サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘土地紛争’カテゴリーの記事一覧

NGO共同プレスリリース:新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜 (2019/10/3)

〜インドネシア煙害深刻化、森林火災に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようNGOが要請

サンフランシスコ発ーーインドネシアのNGOとエンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、1日(現地時間)、新報告書『紛争パルプ材植林地:製紙企業アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)のインドネシア各地での紛争概要』(注1)を発表し、紙パルプ世界大手の一社であるAPPが、スマトラ島とボルネオ島の地域コミュニティとの間に起きている数百にのぼる紛争に関係していることを明らかにしました。過去約20年分の資料や記録を集めて分析した調査結果は、同国の5つの州だけで少なくとも107の村・地域コミュニティと、APP関連企業や供給企業との対立が起きたことを説明しています。本報告書は、インドネシアで現在深刻化している煙害(ヘイズ)に責任を負うべき企業の一つとして同社が名指しされた直後に発表されました(注2)

【調査結果】

  • 顕在的紛争(公になった紛争。報告があり特定された紛争)
    APP社とインドネシアの供給企業は107件の「顕在的紛争」に責任がある。紛争が集中している5州と州別内訳件数: リアウ州(50件)、ジャンビ州(30件)、南スマトラ州(16件)、西カリマンタン州(10件)、東カリマンタン州(1件)。
  • 顕在的紛争の理由
    慣習地をめぐる対立、暴力と脅迫や強制的な立退き、事業許可地域と村との境界の重複など。他にも、生計のために認められた事業許可地内での作物自給、企業とコミュニティ間のパートナーシップからの利益配分の不公平、コミュニティ内またはコミュニティ間の対立、作業要員からの村人の排除なども含まれる。
  • 潜在的紛争(植林地の開発により影響を受ける可能性が高い村やコミュニティの事例)
    APP供給企業の森林事業によって影響を受けた村々を分析し、事業許可地内または隣接する544の村で「潜在的紛争」が特定された。面積は2,536,110ヘクタールにのぼる。最も多いのはリアウ州(195村)、次にジャンビ州(120村)、西カリマンタン州(89村)、南スマトラ州(70村)、東カリマンタン州(70村)。

APP社のパルプ材植林地の拡大は批判の的になっており、土地収奪地元住民の立ち退き、時には残虐な暴力など、地域コミュニティに大きな社会的影響を与えてきました。また同社は、過去に危機的な森林火災にも関与していました。特にシンガポールは2015年に、10万人の早期死亡(注3)の原因となった可能性のある2015年の煙害とAPP社が深く関与していると判明した後、同社製品の販売を一時停止しました。APP社はこれらの社会紛争の全てを解決すると誓約を発表しました(注4)が、本新報告書においては、ほとんど進展を確認することはできませんでした。

インドネシアの環境NGO、WALHI(ワルヒ)・ジャンビ事務局長のルディアンシャは「この数ヵ月、森林火災と土地火災による煙害がスマトラ島とカリマンタン島の様々な地域に広がり、大気汚染を深刻化させています。APP社の事業許可地での森林火災による煙害の再発と、事業を行っている地域でのコミュニティとの数百の紛争は同社が誓約した方針の実行に失敗している証拠です」と批判しました。

APP社自身は、木材供給企業と地域コミュニティとの間に数百もの紛争が存在することを認めており、紛争が起きている場所を地図に落とし込み(注5)、自社事業に関連する土地紛争の49%を解決したと主張しています。しかし村の名前や場所、関係する地域の大きさ、過程の詳細、結果など、特定の情報は公開されていません。

EPNの構成団体であるレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の森林シニアキャンペーナー ブリアナラ・モーガンは「APP社は森林と地域コミュニティの保護を約束しましたが、現地の実態は違っています。地域コミュニティとの紛争と、今も起きている煙害は、APP社が森林、地域コミュニティ、そして気候を守るまでの道のりがまだ長いことを表しています。APP社は、現地の実情と報告内容とをきちんと一致させる必要があります。また、必要な変化を成し遂げる過程で偽りがないことを証明するためにも透明性が必要です」と強調しました。

