サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘プレスリリース’カテゴリーの記事一覧

声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害」〜東京五輪開幕まで1年〜 (2019/7/24)

〜IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 「東京五輪のレガシー」としないために〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日24日、東京五輪開幕まで1年となることを受けて、「問題のある木材も利用可能とした調達基準と、それを許している通報制度を『東京五輪のレガシー』とすべきではない」とし、以下の声明を発表しました。

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

東京五輪開幕まで、あと1年と迫ってきました。 

 東京五輪会場の建設用の木材調達について、私たちNGOはインドネシアやマレーシアでの熱帯林破壊から人権侵害まで、様々な問題を指摘してきました。その結果、東京2020大会の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」は今年1月に改訂されました。しかしその基準は、問題ある企業からの高リスクの木材をサプライヤー企業が利用し続けることが可能となっており、大きな抜け穴を残したままです。開幕まで1年となった今月においても、競技会場の建設現場で熱帯材が使い続けられていることが確認されています(注1)。

 加えて、木材調達基準の遵守状況を確認する「通報受付窓口」の体制も脆弱です。例えば、NGOの調査で、森林減少を引き起こす農地等への転換に由来する木材である「転換材」が建設事業に利用されていたことが明らかになりました。RANなどNGOは「転換材は持続可能でない」とし、昨年11月末に「調達方針の不遵守」として、東京2020組織委員会、および各施設を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)と東京都に複数回にわたって通報を行いました。しかし、いまだに説明責任は果たされていません。ある通報では、本来のプロセスを逸脱して、通報者である私たちNGOからの情報収集は行なわず、サプライヤー企業の情報にのみ基づいた不公平な判断を行なって、処理開始の案件としませんでした。別の件では、8ヵ月に渡り処理開始の判断がないままの状況にあり、通報の処理体制でも問題が顕在化しています(注2)

 問題のある木材も利用可能とした調達基準、そして、それを許している通報制度を「東京五輪のレガシー」とすべきではありません。持続可能性の観点からどのような問題や課題があったのかを明らかにした上、引き継ぐべきレガシーを考えるべきです。

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、ターゲット15.2で2020年までに森林減少を阻止することが明確に示されています。そのためには、森林減少の大きな要因である農園開発や産業植林のための土地転換を食い止めることが必須です。

 RANは、東京五輪開催までの1年、今後も調達対象となるパーム油や紙パルプ製品についても二度と森林減少を引き起こさないよう、「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害」の実現に向けて活動を進めていきます。

*7月18日(米国時間)、RANは、国際オリンピック委員会へ「東京2020大会の通報制度への深刻な懸念(Subject: Serious Concers regarding Tokyo 2020 Grievance Meganisms)」文書(英語)を電子メールで送付し、東京五輪の通報制度が国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の原則(31. 非司法的苦情処理メカニズムのための実効性の要件)に反していることを指摘しました(コミュニケーション不足:透明性、予測可能性、説明責任。手順を逸脱したサプライヤーの情報に基づく不公平な判断:正当性、公平性)。

動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏(Centre for Orangutan Protection 代表)


注1)マレーシア サラワク州産の合板(タ・アン社製)が代々木競技場で確認(7月15日)
注2)「熱帯材合板: 東京五輪木材調達基準違反に関する通報」概要&一覧(7月26日改訂版)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org


NGO共同声明:米国で初めて大手保険会社が石炭事業の保険引き受け及び投融資の中止を表明 (2019/7/2)

2019年7月1日(米国時間):本日、アメリカの最大手民間保険会社であるChubb (チャブ、NYSE: CB)が気候変動の危機に立ち向かうべく、新しい方針を発表した。同方針によれば、Chubbは2022年までに新規石炭火力発電事業の保険引き受けを中止し、石炭採掘企業の保険引き受けを停止する、また、Chubbは石炭火力が発電割合の30%以上を占める電力会社の保険引き受けを制限し、かつ、直ちに石炭関連企業への新規投融資を中止するとのことである。

