サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース:『生物多様性崩壊をもたらす金融業務』日本語要約版発表 〜メガバンクら邦銀、森林リスク産品にパリ協定以降215億ドルを提供〜(2025/4/10)

三菱UFJと子会社、インドネシア森林火災企業に2億8千万ドル融資の事例も

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部サンフランシスコ、以下、RAN)は、本日、「森林と金融」連合による年次報告書である『生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡』日本語要約版を発表しました(注1)本報告書は大手金融機関が熱帯林地域における森林破壊、生物多様性の損失、気候変動、人権侵害を助長している役割について包括的に分析するものです。日本に関する新たな分析の結果、メガバンクを含む邦銀大手がパリ協定締結以降の2016年から2024年6月、熱帯林破壊に関係する高リスク林業・農業企業に約215億ドルの資金を提供していることが明らかになりました。

要約版では東南アジアでの森林破壊リスクの高いメガバンクの顧客事例も記載しています。その一つは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のインドネシア子会社を通した、大規模な森林火災を繰り返し発生させているアブラヤシ農園企業グループへの融資の事例です。報告書と同時に詳細を発表し、銀行グループの与信方針の抜け穴やデューデリジェンス(相当の注意による顧客の適正評価)の弱さを指摘し、森林火災や違法活動を助長する高リスクな資金提供に警鐘を鳴らしました(注2)

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報告書詳細

本報告書「生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡」は、世界の熱帯林破壊の大部分を引き起こしている「森林リスク産品」セクターの6品目(牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材)に携わる300社の森林部門事業に対する商業資金の流れを、パリ協定採択後の2016年1月から2024年6月の期間において分析しています。報告書では、森林リスク産品セクターへの融資・引受と債券・株式保有において、どの銀行と投資家が最も大きな役割を果たしているかを明らかにしています。森林破壊を引き起こすリスクの高い銀行、つまり資金提供額上位30行のなかには、ブラジルやインドネシアなどの熱帯林諸国の大手銀行や、米国、欧州連合(EU)、日本、中国といった輸入および財政的に重要な区域の大手銀行が含まれます。日本の金融機関による2018年1月から2024年6月の資金提供額はみずほフィナンシャルグループが世界9位(約68億ドル)、MUFGが13位(約53億ドル)、SMBCグループが15位(約4億ドル)と続き、3行ともトップ20行に入りました(表)

表「森林リスク産品への融資・引受額 上位30銀行」(2018年1月-2024年6月、単位:百万米ドル)
*森林リスクセクター159社(東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカ)への融資・引受額、傾向。日本のメガバンクはみずほ(9位)、MUFG(13位)、SMBC(15位)。

日本の金融機関はパーム油と紙パルプ部門に多くの資金を提供しています。融資・引受額は2020年に新型コロナ感染拡大で鈍化したものの、2018年と2019年、2021年には高まりを見せました(図:下)。中でも東南アジアで森林破壊を引き起こしているセクターへの資金提供でのメガバンクの存在は大きく、2018年から2024年6月の期間、MUFGはOECD加盟国の銀行の中で最も多額の融資・引受を行い、みずほは2位、SMBCは5位でした。要約版にはメガバンク各行の東南アジアにおける主要顧客15社も記載されています。中には森林破壊、泥炭地の劣化と火災、土地紛争などの問題を繰り返し指摘されてきたロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)、シナルマスなどの複合企業グループが含まれます。

図:森林リスク産品セクターにおける邦銀の融資・引受動向 〜2016年〜2024年(6月まで)〜
出典:「森林と金融」融資・引受データ 単位:百万米ドル

事例:MUFG、インドネシア泥炭地で大規模「炭素爆弾」に融資

同時にRANは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のインドネシア子会社バンクダナモンを通じた、森林火災企業グループへの2億8100万ドルもの融資事例を発表しました。MUFGは2021年に国際基準である「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」をパーム油の与信方針に採用しました。バンクダナモンも同様の方針を掲げているにも関わらずそれに違反し、泥炭地破壊に伴う大規模な火災を繰り返し発生させているアブラヤシ農園企業グループのトゥナス・バル・ランプン(TBLA)に融資を続けています。2024年10月、インドネシア政府はTBLA子会社に対して6,710億インドネシア・ルピア(4,150万米ドル)の生態系と経済への損害の賠償を求める民事訴訟を起こしました。こうした事例は、銀行グループ内での方針不遵守、顧客に対するデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)や、監視体制および監査委員会のリスク管理における監督機能の弱さが森林破壊や火災、違法活動を可能にし、銀行による高リスクな資金提供の実態を示唆しています。

写真:泥炭地地域で新たに開発された大規模アブラヤシ農園 インドネシア・スマトラ島、2024年12月

RAN日本シニア・アドバイザーの川上豊幸は「メガバンク3行は、2021年に『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)』を環境・社会方針に採用しました。しかし依然として資金提供を通じて、熱帯林の破壊や火災に油を注ぎ続けています。メガバンクのNDPE方針は適用範囲が非常に狭く、農園企業や伐採事業などに限定している点が問題です。現在の方針はパーム油、そして紙の原料となるパルプを調達する加工企業を対象外としていて、森林破壊を包括的に防止する歯止めになっていません。もう一つの問題は、それらの企業を傘下または管理下に置く親会社や企業グループ全体への適用もしていない点です。メガバンクはまず、NDPE方針の適用範囲を加工部門まで含めた上で、顧客の企業グループ全体を含めるように拡大していくことが必要です。そして資金提供の際に、NGOが指摘する問題のある企業の情報を真摯に受け止めて、十分なデューデリジェンスを行うことも重要です」と指摘しました。

結論

報告書は長期的な金融の安定を保つために、デューデリジェンスの向上、NDPE方針の強化と実行などが必要であると結論付けています。銀行には、NDPE方針の厳格な実施を顧客企業に求め、実施状況をモニタリングし、顧客企業の方針違反に対処できるような仕組みを導入するといった具体的な取り組みが不可欠です。

※「森林と金融」連合は、キャンペーン活動や草の根活動、調査活動を行う10団体の連合体です。レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、TuK インドネシア、プロフンド(Profundo)、アマゾン・ウォッチ、レポーターブラジル、バンクトラック、サハバット・アラム・マレーシア(国際環境NGO FoE Malaysia)、FoE US、oEオランダ(Milieudefensie)、CEDカメルーンによって構成されています。

 

注1)報告書日本語要約版版:forestsandfinance.org/BoBC-24-JA-summary
日本語ウェブサイト:forestsandfinance.org/ja/banking-on-biodiversity-collapse-ja

『森林と金融』は、東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカにおける紙パルプやパーム油など森林リスク産品への資金流入を包括的に分析したオンラインデータベース。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年、部門別に検索が可能。

●対象事業地域:世界三大熱帯林地域である東南アジア、ラテンアメリカ(アマゾン)、中央・西アフリカ(コンゴ盆地)
●対象産品:牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材(森林リスク産品)
●対象期間:融資・引受は2016年1月から2024年6月、債券・株式保有は2024年7月時点

