サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース「森林&人権方針ランキング2025」発表 〜合格点はユニリーバのみ 森林破壊ゼロ実現からほど遠く〜(2025/12/5)

大手消費財企業10社の森林及び人権方針を評価
日清食品が最下位から脱出、花王に続きサプライチェーンにおける人権擁護者への暴力を容認しないと公約


環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日5日(米国時間3日)、「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2025」を発表し(注1)、グローバル消費財企業は取り組みの進捗が遅く、サプライチェーン(供給網)から森林破壊と人権侵害をなくすという約束を果たせていないと指摘しました。

本ランキングは、熱帯林地域で森林破壊と人権侵害のリスクが高い産品に関与している大手グローバル消費財企業10社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価・分析する年次報告です。各社のサプライチェーンにおける森林破壊と人権侵害を阻止するための取り組みを詳細な基準で比較評価したところ、合格点といえる C 評価を得たのはユニリーバのみでした。日本企業は花王が D+(同点3位)、日清食品ホールディングスは人権擁護者への暴力や強迫行為を容認しないことを花王に続いて公約し、 D−(同点7位)を得て最下位グループからランクを上げました。最下位はモンデリーズでした。

評価方法は、各社の方針と実施について、「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針、人権保護、サプライチェーンの透明性などの12項目を24点満点で評価しています。合計得点に合わせてA(21〜24点)、B(17〜20点)、C(12〜16点)、D(6〜11点)、不可(0〜5点)のランクを付けています。パーム油、紙パルプ、大豆、牛肉、カカオ、木材製品など、森林を破壊するリスクのある産品(森林リスク産品)セクターにおける傾向や動向を分析しています。10社のランキングの詳細は以下の通りです。


*Y=ありor 全て(2点)、P=一部(1点)、N=なし(0点)
✦ 「日清食品グループ持続可能な調達方針」で「NDPE を支持」と 述べているが、NDPE誓約の中核要素の遵守を供給業者に明示的に求める方針強化が必要である。

「森林&人権方針ランキング2025」調査概要&結果

▪️調査対象企業:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ユニリーバ
▪️調査期間:2025年10月〜11月
▪️調査方法:各社の環境及び人権に関する方針を調査・分析(ウェブサイトなどで公開されている最新版)、各社へのヒアリング
▪️主な森林・人権方針の評価項目(全12項目、各2点)
*2点:方針あり/ 全体に採用、1点:一部に採用、0点:方針・計画なし

  • 森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針・適用範囲:NDPE方針はパーム油や紙パルプなど森林リスク産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準である(注3)。個別産品だけではなく森林リスク産品全般への適用、供給業者の企業グループ全体への適用を重視している
  • 人権擁護者への暴力や脅迫へのゼロトレランス(不容認)方針の有無(注4)
  • 自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注5)
  • 苦情処理システム:グリーバンスメカニズムの設置、苦情処理記録の開示など
  • サプライチェーンの透明性:パーム油搾油工場リストの公開、生産地までのフルトレーサビリティ達成の取り組み(EUDR要件、注6)含む
  • 森林フットプリントの開示(注7)、など

全体の評価・傾向

「リーダー企業」(C+評価)

  • ユニリーバが再びトップを維持し、合格点といえるC+評価を獲得しました。NDPE方針の整合性、サプライチェーンの透明性、苦情処理の開示において最も明確な目標を設定し続けています。22年に公表された人権擁護者の保護方針は他社にとって先例となっています。先住民族の権利では、大手企業として初めてFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意)の履行について独立検証するプロセスの試験導入を約束しました。

「中位グループ上位企業」(D+、D評価)

  • コルゲート・パーモリーブ、花王、ネスレ、ペプシコ、マースの5社はNDPE方針の適用範囲でばらつきがあり、上位2社しか2点を得ていません。人権擁護者への暴力に対するゼロトレランスは全社が約束していますが、リーダー企業になるには暴力などを防止する手順を策定し公開する必要があります。

「中位グループ企業」(D−評価)

  • P&G、フェレロ、日清食品の3社は、NDPE方針の実施や適用範囲が限定的であることから低評価となりました。日清食品は人権擁護者への暴力や威嚇へのゼロトレランスを初めて公約しました。

「不可企業」(F評価)

  • オレオクッキーで有名なモンデリーズは、ほぼ全ての項目で低い評価となりました。同社は人権擁護者保護への明確な公約を発表していなく、苦情追跡システムも公開していません。

