サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘プレスリリース’カテゴリーの記事一覧

スタッフ募集:責任ある金融 シニア・キャンペーナー(日本担当)

RANについて

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、30年以上にわたり調査活動、教育、パートナーシップ、非暴力直接行動、草の根運動、戦略的キャンペーン、コミュニケーションを通じ、企業の力や構造的不正義に挑むことで、森林を保全し、気候を保護し、人権擁護のキャンペーンを展開してきました。RANは、利益最優先の不公正なシステムの影響を直接受けている先住民族や最前線のコミュニティと協力して活動してきました。また、RANは世界中の協力団体と連携し、破壊的な事業を停止し、人権を尊重し、気候変動の原因となる活動を減らす企業方針を採用するよう企業に働きかけています。

レイシャル・ジャスティス(人種的正義)、ダイバーシティ(多様性)、公平性

RANは、公平および公正という価値観を活動に組み込むよう努めています。心その一環として、レイシャル・ジャスティス(人種的正義)と文化的公正性の分析をプログラム活動と組織体制に取り入れています。また、相互信頼、協力、敬意を基本とし、全てのスタッフがサポートされ、大切にされ、自分の声が届くと感じられるような組織文化を育むよう努めています。

RANは、人種、階級、ジェンダー、文化、宗教の多様性を重視し、スタッフや幹部、アクティビストが反抑圧(アンチ・オプレッション)の原則を理解し、受け入れるプログラムを組織内で実施しています。RANの歴史、文化、基本理念についての詳細は、RANのウェブサイトをご覧ください。

写真:環境NGOで邦銀3行などに株主提案(2023年4月)

募集ポジション

RANでは、日本を拠点とし、国内および日本関連のファイナンス・金融キャンペーンを担当する責任ある金融 シニア・キャンペーナーを募集しています。勤務開始は2024年1月以降を想定しています。

この職務は、主にRANの「森林と金融」チームを支える役割を担い、同時にRANの日本チームのスタッフおよび気候変動・エネルギープログラムとも緊密に連携して業務を行います。具体的には、日本の金融セクターに対して、森林破壊、気候変動、人権侵害を助長する産業への支援を停止するよう推進する包括的な企業キャンペーンを展開し、実行します。

具体的な業務には、キャンペーン戦略の立案・実施とコーディネーション、国内外の幅広いパートナー団体との協力、企業方針の分析、企業の意思決定者とのエンゲージメント(対話)などがあります。理想的な候補者は協調性があり好奇心旺盛で論理的思考力を備え、団体内、企業の会議室、街頭デモなど場所を問わず、様々な人々との交流を楽しむことができ、人権、ジャスティス(正義)、環境に深くコミットした人材を求めています。

職務内容

  • 日本国内および日本関連のRANファイナンス・キャンペーンの戦略立案を主導する
  • 外からの圧力をかけるキャンペーン戦略を共同策定し、実施及び管理をする。戦略にはデジタル戦略、コミュニケーション戦略、組織化運動戦略(直接行動など)が含まれる
  • RANのパートナーシップ・ガイドラインに従い、国内外において、草の根や最前線の協力者/団体を含め、戦略的パートナーシップを構築し維持する
  • 金融機関における林業、農業、エネルギーセクター関連の方針やビジネス慣行について分析を行う
  • 関係する地域・国際金融部門の枠組みやイニシアチブについて常に把握しておく
  • 金融セクターの意思決定者を含め、様々なステークホルダーと関係を構築し、維持する
  • キャンペーン戦略の立案およびキャンペーンの具体的な目標・活動の基盤となる調査活動において指示を与えサポートする
  • メディア、RANの支援者や資金提供者、協力団体向けに説得力のあるコミュニケーション資料の作成とレビューを行う
  • RANを代表し、スポークスパーソンとしてメディア対応と講演を行う
  • キャンペーン業務遂行のために契約した委託業者を指示・管理する
  • 国内外のRANスタッフと協力し、包括的かつ協力的なチーム文化の醸成に貢献する

応募資格

  • 環境保護キャンペーン、またはソーシャル・ジャスティス(社会正義)関連のキャンペーン活動で5年以上の経験、またはそれに準ずる経験がある
  • 熱帯林破壊や気候変動・エネルギー問題に強い関心と高い意識を持ち、当該産業における金融部門の役割について実務知識を有するか、強い関心と学習意欲がある
  • 日本語と英語で優れた文章力とコミュニケーションスキルがある
  • 優れた分析力、意思決定力、戦略的ファシリテーション能力、優先順位付け能力がある
  • 優れたプロジェクトマネジメント力と組織運営能力がある
  • 締め切りのある複数の業務に同時に対応し、独立して働く能力がある
  • 気候正義、人権、先住民族の権利に対するコミットメント
  • レイシャル・ジャスティス(人種的正義)と公平性に対するコミットメント、および多様な文化や経歴、志向を持つ個人のニーズと関心事項を認識し、それに対する感受性があること
  • 非暴力直接行動の経験があること、または非暴力直接行動について関心や学習意欲がある
  • チームで効果的に仕事をした実績がある
  • 前職でマネージャー、スーパーバイザーの経験があれば尚可

