サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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プレスリリース:新報告書「サリム・レポート」発表 日本のメガバンク3行、近年最大級の熱帯林違法皆伐とのつながりが判明(2018/4/13)

〜インドネシア財閥サリム・グループの関連企業、パーム油生産のための熱帯林皆伐が明らかに〜

サンフランシスコ発ーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、11日、「サリム・レポート:ボルネオ島泥炭林でのサリム財閥関連企業のパーム油に関する持続可能性評価報告書」(”Palm oil sustainability assessment of Salim-related companies in Borneo peat forests” 、注1)を発表し、インドネシアの最大財閥であるサリム・グループの関連企業が、ボルネオ島の熱帯林で続いている違法皆伐において、近年では最大級の事例に関係していたことを明らかにしました。インドネシア政府は泥炭地開発と森林減少を規制し、同グループもその遵守を約束していましたが、約1万ヘクタールの泥炭林がアブラヤシ農園のために違法に開発されていました。本報告書では、同グループ企業に日本のメガバンク3行が多額の資金提供をしていることにも言及し、サリム・グループに働きかけるなど、迅速に対応することを銀行に求めています。

同報告書は、この泥炭地破壊に責任のある2つのアブラヤシ農園企業が、インドネシアの大物実業家であるアンソニー・サリム氏がコントロールしている会社または関係会社であることを明らかにしています。サリム氏はインドネシア最大財閥のサリム・グループを率い、その幅広い企業ネットワークにはインドフード・スクセス・マクムル社(インドフード)と、その親会社のファーストパシフィック社があります。インドフードは世界最大のパーム油生産会社の一つで、インドネシア最大の食品会社であり、食品大手のペプシコとネスレの合弁事業パートナーでもあります。インドフードとファーストパシフィック社は両社とも、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)と、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)から多額の融資を受け、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からの投資も受けています。インドフードは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)からも融資を受けています。

進行する森林減少についてサリム・グループが初めて知らされたのは2016年2月でした。しかし、インドネシア政府から繰り返し泥炭地開発の停止を指示されていたにもかかわらず、介入をしませんでした。それどころか、同グループの子会社は、本報告書内で指摘しているように、当初、インドネシア政府の泥炭復興庁(BRG)が、ほとんどの開発対象地を「優先的に保護すべき泥炭地」と指定していたにもかかわらず、インドネシア政府の泥炭地開発の凍結対象地域を示す地図の区分を開発可能となるよう変更してもらうなどしていました。邦銀とインドネシアの銀行は、このような破壊活動を禁止する方針がないため、最もリスクにさらされている主要な貸し手として目立っています。日本のメガバンク3行はサリム・グループに最大で10億米ドル以上の融資を行っており、中でもみずほは最大の貸し手です。

RAN責任ある金融シニア・キャンペーナーのハナ・ハイネケンは「この報告書は、熱帯林が紛争パーム油のために破壊され続けているにもかかわらず、ビジネスのトップレベルでの怪しい取引や問題対処への怠慢について明確な証拠を示しています。一方、サリム・グループの顧客企業や資金提供者は、何も問題がないかのように同グループと取引を続けており、違法な森林破壊に加担しているのです。みずほ、MUFG、SMFGは、サリム・グループがインドネシアの法律や、森林破壊を伴わない持続可能な開発の規範を遵守するよう促すか、または同グループとの取引関係を解消する責任があります」と訴えました。

RANは昨年11月、インドネシアの労働権擁護団体OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)とともに、インドフードのアブラヤシ農園で労働搾取が続いていることを発表したばかりです(注2)。調査で確認された労働者酷使の事例では、児童労働や強制労働の状況が起きている可能性が高いだけでなく、労働者が日常的に危険性の高い農薬の暴露を受け、給料は最低賃金以下で、違法に臨時雇用者に中心的な役割を果たす仕事をさせ、独立した労働組合の結成を阻止することが含まれます。このような違法な労働行為が起きていたことは最近、独立監査(注3)によって裏付けられました。