▪️日本企業の評価

総合点は花王がD+(10点)、日清食品はD−(6点)で、両社とも昨年から点数を上げました。

  • 「NDPE方針」:両社とも同方針を既に採用し、2点の評価を得ています。
  • 「NDPE適用の範囲」:花王が森林リスク産品全般の供給業者とその企業グループ全体も適用対象としていることから2点を得ています。日清食品は今年も点数獲得に至りませんでした。今年、サプライヤー行動規範を制定してNDPE支持を供給業者に求め、そのグループ企業全体にも適用を要望しました。しかしNDPE方針の中核要素が明記されませんでした。また、グループ調達方針の環境分野にNDPE支持を記載していますが、NDPEの中核要素が明記されているのはパーム油事業のみで森林リスク産品全般ではありませんでした。また供給業者にNDPEの採用を義務化していなく、供給業者の企業グループ全体も適用範囲に含んでいません。
  • 「暴力や脅迫へのゼロトレランス」:両社ともサプライチェーンにおける人権擁護者への暴力の不容認を公約していることから1点を獲得しました。しかしユニリーバが発表しているような、人権擁護者の保護方針実施の手順を定めたガイドラインは公表していません。
  • 「森林フットプリントの開示」:花王昨年5月にインドネシア・リアウ州の分析(英語)を公表しましたが、地域が限定的であることから1点にとどまりました。日清食品は実施を表明していますが、まだ開示がないため点数の獲得はありませんでした。
  • 「苦情処理システム」:日清食品は2023年から「苦情処理リスト」を公開し、違法パーム油生産農園との取引停止や対応状況を公表しました。今年3月にも情報を更新し1点を得ていますが、方針違反への対応手順が公表されていません。花王は小規模農家生産者を対象とした苦情処理メカニズムはありますが、大規模農園・植林企業などを対象とした対応のリストや記録は依然として開示がなく得点はありませんでした。

人権尊重と新規制

人権擁護者(Human Rights Dedenders: HRDs)の保護は、今年の評価でも重要な項目の一つです。2015年から2024年、ビジネスと人権リソースセンター(注8)は147カ国で6,400件以上の攻撃(そのうち1,000件以上は殺害)を記録しました。一部の消費財企業は人権擁護者保護の実施に向けた初期段階の措置を講じていますが、危機の規模を考えると企業の対応はいまだ断片的で一貫性に欠けています。

欧州連合の森林破壊防止法(EUDR)の施行を前に、多くの消費財企業は規制の遵守を保証する約束を投資家にしています。しかし各社は「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)のような効果が低い認証制度や、これまで問題となってきた供給業者からの自己申告制度にいまも頼っています。こうした状況で、何社かの大手企業は森林破壊や人権侵害にさらされるリスクを依然として抱えています。

総評・コメント

RANフォレスト・キャンペーン・ディレクターのダニエル・カリーヨは「新たな規制に備え、大手消費財企業は森林破壊ゼロのサプライチェーン実現を約束しています。しかし森林が破壊される前に、森に住む人々は暴力や脅迫を受けたり、土地を奪われたりしています。世界最大の消費財企業は自社製品に森林破壊や人権侵害が一切含まれていないことを証明できなければ、その公約は意味がありません。約束が森林を守るのではなく、行動が森林を守るのです」と強調しました。

RAN日本シニア・アドバイザーで、日本企業と対話を続けてきた川上豊幸は「花王は様々な取り組みを行い、グローバルのトップ企業と肩を並べました。中でもNDPE方針の遵守徹底を供給業者とアカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)で定義されるその企業グループ全体に求めている点は、国内他社の見本となります。パーム油サプライチェーンではNDPE実施調査を行ない、結果も公開しています。しかし、サプライチェーンで起こる森林破壊や人権侵害についての対応を説明する苦情処理リストを開示していません。消費者や地域コミュニティ、投資家に向けて、高い透明性を示していくことが求められます」と主張しました。

続けて「日清食品は得点を上げて、最下位グループからようやく脱出しました。理由の一つに人権擁護者に対する暴力へのゼロトレランスを初めて公約した点が挙げられます。5月にはサプライヤー行動規範を制定して供給業者全体とそのグループ企業に適用した点は評価できますが、NDPEへの「支持」表明に止まり、炭素貯留力の高い森林や保護価値の高い地域の保全といった中核的な要素が明記されないままとなっています。同方針の供給業者への義務化でも、供給業者の独立監査の要求においても改善が見られませんでした。そして持続可能なパーム油のみを2030年までに調達するという目標年も前倒しされませんでした」と指摘しました。

大手消費財企業は、世界で続く森林破壊や人権侵害との関与が継続しています。RANは、消費財企業が森林伐採や土地の権利侵害の阻止に実行力を発揮し、環境保護活動家や人権擁護者が直面する暴力や脅威を食い止める一助になるよう、これからも企業に働きかけていきます。

脚注

注1)「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行に実際の行動を起こすよう要求しています:www.ran.org/kfs-scorecard-jp/
ランキング評価方法論:
https://japan.ran.org/wp-content/uploads/2025/12/RAN_KFS_Scorecard_Methodology_2025_JP.pdf