英語ウェブサイト:forestsandfinance.org/banking-on-biodiversity-collapse(2024年10月に発表)

注2)RANブログ「MUFG、インドネシアの泥炭地で大規模『炭素爆弾』に融資〜子会社銀行、アブラヤシ農園企業グループに2億8100万ドルを提供 複数の事業管理地で泥炭地破壊と度重なる火災を起こす〜」、2025年4月10日
※泥炭地での農園開発は膨大な量の二酸化炭素が放出され『炭素爆弾』とも呼ばれる。泥炭地から水が抜かれ、土地が乾燥することから火災のリスクも急増し、生態系と気候変動にとって大きな脅威となる。

ブログ:MUFG、インドネシア泥炭地で大規模「炭素爆弾」に融資 〜子会社銀行、アブラヤシ農園企業グループに2億8100万ドルを提供〜(2025/4/10)

複数の事業管理地で泥炭地破壊と度重なる火災を起こす

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

上空からの泥炭地火災の様子、インドネシア・南スマトラ、2019年 ©︎NOPRI ISMI / MONGABAY INDONESIA

概要

⚫️三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、インドネシアの銀行セクターにおいて重要な外国投資家である。2019年にはインドネシア最大の銀行の一つであるバンクダナモンを買収した。2021年、MUFGはパーム油関連の資金提供に関して「森林破壊禁止・泥炭地開発禁止・搾取禁止(NDPE)」方針を策定。

⚫️バンクダナモンは、MUFGグループの方針を明確に逸脱する資金提供を行い続けている。2020年、2021年および2022年に、アブラヤシ企業であるトゥナス・バル・ランプン(Tunas Baru Lampung、IDX:TBLA)に対し、総額2億8100万ドルのクレジットラインを発行した。TBLA社は、泥炭地の破壊や度重なる火災とヘイズ(煙害)など、著しく悪質な環境問題を引き起こしてきた経歴を持つ。MUFGのパーム油セクター方針は、国際的な基準である「NDPE」の考えを取り入れたものであるが、TBLA社は明らかにこの基準に合致していなかった。

⚫️MUFGによる資金提供を受けて、TBLA社は2020年から2023年にかけて、南スマトラ州の2つの隣接する事業管理地(アブラヤシ用地とサトウキビ用地)で7,800ヘクタール(78平方キロメートル)近くの泥炭地を転換し、膨大な温室効果ガス排出と火災リスクを生じさせた。

⚫️その後、2023年には、この2つの事業管理地で大規模な泥炭地火災が発生し、14,500ヘクタール(145平方キロメートル)の土地が被害を受けた。2024年には、インドネシア政府がTBLA社の子会社を提訴し、生態系への損害と経済的損失に対し、4150万ドルの賠償を求めた。

⚫️TBLA社は現在もバンクダナモン/MUFGの取引先であり、2026年までにMUFGに返済予定の貸付金が残っている。

⚫️バンクダナモンによる資金提供は、MUFGグループの社会・環境方針に沿っていなく、また、自ら掲げるNDPE要件にも違反しているため、重大なコンプライアンス上の問題である。

MUFG、インドネシアの泥炭地で「炭素爆弾」に融資

泥炭地開発と気候変動

泥炭地の生態系は、地球上で最も効果的に自然の炭素隔離を行う陸上景観である。アブラヤシ農園を泥炭湿地に開発する際は、水路を造成して排水する必要があるが、炭素を豊富に含む熱帯の泥炭湿地林は、一度水を抜かれて皆伐されると、長期にわたって膨大な量の二酸化炭素を大気中に放出する。また排水は、火災が発生しやすい環境を作り出す。このため泥炭地開発は「炭素爆弾」と呼ばれ、生態系と気候変動における重大なリスクとされる。

泥炭地での産業用大規模農園・植林地(プランテーション)の拡大によって引き起こされる火災は、インドネシアの温室効果ガス排出の最大の原因の1つであり続けている。また、火災に伴う煙害(ヘイズ)は公衆衛生上の危機を引き起こし、何十億ドルもの経済的損失と損害をもたらしている。

泥炭地破壊に伴う大規模火災を繰り返し発生させる農園企業グループ:TBLA

トゥナス・バル・ランプン(Tunas Baru Lampung、IDX: TBLA)は、南スマトラの泥炭地でアブラヤシとサトウキビのプランテーションを運営する上場企業である。同社は、広範な火災環境規制違反への関与を、インドネシア政府や市民団体から繰り返し指摘されている。2024年10月、インドネシア環境森林省(KLHK)は、TBLAの子会社である PT. Dinamika Graha Sarana(PT. DGS)社に対して民事訴訟を起こした。同省は、2023年9月から11月に発生した6,303ヘクタール(63平方キロメートル)以上に及ぶ火災による生態系と経済への損害に対し、6,710億インドネシア・ルピア(約4,200万米ドル、日本円で約57億円*)の損害賠償を求めている。しかし、2023年に広範囲にわたる火災が発生したのは、この子会社だけではない。隣接するTBLAの子会社PT. Samora Usaha Jaya(PT. SUJ)社の事業管理地でも、5,688ヘクタール(約56平方キロメートル)以上に火災が広がっている。RANは、TBLAに本件について書簡を送付してコメントを求めたが、回答は得られなかった。

*202549日現在の為替レート:Rp1.000 IDR = ¥0.008544 JPYで計算した場合、5,733,091,100円に相当

下のタイムラプス画像は、Nusantara Atlas/TreeMapで作成され、2023年8月30日から11月13日までに撮影された衛星画像を時系列で示している。プランテーションの境界線(黄色)を超えて広がる火災と延焼地域(暗褐色)が赤外カラーではっきりと捉えられている。

PT. DGS社の事業管理地における火災(画像をクリックしてタイムラプスを再生)

PT. SUJ社の事業管理地における火災(画像をクリックしてタイムラプスを再生)

この様な火災の発生は、乾燥すると非常に燃えやすい泥炭地がプランテーション開発のために排水されたことと関係している。RANの衛星解析の結果、2023年の火災に先立つ3年間(2020年~2022年)に、TBLAは南スマトラにある2つの子会社(PT. SUJおよびPT. DGS)の隣接する事業管理地で、約7,800ヘクタール(78平方キロメートル)の泥炭地を転換したと推定されている。

MUFG子会社バンクダナモンによる融資

この大規模な泥炭地転換が行われた期間(2020年~2022年)に、TBLAは日本のメガバンクであるMUFGから総額2億8,100万米ドルの融資枠を提供され、MUFGのパーム油セクターで第3位の融資先となった。MUFGは2021年、国際的なベストプラクティスであるNDPE方針の一環として、泥炭地の転換を禁止することを公に誓約するよう顧客に求めた。それにもかかわらず、TBLAへの融資はその後も行われていたことが確認された。