ハイネケンは、「サリム氏が継続的な違法労働搾取、そして今は違法な森林破壊に関係していたにもかかわらず、数十億米ドルもの企業融資、債券や株式からの資金が全てサリム・グループの企業に流れています。本報告書は、メガバンクを含む主要銀行が炭素集約度の高い泥炭地破壊促進の役割に加担していたという失敗を明らかにしています。その中には、サリム・グループの環境、社会およびガバナンスのリスクについて繰り返し警告を受けてきた銀行も含まれています。銀行は気候変動に対応する誓約を強化し、泥炭地破壊への資金提供を止める必要があります」と強調しました。

メガバンクと比較して、パーム油に関する融資方針をもつシティグループの対応は素早く、サリム・グループの子会社であるアブラヤシ農園企業のインドフード・アグリ・リソーシズ社とその子会社への全融資をキャンセルし、関係を解消するとともに、本報告書で問題視されているパーム油企業へのエクスポージャーの有無を確認していることを先日通知してきました。

泥炭地は、火災のリスク(農園開発のために排水された後、乾燥して火がつきやすくなる)と気候調節の重要性から、インドネシアの法規制では特別に保護されています。一度火がつくと消化はほぼ不可能です。また、泥炭地は重要な炭素吸収源であり、炭素を地中に蓄えています。アブラヤシ農園開発のために排水された泥炭地では、1ヘクタール当たりで平均55トンの二酸化炭素が毎年排出され(注4)、6,000ガロン以上のガソリンを燃やすのとほぼ同じ量です。よって、今回開発された1万ヘクタールの泥炭地で排出される二酸化炭素の量は、毎年55万トンになります。ちなみに平均的な乗用車は毎年約5トンの二酸化炭素を排出しています(注5)。

また、本報告書ではサリム氏の企業統治に対して深刻な懸念を提起しています。サリム・グループのビジネス帝国は、グループが管理する上場企業と、隠れた関連企業(インドネシアでは「ビジネス・オン・ザ・サイド」と呼ばれる非上場企業)とに分けられます。上場企業は透明性と持続可能性への誓約をしていますが守ることはできず、隠れた関連企業は熱帯林と保護すべき泥炭地を破壊しています。サリム・グループは「インドフード帝国」という表向きの顔とは懸け離れ、破壊的な事業を続けています。パーム油購入企業は、熱帯林を保護して人権を尊重する責任ある生産者からのみ購入する責任があります。同時に、サリム・グループ企業に資金提供している銀行は気候変動に対応するための方針の採択を含め、デューデリジェンスを強化する責任が問われます。

注1)「サリム・レポート」(報告書全文、英語)

本報告書は、持続可能な生産と取引を調査するコンサルタント「AidEnvironment」がまとめた調査に基づき、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、レインフォレスト・ファンデーション・ノルウェー(RFN)、サムオブアス(SumOfUs)が作成しました。

注2)RANプレスリリース「労働搾取、貧困水準の賃金、有毒な健康被害を起こし続けるインドネシアのアブラヤシ農園への邦銀からの融資について、最新レポート発表」、2017年11月28日

注3)“ASI Final Assessment Report”

注4)World Resources Institute, “Destruction of Tropical Peatland Is an Overlooked Source of Emissions”, April 21, 2016

注5)U.S. Environmental Protection Agency (EPA), “Greenhouse Gas Emissions from a Typical Passenger Vehicle”, March 2018

 

 

「サリム・レポート」詳細

報告書全文はこちらから

本報告書は、インドネシアのボルネオ島シンタン地区で操業している2つのアブラヤシ農園企業の森林破壊行為を調査しています。

2つの農園企業とは、アンソニー・サリム氏が株式の過半数を保有しているドゥタ・レンドラ・ムルヤ社(PT Duta Rendra Mulya : DRM社)と、共同出資者を通じてサリム氏と関連のあるサウィット・カトゥリスティワ・レスタリ社(PT Sawit Khatulistiwa Lestari: SKL社)です。

ボルネオ島シンタン地区の最も重要な泥炭地の1万ヘクタールは「ケタンガウ(Ketungau)泥炭湿地」と呼ばれ、アブラヤシ農園開発のためにラグビー場約1万個分の泥炭湿地が開発されました。

フォーブス誌によると、アンソニー・サリム氏はインドネシア4番目の富豪で、氏の共同経営者は過去に厳しい調査を求められてきました。サリム氏は様々な上場企業(ファースト・パシフィック、インドフード・スクセス・マクムル、インドフード・アグリ・リソーシズ[インドアグリ]、サリム・イボマス・プラタマ、ロンドン・スマトラ)を所有していることで知られていますが、同時に、政府の規制や、開発を禁止している自社方針に反して熱帯林と泥炭地の破壊を続けている多くの非上場グループ企業を(何層にも株主が重なっている場合が多いが)コントロールしていることでも知られています。