インドネシアNGOによる独立調査の結果は、APP社が社会紛争解決のために誓約を実行している状態には程遠いことを明らかにしました。 同社は社会紛争に関する詳細な情報、及び供給企業の事業許可地内での生物多様性価値と泥炭地評価に関する詳細な報告書の共有を拒否しており、「完全な透明性」(注6)への誓約を守れていないことは大きな問題です。

【調査方法】
本調査の分析のために収集された記録は1996年から2017年の期間で発生した社会紛争の記録である。紛争は集落、地域コミュニティ、先住民族コミュニティの単位別に分類している。記録の情報源は以下の通りである。
 ・一般からの苦情通報
 ・影響を受けた地域コミュニティの人々からの情報
 ・メディア:紙媒体の切り抜きとオンライン記事
収集された記録は、衛星分析と現場での無作為抽出によってさらに検証されている。収集された記録と情報はインドネシアの5つの州 、リアウ、ジャンビ、南スマトラ、西カリマンタン、東カリマンタンを対象としている。

注1)『紛争パルプ材植林地』日本語要約版報告書全文(英語)*英語の報告書全文には、顕在的紛争の一覧(村・コミュニティ名、紛争の種類、紛争の対象となっている面積)が記載されています。

注2)Foresthints.news, “Spreading peat fires in APP concession causing haze”, September 22, 2019

注3)The Guardian, “Haze from Indonesian fires may have killed more than 100,000 people – study”, September 16, 2019

注4)APP, “Forest Conservation Policy

注5)APP, “Progress Monitoring Tool: Overview of Forest Conservation Policy”

注6)APP Forest Conservation Policy: One Year Summary, February 2014

エンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、140以上の市民団体で構成される世界的なネットワークで、「グローバルペーパービジョン」に向けて協力して活動しています。このビジョンは、紙の生産と使用が地球上の生命にきれいで健康的、かつ公正で持続可能な未来に貢献するよう、紙パルプ産業及び周辺社会に変革をもたらすという共通の目的を表しています。RANは構成団体の一つです。

レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。http://japan.ran.org

WALHI は、インドネシアで最も大きく歴史ある環境政策アドボカシーNGOです。国内31州の内27州に独立した事務所と草の根の構成団体があります。WALHIは、天然資源へのアクセスに関する農業紛争、先住民族の権利、森林破壊など多くの問題に取り組んでいます。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜 (2019/9/23)

東京 — 環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)らNGO21団体は、本日23日(日本時間)、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が支援する責任銀行原則(PRB)の22日の発足をうけて、銀行セクター主導の新イニシアティブを慎重に歓迎しつつ、実質的な好結果を伴うよう要求しました。責任銀行原則には日本の3メガバンクと三井住友信託銀行を含む130銀行が署名しています。*9月24日更新:NGO25団体

責任銀行原則発足のイベントが開催されたBNPパリバ・ニューヨーク支店前でのアクション(2019/9/23)

上記の通り、日本の大手4銀行は国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束しています。その事実には勇気づけらますが、現在の4行の資金提供、特にメガバンクによる資金提供は、グローバルなイニシアティブである責任銀行原則と明らかに矛盾しています。メガバンクによる化石燃料企業や熱帯林を破壊する企業への資金提供、特に東南アジアにおける石炭火力とパーム油への多額の資金提供は、気候危機と自然環境の前例のない悪化を促進しています。メガバンクの資金提供は土地収奪や労働者の権利侵害にもつながっています。

