サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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声明:三井住友FG、気候リーダーになる好機を逃す〜与信方針を改訂するも、みずほに及ばず〜 (2020/4/17)

三菱UFJに注目が高まる

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日17日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が同グループの石炭、石油・ガス、森林減少等への資金提供に関するESG(環境・社会・ガバナンス)方針の改定を16日に発表したこと(注1)を受けて、「中途半端な改訂で残念である」とし、以下の声明を発表しました。SMBCの方針改訂は、国内2位のメガバンクであるみずほフィナンシャルグループ(みずほ、TYO:8411)が気候リスク管理を強化した一連の方針改訂を発表した(注2)翌日に公表されました。メガバンクの方針はパリ協定の目標を達成するにはまだ不十分ですが、初めてセクター別の方針を定めた2年前に比べると大きな変化を遂げています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の方針改訂は5月までに発表される可能性があり、みずほとSMBCの方針改訂を受けて、MUFGへの注目が高まります。

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「今回の方針改訂で、三井住友フィナンシャルグループは日本での気候変動対策のリーダーになる大きな機会を逃しました。 同グループは国連の『責任ある銀行原則』に署名し、投融資をパリ協定と持続可能な開発目標に合致させることを約束しましたが、これでは達成できません。 もう一度、振り出しに戻って直ちにやり直す必要があります」と指摘しました。

写真:三井住友フィナンシャルグループ株主総会前でのアクション、2018年6月

3メガバンクは昨年9月に国連「責任銀行原則」に署名したことで、銀行業務の実態と持続可能性に関する公約の間に『大きな開き』ができました(注3)。日本の銀行による融資先は、問題案件となっているベトナムおよびインドネシアの新規石炭火力発電所建設、インドネシアでの森林火災と搾取を伴うパーム油の農園、米国で紛争をもたらしているオイルサンド・パイプライン等(注4)に関わり、世界中に広がっています。今年3月に発表されたRANらの報告書では、MUFGとみずほは世界6位、9位の化石燃料への資金提供者であることが明らかになりました(注5)。また、3メガバンクは東南アジアの森林減少に加担している最大の資金提供者に含まれ、SMBCがメガバンクで最も多いことも明らかになっています(注6)

SMBCの方針は以下の通り、多くの面でみずほの方針よりも弱いと言えます。

●パーム油、紙パルプ、木材等、森林に悪影響を与える恐れのある産品への与信方針に「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE : No Deforestation, No Peat and No Exploitation、注7)や、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC:Free, Prior and Informed Consent))の要件がない。 このような基準は国連「持続可能な開発目標(SDGs)達成に不可欠である

● SMBCは、石炭に関わる資金提供の段階的廃止を約束せず、新設の石炭火力発電所への支援は「原則として」実行しないと約束している。一方で、超々臨界石炭火力発電所を「環境へ配慮した技術」と評価している(注8)

●炭鉱採掘部門で環境負荷の大きい「山頂除去採掘」を新たに禁止している点や、石油・ガス部門で社会・環境面でのリスクを認識している点は進展といえる。しかし、気候変動関連の制約が全く記載されていない

MUFGの方針改訂への期待は、みずほが設定した新基準を超えなければ、大きな失望へと変わるでしょう。MUFGは日本最大の銀行として、そして世界で銀行業務を大きく展開している上でも、3メガバンクで最も厳しい気候関連方針を策定し、世界の銀行と競い合っていくという、他の銀行にはない大きな責任を負っています。

注1)三井住友フィナンシャルグループ「ESGに関するリスクの考え方について」、2020年4月16日

注2)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティへの取り組み強化について〜脱炭素社会実現に向けたアクション強化〜」、2020年4月15日

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連『責任銀行原則』発足をうけて〜」、 2019年9月23日

注4)参考資料
Market Forces「ブンアン2石炭火力事業に融資しないで!」

東洋経済「日本が関与『インドネシア石炭火力』に重大事態:チレボン2号機案件で『贈収賄疑惑』が浮上」、2020年1月16日

RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜 」、2020年1月29日

RAN本部プレスリリース「TCエナジー社、キーストーンXLパイプライン計画を進める〜JPモルガンチェース、シティ・グループ、カナダの銀行が資金提供」(Reckless Keystone XL Decision by TC Energy Endorsed by JPMorgan Chase, Citi and Canadian Peers)(英語)、2020年4月3日