サリム・グループのパーム油事業への重要な資金源は銀行融資です。2017年9月30日時点でインドフードとその子会社の帳簿上に20億米ドル以上の融資記録があり、ファースト・パシフィック社には6億8千万米ドルの融資残高があリます。こうした様々な融資は直接SKL社やDRM社が受けている訳ではありません。しかし、サリム・グループの企業構造や所有構造により企業間でのお金の流れが容易になっており、貸し手はDRM社やSKL社に未だつながっていることが示されています。2017年9月30日時点で、みずほは、ファースト・パシフィック社、インドフード、その子会社に約5億米ドル、SMFGは約4億米ドルの融資をしており、三菱UFJは3億米ドル以上の融資をインドフードとその子会社に約束しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

オルタナにRAN川上豊幸が寄稿しました(2018/3/23)

オルタナ「東京五輪、パーム油調達基準が抱えるリスクと課題」(2018年3月23日付)〜RAN川上豊幸が寄稿しました〜

「3月16日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(東京2020組織委員会)は紙とパーム油に関する調達基準案を作成しました。「持続可能性に配慮した紙の調達基準(案)」と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準(案)」が公表され、一般からの意見募集を3月30日まで行っています。記事を読む

プレスリリース:インドネシアのアブラヤシ農園への邦銀からの融資について、最新レポート発表(2017/11/28)

労働搾取、貧困水準の賃金、有毒な健康被害を起こし続けるインドネシアのアブラヤシ農園への邦銀からの融資について、最新レポート発表〜RSPO認証パーム油農園での労働酷使は1年半前の最初の問題発覚後も継続〜

ジャカルタ発 – レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)によるレポート『紛争パーム油のヒューマン・コスト(人的損失) 改訂版:ペプシコ、銀行、持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO)は、どのようにインドフードの労働者搾取を継続させているのか(The Human Cost of Conflict Palm Oil Revisited: How PepsiCo, Banks, and the Roundtable on Sustainable Palm Oil Perpetuate Indofood’s Worker Exploitation)』においては、ペプシコ社ブランドのスナック食品でのインドネシアで唯一の生産者である食品大手インドフード社が所有・運営する3つのアブラヤシ農園での現地調査と労働者へのインタビュー結果を示す。インドフード社への4大資金提供機関のうち3社が日本の銀行で、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループである。

本日のレポートは、インドフードが所有する農園での労働酷使についての前回の報告のフォローアップである。最初のレポートは、ほぼ1年半前に出版された。今回のレポートでは、農園は児童労働や強制労働の発生リスクが高く、労働者は日常的に危険性の高い農薬にさらされ、賃金が最低賃金を下回り、中核となる業務の遂行に法律違反だが臨時労働者が充てられ、独立した労働組合の形成が阻止されていることなど、概ね状況が以前と同じであることが明らかになった。パーム油産業の主要な認証制度である持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)によって「持続可能」と認証された農園での労働酷使は、全て文書で報告されており、これはインドフードとの合弁事業パートナーシップによりペプシコ社に関係している。

「パーム油産業における主要な認証として、RSPOはメンバー企業が説明責任を果たすように支えなければなりません。このような特有のリスクに直面している労働者の窮状を無視して、RSPOが労働酷使を認証し続けることはできません。」とOPPUKの専務理事、ヘルウィン・ナスシオン(Herwin Nasution)は述べている。「従業員は保護されて、本当に『持続可能な』パーム油を得られると思えるように、緊急の問題としてRSPOはインドフードに対しての苦情申立について行動し、その基準内容と監査体制の両方を強化しなければなりません」。

パーム油産業では労働酷使の状況が蔓延しているが、世界最大のパーム油生産者でインドネシア最大の食品会社であるインドフード社は同業者に後れをとっている。インドフードは、現在インドネシア最大の民間のパーム油企業であるが、自社の事業全体と独立サプライヤーを通じた方針の強化もなく、森林減少無し、泥炭地への農園拡大無し、労働者の権利及び人権の侵害無しという責任あるパーム油の新しいベンチマークとの合致のための業務慣行の改善もしていない。

