サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

ブログ:RGEグループ、パルプ材サプライチェーンにおける新たな森林破壊を認める(2025/12/19)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

概要

● ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、自社サプライチェーンにおける森林破壊を2016年以降に停止することを誓約している。しかし、それから9年後の今も、RGEグループの紙パルプ部門のサプライチェーンは、熱帯林の皆伐を続ける事業管理地からの調達を継続している。木材チップの調達は、物議を呼んでいる PT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)を通じて行われている。RGEグループは、自社方針の違反があったことを認めている。

● 森林管理協議会(FSC)が新たに公表したガイドラインによれば、PT. BCLはRGEグループの財務的支配下にあり、ゆえにRGEの企業グループの一員とみなされる。したがって、RGEグループは、FSCとの関係修復に向けた取り組みの基盤である「森林破壊禁止」誓約に引き続き違反している。

● インドネシア政府の記録および衛星画像分析から、中国にあるRGEグループ最大のパルプ工場に専属で供給する木材チップ工場であるPT. BCLが、2020年から2024年の間に5,565ヘクタールの天然林を皆伐した2つのパルプ材植林地から調達していたことが明らかになった。

● 日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、RGEグループのパルプ部門への融資を続けている。2020年から2025年7月までに、エイプリル社に2億2,200万米ドルの融資を行っている。そのうち、2024年にはシンジゲートローンに9,500万米ドルもの拠出が行われた。

RGEグループと森林破壊のつながり

ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、ビスコース、紙、ティッシュ、包装材の世界的な大手供給企業である。同グループは、2016年の始めまでに自社サプライチェーンから森林破壊を停止するという誓約を広く宣伝しているにもかかわらず、インドネシアの熱帯林を皆伐している供給業者からの調達を続けている。

税関記録、衛星画像分析およびサプライチェーンのデータによると、インドネシアの木材チップ生産者であるPT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)が、2020年から2024年にかけてボルネオ島の東カリマンタン州で5,500ヘクタール以上の天然林を皆伐した2つのパルプ材植林地から、大量の木材を調達してきたことを示している。この税関記録および木材供給に関するデータは、サプライチェーンの透明性向上のためのプラットフォーム「Trase」が、インドネシアのパルプ部門に関する最新アップデートのなかでまとめたものである。現地のNGOである「アウリガ・ヌサンタラ(Auriga Nusantara)」による現地調査は、2025年に至るまで継続している森林破壊を記録している。

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度(© Auriga Nusantara, 2025)

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地2025年5月の衛星画像(Sentinel-2)に示された、最近皆伐された区域の記録(ヌサンタラ・アトラス上で閲覧)。ドローンの位置(黄色のピン)および撮影されたおおよその範囲(ピンク色)を表示

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度(© Auriga Nusantara, 2025)

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度 (© Auriga Nusantara, 2025)

問題となっている木材チップ工場——PT. BCL——は、数年にわたりRGEグループの独占供給者となっている。森林管理協議会(FSC)が2025年10月に採用した新しいガイドラインによれば、PT. BCLは、RGEグループの財務的支配下にあり、ゆえに企業グループの一員とみなされる。以上のことから、RGEグループは保護価値の高い(HCV)地域の破壊および森林の非森林用途への大規模転換を禁じるFSCの「組織とFSCの関係に関する指針」に違反していると見られる。RGEグループは、「救済(補償)プロセス」を通じて、傘下のパルプ企業グループであるエイプリル社(APRIL:アジア・パシフィック・リソース・インターナショナル)とFSCとの関係修復を図ってきた。しかし、RGEグループ傘下のパルプ企業トバ・パルプ・レスタリ(TPL)の労働者が先住民族コミュニティの人々に暴行を加えた事件の告発を受け、この救済プロセスは2025年9月に停止されている。

PT. BCLで植林地からの丸太が荷下ろしされる様子(2024年11月)

loyal-Golden-Eagle-Industrial-Zone-BalikpapanPT. BCLの木材チップ施設は、RGEグループ傘下のアピカル社のパーム油精油施設の隣に位置する(バリクパパン)

RGEグループはこの告発に対し、同社の「予備的分析は、2020年から2024年の間に、PT. センダワル・アディ・カリヤ(PT. Sendawar Adhi Karya: PT. SAK)およびPT. バカヤン・ジャヤ・アバディ(PT. Bajayan Jaya Abadi: PT. BJA)の事業管理地において土地被覆の変化が実際に発生していること、および、この土地被覆の変化は当社の森林破壊禁止方針および持続可能な調達方針に適合していなかった可能性が高いことを示しています」と回答している(RGEの回答全文はページ下部を参照)。