注2)消費財企業10社:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
*10社全社が全容を報告している唯一の産品であるパーム油を例にとると、10社合計で約230万トンのパーム油と、約140万トンのパーム核油およびその派生物を購入している(2022年)。パーム油世界市場の約3%、パーム核油世界市場の約17%に相当する(2023年版報告書より)。

注3)「NDPE」はNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い森林の保護、保護価値の高い地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止などの中核要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。
*参考:「『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針とは?」ブリーフィングペーパー

注4)「ゼロトレランス・イニシアティブ」(ZTI)ウェブサイトを参照のこと。
ZTI は先住民族組織およびコミュニティ団体が主導する連合体で、人権擁護者の保護に関する企業のベストプラクティスを定義している。

注5)「FPIC(エフピック)」とは Free, Prior and Informed Consent の略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注6)EUの「森林破壊フリー製品に関する規則」(EUDR:通称「森林破壊防止法」):EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注7)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注8)ビジネスと人権リソースセンター、”Defending rights and realising just economies: Human rights defenders and business (2015-2024)
標的とされた人権擁護者の大半は、土地や水、環境を守るために活動し、生態系や生計、文化遺産を脅かす活動に反対していた。特に鉱業やアグリビジネス、化石燃料採掘などの環境や社会に大きな影響を及ぼすセクターで脅威に直面することが多い。東南アジアのパーム油および林業のサプライチェーンは最も危険な状況にあり、土地収奪や違法伐採、プランテーション拡大に異議を唱える人権擁護者が威嚇や暴力、犯罪化行為によって被害を受けてきた。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本でも活動を続けています。
http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204
日本チームマネジャー:関本幸 Email: yuki.sekimoto@ran.org
日本シニア・アドバイザー川上豊幸 Email: toyo@ran.org

声明:トランプ大統領就任日の大統領令について(2025/1/20)

 

2025年1月20日(月)に大量の大統領令が出されたことを受けて、米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、RAN)事務局長ジンジャー・キャサディは以下の声明を発表しました。

 

「トランプ政権によるエネルギーと環境関連の大統領令は破壊を招く近視眼的なもので、気候変動とコミュニティへの代償を顧みず、企業利益を最大化するという一大テーマがあります。

アラスカ固有の生態系での無制限の石油・ガス開発許可からパリ協定離脱まで、これらの大統領令は科学と現実に真っ向から反しています。そして、米国と世界中のコミュニティ、特に脆弱な黒人、先住民族、褐色人種、低所得者のコミュニティが、その代償を支払うことになります。

記録的な熱波、猛威を振るう山火事、激しさを増す嵐、そして何百万もの人々が気候変動による移住を余儀なくされている現実を無視する余裕は私たちにはありません。

私たちは前に進まなければなりません。クリーンエネルギー中心の未来への公正な移行が私たちには必要です。しかし、この政権は私たちの未来を、過去の汚れた化石燃料経済にしばりつけようとしています」

 

レインフォレスト・アクション・ネットワーク事務局長
ジンジャー・キャサディ

(英語プレスリリース”Statement on Trump Inauguration Day Executive Orders”、和訳版は2025年1月21日投稿)

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:米国リオ・グランデ・バレーの住民代表団が来日〜メガバンクらにLNG事業からの撤退を求めて 自然環境、歴史、人々の生活を破壊する5つのリスク〜(2024/12/10)

RAN「責任ある金融」キャンペーナー 麻生里衣

2024年10月6日から1週間、米国テキサス州リオ・グランデ・バレー地域のコミュニティ代表団が来日し、自然環境の破壊、先住民族の権利侵害、地域住民への健康被害、気候変動の加速など、問題の大きい液化天然ガス(LNG)事業からの撤退を日本の金融機関に求めました。多岐にわたる問題を引き起こすLNG事業。今年8月からRANで活動を始めた麻生里衣が、代表団に同行して見えてきたこの問題をまとめます。

州道48号線から見える自然、テキサス州ブラウンズビル、2017年(写真 ©︎ Joseph Fry)

地元コミュニティの反対運動

米国テキサス州南部のリオ・グランデ・バレーの河口周辺に広がるデルタ地域には、南メキシコ湾岸最後の人工物のない地平線が見られる景観が残っています。しかし現在、この地域ではリオ・グランデLNG輸出基地、テキサスLNG輸出基地、これらの基地に接続予定のリオ・ブラボー・パイプラインの3つのLNG事業が計画されています。第1フェーズの事業資金の調達が完了しているリオ・グランデLNGは、地元コミュニティの強い反対にも関わらず工事を開始し、現在も湿地帯をブルドーザーで掘り起こし、整地作業を進めています。

