サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

共同声明:CP2 LNGの最終投資決定を受けて、米ルイジアナ州地域社会と世界の支持団体が融資銀行を非難(2026/03/26)

ルイジアナ州キャメロン郡 — ベンチャー・グローバルのLNG(液化天然ガス)拡張計画の最前線に立つ地域コミュニティは、多数の大手金融機関(※)がCP2 LNGプロジェクト(CP2)の第2フェーズ向けに合計86億ドルの資金を提供し、最終投資決定(FID)が行われたという発表を受けて、深い失望と強い憤りを表明しました。CP2は沿岸部コミュニティに不利な形で建設中であり、地域コミュニティが上記の銀行に、同プロジェクトで起きている多くの人権侵害について正式に伝えていたにもかかわらず、そのわずか数週間後にFIDが発表されました。

※バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、シティバンク、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、バークレイズ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、 みずほフィナンシャルグループ、 三井住友フィナンシャルグループ、ナティクシス スタンダードチャータード、 サンタンデール銀行、インテーザ・サンパオロ、バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行、ドイツ銀行

ロビン・シグペン|FISH
「こうした銀行は、なぜ水が飲めなくなったのか、なぜ魚がいなくなったのか、なぜ私たちの暮らしが失われつつあるのかを、子どもたちの目を見て説明する必要などないでしょう。しかし、私たちは説明する責任を背負っています。私は『Fishermen Involved in Sustaining Our Heritage(私たちの伝統を守る漁師たち)』の事務局長として、何世代にもわたってこの海で生計を立ててきた家族や人々を代表しています。 私たちは、高い投資リスクの保証のために提供される担保ではありません。銀行はCP2への融資を選んだ時、人々よりも利益を選んだのです。そして、それが私たちにどのような代償を強いるか、銀行は正確に承知の上で融資をしたのです。私たちは黙って犠牲になるつもりなど毛頭ありません」

上記施設の近隣住民にとって、CP2のFIDが意味することは以下の通りです:1)国際エネルギー機関(IEA)がエネルギー転換には不要としているインフラに数十億ドルが投じられていること、2)文字通り「沈みつつある」地区での事業であること、3)同業他社を大きく上回る負債比率で、320億ドル以上の負債を抱える企業が運営していること、4)気候変動対策への適合を公約しながらも化石燃料の拡大に資金提供を続ける金融機関によって擁護されていること。 独立系金融アナリストは、世界のLNG市場が2027年から2030年にかけて大幅な供給過剰に向かっていると警告しています。欧州やアジアの主要市場ではガス依存度の削減が積極的に進められ、ベンチャー・グローバル自身も仲裁裁判での大きな敗訴を受けて、信用格付けがすでに「ネガティブ」に引き下げられています。

アリッサ・ポルタロ| ハビタット・リカバリー・プロジェクト代表
「真のエネルギー安全保障とは、メタン基地を建設することではありません。それは『エネルギー主権』です。すなわち、家庭や地域社会、地区が、自ら管理する身近な資源から必要なエネルギーを自ら生み出す力のことです。航路を守るために、地球の反対側へ資金や兵士を送り込むことではありません。銀行がCP2に約束(コミット)するその1ドル1ドルは、私たちを現実的に守ってくれる太陽光パネル、風力発電所、沿岸部の再生、そして地域主導のインフラ整備への投資から削られる1ドルなのです」

このFIDを可能にした銀行は、ベンチャー・グローバルの浚渫作業によって推定9,000~18,000立方ヤードの土砂がこれまでに漁場に放出され、約260エーカーの湿地生息地が破壊され、現地の人々の生計手段であるカキが520万個も死滅したことについて情報提供を受けています。 銀行は、隣接するカルカシュー・パスLNG基地が稼働初年度だけで2,000件以上の大気排出許可基準超過を自主報告し、稼働開始から343日間のうち286日もの間、大気浄化法の要件を満たしていなかったことを認識しています。そして銀行はCP2がキャメロン郡に建設されることも知っています。同郡は全米で最も洪水リスクの高い郡にランクされ、インフラの96%がすでに洪水の脅威にさらされています。銀行はこれらのすべてを知りながら、それでも契約に署名をしました。

また、銀行はこのFIDが行われた下された広範な背景についても理解しています。イランの民間人や地域全体の人々に人道的苦難をもたらしている現在の中東紛争により、LNG価格は一時的に60%急騰し、ベンチャー・グローバルと投資家に「戦争の棚ぼた利益」(a war windfall)をもたらしています。 化石燃料企業は、こうした紛争から単に利益を得ているだけではありません。彼らのビジネスモデルは紛争に依存しているのです。紛争は供給の不確実性を生み、不確実性は価格を高止まりさせ、高価格は株主への利益還元を継続させます。一方で、一般の人々はガソリンスタンドでの支払いや光熱費、そして税金という形でその代償を払わされています。施設周辺の地域コミュニティは有毒ガスを吸い、中東の人々は命で代償を払っています。一方で、銀行は融資手数料で利益を得ています。

ジェームズ・ハイアット|For A Better Bayou
「これらの銀行は、大気汚染許可違反、湿地破壊、洪水リスク、そして私たちの地域社会で記録されている人権侵害について知っていたにもかかわらず、融資を行いました。基準値が超過するたび、生息地が1エーカー破壊されるたび、そして今、私たちの家族が健康被害に耐えるたび、これらの全ての責任はこれらの銀行に刻まれているのです。これは単なるひどい気候政策ではありません。これは人権侵害であり、これに加担した金融機関は責任を問われるべきです」