SMBC関連で、問題ある事業や融資先企業には以下も含まれる。
東アフリカ原油パイプライン

マイティアース『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』、2019年12月10日

米国カリフォルニア州での石炭輸出ターミナル

注5)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表:3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,3814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り〜」 、2020年3月18日

注6)RAN他「森林と金融データベース:東南アジアの森林リスク企業へ融資と引受:上位10金融機関(2014年〜2019年8月)」

注7) NDPE方針については「責任投資原則」のパーム油に関する声明を参照

注8)SMBCの石炭方針については以下のNGO共同声明も参照
「三井住友が石炭新方針を発表~みずほの新方針と比べて低水準に〜」、2020年4月16日

団体紹介
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:2020新キャンペーン開始!「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜 (2020/4/1)

2020年までに森林破壊ゼロ・人権尊重の公約を実行せよ(5月14日更新)

東京ーー米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日1日(米国太平洋時間 3月31日)、新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング〜森林と森の民の人権を守ろう〜」(注1)を発表し、熱帯林破壊と人権侵害を助長している企業で影響力のある代表的な企業として、多国籍ブランド企業10社、大手銀行7社に対応を求めるキャンペーンを開始しました。17社には日本企業3社ー三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、日清食品、花王ーも含まれます。

本報告書は、17社のブランド企業と銀行の業務が重要な熱帯林を破壊し続けている状況を説明するとともに、2020年までに森林破壊を止めて先住民族の権利を尊重するという公約を怠っている事例も説明しています。こういった企業の無責任な事業活動は、急激な気候変動と前例のない生物多様性の損失という二重の危機を助長し、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)ターゲット15(2020年までに森林破壊を阻止)と矛盾しています。熱帯林破壊による森林減少はまた、新型コロナウィルス感染症の拡大に拍車をかけている可能性も指摘されています。世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの流行は野生動物から始まった可能性があると報告し(注2)、国連環境計画(UNEP)は予防策として生態系および野生生物への脅威に取り組む必要があると述べています(注3)

本報告書はRANの2020年における新キャンペーン開始に合わせて発表されました。インドネシアをはじめ、熱帯林の運命を左右するともいえる、以下の17社を対象にしています。

消費財ブランド企業(10社:多国籍・日用消費財企業):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース
銀行(7社:金融大手):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

RANは本キャンペーンで、17社の消費財ブランドと銀行に、森林リスク産品のサプライチェーン、投資(合弁事業への投資も含む)、金融サービスについて、ベストプラクティスである「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を企業グループ全体で採用および実施することを求めています。また、対象企業に自社の「森林フットプリント」ーー森林伐採や産業的農業の拡大によって、森林や泥炭地、先住民族や地域コミュニティの権利がサプライチェーンおよび資金提供で受けた影響について情報開示することを求めています。また企業は、先住民族と地域コミュニティの人権について、サプライチェーンの改善や森林保護および回復の取り組みにおいて重視するよう求められています。産業的農業の拡大は森林破壊を助長する要因の一つであるだけでなく、先住民族が直面する暴力行為にも大きな責任があります。

本報告書は初めて、消費財ブランドと銀行、そしてインドネシアの森林リスク産品、特にパーム油、紙パルプの生産・加工過程で森林破壊と人権侵害を引き起こしている10社の林業・農業企業とのつながりも分析しています。

MUFGはパーム油企業への世界最大の資金提供者の一つで、紙パプルや木材等の森林リスク産品および、関連する消費財企業への重要な資金提供者でもある。MUFGは東南アジアの森林リスク産品事業のみに対して2015年から2019年8月の期間で9億4,100万米ドルもの資金提供を行った。MUFGはNDPE方針を持たないまま、子会社のダナモン銀行を通じてインドネシアでの事業を拡大している(注4)

