サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース:明治を東京五輪パーム油調達コード違反で通報〜ライセンス菓子商品について〜(2021/7/9)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)と熱帯林行動ネットワーク(東京都渋谷区、以下JATAN)は、7月8日、明治の東京五輪ライセンス商品におけるパーム油調達が東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」に違反した疑いがあるとして、緊急事態宣言下での五輪開催に批判が高まる中、パーム油の利用が本格化する開幕直前に東京2020組織委員会へ通報を行いました。

写真:インドネシア「ルーセル・エコシステム」内のシンキル・ベンクン熱帯低地林地域。
パーム油生産の農園開発のために排水され、火入れで皆伐された泥炭林 ©Nanang Sujana / RAN

通報の対象(注1)は、東京2020大会スポンサー企業である株式会社明治が2019年7月に販売開始した、東京2020公式ライセンス商品「チョコレートスナック」です(注2)。東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」(注3) と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」(注4)では、法令遵守、環境保全、先住民族等の権利尊重の基準を満たした形での生産を求めています。しかし、RANが2019年に発表したインドネシアの熱帯林「ルーセル・エコシステム」での調査事例を元に分析した結果、明治のパーム油サプライチェーンには現地での違法農園開発や、泥炭地および熱帯林破壊、地域住民の土地権侵害などに関与する企業が含まれている疑いがあることが明らかになりました。2021年6月にも、森林破壊に関与して問題となっているインドネシア現地企業からのパーム油が日本を含むサプライチェーンから排除できていないことが見つかっています。

このような違反事例が起こる背景には、五輪パーム油の調達がRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)などの認証制度に依存している現状があります。明治をはじめ日本企業は、非認証油が混合されているRSPO「マスバランス」方式のパーム油を調達していることから、サプライチェーンで起こる問題を防ぐことができていません。パーム油の利用が本格化する開幕を前に、東京五輪の調達基準の不足点を顕在化させることも今回の通報の目的です。

【通報の概要】

通報者:
●熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
●レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
●インドネシア「ルーセル・エコシステム」熱帯林(通報者に生じる負の影響を説明する必要があるため追加)

被通報者:
●株式会社明治(五輪スポンサー企業「東京2020ゴールドパートナー」)
●明治ホールディングス(HD)株式会社(明治グループ全体のパーム油調達方針を策定)
●東京2020組織委員会(「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」の制定主体)

通報先:東京2020組織委員会

内容:明治が調達しているパーム油における調達コードおよび基準違反の可能性について、同社のサプライヤー企業(不二製油)のパーム油調達先(搾油工場や農園)で起きている環境・社会問題を指摘。

通報の目的:
東京2020大会で調達するパーム油の持続可能性(注5)の担保方法としてISPO(インドネシア政府主導のパーム油認証)、MSPO(同マレーシア)、RSPOの認証制度が認められている。特にRSPOでは非認証油の混入が可能な「マスバランス方式」も活用可能で、東京五輪の調達コードや調達基準を満たしていないパーム油が利用されるリスクを排除できていない。今回の通報で、森林破壊や違法な農園開発、土地紛争を引き起こした企業から調達したパーム油が日本市場で流通してきたことを示すとともに、パーム油調達基準の不足点を顕在化させる。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸は「今回の通報によって、明治のサプライチェーン管理を改善するとともに、五輪調達の持続可能性に配慮した基準の担保方法が不適切な認証システム(RSPOマスバランス方式)に依存している現状を示すことができます。東京2020組織委員会および関連企業は、こうした問題を認識して調査を行い、『持続可能性大会後報告書』で報告する必要があります。調達基準の不足点および改善点を『東京五輪のレガシー』として残し、問題のあるパーム油を市場から排除する仕組みを促進していきたいです」と訴えました

熱帯林行動ネットワーク(JATAN) 事務局長の原田公は「今回の通報は、東京五輪の持続可能性の調達基準が、パーム油の持続可能性への配慮を必ずしも担保するものでないことを示しています。調達基準の名称が、他の品目では「持続可能性に配慮した◯◯の調達基準」となっているところ、「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」とされたことも、持続可能性の確認方法の不十分さを最初から認めていることを表しています。
オリンピックとパラリンピックで、どのような物品やサービスにパーム油が利用されているかは不明です。このライセンス商品以外でも同様の問題が発生している可能性があることから、会場や選手村で使用されるパーム油全体の利用状況についても情報を公開するとともに、今回の通報を受けて、組織委員会には、指摘した基準違反が疑われるような調達先からの利用がないかの実態調査を行い、基準の遵守状況を確認することが求められます」と指摘しました。

【通報の詳細】

明治のサプライヤー企業である不二製油が公開している搾油工場リスト(注6)および苦情処理リスト(注7)には、環境・社会面での諸問題が判明している搾油工場・農園企業が含まれている。東京五輪のパーム油調達コードでは、法令遵守、環境保全、先住民族等の権利尊重の基準を満たした形での生産を求めているため、調達コードに違反するパーム油が明治の東京五輪のライセンス製品に含まれていた可能性がある。

インドネシアの搾油工場・農園企業の主な事例:

スマトラ島北部にある「ルーセル・エコシステム」内のシンキル・ベンクン地帯では、以下の調査事例がRANの報告で明らかになっている。保護区の近隣にある搾油工場では、農園企業の生産状況について十分な確認が行われていなく、下記のような問題を抱えるパーム油が調達されていた。

1) 「ラワ・シンキル野生生物保護区」内での違法農園開発(注8)、2019年10月発表

2) 生態系を保全せず、また泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域の適切な保全をせずに熱帯林破壊を行なっている農園企業からの調達(注9)、2019年10月発表。継続調査により調達の継続を確認(注10)、2021年6月

3) 農園企業による地域住民の土地権侵害(注11)、2019年11月発表など。

通報の背景・明治とのやりとり:

明治HDは、2019年9月にパーム油の調達ガイドラインを策定し、2020年2月に森林破壊ゼロを支持を加える形で改定が行われた。しかし、これは東京五輪の「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」の確認方法に従った、持続可能性の担保が不十分なものだった。

RANとJATANは2020年に、明治HDに対して、上記の問題事例を示した文書を送付し、同社調達方針の改善を含めて対応を求めた。明治HDは2021年1月、グループ全体のパーム油調達ガイドライン(注12)でNDPE方針(No Deforestation, No Peat and No Exploitation:森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)に基づく調達方針へと一定の改善が行われた。上記の事例が示すような個別事例については、引き続き、明治にサプライヤーへの対応状況を確認するよう求めている。 

*報道関係の皆様:通報文書の閲覧をご希望の場合はご連絡ください。

注1)東京2020組織委員会「『持続可能性に配慮した調達コード』に係る 通報受付窓口 業務運用基準」

※対象案件は「本通報受付窓口は、東京 2020 組織委員会の調達する物品・サービス及びライセンス商品(以下「調達物品等」といいます。)に関する案件であって、調達コードの不遵守に関する通報(調達コードの不遵守又はその疑いを生じ得る事実をその内容とするもの) について取り扱うことができるものとします」と定義されています。(太字はRANで強調)