アンディ・ゲオルギウ|Transatlantic Anti-LNG network コーディネーター
「ベンチャー・グローバルの施設およびその拡張事業への共同融資に関与しているすべての欧州の銀行は、意図的に人々の苦しみと気候の混乱を助長し、ベンチャー・グローバルの背後にいる億万長者たちが、大西洋の両岸の一般家庭から現在の高価格で白昼堂々と搾取することに加担しています。一方で、低価格でLNGを供給するという約束を反故にし、長期契約パートナーを裏切っているのです」

ダニエラ・フィナモーレ|ReCommon
「CP2 LNGを支援することで、インテサ・サンパオロのような欧州の銀行は、人権、気候の安定、そして最前線に立つ地域コミュニティの安全よりも、短期的な利益を選んでいます。このことについては議論の余地は全く無く、明らかに彼らの責任不履行です」

ジャスティン・デュクロ=ゴンダ|Reclaim Finance
「ナティクシスやスタンダードチャータードを含め、このプロジェクトを支援する欧州の銀行は、気候変動に関する約束を破り、欧州のエネルギー自立を危険にさらしています。このプロジェクトは、地域コミュニティにとっても、気候の安定にとっても、そして納税者にとっても悪い知らせです。欧州の銀行は、気候変動に関して言行一致を示し、LNGの拡大支援をやめるべきです」

喜多毬香|「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 持続可能な開発・援助プログラム担当スタッフ
「地元の漁師たちが被害を報告しているにもかかわらず、銀行が支援を行ったことに深く失望しています。CP1の保険を引き受けた日本の保険会社である東京海上とSOMPOに対し、CP2の引受を行わないよう強く求めます」

麻生里衣|レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)責任ある金融キャンペーナー(日本担当)
「私たちは再び、銀行が人々の暮らしや自然環境を犠牲にして利益を得る化石燃料企業を支援する様子を目撃しました。私たちは昨年より、地域コミュニティや支援団体と共に、日本のメガバンクを含む金融機関に対して、ベンチャー・グローバルのLNG事業について問題提起を行ってきました。メガバンク3社全てがその問題を知りながらコミュニティに背を向けて、ベンチャー・グローバルを支援する道を選んだのです。そしてメガバンクは『守秘義務』を逆手に取り、その説明責任から逃れ続けています。この状況を見れば、メガバンクの言う『責任ある金融』は、私たちの社会への責任ではなく顧客への責任を重視しているとしか思えません」

ショーナ・アンブローズ|レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)気候変動・エネルギー部門スポークスパーソン
「このメタン基地の影で暮らす人々は、リスク評価の単なる補足事項ではありません。RANは長年にわたり、金融機関が人権を後回しにし、取引の付け足しのように扱うと何が起こるかを記録してきました。CP2は、その最新の事例です。銀行側は情報を把握し、地域社会の声を聞いていたにもかかわらず、それで引き起こされる害を承知の上で、それでも今回のような選択をしたのです。その選択は実際に人々に重大な影響を及ぼします。私たちは、この取引に関わるすべての当事者の責任を徹底的に追及していきます」

このプレスリリースは、ルイジアナ州南西部、メキシコ湾岸南部地域の最前線コミュニティおよび支持団体、ならびに2026年2月に金融機関および保険会社宛てに送付された要請文への署名団体を代表して発表しました。

本件に関するお問い合わせ先

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-204
TEL 03-6721-0441 FAX:03-6721-0959
責任ある金融キャンペーナー(日本担当)
麻生里衣
Email: rie.aso@ran.org
日本チームマネジャー
関本幸
Email: yuki.sekimoto@ran.org

RAN米国本部
気候変動・エネルギー部門コミュニケーションマネジャー
ショーナ・アンブローズ
Email: shawna@ran.org

共同プレスリリース:米ルイジアナ州のLNG事業で地域住民とNGOが人権救済申立を東京海上に提出 (2026/02/25)

~日本の保険大手、浚渫工事の事故及び人権侵害を助長したとして通報を受ける~

For A Better Bayou
Habitat Recovery ProjectのFisherfamily Advisory Council for Tradition & Stewardship(FACT)

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

東京海上とSOMPOへの申立

東京海上及びSOMPO本社前にて行われたアクションの様子

米国ルイジアナ州及び日本のNGOと住民は共同で、ベンチャー・グローバル社のカルカシュー・パス1 LNG(液化天然ガス)事業が引き起こした公害及び経済的損失に関する記録文書に基づき、東京海上グループに対して、包括的な人権救済申立書を提出した。公開情報で把握する限り同社グループの保険引受における公式の人権救済申立は初のケースである。申立書では、東京海上の子会社が、同施設向けの9億ドルの保険契約の7.5%を保有しており、ルイジアナ州ベンチャー・グローバル社のLNGターミナルの保険引受を行ったことで、自社の規定及び国際人権法に違反したと主張している。

