サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

イベント:日・インドネシア森林保全シンポジウム2026「森林減少ゼロに向けたサプライチェーンの未来」(2026/7/9)

〜2026年7月22日(水)・23日(木)開催(東京・表参道 / オンライン)〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、7月22日、23日、「日・インドネシア森林保全シンポジウム2026」を地球・人間環境フォーラム、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、Auriga Nusantara(インドネシア NGO)と共同で開催します。

熱帯林は陸上の生物多様性を支える上で極めて重要です。陸地面積の7%にもかかわらず、地球上の動植物種の50~80%が存在するとされます。インドネシアは世界第3位の熱帯林面積を有し、多くの固有種・絶滅危惧種が生息する世界有数の生物多様性ホットスポットです。一方で、パーム油、紙パルプ、木材、近年では日本で再エネとして使われる木質ペレットの生産拡大に伴い、急速な森林減少と生態系への悪影響が依然として続いています。

日本はこれらインドネシア産森林コモディティの主要な消費国であり、日本企業・投資家の調達や投資行動は、現地の森林保全に大きな影響を与えています。

本シンポジウムでは、各コモディティ(紙パルプ、パーム油、バイオマス)の生産現場における森林減少や生物多様性リスク、地域社会への影響等について研究者やNGOから最新状況を共有します。そして、サプライチェーンを通じた森林減少ゼロに取り組む日本企業や、独自のエンゲージメントやデューデリジェンスに取り組む投資家らも加わり、マルチステークホルダーによる議論を行います。森林減少ゼロのサプライチェーンとネイチャーポジティブな未来の実現に向けた道筋を探ります。

インドネシアの森林減少、生物多様性保全、サステナブル投資、企業の責任ある調達などに関心をお持ちの皆様にとって、国内外の第一線の研究者・専門家、先進的な取り組みを進めるビジネス関係者に直接取材いただける貴重な機会です。

【開催概要】

日時:7月22日(水)、23日(木) 10:00~17:00(ネットワークセッションは17:30~19:00を予定)
会場:東京ウィメンズプラザ ホール(東京都渋谷区神宮前5-53-67)
開催方式:会場・オンライン併催
参加費:無料(事前申込制)
詳細・申し込み
https://www.gef.or.jp/news/event/260722-23japan_indonesia_forest_symposium/

インドネシアの熱帯林に住む生き物 (左:ボルネオオランウータン(c)HUTAN Group、右:クマクスクス(c)Taishi Takahashi / GEF)

プログラム(敬称略)※日英同時通訳付き
*時間および内容の詳細は随時更新・追記いたします。

(インドネシアの登壇者のプロフィールと写真はプログラムの下をご覧ください)

【1日目】

午前 10:00-13:15(予定)

基調講演「インドネシアの森林は、なぜ減少を続けるのか?(仮)」 
– Saurlin P. Siagian(インドネシア国家人権委員会委員)

セッション1「紙・パルプ」
日本のコピー用紙の約3割はインドネシア製です。紙パルプ生産のために起きている熱帯林の伐採、植林地への転換、泥炭地の開発、先住民族や地域住民の権利の侵害などの問題を、インドネシアのNGO・研究者からご紹介します。日本のNGOからは、企業への働きかけ、ユーザー企業の取組みと先進事例を取り上げます。責任ある紙製品調達のために、生産国と消費国それぞれに求められる取り組みを考えます。

– モデレーター:川上 豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットーク)

– コメント:Bambang Hero Saharjo (ボゴール農科大学)

– スピーカー:Aidil Fitri(HaKI:Hutan Kita Institute、私たちの森研究所)、原田 公(熱帯林行動ネットワーク )、Kokok Yulianto(WWFインドネシア)、太田 史生(味の素株式会社)

午後 14:30-17:00(予定)

セッション2「パーム油」
インドネシアは世界最大のパーム油生産国となり、同国の豊かな熱帯林は急速にアブラヤシ農園に置き換えられてきました。本セッションでは現地NGOから、アブラヤシ農園開発による環境・社会問題の最新状況を、日本のNGOからは10年以上継続しているアンケート調査と企業との対話を基に、ユーザー企業の責任ある調達への取組状況をご紹介します。また、NDPE(森林減少ゼロ、泥炭開発ゼロ、人権侵害ゼロ)方針の策定と実施を進める企業や、積極的なエンゲージメントを行う投資家にもご登壇いただき、森林減少を引き起こさないサプライチェーンの実現について議論します。

– モデレーター:内藤 大輔(京都大学農学研究科)

– コメント:冨田 秀実(サステナビリティ経営研究所)

– スピーカー:松原稔(りそなアセットマネジメント)、中司喬之(熱帯林行動ネットワーク)、Adelina Chandra(Trase)、Ristika Putri(LTKL(Sustainable District Association))、佐藤 浩司(花王株式会社)

【2日目】

午前 10:00-12:30(予定)

セッション3「バイオマス」
日本では「再生可能エネルギー」としてバイオマス発電が支援され、インドネシアからの燃料輸入量が急増しています。その生産地で森林が大面積で伐採され、絶滅危惧種や固有種を含む貴重な生態系の価値が失われている現状を、現地NGOや研究者に報告していただきます。一方、日本のバイオマス発電の支援政策も、持続可能性を求めて変化を続けています。政策関係者やバイオマス発電事業に融資してきた金融機関から、それぞれの問題認識や課題解決に向けた取り組みを紹介していただきます。持続可能なバイオマス発電と、森林と生物多様性の維持は両立可能か、多方面から検討します。

– モデレーター:泊 みゆき (バイオマス産業社会ネットワーク)

– コメント:Terri Repi(ゴロンタロムハマディヤ大学)

– スピーカー:岡﨑達也(三井住友トラストグループ)、経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 担当官、Christopel Paino(JAPESDA:Natural Resources Management Advocacy Network)、Timer Manurung(Auriga Nusantara)

午後 14:00-17:00(予定) 

セッション4:「保全」
インドネシアの熱帯林は、パーム油、紙パルプ、バイオマスなどの生産のために減少し続けています。消費国側と生産国側の連携により、森林を破壊しないサプライチェーンを確立することはできるのでしょうか。本セッションでは現地で企業・行政と地域住民が、共同で計画策定やモニタリングなどを行い、広域での森林保全で成果をあげている3つの地域での事例を取り上げ、成功に必要な要素について考えます。また日本のバイヤー企業の調達方針や働きかけが果たす役割、マルチステークホルダーが関わる、熱帯林を減少させない調達の可能性を議論します。

– モデレーター:井田 徹治(共同通信社)

– コメント:Jatna Supriatna (インドネシア大学)

– スピーカー:Rudi Putra(FKL:Leuser Conservation Forum)、石崎雄一郎(ウータン・森と生活を考える会)、Paulinus Kristianto(CAN :Conservation Action Network,Borneo)、不二製油株式会社の保全プロジェクト関係者

総括コメント:足立 直樹(株式会社レスポンスアビリティ)

 

本シンポジウムの注目ポイント

1. インドネシアの森林保全に関する第一線の研究者、NGOが多数来日

Saurlin P. Siagian氏:インドネシア国家人権委員会 監視・調査担当委員

人権擁護、社会正義、農地改革、環境ガバナンス、先住民族の権利が専門。政策提言、調査研究、アドボカシー、制度強化に幅広く従事。


 

Bambang Hero Saharjo氏:ボゴール農科大学教授

森林火災・泥炭地火災研究の世界的権威。森林・プランテーション開発に伴う違法な森林火災の科学的解明と原因追究に尽力し、2019年に科学的根拠に基づき公共の利益に資する情報発信等の活動に取り組む個人に与えられる「ジョン・マドックス賞」を受賞。

 