花王は日本で最大のパーム油購入企業の一社です。花王は2014年にNDPEに合致した方針を採用し、今年3月中旬に2020年森林減少ゼロ目標を強化すると共に、パーム油サプライチェーンの搾油工場リストを公表した(注5)。しかしながら、国際的な業界団体「コンシューマー・グッズ・フォーラム」の会員企業として約束した、2020年までに森林減少をゼロにする目標は達成していない(注6)

日清食品は、即席麺生産での主要なパーム油購入企業だが、花王と比較すると、NDPE方針を採用せず、自社サプライチェーンにおけるパーム油搾油工場リストも公表していない。日清食品は「コンシューマー・グッズ・フォーラム」の会員企業としての公約を達成するには程遠い(注7)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「熱帯林破壊は、森林の生態系だけでなく、人間の命も脅かしています。数十万人が感染し、世界経済を揺るがしている新型コロナウィルスの大流行と熱帯林破壊が関連していることで、緊急性が増しています。キャンペーン対象企業となった消費財企業10社と銀行7行は森林減少を巨額の資金で助長しています。今のような危機を防ぐためにも、これらの企業は責任を果たすべきです」と訴えました。

影響力の大きい消費財ブランド、銀行、林業・農業企業は、金融およびサプライチェーンでの相互関係で「破壊の輪」を作っています。日本企業について、川上は「三菱UFJは、国連責任銀行原則(PRB)に署名した限り、自行のポートフォリオにおける森林破壊・人権侵害の停止に取り組む大きな責任があります」と指摘し、「花王は、森林減少ゼロ方針を全ての製品に適用を拡大し、サプライチェーンでのNDPE方針の実施確認の取り組みを早急に進める必要があります。日清食品は、現在の持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)認証油に依存した取り組みでは不十分なので、まずはNDPE方針を採択し、搾油工場リストの公表を通じてリスク管理体制を強化し、森林減少、泥炭地開発を食い止める対処に一刻も早く取り組みを進めることが必要です」と続けました。

*本報告書に対する企業からの返答はこちらに記載しています(英語)。

**注記:レインフォレスト・アクション・ネットワークは、世界中の人々が現在直面している新型コロナウィルスによる生命、健康、生計手段への深刻な影響による緊急事態を認識しています。パンデミックおよびそれに付随する経済的影響への緊急対応が当面の優先事項とされるべきとの認識の下、今回の報告書を発表しています。しかしながら、森林減少、先住権への攻撃と気候変動が脅威として存在することに変わりありません。私たちが再び生物多様性の喪失および気候危機に目を向けることができるようになった時、本報告書のデータや分析が上記の脅威に真剣に立ち向かうために役立つことを願っています。

動画(日本語字幕付き)

注1)新報告書「Keep Forests Standing: Exposing Brands and Banks Driving Deforestation」(英語)
*日本語要約版(5月14日追加)「「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」

注2)WHO, “Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report – 32”, 2020年2月21日

注3)UNEP, “Coronavirus outbreak highlights need to address threats to ecosystems and wildlife”, 2020年3月3日

注4)三菱UFJフィナンシャル・グループ「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」

※参考:RANプレスリリース「新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し『気候危機』を加速〜」、2020年1月29日

注5)花王「『持続可能なパーム油』の調達ガイドライン」 
「2019年の進捗『持続可能なパーム油』の調達ガイドラインの進捗 2020年の目標」

注6)コンシューマー・グッズ・フォーラム「Deforestation: Mobilising resources to help achieve zero net deforestation by 2020」(英語)

注7)「日清食品グループ 持続可能な調達方針」
「日清食品グループ 人権方針」
「持続可能なパーム油の調達」

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広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク』発表〜3メガ、炭素吸収源の熱帯林破壊に加担し「気候危機」を加速〜 (2020/1/29)

〜インドネシア森林火災、熱帯林と泥炭地破壊、違法行為や人権侵害への資金提供を調査〜

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日29日、新報告書『森林火災・違法行為とメガバンク:東南アジア顧客企業3社の事例」(注1)を発表し、日本のメガバンクが2019年のインドネシア森林火災と煙害(ヘイズ)に関与した農業関連企業や、森林と泥炭地を違法皆伐した農園開発企業への資金提供を通じて「気候危機を加速させている」と批判しました。