給与

フルタイム。想定年収は65,000~75,000米ドル(経験や勤務地を考慮、米ドルまたは日本円で支給)

勤務地・勤務形態
日本の金融機関と関わる職務であることから首都圏在住の方(リモートワーク)

世界中でスタッフが勤務していることから、同僚との連携にフレキシブルな時間での勤務が可能な方

福利厚生

土日・祝日休み、有給休暇(4週間、2年後は5週間)、冬季休暇
医療保険など
年金保険料(年金保険料の同額または最大で年収の3%までをRANが負担)
サバティカル休暇(勤続5年毎に12週間の休暇、給料全額支給)

機会均等とアクセス

RANは機会均等を掲げ、すべての人に平等な雇用とボランティアの機会を提供するよう取り組んでいます。採用面接や採用過程で宿泊などの手配が必要な場合は、HR@ran.org までご連絡ください。有色人種その他、歴史的に排除されてきたアイデンティティをお持ちの方からの応募を歓迎します。

応募方法

以下のリンクから、レジュメ(履歴書と職務経歴書)とカバーレターをお送りください。

https://rainforest-action-network.breezy.hr/p/89e3a8a7badb-senior-campaigner-finance-japan

免責事項:この日本語文は英文の翻訳で、採用や詳細は原文である英文に準じます。

参考資料
「RANについて」(日本語)

「RANのミッション」(日本語)

「RANのミッション、ビジョン、バリュー」(英語)

RAN「非暴力方針」(英語)

イベント:PRI in Person 2023公式サイドイベント 「森林破壊リスク産品セクターへの投資の情報開示と持続可能性基準」(2023/9/27)

〜TNFDとNDPE方針、インドネシア版タクソノミーの評価〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、10/4(水)、国連責任投資原則「PRI in Person 2023」公式サイドイベントとして「森林破壊リスク産品セクターへの投資の情報開示と持続可能性基準」をGEF、プランテーションウォッチと共同で開催します。

イベント内容

パーム油や畜牛、チョコレート、紙パルプや木材など、熱帯林における森林破壊につながる原料を使う製品は「森林破壊リスク産品」や「森林リスク産品」と呼ばれます。これらの産品を利用することは、生産地である熱帯地域の森林減少や森林劣化を引き起こし、森林や生物多様性、地域コミュニティに大きな影響を与える可能性があります。これらの問題に対処するために「NDPE(森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)方針」(※)の採用が、リスク産品を扱う事業者だけでなく、金融機関でも進められています。本イベントでは、NDPE方針の概要を解説するとともに、その実施状況の評価を報告します。

特に森林破壊が依然として止まらないインドネシアに焦点を当て、現地政府が推進するサステナブル・ファイナンスやインドネシア版タクソノミー改訂の評価、海外投資家への影響についての報告も行います。加えて、最近発表された自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終版の概要と分析結果を解説し、TNFDと他の森林リスク産品への金融セクターの関与のための国際的な基準やアカウンタビリティの仕組みとの乖離について報告します。
※NDPE:No Deforestation、No Peat、No Exploitationの略

概要

【日時】2023年10月4日(水)8:00~8:45(開場:7時45分)

【開催方法】ハイブリッド

・オンライン:Zoomウェビナー

・対面:ビジョンセンター品川 302号室(東京都港区高輪4‐10-8京急第7ビル3階

【スピーカー】通訳あり

トム・ピケン/RAN 森林と金融キャンペーン・ディレクター
グリタ・アニンダリニ/インドネシア環境法センター (ICEL)プログラム・ディレクター
ショーナ・ホークス/RAN 森林と金融アドバイザー
司会進行:飯沼佐代子/地球・人間環境フォーラム(GEF)

【参加費】無料(要事前登録)

当日の発表資料、NDPE方針説明資料をこちらに掲載しております。

登録方法

会場・オンライン共に事前の申し込みが必要です。https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_uJLffh7UTNWGbJZAdbybFw

お問合せ先

地球・人間環境フォーラム 飯沼 E-mail: event(a)gef.or.jp

【主催】レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、地球・人間環境フォーラム(GEF)、プランテーション・ウオッチ

【協力】熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、ウータン森と生活を考える会

※インドネシア環境法センター (ICEL)の登壇者がレイナルド・センビリン氏からグリタ・アニンダリニ氏に変更になりました(10月3日更新)。

団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
https://japan.ran.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
コミュニケーション:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