申立書は、東京海上のグローバルステークホルダーズホットラインを通じて提出され、同社グループの人権方針の複数の規定に違反したと主張している。人権方針では、顧客との取引開始前に人権デューデリジェンスを実施すること、被影響コミュニティに直接対話を行うこと、国内外の法令の遵守、及び取引全体を通じてリスクを再評価することが義務付けられている(※1)。カルカシュー・パス1LNG事業の施設では、稼働時間の50%以上において大気浄化法に法的準拠していないことが判明しており(※2)、現在大気浄化法許可及び州の運営免許を争う複数の連邦訴訟の対象となっているにも関わらず、保険契約が行われた(※3)。

人権救済申立書は、2025年8月に発生した壊滅的な惨事に伴う経済的損失を詳述している(※4)。ベンチャー・グローバル社のカルカシューパス2(CP2)事業に関連した浚渫工事により、漁場に数トンの堆積物が流出し、エビ漁のシーズン開幕時に重要なカキの養殖場が厚い泥で覆い尽くされた(※5)。エビ漁師はソーシャルメディアで泥まみれで空の網の様子を共有した。カキ漁師は事態発生から数ヶ月後の現在も漁獲高に大打撃を受けており、収入が失われている事態が流出事故に起因すると主張している。これは、生計手段の損失を保護する世界人権宣言第25条に定められた権利の侵害である。この度、情報開示請求により、流出事故の発生時に浚渫工事の重要な部分を請け負っていたベンチャー・グローバル社の委託先建設会社の主要保険引受者が東京海上の子会社であることも判明した。

「この大惨事は未然に防止できたものであり、まさに東京海上の人権方針が防止するべきとしている被害そのものである。」と、申立書の署名団体の一団体である、Fisherfamily Advisory Council for Tradition & Stewardship(FACTS)(※6)は述べている。

本申し立ては、対応を怠った場合、OECD日本連絡窓口(NCP)(※7)への追加の苦情申し立てに繋がる可能性があることを警告している。こうした苦情により、国連特別手続による調査が行われる前例も存在する(※8)。申立書には、東京海上が2022年7月から2025年9月にかけて、これらのリスクについて繰り返し警告を受けていたことを示す詳細な時系列が含まれている。こうした警告にも関わらず、東京海上は保険引受を継続した。カルカシュー・パス1LNG事業の保険契約の更新日は、2026年3月14日の予定である。

以下の団体、For A Better Bayou、Habitat Recovery ProjectのFisherfamily Advisory Council for Tradition & Stewardship(FACT)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、東京海上に対し、以下の行動をとるよう求めている。

  • ベンチャー・グローバル社のカルカシューパスLNG事業の保険契約が2026年3月14日に満了する際に、更新を拒否すること。
  • ベンチャー・グローバル社の拡張事業(CP2、CP3、プラクミンズLNGフェーズII)への保険引受を除外すること。
  • 東京海上の上級管理職と影響を受けたコミュニティーの対面会議を含む、人権デューデリジェンスを徹底的に実施すること。
  • 影響を受けた漁業者世帯及び地域社会に対して金銭的補償を行うこと。
  • 不適切な保険引受を承認した幹部責任者の責任追及のため、内部調査を開始すること。

同様の人権救済申立は、ベンチャー・グローバル社の保険を引き受けた日本の大手損害保険会社であるSOMPOにも送付された。SOMPOは東京海上のグローバルステークホルダーズホットラインのような公開された仕組みは持たないものの、「多様なステークホルダーおよびライツホルダーの皆さまから、人権に関する苦情、相談、ご意見を幅広く受け付けられる体制を整備しています(※9)」と記載している。SOMPOと東京海上の両社は、世界人権宣言第8条に明記された救済を受ける権利を有する影響を受けたコミュニティと協力する責務を負っている。

「東京海上とSOMPOは、カルカシュー・パスLNG事業に対する保険契約の更新を直ちに停止し、ベンチャー・グローバル社の事故によって発生した人権侵害について、自社の人権方針に基づき、適切な人権デューデリジェンスを実施するべきである。」と「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラムディレクターである田辺有輝は述べている。

東京海上は2023年から2024年にかけて、化石燃料関連事業の直接保険料として、4億3000万ドルを受け取ったと報じられている(※10)。同社の北米における事業は他地域を上回る業績を上げている一方で、このような継続的な人権侵害を助長し、利益を得てきました。苦情申立書で引用された学術研究によると、保険会社が引受方針を遵守した場合、有害な事業をより広範に直接抑制する市場環境が形成される(※11)。これは、東京海上が自社の方針を遵守することで、リスクの暴露を減らし、本件で生じた損害を是正し、人権侵害や環境破壊を引き起こす事業から業界全体を転換させる好機になることを意味している。