問題のTBLAへの融資は、MUFGのインドネシアの銀行子会社バンクダナモンを通じて実行された。MUFGは2019年に同行を買収し、それ以来、バンクダナモンのサステナビリティ報告書には、MUFGグループと同様にNDPE方針が反映されている。しかし、バンクダナモンによるTBLAへの融資は、NDPE方針が履行されていないことを示している。森林リスクのあるセクターへの融資によって人権問題が常習的に引き起こされているなか、このコンプライアンスの問題は、人権への影響に対処するための銀行の管理体制に関してより広範な懸念を生んでいる。MUFGグループの2024年人権報告書では、環境・社会ポリシーフレームワークと、より広範な人権方針が、同グループの全事業に適用されると記載されている。バンクダナモンが同グループのNDPE方針に従っていないことは、この子会社が同グループのより広範な人権方針も無視しているのではないかという深刻な疑問を生じさせている。

TBLAは、上述の大規模な泥炭地転換が行われる何年も前から火災や泥炭地転換に関与してきた歴史がある。衛星解析の結果、2015年から2019年にかけて、TBLAの2つの事業管理地で8,600ヘクタール(86平方キロメートル)の泥炭地が転換され、2015年には12,103ヘクタール(121平方キロメートル)、2019年には15,873ヘクタール(159平方キロメートル)が火災の被害を受けたと推定される。

継続的な火災リスクと温室効果ガス排出

これらの衛星観測を裏付けるため、地元NGOの現地調査チームは2024年12月にPT. SUJ社の事業管理地を訪問した。この調査では、MUFGが融資を行った2020年から2022年の間に、泥炭地がアブラヤシのプランテーションに転換された複数の地域が記録された。このなかには、繰り返し火災が発生している場所も含まれる。

動画1(緯度-3.34631°、経度105.37663°付近)には、排水された泥炭地で育つ若いアブラヤシが映っている。Sentinel-2による衛星画像(焼け跡を偽色で強調)は、この地域が2019年に深刻な火災被害を受けたことを示している。この地域はその後、2020年から2021年にかけてアブラヤシのプランテーションに転換された。

動画2(緯度-3.3118°、経度105.4185°付近)には、排水された泥炭地で育つ若いアブラヤシが映っている。この地域も2020年から2021年に転換されている。2019年に火災が発生し、その後、プランテーションに転換された。Sentinel-2による衛星画像(焼け跡を偽色で強調)は、この場所で2019年2023年に発生した火災の規模を示している。

パーム油精製業者の80%以上はNDPE誓約に基づき、供給業社による泥炭地から農園への新たな転換を禁止している。インドネシアでは泥炭地の転換そのものは必ずしも違法ではないが、政府規制により、泥炭地で事業を行う企業は、水位を高いレベルで維持することが義務付けられている。泥炭地が乾燥し、その水文学的機能および保全機能が失われるのを防ぐためである。

現地調査チームは、PT. SUJ社の事業管理地内3地域にわたり、17カ所の異なるサンプル地点で水位深度を測定した。その結果、雨季に測定したにもかかわらず、どのサンプル地点も政府が定めた深度要件(40cm)を満たしていないことが判明した。繰り返される火災、泥炭地の転換、不適切な水位管理ーーこれらは、TBLAの事業が南スマトラの泥炭地の機能を破壊し続け、膨大な温室効果ガスの排出や火災と煙害の継続的なリスクを引き起こしていることを示している。

タイムライン:MUFG、バンクダナモン、TBLAを巡る融資と火災

MUFGは2019年にバンクダナモンを買収し、その取引先も引き継いだ際、その取引先企業のコンプライアンス・リスク評価を実施すべきであった。TBLA社が公表している方針を確認するなど、基本的な環境デューデリジェンスを実施していれば、TBLA社がNDPEを誓約せず、火災や泥炭地の転換に関して著しく悪質な経歴を持つことが明らかになっただろう。以下は、TBLA社の悪質な経歴を示す事例である。

2015年

  • 6月:インドネシアの泥炭地にある事業管理地で大規模な火災が発生ーエルニーニョ期の数カ月にわたり燃え続け、160億米ドルの被害をもたらす。2015年、TBLA社の2つの事業管理地で大規模な火災が発生し、RANの推定では12,103ヘクタール(121平方キロメートル)が火災被害を受けた

2016年

  • 11月:TBLAが規制に違反インドネシア環境林業省による調査で、TBLAの子会社PT. DGSによる規制違反(2015年の火災で焼失した泥炭地をアブラヤシ農園に転換するために重機を使用して掘削したなど)が確認される。

写真 © MoEF Indonesia and ForestHintNews、2016年

2018年

2019年

  • 1月:TBLAによる泥炭地転換が続く1月から12月にかけて、TBLAは推定1,300ヘクタール(13平方キロメートル)の泥炭地をプランテーションに転換。
  • 5月:MUFGがバンクダナモンを買収MUFGはバンクダナモンTbkの株式94%を取得し、インドネシアでの子会社銀行とした。
  • 6月:インドネシアの泥炭地で再び火災が発生し、数か月にわたって燃え続ける全国で164万ヘクタール(16,400平方キロメートル)が焼失し、推定52億米ドルの経済損失と損害をもたらす

  • 6月:TBLAの事業管理地で火災が広がるTBLAの事業管理地(PT. SUJおよびPT. DGS)で数か月にわたり火災が発生し、推定15,873ヘクタール(159平方キロメートル)が焼失。

2019年、TBLAの事業管理地で発生した火災の広がりを示す衛星画像(画像をクリックしてタイムラプスを再生)

  • 10月:インドネシア政府がTBLAの事業管理地に対し措置を講じる環境林業省が火災を理由にTBLAの事業管理地の1つを封鎖。 

現地当局により封鎖されたPT. DGS社の事業管理地©️InspirasiNews.com

2020年

  • 1月:MUFGがTBLAに巨額の融資を提供年間を通じて、MUFGはバンクダナモンを通じ、TBLAに5,800万米ドルのリボルビング・クレジット枠を供与。
  • 10月:TBLAが「最も広範な火災被害をもたらしたパーム油企業グループ」として名指しされるーグリーンピース・インドネシアが2020年に発表した火災跡地データ分析では、2015年から2019年までの焼失面積がインドネシアのパーム企業でTBLA社が最も多いと報告される。
  • 12月:TBLAが持続可能なパーム油円卓会議(RSPO)から脱退TBLA社がRSPOのメンバーを辞任。
  • 12月:TBLAが泥炭地転換を継続2020年末までに、TBLA社は2019年に焼失した土地を含む2,500ヘクタール(25平方キロメートル)以上の泥炭地にプランテーションを拡大。

2019年11月の衛星画像 火災により泥炭地が焼失(Sentinel2より、TreeMap/Nusantara Atlasを使用)

2021年6月の衛星画像 焼失した泥炭地がプランテーションに転換されている(Sentinel2より、TreeMap/Nusantara Atlasを使用)

2021年

  • 1月:MUFGがTBLAにさらなる融資を実行年間を通じて、MUFGはバンクダナモンを通じてTBLAに総額1億500万ドルの追加のコーポレートローンを提供した。
  • 4月:MUFGが新たなパーム油セクター融資方針を採用MUFGは取引先に対し、NDPE基準を公に誓約することを求めている。バンクダナモンのサステナビリティ報告書には、これが同行の方針でもあると記載されている。

