サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘オリンピック’カテゴリーの記事一覧

メディア掲載:オルタナでRAN東京五輪木材関連の通報が紹介されました(2019/7/26)

オルタナ「住友林業など『五輪調達基準違反』NGOが告発」(2019年7月26日)〜RAN報告書「守られなかった約束」と東京五輪当局への通報が紹介されました〜

「東京五輪の開催まで1年となる24日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国、以下RAN)は、木材調達基準の問題を改めて告発する声明を発表した。RANは昨年11月、新国立競技場などの建設で調達基準に違反した木材が使われているとして、インドネシアで伐採事業を行うコリンド・グループと住友林業を含む供給事業者を東京都、東京2020組織委員会などへ通報。その後当局からは十分な説明が行われていないという。続きを読む

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

メディア掲載:【動画】Our Planet-TVでRAN東京五輪木材関連のアクションが紹介されました(2019/7/25)

Our Planet-TV 「都内で五輪抗議アクション~東京五輪1年前」(2019年7月25日)〜RAN「東京五輪、熱帯林の破壊をやめて」バナーアクションが紹介されました〜

「東京五輪開催まであと1年となった24日、2020年大会組織委員会は東京国際フォーラムで記念セレモニーを開催し、準備が順調に進んでいることをアピールした。一方で、華やかな五輪の影で起きている環境問題や労働問題、貧困者の追い出しなどについて、市民らが抗議の声を上げた。 続きを読む 」

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害〜東京五輪開幕まで1年〜」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害」〜東京五輪開幕まで1年〜 (2019/7/24)

〜IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 「東京五輪のレガシー」としないために〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日24日、東京五輪開幕まで1年となることを受けて、「問題のある木材も利用可能とした調達基準と、それを許している通報制度を『東京五輪のレガシー』とすべきではない」とし、以下の声明を発表しました。

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

東京五輪開幕まで、あと1年と迫ってきました。 

 東京五輪会場の建設用の木材調達について、私たちNGOはインドネシアやマレーシアでの熱帯林破壊から人権侵害まで、様々な問題を指摘してきました。その結果、東京2020大会の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」は今年1月に改訂されました。しかしその基準は、問題ある企業からの高リスクの木材をサプライヤー企業が利用し続けることが可能となっており、大きな抜け穴を残したままです。開幕まで1年となった今月においても、競技会場の建設現場で熱帯材が使い続けられていることが確認されています(注1)。

 加えて、木材調達基準の遵守状況を確認する「通報受付窓口」の体制も脆弱です。例えば、NGOの調査で、森林減少を引き起こす農地等への転換に由来する木材である「転換材」が建設事業に利用されていたことが明らかになりました。RANなどNGOは「転換材は持続可能でない」とし、昨年11月末に「調達方針の不遵守」として、東京2020組織委員会、および各施設を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)と東京都に複数回にわたって通報を行いました。しかし、いまだに説明責任は果たされていません。ある通報では、本来のプロセスを逸脱して、通報者である私たちNGOからの情報収集は行なわず、サプライヤー企業の情報にのみ基づいた不公平な判断を行なって、処理開始の案件としませんでした。別の件では、8ヵ月に渡り処理開始の判断がないままの状況にあり、通報の処理体制でも問題が顕在化しています(注2)

 問題のある木材も利用可能とした調達基準、そして、それを許している通報制度を「東京五輪のレガシー」とすべきではありません。持続可能性の観点からどのような問題や課題があったのかを明らかにした上、引き継ぐべきレガシーを考えるべきです。

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、ターゲット15.2で2020年までに森林減少を阻止することが明確に示されています。そのためには、森林減少の大きな要因である農園開発や産業植林のための土地転換を食い止めることが必須です。

 RANは、東京五輪開催までの1年、今後も調達対象となるパーム油や紙パルプ製品についても二度と森林減少を引き起こさないよう、「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害」の実現に向けて活動を進めていきます。

*7月18日(米国時間)、RANは、国際オリンピック委員会へ「東京2020大会の通報制度への深刻な懸念(Subject: Serious Concers regarding Tokyo 2020 Grievance Meganisms)」文書(英語)を電子メールで送付し、東京五輪の通報制度が国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の原則(31. 非司法的苦情処理メカニズムのための実効性の要件)に反していることを指摘しました(コミュニケーション不足:透明性、予測可能性、説明責任。手順を逸脱したサプライヤーの情報に基づく不公平な判断:正当性、公平性)。

