サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘プレスリリース’カテゴリーの記事一覧

NGO共同声明:2020東京五輪の木材調達基準改定は不十分(2019/1/30)

〜組織委に改定基準の内容と決定までの経緯の説明を求める〜

国内外のNGOは本日30日、東京2020組織委員会が「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定を1月18日に発表(注1)したことを受けて、改定された基準では東京五輪のサプライチェーンで繰り返し確認されている熱帯林破壊や人権侵害に関係した木材利用を止めることができないとし、遺憾の意を表しました。このままでは、有意義なデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)をすることなく、問題のある企業からのリスクの高い木材をサプライヤー企業が利用し続けることが可能となり、2020年東京五輪は「苦いレガシー」を日本に残してしまうことになります。

東京五輪は招致活動の段階から物議を醸してきた(注2)が、新施設建設のために持続不可能な熱帯材を大量に利用したことは、その典型的な事例の一つであり、持続可能な大会を開催するという東京五輪の公約に明らかに反しています。東京2020組織委員会が公表した記録によれば、2016年12月から2018年11月までの間に、マレーシアやインドネシアの熱帯林由来の17万枚以上のコンクリート型枠合板が、五輪の新会場建設に利用されました。これは最大で約9,823立方メートルもの丸太材に相当します(注3)。これらの木材の73%は、熱帯の天然林の皆伐も含め、インドネシアからきており、世界で最も生物多様性が豊かな森林生態系の一つに悪影響を及ぼしています(注4)

組織委員会は、NGOによる問題提起や、多くの署名、そして同委員会の持続可能性に関する専門家からの懸念に対応して、2018年7月に既存の木材調達基準の見直しを開始しました。1月18日に発表された改定基準では最低限の改善は行なわれたものの、残念ながら調達木材の持続可能性や合法性すらも確保できていません。

まず第一に、改定基準では森林の農地等への転換といった、他の用途のために皆伐された木材に由来する製品、いわゆる「転換材」を明確に排除しています。また、サプライヤー企業に対して供給する木材を伐採地の森林まで追跡し、基準に合致しない木材を生産する企業からの調達リスクを評価し、軽減することが推奨されています。こうした追加は改善に見えますが、既存の基準(注5)を普通に解釈すれば、すでに転換材の調達は除外されています。そしてサプライヤー企業のデューデリジェンスに関する規定は義務としていません。第二に、改定基準には以下のような問題が残っています: ア)持続可能性や権利に関する規定を満たしていない合板の利用を可能としている重大な「抜け穴」が維持されていること、イ)問題のある木材を避けるために不可欠な、有意義なデューデリジェンス(注6)を義務にしていないこと、ウ)サプライヤーに対して、木材伐採によって影響を受ける地域住民から「自由意思による事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)」を得ることを要求していないこと、そして、エ)認証材のサプライチェーン内に持続不可能な木材が含まれる明確な証拠があったとしても、追加的なデューデリジェンスをすることなく認証材については全て持続可能であると想定している点です(注7)

さらに、木材調達基準の見直しのプロセスをみると、東京五輪自らが目指していたPDCAサイクル(注8)を実施せず、大きな欠陥があると言わざるを得ません。調達ワーキンググループ委員に対しても、マレーシアとインドネシアで実施している現地モニタリング調査の調査方法や結果についての情報提供は行われませんでした。結果として、モニタリング調査結果について検討もせず、五輪施設建設に実際に使われた木材製品のサプライチェーンに関する課題については限られた議論しかしないまま、見直しが進められました。さらに、基準見直しプロセスには、一般社会からも高い関心が寄せられたにもかかわらず、改定基準についてのパブリック・コメントも実施されませんでした。

私たちは、全ての東京五輪関連機関に以下を求めます。

1) これまで調達された全ての熱帯材について、どのように持続可能性や合法性が確保されたのかについて詳細な評価の情報開示を即座に行うこと、

2) 伐採地までの完全な追跡可能性を確立していない場合や、木材調達基準の合法性、持続可能性、権利に関する5つの基準とFPIC取得について第三者監査で確認されていない場合、大会施設の建設に熱帯地域や他の高リスク地域からの木材製品の利用を全て停止すること、

3) 特にリスクの高い木材について、東京五輪のサプライチェーン全体を通じての合法性と持続可能性の確保において、改定された調達基準がどのような効果があるのか詳細な説明を公表すること、そして木材伐採によって影響を受ける地域住民が利用可能な言語で全ての情報公開を実施すべきです。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
ブルーノマンサー基金
ウータン・森と生活を考える会
国際NGO EIA(環境調査エージェンシー)
サラワク・ダヤック・イバン協会(SADIA)
Tukインドネシア(トゥック)
Walhi 北マルク支部(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)
サラワク・キャンペーン委員会(SCC)
国際環境NGO FoE Japan