共同プレスリリース:日本企業に気候変動対策を求める投資家の圧力、一段と強力に(2023/6/29)

国際環境NGO マーケット・フォース
国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

2023年6月29日(木) : 気候変動関連の株主提案は年々増えており、2023年の株主総会シーズンは日本企業に対して提出されたネットゼロの達成に向けた行動と透明性の向上を求める株主提案の数が過去最多となりました。

先週から本日にかけて実施された三菱商事、日本最大の発電事業者であるJERAの株を共同所有する東京電力ホールディングスと中部電力、メガバンク3行(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ)の株主総会で気候変動に関する株主提案が決議されました。

株主提案を行ったのは環境NGOの気候ネットワーク、マーケット・フォース、 またFoE Japan、レインフォレスト・アクション・ネットワークに所属する個人です。株主提案を通じて、対象企業に対して短期を含めた排出削減目標の設定やさらなる引き上げ、気候関連リスクの管理の改善を求めました。

上記の株主提案の議決結果は、気候変動に関するリスクへの対処に関して課題を抱える企業に対して、引き続き厳しい目が向けられていることを意味します。

三菱商事

「今年の三菱商事の株主総会では、約2兆円(140億米ドル)に相当する投資家の約20%が、我々が提出した株主提案の1つに賛成票を投じました。これは、投資家が三菱商事の気候変動に関する情報開示の進展にまだ満足しておらず、2050年までのネット・ゼロへの実行可能な道筋があると結論づけるには不十分であることを示しています」
福澤恵(マーケット・フォース エネルギー・ファイナンス担当)

「昨年の株主提案以降、三菱商事は情報開示内容を拡充するなど、一定の進展がみられた一方で、気候危機を食い止めるために十分な削減目標などを設定していません。さらに、昨今のエネルギー危機は、化石燃料への依存を深めることは気候変動を悪化させるだけでなく、エネルギー安全保障をも悪化させるということを示しました。提案は否決されましたが、引き続き三菱商事の方針強化を求め対話を継続していきます」
深草 亜悠美 (FoE Japan気候変動・エネルギー担当/事務局次長)

中部電力

「中部電力の2050年に向けたロードマップは、実現性・具体性に欠けています。低効率石炭火力のフェードアウト、高効率のアンモニア混焼化などで目標を達成すると主張していますが、具体的な削減策は示されていません。持株会社であるJERAが、国内外で新規の化石燃料事業に関与し、GXのもとで脱炭素策としてのアンモニア混焼を広げようとしていることも問題です。中部電力およびJERAが2050年ネットゼロ目標を達成するための責任を果たすことを引き続き求めていきます」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

東京電力HD

「東京電力では、2050年CO2排出ゼロを掲げながら、そのロードマップは具体性に欠け、根拠となる情報開示がなされていません。特にグループ会社であるJERAは国内最大の排出事業者であり、昨年の武豊火力に続き、今年、来年は横須賀火力と、次々と対策のとられていない石炭火力発電を新規稼働させる予定で、排出量は増大する見通しですが、その説明責任を果たしていません。私たちの提案は否決されましたが、引き続き情報開示を求めていきます」
桃井貴子 (気候ネットワーク理事・東京事務所長)

MUFG、三井住友FG、みずほFG

「MUFG の株主総会では、木質バイオマス発電は石炭などの化石燃料への融資に比べて相対的に少ないため、重要性(マテリアリティ)が少ないという発言が担当者からありました。続けて『マテリアティが増せば対応を検討する』との発言もあり、これは一歩前進したといえます。メガバンク全体では、木質バイオマス発電問題について少しずつ理解が進んでいますが、排出量の算定と厳格な方針策定には至っていません。今後、石炭火力発電への木質燃料の混焼が増えれば、排出量は確実に増え、石炭火力発電の延命につながります。このままでは脱炭素への適切な移行ができません」
川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)

「みずほの株主のおよそ2割の賛同を得られたことは、同行の化石燃料セクターの投融資方針と削減目標が2050年ネットゼロの公約と整合していないことに対する投資家の強い懸念が表明されたと言えます。また、株主総会開催前の段階でMUFGとSMFGの提案にはそれぞれイタリア最大手のアセット・マネージャーであるANIMAをはじめ、運用資産額1870億ユーロ(MUFG)、2780億ユーロ(SMFG)相当を保有する機関投資家がすでに賛同を表明しています。特に脱炭素へのトランジション(移行)の名の下に、新規のガス開発やLNG設備への支援を継続することは、気候科学に真っ向から矛盾し、グリーンウォッシュであるだけでなく、投資家に容認できない多額の財務リスクをもたらします。リスク軽減のためには、適切な財務およびESGリスク評価を行うとともに、気候科学に整合しない政府政策に依存するのではなく、科学に基づき株主が求めている新規の石油・ガスへの投融資を制限する方針を早急に掲げる必要があります」
渡辺瑛莉 (マーケット・フォース, 日本エネルギー金融キャンペーナー)