火災が起きている泥炭地に放水するヘリコプター、インドネシア・南スマトラ、2019年
提供:NOPRI ISMI/ MONGABAY INDONESIA

本報告書は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)3メガバンクの銀行業務について調査し、分析からは以下が明らかになりました。

  • ●3メガバンクは、2019年の森林火災への関与が理由でインドネシア政府に農園事業を凍結された農業関連企業に、合計で10億米ドルを超える融資・引受を2017年から2019年8月に行っていた。
  • ●上記企業への資金提供額は、みずほが最も多く4億6,600万米ドル、MUFGが4億1,500万米ドル、SMBCが2億100万米ドルだった。
  • ●3メガバンクと財務的つながりが特に強いのはシナルマス・グループ(3行合計で3億6,500万米ドルの資金提供)、サリム・グループ(同じく6億400万米ドル)、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(7,900万米ドル)といった、リスクの高い事業を展開している東南アジアの企業グループである。
2019年のインドネシア森林火災に関与した企業へのメガバンクからの資金の流れ
(2017年〜2019年8月の融資・引受額、単位:百万米ドル、出典:「森林と金融」データベース

RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「3メガバンクは世界中の石炭火力発電所建設に資金提供すると同時に、地球で最も重要な炭素吸収源である熱帯林と泥炭地の破壊にも資金提供しています。つまり、二重に気候危機を加速させているのです」と批判しました。2019年のインドネシアの火災で7億900万トンの温室効果ガスが排出されたと推計され(注2)、同国は一連の火災だけで世界6位の二酸化炭素排出国となりました。

また本報告書はシナル・マス・グループ、サリム・グループ、ジャーディン・マセソン・グループの3社を事例とし、熱帯林と泥炭地破壊、違法行為、汚職、土地権と労働権侵害の証拠がありながらメガバンクが資金提供を続けている現状も解説しています。ハイネケンは「3メガバンクは国連『責任銀行原則』(注3)に署名することで、経営戦略を『持続可能な開発目標』とパリ協定と合致させることを約束しました。しかし3メガバンクの現行の銀行業務は内部コンプライアンスが機能していないことを表し、このようなリスクは投資家にはほとんど開示されていません。メガバンクは口先だけでなく行動で示すときです」と訴えました。

本来、森林と土地は強力な炭素吸収源ですが、森林破壊と森林劣化によって農業や林業などの土地利用部門はエネルギー部門に次いで2番目に大きな排出源になっています。特に熱帯林と泥炭地は重要な炭素吸収源であり、泥炭地は1ヘクタールあたり2,600炭素トン以上(注4)を貯留してくれます。しかし紙パルプやパーム油生産におけるインドネシアの泥炭地破壊関連の二酸化炭素の年間排出量は大きく、石炭火力発電所70基分(注5)に相当します。

注1)RAN『森林火災・違法行為とメガバンク:東南アジア顧客企業3社の事例〜SDGsとパリ協定に沿った資金提供を〜』

注2)Yoga Rusmana, “Forest Fire Emissions From Indonesia Worse Than Amazon, EU Says”, Bloomberg, 2019年11月27日 (英語)

注3)NGO共同声明「グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜」2019年9月23日

注4)Frances Seymour and Jonah Busch, “BRIEFS: Why Forests? Why Now? A Preview of the Science, Economics, and Politics of Tropical Forests and Climate Change”, Center for Global Development, 2014年10月11日(英語)

注5)Nancy Harris Nancy Harris and Sarah Sargent, “Destruction of Tropical Peatland Is an Overlooked Source of Emissions”, 世界資源研究所、2016年4月21日

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メディア掲載:オルタナにRAN川上豊幸が寄稿しました(2019/12/27)

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナonline」にRAN川上豊幸がインドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務」を寄稿しました(2019年12月27日)