注2)株式会社明治は「東京2020ゴールドパートナー」。

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催まであと1年!『チョコレートスナック』<東京2020オリンピックマスコット/東京2020パラリンピックマスコット>7月23日 新発売」、2019年7月10日

注3)東京2020組織委員会「持続可能性に配慮した調達コード」

注4)東京2020組織委員会「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」
①生産された国または地域における農園の開発・管理に関する法令等に照らして手続きが適切になされていること。
②農園の開発・管理において、生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること。
③農園の開発・管理において、先住民族等の土地に関する権利が尊重され、事前の 情報提供に基づく、自由意思による合意形成が図られていること。
④農園の開発・管理や搾油工場の運営において、児童労働や強制労働がなく、農園 労働者の適切な労働環境が確保されていること。

注5)「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」では、法令等の遵守、泥炭地や天然林を含む生態系の保全、先住民族等の権利尊重、適切な労働環境を確認することが規定されている。また、調達全般を規定している「持続可能性に配慮した調達コード」においても、(1)全般の1で「法令遵守」、(2)環境の7で「資源保全」、(3)人権の1で「国際的人権基準の遵守・尊重」が規定されている。

注6)不二製油の搾油工場リスト(2020年7月15日、英語)

注7)不二製油の苦情処理リスト(2020年3月25日更新、英語)

参考:不二製油「責任あるパーム油調達に関する取組み状況について」2020年6月30日

注8)RANプレスリリース「三菱UFJ、高リスクのパーム油企業へ資金提供 〜違法パーム油およびインドネシア泥炭林破壊とのつながりが明らかに〜炭素を豊富に含む『ルーセル・エコシステム』のシンキル保護区で違法栽培」 (2019年10月18日)

注9)RAN, “Major Brands Again Caught Sourcing Deforestation-Linked Palm Oil” (2019年10月29日、英語)

注10)RAN, “Indonesian Forestry Titan Royal Golden Eagle Remains a Major Roadblock to Progress in Saving Leuser Ecosystem“(2021年6月23日、英語)。
注9の森林破壊を継続して問題となっている農園企業からのパーム油が、注8で指摘された違法なパーム油購入で問題となった搾油工場のPT.Global Sawit Semestaを通じて、ロイヤル・ゴールデン・イーグルグループ(RGE)に調達されていることが確認された。RGEグループはインドネシアの財閥企業グループで、日本にも大量のパーム油を供給している。

注11)RAN, “Community Struggles for Land Rights and Livelihoods in Singkil-Bengkung region” (2019年11月25日)

他の事例とRAN報告(英語)へのリンクは以下の通り

●調達している搾油工場は不明だが、残された天然林の皆伐を継続している企業がパーム油原料のアブラヤシの実の出荷を開始した。日本にも供給される可能性がある。
https://www.ran.org/leuser-watch/chainsaws-enter-indonesias-orangutan-capital/

2020年12月に、ようやく森林破壊を停止することを発表し、NDPE方針の採用に至った。
https://www.ran.org/leuser-watch/conservation-breakthrough-for-the-leuser-ecosystem/

●絶滅危惧種(スマトラゾウ)の生息地の皆伐と違法な火入れや森林破壊を続けている農園企業の事例。
https://www.ran.org/leuser-watch/elephant-habitat-under-fresh-attack/

2021年3月にも、スマトラゾウの移動経路の森林破壊を継続していることが確認された。
https://www.ran.org/leuser-watch/procter-gamble-other-brands-implicated-as-critical-rainforests-continue-to-fall-in-leuser-ecosystem/

●泥炭地での絶滅危惧種(オランウータン)の生息地への違法な火入れを行ったことで罰金支払い判決がでている農園企業の事例。
https://www.ran.org/leuser-watch/will-nestle-and-mars-intervene-to-protect-indonesias-peatlands/

注12)明治ホールディングス「明治グループ調達ポリシー:パーム油調達ガイドライン」
https://www.meiji.com/sustainability/policy/pdf/palm_oil_procurement_guideline.pdf
https://www.meiji.com/sustainability/policy/

団体紹介

レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)は、マレーシア・サラワクでの熱帯林破壊の問題に取り組むため1987年に設立された団体。近年はインドネシアにおける紙・パルプやパーム油、サラワク産の合板製品を中心にキャンペーンを展開しており、サプライチェーンに連なる日本企業などへの働きかけを行っている。http://www.jatan.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:日清食品株主総会でアピール「2030年まで問題あるパーム油を使い続けないで! 」(2021/6/25)

〜日清 持続可能なパーム油100%、国内即席めんは「2025年」と約束 
ただしグローバル目標は2030年度で据え置き〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日25日、日清食品ホールディングスの第73期定時株主総会に参加し、株主に向けて、同社にパーム油調達目標「2030年度に持続可能パーム油100%達成」(注1)の前倒しを求めるよう、会場前でアピールしました。また、総会で経営陣に目標の大幅な前倒しを求めたところ、国内即席めんについては「2025年に100%を達成」するとの回答がありました。しかし、グループ全体のグローバル目標が据え置きになっているとして批判しました。

RANと「ウータン・森と生活を考える会」のスタッフとボランティアは、会場のホテルニューオータニ大阪前で「日清さん、2030年まで問題あるパーム油を使い続けないで! 」と書かれたバナーを掲げ、熱帯林保護、生態系保護、人権尊重における問題を先送りしないよう訴えました。RANは2019年にインドネシアで現地調査を行い、日清食品を含む大手消費財企業が、スマトラ島の貴重な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」で熱帯林および泥炭地破壊や土地紛争を引き起こしていた現地企業からのパーム油を利用していた複数の搾油工場が日清食品のサプライチェーンに含まれていたことが明らかになっています(注2)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は、総会で株主として発言し、「日清食品は2030年度までに持続可能なパーム油のみを調達するという目標を掲げていますが、他のグローバル企業は2020年を森林減少阻止の目標にしていました。達成できなかったものの、目標年を2022年や2023年に変えて取り組んでいる企業もあり、日清食品の取り組み状況は大きく見劣りします」と、目標の前倒しを求めました。

それに対して日清食品は「持続可能なパーム油100%については、国内即席めんの目標を2025年度とし、 国内即席めん以外のグループ全体のグローバル調達についての目標年は2030年のままです」と回答しました。

RAN川上は「日清食品は株主総会の場で、国内即席めんのパーム油調達2025年までに100%持続可能にすると約束しました。これは改善といえます。ただ、即席めん以外の国内調達や、米州および欧州、アジアで展開するグループ全体の目標は2030年度のままで、問題が先送りになる懸念は払拭されていません。また、これらの目標をどのように達成するかといった見通しや実施計画の内容、そして目標達成の確認方法も不明確です。グローバルカンパニーの対応としては不十分です」と批判しました。