メガバンクと三井住友信託銀行が責任銀行原則の公約を果たすには、化石燃料の拡大や、森林破壊または泥炭地破壊を引き起こす事業への資金提供を直ちに停止し、「1.5度目標」に合致して、化石燃料セクターと森林リスク産品セクターへの資金提供の段階的廃止を約束し、国連のビジネスと人権に関する指導原則の全ての要件を満たすことで事業全体を通して人権と先住民の権利を尊重することが必要です。

NGO共同声明:国連「責任銀行原則」発足をうけて
グリーンウォッシュはもういらない 、好結果がともなう原則を

2019年9月22日

(PDF) (英語の声明)

私たち、以下の署名団体は、本日22日に発足した国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が支援する「責任銀行原則」(PRB)を歓迎します。しかし同時に、この銀行主導によるイニシアティブの有効性には強い懸念を抱いています。

世界は数多くの重大な社会危機と環境危機に瀕しており、地球上の生命の存在そのものが脅かされています。そのため、各銀行が社会および環境に関する責任を自覚し、持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束することが何よりも重要です。本日、130の銀行がこれを公約したことをうれしく思います。

同時に私たちは、この新しい原則が人と地球にどのような好影響をもたらすかについては強い懸念があります。現在策定されている原則には、署名銀行に期待されることと、その達成期限については大きな自由裁量の余地があります。よって、多くのPRB署名銀行を含む、金融セクターの大多数が地球環境の破壊や重大な人権侵害を加速させているという事実が覆い隠され、PRBもまた、環境・社会に配慮しているかのように見せかけた「グリーンウォッシュ」の手段となる恐れがあります。

長期に及んだPRBの策定・署名段階は、BNPパリバのニューヨーク支店での公式発足をもって終わりを迎えます。PRBの創立に参加した30銀行には同原則の導入計画を打ち出す時間が十分にありました。しかし、原則への賛同にあたって発表された各銀行の多数の声明と比較して、これまでのところ、多くのPRB銀行は具体的な計画や誓約の公表していません。

残念なことに、このイニシアティブでは賛同する全ての銀行に野心的かつ具体的な計画と目標の提示を正式署名前に求めておらず、署名銀行は4年以内に原則の実施を証明すればよいことになっています。このような期間設定は、30年前であれば許容されたかもしれません。しかし、今の時代には全くそぐわないものと考えます。

このように必要条件が事前に課されていないため、金融セクターを監視する市民団体であるバンクトラックはこの数週間、PRBを創立した30銀行および早期に署名した29銀行に、各銀行の目標と実行計画を公開することで、PRB発足後すぐに本腰を入れて取り組む よう要請しました。しかし計画を公開して信頼を高める機会とする代わりに、大多数のPRB創立銀行はその要請に無反応か、UNEP FIが起草した定型文を繰り返し、PRBでは長期の導入期間が認められているため現時点での計画の公開は不要だという回答が出されただけでした。

PRB署名銀行の資金提供が招く気候問題と森林破壊

化石燃料産業と森林リスク産品事業の拡大により、気候や自然生態系、人々の生活に大規模な破壊がもたらされています。一部のPRB署名銀行の資金提供が 依然として上記事業の重大な推進要因であることを考えると、緊急行動がますます切実に必要です。

パリ協定採択後の3年間(2016~2018年)で、世界の主要33銀行(内16行はPRB署名銀行)は化石燃料セクターに1.9兆ドルの貸付と引受を行い、その金額は年々増加しています。この内6000億ドルは、化石燃料を積極的に拡大している上位100社に提供されました。PRB署名銀行であるシティグループ、バークレイズ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) 、みずほフィナンシャルグループ(みずほ) はいずれも、パリ協定以降に化石燃料セクターへ融資を行った世界の上位10銀行に入ります。