「2019年、日本でも大きく報道されたアマゾンの森林火災。しかし大規模な森林火災はアマゾンだけでなく、インドネシアでも起きていました。2019年のインドネシアの森林火災で排出された二酸化炭素の量は、アマゾンの火災による排出量を20%以上超えていました。(続きを読む)

NGO共同プレスリリース「新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜」 (2019/10/3)
〜インドネシア煙害深刻化、森林火災に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようNGOが要請〜

NGO共同プレスリリース:新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜 (2019/10/3)

〜インドネシア煙害深刻化、森林火災に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようNGOが要請

サンフランシスコ発ーーインドネシアのNGOとエンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、1日(現地時間)、新報告書『紛争パルプ材植林地:製紙企業アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)のインドネシア各地での紛争概要』(注1)を発表し、紙パルプ世界大手の一社であるAPPが、スマトラ島とボルネオ島の地域コミュニティとの間に起きている数百にのぼる紛争に関係していることを明らかにしました。過去約20年分の資料や記録を集めて分析した調査結果は、同国の5つの州だけで少なくとも107の村・地域コミュニティと、APP関連企業や供給企業との対立が起きたことを説明しています。本報告書は、インドネシアで現在深刻化している煙害(ヘイズ)に責任を負うべき企業の一つとして同社が名指しされた直後に発表されました(注2)

【調査結果】

  • 顕在的紛争(公になった紛争。報告があり特定された紛争)
    APP社とインドネシアの供給企業は107件の「顕在的紛争」に責任がある。紛争が集中している5州と州別内訳件数: リアウ州(50件)、ジャンビ州(30件)、南スマトラ州(16件)、西カリマンタン州(10件)、東カリマンタン州(1件)。
  • 顕在的紛争の理由
    慣習地をめぐる対立、暴力と脅迫や強制的な立退き、事業許可地域と村との境界の重複など。他にも、生計のために認められた事業許可地内での作物自給、企業とコミュニティ間のパートナーシップからの利益配分の不公平、コミュニティ内またはコミュニティ間の対立、作業要員からの村人の排除なども含まれる。
  • 潜在的紛争(植林地の開発により影響を受ける可能性が高い村やコミュニティの事例)
    APP供給企業の森林事業によって影響を受けた村々を分析し、事業許可地内または隣接する544の村で「潜在的紛争」が特定された。面積は2,536,110ヘクタールにのぼる。最も多いのはリアウ州(195村)、次にジャンビ州(120村)、西カリマンタン州(89村)、南スマトラ州(70村)、東カリマンタン州(70村)。

APP社のパルプ材植林地の拡大は批判の的になっており、土地収奪地元住民の立ち退き、時には残虐な暴力など、地域コミュニティに大きな社会的影響を与えてきました。また同社は、過去に危機的な森林火災にも関与していました。特にシンガポールは2015年に、10万人の早期死亡(注3)の原因となった可能性のある2015年の煙害とAPP社が深く関与していると判明した後、同社製品の販売を一時停止しました。APP社はこれらの社会紛争の全てを解決すると誓約を発表しました(注4)が、本新報告書においては、ほとんど進展を確認することはできませんでした。

インドネシアの環境NGO、WALHI(ワルヒ)・ジャンビ事務局長のルディアンシャは「この数ヵ月、森林火災と土地火災による煙害がスマトラ島とカリマンタン島の様々な地域に広がり、大気汚染を深刻化させています。APP社の事業許可地での森林火災による煙害の再発と、事業を行っている地域でのコミュニティとの数百の紛争は同社が誓約した方針の実行に失敗している証拠です」と批判しました。

APP社自身は、木材供給企業と地域コミュニティとの間に数百もの紛争が存在することを認めており、紛争が起きている場所を地図に落とし込み(注5)、自社事業に関連する土地紛争の49%を解決したと主張しています。しかし村の名前や場所、関係する地域の大きさ、過程の詳細、結果など、特定の情報は公開されていません。

EPNの構成団体であるレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の森林シニアキャンペーナー ブリアナラ・モーガンは「APP社は森林と地域コミュニティの保護を約束しましたが、現地の実態は違っています。地域コミュニティとの紛争と、今も起きている煙害は、APP社が森林、地域コミュニティ、そして気候を守るまでの道のりがまだ長いことを表しています。APP社は、現地の実情と報告内容とをきちんと一致させる必要があります。また、必要な変化を成し遂げる過程で偽りがないことを証明するためにも透明性が必要です」と強調しました。