日清食品は昨年8月、同社ウェブサイト「持続可能なパーム油調達コミットメント」でパーム油方針強化を公表しました。方針には責任あるパーム油生産に欠かせない国際基準である「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE:No Deforestation、No Peat、No Exploitation)に沿った項目が含まれ、森林破壊や森林火災、そして炭素を豊富に含む泥炭地開発の禁止、また先住民族および地域住民の権利尊重と土地権侵害の禁止が明記されています(注3)

一方、日清食品が調達している「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)認証パーム油は「マスバランス方式」で、生産地の追跡ができない問題のあるパーム油も混合されています。同社は「持続可能なパーム油100%」について、「RSPO認証パーム油の調達に加え、独自アセスメントにより持続可能であると判断できるパーム油のみを調達する」と説明しています。しかし「独自アセスメント」の説明は少なく、RANとしては、同社は供給業者の方針遵守状況を監視し、独立した第三者機関による検証を行う必要があると考えます。

RANはオンライン署名「日清食品さん、2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!」を昨年11月から実施し、日清食品に目標年の前倒しを求めています(注4)。これからも引き続き消費者の方々とともに声を高めていきます。

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注1)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略『EARTH FOOD CHALLENGE 2030』始動!」、2020年6月9日

注2)RANプレスリリース「日清食品を東京五輪調達コード違反で通報 〜ライセンス商品のパーム油について〜」(2020/7/1)

※「ルーセル・エコシステム」内シンキル・ベンクン地帯では、以下の環境・社会面での事例がRANの調査で明らかになっています。
1) 「ラワ・シンキル野生生物保護区」内での違法農園開発
2) 生態系を保全せず、また泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域の適切な保全をせずに熱帯林破壊を行なっている農園企業からの調達
3) 農園企業による地域住民の土地権侵害、など

日清食品ホールディングス株式会社「2020年7月 当社商品の原材料(パーム油)調達に関する指摘について」、2020年8月

RANの通報した日清食品製品は東京五輪ライセンス商品ではありませんでしたが、日清食品のパーム油サプライチェーンに、環境・社会面での問題が指摘されている複数の搾油工場が含まれていたことが確認されました。

注3) RANプレスリリース「日清食品、パーム油調達で森林破壊・泥炭地開発・搾取ゼロを約束」(2020/8/20)

NDPEについては、以下、日清食品ホールディングス「持続可能な調達:持続可能なパーム油調達コミットメント」より抜粋

日清食品グループは、NDPE (No Deforestation、No Peat、No Exploitation=森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ) を支持し、取引先等のステークホルダーの協力を得て、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油を調達します。

●保全価値の高い (HCV: High Conservation Value) 地域および炭素貯蔵力の高い (HCS: High Carbon Stock) 森林の保護、森林破壊ゼロ
●深さに関わらない泥炭地の新たな開発禁止
●植栽や土地造成、その他開発のための火入れ禁止
●先住民族・地域住民の権利尊重・土地権侵害の禁止
●RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議) が定める「原則と基準」の遵守
●農園まで含めたトレーサビリティの確認

注4)RANプレスリリース「日清食品に新署名開始『2030年まで、問題あるパーム油を使い続けないで!』」(2020/11/13)

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:森林&人権方針ランキング2021発表〜日清食品、花王、三菱UFJは低評価 〜 (2021/4/27)

各社、取り組み遅れ〜森林破壊と人権侵害をもたらす消費財企業・銀行17社の実施方針を比較〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日27日、新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2021」(注1)を発表しました。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業と銀行の17社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価した結果、自社サプライチェーンおよび投融資で森林破壊と人権侵害を止めるために適切な措置を講じている企業と銀行は一社もないと結論づけました。人権侵害には土地収奪や地域住民および先住民族への暴力なども含まれます。

本ランキングは、日本企業の日清食品ホールディングス、花王、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)を含むグローバル消費財企業と銀行の17社を対象に、森林と人権分野の10項目を20点満点で評価しています。得点に合わせてA(18〜20点)、B(15〜17点)、C(12〜14点)、D(5〜11点)、不可(0〜4点)で評価しました。最も高評価だったのはユニリーバですがCランクにとどまり、日本企業はいずれも最低ランクの「不可」でした。

主な森林・人権方針の評価項目(全10項目、各2点)

「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)採用:パーム油や紙パルプなど森林破壊を引き起こす産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準(注3)

「森林フットプリント」開示:サプライチェーンや投融資先の事業が影響を与える森林の総面積(注4)

「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注5)

暴力や脅迫への「ゼロトレランス」(不容認)方針の有無

NDPE方針遵守の証明・独立検証、など

日本企業は3社とも方針にNDPEを限定的ながら採用するも、森林フットプリント開示、FPIC原則の実施、ゼロトレランス方針の有無、NDPE方針遵守の証明では得点がなく、総合点は2〜4点という低評価となりました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「日清食品、花王、三菱UFJはいずれも低評価だったのは残念です。3社ともベストプラクティスである『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)を方針に採用したことは評価できます。しかし同時に、自社のサプライチェーンや投融資先で起きている人権侵害を止めるための方針策定が急務です。さらにNDPE方針の適用セクターの拡大や遵守のための独立検証、森林フットプリントに代表される情報開示といった、具体的な取り組みを進める必要があります」と訴えました。

日本企業各社の点数と評価概要、改善点

日清食品(2点):グループ全体の調達方針に「NDPEを支持する」と記載しているが、消費財企業10社で最も低評価だった。改善のためには、グループ調達方針に供給業者が遵守すべきNDPE項目を明記し、供給業者にNDPE採用を義務付ける必要がある。またパーム油の搾油工場リストといった供給業者の情報開示を通して、生産地の現状把握と問題対応のための体制強化を行う必要がある。持続可能なパーム油100%調達を2030年までに達成するという目標も大幅な前倒しが必要。

花王(3点):原材料調達ガイドラインで森林破壊ゼロを支持し、人権方針で人権尊重を支持している。供給業者や合弁企業側のグループ全体でのNDPE遵守を要請はしているが、NDPE方針採用の義務化が必要。2021年の活動方針に「人権擁護者への暴力や不当告発、脅迫などを容認しない」とあるが、企業方針となっていないので国際基準のゼロトレランス・イニシアティブ(注6)に沿った企業方針としての公表が必要。そしてインドネシアでの森林フットプリントを作成し公表する迅速な動きが求められる。

MUFG(4点)環境・社会方針を4月26日に改定し、投融資先に「NDPE遵守の公表」の要求を追加したがパーム油の農園企業に限定され、パーム油購入企業や、紙パルプや大豆など他の森林リスク産品セクターには適用されなかった。MUFGはパーム油セクターへの融資・引受額が東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、紙パルプ産業にも多額の融資を提供している。今後、NDPE方針の適用拡大と、投融資先にNDPE方針遵守のための独立検証を求めていくことが課題になる。