注1)東京2020組織委員会、「持続可能性に配慮した調達コードの改定について:木材調達基準」、 2019年1月18日

注2) AFP、「JOC竹田会長、東京五輪招致めぐる贈賄容疑 仏が捜査」、2019年1月11日

注3) 東京五輪向けのコンクリート型枠合板の調達状況(東京2020組織委員会、「『持続可能性に配慮した木材の調達基準』の実施状況に関するフォローアップについて」、2019年1月28日)
※日本では、コンクリート型枠合板の典型的なサイズは、12X900X1800mm〜15x910x1820mmであり、合板の量を生産において利用する丸太の量に変換する場合に使用される係数は2.3となる(出所: UNECE/FAO)。これは約7,686〜9,823立方メートルもの丸太材に相当する。

注4)RAN、「プレスリリース:RANとボルネオオランウータン、東京都とJSCに通報〜新国立など五輪会場の木材、オランウータン生息地に深刻な危害〜」、2018年11月30日
※東京五輪大会施設の建設現場で使用されたインドネシア産木材の大部分が、韓国系インドネシアの伐採・パーム油大手コリンドによって供給されたことが知られている。同社は違法伐採、人権侵害、そして石炭鉱山及びアブラヤシ農園開発のための皆伐に関与しており、RANなどが苦情を申し立てている。

注5)「持続可能性に配慮した木材の調達基準」(改定前)、2及び3

注6)参照 「合法木材調達のための デューデリジェンス」

注7)NGO共同緊急プレスリリース「東京五輪競技会場の建設に高リスクの熱帯材大量使用、国内外NGOから「遺憾」の声」、2018年2月16日

注8)『東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会 持続可能性に配慮した調達コード(第3版)』、14ページ

※追記:国際環境NGO FoE Japanが1月31日に賛同しました。

※追記:本プレスリリースにて掲載内容に一部誤りがございました。訂正してお詫びします(3月6日)。
【誤】約9,823本もの丸太材 【正】最大で約9,823立方メートルもの丸太材
また、注3)に以下の太字部分を追加しました。
※日本では、コンクリート型枠合板の典型的なサイズは、12X900X1800mm〜15x910x1820mmであり、合板の量を生産において利用する丸太の量に変換する場合に使用される係数は2.3となる(出所: UNECE/FAO)。これは約7,686〜9,823立方メートルもの丸太材に相当する。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:3メガ融資先のパーム油大手インドフード子会社、RSPO認証脱退を通知 (2019/1/28)

〜RSPOはインドフードの会員資格停止を警告〜
NGO、インドフードとの取引関係の停止をペプシコ、ウィルマー、銀行に訴え

サンフランシスコ発 ー インドネシアのパーム油大手インドフードの子会社が、世界最大のパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から脱退する計画を発表したことを受けて(注1)、25日(現地時間)、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKはコメントを発表しました。インドフードはインドネシア最大の食品会社で、世界最大の即席麺企業の一つです。また同社は、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

インドフードの農園で肥料袋を補充する女性労働者 ©︎RAN

インドフードは昨年11月、所有・運営するアブラヤシ農園におけるRSPO「原則と基準」での20件以上の違反とインドネシア労働法での10件の違反に対し、RSPOから是正措置計画の提出を求められていました(注2)。しかし期限を過ぎても提出がありませんでした。

OPPUKの専務理事ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「今こそインドフードの実情を批判すべき時です。同社は、高い基準では知られていないパーム油業界でも、特に悪質な労働習慣を持つ会社です。インドフードが『持続可能』とは程遠い企業であることは、私たちにとっては何年も前から周知の事実でした。今こそRSPOは自らの認定基準と会員規則を適用する時です。インドフードのRSPO認証からの脱退通知は、同社が組織的な労働搾取への対処を拒否していることを示す新たな証拠です」と批判しました。

RSPOによるインドフードのアブラヤシ農園の調査は、RAN、OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)の3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注3)がきっかけとなって実施されました。RSPOがインドフードの会員資格を停止すると考えられますが、まだ実施には至っていません。RSPOはインドフード子会社の脱退計画の通知を受けて同社に手紙を送り(注4)、1月24日の17時まで(ジャカルタ現地時間)に説明の返答を求めていました。インドフードはインドネシア最大のパーム油企業の一社ですが、RSPOが認証停止を実行した場合、RSPO会員資格を失う最大の企業になります。NGOはインドフードの動きを、労働者の権利を尊重する責任から免れるための企てであると批判していますーー RSPOも、会員企業が認証を脱退することで責任を逃れようとする動きを警告しています(注5)

