資金提供について例外なく厳格に禁止したことは、抜け穴のあるメガバンクの方針とは対照的です。メガバンクの現在の方針は世界標準とは明らかに一致していません。

ゴールドマン・サックスは、北極圏での石油探査と石油生産への直接的な資金提供を中止することにより、石油・ガス部門における米国の大手銀行として最初の『立入り禁止区域』を確立しました。ゴールドマンの新しい方針は、米国の銀行が石油とガス事業に一線を引けるということを示しました。次は他の大手銀行、特にメガバンクがそれに続くべきです。

保護区を冒とくする石油産業の事業への資金提供の禁止は、『グウィッチン族運営委員会』による決定的なアドボカシー活動など、先住民族主導の粘り強い抵抗の成果です。トランプ政権が北極圏保護区での掘削の入札を準備している今、3メガバンクはゴールドマンが踏み出した一歩に続いて、神聖な北極圏の保護区を守るために明確な約束を行うべきです。

ゴールドマンはメガバンクへの主要な投資家として、銀行の化石燃料および森林リスク産品セクターのより厳しい方針を提唱するのに適した立場にあります。メガバンクには、ゴールドマンの方針改定をチャンスとして生かすことを希望します」

*この方針に関する詳細の分析は、RANとシエラ・クラブの報道向け資料もご覧ください:www.ran.org/briefer(英語)

注1)Goldman Sachs Environmental Policy Framework
注2)MUFG方針/ガイドライン
注3)NGO共同声明「三菱UFJが新規石炭火力発電への融資を行わないと約束、環境NGOは更なる方針強化を要請」 (2019年5月16日)
注4)国際連合広報センター「国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)開会式におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶」(マドリード、2019年12月2日)
注5)No Coal Japan「国内外環境NGO8団体、邦銀4行にベトナムのブンアン2石炭火力発電事業の融資拒否を求める要請書を提出」(2019年11月1日)
注6)RANら「化石燃料ファイナンス成績表2019」(2019年4月)
注7)バンクトラック、“Banks that ended direct finance for Arctic oil and/or gas projects”, 2019年8月更新

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
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広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

メディア掲載:HBOにRAN関本幸が寄稿しました(2019/10/22)

ハーバー・ビジネス・オンライン(HBO)にRAN 関本幸が「東京五輪施設建設の『目に見えない部分』に、21万畳分の熱帯材が使われている!?」を寄稿しました(2019年10月22日)

「東京五輪開催まで1年を切った。それとともに、大会中の猛暑対策など、さまざまな問題が現実味を帯びてきている。そのような中、東京五輪で使われた木材と、東南アジアの森林破壊とのつながりが問題視され続けている。「新国立競技場には国産材がたくさん使われているのでは?」と思う人も多いだろう。しかし、47都道府県から提供される国産材は屋根やひさしで使われるだけで、土台のコンクリートを成形する型枠用合板(コンクリートパネル=コンパネ)には、東南アジアからの熱帯材が使われた。 続きを読む )

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

プレスリリース:三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜 (2019/10/18)

炭素を豊富に含む「ルーセル・エコシステム」のシンキル保護区で違法栽培

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、2019年にインドネシアで現地調査を実施し、有名な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」で警戒すべき泥炭林破壊に、大手銀行や食品企業が加担していることを明らかにしました。本調査で、炭素を豊富に含み、国の保護区である「ラワ・シンキル野生生物保護区」(ルーセル ・エコシステム内)で違法に生産されたパーム油が、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(TYO: 8306)の顧客である大手パーム油企業ゴールデン・アグリ・リソーシズ(GAR)に買い取られ、カーギルや不二製油などを通じてユニリーバやネスレ、ペプシコといったスナック食品の製造に使われていることが判明しました(注1)

破壊されたシンキル泥炭林、アチェ州

今回の調査によって明らかになったことは、パーム油企業のGARが、「ラワ・シンキル野生生物保護区」で違法栽培されたアブラヤシ果房を原料にパーム油を搾油している工場から直接、パーム油を調達していたことです。「MUFG環境社会ポリシーフレームワーク」(注2)では、「違法または違法目的の事業」への資金提供を禁止し、「保護価値の高い地域へ負の影響を与える事業」において「適切な環境・社会配慮の実施」を顧客に求めています。保護価値の高い地域には国際自然保護連合(IUCN)レッドリストで絶滅が危惧される種の生息地も含まれるため、「ラワ・シンキル野生生物保護区」に適用されます。GARはMUFGの顧客企業であることから、MUFGの方針に違反していることになり、同行のESG(環境・社会・ガバナンス)方針の有効性が疑問視されます。これは、MUFGが先月賛同した責任銀行原則(PRB)の目標とも矛盾しています。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「調査の結果で得られた証拠には疑いの余地がありません。三菱UFJフィナンシャル・グループは近年、融資等に関する方針を発表し、違法事業へのファイナンスの禁止と、パーム油セクターで生じる負の影響の緩和を約束しました。しかし三菱UFJは、インドネシアで違法に生産されたパーム油を購入して熱帯泥炭林の破壊を促進しているゴールデン・アグリ・リソーシズといったパーム油大手に積極的に資金提供しています」と批判しました。