Adelina Chandra氏:Trase リサーチャー

データに基づく分析を通じて、森林減少とコモディティ・サプライチェーンの透明性向上に取り組む国際非営利組織 Traseのリサーチャー。森林減少、森林ガバナンス、持続可能なコモディティ・サプライチェーンを専門とする。

 

Ristika Putri氏:「持続可能な郡政府連合」事務局長

持続可能な地域づくりを推進するインドネシアの「持続可能な郡政府連合」(Lingkar Temu Kabupaten Lestari、LTKL)の事務局長。郡政府、企業、地域コミュニティ、開発パートナーとの連携を通じて、経済成長と森林保全、気候変動への強靱性を両立する地域戦略の策定を支援。

 

Timer Manurung氏:環境NGO Auriga Nusantara創設者・代表

インドネシアで20年以上活動してきた環境活動家。衛星・サプライチェーンデータに裏付けされた、インドネシア有数の環境アドボカシー組織を率いる。

 

Rudi Putra氏:Leuser Conservation Forum(FKL)保全アドバイザー

アジア最大・世界有数の熱帯林「ルーセルエコシステム」における生態系保全の第一人者。同地で30年以上にわたり森林・野生生物保全に取り組み、2014年にゴールドマン環境賞を受賞。

 

Jatna Supriatna氏:インドネシア大学教授、気候変動研究センターおよび持続可能な地球資源研究所の所長

インドネシアを代表する保全生物学者で、国際NGOコンサベーション・インターナショナルのインドネシア代表、副代表を長年務めた。インドネシアの環境と生物多様性を主題とした著書と論文多数。

 

2. 日本企業・投資家などとの対話

インドネシアのNGOや研究者に加えて、日本側からも下記の幅広い立場の人が集い、議論を行います。森林・生物多様性保全の現場、裏付けとなる科学的な知見、サステナブル投資やサプライチェーン管理の実務など、横断的な視点や取り組みを取材いただけます。

• 紙製品・パーム油のユーザー企業
• エンゲージメントやデューデリジェンスに積極的に取り組む投資家・金融機関
• 関連政策を所管する行政担当者
• 研究者、サステナビリティ専門家

 

3. 交流の機会

両日とも終了後にはネットワーキング・セッションを予定しております。登壇者への取材や名刺交換、関係者との意見交換など、対面ならではの交流の機会としてご活用ください。

 

【お問い合わせ】

一般財団法人 地球・人間環境フォーラム
鈴嶋(suzushima@gef.or.jp, TEL: 050-7112-2967)・飯沼(iinuma@gef.or.jp, TEL: 080-3488-9850)

 

ブログ:RAN 事務局長「2026年の展望:激動の時代に立ち向かう」(2026/5/11)

写真:Anderson Barbosa

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
事務局長ジンジャー・キャサディ

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)では、「私たちはどのような未来を共に作るのか?」という、現代における最も差し迫った問いに向き合いながら、新年を迎えています。この問いこそが私たちの活動の源であり、変革の理論(セオリー・オブ・チェンジ)の中核を成すものです。

昨年秋、私はブラジル・ベレンで開催されたCOP30(国連気候変動枠組条約 第30回締約国会議)に参加し、先住民族、森林コミュニティ、女性、労働者、若者による歴史的なモビライゼーション(組織化された行動)に心を打たれました。彼らは市内のあらゆる街頭や草の根の場で、力強い機運を作り上げました。「地球は、破壊を推し進めている従来の金融システムでは決して繁栄できない」という彼らのメッセージは明確で、アマゾンという枠を遥かに超える意義深いものでした。

しかし、COP30の内部では様相が異なっていました。交渉担当者たち(自らの利益優先で既存ビジネスモデルを守ろうとする化石燃料企業やアグリビジネス複合企業、産品取引業者、大手銀行らのロビイストに影響された)が、現状の既存の経済システムを崩すことのないまま、地球規模の緊急事態に対処しようと試みていたのです。

ベレンで明らかになったのは、私たちの未来をめぐる闘いが、地球の南北や国境、政党の枠を超えて展開されているだけでなく、搾取的で破壊的な経済システムを擁護する人々と、公平で生態学的な代替案を提唱し、それを築いている人々との間で繰り広げられているということです。

そして、RANは、40年にわたり企業権力に挑み、実際に変化を生み出してきた経験をもつ組織として、その闘いに臨む準備は整っています。

2025年は、記録的な気候災害、政治的分断、世界中の人道支援資金や保全活動資金の大幅削減、各国政府と企業利益の連携強化などといった、世界的に激動の年でした。しかし、こうした状況下でも、RANの最新の年次報告書が示す通り、私たちは重要な変化をもたらしました。2026年、RANは戦略をさらに研ぎ澄まし、森林破壊、化石燃料の拡大や人権侵害を引き起こしている多国籍銀行や保険会社、企業への働きかけという最も重要な分野で、影響力を行使する準備ができています。

2026年のRANの戦略的優先事項

グローバル金融の変革:COP30は、「従来通りのやり方(ビジネス・アズ・ユージュアル)では、気候・生態学系危機の深刻さに応えられる構造的変化を実現することはできない」という、切迫した真実を浮き彫りにしました。被害を生み出している金融的要因に正面から向き合わない限り、実質的な進展が実現することはないでしょう。

2026年、RANは全てのキャンペーンにおいてグローバル金融戦略を拡大し続けます。金融機関に直接、その破壊行為について責任を問うと同時に、規制当局に対しても、自主的な約束や取り組みに留まることなく、強制力のある金融規制を制定するよう働きかけます。これには以下が含まれます:

  • RANの代表的な報告書である『化石燃料ファイナンス報告書:気候カオスをもたらす金融業務』の対象を拡大し、より多くの地域と金融機関を含めること
  • 「森林と金融」連合の活動を拡充すること、第3回目となる年次報告書『生物多様性崩壊をもたらす金融業務』を発行すること
  • 昨年の保険会社に対する重要な勝利を土台として、保険業界全体の責任強化を促すこと
  • 重点地域の拡大:多くの国で市民社会スペースが縮小し、企業の横暴さがますます勢いづく中で、RANは、長年にわたり、自らが有効性が実証してきた戦略が、最大限の効果を発揮できる地域を優先しています。インドネシアでは、スマトラ島の「ルーセル・エコシステム」における10年以上の取り組みを基盤とし、ボルネオ島マハカムウル地域で森林保護キャンペーンを強化していきます。同キャンペーンは、慣習林の法的承認の確保と、先住民族の領域へのアブラヤシ農園開発(パーム油生産のための)拡大阻止に焦点を当てています。
  • 同時に、森林リスク産品とメタン(LNG=液化天然ガス)拡大に多額の投資を行う日本の銀行への働きかけを強化するとともに、世界的なメタン拡大との闘いを拡大してフィリピンの草の根運動を支援します。また、米国南部メキシコ湾岸地域での連携を深め、さらに保険業界に対する働きかけの対象を日本と欧州の保険会社にも拡大します。
  • 人権を中心に据える:昨年のCOPが期待に沿わず残念な結果となった中で「Political Declaration of the Indigenous Peoples of the Amazon Basin and of All Biomes of Brazil for COP30(アマゾン盆地およびブラジルの全生物群系の先住民族によるCOP30に向けた政治宣言)」が、強力な対抗軸として浮上しました。この宣言は、アマゾンの未来だけでなく、より広く気候行動を生態学的現実と整合させるための構造的な枠組みを提示しています。
  • 権利に基づき、先住民族を中心に据えたリーダーシップが、意思決定の場で軽視され続ける中で、RANは全キャンペーンにおいて人権中心の枠組みを強化します。具体的には、金融機関や企業に、先住民族の土地権を尊重し、FPIC原則(「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」の尊重)を遵守し、コミュニティや人権擁護者などを暴力や報復の危険にさらす慣行を終わらせるよう強く求めていきます。
  • 資金不足の解消:前進を阻む最も根強い障壁の一つは、解決策の欠如ではなく、解決策を主導している人々に資源が届いていないことです。気候投資全体は増加しているにもかかわらず、自然保護や、最前線である現場主義の解決策への資金は、世界の資本や慈善寄付のごくわずかな割合にとどまっています。
  • 2026年、RANは、従来の資金提供ネットワークから歴史的に排除されてきた先住民族や地域のコミュニティへ、迅速かつ効率的に資金を届けるために、コミュニティ・アクション助成プログラムを通じて、先住民族と最前線の協力団体への直接支援を引き続き優先事項として位置付けます。
  • 運動の拡大:RANの戦略の中核的な柱は、最も潤沢な資源を持つ強力な企業にさえ立ち向かうことができるピープルパワー(人々の力)を築き、草の根運動を強化することです。
  • 2026年には、動員と研修への注力を強化し、活動家や協力団体が企業権力に挑み市民社会スペースを守るためのツールを提供します。また、世界中の活動家や協力団体、運動、そしてメディアにとって不可欠な資料となっているRANの各種調査報告書の規模と対象を拡大する取り組みを継続します。