2021年、TuK-IndonesiaによるMUFGジャカルタ支店前での抗議活動 インドネシアにおける大規模火災と煙害について同グループの資金提供を批判

  • 12月:TBLAが新たな泥炭地の転換を継続ー2021年末までに、TBLAはさらに2,404ヘクタール(24平方キロメートル)の泥炭地をプランテーションに転換し、2019年に火災が発生した地域もその対象となった。

2022年

  • 1月:MUFGがTBLAへの融資を増額年間を通じて、MUFGはバンクダナモンを通じてTBLAに総額1億300万ドルの追加のコーポレートローンを提供した。
  • 12月:TBLAがさらに泥炭地を転換2022年末までに、TBLAはさらに1,600ヘクタール(16平方キロメートル)の泥炭地をプランテーションに転換した。

2023年

  • 6月:TBLAの事業管理地で大規模火災が発生TBLAの事業管理地(PT. SUJおよびPT. DGS)で火災が発生し、14,544ヘクタール(159平方キロメートル)が焼失。

2023年9月、TBLAの事業管理地で発生した火災の広がりを示す衛星画像(Sentinel2より、TreeMap/Nusantara Atlasを使用)

2024年

  • 10月:インドネシア政府がTBLA子会社を提訴環境森林省は、TBLAの子会社であるPT. DGSに対して4,150万米ドルの訴訟を起こし、2023年の火災に関連する生態系の損害および経済的損失に対する賠償を求めた。

2024年12月、PT.SUJ社の事業管理地にて新たな泥炭地地域がプランテーションに

2025年

  • 3月:TBLAは引き続きバンクダナモン/MUFGの顧客であり続けているTBLAは現在もMUFGの顧客企業であり、MUFGが提供したコーポレートローンから利益を享受し続けている。MUFGからの最後の融資(3,240万ドル)は2026年に満期を迎える予定である。

 

著者:レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。200510月より、日本代表部を設置しています。
https://japan.ran.org

「訂正・追加のお知らせ」インドネシア環境森林省がTBLAの子会社であるPT. DGSに対して起こした民事訴訟のインドネシア語記事へのリンクが記載されておりませんでしたので、追加いたしました(2025年4月22日)。

声明:MUFGはNZBA脱退後も約束を反故にせず、 パリ協定1.5度目標に整合しない企業への融資中止を(2025/4/9)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が銀行間の自主的イニシアティブ「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から3月19日に脱退したことを受けて、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、RAN)は9日、MUFGに、NZBAから脱退しても投融資ポートフォリオをパリ協定1.5度目標と整合させる約束を反故にせず、パリ協定の1.5度目標に整合しない企業への融資の中止を求める声明を発表しました。

RANは3月と4月に2回にわたって、MUFGに脱退の理由を質問するメールを送りました。同グループは「今後の気候変動対策を検討するにあたり、NZBAにおける加盟継続のメリットを総合的に判断した結果だ」とし、「カーボンニュートラル実現や、パリ協定1.5度目標達成へ MUFG として貢献するというコミットメントは不変です」と回答しました。

 

RAN日本シニア・アドバイザー川上豊幸は「MUFGから『パリ協定1.5度目標達成に貢献するというコミットメントは不変である』という回答をもらいました。MUFGが、2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標に今後も取り組むと改めて言及したことは重要です。なぜなら米国では大手銀行のNZBAからの脱退が続き、その一行のウェルズ・ファーゴが2月、2050年までのネットゼロのコミットメントを反故にした実例があるからです。MUFGはこのような動きに屈することなく、世界中で危機感が高まる気候変動問題に対して、日本最大手の銀行として責任を持って行動してもらいたいと願います」と主張しました。

一方、MUFGは新規の液化天然ガス(LNG)事業への巨額の投融資など、パリ協定の1.5度目標に整合しないプロジェクトへの資金提供を行っています。RANら『化石燃料ファイナンス報告書2024』によると、パリ協定採択以降、2016年から2023年のMUFGの化石燃料産業への投融資額は世界4位の約3,077億米ドルで、LNG事業を拡大する企業130社への2023年の投融資額は世界2位の約84億米ドルでした。例えば環境・社会面でも大きな問題がある米国テキサス州メキシコ湾岸地域で計画中のリオ・グランデLNG事業を進めるネクスト・ディケイド社に、MUFGは2023年に約21.7億ドル以上を提供しています。

川上は「リオ・グランデLNG施設が稼働すれば石炭火力発電所50基分に相当する二酸化炭素を排出することになると懸念されています。今年、2024年の平均気温がパリ協定の抑制目標である1.5度上昇を初めて上回ったことが明らかになりました。MUFGは直ちに、リオ・グランデLNG施設など、1.5度目標の達成を困難にする事業や企業への資金提供は中止すべきです」と強調しました。

 

昨年12月、米メキシコ湾岸地域の住民や先住民族、市民団体らはNZBAと、その母体であるグラスゴー金融同盟(GFANZ)、国際連合に書簡を送り、NZBAからの加盟銀行脱退の懸念を示し、NZBAは圧力に屈せず規約を維持し、加盟銀行に「世界の平均気温上昇を1.5度に抑える」というパリ協定の合意と目標を整合させることを要請していました。今年3月、 日本のメガバンク3行全てもNZBAから脱退しました。ほぼ同時期にNZBAは加盟規約の見直しを巡り、融資案件を1.5度以内に抑える目標と整合させる必要性について撤廃が提案されていると報道されました。MUFGは2025年3月までNZBAステアリンググループ(地域毎に選出される金融機関で構成)の一員だったとRANに回答しましたが、規約の見直しと脱退との関係については「コメントを控える」としています。

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-2F
日本チームマネジャー:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:米国リオ・グランデ・バレーの住民代表団が来日〜メガバンクらにLNG事業からの撤退を求めて 自然環境、歴史、人々の生活を破壊する5つのリスク〜(2024/12/10)

RAN「責任ある金融」キャンペーナー 麻生里衣

2024年10月6日から1週間、米国テキサス州リオ・グランデ・バレー地域のコミュニティ代表団が来日し、自然環境の破壊、先住民族の権利侵害、地域住民への健康被害、気候変動の加速など、問題の大きい液化天然ガス(LNG)事業からの撤退を日本の金融機関に求めました。多岐にわたる問題を引き起こすLNG事業。今年8月からRANで活動を始めた麻生里衣が、代表団に同行して見えてきたこの問題をまとめます。

州道48号線から見える自然、テキサス州ブラウンズビル、2017年(写真 ©︎ Joseph Fry)

地元コミュニティの反対運動

米国テキサス州南部のリオ・グランデ・バレーの河口周辺に広がるデルタ地域には、南メキシコ湾岸最後の人工物のない地平線が見られる景観が残っています。しかし現在、この地域ではリオ・グランデLNG輸出基地、テキサスLNG輸出基地、これらの基地に接続予定のリオ・ブラボー・パイプラインの3つのLNG事業が計画されています。第1フェーズの事業資金の調達が完了しているリオ・グランデLNGは、地元コミュニティの強い反対にも関わらず工事を開始し、現在も湿地帯をブルドーザーで掘り起こし、整地作業を進めています。