リオ・グランデLNGの建設現場(写真©︎ Bekah Hinojosa / (SOTXEJN)

これまでの活動の成果

地域住民はこれまで、これらのLNG事業を止めるために様々な活動を展開してきました。その成果が実り、フランスの銀行ソシエテ・ジェネラルラ・バンク・ポスタル、三井住友銀行、スイス登記の米保険会社チャブなどがリオ・グランデLNGから撤退、さらにフランスの銀行BNPパリバもテキサスLNGとの関係を絶ちました。

そして2024年8月6日、地域住民が裁判で勝訴を勝ち取り、活動の大きな追い風となりました! 米国コロンビア特別区控訴裁判所は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)によるリオ・グランデ地域のLNG事業許可3件は、地域への環境的・社会的影響を十分に検証していないとして、許可を事実上取り消すという判決を下しました。FERCは今後、新たな補足的環境影響評価書の草案作成とパブリックコメント期間を設け、事業の影響を再評価した上で、新たな事業許可の発行を検討する必要があります。(さらに詳しくはRANのレポートを参照

今回来日したディナ・ヌニェス氏(南テキサス人権センター シニア・オーガナイザー)は、「団結した人々は、決して分断されることはない」と述べ、「私達地域コミュニティの強力な組織化と強い意志を持った人々のおかげで、良い裁判結果を勝ち取ることができました。私達は、たとえ巨大な企業であろうと打ち負かすことができると信じています。次は、日本の企業が良い決断を下すことを求めます」と訴えました。

MUFG本社前で呼びかけを行うヌニェス氏(右)と大学生のアクセル・ゴメス氏(左)(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

日本の金融機関と気候変動

そして今回、リオ・グランデ住民代表団はこれらのLNG事業を支援する日本の金融機関に事業からの撤退を求めて日本を訪れました。中でも、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、リオ・グランデLNGに約21億米ドルを2023年に融資し、世界最大の資金提供者となっています。また、みずほフィナンシャル・グループ(みずほ)も約11億米ドルの融資を行っていることが明らかになっています(参考「化石燃料ファイナンス報告書」日本語抜粋版) 。

代表団に同行したRANのルース・ブリーチ(気候変動&エネルギー担当 シニア・キャンペーナー)は、「日本の銀行は米国メキシコ湾岸におけるLNG事業拡大において、非常に重要な役割を担っています。世界のどの銀行を見ても、みずほ銀行と三菱UFJ銀行以外に、南メキシコ湾岸のLNG事業全てに資金提供を行なっている銀行はありません」と述べています。

都内の日本外国特派員協会(FCCJ)での会見にて日本の金融機関の関与について説明するルース・ブリーチ(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

日本のメガバンクは、化石燃料事業に対して世界最大規模の資金提供を行ない、気候変動対策の流れと逆行しています。2023年のみずほの提供額(融資・引受)は世界第2位(約370億米ドル)、MUFGは世界第4位(約332億米ドル)でした。

「化石燃料ファイナンス 2023年のワースト12銀行」(化石燃料全部門への融資・引受額、2023年単年、単位:BILLION =十億ドル)

また、RANが米国の情報自由法(FOIA)で開示請求をして得た情報をもとに作成した報告書『リスク・エクスポージャー』により、SOMPOホールディングスがリオ・グランデLNGに損害保険を提供していることもわかりました。損害保険会社は化石燃料事業に不可欠な保険を提供することにより、気候変動の悪化を助長していることが問題視されています(詳しくはこちらのサイトを参照)。SOMPOホールディングスは、先住民族の権利保護に関する方針や人権デューディリジェンス・プロセスを導入していなく、早急に方針の強化が求められます。

5つのLNG事業の問題点

リオ・グランデ・バレー地域におけるLNG3事業の大きな問題点として、1)気候変動の加速、2)地域住民への健康被害、3)希少種の生息地の破壊、4)小規模産業への悪影響、5)先住民族の権利侵害があげられます。

 

 1) 気候変動の加速

LNGは、温室効果ガス(GHG)の排出量が低い『移行燃料』であるという認識が一部で存在しますが、LNGのおよそ90%以上が二酸化炭素の80倍以上の温室効果をもたらすメタンで構成されています。採掘や輸送におけるメタンの漏洩により、LNGは石炭と同等またはそれ以上に気候変動を悪化させると考えられています。ライフサイクル全体での排出を考慮すれば、リオ・グランデLNGからの年間GHG排出量は石炭火力発電43基分、テキサスLNGからは石炭火力発電7基分合計50基分にも相当するGHGが排出されると考えられているのです。