インドネシアNGOによる独立調査の結果は、APP社が社会紛争解決のために誓約を実行している状態には程遠いことを明らかにしました。 同社は社会紛争に関する詳細な情報、及び供給企業の事業許可地内での生物多様性価値と泥炭地評価に関する詳細な報告書の共有を拒否しており、「完全な透明性」(注6)への誓約を守れていないことは大きな問題です。

【調査方法】
本調査の分析のために収集された記録は1996年から2017年の期間で発生した社会紛争の記録である。紛争は集落、地域コミュニティ、先住民族コミュニティの単位別に分類している。記録の情報源は以下の通りである。
 ・一般からの苦情通報
 ・影響を受けた地域コミュニティの人々からの情報
 ・メディア:紙媒体の切り抜きとオンライン記事
収集された記録は、衛星分析と現場での無作為抽出によってさらに検証されている。収集された記録と情報はインドネシアの5つの州 、リアウ、ジャンビ、南スマトラ、西カリマンタン、東カリマンタンを対象としている。

注1)『紛争パルプ材植林地』日本語要約版報告書全文(英語)*英語の報告書全文には、顕在的紛争の一覧(村・コミュニティ名、紛争の種類、紛争の対象となっている面積)が記載されています。

注2)Foresthints.news, “Spreading peat fires in APP concession causing haze”, September 22, 2019

注3)The Guardian, “Haze from Indonesian fires may have killed more than 100,000 people – study”, September 16, 2019

注4)APP, “Forest Conservation Policy

注5)APP, “Progress Monitoring Tool: Overview of Forest Conservation Policy”

注6)APP Forest Conservation Policy: One Year Summary, February 2014

エンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、140以上の市民団体で構成される世界的なネットワークで、「グローバルペーパービジョン」に向けて協力して活動しています。このビジョンは、紙の生産と使用が地球上の生命にきれいで健康的、かつ公正で持続可能な未来に貢献するよう、紙パルプ産業及び周辺社会に変革をもたらすという共通の目的を表しています。RANは構成団体の一つです。

レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。http://japan.ran.org

WALHI は、インドネシアで最も大きく歴史ある環境政策アドボカシーNGOです。国内31州の内27州に独立した事務所と草の根の構成団体があります。WALHIは、天然資源へのアクセスに関する農業紛争、先住民族の権利、森林破壊など多くの問題に取り組んでいます。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり(2019/9/9)

責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

2020年の東京五輪開幕まで1年を切りました。東京2020大会の主催者が「持続可能なオリンピックを開催する」という約束をしっかり守っているかどうか、今こそ現状を把握しなければなりません。

答えを一言でいうと、主催者は約束を守っていません。そして、自分たちの過ちを隠そうとしています。

NGOによる継続的なキャンペーンの成果で、東京2020組織委員会は競技会場の建設で使われた熱帯材合板の数量の情報を開示しました。その結果、21万枚以上もの膨大な量の熱帯林由来の合板が建設に使用されたことがわかり(2019年5月末時点)、私たちNGOは衝撃を受けました。そして、その半数以上が「新国立競技場」の建設で使われていたことも判明しました。実際「夢の島公園アーチェリー会場」を除いて、東京2020大会のために新たに建設されるほとんどの競技会場ではマレーシアまたはインドネシア産の熱帯材合板を使用しています。

2018年秋、レインフォレスト・アクション・ネットワークは、協力団体の TuKインドネシアとWALHIと行った共同調査で、東京五輪の主なコンクリート型枠サプライヤーであるコリンド社が、世界で最も豊かな生物多様性を誇る熱帯生態系で森林伐採を行ない、地域コミュニティの土地を違法に強奪していたことを明らかにしました。私たちは、コリンド社が住友林業を通じて供給した木材について、東京の五輪施設建設現場から、パーム油生産のために伐採されたインドネシアの原生林までのサプライチェーンを追跡しました。また、絶滅が危惧されるボルネオ島のオランウータンの生息地からも、コリンド社が木材を調達していたことも突き止めました。これは最悪の持続可能でない調達でした。現地を取材した映像をご覧ください。