動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏(Centre for Orangutan Protection 代表)


注1)マレーシア サラワク州産の合板(タ・アン社製)が代々木競技場で確認(7月15日)
注2)「熱帯材合板: 東京五輪木材調達基準違反に関する通報」概要&一覧(7月26日改訂版)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org


地上に残された貴重な森「ルーセル・エコシステム」が破壊の危機に(2019/5/15)

日本代表 川上 豊幸
(本記事は地球・人間環境フォーラム『グローバルネット』(2019年5月号)に寄稿したものです)

「ルーセル・エコシステム」は、インドネシア・スマトラ島北部に位置し、まとまった形で残されたアジア最大の熱帯林地帯の一つです。長野と新潟の2県の広さに匹敵する約260万haの広大な地域に、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが大自然の中で共存する地球上で最後の場所です。この豊かな生物多様性ホットスポットは、良質な水の安定供給、漁業に最適な環境、洪水や干ばつの防止、農業に適した気候に加え、小規模分散型の水力発電の可能性、観光にもってこいの自然美、生物多様性の提供など、地域社会の経済や地球の気候や環境にとって重要な利益をもたらしています。山岳地帯は世界遺産に指定されていますが、森林地帯はパーム油や紙の原料を得るためのプランテーション開発の危機にさらされており、保全を求める声が世界から集まっています。

生物多様性の重要性とルーセルの二つの森

科学者や自然保護活動家たちは多くの理由から、ルーセル・エコシステムを「保護価値の高い(HCV)」地域に分類しています。この地域には山地林と低地林の2種類の森林があります。山地林には絶滅の危機に瀕する希少種のスマトラサイが生息し、野生では100個体以下しか残っていません。またスマトラサイが餌とする多様な植物が生育し、種の生存にも不可欠です。シカ、クマ、トラ、ウンピョウなどの大型動物も生息しています。低地林も重要で、ルーセル・エコシステムで最も高い生物多様性が存在しています。世界で最大かつ最も背が高い花の2種、ラフレシアとスマトラオオコンニャクが見られ、また地域で最も樹高のある木々が育ち、スマトラオランウータン、トラ、ゾウ、サイなどの絶滅危惧種やマレーグマに貴重な生息地を提供しています。さらに、ウンピョウ、サイチョウ、また、多くの種類の霊長類や、サル、シカ、昆虫、両生類、爬虫類、鳥類の個体群を支えています。

絶滅が危惧されているスマトラオランウータン (©Paul Hilton/RAN)

地球規模の気候変動に効果のある「炭素貯蔵吸収スポンジ」

ルーセル・エコシステムには、何十億tもの高濃度炭素を蓄えた三つの主な泥炭地、トリパ、シンキル、クルエットがあります。その泥炭の深さは12m以上に達し、面積は香川県ほどの約18.4万ha以上に達します。これらの泥炭地では木が自然に枯れて、湿った地面に倒れ、通年浸水しているため、木々の落ち葉や枝、倒れた幹はゆっくりと炭素豊かな泥炭へと変化します。こうして何世紀にもわたって、水の下の深い泥炭堆積物の中に炭素が貯蔵され、隔離された炭素は放出されず、地球温暖化の緩和に役立っています。一方で、泥炭地が農地転換され、排水されると、大規模な酸化で炭素が一気に大気へ放出され、温暖化を進める二酸化炭素(CO2)が大気に蓄積されてしまうのです。

アブラヤシ農園の開発による森林破壊とパーム油

過去30年間、大規模アブラヤシ農園企業と紙パルプ企業が、農園や植林地を拡大するため、数百万haもの泥炭地で森林を伐採し排水してきました。乾燥した泥炭は可燃性が高く、度重なる火災で膨大な量のCO2が放出されます。インドネシアの泥炭火災のCO2の排出量1年分は、西欧全体の化石燃料排出量と同等と推定され、同国は中国と米国に次いで世界第三位のCO2排出国です。

現在、この泥炭地を含む低地林とそこに依存する動植物は、アブラヤシ農園拡大が原因で最大のリスクに直面しています。専門家は、ルーセル・エコシステムの低地林や泥炭地が破壊されると、スマトラオランウータンが野生下で絶滅する最初の類人猿となる可能性があると警告しています。そんな負の遺産は残すべきではありません。