レインフォレスト・アクション・ネットワークの事務局長Lindsey Allenは、「同方針によってChubbは、気候変動の危機を止める役割を持つ保険会社として、その重要な役割を認識した初めてのアメリカの保険会社となった。保険の引き受けなしでは新規石炭事業は建設されない。今回の方針発表は、いまだに世界中で石炭事業を拡大している数十の企業にChubbが大打撃を与えたことを意味する。我々はChubbが気候変動対策のための真のアクションに踏み切り、より健全な未来に保険をかけたことで大いに勇気付けられた」と述べた。

Chubbは世界最大の損保会社であり、アメリカの電力セクターにおける保険市場のリーダーである。California Department of Insurance’s Climate Risk Carbon Initiative のデータベースによると、最近Chubb及びChubbの子会社だけで少なくとも29億米ドルを化石燃料関連企業に投融資している。過去9ヶ月間、ChubbはInsure Our Futureキャンペーンからのプレッシャーを受けてきた。Insure Our Futureキャンペーンとは、アメリカの保険業界が石炭・タールサンド事業及び関連企業への保険引き受けと投融資を中止するように促すキャンペーンである。

シエラクラブのBeyond Coal campaignのディレクターMary Anne Hittは「Chubbの発表は、世界中で石炭の保険引き受けが不可になっているという明らかなシグナルである。ヨーロッパ及びオーストラリアの15の保険会社がすでに石炭業界への保険を制限している。この世界的な潮流にアメリカの保険会社が賛同したことによって、政府及び電力関係者は保険業界が脱石炭に動いていることに直面するだろう」とコメントした。

2年前、Insure Our Futureも参加する国際キャンペーンであるUnfriend Coalキャンペーンが設立され、ヨーロッパから14の保険会社、オーストラリアから1つの保険会社が気候変動対策のための方針を発表した。そのうち8つの方針は、今後さらにそのスコープを拡大していくものとして最近6ヶ月に発表された。先週は、チューリッヒ保険がタールサンドセクターへの関わりを制限する3社目の保険会社となった。

Insure our Future上級ストラテジストのRoss Hammondは、「石炭事業及び企業への保険引き受けを制限したChubbのようなアメリカの主要保険会社はゲームチェンジャーである。同社は、新規石炭採掘事業を除外し、パリ協定に整合するように全ての保険引き受け及び投融資において脱石炭を行い、さらに、壊滅的なタールサンド業界への保険引き受けも中止するよう、方針をさらに強化するべきである。Liberty Mutual、AIGや他の米国保険会社もChubbの動きに加わり、気候変動の悪化を止めるために果たすべき役割をしっかり認識し、化石燃料支援をやめることが求められている」と述べた。

Insure Our Futureは350.org、Indigenous Environmental Network、グリーンピース、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、Public Citizen及びシエラクラブと他のNGOによって運営されている。

プレスリリース日本語版への補足(本プレスリリースの日本語版配信に当たって、以下のステートメントを追加しました):

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)理事の田辺有輝は、「欧州の損害保険会社に続いて、今回、米国の損害保険会社が石炭事業への保険の引き受け停止方針を発表した。当然ながら、世界の損保業界の主要プレーヤーの一角を占める日本の3損保(東京海上、MS&AD、SOMPO)の対応に国際的な注目が集まるだろう。この国際潮流に乗って、日本の3損保も石炭事業への保険の引き受け停止方針を表明するべきである。」と述べた。

英語のプレスリリースはこちら

日本の問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝03-3505-5553 / tanabe@jacses.org

米国の問い合わせ先(英語):
Myriam Fallon, Sunrise Project, +1-708-546-9001 / myriam@sunriseproject.net
Ayse Gürsöz, レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN), +1-650-391-6443 / Ayse@ran.org
Jeff Shaw, Sierra Club, +1-503-551-3615/ jeff.shaw@sierraclub.org

プレスリリース:三菱UFJの人権侵害・森林破壊・化石燃料への融資を批判(2019/6/27)

子会社のユニオン・バンクでアピール行動
〜東京での株主総会を前に サンフランシスコで〜

サンフランシスコ−−環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、26日(現地時間)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)子会社のユニオン・バンクの本社周辺でアピール行動を行い、問題のあるパーム油を含む森林破壊や人権侵害、化石燃料への資金提供を停止するようMUFGに求めました。MUFGは日本最大の金融グループで、世界5位の資産総額を保有する銀行です。本アピール行動は、東京で開催される同グループの定時株主総会の数時間前に、サンフランシスコで行われました。