世界の大手銀行 は、東南アジアやアマゾンの生物多様性が最も豊かな熱帯林地域を含め、世界中の森林の急速な消失にも拍車をかけています。2013年から2018年6月までの間に、多くはパーム油事業を行っている東南アジアを拠点とする103社の森林リスク産品事業に対し、少なくとも622億ドルの貸付と引受が行われました。PRB署名銀行である三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほ、MUFG、中国工商銀行(ICBC) 、CIMBグループ は、これらの企業に融資する業界上位の金融機関です。また、PRB署名企業のBNPパリバ、バークレイズ、シティ、INGグループ 、クレディ・アグリコル も、最近のアマゾンの森林火災に関与しているアグリビジネス企業数社に数十億ドルの与信枠を供与しています(詳細は以下を参照)。

無視される人権への責任

PRB署名銀行を含む世界の大手銀行は土地収奪や、紛争を助長して一般市民に死傷者を出すような武器製造、先住民族の権利を侵害するプロジェクトへの融資に関与しています。しかしPRBでは、銀行には人権尊重の責任があり、それはいかなる場所でも企業の基本要件であることが明記されておらず、基本的な人権方針さえ持たないPRB創立銀行もあります。

PRBは銀行の事業戦略をSDGsやパリ協定に沿ったものとすることを約束させていますが、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)については言及していません。そのため、金融セクターにおいて人権の尊重を推進する大きな機会を逃しています。それどころか、PRBは人権分野におけるUNEP FIの他のイニシアティブを台無しにし、人権をまったく無視しても「責任ある銀行」となりえるという印象を与える恐れがあります。

好結果をともなう原則を

本日、130の銀行が、SDGsやパリ協定の目標達成という大きな社会的目標に、銀行としての自社事業を沿うものとし、目標達成に向けて顧客と協働し、あらゆる利害関係者とともに前進する方法を探ることを公約しました。

事業戦略をSDGsやパリ協定に真に沿ったものとするためには、全てのPRB署名銀行は、化石燃料の拡大や森林・泥炭地の破壊を加速させるあらゆる活動への資金提供を即時停止することを約束しなければならないと固く信じています。また、PRB署名銀行は、自社の資金提供がもたらす影響の包括的な分析と投融資先企業およびプロジェクトの完全な透明性を基盤とし、気温上昇を1.5度に抑えるための道筋に沿って 、化石燃料産業と森林リスク産品事業への投融資の段階的停止を約束しなければなりません。そして最後に、PRB署名銀行はUNGPに準拠した苦情処理メカニズムの確立やメカニズムへの参加を含め、UNGPの全ての要件を満たす必要があることを強調しておきます。

以上のように憂慮はありますが、私たち署名団体は同原則の発展を注意深く見守り、利害関係者との対話に関するPRB原則4の精神に基づいて、署名銀行と市民団体との対話が今後行われることを期待し、歓迎します。私たちは、署名銀行がどれだけ迅速に化石燃料や森林破壊への資金提供を停止し、金融業務を通じて人権および先住民族の権利が確実に尊重されるよう行動を起こせるかに注目し 、PRBの妥当性および信頼性を評価していきます。

***

PRBコミットメントと代表的なPRB署名銀行による資金調達との整合性評価

PRBに署名している銀行で、以下の8銀行は資金提供業務が持続可能ではなく、PRBの誓約と大きな隔たりがあるため、特に注意を払う必要があります。

銀行*=PRB創立銀行
資金提供(融資と引受)とPRBの不整合(B=十億)

シティグループ(米国)*

●世界3位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $129.5B)
●世界2位:化石燃料拡大企業上位100社への資金提供(2016-2018年: $40.0B)
●世界5位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $4.4B)
● アマゾンの森林破壊に関係がある産品取引業者への主な資金提供者

中国工商銀行/ICBC(中国)*

● 世界2位:石炭火力企業 上位30社への資金提供
● 3位:東南アジアで事業を行う紙パルプ企業への資金提供 (2013-2018年: $1.4B)、主に泥炭地破壊、森林火災、社会紛争、違法行為、汚職に関係がある企業

バークレイズ(英国)