「これら明らかになった事実は常軌を逸しています。インドフードの農園で起こっている労働酷使を、インドフード、RSPO、他の方は、ほぼ1年半の間知っていて、ほとんど何の変化もありませんでした。」とRANのアグリビジネス・キャンペーンディレクターであるロビン・アヴェルべックは述べた。「 この2回目のレポートは作成する必要はなかったはずです。 これらの労働者酷使に関係する者は、安価なパーム油のため悪質な労働者搾取を容認した者として記憶されるのか、あるいは、行動するするのか、決断が迫っています 」。

みずほ、三井住友、三菱UFJは、パーム油産業に関わる顧客企業による労働者の酷使や森林減少を防ぐといった誓約の公表もしておらず、同業他社と比較して大きな後れを取っている。これら3行は2017年9月30日時点で約1200億円の融資をインドフードに提供している。これら3行の最大株主でもある年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もまたインドフードへの6番目の機関投資家となっている。

「この2回目の調査結果は動揺してしまうもので、インドフードのような企業に資金を提供し続けるのなら日本の銀行は責任ある企業とはいえないでしょう。」とレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸はコメントした。「銀行は、その顧客企業を人権や労働権の規範に沿ったものにして行くのか、あるいは、関係を断つことによって、顧客企業の行動に対する責任を取らなければなりません。何もしないという選択肢はもはや無いのです」。

このレポートには、インドフードおよびその親会社であるファースト・パシフィックへの改革についての提言が含まれている。そして、ペプシコ社への提言、ネスレを含めインドフードとの他の合弁事業パートナーへの提言、そして長年にわたる労働者の権利侵害でインドフードに対して提起された苦情を未だ適切に解決できないRSPOへの提言も含まれている。また、インドフードに投融資する銀行と投資家は、ムシム・マス(Musim Mas)やウィルマーなど、インドフードからのパーム油を直接・間接に調達しているパーム油取引業者と同様に、何らアクションを取っていないことで、レポートで名前が挙げられている。

-本レポート(英文のみ)のダウンロードはこちら

-レポートで使用されている高解像度の写真は、ご請求いただければ提供いたします。

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OPPUKはインドネシア、北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、教育、草の根組織化、非暴力直接行動を通じて、世界市場を変革することによって、生命を維持する森林、その住民、自然システムのためのキャンペーンを行っています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは、子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

連絡先: 川上豊幸 03-3341-2022 toyo@ran.org  

 

 

(さらに…)

プレスリリース:マレーシアの主要パーム油企業が画期的な労働方針を発表(2017/10/31)

2017年10月31日

 IOIグループが、強制労働、児童労働、労働者搾取横行の産業界に新基準

サンフランシスコ – 本日、マレーシアのパーム油大手IOIグループは3つの主要な労働方針を発表した。これは、労働者に募集時に課していた手数料の徴収を止め、組合設立の自由を尊重し、生活賃金の支払いに努めるというものである。これらの方針は、労働者の権利侵害と労働者搾取が繰り返し発覚している産業界において新たな基準をまとめたものとなっている。

「マレーシアのパーム油産業の外国人移民労働者は、募集段階での詐欺や高額手数料のためにしばしば借金に苦しめられる状況に陥っている。 IOIグループの『手数料ゼロ』方針は、いきなり労働者を強制労働や債務奴隷労働の罠にかける債務を防止するのに重要な前例を作った。」とマレーシアの人権団体、テナガニタ事務局長のグローレン・ダス(Glorene Das)は語っている。

「IOIグループの新労働方針は新たな基準を設定しており、サイム・ダービー(Sime Darby)、フェルダ・グローバル・ベンチャーズ(Felda Global Ventures)、クアラ・ルンプル・クポン(Kuala Lumpur Kepong Berhad:KLK)など、他のマレーシアのパーム油企業はすべて従わなければならない。」とダスは続けた。「迅速な是正措置のために、実施における課題が経営陣の注意を引くことができるように、我々が労働者に自由にアクセスできることを期待している」。