カルカシュー・パスLNG事業の詳細はファクトシート(※12)を参照

注釈

※1:人権に対する基本的な考え方・人権基本方針 https://www.tokiomarinehd.com/sustainability/humanrights.html
※2:Terminal Trouble Pollution Violations at America’s LNG Export Terminals https://environmentalintegrity.org/wp-content/uploads/2025/10/LNG-Report-nonembargoed-10.29.25.pdf
※3:
Environmental Groups File Federal Lawsuit Against Louisiana CP2 LNG Export Facility’s Clean Air Act Permit https://environmentalintegrity.org/news/environmental-groups-file-federal-lawsuit-against-louisiana-cp2-lng-export-facilitys-clean-air-act-permit/
Louisiana Community and Environmental Groups Challenge Coastal Use Permits for Controversial CP2 Project https://earthjustice.org/press/2024/louisiana-community-and-environmental-groups-challenge-coastal-use-permits-for-controversial-cp2-project
※4:Cameron Parish fishermen clash with Venture Global over dredging mess https://lailluminator.com/2025/09/25/cameron-parish-fishermen-clash-with-venture-global-over-dredging-mess/?utm_source=chatgpt.com
※5:Fishermen in Southwest Louisiana Say LNG Terminals Are to Blame for Shrimp Harvest Decline https://insideclimatenews.org/news/07092025/louisiana-lng-terminals-shrimp-fishing/
Cameron Police Jury asks LDWF to perform study on oyster impacts in Big Lake after Venture Global Dredging Spill https://www.kplctv.com/2026/02/10/cameron-police-jury-asks-ldwf-perform-study-oyster-impacts-big-lake-after-venture-global-dredging-spill/
Louisiana Oyster Season Facing Crisis: Fisherfamilies in Cameron, LA, Cite Major Die Off from Dredging and Dumping from Shipping, Refinery and LNG projects. https://habitatrecovery.org/press-releases/oyster-opener
※6:Introducing The FACTS https://habitatrecovery.org/thefacts
※7:OECD Guidelines for Multinational Enterprises on Responsible Business Conduct and Japanese NCP https://www.mofa.go.jp/ecm/oecd/page22e_000946.html
※8:Laos: Demanding accountability for deadly dam collapse https://www.inclusivedevelopment.net/cases/laos-xe-pian-xe-namnoy-dam-collapse/
※9:ビジネスと人権への取組みの全体像 https://www.sompo-hd.com/csr/action/employee/content4/bhr/
※10:Renewables Gallop As Fossil Fuels Stall— Opportunities and Risks in the Energy Transition https://global.insure-our-future.com/wp-content/uploads/sites/2/2025/09/IOF_MonteCarloBriefing_090225_Digital.pdf
※11:Renewables Gallop As Fossil Fuels Stall— Opportunities and Risks in the Energy Transition https://global.insure-our-future.com/wp-content/uploads/sites/2/2025/09/IOF_MonteCarloBriefing_090225_Digital.pdf
※12:
ファクトシート カルカシューパス2(CP2)LNGターミナル事業2026年2月「環境・持続社会」研究センター(JACSES) https://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2026/02/cp2factsheet.pdf

本件に関する問い合わせ

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

共同プレスリリース:LNGの急拡大、新ウェブサイト「ExitLNG」で明らかに(2025/12/2)

リクレイム・ファイナンス、Andy Gheorghiu Consulting、バンクトラック、CEED、Food and Water Watch、FoEフランス、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、ReCommon、SFOC、StandEarth、ウルゲバルト(Urgewald)

本日2日、新たなマッピング分析プロジェクトが発表され、世界は空前のLNG(液化天然ガス)開発ブームに直面し、世界全体で279件の新規LNG事業が計画されていることが明らかになりました(注1)。世界の銀行の支援を受けたこの動きはガスの拡大を引き起こし、温室効果ガス排出量を数十億トンも増加させることになり、世界的な気候目標達成の望みを打ち砕きます。さらに地域コミュニティの健康と福祉を脅かし、生物多様性にも影響を与えます。新ウェブサイト「ExitLNG(エグジットエルエヌジー)」の設立団体は、関与する銀行に対して支援撤回を強く求めています。

「ExitLNG」ウェブサイトで公開された地図は、279件の新規LNG事業の建設計画を特定し、LNG拡大の影響を受ける国々の範囲を明らかにしています(注2)。本ウェブサイトは、関連企業や融資銀行、コミュニティと生物多様性へのリスクも示しています。

今回の調査分析は、米国がLNGの輸出ブームを牽引していることと、計画されている輸出能力増加の40%に相当する38事業を進めていることも明らかにしています。この要因の一つとして、トランプ米大統領の化石燃料政策が挙げられます。次いで多いのがロシア(同20%、18事業)、カタール(同8%、3事業)です。一方、LNG輸入施設事業が最も多く計画されているのはアジア太平洋地域で、中でも中国が最多で(計画されている輸入能力増加の34%に相当する49事業)、インド(同8%、11事業)、ベトナム(同7%、14事業)が続いています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年には新規LNG輸出基地の最終投資決定(FID)が急増し、予想されるガス供給量が増加しました(注3)。これによって新規ガス田開発が促進され(注4)、地球の平均気温上昇を1.5度に抑えるという国際的な目標の達成を脅かすことになります。

全体的に、新規LNG輸出施設は二酸化炭素換算(CO2e)で10ギガトン以上の温室効果ガスを2030年までに排出すると推定されています。これは米国と欧州連合(EU)の年間排出量の合計に匹敵する規模です(注5)。

リクレイム・ファイナンスの石油・ガスキャンペーナー Justine Duclos-Gonda は「世界中で起きている建設ラッシュは、気候と地域コミュニティに被害を及ぼす災害へと私たちを導き、その代償は私たち全員が払うことになります。健康と生計を脅かすこれらの事業に反対する声がますます高まっているのは当然のことです。しかし、こうした懸念にもかかわらず、銀行は社会的・気候的コストを顧みずに、LNG拡大に数十億ドルを注ぎ続けています」と述べています。