●  世界6位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $85.2B)
● 欧州で首位:シェールオイル・ガス企業 上位40社への資金提供、石炭火力企業 上位30社への資金提供
● アマゾンの森林破壊に関係がある産品取引業者への主な資金提供者

CIMB(マレーシア)*

●   世界4位:東南アジアでのパーム油事業への資金提供 (2013-2018年:$1.9B) 

BNPパリバ(フランス)*

●   フランス首位:先進的な資金提供方針にも関わらず、化石燃料産業全体への資金提供(2016-2018年: $51.0B)
● フランス首位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $1.5B)
● アマゾンの森林破壊に関係がある産品取引業者への最大の資金提供者

MUFG(日本)

●  日本首位:パーム油企業への資金提供者(2013-2018年: $2.2B)、違法行為、汚職、森林破壊、搾取に関係がある問題企業を含む
● 世界7位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $80.0B)
● 世界6位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $3.5B)

みずほ(日本)

●  世界3位:東南アジアの森林リスク産品企業への資金提供 (2013-2018年: $3B)、違法行為、森林破壊、搾取に関係がある問題企業を含む
●  世界10位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $67.7B)
● 世界8位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $3.1B)

SMBC (日本)

●  世界1位:東南アジアの森林リスク産品企業への資金提供 (2013-2018年: $4.5B),、違法行為、森林破壊、搾取に関係がある問題企業を含む
● 世界3位:北極圏の石油・ガス企業 上位30社とLNG輸出ターミナル 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $921M, $3.3B)
● 東南アジアでの問題となっている石炭火力プロジェクトへの資金提供者

注)資金提供に関する出典
・レインフォレスト・アクション・ネットワーク他「化石燃料ファイナンス成績表2019」(2019年4月)
・レインフォレスト・アクション・ネットワーク他「森林と金融」データベース

・アマゾンウォッチ、“Complicity In Destruction II: How Northern Consumers and FinanciersEnable Bolsonaro’s Assault on the Brazilian Amazon”, (2019年4月)

署名団体

Johan Frijns
Executive Director
BankTrack

Lindsey Allen
Executive Director
Rainforest Action Network

Osprey Orielle Lake
Founder/Executive Director
Women’s Earth and Climate Action Network (WECAN)

Leila Salazar-López
Executive Director
Amazon Watch

Jennifer Morgan
International Executive Director
Greenpeace

Evert Hassink
Senior Campaigner
Milieudefensie – Friends of the Earth Netherlands

Kuba Gogolewski
Project Coordinator and Senior Finance Campaigner
Fundacja “Rozwoj TAK – Odkrywki NIE”

Andy Whitmore
Co-Chair
London Mining Network

Jan Willem van Gelder
Director
Profundo

満田夏花
国際環境NGO FoE Japan 事務局長

Alexey Zimenko
Director General
Biodiversity Conservation Center

Hrant Sargsyan
Chairman
Eco-club ‘Tapan’

Sviatoslav Zabelin
Coordinator
Socio-ecological Union International

Edi Sutrisno
Executive Director
TuK Indonesia

Zanaa Jurmed
Board Director
Oyu Tolgoi Watch

Eugene Simonov
Coordinator
Rivers Without Boundaries International Coalition

Heffa Schuecking
Director
urgewald

Andreas Missbach
Joint Managing Director
Public Eye

David Pred
Executive Director
Inclusive Development International

Olivia Langhoff
Director of Global Programmes
350.org

Shonan Kothari
Convener
Change Finance

Steve Kretzmann
Executive Director
Oil Change International

(以下、9月24日に追加)
Tom B.K. Goldtooth
Executive Director
Indigenous Environmental Network

Carla Fredericks
Director
First Peoples Worldwide

Khaled Gaiji
President
Friends of the Earth France

David Hillman
Director
Stamp Out Poverty

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり(2019/9/9)