強制労働のため、マレーシアのパーム油産業の悪名はますます高まっている。マレーシアのパーム油農園の労働力の大部分を占める外国人移民労働者は、到着時にパスポートを押収され、移動の自由と農園を出る手段が制限される。多くの場合、労働者は農園での雇用機会確保のために第三者の労働仲介人により多額の募集手数料を徴収され、残った借金を減らしていかなければならないので、債務奴隷労働の状況のままとなる。この負債と、移動の自由に関する制限は、現代の奴隷制の構成条件に合致している。

IOIグループの新方針は、いくつかの重大な問題についてマレーシアのパーム油産業における労働基準のレベルを上げている。新しい賃金方針では、IOIは、生産性にリンクした奨励金を上乗せした法定月間最低賃金を労働者に支払うことと、現行の賃金と生活賃金の乖離をなくす目的で信頼できる方法論を使って生活賃金を計算することを約束している。雇用方針においては、IOIは外国人移民労働者に募集関連費用を請求しないことと、既に請求された費用は労働者に払い戻されることを約束した。この方針は、到着後の体系的なヒアリングで実施される予定である。そしてIOIは、結社の自由方針において、労働組合がIOIの私有地に自由にアクセスできるようにすることを約束している。

「IOIグループのコミットメントは重要な第一歩だが、その実施が本当のテストになる。サプライチェーンの強制労働を止めることを約束した消費者ブランドの企業とバイヤーは、IOIの進捗状況を監視し、これらの方針の完全な実行を求める必要がある。」とフィン・ウォッチ(Finnwatch:フィンランドのNGO)の事務局長、ソニア・バーティアラ(Sonja Vartiala)は述べている。「これはまた、例えば手数料を支払った労働者には完全に払い戻しをしなければならないことを意味する」。

IOIグループは厄介な過去を抱えており、森林破壊と泥炭地の排水と焼却の苦情が報告されていることで持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO)の認証を外された数少ない企業の一つである。同社は、労働慣行やロング・テラン・カナン・ロングハウス(Long Teran Kanan Longhouse)コミュニティとの長期にわたる土地紛争のために、キャンペーンの対象となっており、今もそれは進行中である。NGOの連合体は、IOIがその負の影響に対処するために取るべき是正措置についての提言を作成している。

「これは重要な前進だが、IOIはまた、問題のある過去を是正する必要がある。 IOIグループは、これらの新しい労働方針を完全に実行する以外にも、パーム油の責任ある供給者と見なしてもらう前に、長らく続く苦情、特にロング・テラン・カナンのコミュニティとの間の紛争を解決する必要がある。」とレインフォレスト・アクション・ネットワークのシニア・キャンペーナ、ロビン・アベルベックは述べている。

世界のパーム油消費市場の購買者や政府は、法律や自主的な仕組みを通じて、サプライチェーンにおける現代の奴隷制を根絶することを約束している。米国と英国は、企業にサプライチェーンにおける強制労働にどのように取り組んでいるのかを開示するよう要求する法案を可決し、フランスは大企業には人権デュー・ディリジェンスを規制として導入し、2016年にはコンシューマー・グッズ・フォーラム – 400社の世界的な主要なブランド団体 – は、自社のパーム油サプライチェーンにおける強制労働を根絶することを約束した。

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連絡先:

Emma Rae Lierley, Emma@ran.org, +1.425.281.1989

Sonja Vartiala, sonja.vartiala@finnwatch.org, +358.44.568.7465

Glorene Das, glorene.a@tenaganita.net, +60.10.360.3269

 

さらなる情報は以下をご覧ください。

Finnwatch’s reports on IOI Group’s labor conditions (2014-2016):

–       Working conditions at the IOI Group’s oil palm estates in Malaysia: a follow-up study (2016): https://www.finnwatch.org/images/pdf/IOI-2016_EN.pdf

– The New Law of the Jungle? Responses by certification schemes and the IOI Group to – – – -Finnwatch’s Law of the Jungle report (2015): https://www.finnwatch.org/images/pdf/Palm_oil_followup_EN_2015.pdf

-The law of the jungle – Corporate responsibility of Finnish palm oil purchases (2014): https://www.finnwatch.org/images/pdf/palmoil.pdf

-Rainforest Action Network’s report on Kuala Lumpur Kepong Berhad (KLK), titled Conflict Palm Oil in Practice (2014): https://d3n8a8pro7vhmx.cloudfront.net/rainforestactionnetwork/pages/2779/attachments/original/1415662670/klk_case_study_2014_low.pdf?1415662670