最大のLNG輸出基地開発企業は、カタールエナジーと米国ベンチャー・グローバルです(計画中のLNG輸出基地のCO2e排出量の規模で計算)。両社はそれぞれ、2030年までに合計12億トン以上のCO2e排出をもたらすLNG輸出基地事業を計画しています。フランスの石油メジャーであるトタルエナジーズは5位で、2030年までに合計3億トン以上のCO2e排出が見込まれるLNG輸出基地事業を計画しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) LNGキャンペーンマネージャーのルース・ブリーチは「コミュニティは気候変動の影響と壊滅的な経済被害に苦しんでいます。液化ガスは事態を悪化させています。世界は化石燃料の拡大を一切必要としていません。新たなシェールガス田も、パイプラインも、LNGタンカーも、LNG基地も一切不要です。それにもかかわらず、米国政府、化石燃料企業、銀行、保険会社は世界中でガスを推進し、私たちの生涯で最大の化石燃料インフラ建設を引き起こしています」と強調しました。

こうした影響にもかかわらず、世界の銀行はLNG開発企業への資金支援を継続し、2021年から2024年にかけてLNG拡大に1,740億米ドルを投入しています。この資金の4分の3はわずか5カ国(米国、日本、中国、カナダ、フランス)から提供され、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、JPモルガン・チェースの3行がそれぞれ100億米ドル以上を支援しています。

サンタンデール、ING、ソシエテ・ジェネラル、クレディ・アグリコル、グループBPCEなどの欧州系銀行も、LNG拡大の主要な資金提供者として特定されています。

「ExitLNG」を立ち上げた以下の団体は銀行に対し、LNGの影響を認識し、新規LNG事業および新規LNG施設を開発する企業に対する全ての金融サービスを終了させるための包括的な方針を採用するよう強く求めています。

連絡先

Justine Duclos Gonda
Exit Oil & GasCampaigner
justine@reclaimfinance.org
+33781512959

Helen Burley
International press relations
helen@reclaimfinance.org
+447703731923

注1) https://ExitLNG.org
「ExitLNG」は、リクレイム・ファイナンス、 Andy Gheorghiu Consulting、バンクトラック、CEED、 Food and Water Watch、 FoEフランス、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、 ReCommon、 SFOC、 StandEarth、ウルゲバルト(Urgewald)が共同で立ち上げた新ウェブサイト。

注2) LNG事業とは、LNG基地の輸出入能力を大幅に増加させる大規模インフラを指している。この定義には、新規基地、および既存基地の特定フェーズやトレイン(天然ガスを冷却して液化する設備)が含まれる。各事業には、それぞれ異なる利害関係者、輸出入能力、スケジュール、資金調達方法が存在する可能性がある。LNG事業は「脱石油・ガスリスト(Global Oil & Gas Exit List: GOGEL)2024」のデータに基づき特定されている。

注3) 国際エネルギー機関(IEA)、『Gas 2025』、2025年10月

注4) リクレイム・ファイナンスは、LNG施設に直接関連する46件の短期のガス拡大事業(すなわち、現在はフィールド評価中または開発中のガス事業)を特定した。これらの事業は、石油換算で510億バレル以上のガス資源量を有する。

注5) 米国環境保護庁(EPA)によると、2022年の米国排出量は約6.34Gt CO₂eであった。欧州環境庁によると、2023年のEUの温室効果ガス排出量(土地利用・林業を除く)は約3.1Gt CO₂eであった。

(英語プレスリリース “New mapping project reveals surge in LNG expansion”)

共同プレスリリース「化石燃料ファイナンス報告書 2025」発表 〜世界65銀行の化石燃料への資金提供額、2024年は8,694億ドルに急増〜(2025/6/18)

米銀とメガバンクが上位独占、2024年提供額はみずほ4位、三菱UFJ6位、SMBC11位

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
国際環境NGO マーケット・フォース
国際環境NGO 350.org

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、以下RAN)をはじめとするNGOは17日(米国東部時間)、新報告書『化石燃料ファイナンス報告書2025〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』(注1、第16版、 日本語要約版、英語名: Banking on Climate Chaos 2025)を発表しました。

本報告書は、世界の上位65行による2,800社以上の化石燃料企業への融資・引受をまとめた年次報告書です。分析の結果、昨年に銀行から化石燃料産業に提供された金額は約8,694億米ドルで、2023年と比べて1,625億ドルも増加したことがわかりました。また、2024年には全体の約半分の約4,290億ドルが化石燃料拡大のために投入され、2021年以降の合計額は1兆6,000億ドルでした。報告書の執筆団体は、国際エネルギー機関(IEA)の世界的な科学者たちが油田やガス田の新規開発、新規タンカーやパイプライン計画など、いかなる化石燃料の拡大は必要ないと繰り返し述べてきたにもかかわらず、銀行は気候変動のリスクを無視し、化石燃料拡大への資金提供を増やしてきたと指摘しています。また資金提供の増加は、2021年にグラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)で、多くの銀行が表明した気候変動に関する約束(コミットメント)の急速な後退の中で起きていることも言及しました。

日本の3メガバンクは、昨年の資金提供でワースト12銀行に入りました。みずほフィナンシャルグループ(みずほ)が4位、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は6位、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は11位でした。65行のうちの3行のみで全体の資金提供額の12%を占めました。化石燃料事業を拡大している企業への資金提供額でもワースト12銀行に入り、みずほが3位、MUFGが6位、SMBCが11位という結果でした。