採掘地におけるフラッキング(水圧破砕法)による水質・大気汚染、地域住民の健康被害などの影響も深刻です。また、リオ・グランデLNGの事業者であるネクストディケイド社は裁判結果を受けて、唯一の気候変動対策であった炭素回収・貯留(CCS)事業についても、現時点では十分に開発が進んでいないとして申請を取り下げました。以上のことから、LNGを「移行燃料」と考えることは非常に危険であり、LNG事業の拡大はパリ協定の1.5度目標と整合しません。

 

 2) 地域住民への健康被害と「環境レイシズム」

米国メキシコ湾岸は国内で最も多くのLNG事業が乱立し、地域住民に犠牲を強いる犠牲地帯」と呼ばれています。これらの事業は、何千トンもの発がん性の有害汚染物質を周辺に撒き散らすと予想され、周辺住民への深刻な健康被害が懸念されています。(詳しくはFoEジャパンのブログを参照)このように米国全体の電力をまかなうために、有色人種や低所得者層、先住民族など社会的に弱い立場の人々が多い米国メキシコ湾岸のコミュニティに対して、公害などの環境問題を押し付けている様子は環境レイシズム(人種差別)」と批判されています。

ベッカ・ヒノホサ氏南テキサス環境正義ネットワーク共同創立者)は、MUFGの本社前で、雨の中以下の様に訴えました。「MUFGはリオ・グランデLNGから撤退すべきです。なぜなら、明らかに私たちの地域社会は、この事業を望んでいないからです。私たちのコミュニティに押し付けられたもので、環境レイシズムです。そしてこの事業は、先住民族の神聖な土地や聖地を破壊し、既にブルドーザーでそういった土地を踏み潰しています。ですから、私たちはここにいます。MUFG、私たちが引き下がることはありません。これからもこの事業に反対していきます」。

MUFG本社前でスピーチを行うヒノホサ氏(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

 3) 希少種の生息地の破壊

リオ・グランデ・デルタの湿地帯は、絶滅が危惧される猫科のオセロットノーザン・アプロマド・ファルコン、海にはケンプヒメウミガメやライスクジラなどの希少な生き物の最後のすみかとなっています。LNG施設が建設されれば、直接的な生息地の破壊と騒音や公害、汚染物質、タンカー船の往来などの影響により、複数の絶滅危惧種に恒久的かつ重大な」影響を与える可能性が指摘されています。

 

 4) 地域の小規模産業への悪影響

周辺地域の人々は豊かな自然の恩恵を受けて、主にエビ漁などの漁業やイルカウォッチなどのエコツアーで生計を立てています。これらのLNG施設は、地域経済にとって重要なこれらの小規模産業に悪影響を与える可能性があります。

 

 5) 先住民族の権利侵害

先住民族の権利侵害も深刻な問題です。リオ・グランデ・バレー地域の先住民族であるカリゾ・コメクルド族(彼らの言語ではエシュトク・グナ族と呼ぶ)は、数千年前から周辺で狩猟・採集・農業などを行い生活していました。リオ・グランデLNGの計画地の下には村の遺跡や貝塚などの歴史遺産、テキサスLNGの地下には『ガルシア牧地』と呼ばれる聖地が眠り、彼らはリオ・ブラボー・パイプラインの建設予定地の数エーカーを直接所有し、絶滅が危惧されるミツバチの養蜂を行っています。カリゾ・コメクルド族はこれらのLNG事業に強く反対していて、事業者は彼らと協議もしていません。

10月7日に行われた会見でカリゾ・コメクルド族チェアマンのフアン・マンスィアス氏は、先住民族の歴史と現状を説明し、テキサスにおける先住民族排除の歴史が現在のLNG事業の問題へとつながっていると語りました。「500年前、私達の民族はこの川沿いにやってきた人々によって侵略されました。かつて私達の民族は、このリオ・グランデ・デルタの美しい水の中で魚をとり生活していました。私達にとってリオ・グランデ川は最初の女性が生まれた場所であり、河口のデルタ地帯には確認されているだけでも32の集落があり、ガルシア牧地と呼ばれる聖地がありました。しかし現在、ガルシア牧地はワールド・モニュメント財団により『危機に瀕している歴史サイト』に認定されています。(LNG建設予定地のすぐ横を通る)運河の建設のために掘り起こされた土の中から、骨が見つかりました。それは私達一族のものです。私の中には彼らと同じ血が流れているのです。かつて声をあげることができなかった彼らの声を代弁することが、重要だと思います」

記者会見で民族の歴史とLNG事業の懸念を語るマンスィアス氏(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

 

西洋の入植者による先住民族の排除の歴史により、この地域では自分に先住民族の血が流れていることさえも知らされていない人も多く、カリゾ・コメクルド族の米国政府による認定に時間がかる現状があります。LNG事業者はこの状況を逆手に取り、カリゾ・コメクルド族の同意は不要として事業を進めています(より詳しくはこちらの英語記事を参照)。