みずほ銀行へ「無責任銀行ジャパン大賞2017」を株主総会前で贈呈

2017年6月23日

東京 —本日開催されたみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の株主総会で、NGO団体が抗議活動の一環として、みずほFGに「無責任銀行ジャパン大賞2017」を授与しました。 参加者たちは、株主に対し、みずほに危険な化石燃料、森林破壊、原子力への投融資の中止を求めるように呼びかけ、これらのリスクを管理するための包括的なESG(環境・社会・ガバナンス)方針の策定を求めました。 また、みずほFGが投融資ポートフォリオ全体におけるESGリスクを完全に開示するよう要請しました。 みずほFGの社員に扮したNGOメンバーが、「無責任銀行ジャパン大賞2017」という大きな受賞プレートを受け取り、他のメンバーは「みずほ:気候変動を加速させる銀行業務をやめよう」というバナーを持って行動に加わりました

この模擬授賞式は、NGO4団体レインフォレスト・アクション・ネットワーク、350.org Japan、FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が昨日発表した「みずほフィナンシャルグループに関する2016年 ESG評価レポート」調査結果を強調するために行われました。 レポートは、みずほの無責任な銀行業務が、深刻な気候変動を増幅させ、熱帯林を脅かし、人々の健康を危険にさらし、人権侵害を促進していることを示しています。 みずほFGは、これらの問題に対処するための強力な環境、社会、ガバナンス(ESG)方針を策定・採用する点において、世界の銀行に後れを取っており、投資の重大なリスクを株主に適切に開示することができませんでした。

「みずほは、化石燃料や熱帯林破壊に関与している炭素集約度の高い企業に数十億ドルの資金を投入しています。 株主は、これをみずほが適切に開示していない重大なリスクであることを知る必要があります。」と、レインフォレスト・アクション・ネットワークの日本代表、川上豊幸は述べています。

「今日の行動の目的は、気候変動を加速させ、社会や環境問題を引き起こしているみずほFGの無責任な投融資行動に焦点を当てるためです。 みずほFGは責任ある投融資を行い、パリ協定で定められたように気温上昇を2℃以下に抑えるために、化石燃料への資金を削減すべきであります。」と、350.org Japan代表の古野真は述べています。

「みずほFGが資金を提供している幾つかの化石燃料プロジェクトにより、地元の人々の人権が侵害され、生計手段が破壊されている」とFoE Japanの深草亜悠美は語り「これらのプロジェクトがもたらしている負の影響を直視し、融資者として責任を負う必要がある。」と続けました。

NGO団体は、ESG評価レポートを株主が総会会場に入る際に配布しました。レポートでは、みずほFGは2011年と2016年の間に、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)をはるかに上回る、日本の化石燃料関連企業に380億ドル(約4兆円)以上の融資と引受けを行ったことが報告されています。 同じ時期に、東南ア
ジアの熱帯林を脅かす企業に40億ドル(約4456億円)以上の融資と引受けを行い、日本の原子力関連会社には約80億ドル(約8912億円)を拠出しました。 この報告書は、みずほのポー
トフォリオにおけるいくつかの問題点を浮き彫りにしています。そして、財務ポートフォリオ全体における重要なESGリスクに関する情報開示、気温上昇を2度未満に抑えるという目標達成に向けたポートフォリオの投資先・融資先企業における炭素排出量削減ロードマップの策定、包括的なESG方針の発表をみずほFGに要請することなど、みずほFGの株主に対する具体的な提案を記載しています。

ダウンロードは:

・みずほフィナンシャルグループに関する2016年ESG評価レポート(英文・和文):www.ran.org/mizuho_riskyinvestment

・みずほフィナンシアルグループへのメッセージ送信サイト(英語):

大手金融機関、商社、GPIFの森林破壊・搾取・児童労働への関与が判明

2017 年 4 月 24 日

日本の大手金融機関や商社、そして GPIF が東南アジアでの森林破壊・搾取・児童労働への関与が判明

〜新報告書によって、非倫理的な 8 つの企業に対し資金支援を行う金融機関が明らかに〜

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(以下、RAN)は本日、「投資家には責任が ある―森林と金融調査レポート」と題された報告書を発表いたします。報告書では、森林破壊 と人権侵害を繰り返している東南アジアのパーム油、紙パルプ、ゴム、木材企業に対し、多大 な資金提供を行っている世界の主要な銀行や投資機関の一覧を公開しています。