RANのスタッフやボランティアはアブラヤシ農園労働者に扮して、「MUFGユニオン・バンク、気候変動に融資しないで」「森林を守って!」「NO人権侵害」など日本語と英語で書かれたバナーやプラカードを掲げ、MUFGが資金提供するパーム油企業での労働者に対する人権侵害と、農園のある地域社会への悪影響をアピールしました。アピールはユニオン・バンクの入口や周辺で平和的に行われました。問題となっている企業は、インドネシアの食品・パーム油大手のインドフードで、MUFG は主要な資金提供銀行の一つです(注1)。シティグループなど欧米の大手銀行は、最近、インドフードの事業における人権侵害や違法行為を理由に同社への融資を引き揚げました(注2)。同時に、MUFGが化石燃料開発の拡大に資金提供していることも批判しました。MUFGは、ミネソタ州のライン 3石油パイプライン建設で先住民の権利を侵害している北米のタールサンド・パイプライン企業エンブリッジにも資金提供していることが指摘されました。

RAN責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三菱UFJは、問題の多いパーム油企業や化石燃料企業への資金提供を通じて、気候危機の加速、生物種の絶滅、人権侵害に多額の融資をしています。昨年、MUFGは与信方針を採用して大きく前進しましたが、方針による実質的な効果はまだ見られません」と批判しました。

今年5月、MUFGは森林、パーム油、炭鉱開発・石炭火力セクターにおける与信方針を採択・改定し、7月1日から適用を開始すると発表しました(注3)。しかしNGOからは、改定方針はパリ協定に沿った目標達成にも、2020年までに森林破壊を阻止を約束している国連「持続可能な開発目標」(SDGs)にも不十分であると批判されていました(注4注5)。MUFGの方針は海外の大手金融グループと異なり、森林リスク産品セクターの先進的な基準である「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)には言及しておらず、パリ協定に沿って化石燃料を段階的に廃止することも約束していません。 MUFG  は2018年時点で、東南アジアで熱帯林破壊を加速させている企業への融資・引き受け額が6番目に大きく、化石燃料全般への融資・引受額が世界で7番目に大きい銀行です。また、MUFGはメガバンクの中でパーム油セクターへの資金提供が最も多く、化石燃料、特に石炭火力発電事業への資金提供も最大です(注6注7)。NGOは、MUFGの石炭火力発電への融資を禁止する方針改訂を慎重に歓迎しましたが、明らかな抜け穴が残っていることを懸念しています。

※写真使用をご希望の場合はご連絡ください。動画はこちらから(英語)。


注1)RANプレスリリース「 3メガ融資先 インドネシア食品大手『インドフード』のパーム油部門 労働権侵害でRSPO認証停止〜NGO、大手グローバル銀行と投資家が違法行為・労働酷使に加担していると批判〜」 (2019/3/6)

注2)RANプレスリリース「米シティグループ、パーム油大手インドフードへの融資を停止 〜アブラヤシ農園での労働問題を巡って〜」 (2019/6/18)

注3)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ、「『サステナブルファイナンス目」の設定と『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2019年5月15日

注4)RAN声明「三菱UFJ、新方針で森林保護と気候変動対策を約束 しかし問題は山積み 」(2019/5/17)

注5 )NGO共同声明「三菱UFJが新規石炭火力発電への融資を行わないと約束、環境NGOは更なる方針強化を要請」 (2019/5/16)

注6)RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2019」

注7)RAN他「森林と金融」データベースより

*英文のプレスリリースはこちら「Japan’s Largest Bank MUFG/Union Bank Protested Over Harmful Financing」

※動画のリンクを当初はTwitterにしていましたが、YouTubeに変更しました(2019年6月28日18時半)。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
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広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:米シティグループ、パーム油大手インドフードへの融資を停止 〜アブラヤシ農園での労働問題を巡って〜 (2019/6/18)