MUFGは、金融グループの中でパーム油セクターへの資金提供が世界で6番目に多く、日本のメガバンクの中では最大です(注3)。GARへの資金提供はその典型的な例であり、GARのパーム油事業には重大なESGリスクがあるにもかかわらず(注4)、MUFGは近年でもGARの最大の金融機関でした。2015年1月から2018年6月、MUFGはGARおよびその子会社に2億8100万米ドルの融資と引受を実施しました。これには2018年4月の1億ドルのリボルビングローンも含まれます。2018年7月、MUFGはGARにさらに5000万ドルのローンを発行しました (注5)。 

ハイネケンは「この問題についてMUFGはGARと対話し、違法なパーム油の調達停止を求めるなど、顧客企業に自社のESG投融資方針を遵守させる必要があります」と続けました。RANはMUFGに対し、GARに将来的な資金提供を約束する場合は、責任あるパーム油のみの調達を確実にするため、監視強化と第三者による供給コンプライアンス制度の強化を求めました。

シンキル・ベンクン地帯は生物多様性の世界的なホットスポットです。地中深くに炭素を豊富に含む泥炭地であることから、貴重で効果的かつ自然の炭素吸収源として世界でも重要な場所です。一帯にはラワ・シンキル野生生物保護区、シンキル泥炭地、クルット泥炭地、そして近接する熱帯低地林が含まれます。この地帯は絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、トラの重要な生息地となっており、世界で最も優先して保全されるべき場所の一つです。一帯はオランウータンの生息密度が世界で最も高く、「オランウータンの首都」とも呼ばれてきました。泥炭林は一度伐採され、排水されると、泥炭土壌は「炭素爆弾」となり、何年にもわたって膨大な量の二酸化炭素を排出します(注6)。そのため、本報告書で示されている泥炭地の破壊は、重大な気候リスクでもあります。

【調査結果】
・RANの現地調査員は、2019年初め、違法なアブラヤシ農園で収穫されたアブラヤシの果実が、近隣のパーム油仲介業者(CV. Buana Inda という名称)に売買されたことを記録した。その農園は、ルーセル・エコシステム内の国の保護区、「ラワ・シンキル野生生物保護区」内の泥炭地で造成されていた。
・ 現地調査、聞き取り調査、CV. Buana Indahの売上の取引記録により、「ラワシンキル野生生物保護区」近くにあるパーム油搾油工場2社、PT. Global Sawit Semesta (PT. GSS) と PT. Samudera Sawit Nabati (PT. SSN)がCV. Buana Inda から供給された、問題あるパーム油を加工していたことが判明しました。
GARのサプライチェーンにおける搾油所一覧(2019年1月から3月)によると、両方の搾油工場がGARへの供給企業だった。直近に公開された一覧(2019年4月から6月)にはPT. SSN の名前があり、同工場にはトレーサビリティ(農園から搾油工場までの追跡可能性)を管理する仕組みがないと記載されている。搾油工場の職員への聞き取りからも、GARが上記の搾油工場と調査の時点で取引していたことが確認された。

注1)RAN報告書(英語)「The Last of the Leuser Lowlands」(最後のルーセル 熱帯低地林)」

注2)MUFG環境社会ポリシーフレームワーク 

注3)RAN「森林と金融」データベース参照

注4)2019年2月、パーム油事業での森林破壊、人権侵害、違法行為、汚職等の証拠によって、GARは「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス」の銘柄から外された。

注5)2015年1月から2018年6月の間、GARとその子会社は19億米ドルのローンと引受を16銀行から受けた。この内、最大の資金提供者はMUFG(2億8100万ドル)、中国開発銀行(2億6000万ドル)、OCBC(2億700万ドル)、メイバンク(2億400万ドル)、CIMB(1億3600万ドル)、ABNアムロ(1億2600万ドル)、バンクネガラインドネシア(BNI、1億ドル)だった。(出典:「森林と金融データベース」)