RAN の調査により、王子ホールディングス、丸紅、伊藤忠、フェルダ・グローバル・ベンチ ャーズ、インドフード、IOI、ウィルマー、APP の 8 社が、自社やサプライチェーンの事業に おいて、児童労働や強制労働、先住民族からの土地の搾取、熱帯林皆伐、炭素を豊富に含んだ 泥炭地の破壊、現地の汚職に便乗した利益享受、違法に製造された商品の売却など、社会およ び環境問題に関与している事実が明らかになりました。上記 8 社はすべて、社会問題や環境問 題への取組みについてそれぞれ誓約や方針を公表していますが、問題は改善されていません。

RAN 森林と金融キャンペーンディレクターのトム・ピケンは、以下のように述べています。 「銀行や投資機関は、自らが資金を提供している事業が熱帯林破壊や現地の人々からの搾取を 行っているという事実を認識する倫理的、経済的な義務があります。こうした金融機関は、自 分たちの投資によって、環境、社会、そして最終的には自らに対し多大なダメージを与えてい ると理解する必要があります。」

機関投資家による最新報告(2017 年 2 月付)によると、上記 8 社の森林部門事業は、債券お よび株式で合計 65 億米ドル以上の資金を得ているほか、2010 年以降に融資および引受で受け取っ た資金の総額は 280 億米ドル以上となっています*。上記 8 社を金銭的に支援している主要銀行 は、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱 UFJ フィナンシ ャル・グループ、中国開発銀行、RHB バンキング、CIMB グループ、HSBC などであり、最大 級の投資機関としては、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、バンガード、エン プロイーズ・プロヴィデント・ファンド、ブラックロック、およびディメンショナル・ファン ド・アドバイザー等が含まれています。

「銀行家や投資家の人々は、こうした事態から目を背けるのを止め、自分たちが受け取って いる短期的な配当や数百万ドルのボーナスが実際は何を犠牲にして生みだされているのかを認 識しなくてはいけません。金融機関が森林破壊や人権侵害には融資をしないと誓約しない限り、 気候変動の大きな要因である森林破壊に歯止めをかけようとする国際努力は徒労に終わってし まうのです。」

RAN は今回の報告書で、銀行と投資機関に対し、熱帯林に害を与えている商品の製造に関 わるすべての企業、およびそれに関連する川下のサプライチェーンについて、投融資方針を策定するよう求めています。 そうした方針があって初めて、自らが資金的に支援している森林破 壊や人権侵害について明白に確認ができるからです。銀行や投資家は、デューディリジェンス によるスクリーニングを強化し、資金提供先の企業の業務をきちんとモニターして、無責任な 企業に対しては資金提供を断つ社会的責任があります。

森林破壊や社会問題は、金融機関にとっても重要な問題になっています。 2000 年から 2012 年にかけて、日本の国土の約 3 倍の面積の熱帯林が失われましたが、その中でも消失が最も深 刻な地域の一つが東南アジアです。その大きな要因は、グローバル企業によるパーム油、紙パ ルプ、木材、ゴム、その他ソフト・コモディティへの急激な需要の高まりです。消失した熱帯林のうち、ほぼ半分が商業的用地に違法に転換されており、その半分は輸出用商品を生産する ためのものです。

今回の報告書によって、融資、引受、投資を通じて年間何十億ドルもの資金を提供すること で、金融機関がいかに環境破壊を行う主体的存在となっているかが明らかになっています。こ の報告書は、 明日から東京で開催される「RI アジア 2017」でも発表いたします。

以下からダウンロードできます。

日本語版 投資家には責任がある -森林と金融 調査レポート-

英語版 Every Investor Has A Responsibility:Forest & Finance Risk Dossier

*融資と引受はグループ会社レベルで計算されており、森林セクター以外の事業活動がある企業については、選定した企業の森林リスク分野に帰すると合理的に考えられる資金提供額の割合をより正確に捕捉するために、減額して集計した。入手可能な情報の限界により、本報告書で指摘する債券・株式の総額はいくつかの年金基金による債券・株式を含めていない。さらなる情報については次を参照してください。forestsandfinance.org