17社の消費財企業・銀行の持つ影響力

評価対象となった企業や銀行の多くは、「森林破壊禁止」と先住民族の権利および人権尊重の達成のために、国連「持続可能な開発目標」(SDGs 15.2:2020年までに森林減少阻止)への賛同をはじめ様々なコミットメントを表明して自社方針を策定してきました。しかし、インドネシアの熱帯林と世界中の熱帯林はパーム油や紙パルプ、牛肉、大豆、カカオ、木材製品といった産品のために伐採されて火を入れられ、さら地にされています。

川上は「評価対象となった消費財企業と銀行は熱帯林破壊や土地収奪、人権擁護活動家の殺害といった問題に対して大きな影響力を持っています。なぜならば、インドネシアで大規模な森林破壊や人権侵害を行っている林業やアグリビジネス企業は、グローバル消費財企業との取引に支えられ、大手銀行からは多額の資金が流れているためです。今回の評価と分析からは、人権侵害や森林破壊を止めるための方針策定と、具体的な取り組みを十分に実践している企業がないことが明らかになりました」と指摘しました。

今回の評価では、以下の通り、方針の実施を改善するために必要な手順も示しています:

●第一段階として、自社のサプライチェーンや投融資から森林破壊と人権侵害を停止するための方針を採用すること

●自社事業が森林と先住民族・地域コミュニティの権利に与える影響の全容を公表すること

●暴力的行為を未然に防ぎ、先住民族・地域コミュニティの権利が十分に尊重されることを保証していること

●供給業者や投融資先企業の自社方針遵守を証明すること

森林、特に熱帯林は温室効果ガスを吸収して貯留し、地球全体の降雨量を維持しています。インドネシアの森林は地球で3番目に大きな熱帯林で、地球全体の気候と生物多様性の危機に対処する上で重要な役割をもちます。インドネシアの先住民族と地域コミュニティは森林減少を効果的に防いできた守り手であり、何世代にもわたって森林を上手に管理してきました。そして今、自分たちの同意なしに土地や森林を搾取しようとする様々な企業に抵抗しています。

さらなる森林破壊と人権侵害を防ぐために、森林破壊と人権侵害を行う大手アグリビジネス企業と林業企業に対して大きな影響力をもつ消費財企業と銀行は、実質的な行動を早急に取ることが要求されます。

注1)新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2021〜森林破壊と人権侵害をもたらす企業と銀行の実施方針を評価〜」(日本語版)

方法論等の詳細は英語版を参照ください:「 Keep Forests Standing: Evaluating Brands and Banks Driving Deforestation and Human Rights Abuses」

注2)消費財企業(10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース
銀行(7社):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある上記の消費財企業・銀行17社に実際の行動を起こすよう要求しています。注3)〜注5)の参考資料としてもご参照ください。

注3)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い(High Carbon Stock:HSC)森林の保護、保護価値の高い(HCV: High Conservation Value)地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止といった要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。

注4)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注5)「FPIC」(エフピック)とは Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注6)「ゼロトレランス・イニシアティブ」ウェブサイト

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず(2021/4/26)

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークの改定について 」(注1)における「特定セクターに係る項目」の石炭火力発電セクターおよび森林、パーム油セクターに関するファイナンス方針の改定を公表しました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「本改定は、いくつかの部門において対策強化が図られていますが、急を要する気候危機への対応として、なお不十分なものです。日本の金融機関を代表するMUFGには今後、パリ協定の1.5度目標達成に整合した、より野心的な石炭関連の方針を策定し、その他化石燃料や森林破壊を引き起こす産品に関する方針の強化を期待します」と述べました。

本改定でMUFGは、石炭火力発電所の新設に加え、既存発電設備の拡張にも原則としてファイナンスを実行しないと規定しましたが、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合があります」と例外を残しています。CCUSも混焼も2030年までの削減にはほとんど寄与しないと考えられており、石炭火力を延命することにすぎない技術です。これらの技術への支援はパリ協定と整合しません。

国際環境NGO 350.org Japan代表である横山隆美は、「MUFGのセクター方針のスコープは基本的にプロジェクトファイナンスに限定されており、コーポレートファイナンスは含まれていないことは大きな懸念事項です。「脱石炭リスト(Global Coal Exit List)」投融資調査 (注2、3)によると、MUFGの石炭産業 への融資は世界第3位です。石炭火力セクターのポリシーとしてはバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンスへと拡大し、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を策定すべきですが、今回の改訂では踏み込めていません」と指摘しました。

MUFGはまた、熱帯林破壊を引き起こしている企業に資金提供を行っている世界有数の金融機関であり、パーム油および紙パルプセクターの顧客企業に関連するESG(環境・社会・ガバナンス)リスクへのエクスポージャーが高い銀行です。特にパーム油セクターへの融資・引受額は東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、インドネシア6位のバンクダナモンを買収して東南アジアでの存在感を高めつつあります。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「今回の方針改定でパーム油セクターにおいて『森林破壊ゼロ、 泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を遵守する旨の公表を求める』ことが追加されたことは評価できます。しかしNDPE基準の適用はパーム油のプランテーション企業に限定され、パーム油購入企業には適用されず、そして紙パルプなど熱帯林や泥炭地の破壊を引き起こしているパーム油以外の産品に対しても適用されなかったことは非常に残念です。そしてNDPE方針を遵守するための独立検証を求めていないことも課題です。農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは、気候対策面からは大きな失敗といえます」と指摘しました。

今回の改定ではまた、石油・ガスセクター方針に何らの変更がなく、パリ協定の目標に沿ってフェーズアウトする約束がされなかったのは大きな懸念です。マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGを始め日本の金融機関は化石燃料企業へのエクスポジャーが大きく、中でもMUFGは今年3月にRAN他が発表した調査(注4) では、過去5年間の化石燃料事業への融資・引受額で世界第6位を占め、アジアで第1位を占めました。本改定をもってしても、MUFGの化石燃料セクターポリシーは、諸外国の金融機関と比べても極めて不十分です。昨今、世界の投資家や金融機関による2050年ネットゼロ実現に向けて、投融資による排出をゼロにするコミットメントが相次ぐ中、MUFGは遅れをとっています。」と述べました。

気候ネットワークおよび環境NGOに所属する個人株主3名は今年3月 、MUFGに対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めた株主提案を提出しました(注5)。本改定内容は提案内容とはいまだに乖離があり、パリ協定1.5℃目標に整合していると理解できるものではありません。今後、株主としてMUFGと引き続き協議を進めてまいります。

注1)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2021年4月26日

注2)共同プレスリリース「日本の金融機関が石炭産業への融資総額で世界第1位に」、2021年2月25日

注3)本調査の対象および調査方法はこちらをご参照。

注4)共同プレスリリース「『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」、2021年3月24日

注5)プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出」、2021年3月29日

英語のプレスリリース:“Japan’s largest bank MUFG tightens coal power and forest sector policies – but far from aligned with Paris Agreement”