間違いなく困難となるこの一年において、私たち一人ひとりには、活動家、資金提供者、支援者、そして世界的な運動の一員として果たすべき役割があります。なぜなら私たちは力を合わせることで、人々や森林、気候を中心に据えた解決策に向けて資源を投入する力があるからです。そして、政治的不確実性が高まり、活動家、人権擁護者、最前線のリーダーたちの標的化が激化する中でも、私たちが必要だと信じる未来に邁進するために、私たちは声を上げ、組織化し、連帯して行動する力があります。

私たちのネットワークへの協力と支援に感謝します。そして闘いに取り組み続けてくれてありがとうございます。

連帯を込めて

ジンジャー・キャサディ

この記事は “Looking Ahead: Meeting the Moment in 2026” の和訳版です(2026年1月発行)。

プレスリリース:RAN最新調査 MUFG資金提供とRGEグループの森林破壊の実態が明らかに(2025/12/19)

〜インドネシアが大洪水に見舞われる中で発覚〜

写真:RGEグループの供給業者 PT. SAKの事業管理地で、熱帯林が皆伐されたばかりの区域を記録したドローン写真。© Auriga Nusantara, 2025

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は本日19日、新たな調査の結果を発表し(注1)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループとつながりのある供給業者によるインドネシアでの大規模熱帯林破壊の明白かつ継続した証拠があるにもかかわらず、同グループへの資金提供を続けていることを明らかにしました。RGEは、インドネシアの億万長者であるスカント・タノト氏が支配する紙パルプ複合企業です。RANは「このスキャンダルは、世界の銀行や大企業が森林破壊を終わらせると約束しながらも、いかに生態系の崩壊を加速させているかを強く示している」と主張しました。森林破壊は、11月末にインドネシア各地を襲った壊滅的な洪水の一因に挙げられています。 これによりインドネシア政府は、北スマトラ州にあるRGE傘下のパルプ企業であるトバ・パルプ・レスタリの操業停止を命じました

今回の調査は、衛星画像分析やインドネシア政府のデータ、サプライチェーン記録によって、中国にあるRGEグループ最大のパルプ工場に供給する木材チップ工場が、2020年から2024年にボルネオ島の東カリマンタン州で5,500ヘクタール以上の天然林を皆伐した植林地から木材を調達していたことを明らかにしました。この調査は、インドネシアのパルプ材セクターに関するサプライチェーン透明性プラットフォーム「Trase」の最新データを利用して実施されました。 調査結果は、RGEが2016年に大々的に発表した「サプライチェーンからの森林破壊停止」の誓約と矛盾し、MUFGの森林破壊をなくすという約束の信頼性についても深刻な懸念を提起しています。RGEはこれに対して、予備分析の結果、供給業者の事業許可地で「土地被覆の変化」が発生し、これは同社の方針に違反している可能性が高いと結論付けたと、回答しました。

PT. BJAの事業管理地における年ごとの森林破壊を示した衛星画像(2020〜2024年)

森林破壊スキャンダル、インドネシア地域社会が壊滅的な洪水に見舞われる中で発覚

調査による新事実は、インドネシアがボルネオ島(カリマンタン)からスマトラ島の各地でコミュニティを壊滅させた深刻な洪水の余波に直面する中で明らかになりました。災害対策政府機関や科学者は、この災害を上流の森林喪失と直接結びつけています。かつて降雨を緩和し、ランドスケープ(景観)を安定させていた原生林は産業用植林地に取って代わり、浸食を悪化させ、鉄砲水の速さと規模を増幅させています。洪水の後、インドネシア政府は監査を実施する間、RGEグループの別のパルプ企業であるトバ・パルプ・レスタリに対し操業停止を命じました。

RAN森林プログラムディレクターのロビン・アバベックは「記録された森林皆伐は些細なものではなく、RGEグループのグローバルな木材繊維供給量のかなりの部分を占めています。また、この様な事例が発覚したのは今回だけではありません。 まさにこれらの同じ企業は、数年前の森林皆伐の後、強化された監視下に置かれるはずでした。この事例は、RGEが掲げる『森林破壊へのゼロ・トレランス(不容認)』が偽りであることを明らかにしています。RGEの木質繊維需要の急増は、ボルネオに残る熱帯林への最大の脅威の一つであり続けています」と警鐘を鳴らしました。

FSC規則が証明:RGEの関連企業、森林皆伐を続けるシャドー事業とのつながり

今回の調査により、PT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)が、RGEの保有する中国の巨大パルプ工場「アジア・シンボル」に木材チップを独占供給していることが判明しました。 森林管理協議会(FSC)の改訂ガイドラインによると、PT. BCLはRGEの財務的支配下にあるとみなされます。これはPT. BCLとつながりのある森林破壊の継続が、FSC方針およびRGE自身の「森林破壊ゼロ」誓約に直接違反していることを意味します。

RGEはPT. BCLの所有を否定していますが、重複する企業構造や産業施設の共有、独占的な供給の流れは、RGEの「紙パルプ帝国」を拡張する「シャドーカンパニー(影の企業)」の形態を明らかにしています。この仕組みにより、タノト一族の複合企業は森林皆伐から利益を得ながら、自社の旗艦的な代表企業を破壊行為から隔てることを可能にしています。
RGEはRANの質問に対して、アジア・シンボルおよびRGEグループの他の下流パルプ企業はPT. BCLからの供給を全て停止すると回答しました。しかしながら、PT. BCL自体は依然としてRGEの企業グループの一部です。

アバベックは「RGEは、市場と金融へのアクセスを確保するために、FSC認証企業としての地位回復を急いでいます。そのために、過去における環境破壊の規模を査定しています。しかし同時に、同社の木材繊維需要はボルネオの熱帯林での新たな破壊を加速させ続けています」と続けました。

関連する最新情報として、本日(米国時間18日)、RANはFSCの設立メンバーを辞職することを発表しました。長年にわたる当認証機関への信頼性の失墜が理由です。

写真:PT. BCLで植林地からの丸太が荷下ろしされる様子、インドネシア東カリマンタン州バリクパパン、2024年11月

MUFGはRGEへの支援を継続、明白な証拠があるにもかかわらず

RGEの森林破壊に関する証拠が増える中、MUFGは2020年から2025年7月までに、RGEのパルプ部門であるエイプリル社(APRIL)に少なくとも2億2200万米ドルの融資を提供しました(注2)。これには2024年のシンジケートローンへの9,500万米ドルの出資も含まれます。 MUFGは持続可能なファイナンスを牽引すると表明する一方で、「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針の包括的な適用方法や、不透明な企業構造やシャドーカンパニーを持つ顧客へのデューデリジェンスの実施方法を示していません。
RANは調査結果公表の前に、新たな証拠をMUFGに提示しました。しかしMUFGは顧客の守秘義務を理由に、調査結果についてのコメントを控えました。