RAN日本代表の川上豊幸は「インドフードといまも取引を続けている企業にとって、取引停止を考える最終段階に来ていることは間違いありません。ペプシコとウィルマーは、インドフードの子会社であるインドアグリからのパーム油調達を停止しています。両企業はインドアグリとの合弁事業の提携も解消すべきです。そして、日本の3メガバンクはインドフードへの融資を停止すべきです。そうでなければ、違法で非倫理的な行為を平気で行なっている企業との取引を、それと知りながら故意に続けていることになります」と訴えました。

昨年11月のRSPOによるインドフードへの制裁措置に先立ち、ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、そしてマースなど多くのパーム油購入企業は、インドフードとの取引をすでに停止しています。しかし、インドフードの合弁パートナーであるペプシコ、ウィルマー、ヤム・ブランズなど多くの企業は現在もインドフードと取引関係を継続しており、労働搾取とのつながりが残ったままとなっています。インドフードへの投資家や貸し手には、ブラックロック、ラボバンク、日本のメガバンクのSMBC、みずほ、MUFGが含まれます。

インドフードは、持続可能性への取り組みをインドネシア政府が導入する「持続可能なパーム油のインドネシア国内規定(ISPO)」に集中させると、RSPOへの告知文で述べています。しかしインドネシアの市民団体は、ISPO認証は持続可能なパーム油の実践を確かなものにするには不十分であると批判してきました。

RAN、ILRF、OPPUKの3団体はインドフードに対して、今も続く労働法違反への対処を引き続き求めていきます。また同社に対して、包括的な「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を導入し、自社だけでなく、同社を傘下に持つインドネシア最大の財閥であるサリム・グループ全体、そして独立系の供給業者にも適用するよう求めていきます。

注1)インドフードからRSPO宛の手紙

注2)RANプレスリリース「パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置」、2018年11月5日

注3)3団体による苦情申し立て文書(英語)、苦情申し立ての概要(英語、2016年10月12日付け)

注4)RSPO, “RSPO CEO’s Response to Letter from PT PP London Sumatra Indonesia Tbk (subsidiary of Salim Ivomas Pratama Tbk)”、 2019年1月24日

注5)RSPO、第15回年次総会 決議「GA15-6d」、2018年11月15日

参考
●インドフード社のESGリスクについての分析はRANブログ「3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク:インドフード社の事例」(2018年6月6日)参照のこと

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
http://japan.ran.org

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:RANとボルネオオランウータン、東京都とJSCに通報〜新国立など五輪会場の木材、オランウータン生息地に深刻な危害〜(2018/11/30)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、本日30日(米国太平洋時間29日)、ボルネオオランウータンとインドネシア熱帯林に代わって、東京都と日本スポーツ振興センター(JSC)に、東京五輪会場建設での熱帯材合板の使用が絶滅の危機にあるボルネオオランウータンの生息地を含むインドネシアの貴重な熱帯林を破壊しているとして、苦情を通報しました(注1)。本苦情は、30日から東京で行われる国際オリンピック委員会(IOC)理事会に合わせて提出されました。理事会では東京2020大会の準備進捗について話し合われる予定です。

今回の苦情申し立ては、東京五輪の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」と「持続可能性に配慮した調達コード」にサプライヤー企業や契約企業が違反したとして、新国立競技場を運営するJSCと、有明アリーナを運営する東京都に通報しました。東京2020組織委員会は持続可能性の観点から、合法的に伐採され、「生態系の保全に配慮」し、先住民族と地域住民の権利や労働者の安全対策に配慮した「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来する」木材の調達をサプライヤー企業に求めています(注2)。この苦情は両機関の通報窓口を通じて提出されたと同時に、RAN本部があるサンフランシスコの日本国総領事館へも、オランウータンの着ぐるみを着たRANスタッフによって提出されました。

【苦情の概要】
通報者:ボルネオオランウータン、インドネシアの熱帯林、レインフォレスト・アクション・ネットワーク
被通報者:住友林業などサプライヤー企業、建設会社、設計会社など契約企業数社
通報先:東京都、日本スポーツ振興センター(JSC)※各機関に1通ずつ
内容:熱帯林とオランウータン生息地の破壊
今年5月11日、インドネシアの大手伐採会社コリンド・グループのバリクパパン工場で製造された合板が有明アリーナの建設現場で見つかり、その合板は住友林業によって輸入されていたことが明らかになった(注3)。同工場が2017年に供給した木材の約4割は、植林やアブラヤシ農園、石炭採掘のための皆伐(「転換材」)に由来している。同工場の調達先には東カリマンタン州のオランウータン生息地で皆伐された熱帯林も含まれた。住友林業は、新国立競技場の建設にもインドネシア産合板を提供し、提供した木材に転換材が含まれたことを認めたため、コリンド材が新国立競技場に利用された可能性は高い。RANは東京五輪の木材サプライチェーンを調査し、コリンド社が新国立競技場及び有明アリーナのインドネシア産合板の全部ではないとしても一部を供給していることを新報告書「守られなかった約束」で明らかにし、それに基づいて通報した。