本件に関するお問い合わせ

気候ネットワーク 平田仁子 khirata@kikonet.org

マーケット・フォース 福澤恵 meg.fukuzawa@marketforces.org.au

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 yuki.sekimoto@ran.org

国際環境NGO 350.org Japan 横山隆美 japan@350.org

NGO共同プレスリリース:三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出(2021/3/29)

〜昨年のみずほFGに続く日本での株主アクション〜

2021年3月29日

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

本日、気候ネットワークおよび個人株主3名は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の株主として、同社に対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めた株主提案を提出しました(注1・注2) 。これにより、投資家がMUFGの投融資にかかる気候変動リスクを適切に評価し、投資判断できることを確保すること、またMUFGが気候変動リスクを削減し、企業価値を維持向上することを目的としています。
 
MUFGはこれまでに、環境方針やサステナビリティに関する方針を定め、石炭火力事業へのプロジェクト・ファイナンスをゼロにする方針等を掲げています。しかし、今なお国内外の化石燃料や森林破壊に関連する事業に多額の資金提供を続けており、石炭産業への過去2年の融資総額は世界3位、化石燃料部門への過去5年の融資・引受額は世界6位、パーム油産業への過去4年の融資・引受額は世界7位と、気候変動を加速する事業に世界最大規模の融資・引受を行っています。現行の方針では、1.5℃目標の達成に不可欠な2050年ネットゼロを実現できず、パリ協定の目標とは全く整合していません。MUFGが真にネットゼロを達成しようとするならば、例外なく化石燃料や森林破壊への投融資をやめなければなりません。

近年、海外の金融機関らによる石炭火力発電事業への支援中止や投融資からの撤退が進んでいます。最近では、英HSBCが、2040年までに石炭火力発電や発電用石炭開発への融資を段階的に廃止する方針を決定し、全セクターの中短期戦略を含む戦略の策定・公表とその進捗報告について5月の株主総会で提案すると報じられています。また、米シティグループは、石炭火力の拡大を計画する新規顧客への融資を2021年以降引き受けず、今後20年間でほぼすべての石炭火力企業への融資を段階的に廃止する計画を記した方針を、米国大手銀行として初めて発表しています。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「MUFGのポリシーは幾分かの強化が図られていますが、現状ではパリ協定と全く整合していません。特にコーポレートファイナンスを含む全ての投融資をパリ協定に整合させるには、会社として、短期及び中期の目標を含む経営戦略を決定し、早々に実質的な行動を起こし、気候変動に伴う投資リスク・評判リスクを招かない対応が必要です。」と述べています。

マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGが化石燃料へのファイナンスから軸足を移しきれていないことは、世界的な競争相手行の方針や行動の転換が急速に進む中、株主にとって大きな不安材料です。2040年までに全世界の石炭火力発電所の稼働を停止させなければならない中、プロジェクト・ファイナンスに限定した残高ゼロ目標は不十分です。MUFGは投融資先企業が2040年までに脱石炭を達成するために、どのように支援するか計画を示すべきです。」と指摘しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「MUFGは、森林破壊や土地紛争といった問題を抱える『紛争パーム油』に最も多額の資金を提供している銀行の一つです。MUFGは膨大な量の炭素を貯留する熱帯林と泥炭地の破壊に資金提供という形で加担しています。しかし、気候変動への影響については一切開示していません。 MUFGは森林破壊の阻止を含む1.5℃目標に整合する方針を示す必要があります。」と強調しました。

また、350.org Japan代表である横山隆美は、「気候危機解決には、パンデミックへの対応と同様に、科学者の知見を取り入れることや、全てのセクターを取り込んだ迅速かつ大胆な対策が必要です。気温上昇を1.5度に抑えるのは時間との勝負であり、ネガティブ・エミッションなど今はない技術に頼ることは若い世代や将来世代に対する責任放棄と同じことです。経済に対し非常に大きな影響力を持つMUFGは、気候危機問題に対し国連責任銀行原則に基づき、責任を持って解決に取り組む必要があります。」と訴えています。 

気候ネットワークおよび共同提案者3名は、MUFGに対する本提案に、多数の投資家の方々からの賛同を求めていく予定です。

株主提案

三菱UFJフィナンシャル・グループへの株主提案(日本語PDF)
The Proposal for MUFG(英語PDF)
投資家向け説明資料:三菱UFJフィナンシャル・グループへの株主提案(日本語PDF)
Investor Briefing:Shareholder resolution filed with MUFG(英語PDF)

注1)本提案は、昨年の気候ネットワークによるみずほフィナンシャルグループに対する株主提案に続く、日本の金融機関に対する気候変動株主提案になります。

注2)豪NGOマーケット・フォース、米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク、国際環境NGO 350.orgは本提案を支持し、それぞれ、エネルギーキャンペーン担当の福澤恵、日本代表の川上豊幸、日本支部代表の横山隆美が個人株主として共同提案に参加します。

連絡先

気候ネットワーク www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:平田仁子 E-mail: khirata[@]kikonet.org TEL: 090-8430-7453
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

マーケット・フォース(Market Forces) www.marketforces.org.au
担当者:福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa[@]marketforces.org.au
担当者:鈴木幸子 E-mail: sachiko.suzuki[@]marketforces.org.au

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

350.org Japan world.350.org/ja/
担当者:横山隆美 E-mail: taka.yokoyama[@]350.org TEL: 090-4668-6653
担当者:渡辺瑛莉 E-mail: eri.watanabe[@]350.org

ブログ:生活を破壊し、土地を奪う〜インドネシア巨大企業シナルマス〜(2021/1/15)

イブ・ミナルティさん: バナナ、キャッサバ(イモの一種)、唐辛子を栽培し、家族を養うために販売している農家。「私たちは子供たちの将来のために土地を必要としています」(ジャンビ州)写真:RAN/WALHI Jambi/ Mushaful Imam

人権侵害の記録と抵抗する最前線のコミュニティ

インドネシア・コーディネーター フィトリ・アリアンティ
英語は2020年12月17日投稿)

2015年2月下旬の金曜午後、インドラ・ペラニさんという若い農民が友人のバイクの荷台に乗って、インドネシア・スマトラ島ジャンビ州の田園地帯を走っていた。ペラニさんと友人はお祝いの一日を楽しみにしながら、米の収穫祭に向かっていた。しかし、そこにたどり着くことはなかった。

二人は、隣同士の村で育った。その村々の人たちは先祖代々この地域に住み、働き、農業を営んできたが、時が経つにつれ、村々の土地や森林が紙パルプ会社に引き渡されるのを見てきた。これらの大規模なアグリビジネス企業は天然林を皆伐し、厳重に警備された紙パルプ用植林地を作り、住民の農園と伝統的な生計手段を破壊し、その過程で物々しい警戒態勢を敷いて地域を制圧した。 