RAN 責任ある金融キャンペーナー(日本担当)の麻生里衣は「MUFGは、サステナビリティへの誓いを行動に移すべきです。MUFGは、自然資本と生物多様性を優先課題と認識しているとしながらも、RGEグループなどの顧客への資金提供は全く逆の傾向を示しています。責任ある金融機関を目指すのであれば、MUFGは影に隠れて熱帯林を破壊する企業にではなく、最前線のコミュニティの声に耳を傾けるべきです」と訴えました。

即時に求められる行動

レインフォレスト・アクション・ネットワークは以下を要求します:

1. RGEグループ全体の森林破壊が停止・是正されない限り、FSCとの関係修復停止の措置は延長されること。

2. FSCのガイドラインに従い、PT. バリクパパン・チップ・レスタリ、タラカン島のパルプ工場(PT. フェニックス・リソーシズ・インターナショナル、注3、その他のRGE関連のシャドーカンパニーを明確に企業グループに含めること。

3. RGEグループへのMUFGの新規の資金提供を即時に停止すること。

4. グループ全体で森林破壊のない事業活動が確認されない限り、グローバル消費財企業によるRGEからの調達を停止すること。

アバベックは「RGEがボルネオのあらゆる場所で森林破壊を積極的に進めている傍ら、MUFGは資金を提供しています。地域社会は、土砂崩れや壊滅的な洪水を含む被害に必然的に見舞われることになります。タノト一族のビジネス帝国と、それを可能にしている銀行には責任があります」と強調しました。

注1)RAN「RGEグループ、パルプ材サプライチェーンにおける新たな森林破壊を認める」
https://japan.ran.org/?p=2584

注2)「森林と金融」データより
https://forestsandfinance.org/ja/

注3)参考
RAN「ボルネオとパプアで森林破壊の新たな動き〜背後にひしめく悪しきプレイヤーたち〜」、2023年5月22日
https://japan.ran.org/?p=2276

*本プレスリリースは、英文 ”New Investigation Exposes MUFG’s Financing of Royal Golden Eagle’s Deforestation as Indonesia Reels from Deadly Floods” の和訳版です。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
http://japan.ran.org

本件に関するお問い合わせ先

レインフォレスト・アクション・ネットワーク

東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204、TEL 03-6721-0441 FAX:03-6721-0959

責任ある金融キャンペーナー(日本担当)麻生里衣 
Email: rie.aso@ran.org

日本チームマネジャー:関本幸
Email: yuki.sekimoto@ran.org

ブログ:RGEグループ、パルプ材サプライチェーンにおける新たな森林破壊を認める(2025/12/19)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度(© Auriga Nusantara, 2025)

概要

● ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、自社サプライチェーンにおける森林破壊を2016年以降に停止することを誓約している。しかし、それから9年後の今も、RGEグループの紙パルプ部門のサプライチェーンは、熱帯林の皆伐を続ける事業管理地からの調達を継続している。木材チップの調達は、物議を呼んでいる PT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)を通じて行われている。RGEグループは、自社方針の違反があったことを認めている。

● 森林管理協議会(FSC)が新たに公表したガイドラインによれば、PT. BCLはRGEグループの財務的支配下にあり、ゆえにRGEの企業グループの一員とみなされる。したがって、RGEグループは、FSCとの関係修復に向けた取り組みの基盤である「森林破壊禁止」誓約に引き続き違反している。

● インドネシア政府の記録および衛星画像分析から、中国にあるRGEグループ最大のパルプ工場に専属で供給する木材チップ工場であるPT. BCLが、2020年から2024年の間に5,565ヘクタールの天然林を皆伐した2つのパルプ材植林地から調達していたことが明らかになった。

● 日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、RGEグループのパルプ部門への融資を続けている。2020年から2025年7月までに、エイプリル社に2億2,200万米ドルの融資を行っている。そのうち、2024年にはシンジゲートローンに9,500万米ドルもの拠出が行われた。

RGEグループと森林破壊のつながり

ロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、ビスコース、紙、ティッシュ、包装材の世界的な大手供給企業である。同グループは、2016年の始めまでに自社サプライチェーンから森林破壊を停止するという誓約を広く宣伝しているにもかかわらず、インドネシアの熱帯林を皆伐している供給業者からの調達を続けている。

税関記録、衛星画像分析およびサプライチェーンのデータによると、インドネシアの木材チップ生産者であるPT. バリクパパン・チップ・レスタリ(PT. BCL)が、2020年から2024年にかけてボルネオ島の東カリマンタン州で5,500ヘクタール以上の天然林を皆伐した2つのパルプ材植林地から、大量の木材を調達してきたことを示している。この税関記録および木材供給に関するデータは、サプライチェーンの透明性向上のためのプラットフォーム「Trase」が、インドネシアのパルプ部門に関する最新アップデートのなかでまとめたものである。現地のNGOである「アウリガ・ヌサンタラ(Auriga Nusantara)」による現地調査は、2025年に至るまで継続している森林破壊を記録している。

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地2025年5月の衛星画像(Sentinel-2)に示された、最近皆伐された区域の記録(ヌサンタラ・アトラス上で閲覧)。ドローンの位置(黄色のピン)および撮影されたおおよその範囲(ピンク色)を表示

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度(© Auriga Nusantara, 2025)

RGEグループの供給業者であるPT. SAKの事業管理地で、熱帯林が転換されたばかりの区域を記録した最近のドローン写真。ドローンの位置:北緯0.0784825度、東経115.9216100度、皆伐が行われた区域:北緯0.083936度、東経115.937801度 (© Auriga Nusantara, 2025)

問題となっている木材チップ工場——PT. BCL——は、数年にわたりRGEグループの独占供給者となっている。森林管理協議会(FSC)が2025年10月に採用した新しいガイドラインによれば、PT. BCLは、RGEグループの財務的支配下にあり、ゆえに企業グループの一員とみなされる。以上のことから、RGEグループは保護価値の高い(HCV)地域の破壊および森林の非森林用途への大規模転換を禁じるFSCの「組織とFSCの関係に関する指針」に違反していると見られる。RGEグループは、「救済(補償)プロセス」を通じて、傘下のパルプ企業グループであるエイプリル社(APRIL:アジア・パシフィック・リソース・インターナショナル)とFSCとの関係修復を図ってきた。しかし、RGEグループ傘下のパルプ企業トバ・パルプ・レスタリ(TPL)の労働者が先住民族コミュニティの人々に暴行を加えた事件の告発を受け、この救済プロセスは2025年9月に停止されている。

PT. BCLで植林地からの丸太が荷下ろしされる様子(2024年11月)

loyal-Golden-Eagle-Industrial-Zone-BalikpapanPT. BCLの木材チップ施設は、RGEグループ傘下のアピカル社のパーム油精油施設の隣に位置する(バリクパパン)

RGEグループはこの告発に対し、同社の「予備的分析は、2020年から2024年の間に、PT. センダワル・アディ・カリヤ(PT. Sendawar Adhi Karya: PT. SAK)およびPT. バカヤン・ジャヤ・アバディ(PT. Bajayan Jaya Abadi: PT. BJA)の事業管理地において土地被覆の変化が実際に発生していること、および、この土地被覆の変化は当社の森林破壊禁止方針および持続可能な調達方針に適合していなかった可能性が高いことを示しています」と回答している(RGEの回答全文はページ下部を参照)。