注6)熱帯泥炭林が地面に貯蔵している炭素は 1ヘクタール当たり約2600 炭素トン(t-C)である。2015年のインドネシアでの大規模泥炭地火災は、米国経済全体の合計よりも多くの二酸化炭素を大気中に放出したが、その火災の理由は主にアブラヤシ農園の開発とパルプ材植林地である。シンキル・ベンクン地帯のシンキルとクルットの泥炭地で火災が発生した場合、同地域の二酸化炭素の排出量だけで、インドネシアの年間総排出量の最大で7%に相当すると推定されている。そうした場合、パリ協定の約束を果たす同国の実行力を損なう可能性がある。
※出典:RAN「The Last of the Leuser Lowlands」及び「森林と金融調査レポート:投資家には責任がある」(2017年)

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声明:メガバンクのTCFD開示、森林破壊リスクの視点から不十分 (2019/10/11)

〜「気候関連財務情報開示タスクフォース」サミット、東京での開催を受けて〜

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日11日、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(注1)サミットが8日に開催されたことを受けて、銀行のTCFD開示は森林破壊リスクの視点から不十分であるとして、以下の声明を発表しました。

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TCFDの提言に従って、日本の3メガバンクが「炭素関連資産」のポートフォリオ全体に占める割合等を開示したこと(注2)は評価できる。しかしこれらの数字は、メガバンクが投融資を通じて促進している熱帯林減少や泥炭地の破壊と、それに伴う二酸化炭素の排出が反映されておらず、不十分な開示と言わざるを得ない。

メガバンクは多額の融資等を通じて、東南アジアでの熱帯林や泥炭地の破壊を起こしているアブラヤシ農園やパルプ材植林地の拡大に関与している(注3)。これは森林減少だけでなく、現在インドネシアで大問題となっている火災の原因でもある。農園造成を目的として伐採された森林に火入れをすることは、禁止されているにも関わらず行われ、森林火災と煙害(ヘイズ)は深刻化している。今年8月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「土地関係特別報告書」(注4)では、農業、林業、その他土地利用による排出量が、人間活動による排出量の約23%を占めていることが発表された。このうち、熱帯林減少による排出量がもっとも問題であることが確認された。

メガバンクの不十分な情報開示には様々な要因があり得るが、一つは金融機関に特化したTCFD提言が「炭素関連資産」を次のように狭く定義していることによると言える。これは、メガバンクの分析方法だけが問題ではなく、TCFD提言の限界も示している。

「炭素関連資産とは、世界産業分類基準(GICS)が規定するエネルギーおよびユーティリティセクターに関連する資産。但し、水道事業、独立系電力事業および再生可能電力事業を除く」(注5)

この規定には「土地利用による排出」は明らかに含まれていない。TCFDは、農業、食料、林産物に関わる企業には気候リスクの開示を求めているが、残念ながら金融機関には求められていないことが問題である。

また、パーム油によるバイオマス発電事業が、再生可能電力事業として「炭素関連資産」から除外されていることも問題である。大規模なパーム油生産は森林破壊、生物多様性の破壊、土地収奪、人権侵害を伴う。また、ライフサイクルアセスメントによる評価においても大量の温室効果ガスを発生させる懸念があり、再生可能エネルギーとして定義すべきではないとNGOから指摘されている(注6)

よって、気候リスクが高い森林リスク産品に多額の融資等をしているメガバンクが、森林リスクへのエクスポージャーや戦略を開示していないことは非常に残念である。「責任ある銀行原則」(PRB)に賛同した限り、TCFDを超えて、森林リスクに関する情報を開示することも期待したい。

注1)TCFDは、気候変動に関する情報の開示を企業に促す取り組みで、2015年に設置された。経済産業省によると世界で864の企業や機関が賛同し、日本では3メガバンクを含む、199が賛同の意を示している(10月10日時点)。

注2)メガバンクが発表したTCFD開示は以下の通りである。

  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)
    「炭素関連資産がポートフォリオ総額に占める割合は6.6%」
  • 三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)
    「炭素関連資産(電力、エネルギー等)は貸出金の7.8%」
  • みずほフィナンシャルグループ(みずほ)
    「計測したエネルギーセクターおよびユーティリティセクター向け信用エクスポージャー(EXP)が信用EXP総額に占める集中度は約7.2%」

注3)RAN「森林と金融: 東南アジアの熱帯林をリスクにさらす企業への最大の資金提供機関は、引き続き日本、中 国、マレーシア、インドネシアの金融機関」、2018年12月

注4)農林水産省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「土地関係特別報告書」の公表(第50回総会の結果)について」、2019年8月9日

注5)「最終報告書:気候関連財務情報開示タスクフォースの勧告」( サステナビリティ日本フォーラム私訳、2018年10月、24ページ)

注6)NGO共同、「バイオマス発電に関する共同提言」、2019年7月16日

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