*動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏
(Centre for Orangutan Protection 代表)

そこで私たちNGO3団体は、3つの五輪主催者(東京2020組織委員会、東京都、日本スポーツ振興センター(JSC))それぞれに2件の苦情を通報し、是正を求めました。さらに「ともだち」のオランウータンの「ストロベリー」といっしょに、サンフランシスコの日本国総領事館で要請文を手渡しました(動画)。そしてRAN会員らの協力を得て、東京五輪主催者が、森林減少、人権侵害、生息地喪失に拍車をかけていることを批判し、持続可能性についての約束を守るよう求める声を上げました。

東京2020組織委員会の名誉のために伝えておくと、一定の進展はあったものの、熱帯林を保護し、五輪の影響を受けている地域コミュニティの権利を尊重するには決して十分とは言えません。

2019年1月、東京2020組織員会は「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を改訂し、パーム油生産などのために大規模農園に転換された森林で伐採された木材の調達を明確に排除しました。国際オリンピック委員会(IOC)は「持続可能な調達に関する指針」(Olympic Games Guide on Sustainable Sourcing)を2019年4月に発表し、「森林減少ゼロ誓約に関する進捗状況をモニタリングし、保護価値の高い森林環境の保護を促進する調達方針」の採用を求めました。こうした対策は適切なように見えますが、結局は実施と執行状況次第です。残念なことに今年の7月、高リスクのマレーシア・サラワク州産熱帯材合板が、五輪施設の建設でいまだに使われていることがわかりました。東京2020組織員会ら主催者は、自分たちの調達方法の失敗を全く認めていないようです(参考:「持続可能性進捗状況報告書」)。

同様に懸念されるのは、東京五輪主催者がすでに起こした被害について、いまだに責任を問われていないという事実です。この記事を書いている時点で、私たちNGOが提出した6件の苦情のうち3件は却下され、そのうちの1件は非常に疑問の残る理由で却下されました。それは、コリンド社の木材使用に関して、有明アリーナを管轄する東京都に通報した苦情です。通報してから音沙汰がないまま数カ月が経った後に、木材供給会社から受け取った情報と矛盾するという理由で却下されました。しかもそれはNGOの苦情が通報された「後」に会社から提供された情報で、私たちには開示できないと言われました。この苦情が対象案件として正式には受理されないままとなっていたにも関わらずです。これは「苦情処理メカニズム」のあるべき姿ではありません。少なくとも、世界で通用する国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に説明されている原則に沿っていません。皮肉なことに、日本政府も東京2020組織委員会いずれもこの指導原則を支持しており、彼らの言葉と行動が一致していないことは明らかです。

では、私たちは何をしてきたのでしょうか? まず第一段階として、国際オリンピック委員会(IOC)に上記の問題を提起しました。定期的に開催されるIOCと東京2020主催者の間の調整委​​員会合の数日前に、私たちは東京五輪の苦情処理メカニズムが実際に機能しているか、また「ビジネスと人権に関する指導原則」と一致しているかどうかを、徹底的に調査するよう求める書簡 を送りました。

一方で、私たちNGOは、木材以外で熱帯林と人権をおびやかすような東京五輪の調達事例、特に紙・パルプおよびパーム油の調達にも注意を払っています。ご存知の通り、日本は、炭素集約度の高いインドネシアの熱帯泥炭地で生産されたパルプを原料とする紙製品の大量消費国です。また、ますます多くの日本企業が自社製品にパーム油を使用するようになっています。そのため、今すぐ行動しなければ、東京五輪によってさらなる被害が熱帯林に及ぶことが非常に現実的になっています。

東京五輪に関する話題はまだ続きます。

動画「東京五輪開幕まで1年 熱帯林の破壊をやめて!」アピール行動
(2019年7月、東京国際フォーラム前にて)

英語のブログはこちら(2019/8/7)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)