2023年7月、RGEグループ傘下のアジア・シンボル社も、PT. BCLは木材チップ供給者であり、RGEグループおよびアジア・シンボルの森林破壊禁止誓約に反して、2016年から2022年にかけて森林破壊を引き起こしていた供給業者から木材を調達していたと認めている。アジア・シンボルはこの声明の中で、PT. BCLには「強固なデューデリジェンス体制を整備し、調達した全ての木材について定期的な現地検証を実施することが求められていました」と述べた。しかし、このスキャンダル以降も、アジア・シンボルはPT. BCLから安定的に調達を続けている。2020年にはアジア・シンボルのPT. BCLからの木材チップ調達は、全体の約5分の1を占めていた。政府記録と衛星画像分析などを用いた今回の新たな調査結果は、PT. BCLが天然林を皆伐している企業からの調達を継続していたことを示している。2024年にPT. BCLが調達した木材総量の36%は、天然林の皆伐を行うPT. SAKとPT. BJAから調達されていた。この調達は、アジア・シンボルが表明している、PT. BCLの調達に関する強化されたデューデリジェンス・検証の実施期間中に行われたものである。RGEグループのバリューチェーンに森林破壊とつながりのある供給業者が存在し続けていることは、RGEグループが掲げる「森林破壊を一切容認しない」という主張が偽りであることを示している。

RGEグループは次のように回答した。「PT. BCLおよびその供給業者による当社方針の遵守に疑いが生じたのは、今回が初めてではありません。(略)当社調査による予備的な所見に基づき(略)アジア・シンボルは、PT. BCLからの全ての供給を直ちに停止する決定を下しました。アジア・シンボルおよびその他のRGE企業は、今後PT. BCLから調達を行いません」

PT. BJAの事業管理地における年次の森林破壊を示した地図(2020〜2024年)

PT. SAKの事業管理地における年次の森林破壊を示した地図(2020〜2024年)

サプライチェーン内の森林破壊

衛星画像分析および現地調査は、PT. SAKおよびPT. BJAの隣接する事業管理地内で、2020年以降、5,500ヘクタール以上の熱帯林(サッカー場7,000面以上に相当)がパルプ材用植林地のために皆伐されてきたことを示している(衛星リモートセンシング分析はRANが外部委託したもの)。

PT. BCLがインドネシア環境林業省に報告したデータによれば、PT. SAKおよびPT. BJAは、2024年に両社の植林地の40万立方メートルを超える木材を、全てPT. BCLの木材チップ工場に送っている。出荷記録によれば、PT. BCLは同年、その木材チップの全量、すなわち80万トン超(7,000万米ドル以上相当)を、中国山東省日照市にあるRGEグループの巨大パルプ工場であるアジア・シンボルに輸出している。これらの出荷記録は、インドネシアのバリクパパンと中国の日照市との間で木材チップを輸送した船舶の動きの追跡データの分析結果によって確認された。

PT. BCLの最終受益者(実質的な所有者)は、オフショアのペーパーカンパニーによって隠されているが、これらのペーパーカンパニーは、RGEグループと複数の共通点を持つ。RGEグループはPT. BCLの所有・支配を否定しているものの、PT. BCLは、RGEグループのパルプ材サプライチェーンにおける垂直統合型の施設であると見られる。PT. BCLは、RGEグループに専属で供給し、RGEグループ傘下のクタイ(Kutai)にあるパーム油の製油所と同じコンビナートで操業し、出荷港を共有している。

マハカム川の森林景観

PT. SAKおよびPT. BJAの事業管理地は、西クタイ県にあり、ボルネオ島で三番目に大きい河川であるマハカム川の流域に位置する。インドネシア語で「マハカム・ウル」と呼ばれる上流域には、インドネシアに残された最大級の手付かずの熱帯林が広がっている。しかし、マハカム川流域に残存する熱帯林は、石炭採掘やアブラヤシ農園開発、森林伐採、そして今回の事例に見られるようなパルプ材用植林地開発などの産業によって、断片化の脅威に晒されている。

マハカム川で遊ぶ絶滅危惧種カワゴンドウ7頭の群れ(2024年11月© RAN)

マハカム川流域には、現地では「ペスット」と呼ばれるマハカム川固有のカワゴンドウの個体群(別名:イラワジイルカ、IUCNレッドリスト:深刻な危機(CR))や、めったに姿を見せないスマトラサイなど、多くの絶滅危惧種や、象徴的な種が生息している。スマトラサイは、かつて野生では絶滅したと考えられていたが、2025年にタバング(Tabang)郡区のPT. SAKの事業管理地近く、2016年にマハカム地域で確認されている。一頭のサイはその後保護されたが、この森林は野生復帰を成功させる上でも極めて重要な生息地であることに変わりはない。さらに、絶滅の危機にあるボルネオオランウータンやテングザル、オナガサイチョウなどの動物も生息している。

タバング郡区のPT. SAKの事業管理地近くで、2025年にカメラトラップにより撮影されたボルネオサイ(CR)(写真© Indonesia’s Resource Conservation Centre (BKSDA))

カワゴンドウマハカム川に生息する絶滅危惧種(CR)のカワゴンドウ。「ペスット」とも呼ばれる(© Yayasan RASI)

ボルネオオランウータン絶滅危惧種(CR)のボルネオオランウータン。生息地存続可能性評価によると、マハカム川周辺に生息する(写真:Creative Commons)

マハカム川流域に生息する絶滅危惧種(EN)のテングザル(写真© Yayasan RASI)


先住民族ダヤックのフドック祭(マハカム・ウル)

マハカム川上流の素晴らしい景観と生物多様性は、自然に依存した伝統的農業と現代的農業により生計を立てる先住民族コミュニティのダヤック族のスチュワードシップ(責任ある管理)によって守られている。これらのコミュニティの多くは、伝統的に使用してきた土地と森林をめぐる慣習的権利(慣習林:インドネシア語で「フータン・アダット」)を獲得して、森林伐採、アブラヤシ農園、鉱山の新規開発地を求める企業の進出から土地と権利を守るために闘っている。

MUFGは森林破壊への関与に対処していない

日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、RGEグループのパルプ部門およびパーム油部門に対する重要な資金提供者である。MUFGは、RGEグループのインドネシア事業に対する第二位の資金提供者であり、同グループの数十億ドル規模のサステナビリティ・リンク・ローンにおいて主幹事およびサステナビリティ・アドバイザーを務めた。「森林と金融」のデータによれば、MUFGは2020年から2025年7月までの間に、RGEグループのパルプ企業であるエイプリル社に2億2,200万米ドルを提供した。その中には、2024年のシンジゲートローンへの9,500万米ドルの拠出が含まれる。

MUFGは、顧客の守秘義務を理由に、本調査結果についてのコメントを控えた。

2021年、MUFGはパーム油部門に「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を採用し、その後2023年に紙パルプ部門にも同方針の適用範囲を拡大した。しかしMUFGは、これらの方針をどのように実施し、デューデリジェンスやリスク管理プロセスに統合しているかについて、ほとんど情報を開示していない。また、森林破壊ゼロのポートフォリオを達成するための明確な基準日(カットオフ日)や達成の期限も開示していない。このMUFGの現状は、森林破壊への対処に関して2024年に大手機関投資家グループが示した期待を大きく下回っている。

RGEグループが、インドネシア各地で森林破壊を引き起こし続けている「貸借対照表に計上されない事業活動」、いわゆる「シャドーカンパニー(影の企業)」の複雑なネットワークを運営している証拠は増え続けている2020年2023年および2024年の報告書を参照)。これらのシャドーカンパニーの最終受益者は、秘密管轄区(secrecy jurisdictions)に所在するオフショア企業によって隠されている。しかし、複数の取締役の重複や資源の共有、そして従業員の証言も含めると、シャドーカンパニーの事業活動は実質的にRGEグループに支配されていることを示している。RGEグループは、これらの事業活動への関与を否定している

MUFGがパルプ部門の融資先による森林破壊に対処するためには、複数のマルチステークホルダー型イニシアチブが推奨する様に、自社方針やデューデリジェンスを特定の事業や子会社に限定せずに、顧客の企業グループ全体に適用するべきである。このようなアプローチは、気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)、アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアチブ(AFi)、森林破壊フリー・デューデリジェンスのガイド、ならびに「森林と金融」による方針評価によって支持されている。

 

本調査のストーリーマップはこちら(英語ページ)

 

著者:レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。


https://japan.ran.org

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RGEグループからの回答原文(2025年12月11日)

Dear Rainforest Action Network,

This is in response to your letter dated 24 November, 2025 regarding wood supply received by Asia Symbol from its supplier PT. Balikpapan Chip Lestari (BCL), specifically the wood supply sourced by BCL from companies PT Sendawar Adhi Karya (SAK) and PT Bakayan Jaya Abadi (BJA). In your letter you stated that you had evidence that between 2020 and 2024 SAK and BJA had converted forest areas into plantations in their concessions in East Kalimantan.