2023年7月、RGEグループ傘下のアジア・シンボル社も、PT. BCLは木材チップ供給者であり、RGEグループおよびアジア・シンボルの森林破壊禁止誓約に反して、2016年から2022年にかけて森林破壊を引き起こしていた供給業者から木材を調達していたと認めている。アジア・シンボルはこの声明の中で、PT. BCLには「強固なデューデリジェンス体制を整備し、調達した全ての木材について定期的な現地検証を実施することが求められていました」と述べた。しかし、このスキャンダル以降も、アジア・シンボルはPT. BCLから安定的に調達を続けている。2020年にはアジア・シンボルのPT. BCLからの木材チップ調達は、全体の約5分の1を占めていた。政府記録と衛星画像分析などを用いた今回の新たな調査結果は、PT. BCLが天然林を皆伐している企業からの調達を継続していたことを示している。2024年にPT. BCLが調達した木材総量の36%は、天然林の皆伐を行うPT. SAKとPT. BJAから調達されていた。この調達は、アジア・シンボルが表明している、PT. BCLの調達に関する強化されたデューデリジェンス・検証の実施期間中に行われたものである。RGEグループのバリューチェーンに森林破壊とつながりのある供給業者が存在し続けていることは、RGEグループが掲げる「森林破壊を一切容認しない」という主張が偽りであることを示している。

RGEグループは次のように回答した。「PT. BCLおよびその供給業者による当社方針の遵守に疑いが生じたのは、今回が初めてではありません。(略)当社調査による予備的な所見に基づき(略)アジア・シンボルは、PT. BCLからの全ての供給を直ちに停止する決定を下しました。アジア・シンボルおよびその他のRGE企業は、今後PT. BCLから調達を行いません」

PT. BJAの事業管理地における年次の森林破壊を示した地図(2020〜2024年)

PT. SAKの事業管理地における年次の森林破壊を示した地図(2020〜2024年)

サプライチェーン内の森林破壊

衛星画像分析および現地調査は、PT. SAKおよびPT. BJAの隣接する事業管理地内で、2020年以降、5,500ヘクタール以上の熱帯林(サッカー場7,000面以上に相当)がパルプ材用植林地のために皆伐されてきたことを示している(衛星リモートセンシング分析はRANが外部委託したもの)。

PT. BCLがインドネシア環境林業省に報告したデータによれば、PT. SAKおよびPT. BJAは、2024年に両社の植林地の40万立方メートルを超える木材を、全てPT. BCLの木材チップ工場に送っている。出荷記録によれば、PT. BCLは同年、その木材チップの全量、すなわち80万トン超(7,000万米ドル以上相当)を、中国山東省日照市にあるRGEグループの巨大パルプ工場であるアジア・シンボルに輸出している。これらの出荷記録は、インドネシアのバリクパパンと中国の日照市との間で木材チップを輸送した船舶の動きの追跡データの分析結果によって確認された。

PT. BCLの最終受益者(実質的な所有者)は、オフショアのペーパーカンパニーによって隠されているが、これらのペーパーカンパニーは、RGEグループと複数の共通点を持つ。RGEグループはPT. BCLの所有・支配を否定しているものの、PT. BCLは、RGEグループのパルプ材サプライチェーンにおける垂直統合型の施設であると見られる。PT. BCLは、RGEグループに専属で供給し、RGEグループ傘下のクタイ(Kutai)にあるパーム油の製油所と同じコンビナートで操業し、出荷港を共有している。

マハカム川の森林景観

PT. SAKおよびPT. BJAの事業管理地は、西クタイ県にあり、ボルネオ島で三番目に大きい河川であるマハカム川の流域に位置する。インドネシア語で「マハカム・ウル」と呼ばれる上流域には、インドネシアに残された最大級の手付かずの熱帯林が広がっている。しかし、マハカム川流域に残存する熱帯林は、石炭採掘やアブラヤシ農園開発、森林伐採、そして今回の事例に見られるようなパルプ材用植林地開発などの産業によって、断片化の脅威に晒されている。

マハカム川で遊ぶ絶滅危惧種カワゴンドウ7頭の群れ(2024年11月© RAN)

マハカム川流域には、現地では「ペスット」と呼ばれるマハカム川固有のカワゴンドウの個体群(別名:イラワジイルカ、IUCNレッドリスト:深刻な危機(CR))や、めったに姿を見せないスマトラサイなど、多くの絶滅危惧種や、象徴的な種が生息している。スマトラサイは、かつて野生では絶滅したと考えられていたが、2025年にタバング(Tabang)郡区のPT. SAKの事業管理地近く、2016年にマハカム地域で確認されている。一頭のサイはその後保護されたが、この森林は野生復帰を成功させる上でも極めて重要な生息地であることに変わりはない。さらに、絶滅の危機にあるボルネオオランウータンやテングザル、オナガサイチョウなどの動物も生息している。

タバング郡区のPT. SAKの事業管理地近くで、2025年にカメラトラップにより撮影されたボルネオサイ(CR)(写真© Indonesia’s Resource Conservation Centre (BKSDA))

カワゴンドウマハカム川に生息する絶滅危惧種(CR)のカワゴンドウ。「ペスット」とも呼ばれる(© Yayasan RASI)

ボルネオオランウータン絶滅危惧種(CR)のボルネオオランウータン。生息地存続可能性評価によると、マハカム川周辺に生息する(写真:Creative Commons)

マハカム川流域に生息する絶滅危惧種(EN)のテングザル(写真© Yayasan RASI)


先住民族ダヤックのフドック祭(マハカム・ウル)