図:「化石燃料ファイナンス2025」ランキング
左:2024年のワースト12銀行(化石燃料全部門への融資・引受額、単位=十億ドル)
右:各ランキングのワースト5銀行

『化石燃料ファイナンス報告書2025』概要・主な調査結果

世界の主要民間銀行65行が化石燃料部門に行った資金提供(融資・引受)を示した包括的な報告書。化石燃料企業2,800社以上への資金提供について分析。対象期間はIEAが「ネットゼロ・ロードマップ」(注2)を発表した2021年〜2024年で、年別、累計額を分析。化石燃料産業全体、化石燃料拡大企業への資金提供ごとに集計・分析(これまでと異なり、LNG、石炭、オイルサンドなど部門別のランキングは発表しないが、各部門の簡潔な動向と地域コミュニティへの影響を説明している)。パリ協定が発効した2016年〜2024年の全体的な傾向の分析も一部掲載。

  • 大手65行の化石燃料ファイナンス
    • 2024年の資金提供額は約8,690億米ドルだった。
    • 2021年から2023年は減少傾向にあったが、2023年から2024年の金額は1,625億ドル増加した。
  • 資金提供の形態別傾向(2024年)
    • 融資の金額が最も大きく、2023年の4,220億ドルから4,670億ドルに増加した。
    • 債券は増加額が最も大きく、2023年の2,840億ドルから4,010億ドルへと増加。
    • 買収ファイナンスは2023年の637億ドルから829億ドルに増加。
  • 化石燃料事業を拡大している企業への資金提供:
    • 2021年から2024年の提供額は1兆6,000億ドルだった。
    • 2024年だけで4,286億ドルが提供され、2023年から848億ドル増加した。
  •  パリ協定が発効した2016年から2024年の提供額は7.9兆ドルだった。

2024年のワースト銀行JPモルガン・チェースで、2024年にコミットした金額は535億ドルでした。対象となった銀行65行のうち4行が資金提供額を100億ドル以上増加させ、増加額の大きい上位4行はJPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、バークレイズでした。ワースト12行のうち、日米の銀行は合計で9行でした。

米国:米銀は2024年に2,890億ドルの化石燃料への資金提供をコミットし、この金額は本報告書の対象としている世界の化石燃料への資金提額の3分の1にあたります。上位のJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴの4行だけで全体の21%を占めています。

日本:みずほ、MUFG、SMBC3行の2024年の化石燃料への資金提額は1,063億ドルで、65行全体の約12%を占めました。約半数が米国に本社を置く企業への資金提供でした。詳細は「日本の 3 メガバンクの資金提供分析」をご参照ください。

ヨーロッパイギリスのバークレイズが354億ドルで2024年の最大の化石燃料への資金提供銀行でした。スペインのサンタンデール、フランスのBNPパリバ、ドイツのドイツ銀行、イギリスのHSBCが続き、それぞれ2024年に14~173億ドルを化石燃料産業に拠出しました。

図2:メガバンクによる化石燃料への資金提供(融資・引受)推移(単位:百万米ドル)

図3:メガバンクによる化石燃料拡大企業への資金提供(融資・引受)推移(単位:百万米ドル)

執筆者および執筆団体からのコメント

RAN銀行方針リーダー アリソン・フェイジャンス=ターナー(共同執筆者)

「注意をそらし、引き伸ばし、責任を回避し、そして最後に離脱する。必要に応じて、それを繰り返す。銀行はこういった常套手段を使って、自分たちと化石燃料業界に潤沢な資金を供給して金融システムにリスクを積み上げる一方で、地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるための時間を無駄にしてきました。『化石燃料ファイナンス報告書』の威力は、このような戦術を見抜き、資金の流れを追跡している点にあります。災害が深刻化し、科学者や政策専門家がますます悲惨な警告を発しているにもかかわらず、銀行は2023年から2024年に化石燃料への資金提供を増やし、化石燃料インフラの拡大に数十億ドルを注ぎ込んでいます。銀行の方向転換を可能にするには、迅速かつ強固な拘束力のある政府の規制と監督が不可欠です。拘束力のある規制がなければ、気候カオス(混乱)へのファイナンスが銀行の主要な投資戦略であり続け、経済と地球を破綻させてしまいます」

RAN日本シニア・アドバイザー 川上豊幸

日米の銀行が2024年の化石燃料ファイナンスの上位を独占しました。3メガバンクは昨年から順位を下げたものの、米銀らの増加額が多かっただけで、メガバンクの資金提供額は依然として大きく、憂慮すべきことです。2024年、大手米銀の化石燃料産業への資金提供額は前年比30〜50%増加という異常な状況となりました。国際エネルギー機関(IEA)の調査報告書によれば、全ての化石燃料の拡大事業はパリ協定の1.5度目標と整合しないとされるにも関わらず、2024年、みずほは化石燃料拡大企業への資金提供を前年比で約15%増加させ、MUFGは約3%増加させました。

6月12日、JERAの米国からのLNG新規調達契約が発表されました。メキシコ湾岸での化石燃料施設では汚染や環境破壊、地域経済への悪影響に加え、生産・輸送過程でも膨大な温室効果ガスの排出が懸念されます。調達先にはテキサス州リオ・グランデLNG事業も含まれています。事業者であるネクストディケイド社は、先住民族カリゾ・コメクルド族の反対にもかかわらず、同意を得ることなく整地作業を進めて、聖地周辺を破壊しています。このLNG事業にはMUFGとみずほが資金を提供しています。これは、2行が採択する国際基準である『赤道原則』の違反にあたり、銀行のガバナンス体制に問題があると考えられます」