We take all such allegations seriously. Asia Symbol investigated your claims and preliminary analysis of the concessions of the two suppliers to BCL indicates that land cover change did occur in the concessions of SAK and BJA between 2020 and 2024 and that this land cover change was likely non-compliant with our no-deforestation and sustainable sourcing policies and requirements.

As you have noted in your letter, this is not the first time that compliance by BCL and its suppliers with our policies has come into question. Asia Symbol had in 2023 requested BCL to suspend supply from its supplier PT. Industrial Forest Plantation (IFP) after claims that IFP had conducted non-compliant plantation establishment and BCL had implemented that suspension.

Based on the preliminary findings of our investigation regarding supply to BCL by SAK and BJA, and following the earlier issues with BCL and its then supplier IFP in 2023, Asia Symbol has taken the decision to immediately cease all supply from BCL. Asia Symbol and any other RGE companies will not source from BCL in the future.

Asia Symbol’s decision indicates the seriousness with which we take issues of non-compliance with our wood sourcing and sustainability policies and processes. In addition to immediately ceasing wood sourcing from BCL, Asia Symbol is continuing to review its wood supply due diligence and compliance systems to ensure they are rigorously applied to and by every supplier, and that their application is strengthened.

We ask that our response above is published in full in your upcoming report.

Sincerely,

Lucita Jasmin
Group Sustainability Director

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免責事項: この記事は “Royal Golden Eagle acknowledges new deforestation in its pulpwood supply chain” の和訳版です。参照、引用、正確な理解のためには英語の原文をご覧ください。

プレスリリース:「森林&人権方針ランキング2024」発表 〜ユニリーバがトップ 日清食品やP&Gは取り組みが遅れ最下位〜(2024/12/6)

大手消費財企業、森林破壊と人権侵害を依然として助長〜グローバル企業10社の森林及び人権方針を評価〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日6日、「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2024」を発表し(注1)、グローバル消費財企業はサプライチェーン(供給網)で調達するパーム油や大豆、包装紙といった森林破壊リスクが高い産品の生産を通して、森林破壊と人権侵害を依然として助長していると指摘しました。

本ランキングは、熱帯林地域で森林破壊と人権侵害のリスクが高い産品に関与している大手消費財企業10社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価・分析している年次報告です。サプライチェーンでの森林破壊と人権侵害を阻止するための取り組みを詳細な基準で比較評価したところ、どの企業も昨年と大きな変化はなく、合格点といえる「C」評価を得たのはユニリーバのみでした。最下位はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で、日本企業は花王が「D(3位)」、日清食品ホールディングスが5段階で最低ランクの「不可(同点7位)」でした。

評価方法は、各社の方針と取り組みについて森林と人権分野の12項目を24点満点で評価しています合計得点に合わせてA(21〜24点)、B(17〜20点)、C(12〜16点)、D(6〜11点)、不可(0〜5点)で評価しました。パーム油、紙パルプ、大豆、牛肉、カカオ、木材製品など、森林を破壊するリスクのある産品(森林リスク産品)のセクターにおける傾向や動向を分析しています。10社のランキングの詳細は以下の通りです。

*Y=ありor全て(2点)、P=一部(1点)、N=なし(0点)

【森林&人権方針ランキング2024】調査概要

▪️調査対象企業:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
▪️調査期間2024年10月〜11月
▪️調査方法:各社の環境及び人権に関する方針を調査・分析(ウェブサイトなどで公開されている最新版)、各社へのヒアリング
▪️主な森林・人権方針の評価項目(全12項目、各2点)

*2点:方針あり/ 全体に採用、1点:一部に採用、0点:方針・計画なし

  • 「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針・適用範囲:パーム油や紙パルプなど森林リスク産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準(注3)。特に、個別産品だけではなく森林リスク産品全般への適用、供給業者の企業グループ全体への適用を重視している
  • 「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注4)
  • 人権擁護者への暴力や脅迫への「ゼロトレランス」(不容認)方針の有無(注5)
  • サプライチェーンの透明性:EUDR要件(注6)である、原料生産地までのフルトレーサビリティ達成の取り組みも含む(2023年版から追加)
  • 森林フットプリントの開示(注7)、など

全体の評価・傾向

「リーダー企業」(C評価)

  • ユニリーバは、昨年と同様の「C」評価を維持し、「リーダー企業」としての存在感を見せました。産品横断的な苦情対応進捗表を公表することで、リーダーシップを発揮しました。 

「中位企業」(D+、D、D -評価)

  • コルゲート・パーモリーブは、「中位企業」の中で高い実行力を見せました。特筆すべき点は苦情処理記録を公表し、人権擁護者への暴力や脅迫を一切容認しないことを約束してリーダー企業と肩を並べました。
  • 花王マースは、昨年は少し前進が見られましたが、今年は実行力を改善することができませんでした。上記3社は、森林破壊の流れを止めるために断固とした行動をとる必要があります。
  • ペプシコは「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)方針遵守の独立した検証を進めず、苦情対応追跡表も公表しなかったことから、今回のランキングでは後退しました。
  • ネスレも後退し、サプライチェーンにおいて森林破壊を起こしている悪質業者の責任を追及する項目では後戻りしました。

「不可企業」(F評価)

  • フェレロ、モンデリーズ、日清食品、プロクター・アンド・ギャンブルの4社は、森林破壊と人権侵害への対応で下位グループにランクされ、依然として実行力の評価は低いままとなりました。4社は森林破壊に歯止めをかけ、先住民族コミュニティを搾取から守るために必要な組織的な改革を起こすことができませんでした。

日本企業の評価

  • 総合点は日清食品が不可(5点)、花王はD(8点)で、昨年とスコア及び点数は同じでした。
  • 昨年同様、両社とも「NDPE方針」を既に採用し、2点の評価を得ています。
  • 「NDPE適用の範囲」については、花王は昨年、森林リスク産品全般の供給業者とその企業グループ全体も適用対象としていることが確認できたため、評価は満点の2点です。一方、日清食品は一昨年から得点はなく、グループ調達方針の環境分野にNDPE支持を記載していますが、NDPE主要項目が明記されているのはパーム油事業のみで森林リスク産品全般ではありません。また、供給業者にNDPEの採用を義務化していなく、供給業者の企業グループ全体も適用範囲に含んでいません。
  • 「森林フットプリントの開示」については、花王が今年5月にインドネシア・リアウ州の分析(英語)を公表しましたが、地域が限定的であることから1点にとどまりました。日清食品は実施を表明したことで1点を得ましたが、まだ開示がなく、明確な開示期日も不明です。
  • 「問題企業の責任追及」では、日清食品は昨年「苦情処理リスト」を公開し、違法パーム油生産農園との取引停止や対応状況を公表しました。今年6月にも情報を更新し1点を得ていますが、方針違反への対応手順が公表されていません。花王は小規模農家生産者を対象とした苦情処理メカニズムはありますが、大規模農園・植林企業などを対象としたリストは依然として開示がなく得点はありません。