今回の通報に先立ち、RANはWALHI北マルク(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)、Tukインドネシア(トゥック)とともに、東京2020組織委員会、JSC、東京都に、合計4件の苦情を通報しました(注4)。東京五輪施設建設用に、コリンド社の調達した木材が、同国北マルク州の地域コミュニティの土地所有者たちの土地権を侵害しているため、調達基準を違反していることを指摘しました。この主張は今月12日に発表した報告書「ペリラス:コリンド、土地強奪と銀行」(注5)に基づいています。また、RANはオンライン署名「The Olympics vs. the Orangutan(オリンピックvsオランウータン)」も展開し(英語、注6)、IOCと東京五輪関係機関に、コリンドのような問題ある企業からの木材調達を禁止し、合法で持続可能な木材の使用を求めています。11月12日の実施以来、米国を中心にほぼ2万5千人の賛同が集まっています。

RANのシニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは「東京五輪のためにコリンド社の木材を使用することは、東京2020大会の『持続可能性に配慮したオリンピックの実現』という約束に違反します。さらに、2020年までに森林破壊を止めるという持続可能な発展目標(SDGs)の実現をも危うくしています。苦情に記載した違反行為は非常に残念なものですが、明らかになったからには、東京五輪関係機関、日本政府、企業が過ちから学び、このような環境破壊が今後繰り返されないための重要な機会とすることが必要です」と訴えました。

東京2020組織委員会は、NGOからの度重なる要請にこたえる形で、大会の会場建設に使用された熱帯材合板の産地などを公開しました(注7)。2018年5月末時点で、マレーシアとインドネシアの熱帯材合板の少なくとも134,400枚(一般的なサイズは91センチ x 182センチ)が、コンクリートを固めるための型枠に使用されています。これには非認証のインドネシア産合板が大量に含まれ、新国立競技場の建設に110,200枚、有明アリーナ(バレーボール競技場)の建設に8,700枚が使われています。

1990年以来、インドネシアでは2,500万ヘクタール以上の熱帯林が失なわれました。日本は数十年間、インドネシア合板の最大の輸入国です。熱帯林の破壊で、インドネシアは温室効果ガスの主要排出国になりました。10月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の画期的な「1.5度特別報告書」が発表され、12月の気候変動枠組条約締約国会議(COP24)までのこの期間、IOC理事会と東京2020大会主催者が取るべきアクションには重要な意味があります。

東京五輪の木材調達基準は現在改定中です(注8)。東京2020組織委員会の改定案では、森林の農地等への転換に由来する「転換材」の排除を明記し、サプライヤーが伐採地までのトレーサビリティを確保するよう推奨しています。しかしながら、ハイネケンは「コリンド社の木材の使用で明らかになったように、現在の調達基準はあまりにも弱く、容認できません。26日に承認された木材調達基準の改定案でも、インドネシアとマレーシアで森林破壊が加速する要因となっている、日本での熱帯材合板消費におけるデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)の欠如には対応できていません。基準を強化するための努力が待たれます」と強調しました。

注1)調達コードに係る通報受付窓口の設置について
注2)「持続可能性に配慮した木材の調達基準」
注3)RANプレスリリース「新報告書『守られなかった約束』発表 〜東京五輪木材供給企業コリンドの熱帯林破壊、 違法伐採、人権侵害が明るみに〜 」
注4)4件の苦情は11月23日と26日に提出。詳細はお問い合わせ下さい。
注5)RAN「ペリラス:土地収奪と銀行」、2018年11月12日
RANは、コリンド社の事業全般における違法行為、環境破壊、コミュニティの権利侵害に関する証拠を明らかにした。
注6)オンライン署名URL
注7)東京2020組織委員会「コンクリート型枠合板の調達状況について」
注8)持続可能な調達ワーキンググループ、第27回 資料(2018年11月26日)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org


声明:東京五輪「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定〜SDGs目標、2020年まで「森林破壊ゼロ」達成には不十分〜(2018/11/27)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、本日27日、東京2020組織委員会の作業部会で「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定案が26日に提案・了承されたことを受けて、森林の農地等への転換に由来する「転換材」の排除が明記されたことを歓迎するも、合法性以外の基準が適用されない再利用コンクリート型枠の継続利用といった「抜け穴」が残されているなど、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標達成には不十分であるとして、以下の声明を発表しました。

今回の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定案に、森林の農地等への転換に由来する「転換材」の排除が明記されたことは評価できる。現在、森林減少の主な要因はパーム油などのための農地への転換のため、持続可能性を担保するには転換材の排除は不可欠である。