その金曜日の午後、インドラ・ペラニさんと友人は、世界最大級の製紙会社アジア・パルプ・アンド・ペーパー社(APP)が所有するアカシアの植林地を横切る道路の検問所を通過しようとした。同社はシナルマス・グループと呼ばれる巨大コングロマリット(複合企業)の子会社である。自分の地域の土地を取り戻すために住民を組織化し、有能な農業組合員で環境活動家でもあった22歳のペラニさんは、検問所で警備員に見つかってしまった。警備員は、ペラニさんをつかんで友人のバイクから引き下ろし、友人は助けを求めて急いで逃げた。悲劇的なことに、助けは間に合わなかった。ペラニさんの遺体は、ひどく殴られ、刺され、手足を縛られた状態で沼地に捨てられていたのが翌日に発見された。    

インドラ・ペラニさんの残忍な殺害には国際的に批判の声が上がり、抗議活動は現在も続いている。しかし悲しいことに、これはプランテーション開発の最前線にいる地域コミュニティが直面している恐ろしい多くの不当な仕打ちの一例に過ぎない。このような人権侵害を行い、インドネシアで大規模な森林破壊を引き起こしている企業は世界的な消費財企業や銀行との取引によって支えられ、資金は流れ続けている。 

シナルマス・グループ~人権侵害のネットワーク〜

「APP/シナルマス、農民の不当告発の停止を!」と書かれた横断幕を掲げて抗議するルブク・マンダルサ村ペラヤン・テバットの農民(写真:RAN/ワルヒ・ジャンビ/Mushaful Imam)

シナルマス・グループ(SMG)は他の多数の企業とともにAPP社を傘下に持つ。現地および国際メディアや市民権団体などの多数の報告によれば、SMGは土地収奪、脅迫、不当告発、暴力など(注1)、人権侵害と環境破壊に関する最も悪質な事例が記録されている企業の一つである。SMGは国際的な人権規範に従うことを拒み、コミュニティが自分たちの土地での開発に同意するかしないかを自ら決めることのできる権利を保障せず、またコミュニティとの間で合意がなされた場合でも、度々その合意の履行を怠ってきた。SMGはコミュニティから提起された苦情に不適切な対処を続け、影響を与えた数百ものコミュニティへの救済策の提供を拒んでいる。 

それでもSMGは大手消費財企業にパーム油や紙パルプを供給し続け、国際的な銀行はSMGにますます融資を続けている。マース、モンデリーズ、プロクター&ギャンブル、ネスレ、ユニリーバ、コルゲート・パルモリーブ、ペプシコ、花王のようなグローバル消費財企業はSMGが供給するパーム油を使用して、店頭に並ぶスナック菓子や即席麺、生活用品を製造している。日本の日清食品も、SMGを購入先としている不二製油から調達しているため、関与している可能性がある。またネスレは紙のサプライヤーを開示せず、同様に開示していない多くの他企業とともに、SMGが所有するAPP社を通じて紙パルプを購入している。またSMGは銀行融資の最大の受取先でもあり、過去 5 年間(2015 年~20 年第 1 四半期)に受けた融資額は 200 億米ドルに達している。最大の貸し手には、インドネシアの銀行であるバンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)とバンク・ネガラ・インドネシア(BNI)、日本のメガバンクであるみずほフィナンシャルグループと三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がある。 

これらの消費財企業や銀行の多くが人権擁護をうたう方針と公約を掲げているが、SMGの広範な人権侵害を無視している。これらの消費財企業や銀行は、先住民族や地域住民の権利を尊重しないSMGを支援する一方で、最新のポジティブな「取り組み」を自慢したがる。これは止めなければならない。銀行や消費財企業は、SMGおよびそのサプライヤーが引き起こした社会・環境面での危害を是正したことを同社が証明するまでSMGとの新規取引を直ちに停止しなければならない。SMGは「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、コミュニティと労働者の搾取ゼロ」(NDPE:No Deforestation, No Peat and No Exploitation)という公約を真に実行し、影響を受けるコミュニティの要求を満たしていることを証明しなければならない。 

環境NGOのエンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)の報告書「紛争パルプ材植林地」(2019年)によると、インドネシアのわずか5州で、少なくとも107の村やコミュニティとAPP関連会社やそのサプライヤーとの間に紛争が起きており、544村が紛争の可能性のある場所として特定され、その面積は250万ヘクタール以上にのぼる。以下はSMGが対処して来なかったコミュニティとの紛争の事例であるが、ごく一部に過ぎない。そして、ここに記す住民が語った話や経験は、SMGがいかに人権を侵害してきたかを示す重要な例である。 

コミュニティに対する暴力と脅迫
インドネシア・ジャンビ州のルブク・マンダルサ村

イブ・ミナルティさんは、バナナ、キャッサバ(イモの一種)、唐辛子を栽培し、家族を養うために販売している農家。「私たちは子供たちの将来のために土地を必要としています。ここでは経済的なストレスを受け、自由に行き来することができません。私たちは平和に暮らしたいのです。地域住民のニーズを理解し、ルブク・マンダルサ村の伝統的な土地を返すよう、WKS社に求めます」と語った。(写真:RAN/WALHI Jambi/ Mushaful Imam)

インドネシア・スマトラ島ジャンビ州にあるルブク・マンダルサ村は、6,000世帯以上が暮らす村である。コミュニティは主にジャンビ出身のマレー人と、何世代にもわたってこの地域に住んでいる先住民族のアナック・ダラム民族である。住民の大部分は、米や野菜の農家として働いて暮らしており、土地への依存度が非常に高い。コミュニティ所有地の多くは、近くのブキ・ティガプルー国立公園の一部として指定されているか、アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)傘下の産業用植林事業会社のWKS(Wira Karya Sakti)に事業許可が与えられているため、そこでの土地利用が次第に制約を受けている。

WKS社と地域住民の紛争は、村内のぺラヤン・テバットという集落で2007年に始まった。WKS社は、この地域の事業許可地へのアクセス道路を建設した後、住民が農地として使っていた土地を含め、道路両側の土地をさら地にし始めた(注2)。地域住民とテボ農業組合および環境保護団体のワルヒ・ジャンビ(WALHI Jambi)が2013年に作った地図によると、同社に奪われた住民管理地の総面積は1,500ヘクタール、つまり2,800個以上のサッカー場に相当する広さだった(注3)。2007年12月28日に紛争は同社と住民の衝突に発展し、住民の農地をさら地にしていたWKS社の重機を壊した嫌疑が住民にかけられた(注4)。この衝突によって9人の農家が逮捕され、15カ月間の禁固刑に処された

地元の環境保護団体ワルヒ・ジャンビは、以下の例を挙げて、WKS社は数年以上もコミュニティを脅迫し、攻撃し続けてきたと主張する: 

●2013 年 3 月 6 日、農家のカリオノ・セティオさんは地区警察に逮捕された。WKS社はセティオさんが同社の「環境保全」地域内の土地の一角を、さら地にしたとして告発し、逮捕はその後に起きた。同社の「環境保全」地域は、地域住民の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得ることなく彼らが伝統的に所有してきた土地にもうけられた。カリオノさんは有罪判決を回避するために、農地での作業をやめることを余儀なくされた(注5)。