〜3メガは取引継続、みずほが最大の資金提供者〜

サンフランシスコ発ーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、米シティグループがインドネシアの食品・パーム油大手インドフード・サクセス・マクムール(以下インドフード)への資金提供を停止したことを受けて、17日(現地時間)、メガバンク3行がインドフードへの資金提供を継続していることを改めて批判しました。今年3月、インドフードは世界最大のパーム油認証制度「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から会員資格を停止され(注1)、同社に資金提供するメガバンクも含んだ金融機関の対応に注目が集まっていました。

インドフードの子会社であるパーム油生産企業2社(注2)は、インドフードが所有するアブラヤシ農園で確認された20件以上のRSPO基準違反と10件のインドネシア労働法違反に対処するため、是正措置計画の提出をRSPOに求められていました。しかし、子会社2社は勧告に従わなかったため、RSPO認証は3月に停止されました。今回のシティグループによる1億4000万ドルに及ぶリボルビングローン(注3)の停止は、インドフードにとって欧米の金融機関で2番目に大きな資金提供者を失うことを意味しています。

「インドフード及び子会社への与信限度額」(単位:百万米ドル)
出典:インドフード財務諸表、2019年3月31日

※銀行によっては、短期貸付金の一部はトラスト・レシートとしても使えることが指定されている。

RAN 責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは「シティグループが同社の方針を実行して、インドフードへの融資を停止したことを歓迎します。インドフードは国内法、認証機関の基準、国際的な事業規範を長い間にわたって軽視してきました。今回のシティグループの決定は、インドフードへの投融資を継続しているメガバンクや日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に対して『インドフードへの投融資は無責任である』ことを示す強烈な警告となるはずです」と強調しました。

インドフードは、時価総額で40億米ドルのインドネシア最大の食品企業です。インドネシアにおけるアブラヤシ農園を担保にした土地抵当権も二番目に大きく(注4)、同国の大財閥 サリム・グループの中核企業です。RSPOによる調査は、RAN、国際労働権フォーラム(ILRF)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注5)がきっかけとなって実施されました。3団体、ならびにRSPOとその監査機関による調査で、児童労働、無給労働、不安定雇用、性差別、有害物質使用下での労働状況が確認されました。

OPPUKの専務理事ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「インドフードはRSPOの警告を無視し、組織的な労働搾取が行われ続けることを許してきました。実際、インドフードがRSPOを脱退して以降、独立系労働組合への脅しや攻撃の事例が増加しています」と指摘しました。

日本のメガバンクのみずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループは、インドネシアのマンディリ銀行、セントラルアジア銀行に次いで、インドフードへの大きな資金提供者です。中でも、みずほは同社へ約5億米ドルの資金提供が可能で、これはメガバンクで最大です。パーム油セクターについて、インドネシアの銀行は方針を持っていませんが、メガバンク3行は最近同セクターに特化した方針を採用し、違法行為への資金提供についても禁止することを明記しています(注6)。オランダのラボバンクとイギリスのスタンダードチャータード銀行はより厳密な方針のもと、顧客企業にRSPO会員になることも要求していますが、インドフードのパーム油事業への融資を最近引き揚げた以外は、両行ともインドフードとの取引を継続しています(注7)。インドフードの最大の機関投資家にはディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ、ブラックロック、バンガード、GPIFが含まれ、「責任ある投資家」の主張とは異なります。

今年4月、責任投資原則(PRI)に関わっている機関投資家56機関、合計運用資産総額7.9兆米ドルがRSPOへの支持を表明し、銀行を含むパーム油バリューチェーン全体の全ての企業に対して、公表する形で「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)の採用と実施を求めました(注8)。メガバンクの方針にはNDPE方針が記載されておらず、インドフードの方針もNDPE方針の基準には達していません。

過去2年間で、インドフード及びその親会社であるファーストパシフィックは、インドフードのパーム油事業の問題のために15社の取引先を失いました。その15社には日本の製油会社の不二製油、ネスレ、ムシムマス、カーギル、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、マース等(注9)が含まれます。しかし、合弁事業パートナーのペプシコやフランチャイズパートナーのヤム・ブランズを含む多くの企業は、いまだにインドフードと取引を継続しており、同社の人権侵害との関わりも維持されたままです。