しかしながら、既存の基準にも「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来する」との記載がある。アブラヤシ農園などの開発のために天然林の大規模な皆伐を伴う森林の土地利用転換はそもそも中長期的な計画に基づいた森林管理とは程遠く、実質的に「転換材」は排除していると考えられる。よって、今回の改定は明示化とは言えるが、大幅な変更とは言えない。一方、持続不可能で権利を尊重していない木材の使用を許す「再利用」コンクリート型枠合板の「抜け穴」が引き続き残ることを提案している。東京2020組織委員会はSDGsへの貢献を約束しているが、このままでは2020年までに「森林破壊ゼロ」を掲げる「目標15: 陸の豊かさも守ろう」への貢献にも支障が出る。

今年5月、有明アリーナの建設現場で、インドネシア企業コリンド社製造の型枠用合板が使用されていることが見つかった。RANの調査では、日本向けに合板を輸出している同社工場の原料の約4割は、樹木を全て伐採する「皆伐」による転換材であることがわかっている。コリンド製型枠合板が見つかったのは有明アリーナのみであるが、新国立競技場のインドネシア産合板も転換材に由来していた可能性が高い。これらの木材は、既存の「持続可能性に配慮した木材調達基準」を満たしておらず、東京2020組織委員会をはじめ、有明アリーナを管轄する東京都、新国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)が今後どのように対応するかが課題である。

また、改定案では、サプライヤーについて以下の記載も追加された。

「サプライヤーは、伐採地までのトレーサビリティ確保の観点も含め、可能な範囲で当該木材の原産地や製造事業者に関する指摘等の情報を収集し、その信頼性・客観性等に十分留意しつつ、上記 2 を満たさない木材を生産する事業者から調達するリスクの低減に活用することが推奨される」

調達基準を満たさない「木材」だけでなく、基準を満たさない「企業」からの木材調達をリスクとして捉えるリスク低減措置も言及された。そのような措置が言及されたことは進歩だ。しかしトレーサビリティ確認による合法性に関するリスク低減措置は、EU木材法(EUTR)や米国のレイシー法ではすでに義務化されているため、改訂では「推奨」ではなく「義務」とすべきだった。さらに、リスクに基づいたデューデリジェンス、伐採地の森林まで遡る完全なトレーサビリティ、および木材サプライチェーンの合法性及び持続可能性に関する第三者検証を要求すべきであった。

 

◆改定では修正されなかった問題点◆

●合法性の証明については、「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(グリーン購入法)と関連する「木材・木材製品の合法性、 持続可能性の証明のためのガイドライン」に沿って行うという規定が改定案に残っている。これらは証明書類のリスク評価やデューデリジェンスが欠けていると広く批判されており、国際的に認められている基準を大きく下回る。

●「先住民族や地域住民の権利に配慮」する基準に「 自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)に関する検証が含まれなかったこと。紙やパーム油の調達基準にはFPICは含まれていた。

●認証材向けに3割まで利用可能となっている非認証材について五輪の木材調達基準への適合の評価について含まれなかったこと。

参考:RANプレスリリース「新報告書『守られなかった約束』発表 〜東京五輪木材供給企業コリンドの熱帯林破壊、 違法伐採、人権侵害が明るみに〜」(2018年11月12日)

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

プレスリリース:新報告書「守られなかった約束」発表 〜東京五輪木材供給企業コリンドの熱帯林破壊、 違法伐採、人権侵害が明るみに〜(2018/11/12)

日本とインドネシアの金融機関とのつながりも

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、本日12日、Walhi(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)、Tukインドネシア(トゥック)、プロフンドと共同で、韓国・インドネシアの複合企業コリンド・グループに関する二つの調査報告書を発表しました。両報告書は、綿密な調査で明らかになった、同グループの事業全般における違法行為、環境破壊、コミュニティの権利侵害に関する膨大な証拠をまとめています。

   

本日、日本で発表した報告書「守られなかった約束」( Broken Promises、注1 )は、2020年東京五輪の会場建設に供給されたコリンド社の木材が、東京五輪の定めた持続可能性に適合せず、違法木材であった可能性が高いことを概説しています。また、インドネシアで同時に発表された報告書ペリラス:コリンド、土地収奪と銀行」( 英語、Perilous: Korindo, Land Grabbing and Banks、ペリラス=「非常に危険な」という意味 、注2)は、コリンド社によるインドネシアの未開拓林への事業拡大に伴い、原生林の皆伐、意図的な火入れ、土地収奪、地元住民への嫌がらせや令状なしの逮捕など悪質な行為が起きていることをまとめた報告書です。