リオ・グランデLNGの建設現場(写真©︎ Bekah Hinojosa / (SOTXEJN)

これまでの活動の成果

地域住民はこれまで、これらのLNG事業を止めるために様々な活動を展開してきました。その成果が実り、フランスの銀行ソシエテ・ジェネラルラ・バンク・ポスタル、三井住友銀行、スイス登記の米保険会社チャブなどがリオ・グランデLNGから撤退、さらにフランスの銀行BNPパリバもテキサスLNGとの関係を絶ちました。

そして2024年8月6日、地域住民が裁判で勝訴を勝ち取り、活動の大きな追い風となりました! 米国コロンビア特別区控訴裁判所は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)によるリオ・グランデ地域のLNG事業許可3件は、地域への環境的・社会的影響を十分に検証していないとして、許可を事実上取り消すという判決を下しました。FERCは今後、新たな補足的環境影響評価書の草案作成とパブリックコメント期間を設け、事業の影響を再評価した上で、新たな事業許可の発行を検討する必要があります。(さらに詳しくはRANのレポートを参照

今回来日したディナ・ヌニェス氏(南テキサス人権センター シニア・オーガナイザー)は、「団結した人々は、決して分断されることはない」と述べ、「私達地域コミュニティの強力な組織化と強い意志を持った人々のおかげで、良い裁判結果を勝ち取ることができました。私達は、たとえ巨大な企業であろうと打ち負かすことができると信じています。次は、日本の企業が良い決断を下すことを求めます」と訴えました。

MUFG本社前で呼びかけを行うヌニェス氏(右)と大学生のアクセル・ゴメス氏(左)(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

日本の金融機関と気候変動

そして今回、リオ・グランデ住民代表団はこれらのLNG事業を支援する日本の金融機関に事業からの撤退を求めて日本を訪れました。中でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、リオ・グランデLNGに約21億米ドルを2023年に融資し、世界最大の資金提供者となっています。また、みずほフィナンシャル・グループ(みずほ)も約11億米ドルの融資を行っていることが明らかになっています(参考「化石燃料ファイナンス報告書」日本語抜粋版) 。

代表団に同行したRANのルース・ブリーチ(気候変動&エネルギー担当 シニア・キャンペーナー)は、「日本の銀行は米国メキシコ湾岸におけるLNG事業拡大において、非常に重要な役割を担っています。世界のどの銀行を見ても、みずほ銀行と三菱UFJ銀行以外に、南メキシコ湾岸のLNG事業全てに資金提供を行なっている銀行はありません」と述べています。

都内の日本外国特派員協会(FCCJ)での会見にて日本の金融機関の関与について説明するルース・ブリーチ(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

日本のメガバンクは、化石燃料事業に対して世界最大規模の資金提供を行ない、気候変動対策の流れと逆行しています。2023年のみずほの提供額(融資・引受)は世界第2位(約370億米ドル)、MUFGは世界第4位(約332億米ドル)でした。

「化石燃料ファイナンス 2023年のワースト12銀行」(化石燃料全部門への融資・引受額、2023年単年、単位:BILLION =十億ドル)

また、RANが米国の情報自由法(FOIA)で開示請求をして得た情報をもとに作成した報告書『リスク・エクスポージャー』により、SOMPOホールディングスがリオ・グランデLNGに損害保険を提供していることもわかりました。損害保険会社は化石燃料事業に不可欠な保険を提供することにより、気候変動の悪化を助長していることが問題視されています(詳しくはこちらのサイトを参照)。SOMPOホールディングスは、先住民族の権利保護に関する方針や人権デューディリジェンス・プロセスを導入していなく、早急に方針の強化が求められます。

5つのLNG事業の問題点

リオ・グランデ・バレー地域におけるLNG3事業の大きな問題点として、1)気候変動の加速、2)地域住民への健康被害、3)希少種の生息地の破壊、4)小規模産業への悪影響、5)先住民族の権利侵害があげられます。

 

 1) 気候変動の加速

LNGは、温室効果ガス(GHG)の排出量が低い『移行燃料』であるという認識が一部で存在しますが、LNGのおよそ90%以上が二酸化炭素の80倍以上の温室効果をもたらすメタンで構成されています。採掘や輸送におけるメタンの漏洩により、LNGは石炭と同等またはそれ以上に気候変動を悪化させると考えられています。ライフサイクル全体での排出を考慮すれば、リオ・グランデLNGからの年間GHG排出量は石炭火力発電43基分、テキサスLNGからは石炭火力発電7基分合計50基分にも相当するGHGが排出されると考えられているのです。

採掘地におけるフラッキング(水圧破砕法)による水質・大気汚染、地域住民の健康被害などの影響も深刻です。また、リオ・グランデLNGの事業者であるネクストディケイド社は裁判結果を受けて、唯一の気候変動対策であった炭素回収・貯留(CCS)事業についても、現時点では十分に開発が進んでいないとして申請を取り下げました。以上のことから、LNGを「移行燃料」と考えることは非常に危険であり、LNG事業の拡大はパリ協定の1.5度目標と整合しません。

 

 2) 地域住民への健康被害と「環境レイシズム」

米国メキシコ湾岸は国内で最も多くのLNG事業が乱立し、地域住民に犠牲を強いる犠牲地帯」と呼ばれています。これらの事業は、何千トンもの発がん性の有害汚染物質を周辺に撒き散らすと予想され、周辺住民への深刻な健康被害が懸念されています。(詳しくはFoEジャパンのブログを参照)このように米国全体の電力をまかなうために、有色人種や低所得者層、先住民族など社会的に弱い立場の人々が多い米国メキシコ湾岸のコミュニティに対して、公害などの環境問題を押し付けている様子は環境レイシズム(人種差別)」と批判されています。

ベッカ・ヒノホサ氏南テキサス環境正義ネットワーク共同創立者)は、MUFGの本社前で、雨の中以下の様に訴えました。「MUFGはリオ・グランデLNGから撤退すべきです。なぜなら、明らかに私たちの地域社会は、この事業を望んでいないからです。私たちのコミュニティに押し付けられたもので、環境レイシズムです。そしてこの事業は、先住民族の神聖な土地や聖地を破壊し、既にブルドーザーでそういった土地を踏み潰しています。ですから、私たちはここにいます。MUFG、私たちが引き下がることはありません。これからもこの事業に反対していきます」。

MUFG本社前でスピーチを行うヒノホサ氏(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

 3) 希少種の生息地の破壊

リオ・グランデ・デルタの湿地帯は、絶滅が危惧される猫科のオセロットノーザン・アプロマド・ファルコン、海にはケンプヒメウミガメやライスクジラなどの希少な生き物の最後のすみかとなっています。LNG施設が建設されれば、直接的な生息地の破壊と騒音や公害、汚染物質、タンカー船の往来などの影響により、複数の絶滅危惧種に恒久的かつ重大な」影響を与える可能性が指摘されています。