RAN日本シニアアドバイザーの川上豊幸は「花王は、今年はNDPE方針の実施体制強化を示すことができませんでした。パーム油事業について2025年までに『使用するパーム油をRSPO認証油に100%切り替えをめざす』と表明していますが、その中身は非認証油が混入するマスバランス方式や、認証油のクレジットを取引するブック・アンド・クレーム(B&C)方式としています。また、サプライヤーなど取引先企業の独立監査を伴っていなく、実施体制の強化とは判断できませんでした」と評価しました。

続けて「日清食品は引き続き『不可』評価でした。NDPE方針遵守が森林リスク産品全般に適用されず、パーム油に限定されたままです。またNDPE方針の採用を供給業者に義務化していません。そして持続可能なパーム油のみを2030年までに調達するとの約束は前倒しされていませんし、サプライヤーへの独立監査も求めていなく、改善は見られませんでした」と指摘しました。

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」キャンペーン

2020年4月の開始以来、評価分析を毎年実施し、今年で5回目の発表となります。グローバル企業に対し、世界最後の熱帯林への産品供給源の拡大を阻止し、企業の搾取から自分たちの土地を守るために闘う先住民族コミュニティの保護を確保するため、直ちに具体的な行動をとるよう求めています。

2024年版のランキングは、気候変動と生物多様性危機の緊急性が高まる中、多くの消費財企業が意味のある変化を実施できていないことを浮き彫りにしています。そして今回のランキングは森林と人権にとって重要な時期に発行されました。まず、2024年末に施行が予定されていた欧州連合の森林破壊防止法(EUDR)が1年延期され、消費財関連の森林減少を規制する取り組みがさらに先送りされました。人権面では、国際NGO「グローバル・ウィットネス」が毎年発表する報告で、世界各地で起こる土地や環境を守る人々の殺害増加の原因として、アグリビジネスセクターが上位に挙げられています。 

RANフォレスト・キャンペーン・ディレクターのダニエル・カリーヨは「森林保護活動家は増大する脅威に直面しています。2023年だけで196人が殺害されました。企業がサプライチェーンで責任を果たしていないことは、先住民族のリーダーや活動家への暴力の増大に直接つながっています。世界の大手消費財企業は、森林保護と人権尊重のために真の行動に踏み出す時です。気候危機が加速するなか、企業はその方針と行動を緊急事態に合わせなければなりません。森林は減少の一途をたどり、最前線のコミュニティは包囲されています。消費者、投資家、市民社会は今、ただの約束ではない、それ以上の行動を求めています」と強調しました。

調査対象の大手消費財企業10社は、いずれも世界で続く森林破壊や人権侵害に関与しています(注8)。RANは、消費財企業が森林伐採や土地の権利侵害を助長し、環境保護活動家や人権擁護者が直面する脅威を増大させているとして、これからも責任を問うていきます。 

脚注

注1)「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業・銀行に実際の行動を起こすよう要求しています:www.ran.org/kfs-scorecard-jp/

ランキング評価方法論

注2)消費財企業10社:日清食品、花王、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、マース、モンデリーズ、ネスレ、ペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル、ユニリーバ
*10社全社が全容を報告している唯一の産品であるパーム油を例にとると、10社合計で約230万トンのパーム油と、約140万トンのパーム核油およびその派生物を購入している(2022年)。パーム油世界市場の約3%、パーム核油世界市場の約17%に相当する(2023年版報告書より)。

注3)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い<High Carbon Stock:HSC>森林の保護、保護価値の高い<HCV: High Conservation Value>地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止といった要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。

*参考:「『森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)方針とは?」ブリーフィングペーパー

注4)「FPIC」(エフピック)とは Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注5)「ゼロトレランス・イニシアティブ」ウェブサイトを参照のこと

注6)EUの「森林破壊フリー製品に関する規則」(EUDR:通称「森林破壊防止法」):EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注7)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注8)以下を参照のこと

RANプレスリリース「RAN新調査報告書『包囲下のオランウータンの首都』発表〜違法パーム油、日清食品などのサプライチェーンに混入の可能性が継続〜」(2024/11/22)

RANプレスリリース「新報告書『RGEグループの実態:無秩序に広がる破壊の帝国を暴く』発表〜止まらない環境破壊と違反行為、消費財企業と銀行に同グループとの取引停止を求め〜」(2024/3/18)

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:RAN新調査報告書『包囲下のオランウータンの首都』発表〜違法パーム油、日清食品などのサプライチェーンに混入の可能性が継続〜(2024/11/22)

インドネシア保護区での違法森林伐採、最新鋭の衛星画像調査で明らかに

  • インドネシアの野生生物保護区で、森林破壊の新証拠が最新鋭の衛星画像で明らかに。保護区内に652ヘクタール(東京ドーム約140個分)もの違法アブラヤシ農園を確認。
  • 消費財企業は違法パーム油が供給網に混入するリスクに、銀行は違法パーム油を調達する可能性のある顧客に資金提供するリスクにさらされている。
  • 調査結果は、企業の森林破壊禁止公約の実効性、EU新規制を遵守する準備が十分かどうか疑問を投げかけている。
  • 違法パーム油の問題が続くも、11月13日に行われた「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)年次総会では基準が弱体化された。


写真:違法アブラヤシ農園の一つ。ラワ・シンキル野生生物保護区内の泥炭林を伐採・排水して造成された。2024年9月、インドネシア・アチェ州

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は11月11日、タイ・バンコクで13日まで開催された「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)に合わせ、新報告書『包囲下のオランウータンの首都』を発表しました(注1)

本報告書は、インドネシア・スマトラ島の「ラワ・シンキル野生生物保護区」で、大規模な違法伐採が今も起きていることを明らかにしました。RANは7月、最新鋭の衛星画像「プレアデス・ネオ」による調査を実施し、国の指定する保護区がパーム油生産のために破壊されている実態を確認しました。RANは同保護区で2019年22年にも調査を行い、パーム油の原料となるアブラヤシの農園造成による森林破壊を発見して公表しています。この地域は生物多様性豊かなホットスポットで、「世界のオランウータンの首都」とも呼ばれる「ルーセル・エコシステム」の南部に位置します。

調査は今年7月、同保護区の泥炭林地域におけるアブラヤシ農園拡大の範囲を把握するため、エアバス社の「プレアデス・ネオ」衛星による飛行撮影を実施しました。この衛星画像は30cmという高い解像度をもち、これほどの高解像度画像が公開されたことは同地域では初めてです。画像分析の結果、同保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)に及ぶ違法アブラヤシ農園が存在し、そのうち453ヘクタール(同97個分)がアブラヤシ果実の生産が可能な土地であることを特定しました。

現地調査、消費財企業と製油企業のサプライチェーン分析を加えた一連の調査結果は、消費財企業と銀行の森林破壊禁止方針の実効性や、消費財企業とパーム油企業が2025年末に施行となる欧州連合(EU)の新規制「森林破壊禁止法(EUDR)」を遵守する準備が十分かどうか緊急の疑問を投げかけています。

図1:2016年と2024年の衛星画像比較:黄色が野生生物保護区の境界線(報告書より)

 

【調査概要】

■調査時期:2024年7月(衛星調査)、2024年9月〜10月(現地調査、サプライチェーン分析)

■調査地域:インドネシア・スマトラ島の「ルーセル・エコシステム」内、国の保護区「ラワ・シンキル野生生物保護区」上空および周辺

■対象消費財企業8社:日清食品、花王、プロクター&ギャンブル、ネスレ、モンデリーズ、コルゲート・パーモリーブ、ペプシコ、ユニリーバ(注2)

■対象銀行11社:三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ING、UBS、HSBC、ラボバンク、CIMB、メイバンク、BNPパリバ、UOB、DBS、OCBC(注3)