RAN、ILRF、OPPUKはインドフードに対し、労働違反に対処することと、包括的な「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針」をサリムグループ全体と、全ての外部のサプライヤーにも採用することを求め続けます。

*インドフードと、アブラヤシ農園子会社のインドフード・アグリ・リソーシズは、シティグループによる資金停止について意見を述べる機会を提供されましたが、コメントはしませんでした。

*英文のプレスリリースはこちら「Citigroup Cancels Financing of Indonesian Food Giant Indofood Over Palm Oil Labor Abuses」

注1)RSPO, “RSPO Secretariat’s statement on complaints panel decision regarding PT Salim Ivomas Pratama TBK”, 2019年3月1日

注2)サリム・イボマス・プラタマ(SIMP)と、その子会社ロンドン・スマトラ(ロンサム)

注3)インドフード財務諸表(2019年3月31日版)

注4)TuKインドネシア、Tycoons in the Indonesian Palm Oil 2018、18〜19ページ

注5)3団体による苦情申し立ての進捗(現在は終了)

注6)各銀行の方針
三井住友フィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループ
三菱UFJフィナンシャル・グループ

注7)FD(オランダ経済紙へット・フィナンシエル・ ダフブラット), “Rabobank verbreekt banden met omstreden palmolieproducent”、2019年6月15日

注8)PRI, “Fifty-six investors sign statement on sustainable palm oil”, 3 April 2019

注9)RAN、「インドフードと取引をやめた企業は?(Who has dropped Indofood?)」表、2019年2月

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
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広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:みずほが石炭火力発電融資に関する新方針を発表、三菱UFJの新方針と比べて低水準に (2019/5/22)

(English follows Japanese)
5月22日、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)が「サステナビリティへの取り組みに関する推進体制の強化について」と題するニュースリリース(注1)を発表し、石炭火力発電事業への投融資について「基準厳格化」等の改定を行いました。具体的には「石炭火力発電の新規建設を資金使途とする投融資等については、国際的なガイドライン(OECD公的輸出信用ガイドラインなど)、導入国のエネルギー政策・気候変動対策、日本のエネルギー政策や法規制と整合する場合に限り対応します。その上で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧及び、それ以上の高効率の案件に限定します。(ただし、運用開始日以前に支援意思表明済みの案件は除きます。)」と表明しています。

具体的には「石炭火力発電の新規建設を資金使途とする投融資等については、国際的なガイドライン(OECD公的輸出信用ガイドラインなど)、導入国のエネルギー政策・気候変動対策、日本のエネルギー政策や法規制と整合する場合に限り対応します。その上で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧及び、それ以上の高効率の案件に限定します。(ただし、運用開始日以前に支援意思表明済みの案件は除きます。)」と表明しています。

日本の3メガバンクの中では、5月15日に三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が「新設の石炭火力発電へのファイナンスは原則として実行しません」と表明(注2)したばかりであり、MUFGの方針と比較して、みずほの方針は低水準であると言わざるを得ません。また、三井住友銀行は、みずほと同水準の方針を昨年6月に表明(注3)しており、みずほの今回の方針強化のスピードは非常に遅々たるものであると言えます。

今年レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)他が発表した『化石燃料ファイナンス成績表』(注4)によると、みずほはパリ協定締結後の2016年から2018年までの3年間、全化石燃料セクターへの融資・引受額が世界で10番目に多い銀行で、石炭火力発電部門への融資・引受額も世界8位です。石炭火力発電の新規建設がパリ協定の目標に整合していないことは明らかであり、海外の先進的な民間金融機関の方針と比べても大きく後れを取っています。

みずほは新方針の中で、「脱炭素社会への移行に向けて気候変動への対応に積極的に取り組む」と表明していますが、そうであれば、新規石炭火力発電事業への融資をやめる方針を掲げるとともに、石炭火力発電や石炭採掘の依存度が高い企業への投融資(企業融資、株式・債券の引受及び保有)から撤退する方針を掲げるべきです。また、科学的知見及びパリ協定の目標に基づき、石炭のみならず、炭素排出量の多い他の化石燃料産業への投融資の抑制方針を掲げることが重要です。