本報告書の発表に合わせて、本日、Walhi・北マルク支部をはじめとするインドネシアの市民は、コリンドのジャカルタ本社前と、同社のメインバンクであるバンク・ネガラ・インドネシア(BNI)の本店前で抗議行動を行いました。コリンド社には北マルク州での森林破壊中止とコミュニティの居住地域からの撤退を求め、BNIにはコリンドとの銀行取引を停止するよう求めました。北マルク州では、地域コミュニティの土地所有者が、代々受け継いできた土地や森林の管理権を守るためにコリンドとたたかっています。両報告書に記載された証拠や証言によると、同社は地域コミュニティの同意なしに土地を収奪し、火を使って違法に土地を開拓し、必要な許可を得ることなくアブラヤシを植えたことや、同社の事業に抵抗する住民を犯罪者扱いし、令状なしの逮捕や暴力を行使したことが明らかになっています。

「守られなかった約束」報告書は、コリンドの合板工場が違法かつ持続不可能な方法で伐採した木材を調達し、同社工場から供給された合板がコンクリート型枠として東京五輪施設の建設に使われていたことを裏付ける証拠がまとめられています。今年5月、コリンド・グループのバリクパパン・フォレスト・インダストリーズの工場で製造された合板が、東京五輪バレーボール会場となる有明アリーナで見つかり、その合板は住友林業によって供給されていたことが判明しました。コリンド社がインドネシア環境林業省に提出した申告書によると、同工場の2016年と2017年の製造原料となった木材の約4割が、森林の土地利用転換による木材で、中には皆伐の進むボルネオオランウータンの生息地からの木材も含まれていました。

五輪施設の建設に使われたコリンド社の合板には、北マルク州で違法伐採された木材が含まれている可能性もあります。今年5月30日時点で、東京五輪施設の建設にインドネシアのコンクリート型枠合板が118,900枚使われ、そのうちの11万枚以上が新国立競技場に使われたことが公表されています(注3)。東京五輪当局は、製造企業や木材原産地の詳細を公開していませんが、新国立競技場の建設にコリンドが供給した木材が含まれている可能性があります。

  
左)有明アリーナ建設現場で使われた合板。コリンド・グループのバリクパパン・フォレスト・インダストリーズ社の木材であることを示している
右)オランウータン生息地 での森林皆伐、2016-18年 (コリンド社のバリクパパン・フォレスト・インダストリ ーズ合板工場に2016年と 2017年に木材を供給してい るボルネオ島の事業許可地 内において)

RAN責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは「2020年東京五輪の主催者は持続可能性に配慮したオリンピックの実現を約束しました。しかし、インドネシアからの熱帯材合板を11万枚以上も使用しています。コリンド社が提供したインドネシア産の合板は、熱帯林破壊や土地強奪、そして絶滅の危機にあるオランウータンの生息地での皆伐とつながりがあります。その目的の多くはアブラヤシ農園開発のためです。 オリンピックは人類の達成と世界の連帯を祝う祭典です。世界の遠い場所で起きている、人権侵害や環境破壊の上に建設されるものではありません」と批判しました。

Walhi・北マルク支部代表のイスメット氏は「コリンド社は北マルクとインドネシアの人々を虐待し、搾取しています。地域コミュニティの土地の収奪や農民への嫌がらせ、そして単一作物の大規模農園によって地域の生態系を破壊し、その代償を一般の人々が支払っています。コリンドは現在、木材販売とアブラヤシ農園開発のために、北マルクのコミュニティの森林をさらに奪おうとしています。コミュニティは抵抗していますが、政府と警察の助けを必要としています。政府と警察は違法行為の手助けをするのを止め、むしろ人々と農地と森林を守るべきです」と声を上げました。

コリンド社の財務、企業構造および海外ペーパーカンパニーの調査では、さらに多くの反倫理的行為や違法行為の事例が明らかになっています。その中には、シンガポールのペーパーカンパニーを通じて融資契約および財務諸表に関する虚偽の情報や、誤解を招く情報を提供したことも含まれます。「ペリラス:コリンド、土地強奪と銀行」報告書はまた、コリンド社の違法行為や人権侵害への関与に融資し、そこから利益を得ている銀行と投資家に責任があることも強調しています。コリンドへの資金提供者とビジネスパートナー、主にBNI、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、ヒョースン(Hyosung )、住友林業、王子ホールディングスは、コリンド社の事業拡大に重要な役割を果たしてきました。

RANのハイネケンは「SMBCは東京2020ゴールドパートナーで、コリンドの子会社に融資しただけでなく、同社の取引先の住友林業や合弁パートナーの王子ホールディングスの主な資金提供者でもあります。さらに、東南アジアの熱帯林をリスクにさらしている企業への最大の資金提供者です。(注4)今年6月、SMBCは森林セクターの投融資方針を導入し、同セクターのリスクに対処する上での重要な第一歩を踏み出しました。しかし、その方針は森林と人権をしっかり守るために強化されなければならず、顧客企業の事業だけでなく、そのサプライチェーンの事業についても考慮に入れる必要があります」と続けました。

