サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

プレスリリース: 3メガ融資先 インドネシア食品大手「インドフード」のパーム油部門 労働権侵害でRSPO認証停止 (2019/3/6)

〜NGO、大手グローバル銀行と投資家が違法行為・労働酷使に加担していると批判〜

パーム油認証制度の「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)が、パーム油生産企業サリム・イボマス・プラタマ(SIMP)とその子会社ロンドン・スマトラ(ロンサム)の会員資格停止を3月1日に発表したことを受けて(注1)、本日6日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、「メガバンクが制定した方針を実行するための試金石となる」とコメントを発表しました。SIMPはRSPOで4番目に大きい会員企業で、インドネシア最大の食品会社及び世界最大の即席麺企業としても知られるインドフードのパーム油部門です。インドフードは、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

今回の資格停止決定に先立ち、RSPOは昨年11月、ロンサムが所有するアブラヤシ農園で確認された20件以上のRSPOの基準違反と10件のインドネシア労働法違反に対処するための是正措置計画の提出を求めていました(注2)。しかし、ロンサム、SIMPそしてインドフードはその勧告に従うことなく、1月にRSPO認証制度から脱退することを一方的に告知(注3)していました。

RAN責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは 「RSPOが基準を実行したことを歓迎します。インドフードとその子会社は、RSPO基準、国際的規準、インドネシアの法律を長期にわたって軽視してきました。今こそ、インドフードと取引を続けている全ての銀行や投資家、企業は、違法行為や労働搾取を助長しないよう、自社方針に従ってインドフードとの取引をただちに停止するべきです」と訴えました。

インドフードの事業は、大手グローバル銀行や投資家からの数十億ドルの資金調達によって支えられています。一方で、多くの銀行と投資家は違法行為への資金提供に関する明確な方針を持っています。インドフードへ多額の融資をしているSMBC、みずほ、MUFGも例外ではありません。他の2行と比べ、SMBCの方針は『人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止』し、『RSPO、或いはそれに準ずる認証機関の認証を受けている(略)パーム油農園開発を支援します』と明確に定めています。今回のインドフードのRSPO認証停止を受けて、融資を続けることは方針違反になりかねません。インドフードへの最大の投資家には、ブラックロックや日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も含まれます。

ハイネケンは「日本のメガバンクは、インドフードとその子会社にとって主要な金融機関です。 インドフードは2018年9月30日の時点で、3メガバンクから730億円以上の融資を受けています(注4)。3行は2018年5月と6月に社会と環境に配慮した投融資方針を初めて発表し、全ての銀行が違法行為への融資を禁止しています。3メガバンクのインドフードに対する今後の対応は、制定した方針を実行するための試金石となるでしょう」と強調しました(注5)。

【これまでの経緯】

●インドフード子会社のアブラヤシ農園での調査は、RAN、国際労働権フォーラム(ILRF)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注6)がきっかけとなって実施されました。3団体の調査で、同社が所有・運営する農園で非常に高いノルマが課せられるために児童労働が行われたり、無給労働や不安定雇用、有害物質への曝露など深刻な労働権侵害が明らかになっていました。このような労働者の酷使は、これまで独立監査によっても確認されています。

●ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、そしてマースなど、多くのパーム油購入企業は、インドフードとの取引をすでに停止しています。しかし、インドフードの合弁パートナーであるペプシコ、ウィルマー、ヤム・ブランズなど多くの企業は現在もインドフードと合弁関係を継続しており、労働酷使とのつながりが残ったままとなっています。

●インドフードは、インドネシアの大財閥サリムグループ の一社で、商品の開発から生産、販売までをグループ企業内で総合的に行う垂直統合型企業です。パーム油事業は、アブラヤシ農園企業のインドフード・アグリ・リソーシズ(インドアグリ)の下で運営され、SIMPはインドアグリの子会社です。労働権侵害が問題となった農園は、SIMPの子会社のロンドン・スマトラによって運営されています。サリム・グループは、近年で最大級の熱帯林違法皆伐との関与も指摘され(注7)、金融セクターには迅速な対応が求められています。

 

注1)RSPO, “RSPO Secretariat’s statement on complaints panel decision regarding PT Salim Ivomas Pratama TBK”, 2019年3月1日

注2)RAN、「緊急プレスリリース:パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置 」、2018年11月5日

注3)インドフードからRSPO宛の手紙

注4)インドフードへ資金提供する金融機関については、同社の財務報告(2018年9月30日、英語)を参照のこと

注5)3メガバンクの方針について
・インドフードへの最大の貸し手であるみずほは、「責任ある投融資等の管理態勢強化について」(2018年6月)で、パーム油と木材に特化し、「人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や(略)先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行います」としている。
・SMBCは「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」(2018年6月)で、パーム油の農園開発向けの融資について「違法伐採や児童労働などの人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止します」と明記している。また、パーム油関連の顧客企業がRSPO、あるいはそれに準ずる認証機関の認証を取得しているかどうかを確認することも方針の中でも明記している。
・MUFGは「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」(2018年5月)で、「ファイナンスを禁止する事業」として「違法または違法目的の事業」「公序良俗に反する事業」を筆頭にあげています。

注6)3団体による苦情申し立て文書(英語)
苦情申し立ての概要(英語、2016年10月12日付け)

注7)RAN、「プレスリリース:新報告書『サリム・レポート』発表 日本のメガバンク3行、近年最大級の熱帯林違法皆伐とのつながりが判明」、2018年4月13日

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。