責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

2020年の東京五輪開幕まで1年を切りました。東京2020大会の主催者が「持続可能なオリンピックを開催する」という約束をしっかり守っているかどうか、今こそ現状を把握しなければなりません。

答えを一言でいうと、主催者は約束を守っていません。そして、自分たちの過ちを隠そうとしています。

NGOによる継続的なキャンペーンの成果で、東京2020組織委員会は競技会場の建設で使われた熱帯材合板の数量の情報を開示しました。その結果、21万枚以上もの膨大な量の熱帯林由来の合板が建設に使用されたことがわかり(2019年5月末時点)、私たちNGOは衝撃を受けました。そして、その半数以上が「新国立競技場」の建設で使われていたことも判明しました。実際「夢の島公園アーチェリー会場」を除いて、東京2020大会のために新たに建設されるほとんどの競技会場ではマレーシアまたはインドネシア産の熱帯材合板を使用しています。

2018年秋、レインフォレスト・アクション・ネットワークは、協力団体の TuKインドネシアとWALHIと行った共同調査で、東京五輪の主なコンクリート型枠サプライヤーであるコリンド社が、世界で最も豊かな生物多様性を誇る熱帯生態系で森林伐採を行ない、地域コミュニティの土地を違法に強奪していたことを明らかにしました。私たちは、コリンド社が住友林業を通じて供給した木材について、東京の五輪施設建設現場から、パーム油生産のために伐採されたインドネシアの原生林までのサプライチェーンを追跡しました。また、絶滅が危惧されるボルネオ島のオランウータンの生息地からも、コリンド社が木材を調達していたことも突き止めました。これは最悪の持続可能でない調達でした。現地を取材した映像をご覧ください。

*動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏
(Centre for Orangutan Protection 代表)

そこで私たちNGO3団体は、3つの五輪主催者(東京2020組織委員会、東京都、日本スポーツ振興センター(JSC))それぞれに2件の苦情を通報し、是正を求めました。さらに「ともだち」のオランウータンの「ストロベリー」といっしょに、サンフランシスコの日本国総領事館で要請文を手渡しました(動画)。そしてRAN会員らの協力を得て、東京五輪主催者が、森林減少、人権侵害、生息地喪失に拍車をかけていることを批判し、持続可能性についての約束を守るよう求める声を上げました。

東京2020組織委員会の名誉のために伝えておくと、一定の進展はあったものの、熱帯林を保護し、五輪の影響を受けている地域コミュニティの権利を尊重するには決して十分とは言えません。

2019年1月、東京2020組織員会は「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を改訂し、パーム油生産などのために大規模農園に転換された森林で伐採された木材の調達を明確に排除しました。国際オリンピック委員会(IOC)は「持続可能な調達に関する指針」(Olympic Games Guide on Sustainable Sourcing)を2019年4月に発表し、「森林減少ゼロ誓約に関する進捗状況をモニタリングし、保護価値の高い森林環境の保護を促進する調達方針」の採用を求めました。こうした対策は適切なように見えますが、結局は実施と執行状況次第です。残念なことに今年の7月、高リスクのマレーシア・サラワク州産熱帯材合板が、五輪施設の建設でいまだに使われていることがわかりました。東京2020組織員会ら主催者は、自分たちの調達方法の失敗を全く認めていないようです(参考:「持続可能性進捗状況報告書」)。

同様に懸念されるのは、東京五輪主催者がすでに起こした被害について、いまだに責任を問われていないという事実です。この記事を書いている時点で、私たちNGOが提出した6件の苦情のうち3件は却下され、そのうちの1件は非常に疑問の残る理由で却下されました。それは、コリンド社の木材使用に関して、有明アリーナを管轄する東京都に通報した苦情です。通報してから音沙汰がないまま数カ月が経った後に、木材供給会社から受け取った情報と矛盾するという理由で却下されました。しかもそれはNGOの苦情が通報された「後」に会社から提供された情報で、私たちには開示できないと言われました。この苦情が対象案件として正式には受理されないままとなっていたにも関わらずです。これは「苦情処理メカニズム」のあるべき姿ではありません。少なくとも、世界で通用する国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に説明されている原則に沿っていません。皮肉なことに、日本政府も東京2020組織委員会いずれもこの指導原則を支持しており、彼らの言葉と行動が一致していないことは明らかです。