問われる銀行の環境・人権への対応

国際連合が推奨する先住民族の権利保護のための「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」は、土地や資源開発を行う事業において、影響を受ける可能性のある先住民族に対し、事業に関する十分な情報開示を事前に行なった上で、賛成または反対の立場をとる事ができる様にすることを求める国際的な原則です。

FPICによると、先住民族の権利は国の認定に関わらず保証されるべきであり、MUFG、みずほ、SOMPOホールディングスは、グローバル企業としてこのような国際的な基準の遵守が求められます。事業に必要な資金を調達するための手法であるプロジェクトファイナンスの際に配慮すべき環境的・社会的影響の国際的な指針である赤道原則(エクエーター原則)においても、同様の基準が採用されています。MUFGおよびみずほは、赤道原則の遵守を誓約しているにも関わらず、リオ・グランデLNGのように先住民族の権利侵害が疑われる事業者への資金提供が以前から報告されていて、企業が事業活動において人権への影響を予測・評価・管理・改善するためのプロセスである人権デューデリジェンスの実効性が疑われます

RANでは引き続き、日本のメガバンクにリオ・グランデ・バレーの3つのLNG事業からの撤退と、人権方針の遵守と人権デューデリジェンスの確実な実行を求める活動を行っていきます。

会見にてリオ・グランデLNGの工事中止を求める代表団(写真©︎ RAN / Masaya Noda)

 

署名に参加して、三菱UFJ銀行にLNG事業からの撤退を求めよう!

→ この記事をSNSで拡散して、リオ・グランデの問題を広めよう!

日本外国特派員協会における記者会見の様子はこちら(英語動画)

 

RAN「責任ある金融」キャンペーナー 麻生里衣

プレスリリース:新報告書「RGEグループの実態:無秩序に広がる破壊の帝国を暴く」発表〜止まらない環境破壊と違反行為、消費財企業と銀行に同グループとの取引停止を求め〜(2024/3/18)

インドネシアの大物実業家(タイクーン)で億万長者のスカント・タノト氏、RGEグループ支配下のシャドーカンパニーのネットワークを使って、森林破壊と先住民族の土地権をめぐるコミュニティとの紛争に対する責任を回避

TPL社ユーカリ植林地(右)の航空写真。先住民族コミュニティ慣習林に隣接してユーカリが植林されている。北スマトラ州フンバン・ハスンドゥタン県セクトール・テレ、2021年6月

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部サンフランシスコ、以下、RAN)は18日、調査報告書「RGEグループの実態:無秩序に広がる破壊の帝国を暴く(注)を発表し、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(RGE)グループが自社のサステナビリティ方針に違反して、現在も環境破壊を続けていることを明らかにしました。RGEグループは、インドネシアで巨額の脱税、森林破壊と人権侵害を起こしてきた数十億ドル規模の複合企業(コングロマリット)です。本報告書は、RGEグループが破壊的な行為を行っているにもかかわらず、大手消費財企業や銀行がRGEグループとの取引関係を停止していないことを浮き彫りにしています。

RGEグループは、インドネシアのタイクーン(大物実業家)であるスカント・タノト氏が所有・支配するインドネシア最大の紙パルプメーカーの一つで、パーム油産業でも大きな影響力を持つ企業の一社です。本報告書は、RGEグループの汚職、環境破壊、人権侵害、ペーパーカンパニーやオフショア会社所有構造の利用といった広範な悪事の記録に基づき、同グループを無責任な企業行動の典型例としています。

RAN森林シニアキャンペーナーで、本報告書の主執筆者であるフィトリ・アリアンティは「森林破壊を止めると約束したにもかかわらず、大手消費財企業や銀行は、RGEグループの破壊的行為に目をつぶり、取引を続けています。RGEグループの行動は、先住民族コミュニティ、熱帯林、生物多様性、気候に壊滅的な影響を及ぼしています」と批判しました。

本報告書は、RGEグループが、シャドーカンパニー(訳註1)のトバ・パルプ・レスタリ(TPL)社を通じて、同グループが宣言した2015年の森林破壊停止「基準日」(カットオフ日:訳註2)以降も森林伐採を続けていることを明らかにしました。RANが委託した衛星画像分析によると、TPL社の事業管理地では、カットオフ日以降も大規模な自然林の皆伐が行われていたことが判明しました。これは、TPL社とRGEグループ、また同社らの顧客であるプロクター&ギャンブル(P&G)やネスレなどが発表している誓約に違反するものです。

北スマトラを拠点とする土地権擁護団体KSPPM(Kelompok Studi Penguatan Prakarsa Masyarakat)のディレクター、デリマ・シララヒ氏(訳註3)は「地域コミュニティは、北スマトラ州でのTPL社による環境への影響と先住民族の権利侵害に対して、何十年にもわたって抗議してきました。今回の新たな自然林皆伐の証拠は、TPL社が人々の権利と環境を引き続き軽視していることを示しています」と指摘しました。