■調査方法:1)「プレアデス・ネオ」衛星画像分析(違法農園および森林・泥炭林減少の確認)、2)現地調査(アブラヤシ農園から搾油工場を追跡)、3)サプライチェーン分析(製油企業・消費財企業の調達先リストを分析)、4)資金提供調査(製油企業への銀行の資金提供額を調査、注4)、5)The TreeMap社との衛星画像分析(2016年6月に撮影された画像を用い、期間別の森林消失を分析)

【主な調査結果】

  • 広範囲に及ぶ違法アブラヤシ生産:ラワ・シンキル野生生物保護区には652ヘクタール(東京ドーム約140個分)の違法農園があり、そのうち果実の収穫可能な土地は453ヘクタール(同97個分)だった。これは違法生産されたパーム油がすでに世界の主要消費財企業や供給業者のサプライチェーンに混入している可能性を示唆している。
  • 影響を受ける消費財企業と銀行:プロクター&ギャンブル(P&G)、ネスレ、モンデリーズ、ペプシコ、日清食品などの大手消費財企業は、違法パーム油の調達が発覚したロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(子会社のアピカル)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Groupといった製油企業からパーム油を購入することでリスクにさらされている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、ラボバンク、HSBCなどの銀行は、上記パーム油企業に資金提供をすることでリスクにさらされている。これらのパーム油企業は、RANの過去10年にわたる調査で、上記保護区で違法に生産されたパーム油を供給している搾油工場から油を調達していることが繰り返し明らかにされている。
  • 森林減少率の増加:国の法律で保護されている地域にもかかわらず、同保護区での森林伐採は2021年から2023年にかけて4倍に増加している。2016年以降の総伐採量の74%が、欧州連合(EU)の新規制「森林破壊禁止法(EUDR)」の森林破壊禁止の基準日(注5)である2020年12月31日以降に伐採されていることから、法的保護や規制要件が組織的に無視されていることを示している。
  • 新たな抜け穴:今回の調査では、裕福な土地投機家が小規模農家を装うことで、違法森林伐採への責任を回避する「パーム油ロンダリング」という新たな抜け穴が立証されている。

図2:ルーセル・エコシステム周辺の搾油工場からパーム油を調達している製油企業5社への融資・引受銀行と資金の流れ。上記11行はNDPE方針をもっている。2020年1月から2024年6月、単位:百万米ドル 出典:「森林と金融」データベース

 

パーム油産業はすでに「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロ(NDPE)」方針を誓約し、EUDRは2025年12月31日の施行が提案されています。しかし今回の調査結果からは、こういった規制が採用された後も、違法伐採が著しく増加していることが浮き彫りになりました。RANはThe TreeMap 社とも衛星画像調査を行い、同保護区内で2016年以降に2,577ヘクタール(東京ドーム約551個分)もの森林が失われたことを確認しました。残念なことに、世界のパーム油産業が森林破壊禁止の基準日として設定した2015年12月から2020年12月の間に662ヘクタール、その後、EUDRの基準日である2020年12月以後には1,915ヘクタールの森林が皆伐されました(注6)。

本報告書は、違法な大規模アブラヤシ農園の破壊的な影響を明確に示しています。RANはこの違法農園がこの地域の森林破壊の主な原因であると特定しました。特に懸念されるのは、この環境危機をもたらしているのは小規模農家ではなく、土地投機家であるという点です。

RAN森林政策ディレクター、ジェマ・ティラックは「世界で最も重要な生態系のひとつが破壊され続けていることは、消費財企業や銀行、消費者への警鐘です。今回の調査で得られた証拠は、違法に皆伐された土地で生産されたパーム油がグローバルサプライチェーンに混入し、スマトラオランウータンのような象徴種が深刻な危機にさらされていることを明確に示しています。私たちが日常的に購入する製品、例えば化粧品のOLAY、ミロ、オレオ、ポテトチップスのLay’s、即席麺のカップヌードルなどのサプライチェーンには違法パーム油が混入するリスクがあり、その証拠も揃っています」と強調しました。

The TreeMap社のデビッド・ガヴォー(David Gaveau)博士は「今回初めて、時を得た衛星画像によってラワ・シンキル野生生物保護区におけるパーム油危機の全容が明らかになりました。最新鋭の衛星画像は、アブラヤシの木々や苗木の一本一本まで細かく捉えることができます。この高度なツールが公開されたことで、以前は無料の衛星データで見逃されていた違反行為も記録できるようになりました」と語りました。

 

13日、RSPOはバンコクで開催された年次総会において、認証基準改訂版(「RSPO原則と基準2024」)の承認を決議しました。RSPOは森林破壊禁止の基準日(2018年11月)を削除し、森林破壊禁止を実施するために使われる信頼できる従来の定義を、独自に作成した欠陥のある定義に置き換えて、基準を弱体化させました。ティラックは「違法に生産されたパーム油は、RSPOの『マスバランス』方式を通して世界の市場に流通しています。この方式では、認証農園で生産されたパーム油に非認証油が混合される問題があります。RSPOは、消費者や市場からの信頼を維持したいのであれば、その基準を強化する必要があります。今回の基準改訂は、執行力の欠如、腐敗した監査プロセス、欠陥のある苦情処理メカニズムによってもたらされた欠陥だらけの認証制度をさらに弱体化するものです」と批判しました(注7)。

 

RANは、消費財企業、パーム油企業、金融機関が直ちに協力し、保護区のあるシンキル・ベンクン・トゥルモン地域の保護に向けて持続可能な解決策に投資するよう強く求めています。熱帯低地林と泥炭地の保護を優先しつつ、同時に地域住民の権利と生業を尊重するコミュニティ主導の農業を育成するという、将来の見通しを共有することが必要です。

RANは、本報告書で言及された全ての消費財企業と銀行に連絡を取り、その回答は報告書に含まれています。さらに詳細な情報や分析、衛星画像については、RANの監視専用プラットフォーム「Forest Frontlines」および「Nusantara Atlas」をご覧ください。

 

注1)RAN報告書(英語)『包囲下のオランウータンの首都』(‘Orangutan Capital’ Under Siege)

注2)対象とした消費財企業8社の調達先搾油工場一覧には、違法パーム油購入が明らかになった搾油工場企業 (PT. Global Sawit Semesta:PT. GSS)が記載されていた。各社リストのリンクは報告書を参照のこと。

注3)

a) ラワ・シンキル野生生物保護区とルーセル・エコシステム周辺の搾油工場からパーム油を調達している5社、
b) 違法パーム油を調達している搾油工場企業からパーム油を調達している製油企業を特定し、該当企業に資金提供をしている、または過去にしていた銀行を対象とした。

上記製油企業5社はロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループ(アピカル・グループ)、ムシムマス・グループ、Permata Hijau Group、ウィルマー・インターナショナル、シナルマス・グループ(ゴールデン・アグリ・リソーシズ:GAR)である。そのうち、RGE、ムシムマス、Permata Hijau Groupは上記  b)に該当する。

注4)製油企業と銀行

RGE、ムシムマス、Permata Hijau Group:MUFG、欧州の銀行ING、UBS、HSBC、ラボバンクなどから資金提供を受けている。

ウィルマー、GAR(最新搾油工場一覧にPT. GSSは含まれていないが、過去に調達していたことがある):MUFG、マレーシアの銀行CIMBとメイバンク、フランスの銀行BNPパリバ、シンガポールの銀行UOB、DBS、OCBCから資金提供を受けている。出典:「森林と金融」データベース

注5)「基準日」:カット・オフ日ともいう。基準日以降に森林伐採・転換が行われた場合、その地域や生産単位が、森林伐採や転換を行わないという約束、方針、目標、その他の義務に違反していると見なされる。アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)の定義を参照のこと。

注6)EUDR施行後は、2020年12月31日以降に森林伐採・劣化の起きた場所で生産された商品が、EUへの輸出不可となる。

注7)RAN声明:RSPO認証基準改訂について(英語)

 

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。


本件に関するお問い合わせ

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本
Email: yuki.sekimoto@ran.org