両報告書は、インドネシア及び日本の関係当局に調査を含め、緊急かつ強力な措置を提言しています。さらに、悪質行為とのつながりが認められた東京五輪当局、インドネシアと日本の銀行や企業にはコリンド社との取引を即時解消することを求めています。

*両報告書に関する調査結果は、2018年6月から11月にかけてコリンド社に提示され、コメントと対応が求められました。コリンド社は、全ての法律および規制に完全に準拠して事業を行っており、自社を持続可能性におけるリーダー企業であると主張しています。両報告書にはコリンド社および、言及されている他企業のさらなる回答も記載されています。

*コリンド社が熱帯林破壊や違法な火入れに関与したのは今回が初めてではありません。参考:ロイター、“Korean firm burns rainforest for palm oil in Indonesia, report says”(2016年9月2日)

*高解像度写真や証言映像はこちら

北マルク州・ガーネのコミュニティの証言動画①(英語、インドネシア語)

北マルク州・ガーネのコミュニティの証言動画②(日本語、インドネシア語)

注1)「守られなかった約束: 東京2020年大会と日本の金融機関 〜事例研究:インドネシアの熱帯林破壊及び 土地収奪との関わり〜 (Broken Promises)」
日本語
英語

注2)「ペリラス:土地収奪と銀行」英語

注3)東京2020組織委員会、「持続可能性に配慮した木材の調達基準」の実施状況に関するフォローアップについて」、2018年7月2日

注4)「森林と金融」データベースを参照
森林リスク部門に関する「銀行の方針評価まとめ」でSMBCは50点満点の内22点の評価を得ている。

レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

TuKインドネシアは、政策やプログラム及び農業関連産業分野、天然資源管理で、国家及び非国家アクターによる人権と社会的公正の尊重、保護、達成の実現を求めるNGOです。

WALHI は、インドネシアで最も大きく歴史ある環境政策アドボカシーNGOです。国内31州の内27州に独立した事務所と草の根の構成団体があります。WALHIは、天然資源へのアクセスに関する農業紛争、先住民族の権利、森林破壊など多くの問題に取り組んでいます。

プロフンド(Profundo)は、オランダを拠点とする独立系非営利企業です。国際的な産品供給プロセス、金融セクター、政策構築、そして持続可能性におけるあらゆる側面で企業と投資家が与える影響において、事実に基づいた研究と助言を提供しています。


※動画へのリンクと一部写真を追加しました(2018年11月13日、11月21日)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org


緊急プレスリリース:パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置 (2018/11/5)

〜日本のメガバンクが多額資金提供するインドネシアのパーム油企業、10件の法律違反と「重大かつ組織的な」違反で制裁〜 RAN、OPPUK、ILRF 3団体の苦情申し立てを経て

インドフードの農園で働く少年 ©RAN

 

 

 

 

 

 

 

インドネシアのパーム油大手インドフード社が、世界最大のパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から制裁措置を通告されたことを受けて(注1)、本日5日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)は、RSPOの決定を歓迎し、以下のコメントを発表しました。インドフードはインドネシア最大の食品会社で、世界最大の即席麺企業の一つです。また同社は、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

【これまでの経緯】

●今回のRSPOによる調査は、RAN、OPPUK、ILRFの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注2)がきっかけとなって実施された。苦情申し立てが行われる前から、インドフードが所有・運営する農園で深刻な労働権侵害が明らかになっていた。

●数年にわたる一連の独立調査により、インドフードはインドネシア最大のパーム油企業の一つであるにもかかわらず、RSPO基準や国内外の基準と法律に違反し、労働搾取の慣行に関与していることが明らかになった。労働搾取の慣行(注3)には、非常に高いノルマが課せられるために児童労働が行われたり、無給労働や不安定雇用、有害物質への曝露など危険性のある労働条件が含まれる。

【制裁の内容】

●今回のRSPOの監査により、インドフードの所有・運営する一部のアブラヤシ農園で、RSPOで求められる「原則と基準」での20件以上の違反と、インドネシア労働法について10件の違反が明らかになった。監査の範囲は、苦情の対象になった農園に限定。

●RSPOは、RSPO認証を取得しているインドフードのパーム油搾油工場1カ所と農園3カ所で調査を実施した。その結果「重大かつ組織的な性質の違反」があり、上記工場と農園のRSPO認証について即時停止が必要だとした。さらにRSPOは、同社子会社でRSPO認証を取得している他の全ての認証ユニット(農園、工場レベルなど)でも3カ月以内の全面的な監査を求め、監査の監視が必要であるとした。