●2015年2月27日、インドラ・ペラニさんがWKS社の警備チームに暴行され、誘拐され、殺害された(注6)。

アーメド・スザントさんは、ルブク・マンダルサ村の農家。アーメドさんの作物は、2020年3月にWKS社がドローンで除草剤を作物に散布した際に被害を受けた。約2ヘクタールの土地が破壊され、唐辛子、スイカなどの作物が駄目になった。コミュニティが所有する97本のアブラヤシの木も使えなくなった。WKS社はコミュニティが主張する被害規模に異議を唱えている (写真:RAN / WALHI Jambi / Mushaful Imam)

●2020年3月4日、WKS社はドローンを使って有毒な除草剤を撒き、コミュニティが植えたばかりの野菜、唐辛子、ジェンコル(食品や薬として利用される種がなる木)、アブラヤシの木を破壊した。インドネシア政府が新型コロナウイルスの発生に対応するために大掛かりな社会的制限政策を実施し始めていたため、除草剤を監視なく容易に散布できた。住民の一人、ハリムさんは約2ヘクタールの村の菜園が破壊され、収穫ができなくなったと報告した。

●WKS社は現在も住民を脅迫し続けている。2020年3月、村の共有地と考えられ、紛争になっている土地をさら地にしたという理由でWKS社によって一人の住民が警察に通報された(注7)。2020年4月28日、住民のアグスさんが村の菜園の手入れをしていた時に兵士がわざと空中に二発、発砲した。

紛争が始まって以来、コミュニティは抵抗のために組織化が行われ、官公庁や会社の前でデモを行ったり、会社の現場での活動を妨害したり、会社との交渉を試みたりと、様々な方法で会社との問題の解決を試みてきた。

こうした最近の一連の事件について、APP/SMG は「問題は調停によって解決された」と述べ、ドローンによって破壊されたコミュニティの作物の実際の面積は、当初、住民が主張したより少なかったことをコミュニティの代表者が認めたと主張した。しかし地元の NGO は、そのような意味のある調停は行われておらず、ルブク・マンダルサ村とWKS社の間の長年の対立は依然として続いていると異議を唱えている

先住民族サカイ民族への不当告発
インドネシア・リアウ州

シナルマス・グループ(SMG)の人権侵害の記録は、ルブク・マンダルサ村に限ったことではない。地元の情報源によると、SMGはリアウ州ベンカリスの先住民サカイ民族のコミュニティとしての権利も侵害している。このコミュニティでは、地元農家が、コミュニティの所有する土地で樹木を切り倒したことで犯罪者だとされた。APP/シナルマス傘下企業のアララ・アバディ社(AA社)は、その土地を自社の事業許可地であると主張している。

この紛争は、AA社が327ヘクタールの土地をさら地にし、コミュニティの貴重な食糧源を破壊した2001年に始まった。そこは、サカイ・バティン・ベリンギンおよびペナソの先住民族がコミュニティとして伝統的に所有すると主張する土地だった。

ボンクさんと「森林と土地のための伝統コミュニティ連合」(Koalisi untuk Masyarakat Adat untuk Hutan dan Tanah). (写真:Jikalahari) 

サカイ・バティン・ベリンギン村の住民ボンク・ビン・ジェロダンさん(58歳)は、この紛争で不当に告発された住民の一人である。ボンクさんは、サカイ民族の伝統的な食品の一つであるメンガロ・マーシク(Menggalo Mersik)に加工できるウビ・メンガロ(Manihot glaziovii)と呼ばれる地元のサツマイモとキャッサバを栽培している農家だ。インドネシアの多くの先住民族と同様、サカイ民族は森林やその自然の産物に依存する移動式農業を営む人々だ。

不当告発は、ボンクさんがサツマイモを栽培するために新しい土地を耕作したときに始まった。ボンクさんは2019年11月に約20本のアカシアの木を伐採し、200平米の面積をさら地にした(注8)。さら地になった土地は、現在は前述のAA社の産業用植林事業許可地の一部として法的に指定されてはいるものの、先住民族であるサカイ民族の共有地の一部である。

ボンクさんの初公判は2020年2月に行われ、同年5月18日、判事は、AA社の事業許可地内のアカシアの木を伐採した罪で、ボンクさんに1年の禁固刑と2億ルピア(14,000米ドル以上)の罰金を宣告した。判事は、ボンクさんを2013年の「森林破壊の防止と根絶に関する法律」に違反した罪で有罪とした。この法律は組織的な森林破壊を法的に禁止することを目的としているが、コミュニティを犯罪者とするためによく使われる(注9)。

2015年以降、サカイ民族は、ボンクさんが管理する土地を含め、慣習的な土地の権利の承認をインドネシア環境林業省に求めてきたが、承認されていない(注10)。APPは声明で「環境林業省は今後の紛争解決を促進している」、「AA社は引き続きプロセスに従うことを約束している」と主張している。

インドネシアNGO LBHプカンバルのインフォグラフィック

ボンクさんは7カ月投獄された後、新型コロナウイルス感染症拡大の懸念から釈放された。この事例では土地紛争が未解決のままであり、ボンクさんの場合のような不当告発は、土地紛争が解決され、先住民族サカイ民族の土地権が認められるまで続く可能性が高いと地元の市民社会グループは警告している

アブラヤシ農園での労働者の権利侵害と人権侵害
インドネシア・中部カリマンタン州

SMGの人権侵害の記録は十分に文書化され、紙パルプ部門だけでなく、パーム油事業においても人権侵害が行われてきた。市民社会と労働組合はSMGの別の子会社であるゴールデン・アグリ・リソーシズ(GAR)についても同様に、人権侵害と労働者の虐待について記録してきた。

2018年の報告書で、サウィット・ウォッチとアジア・モニター・リソース・センターはアブラヤシ農園の労働者49人に、中部カリマンタン州にあるGARのアブラヤシ農園企業2社、タピアン・ナデンガン社(PT.Tapian Nadenggan)とミトラ・カリヤ・アグロインド社(PT.Mitra Karya Agroindo)で勤務中に経験した虐待について聞き取りを行った。

不当な労働システム、労働安全衛生問題、低賃金、劣悪な生活条件、性差別、「持続可能な」パーム油の代表的な認証機関とされる「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)の監査チームが聞き取りをできないように労働者を隠していたことなどの違反行為が報告された。同じくGAR傘下にある南スマトラ州のサウィット・マス・セジャーテラ社(PT.Sawit Mas Sejahtera)が所有するアブラヤシ農園における無秩序な労働契約、未払い残業、不当な解雇、労働組合の弾圧など、労働者の権利侵害についても、労働組合や市民社会グループは繰り返し懸念を表明している。