賛同団体からのコメント

気候ネットワーク プログラム・コーディネーター 鈴木康子氏

「今回の報告書からも日本のメガバンクが新たなLNGプロジェクトへの巨額の融資を継続していることが明らかになりました。また、化石燃料全体に対する融資額もトップレベル(3メガ合計で1,063億ドル)にあり、特に米国に本社を置く化石燃料企業への資金額が突出していることから、日本が米国のエネルギー政策を支援していることを浮き彫りにしています。6月12日には、JERAが米国から年間最大550万トンのLNGを購入する20年契約を締結したと発表。今後も米国への融資が続くと想定できます。国内ではガス火力をトランジションと位置づけて、複数の新規LNG火力の計画が進められており、ガス火力が終焉に向かう兆しは全く見えません。銀行が自ら科学的知見に基づき化石燃料事業に投融資することのリスク評価を行い、早期に支援を見直すことを強く求めます」

マーケット・フォース、日本エネルギーファイナンスキャンペーナー、渡辺瑛莉氏

「2024年も日本のメガバンクは不名誉な“Dirty Dozen(化石燃料支援ワースト12行)”に名を連ね、化石燃料への資金提供を続けています。すでに日本および世界各地で気候変動に起因する高温や災害が相次いでいるにも関わらず、メガバンクは短期的な利益を優先し、長期的な社会と経済の安定を危うくしています。欧米や豪州の銀行がリスクを見越して撤退するLNG事業に加担している姿勢は、長期的リスクに対する感度の低さ、そして気候リスク管理の脆弱さを露呈しています。NZBAから脱退した今、メガバンクが掲げるネットゼロ目標に信頼を置けるかどうかは、実効性ある気候リスク管理とガバナンス体制の構築にかかっています。大手銀行の投資家は、将来の企業価値を毀損しかねない経営に対して、確固たる姿勢で臨む必要があります。顧客企業に対する移行支援の実効性を確保し、ガバナンス強化に資する監査委員会の取締役監督に関する株主提案への賛同は、その第一歩となるはずです」

国際環境NGO 350.org、ジャパン・キャンペーナー、伊与田昌慶氏

「この報告書は、日本の金融機関が気候危機を解決する責任を果たさないばかりか、問題の原因であり続けていることを糾弾する告発状です。とりわけみずほFGとMUFGは2023年から2024年にかけて化石燃料ファイナンスを10%以上も増額させており、パリ協定が謳う『資金の流れを低排出にする』との目標に逆行しています。今年になって相次いで『ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)』から離脱した邦銀は『脱退後も取り組みを続ける』などと、まるでこれまで十分に取り組み、成果を出していたかのような説明をしました。しかし、過去から現在に至るまで、邦銀の取り組みがパリ協定の1.5℃目標に整合する十分な水準に至ったことは1度もありません。
3メガバンクに脱化石燃料を求める要請文には、これまでに国内外の210団体から賛同が集まっています。ホワイトハウスの気候変動懐疑論者らではなく、世界中で気候危機の脅威を体験している市民のために、化石燃料からの脱却と再エネ3倍に貢献する金融方針へと転換すべきです」

『化石燃料ファイナンス報告書』はRAN、バンク・トラック、エネルギー・エコロジー・開発センター(CEED)、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェインジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラ・クラブ、ウルゲバルトによって執筆されています。世界69カ国480以上の団体が賛同しています。

注1)「化石燃料ファイナンス報告書2025」全文(英語)
化石燃料の金融データ、方針スコア、最前線の現場からの報告、方法論などはこちらから:

https://www.bankingonclimatechaos.org

日本後要約版:https://japan.ran.org/wp-content/uploads/2025/09/BOCC_2025_Executive_Summary_vJPN_vF.pdf

注2)IEA「ネット・ゼロ・ロードマップ」、2021年5月

今後全ての化石燃料の拡大事業は1.5度目標と整合しないという分析結果が出た。

https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050

補足資料

日本の 3 メガバンクの資金提供分析
記者会見プレゼン資料
6月18日記者会見プログラム

*情報更新:「化石燃料ファイナンス報告書2025日本語要約版」を、デザイン版に差し替えました(2025年9月)

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。

本件に関するお問い合わせ

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org
日本シニア・アドバイザー 川上 Email:   toyo@ran.org

声明:MUFGはNZBA脱退後も約束を反故にせず、 パリ協定1.5度目標に整合しない企業への融資中止を(2025/4/9)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が銀行間の自主的イニシアティブ「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から3月19日に脱退したことを受けて、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本:東京都渋谷区、RAN)は9日、MUFGに、NZBAから脱退しても投融資ポートフォリオをパリ協定1.5度目標と整合させる約束を反故にせず、パリ協定の1.5度目標に整合しない企業への融資の中止を求める声明を発表しました。

RANは3月と4月に2回にわたって、MUFGに脱退の理由を質問するメールを送りました。同グループは「今後の気候変動対策を検討するにあたり、NZBAにおける加盟継続のメリットを総合的に判断した結果だ」とし、「カーボンニュートラル実現や、パリ協定1.5度目標達成へ MUFG として貢献するというコミットメントは不変です」と回答しました。

 