 

 4) 地域の小規模産業への悪影響

周辺地域の人々は豊かな自然の恩恵を受けて、主にエビ漁などの漁業やイルカウォッチなどのエコツアーで生計を立てています。これらのLNG施設は、地域経済にとって重要なこれらの小規模産業に悪影響を与える可能性があります。

 

 5) 先住民族の権利侵害

先住民族の権利侵害も深刻な問題です。リオ・グランデ・バレー地域の先住民族であるカリゾ・コメクルド族(彼らの言語ではエシュトク・グナ族と呼ぶ)は、数千年前から周辺で狩猟・採集・農業などを行い生活していました。リオ・グランデLNGの計画地の下には村の遺跡や貝塚などの歴史遺産、テキサスLNGの地下には『ガルシア牧地』と呼ばれる聖地が眠り、彼らはリオ・ブラボー・パイプラインの建設予定地の数エーカーを直接所有し、絶滅が危惧されるミツバチの養蜂を行っています。カリゾ・コメクルド族はこれらのLNG事業に強く反対していて、事業者は彼らと協議もしていません。

10月7日に行われた会見でカリゾ・コメクルド族チェアマンのフアン・マンスィアス氏は、先住民族の歴史と現状を説明し、テキサスにおける先住民族排除の歴史が現在のLNG事業の問題へとつながっていると語りました。「500年前、私達の民族はこの川沿いにやってきた人々によって侵略されました。かつて私達の民族は、このリオ・グランデ・デルタの美しい水の中で魚をとり生活していました。私達にとってリオ・グランデ川は最初の女性が生まれた場所であり、河口のデルタ地帯には確認されているだけでも32の集落があり、ガルシア牧地と呼ばれる聖地がありました。しかし現在、ガルシア牧地はワールド・モニュメント財団により『危機に瀕している歴史サイト』に認定されています。(LNG建設予定地のすぐ横を通る)運河の建設のために掘り起こされた土の中から、骨が見つかりました。それは私達一族のものです。私の中には彼らと同じ血が流れているのです。かつて声をあげることができなかった彼らの声を代弁することが、重要だと思います」

記者会見で民族の歴史とLNG事業の懸念を語るマンスィアス氏(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

 

西洋の入植者による先住民族の排除の歴史により、この地域では自分に先住民族の血が流れていることさえも知らされていない人も多く、カリゾ・コメクルド族の米国政府による認定に時間がかる現状があります。LNG事業者はこの状況を逆手に取り、カリゾ・コメクルド族の同意は不要として事業を進めています(より詳しくはこちらの英語記事を参照)。

問われる銀行の環境・人権への対応

国際連合が推奨する先住民族の権利保護のための「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」は、土地や資源開発を行う事業において、影響を受ける可能性のある先住民族に対し、事業に関する十分な情報開示を事前に行なった上で、賛成または反対の立場をとる事ができる様にすることを求める国際的な原則です。

FPICによると、先住民族の権利は国の認定に関わらず保証されるべきであり、MUFG、みずほ、SOMPOホールディングスは、グローバル企業としてこのような国際的な基準の遵守が求められます。事業に必要な資金を調達するための手法であるプロジェクトファイナンスの際に配慮すべき環境的・社会的影響の国際的な指針である赤道原則(エクエーター原則)においても、同様の基準が採用されています。MUFGおよびみずほは、赤道原則の遵守を誓約しているにも関わらず、リオ・グランデLNGのように先住民族の権利侵害が疑われる事業者への資金提供が以前から報告されていて、企業が事業活動において人権への影響を予測・評価・管理・改善するためのプロセスである人権デューデリジェンスの実効性が疑われます

RANでは引き続き、日本のメガバンクにリオ・グランデ・バレーの3つのLNG事業からの撤退と、人権方針の遵守と人権デューデリジェンスの確実な実行を求める活動を行っていきます。

会見にてリオ・グランデLNGの工事中止を求める代表団(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

 

署名に参加して、三菱UFJ銀行にLNG事業からの撤退を求めよう!

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日本外国特派員協会における記者会見の様子はこちら(英語動画)

 

RAN「責任ある金融」キャンペーナー 麻生里衣

プレスリリース:RAN新調査報告書『包囲下のオランウータンの首都』発表〜違法パーム油、日清食品などのサプライチェーンに混入の可能性が継続〜(2024/11/22)

インドネシア保護区での違法森林伐採、最新鋭の衛星画像調査で明らかに

  • インドネシアの野生生物保護区で、森林破壊の新証拠が最新鋭の衛星画像で明らかに。保護区内に652ヘクタール(東京ドーム約140個分)もの違法アブラヤシ農園を確認。
  • 消費財企業は違法パーム油が供給網に混入するリスクに、銀行は違法パーム油を調達する可能性のある顧客に資金提供するリスクにさらされている。
  • 調査結果は、企業の森林破壊禁止公約の実効性、EU新規制を遵守する準備が十分かどうか疑問を投げかけている。
  • 違法パーム油の問題が続くも、11月13日に行われた「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)年次総会では基準が弱体化された。


写真:違法アブラヤシ農園の一つ。ラワ・シンキル野生生物保護区内の泥炭林を伐採・排水して造成された。2024年9月、インドネシア・アチェ州

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は11月11日、タイ・バンコクで13日まで開催された「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)に合わせ、新報告書『包囲下のオランウータンの首都』を発表しました(注1)

本報告書は、インドネシア・スマトラ島の「ラワ・シンキル野生生物保護区」で、大規模な違法伐採が今も起きていることを明らかにしました。RANは7月、最新鋭の衛星画像「プレアデス・ネオ」による調査を実施し、国の指定する保護区がパーム油生産のために破壊されている実態を確認しました。RANは同保護区で2019年22年にも調査を行い、パーム油の原料となるアブラヤシの農園造成による森林破壊を発見して公表しています。この地域は生物多様性豊かなホットスポットで、「世界のオランウータンの首都」とも呼ばれる「ルーセル・エコシステム」の南部に位置します。

調査は今年7月、同保護区の泥炭林地域におけるアブラヤシ農園拡大の範囲を把握するため、エアバス社の「プレアデス・ネオ」衛星による飛行撮影を実施しました。この衛星画像は30cmという高い解像度をもち、これほどの高解像度画像が公開されたことは同地域では初めてです。画像分析の結果、同保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)に及ぶ違法アブラヤシ農園が存在し、そのうち453ヘクタール(同97個分)がアブラヤシ果実の生産が可能な土地であることを特定しました。

現地調査、消費財企業と製油企業のサプライチェーン分析を加えた一連の調査結果は、消費財企業と銀行の森林破壊禁止方針の実効性や、消費財企業とパーム油企業が2025年末に施行となる欧州連合(EU)の新規制「森林破壊禁止法(EUDR)」を遵守する準備が十分かどうか緊急の疑問を投げかけています。

図1:2016年と2024年の衛星画像比較:黄色が野生生物保護区の境界線(報告書より)