この人為的災害は世界的なパーム油需要の急増によるものです。パーム油は世界で最も広く使用されている植物油で、主にインドネシアやマレーシアで栽培され、世界中に輸出されています。今やアブラヤシ農園はルーセル・エコシステムを含むインドネシアの熱帯林の中心部へと深く侵入し、同時に土地収奪、地域住民との紛争、人権侵害、汚職、労働搾取も引き起こしています。

アブラヤシ農園開発のために伐採されるルーセル・エコシステムの低地林(©Paul Hilton/RAN)

ルーセル・エコシステムを救うために私たちにできること

このような問題を解決するには、消費者や企業による「責任あるパーム油」の需要拡大と、問題のある「紛争パーム油」の排除が必要です。パーム油生産者、加工業者、貿易業者、資金提供者、消費財メーカーに原材料から問題を抱えているパーム油を除外するよう大きな声を届け、購買力を使って働き掛ければ、企業はビジネスのやり方を変えざるを得なくなります。

また、俳優のレオナルド・ディカプリオら有名人も取り組む世界的キャンペーン「ルーセルを愛そう」に参加し、この問題を日本でも広く知らせ、企業に問題への対処を促すこともできます。

米国の環境NGOのRANは、1985年の設立以来、環境・森林保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動を行ってきましたが、2013年からはスナック食品企業20社に対して責任あるパーム油調達を求めています。多くの企業が改善へと動く中、日清食品と東洋水産は最も対応が遅れています。主な即席麺製品には大量のパーム油が使用されていますが、2社はパーム油調達方針の策定はしたものの不十分で、森林破壊に直接関係したり、オランウータンの死亡や住民立ち退きへの関与リスクが高いパーム油を排除する対応が不足しています。とくに日清食品は持続可能な大会を目指す東京五輪のスポンサーであり、RANでは同社に改善を求める国際署名を行っています。

また金融機関に紛争パーム油やルーセル・エコシステムの破壊に資金を提供しないよう求めることもできます。過去5年、アジアの一部の銀行は森林破壊のリスクがある事業の最大の資金提供者であり、日本の3メガバンクが融資するパーム油企業でも、労働権侵害、土地紛争、違法なアブラヤシ農園、森林減少などのリスクに直面しています。

一人ひとりが企業や政府が自然保護への誓約を守り、企業や銀行が自社の行動に責任を持つよう働き掛けることで、問題解決に向けた動きがうねりを作って変化につながると考えています。

メディア掲載:朝日新聞「私の視点」にRAN川上豊幸が寄稿しました(2019/3/30)

朝日新聞 「私の視点」にRAN日本代表 川上豊幸が「東京五輪とSDGs 適切な木材調達、進めて」を寄稿しました(2019年3月30日付け)

「2020年東京五輪・パラリンピック施設が、東南アジアの貴重な熱帯林の破壊に関係していることをご存じだろうか。「新国立競技場には国産材が使われるのでは」と思う人も多いだろう。しかし国産材が使われるのは屋根や柱などで、土台のコンクリートを成形する型枠用合板に東南アジアの熱帯材が使われている。日本は世界最大の熱帯材合板の輸入国で、熱帯林の破壊によって作られた型枠合板も輸入している。記事を読む

関連:NGO共同声明「2020東京五輪の木材調達基準改定は不十分〜組織委に改定基準の内容と決定までの経緯の説明を求める〜」(2019/1/30)

メディア掲載:毎日新聞でRAN東京五輪木材関連の調査が紹介されました(2019/3/22)

毎日新聞「五輪会場建設 転換材を禁止 7割が熱帯林由来 オランウータンも生息する熱帯林 効果は限定的」(2019年3月22日付)〜RAN「守られなかった約束」での調査などが紹介されました〜

 「東京五輪・パラリンピック組織委員会が木材を調達する際の基準が見直され、今月から運用が始まった。大きな変更点は、農園開発などのため皆伐された森林から産出される「転換材」の使用を禁じたことだ。五輪会場の建設現場では、こうした木材が使用され続けてきた実態がある。 
  環境NGOなどが問題視しているのは、会場建設で大量に使われるコンクリートを固める際に型枠として使用される合板だ。組織委の木材調達基準には「国産材を優先的に選択するよう努めなければならない」という項目がある。しかし、あくまで努力義務で、実際には熱帯材の合板が広く使われてきた。熱帯材の合板は強度が高くて質もよく、何度も繰り返し使えるためだ。記事を読む

NGO共同声明「2020東京五輪の木材調達基準改定は不十分〜組織委に改定基準の内容と決定までの経緯の説明を求める〜」(2019/1/30)