さらに、3メガバンクは各方針のなかで、運用開始日以前に支援意思を表明した案件について支援を継続する方針を示していますが、これはパリ協定の目標との整合性に照らせば不十分です。私たちは、3メガバンクが、現在計画中もしくは建設中のベトナムやインドネシア等の海外および国内における石炭火力発電事業への支援も早急に見直すことを含め、さらなる方針の強化を求めます。

国際環境NGO350.org
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
認定NPO法人 気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

注1)株式会社みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティへの取り組みに関する推進体制の強化について」
注2)株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「サステナブルファイナンス目標の設定とMUFG環境・社会ポリシーフレームワークの改定について」
注3)株式会社三井住友銀行「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」
注4)レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)他「化石燃料ファイナンス成績表」

Mizuho’s New Policy on Coal-fired Power Generation Financing Falls Behind Mitsubishi UFJ Policy Revisions

JOINT STATEMENT
Wednesday, May 22, 2019

350.org
Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES)
Rainforest Action Network (RAN)
KIKO Network
Friends of the Earth Japan
Greenpeace Japan

On May 22, Mizuho Financial Group (hereinafter, Mizuho) announced revisions to its policies for investing in coal-fired power generation in a press release (*1) titled “Strengthening of the promotion system for our approach to sustainability.”

The press release indicates that “Investment and financing for construction of new coal-fired power projects will be provided consistent with international guidelines (such as OECD Official Export Credit Guidelines), energy policies and climate change measures in host countries, and Japan’s energy policy. In principle, financing will be limited to the world’s most advanced ultra-supercritical pressure and higher efficiency projects. (That said, this change will not impact projects for which declarations of support have been made before the enactment of this policy.)”

Among Japan’s three megabanks, Mizuho’s policy falls behind even the standard set by Mitsubishi UFJ Financial Group’s (hereinafter MUFG) May 15 policy announcement, in which MUFG declared that it would not provide financing for new coal-fired power projects in principle. (*2) In fact, the policy announcement only aligns Mizuho’s policy with the policy Sumitomo Mitsui Banking Corporation announced in June 2018 (*3), demonstrating just how far behind Mizuho is compared to its peer companies in Japan.

In the three years following the conclusion of the Paris Agreement, 2016-2018, Mizuho ranked among the ten largest fossil-fuel sector funders in terms of loans and underwriting according to the Fossil Fuel Finance Report Card 2019 (*4), published by Rainforest Action Network (RAN) and other NGOs earlier this year. In the area of coal-fired power generation, Mizuho’s loans and underwriting make it the eighth largest funder for that sector. It is clear that new construction of coal-fired power plants is not in line with the goals of the Paris Agreement, and Mizuho’s policy puts the company far behind major non-Japanese financial institutions in efforts to adjust financial policies appropriately.

We urge Mizuho to put in place a policy to discontinue financing for new coal-fired power operations and withdraw from all investment in companies that are highly dependent on coal-fired power generation and coal mining, including loans, underwriting, and holding of stocks and bonds.

Japan’s three megabanks’ policies are not consistent with the objectives of the Paris Agreement, in part because of their continued support for coal-fired power projects to which they committed before the enactment of those policies. Simply disclosing these projects is not enough. We call on all three banks to further strengthen their policies, including through a prompt review of their support for all coal-fired power generation projects currently being planned or under construction, both domestically and in such recipient countries as Vietnam and Indonesia.

(1) Mizuho Financial Group Co., Ltd. “Strengthening the promotion system for sustainability activities” (in Japanese)
(2) Mitsubishi UFJ Financial Group, Inc. “MUFG Sets Sustainable Finance Goals and Revises Environmental and Social Policy Framework ”
(3) Sumitomo Mitsui Banking Corporation “Establishment of policy for businesses associated with Environmental and Social risk”
(4) Rainforest Action Network (RAN) et al. “Banking on Climate Change – Fossil Fuel Finance Report Card 2019”

Contacts:
Yuki Tanabe, Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES),
phone: +81-3-3505-5553 Email: tanabe@jacses.org