 

【調査概要】

■調査時期:2024年7月(衛星調査)、2024年9月〜10月(現地調査、サプライチェーン分析)

■調査地域:インドネシア・スマトラ島の「ルーセル・エコシステム」内、国の保護区「ラワ・シンキル野生生物保護区」上空および周辺

■対象消費財企業8社:日清食品、花王、プロクター&ギャンブル、ネスレ、モンデリーズ、コルゲート・パーモリーブ、ペプシコ、ユニリーバ(注2)

■対象銀行11社:三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ING、UBS、HSBC、ラボバンク、CIMB、メイバンク、BNPパリバ、UOB、DBS、OCBC(注3)

■調査方法:1)「プレアデス・ネオ」衛星画像分析(違法農園および森林・泥炭林減少の確認)、2)現地調査(アブラヤシ農園から搾油工場を追跡)、3)サプライチェーン分析(製油企業・消費財企業の調達先リストを分析)、4)資金提供調査(製油企業への銀行の資金提供額を調査、注4)、5)The TreeMap社との衛星画像分析(2016年6月に撮影された画像を用い、期間別の森林消失を分析)

【主な調査結果】

  • 広範囲に及ぶ違法アブラヤシ生産:ラワ・シンキル野生生物保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)の違法農園があり、そのうち果実の収穫可能な土地は453ヘクタール(同97個分)だった。これは違法生産されたパーム油がすでに世界の主要消費財企業や供給業者のサプライチェーンに混入している可能性を示唆している。
  • 影響を受ける消費財企業と銀行:プロクター&ギャンブル(P&G)、ネスレ、モンデリーズ、ペプシコ、日清食品などの大手消費財企業は、違法パーム油の調達が発覚したロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(子会社のアピカル)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Groupといった製油企業からパーム油を購入することでリスクにさらされている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ラボバンク、HSBCなどの銀行は、上記パーム油企業に資金提供をすることでリスクにさらされている。これらのパーム油企業は、RANの過去10年にわたる調査で、上記保護区で違法に生産されたパーム油を供給している搾油工場から油を調達していることが繰り返し明らかにされている。
  • 森林減少率の増加:国の法律で保護されている地域にもかかわらず、同保護区での森林伐採は2021年から2023年にかけて4倍に増加している。2016年以降の総伐採量の74%が、欧州連合(EU)の新規制「森林破壊禁止法(EUDR)」の森林破壊禁止の基準日(注5)である2020年12月31日以降に伐採されていることから、法的保護や規制要件が組織的に無視されていることを示している。
  • 新たな抜け穴:今回の調査では、裕福な土地投機家が小規模農家を装うことで、違法森林伐採への責任を回避する「パーム油ロンダリング」という新たな抜け穴が立証されている。

図2:ルーセル・エコシステム周辺の搾油工場からパーム油を調達している製油企業5社への融資・引受銀行と資金の流れ。上記11行はNDPE方針をもっている。2020年1月から2024年6月、単位:百万米ドル 出典:「森林と金融」データベース

 

パーム油産業はすでに「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ(NDPE)」方針を誓約し、EUDRは2025年12月31日の施行が提案されています。しかし今回の調査結果からは、こういった規制が採用された後も、違法伐採が著しく増加していることが浮き彫りになりました。RANはThe TreeMap 社とも衛星画像調査を行い、同保護区内で2016年以降に2,577ヘクタール(東京ドーム約551個分)もの森林が失われたことを確認しました。残念なことに、世界のパーム油産業が森林破壊禁止の基準日として設定した2015年12月から2020年12月の間に662ヘクタール、その後、EUDRの基準日である2020年12月以後には1,915ヘクタールの森林が皆伐されました(注6)。

本報告書は、違法な大規模アブラヤシ農園の破壊的な影響を明確に示しています。RANはこの違法農園がこの地域の森林破壊の主な原因であると特定しました。特に懸念されるのは、この環境危機をもたらしているのは小規模農家ではなく、土地投機家であるという点です。

RAN森林政策ディレクター、ジェマ・ティラックは「世界で最も重要な生態系のひとつが破壊され続けていることは、消費財企業や銀行、消費者への警鐘です。今回の調査で得られた証拠は、違法に皆伐された土地で生産されたパーム油がグローバルサプライチェーンに混入し、スマトラオランウータンのような象徴種が深刻な危機にさらされていることを明確に示しています。私たちが日常的に購入する製品、例えば化粧品のOLAY、ミロ、オレオ、ポテトチップスのLay’s、即席麺のカップヌードルなどのサプライチェーンには違法パーム油が混入するリスクがあり、その証拠も揃っています」と強調しました。

The TreeMap社のデビッド・ガヴォー(David Gaveau)博士は「今回初めて、時を得た衛星画像によってラワ・シンキル野生生物保護区におけるパーム油危機の全容が明らかになりました。最新鋭の衛星画像は、アブラヤシの木々や苗木の一本一本まで細かく捉えることができます。この高度なツールが公開されたことで、以前は無料の衛星データで見逃されていた違反行為も記録できるようになりました」と語りました。

 

13日、RSPOはバンコクで開催された年次総会において、認証基準改訂版(「RSPO原則と基準2024」)の承認を決議しました。RSPOは森林破壊禁止の基準日(2018年11月)を削除し、森林破壊禁止を実施するために使われる信頼できる従来の定義を、独自に作成した欠陥のある定義に置き換えて、基準を弱体化させました。ティラックは「違法に生産されたパーム油は、RSPOの『マスバランス』方式を通して世界の市場に流通しています。この方式では、認証農園で生産されたパーム油に非認証油が混合される問題があります。RSPOは、消費者や市場からの信頼を維持したいのであれば、その基準を強化する必要があります。今回の基準改訂は、執行力の欠如、腐敗した監査プロセス、欠陥のある苦情処理メカニズムによってもたらされた欠陥だらけの認証制度をさらに弱体化するものです」と批判しました(注7)。

 

RANは、消費財企業、パーム油企業、金融機関が直ちに協力し、保護区のあるシンキル・ベンクン・トゥルモン地域の保護に向けて持続可能な解決策に投資するよう強く求めています。熱帯低地林と泥炭地の保護を優先しつつ、同時に地域住民の権利と生業を尊重するコミュニティ主導の農業を育成するという、将来の見通しを共有することが必要です。

RANは、本報告書で言及された全ての消費財企業と銀行に連絡を取り、その回答は報告書に含まれています。さらに詳細な情報や分析、衛星画像については、RANの監視専用プラットフォーム「Forest Frontlines」および「Nusantara Atlas」をご覧ください。

 

注1)RAN報告書(英語)『包囲下のオランウータンの首都』(‘Orangutan Capital’ Under Siege)

注2)対象とした消費財企業8社の調達先搾油工場一覧には、違法パーム油購入が明らかになった搾油工場企業 (PT. Global Sawit Semesta:PT. GSS)が記載されていた。各社リストのリンクは報告書を参照のこと。