デリマ・シララヒ氏(市民団体 KSPPM プログラム・ディレクター)

報告書はまた、RGEグループが責任を逃れながら森林破壊を進めることを可能にしている、シャドーカンパニーと不透明な企業所有構造の複雑なネットワークの例を提起しています。本報告書に記載された証拠は、持続可能性と透明性に関するRGEグループの主張に疑問を投げかけ、「森林破壊に関係していない」というRGEグループの主張を信用すべきではないと消費財企業や銀行に警告するものです。

10年以上前、RGEグループの紙パルプ部門であるエイプリル(APRIL:アジア・パシフィック・リソース・インターナショナル)社は、インドネシアの熱帯林や先住民族コミュニティに及ぼしていた負の影響をRANの世界的なキャンペーンによって暴露され、その後、ディズニーなど大手出版社のサプライチェーンから除外されました。APRIL社は森林管理協議会(FSC)から関係を断絶され、APRIL社およびRGEグループのいくつかの企業は、今日に至るまで、同グループ製品の主要購買企業の「不買対象先」とされたままです。RGEグループ主要傘下企業は、2015年にサステナビリティ方針を発表し、2015年7月以降は森林破壊をもう行わないこと、また、多くの土地紛争の改善を約束しました。それ以来、APRIL社はFSCとの関係断絶を解消するための取り組みを始めました。FSCはAPRIL社に対し、同社が引き起こした被害を是正すること、および、2020年12月以降は同社の企業グループ全体(同社の支配下にある全ての企業と定義)が森林破壊を行っていないと証明することを求めています。

今回の調査で、2020年12月以降に森林破壊が行われたことが記録されたため、FSCがAPRIL社とTPL社との関係断絶を解消することはないでしょう。また、2020年12月以降に森林破壊をもたらした産品の輸入防止を目的とした欧州連合(EU)の新規制「森林破壊防止法」(EUDR)に基づき、TPL社の製品はEU市場への輸入を禁止されるでしょう。

RANは、P&G、モンデリーズ、コルゲート・パーモリーブ、ユニリーバ、花王、ペプシコ、ネスレ、日清食品、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などの消費財企業や銀行に対し、RGEグループとの関係を直ちに停止することを公に発表するよう求めています。RANは、上記企業やFSCに対し、RANの調査結果を徹底的に調べ確認し、環境破壊や人権侵害に加担しないよう強く求めます。

RANのアリアンティは「RGEグループのような企業が、持続不可能な慣行から利益を得ながら、地球を破壊し続けることは許されません。今こそ消費財企業と銀行は、森林破壊リスクがある産品が拡大する最前線にいる、環境と森林に依存するコミュニティのために立ち上がる時です」と強く訴えました。

米シンシナティのP&G本社前で行われた抗議活動。活動家は同社にRGEとの取引停止を要求した

 

注)報告書「​​RGEグループの実態:無秩序に広がる破壊の帝国を暴く」(英語 ”Exposing Royal Golden Eagle Group’s Sprawling Empire of Destruction”)
https://www.ran.org/forest-frontlines/exposing-royal-golden-eagle-groups-sprawling-empire-of-destruction/

訳註1)シャドーカンパニー(影の会社)とは、表面上別会社にみせかけているが、実態として所有関係のある会社のこと。親会社である企業グループの慎重に管理された対外的イメージに反するような、物議を醸す活動を水面下で行う。

訳註2)カットオフ日以降に森林伐採・転換が行われた場合、その地域や生産単位が、森林伐採や転換を行わないという約束、方針、目標、その他の義務に違反していると見なされる。(アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)の定義参照
https://accountability-framework.org/use-the-accountability-framework/definitions/

訳註3)デリマ・シララヒ氏(KSPPM プログラム・ディレクター)は、環境分野のノーベル賞とも呼ばれる「ゴールドマン環境賞」を2023年に受賞した。https://www.goldmanprize.org/recipient/delima-silalahi/

*本プレスリリースは、英文“New Report Exposes Royal Golden Eagle Group’s Environmental Violations and Calls for Brands and Banks to Drop Ties”(2024年3月18日)の和訳版です(2024年3月22日投稿)。

声明:RSPOに要求事項の強化を要請〜基準弱体化で信頼性を損なうリスク〜(2023/11/21)

RSPO基準はEUの新規制「森林破壊禁止法」(EUDR)に適合せず

(インドネシア・ジャカルタ)米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、20周年を記念してジャカルタで開催中の「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)を受けて、以下の声明を発表しました。