では、私たちは何をしてきたのでしょうか? まず第一段階として、国際オリンピック委員会(IOC)に上記の問題を提起しました。定期的に開催されるIOCと東京2020主催者の間の調整委​​員会合の数日前に、私たちは東京五輪の苦情処理メカニズムが実際に機能しているか、また「ビジネスと人権に関する指導原則」と一致しているかどうかを、徹底的に調査するよう求める書簡 を送りました。

一方で、私たちNGOは、木材以外で熱帯林と人権をおびやかすような東京五輪の調達事例、特に紙・パルプおよびパーム油の調達にも注意を払っています。ご存知の通り、日本は、炭素集約度の高いインドネシアの熱帯泥炭地で生産されたパルプを原料とする紙製品の大量消費国です。また、ますます多くの日本企業が自社製品にパーム油を使用するようになっています。そのため、今すぐ行動しなければ、東京五輪によってさらなる被害が熱帯林に及ぶことが非常に現実的になっています。

東京五輪に関する話題はまだ続きます。

動画「東京五輪開幕まで1年 熱帯林の破壊をやめて!」アピール行動
(2019年7月、東京国際フォーラム前にて)

英語のブログはこちら(2019/8/7)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

メディア掲載:グローバルネットでRAN川上豊幸が寄稿しました(2019/8/30更新)

グローバルネット「特集/世界は森林減少を止められるか?-持続可能な森林利用への道」にRAN日本代表 川上豊幸が「地上に残された貴重な森『ルーセル・エコシステム』が破壊の危機に」を寄稿しました(2019年5月15日、8月30日更新)

「ルーセル・エコシステム」は、インドネシア・スマトラ島北部に位置し、まとまった形で残されたアジア最大の熱帯林地帯の一つです。長野と新潟の2県の広さに匹敵する約260万haの広大な地域に、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが大自然の中で共存する地球上で最後の場所です。(記事を読む)

関連:署名「五輪スポンサー日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜問題あるパーム油を使わないで〜」

オンライン署名実施中

メディア掲載:オルタナでRAN東京五輪木材関連の通報が紹介されました(2019/7/26)

オルタナ「住友林業など『五輪調達基準違反』NGOが告発」(2019年7月26日)〜RAN報告書「守られなかった約束」と東京五輪当局への通報が紹介されました〜

「東京五輪の開催まで1年となる24日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国、以下RAN)は、木材調達基準の問題を改めて告発する声明を発表した。RANは昨年11月、新国立競技場などの建設で調達基準に違反した木材が使われているとして、インドネシアで伐採事業を行うコリンド・グループと住友林業を含む供給事業者を東京都、東京2020組織委員会などへ通報。その後当局からは十分な説明が行われていないという。続きを読む

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

メディア掲載:【動画】Our Planet-TVでRAN東京五輪木材関連のアクションが紹介されました(2019/7/25)

Our Planet-TV 「都内で五輪抗議アクション~東京五輪1年前」(2019年7月25日)〜RAN「東京五輪、熱帯林の破壊をやめて」バナーアクションが紹介されました〜

「東京五輪開催まであと1年となった24日、2020年大会組織委員会は東京国際フォーラムで記念セレモニーを開催し、準備が順調に進んでいることをアピールした。一方で、華やかな五輪の影で起きている環境問題や労働問題、貧困者の追い出しなどについて、市民らが抗議の声を上げた。 続きを読む 」

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害〜東京五輪開幕まで1年〜」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)