注3)

a) ラワ・シンキル野生生物保護区とルーセル・エコシステム周辺の搾油工場からパーム油を調達している5社、
b) 違法パーム油を調達している搾油工場企業からパーム油を調達している製油企業を特定し、該当企業に資金提供をしている、または過去にしていた銀行を対象とした。

上記製油企業5社はロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループ(アピカル・グループ)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Group、ウィルマー・インターナショナル、シナルマス・グループ(ゴールデン・アグリ・リソーシズ:GAR)である。そのうち、RGE、ムシムマス、Permata Hijau Groupは上記  b)に該当する。

注4)製油企業と銀行

RGE、ムシムマス、Permata Hijau Group:MUFG、欧州の銀行ING、UBS、HSBC、ラボバンクなどから資金提供を受けている。

ウィルマー、GAR(最新搾油工場一覧にPT. GSSは含まれていないが、過去に調達していたことがある):MUFG、マレーシアの銀行CIMBとメイバンク、フランスの銀行BNPパリバ、シンガポールの銀行UOB、DBS、OCBCから資金提供を受けている。出典:「森林と金融」データベース

注5)「基準日」:カット・オフ日ともいう。基準日以降に森林伐採・転換が行われた場合、その地域や生産単位が、森林伐採や転換を行わないという約束、方針、目標、その他の義務に違反していると見なされる。アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)の定義を参照のこと。

注6)EUDR施行後は、2020年12月31日以降に森林伐採・劣化の起きた場所で生産された商品が、EUへの輸出不可となる。

注7)RAN声明:RSPO認証基準改訂について(英語)

 

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。


本件に関するお問い合わせ

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本
Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:危険なLNG事業を支援する邦銀に要請、 米メキシコ湾岸の住民代表団が初来日(2024/10/8)

日本の金融機関に健康、文化、経済、野生生物を脅かす化石燃料事業への支援停止を訴え

(東京)10月7日から10日、米国テキサス州リオ・グランデ・バレーの活動家であり地域住民の代表が初来日しています。代表団は来日中、米国南部メキシコ湾岸地域のLNG(液化天然ガス / メタンガス)事業と関係がある日本のメガバンクおよび保険会社と東京で会合を持つ予定です。※写真を更新(10月10日)

東京・日本外国特派員協会での記者会見、2024年10月7日 ©︎ RAN / Masaya Noda

三菱UFJフィナンシャル・グループ宛の署名数を手に会談に向かう代表団、2024年10月9日
©︎ Yuki Sekimoto / RAN

代表団 3名

・フアン・マンスィアス(テキサス州カリゾ・コメクルド族チェアマン)
・ベッカ・ヒノホサ(南テキサス環境正義ネットワーク共同創立者)
・ディナ・ヌニェス(南テキサス人権センター シニア・オーガナイザー、Vecinos para el Bienestar de la Comunidad Costeraシニア・オーガナイザー)

代表団は、米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)とともに、日本の保険会社および三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などメガバンクの代表者と面会し、先祖伝来の故郷の土地を破壊し、地域のエコツーリズムを衰退させ、絶滅危惧種を脅かす大規模なLNG(メタンガス)事業(※)への支援停止について話し合う予定です。(※)リオ・グランデLNG輸出施設、テキサスLNG輸出施設、リオ・ブラボー・パイプラインの3事業

代表団のコメント

フアン・マンスィアス
「企業はこの土地を占拠しようとしています。化石燃料で富を得るお金持ちのためにです。LNG事業は私たちの空気や水を汚染し、先祖代々の土地を冒涜します。企業はこの土地を破壊しようとしています。しかしそのためには、私たちの民族を滅ぼさなければなりません。私たちはそれを許しません。私たちはもう脅しには屈しません」

日本のメガバンクであるMUFG、みずほフィナンシャルグループ、SMBCグループは、リオ・グランデLNG輸出基地を含め、LNG拡大企業への資金提供で世界の上位にあります。世界主要60銀行への資金提供(融資・引受)を分析調査した「化石燃料ファイナンス報告書」(Banking on Climate Chaos )によると、メガバンク3行は2023年単年とパリ協定以降の提供額の両方で上位10社に入っています。メガバンクには、メタンガスの新規および拡大事業への支援を除外する方針はなく、問題の多い化石燃料からの脱却を顧客企業に促す方針もありません。これはオランダのING銀行が発表した、2026年までにLNG(メタンガス)への投資を段階的に停止するという新方針や、フランスのラ・バンク・ポスタルが発表した、2022年までにすべての化石燃料への投資を停止するという方針とは対照的です。上記報告書によると、アジアの銀行は、気候変動や人権に関する方針において欧州の銀行に遅れをとっています。

ベッカ・ヒノホサ
「これらのメタンガス事業は、地元の低所得者層や野生生物に多大な汚染による危険をもたらします。それは否定できません。私たちのコミュニティはすでに、これらの事業に対する訴訟に勝訴しています。しかし、リオ・グランデLNG輸出施設は法の抜け穴を理由に、いまだにコンクリートを流し、神聖な野生生物の生息地を更地にしています。日本企業は、これらのLNG事業への支援をやめるべきです。そうすれば、事業を完全に停止させることができます」

人々が住み続けることのできる気候を実現するために、金融機関は化石燃料への資金提供を段階的に減らしていかなければなりません。しかし、前述の「化石燃料ファイナンス報告書」によると、銀行は2023年に化石燃料産業に7,058億米ドルの資金提供(融資・引受)を行ない、誤った方向に進んでいます。そのうち、1,209億ドルがLNG(メタンガス)拡張事業に使われています。リオ・グランデ地域のLNG(メタンガス)施設のステークホルダー(利害関係者)からなる代表団は、東京を訪れ、大手金融機関がこれらの化石燃料事業への支援を停止するよう要求する予定です。

ディナ・ヌニェス

「強力な組織化と、地域社会の意思の強い人々のおかげで、ワシントンD.C.(米国コロンビア特別区控訴裁判所)が3つの事業への承認を取り消すという良い判決が下されました。私たちは、リオ・グランデLNGのような巨大事業を打ち負かすことができるとわかっています。そして今、私たちは日本企業が正しい決断を下すよう求めます。そして、このような有害な採取事業への資金提供や支援を廃止するよう求めます」

LNG(メタンガス)に関する日本の金融が及ぶ範囲は、メキシコ湾岸地域を超えて広がっています。日本は、LNG輸出施設への国際的な公的金融の世界最大の資金提供国です。2012年から2022年までに建設されたLNG(メタンガス)輸出施設と、建設中または2026年までに完成予定の輸出施設に提供された世界の公的金融の約50%を占めています。日本はメタンガスへの公的資金提供でも世界トップクラスであり、毎年平均で約43億ドルを提供しています。

英語版はこちら “Japanese Banks Backing Dangerous LNG/Methane Projects: Gulf Coast Community Leaders visit Tokyo to demand that Japan’s financial institutions stop supporting dirty fossil fuel projects that threaten their health, culture, economy and wildlife” 

東京・丸の内の記者会見場にて意気込みを見せる代表団、2024年10月8日 ©︎ RAN / Masaya Noda

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。

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