Yuki Sekimoto, Rainforest Action Network (RAN),   
phone: +81-3-6721-0441 Email: yuki.sekimoto@ran.org

Chisato Jono, Greenpeace Japan,
phone: +81-80-6558-4446 Email: chisato.jono@greenpeace.org



声明:三菱UFJ、新方針で森林保護と気候変動対策を約束 しかし問題は山積み (2019/5/17)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が融資・引受を行う際の「環境・社会ポリシーフレームワーク」(注1)の改定を15日に発表したことを受けて、「今回の方針改定は重要なステップだが、気候変動や森林破壊、人権侵害に資金提供しないことを確実にするために実行すべきことはたくさんある」とコメントを発表しました。MUFGは日本最大の金融グループで、世界5位の資産総額を保有する銀行です。

今回の方針改定はNGOからの強い批判(注2)が続く中で発表されました。NGOは、MUFGが東南アジアで熱帯林破壊を加速させている複数の企業への融資・引受額が6番目に大きく、化石燃料全般への融資・引受額が世界で7番目に大きいことを指摘しています。またMUFGは日本のメガバンクの中で、パーム油セクターへの資金提供が最も多く、化石燃料、特に石炭火力発電事業への資金提供も最大です(注3注3′)。

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々、2018年9月、サンフランシスコ

RAN 責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンのコメント

「今回の方針改定は三菱UFJにとって重要なステップであり、日本の金融セクターで先例を作りました。しかし三菱UFJが気候変動や森林破壊、人権侵害に資金提供しないことを確実にするには、実行すべきことはまだたくさんあります。動植物の絶滅危機と地球規模の気候災害が起こっていることは科学的に極めて明らかです。金融機関がこういった問題に資金提供を続けることはもはや容認できません。

この方針により、MUFGは森林への負の影響を緩和することを初めて明確に約束しました。しかし遵守確認が不十分な認証制度に依存しているため、方針が弱体化する可能性があります。 MUFGが新設の石炭火力発電所に資金提供しないとコミットメントをしたことは心強く思いますが、この禁止に対して不明瞭な例外事項が含まれていたり、炭鉱開発全般への資金提供の禁止や、石炭火力発電所や炭鉱事業を行う企業への資金提供を禁止するといった広範なコミットメントが欠如していることに失望しています。

また、今回の新方針によって、MUFGが問題ある企業との取引を停止するかどうかが注目されます。その一つは違法行為や労働酷使で制裁措置を受けているインドネシア大手パーム油企業のインドフードです」(注4)

※参考:「『サステナブルファイナンス目標』の設定と 『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」概要の抜粋(下線はRANにて強調)
1. 概要
(2)「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」の改定
MUFG は、気候変動対策への国際社会の要請や、環境・社会課題に対する様々なステークホルダーの意見、考え方も踏まえ、「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を改定することとしました。改定内容は以下の通りです。
 ⓵本件後は、新設の石炭火力発電所へのファイナンスは、原則として実行しません。結果とし て、石炭火力発電所向けの与信残高は、中長期的には逓減していく見込みです。なお、改定前よりファイナンスの検討を継続している案件については可否を慎重に検討します。
 ②森林、パーム油、鉱業(石炭)の 3 セクターを新たに「ファイナンスに際して特に留意する 事業」に追加します。これらのセクターが環境・社会へ及ぼしうる負の影響を認識し、ファ イナンスを検討する際は、国際的に認められている認証の取得や、取得に係る行動計画を 提出いただくなど、お客さまの環境・社会配慮の実施状況を確認します。

注1)三菱UFJフィナンシャル・グループ「『サステナブルファイナンス目標』の設定と 『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」(2019年5月15日)

注2)RAN「『MUFGユニオン・バンク、気候変動に融資しないで』グローバル気候行動サミットに合わせて」(2018年9月20日)

注3)RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2019」、「森林と金融」データベースより

注4)RAN「プレスリリース: 3メガ融資先 インドネシア食品大手『インドフード』のパーム油部門 労働権侵害でRSPO認証停止」 (2019年3月6日)

英語のリリースはこちら “Japan’s largest bank MUFG adopts new policies to protect forests and the climate, but controversies abound”

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
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