マハカム川上流の素晴らしい景観と生物多様性は、自然に依存した伝統的農業と現代的農業により生計を立てる先住民族コミュニティのダヤック族のスチュワードシップ(責任ある管理)によって守られている。これらのコミュニティの多くは、伝統的に使用してきた土地と森林をめぐる慣習的権利(慣習林:インドネシア語で「フータン・アダット」)を獲得して、森林伐採、アブラヤシ農園、鉱山の新規開発地を求める企業の進出から土地と権利を守るために闘っている。

MUFGは森林破壊への関与に対処していない

日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、RGEグループのパルプ部門およびパーム油部門に対する重要な資金提供者である。MUFGは、RGEグループのインドネシア事業に対する第二位の資金提供者であり、同グループの数十億ドル規模のサステナビリティ・リンク・ローンにおいて主幹事およびサステナビリティ・アドバイザーを務めた。「森林と金融」のデータによれば、MUFGは2020年から2025年7月までの間に、RGEグループのパルプ企業であるエイプリル社に2億2,200万米ドルを提供した。その中には、2024年のシンジゲートローンへの9,500万米ドルの拠出が含まれる。

MUFGは、顧客の守秘義務を理由に、本調査結果についてのコメントを控えた。

2021年、MUFGはパーム油部門に「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を採用し、その後2023年に紙パルプ部門にも同方針の適用範囲を拡大した。しかしMUFGは、これらの方針をどのように実施し、デューデリジェンスやリスク管理プロセスに統合しているかについて、ほとんど情報を開示していない。また、森林破壊ゼロのポートフォリオを達成するための明確な基準日(カットオフ日)や達成の期限も開示していない。このMUFGの現状は、森林破壊への対処に関して2024年に大手機関投資家グループが示した期待を大きく下回っている。

RGEグループが、インドネシア各地で森林破壊を引き起こし続けている「貸借対照表に計上されない事業活動」、いわゆる「シャドーカンパニー(影の企業)」の複雑なネットワークを運営している証拠は増え続けている2020年2023年および2024年の報告書を参照)。これらのシャドーカンパニーの最終受益者は、秘密管轄区(secrecy jurisdictions)に所在するオフショア企業によって隠されている。しかし、複数の取締役の重複や資源の共有、そして従業員の証言も含めると、シャドーカンパニーの事業活動は実質的にRGEグループに支配されていることを示している。RGEグループは、これらの事業活動への関与を否定している

MUFGがパルプ部門の融資先による森林破壊に対処するためには、複数のマルチステークホルダー型イニシアチブが推奨する様に、自社方針やデューデリジェンスを特定の事業や子会社に限定せずに、顧客の企業グループ全体に適用するべきである。このようなアプローチは、気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)、アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアチブ(AFi)、森林破壊フリー・デューデリジェンスのガイド、ならびに「森林と金融」による方針評価によって支持されている。

 

本調査のストーリーマップはこちら(英語ページ)

 

著者:レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。


https://japan.ran.org

————————————————–

RGEグループからの回答原文(2025年12月11日)

Dear Rainforest Action Network,

This is in response to your letter dated 24 November, 2025 regarding wood supply received by Asia Symbol from its supplier PT. Balikpapan Chip Lestari (BCL), specifically the wood supply sourced by BCL from companies PT Sendawar Adhi Karya (SAK) and PT Bakayan Jaya Abadi (BJA). In your letter you stated that you had evidence that between 2020 and 2024 SAK and BJA had converted forest areas into plantations in their concessions in East Kalimantan.

We take all such allegations seriously. Asia Symbol investigated your claims and preliminary analysis of the concessions of the two suppliers to BCL indicates that land cover change did occur in the concessions of SAK and BJA between 2020 and 2024 and that this land cover change was likely non-compliant with our no-deforestation and sustainable sourcing policies and requirements.

As you have noted in your letter, this is not the first time that compliance by BCL and its suppliers with our policies has come into question. Asia Symbol had in 2023 requested BCL to suspend supply from its supplier PT. Industrial Forest Plantation (IFP) after claims that IFP had conducted non-compliant plantation establishment and BCL had implemented that suspension.

Based on the preliminary findings of our investigation regarding supply to BCL by SAK and BJA, and following the earlier issues with BCL and its then supplier IFP in 2023, Asia Symbol has taken the decision to immediately cease all supply from BCL. Asia Symbol and any other RGE companies will not source from BCL in the future.

Asia Symbol’s decision indicates the seriousness with which we take issues of non-compliance with our wood sourcing and sustainability policies and processes. In addition to immediately ceasing wood sourcing from BCL, Asia Symbol is continuing to review its wood supply due diligence and compliance systems to ensure they are rigorously applied to and by every supplier, and that their application is strengthened.

We ask that our response above is published in full in your upcoming report.

Sincerely,

Lucita Jasmin
Group Sustainability Director

————————————————–

免責事項: この記事は “Royal Golden Eagle acknowledges new deforestation in its pulpwood supply chain” の和訳版です。参照、引用、正確な理解のためには英語の原文をご覧ください。

タグ: , , , , , , ,