また、フォレスト・ピープルズ・プログラム(FPP)とエルク・ヒルズ・リサーチは最近、上記2社の事業許可地での労働者の権利侵害の発覚を含め、中部カリマンタン州のGAR事業許可地8カ所でのライセンス規則違反の疑惑と汚職の兆候について、RSPO に苦情を提出した。FPPと地元 NGO は以前、西アフリカのリベリアにおける事例も含め、コミュニティの土地譲渡プロセスにおける「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)の権利侵害を理由に、GARに対する苦情数件を申し立てていた。

イブ・ヌルハヤナさんは、2015年にWKS社の警備員によって残忍に殺害された故インドラ・ペラニさんの母親。WKSは彼女を支援するという約束を破り続け、彼女は今、自身と家族の生活のために苦闘を続けている。「一刻も早く土地が返還されるよう要請します。将来のために、私は自分自身と娘のニラプトリのために正義を求めます。我が家の大黒柱だった息子がこの世からいなくなってしまったために、このような状態になっていると感じています。私は正義を求めます。それだけを求めます」と語った。(写真: RAN/Walhi Jambi/ Mushaful Imam)

コミュニティの土地からのパーム油調達
インドネシア・スマトラ島アチェ州パンテ・チェルミン村

パンテ・チェルミン村の住民。自分たちの土地を守るために抵抗を続けている

RANは2020年9月、シナルマス・グループのパーム油部門であるGARがデュア・ペルカサ・レスタリ社(Dua Perkasa Lestari:DPL)から原料を供給された搾油工場からパーム油を調達している証拠を明らかにした。DPL社は、スマトラ島のアチェ州アチェ・バラット・ダヤ地区にあるパンテ・チェルミン村の慣習地で、アブラヤシ農園を経営している企業だ。

パンテ・チェルミン村とDPL社の紛争は2006年に始まった。アチェの分離主義運動(GAM)とインドネシア軍との間の紛争から避難していた住民は、村に戻ってきてDPL社が自分たちの土地で操業しているのを発見した。コミュニティには土地所有権に関する法的文書(土地の物理的所有権に関する証明書(SPORADIK)があったが、DPL社はアブラヤシ農園を造成するために、コミュニティが植えていた食用作物を切り払い続けた。年々、脅迫も激しさを増している。2014年に同社は機動部隊(ブリモブ)に住民の家や作物を破壊させ、住民を監視させ、住民に対する威嚇射撃をさせて、住民の頭に弾が当たりそうになったこともあった(注11)。

バンダ・アチェ法律支援研究所の法的分析により、DPL社のアブラヤシ農園許可証に不正が発覚した。地元住民が1992年から管理する農地に立地しているにもかかわらず、許可証の発行に地元住民が関与していなかったのだ。矛盾は、立地許可証、農園事業許可証、農園の場所に対する事業権(Hak Guna Usaha)の間にあった。また、農園は深さ3メートルを超える泥炭地で造成されていた。

GARはDPL社との関係が公になった後、DPL社からの調達を停止することを発表した。しかし、GARはパンテ・チェルミン村のための救済措置が確保されるようDPL社に働きかけることができていない。この数十年にわたる土地紛争は、GAR/シナルマス・グループの人権ポリシーの実施や、効果的な人権デューデリジェンスシステムの確立と、サプライチェーンにおける遵守違反の検出に関する能力の弱さを示している。

ムサリさん。WKS社が権利を主張している土地でサトウヤシを収穫している(写真;RAN/ワルヒ・ジャンビ/Mushaful Imam)

「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」の必要性

上記の事例はいずれも、SMGの人権侵害が一つのセクターや一握りの農園だけではなく、様々な商品、地域、そして第三者のサプライヤーを含むサプライチェーン全体で発生していることを明らかにしている。SMGの子会社であるAPPとGARといったアグリビジネス部門は、人権、地域住民の権利および「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)プロセスの尊重などを含めて、自らの公約を果たすことができずにいる

グローバルな消費財企業と銀行はどうすべきか

影響を受けているコミュニティはシナルマス・グループに以下を要求している:

●ジャンビ州のルブク・マンダルサ村、リアウ州の先住民族サカイ民族およびアチェ州のパンテ・チェルミン村との紛争を含め、の操業に関連する全ての土地紛争をすぐに解決すること

●影響を受けたコミュニティや環境・人権活動家に対するあらゆる形態の脅迫および不当な告発を終わらせること

●企業の事業許可地内の土地を地域住民に返還することにより、先住民族の土地権を尊重し、その認知を支持すること

●シナルマス・グループの農園で働く労働者のために、公正かつ適切な労働条件と生活条件を確保すること

これらのコミュニティを支援して下さい

ボンクさんのような、先住民族の権利擁護者への不当告発の問題に光を当て続けるために、以下の署名に協力をお願いします。

「先住民族への不当告発を止めてください」#FreeBongku

注1)以下を参照:
https://www.business-humanrights.org/en/latest-news/indonesia-study-reveals-asia-pulp-papersinar-mas-involvement-in-hundreds-of-community-conflicts/;  または
https://www.thejakartapost.com/news/2015/09/26/singapore-moves-against-indonesian-firms-over-haze.html

注2)Konsorsium Pembaruan Agraria, Suara Pembaruan Agraria Edisi 9: Agenda Reforma Agraria Pemimpin Baru, 2014. Pages 72-74.

注3)Mongabay Indonesia, Konflik lahan masyarakat Tebo  dengan PT. WKS terus berlarut, 8 Juni 2020, Jakarta-Indonesia.

注4)WALHI. 2018. Briefing Paper Wahana Lingkungan Hidup Indonesia: Selembar Kertas dan Jejak Kejahatan Korporasi. 12 Februari. Jakarta, Indonesia.

注5)Walhi Jambi, Assessment report (Unpublished), Januari 2016.

注6)Walhi Jambi, Investigation Findings, Reka Ulang Kasus Pembunuhan Indra Pelani, Tersangka Pembunuhan, March 2015.

注7)Walhi Jambi. Siaran Pers: Kronologis Kekejaman dan Intimidasi PT WKS Terhadap Masyarakat (KT Sekato Jaya) Desa Lumbuk Mandarsah, Tebo – Jambi. June 2020.

注8)Tempo Magazine. Kekeliruan Hakim yang Menghukum Bongku Karena Menebang Pohon. May 2020 Edition.

注9)LBH Pekanbaru. Pak Bongku Bukan Pelaku Perusakan Hutan, Berikan Keadilan Untuk Masyarakat Adat. April 2020.

注10)Mongabay. Mau Tanam Ubi di Lahan Sengketa dengan Perusahaan, Orang Sakai Terjerat Hukum Merusak Hutan. May 2020.

注11)YLBHI-LBH Banda Aceh. Legal Opinion (Pendapat Hukum): Sengketa Lahan Antara Masyarakat Desa Pante Cermin Kecamatan Babah Rot Kabupaten Aceh Barat Daya Dengan PT. Dua Perkasa Lestari. 2019.