 

OPPUKの専務理事 ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「インドフードは最悪企業の一つで、『持続可能な』パーム油認証を受け続け、パーム油産業全体とRSPOの評判を落としてきました。労働者のための正義を実現する第一歩として、インドフードは、今や何度も確認された長年にわたる労働権侵害を是正しなければなりません。RSPOはインドフードに責任をとらせなければなりません」 と訴えました。

今回の制裁措置に先立ち、ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、マースなど多くのパーム油購入企業はインドフードとの取引をすでに停止しています。

一方、日本のメガバンクは、インドフードと子会社にとって主要な金融機関です。 同社は2018年9月30日の時点で、日本の3メガバンクから730億円以上の融資を受けています(注4)。3メガバンクは今年5月と6月に社会と環境に配慮した投融資方針を初めて発表し、全ての銀行が違法行為への融資を禁止しています。インドフードへの最大の貸し手であるみずほは、パーム油に特化した方針で「人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や(略)先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行います」としています。またMUFGとSMBCは児童労働を行っている事業へのファイナンスを明確に禁止しています。同時にSMBCは、パーム油関連の顧客企業がRSPO、あるいはそれに準ずる認証機関の認証を取得しているかどうかを確認することを方針の中でも明記しています。メガバンクと比較して、シティグループの対応は早く、今年4月にはインドフードのパーム油事業への全融資をキャンセルしました。

RANの責任ある金融 シニア・キャンペーナーのハナ・ハイネケンは「メガバンクは合法性、人権尊重、環境保護を方針に定めています。今回のRSPOによる制裁を受けて、メガバンクにはインドフードへの資金提供を停止することが求められています。 インドフードと同社の子会社に投資しているブラックロックや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もあらゆる資金を引き上げる必要があります」と訴えました。

ILRFの副事務局長のエリック・ゴットワルド氏(Eric Gottwald)は「今回の制裁措置は、RSPOやパーム油購入企業、金融機関にとって、労働搾取を禁止するための方針と方針実施を強化するための判断基準となるべきです。RSPOがこの決定までに2年もかけた間、労働者は基本的人権の侵害に苦しみ続けてきました。多大なリスクを抱えながら違反を報告した労働者たちには、もっと迅速で効果的な苦情処理プロセスが約束されなければなりません」と指摘しました。

RAN、ILRF、OPPUKは、インドフードが労働法違反に対処するためには以下の必要事項を求めます:

1) 農園での主要作業にかかわる全ての労働者に終身雇用を即時に約束して昇格させること
2) 労働者に生活賃金を保障し、天引きされた給料や給付金、昇給、そして無給業務を過去にさかのぼって補償すること
3) 結社の自由を全面的に尊重し、組合加入について全ての労働者に報復がないことを保証すること
4) 所有・運営する農園の女性労働者に起きている悪質な差別の解消に取り組み、女性の権利を保証すること
5) 労働者や労働者団体、独立した労働組合と協議の上、適正かつ透明性のある生産目標設定を確保すること

RAN、ILRF、OPPUKの3団体はインドフードに対して、包括的かつ期限を定めた「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を自社だけでなく、同社を傘下に持つインドネシア最大の財閥であるサリム・グループ全体、そして独立系の供給業社にも導入し、実践するよう引き続き求めていきます。

注1)RSPO通告文書 “Complaints Panel’s Decision on PT PP London Sumatra Indonesia Tbk” (2018年11月2日、英語)
注2)3団体による苦情申し立て文書(英語)、苦情申し立ての概要(英語)
注3)2016年調査の追加報告書:RAN「プレスリリース:労働搾取、貧困水準の賃金、有毒な健康被害を起こし続けるインドネシアのアブラヤシ農園への邦銀からの融資について、最新レポート発表〜RSPO認証パーム油農園での労働酷使は1年半前の最初の問題発覚後も継続〜」(2017年11月28日)
注4)インドフードへ資金提供する金融機関については、同社の財務報告(2018年9月30日、英語)を参照のこと。

参考

●インドフード社のESGリスクについての分析は「ブログ:3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク: インドフード社の事例」(2018/6/6)を参照のこと。

●日本のメガバンクの投融資方針へのNGOの反応
・NGO共同声明「わずかな進歩だが、パリ協定目標達成には不十分、三井住友銀行が新融資方針を公開、石炭火力の制限示すも”例外”に言及」(2018/6/21)
・NGO共同声明「みずほFG新投融資方針策定、気候変動リスク管理に対する小さな前進、さらなる具体化が必要」(2018/6/14)
・NGO共同声明「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表」(2018/5/25)

 

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)