RANはRSPOの開催に合わせて、新報告書「森林&人権方針ランキング2023」を発表しました(日本での発表は17日)。同報告書は、パーム油生産が熱帯林及び炭素を豊富に含む泥炭地、先住民族コミュニティや伝統的コミュニティの権利に与える悪影響に対して、影響力のあるRSPO会員企業が対処できていないことを示しています。同報告書は大手消費財企業(その供給業者も含め)の森林と人権関連の方針と取り組みを詳細に評価するものです。同時に消費者に向けて、RSPOの現在の基準やシステムは欧州連合(EU)の新規制「森林破壊防止法」(EUDR)の要件を満たすには不十分であると警鐘を鳴らしています。透明性が高く、追跡可能で責任あるパーム油のサプライチェーンの実現のためには、各種システムを強化しなければならないことも述べています。

RAN森林政策ディレクター、ジェマ・ティラック

「今、パーム油業界にとっては極めて重要な時です。パーム油業界は数十年にわたって森林破壊と人権侵害の汚名を返上しようと試みてきました。それにもかかわらず、インドネシアの「ラワ・シンキル野生生物保護区」では、炭素を豊富に含む泥炭湿地林で水路が造成されて水が抜かれ、森林破壊の増加が今も確認されています。同保護区はスマトラオランウータンの生息密度が世界で最も高く「世界のオランウータンの首都」と呼ばれています。​​RSPO会員企業によるモニタリングが行われているにもかかわらず、この保護区が破壊されているのです。

RANは、森林が破壊された土地で違法に生産されたパーム油を調達しているRSPO会員企業を摘発しました。森林を破壊して生産されたパーム油は、プロクター&ギャンブル(P&G)、モンデリーズ、コルゲート・パーモリーブ、ネスレといった大手消費財企業のグローバルサプライチェーンと製品に混入し続けています。

こういった森林破壊は、パーム油セクターで当たり前のようになっている、有効性が低いトレーサビリティ(追跡可能性)システムのために起きています。深刻な欠陥のある(非認証油も混合される)RSPOのマスバランス・サプライチェーン・システムへの依存は非常に大きな問題です。

RANは、RSPOが中核的な認証基準の改訂プロセスを進めるなかで、基準をさらに弱めるのではないかと懸念しています。RSPOは基準を改訂する代わりに、すでに明らかになっている重大な抜け穴を防ぐことに取り組むべきです。RSPOは保証システムと苦情処理システムの問題に対処しなければなりません。

RSPOは、意義のある認証システムであり続けるために、責任あるパーム油生産の世界的基準である「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」( NDPE)の実践に整合する基準を維持し、実施する必要があります。RSPO基準は、土地権の侵害を可能にするために弱めてはなりません。また、森林被覆率の高い国の原生林景観や管轄認証プログラム内での森林破壊を可能にしたり、インドネシア全土の企業管理地外で小規模森林破壊を起こしている土地投資家、地元有力者が生産する問題あるパーム油をRSPO認証市場に参入を可能にするために、基準を弱めてはなりません。

市民団体は、RSPOで救済されていない多くの問題事例に関心が集まるよう呼びかけています。インドネシアの中部カリマンタン州スルヤン県Bangkal村で最近発生したコミュニティメンバーの殺害事件を受けて、自分たちの土地と生計を守るために行動を起こしている人権擁護者への暴力や脅迫、犯罪者としての不当告発に関して、RSPOは「ゼロトレランス」(不容認)アプローチを採用しなければなりません。

RSPOは、人権を尊重しない会員企業や、既存または新規のアブラヤシ農園開発によって影響を受ける先住民族コミュニティから「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得ていることを証明できない会員企業に認証を与えてはなりません。

土地収奪に関与している企業のグリーンウォッシュと、苦情や土地紛争解決についてのRSPOの失敗は20年続いてきました。RSPO認証システムにおける公正性の欠如は容認できるものではありません」

 

※NDPE基準は、2013年にパーム油革新グループ(POIG)が策定した憲章から発展したものです。多くのRSPO会員企業やコンシューマー・グッス・フ ォーラム(CGF)の自主的な方針で採用されたことを受け、2018年に行われた前回の見直しの際にRSPO基準に統合されました。

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
コミュニケーション:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

RAN PRI in Person 2023 Materials 関連資料

PRI in Person 2023 Official Side Event 公式サイドイベント

Presentation Slides /プレゼン資料

 

 

No Deforestation, No Peat, No Exploitation (NDPE)

TNFD (Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)

(NGO共同プレスリリース「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フレームワークの最終提言公開、グリーンウォッシュの懸念が継続」 、未訳)

About Forests & Finance Campaign

 

 

Rainforest Action Network
425 Bush Street, Suite 300 | San Francisco, CA 94108 | RAN.org

RAN日本代表部
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-13-11-204 | Japan.ran.org