RAN日本シニア・アドバイザー川上豊幸は「MUFGから『パリ協定1.5度目標達成に貢献するというコミットメントは不変である』という回答をもらいました。MUFGが、2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標に今後も取り組むと改めて言及したことは重要です。なぜなら米国では大手銀行のNZBAからの脱退が続き、その一行のウェルズ・ファーゴが2月、2050年までのネットゼロのコミットメントを反故にした実例があるからです。MUFGはこのような動きに屈することなく、世界中で危機感が高まる気候変動問題に対して、日本最大手の銀行として責任を持って行動してもらいたいと願います」と主張しました。

一方、MUFGは新規の液化天然ガス(LNG)事業への巨額の投融資など、パリ協定の1.5度目標に整合しないプロジェクトへの資金提供を行っています。RANら『化石燃料ファイナンス報告書2024』によると、パリ協定採択以降、2016年から2023年のMUFGの化石燃料産業への投融資額は世界4位の約3,077億米ドルで、LNG事業を拡大する企業130社への2023年の投融資額は世界2位の約84億米ドルでした。例えば環境・社会面でも大きな問題がある米国テキサス州メキシコ湾岸地域で計画中のリオ・グランデLNG事業を進めるネクスト・ディケイド社に、MUFGは2023年に約21.7億ドル以上を提供しています。

川上は「リオ・グランデLNG施設が稼働すれば石炭火力発電所50基分に相当する二酸化炭素を排出することになると懸念されています。今年、2024年の平均気温がパリ協定の抑制目標である1.5度上昇を初めて上回ったことが明らかになりました。MUFGは直ちに、リオ・グランデLNG施設など、1.5度目標の達成を困難にする事業や企業への資金提供は中止すべきです」と強調しました。

 

昨年12月、米メキシコ湾岸地域の住民や先住民族、市民団体らはNZBAと、その母体であるグラスゴー金融同盟(GFANZ)、国際連合に書簡を送り、NZBAからの加盟銀行脱退の懸念を示し、NZBAは圧力に屈せず規約を維持し、加盟銀行に「世界の平均気温上昇を1.5度に抑える」というパリ協定の合意と目標を整合させることを要請していました。今年3月、 日本のメガバンク3行全てもNZBAから脱退しました。ほぼ同時期にNZBAは加盟規約の見直しを巡り、融資案件を1.5度以内に抑える目標と整合させる必要性について撤廃が提案されていると報道されました。MUFGは2025年3月までNZBAステアリンググループ(地域毎に選出される金融機関で構成)の一員だったとRANに回答しましたが、規約の見直しと脱退との関係については「コメントを控える」としています。

 

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-2F
日本チームマネジャー:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

共同声明:SOMPOが日本の損保で初めてFPICを含む先住民族の権利を尊重する方針を設定(2025/1/15)

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

1月10日、日本の大手損害保険会社の1つであるSOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)は、「事業におけるESG配慮」方針を更新し、「保険引受・投融資における注意を要する事業」の対象に先住民族の人権を侵害する恐れのある事業を新たに加え、FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意)等の国際スタンダードを参照する旨を公表しました(※1)。保険引受・投融資においてFPICを尊重する方針を策定したのは、日本の損害保険会社として初であり、私たちはSOMPOのこの方針策定を歓迎するとともに、東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(以下、MS&AD)に対しても、FPICを含む先住民族の権利を尊重する方針を早急に策定するよう要請します。

FPICは先住民族に関する国際連合宣言で明記されている権利であり、先住民族の参加権及び、先住民族や先住民族の土地等に影響を及ぼす可能性のある事業に同意又は不同意する権利を保証しています。また、FPICによって先住民族は、事業の設計や実施、モニタリング、評価の段階で交渉することが可能になります(※2)

なお、SOMPOによる保険引受が判明した米国リオ・グランデLNG事業の事業者NextDecadeは、同事業について現地の先住民族であるカリゾ・コメクルド族との協議会を一度も開催したことがなく、 FPICが取得されていません(※3)。現地住民・環境NGO・現地自治体は、事業者が適切な環境影響調査を怠っていると主張して、これまで抗議活動や訴訟を起こしてきましたが、2024年8月に現地裁判所が事業の建設及び稼働の承認を破棄したことにより、住民側が勝訴しています(※4)。昨年10月には、カリゾ・コメクルド族や現地コミュニティの代表団が来日し、リオ・グランデLNG事業を支援するSOMPOや銀行と会合を行い、事業からの撤退を求めました(※5)

新規の化石燃料事業である同事業は、パリ協定1.5度目標と整合しないことから実施すべきではありませんが、加えてSOMPOはリオ・グランデLNG事業の事業者に対してFPICが取得されているかを確認するべきで、FPIC取得が確認できない場合は直ちに撤退するべきです。

また、東京海上及びMS&ADに対しては、FPICを含む先住民族の権利を尊重する方針を早急に策定するよう強く求めます。

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

注:
※1:https://www.sompo-hd.com/csr/esg/product/
※2:https://www.ran.org/press-releases/axis-capital-becomes-first-north-american-insurer-to-adopt-policy-on-free-prior-and-informed-consent/
※3:https://jacses.org/2475/
※4:https://www.sierraclub.org/press-releases/2024/08/dc-circuit-rules-against-ferc-approval-lng-and-pipeline-projects-south-texas
※5:https://japan.ran.org/?p=2347