「3メガとも、年々ポリシーを改定あるいは強化を進めてきているとは云え、総会で経営陣の説明や質疑応答を聞いていると、気候危機、および気候変動の主要因となっている化石燃料に資金提供することについての危機感にギャップがあると感じざるを得ません。日本政府の方針に従っているのでは、ネットゼロに向かう世界の動きから取り残されてしまいます。銀行に限らず、民間各社が日本の脱炭素対策を牽引するようになってくれることを切に願っています」
鈴木康子(気候ネットワーク プログラム・コーディネーター)

報道機関関係者の皆様へ

気候変動に関する株主提案、2023年も日本は最多更新見込み

2023年、多くの投資家がグローバル企業の気候変動対策の遅れに対して、深刻な懸念を表明しました。化石燃料事業への投融資を続ける金融機関や脱炭素対策に遅れが見られる企業に対して、炭素集約型ビジネスへの関与から低排出セクターへの包括的な移行を求める声は強まる一方です。特に、金融機関の取り組みに対しては厳しい視線が向けられており、今年米国のJPモルガン(35%)やウェルス・ファーゴ(31%)、ゴールドマン・サックス(30%)、バンク・オブ・アメリカ(29%)に対して提出された気候変動対策における移行計画を求める株主提案の賛成比率(かっこ内の数字)は軒並み高水準となりました。2023年、日本のメガバンク3行に対して同時に気候変動に関する株主提案を提出した背景には、国際的な投資家や株主が共有する気候危機への強い危機感と、日本の銀行も早急に1.5℃目標に整合する対策を講じるべきとの考えがあります。

日本では、欧州の機関投資家・年金基金計3社からトヨタ自動車に対して気候変動対策における渉外活動に関する年次報告書を作成することを求める株主提案が提出され、国際的な注目を集めました。加えて、電源開発にも2年連続で仏・アムンディ、英・HSBCアセットマネジメント、豪・ACCR(Australasian Centre for Corporate Responsibility)から気候変動に関する株主提案が提出されています。そのほかの企業に提出された議案も含め、2022年に続き今年も気候変動に関する株主提案は過去最多となる見込みです。

日本と気候変動に関する株主提案の効果

マーケット・フォースは2021年、住友商事に対してパリ協定の目標に沿った事業活動のための事業戦略を記載した計画の策定、及び開示を求める株主提案を提出しました。提案は20%の賛成票を獲得し、その後の石炭火力に関するポリシーの改善につながりました。さらに住友商事は2022年2月にバングラデシュのマタバリ2 石炭火力発電所から撤退することを発表しました。

2020年、気候ネットワークがみずほFGに株主提案を行い、みずほFGは日本の銀行として初めて、2050年までの石炭火力フェーズアウト目標(後に2040年に変更)を設定しました。他の2メガバンクもこの動きに追随しています。

2021年、350.org Japan、RAN、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、株主提案を提出しました。決議後、MUFGは2050年までにポートフォリオ全体でネットゼロを目指すことを発表し、日本の銀行として初めてネットゼロバンキングアライアンスに加盟しました。その後、みずほFG、三井住友FGも追随しています。

2022年、350.org Japan、RAN、気候ネットワーク、マーケット・フォースは、三井住友FGに対して気候変動に関する株主提案を2件提出しました。株主提案の提出後、同社は石炭採掘部門の投融資方針を強化し、新規および既存プロジェクトの拡張と関連するインフラ開発への投融資を制限しました。2023年5月には、同社はEACOP(東アフリカ原油パイプライン)に関与していないことを発表しました。

気候変動対策を求める企業と株主の対話は、これまで上記のような形で株主提案に至りましたが、これらの議案は企業の取り組みの改善に重要な役割を果たしました。今年の株主提案の対象となった企業も、これまでに情報開示の改善を行っており、今年に統合報告書が公開されれば、さらに改善されることが予想されます。

 

Photo credit: 350 Japan

関連情報

株主提案に関するより詳しい情報(投資家向け説明資料など)は以下のページを御覧ください
Asia Shareholder Action

共同プレスリリース「国内外の環境NGOが東証プライム6企業に株主提案 〜メガバンク全3社含む日本企業の気候変動対策に問題提起〜」2023年4月11日

株主提案の内容に関するお問合せ先

□ マーケット・フォース(Market Forces) https://www.marketforces.org.au
担当者:Antony Balmain E-mail: contact[@]marketforces.org.au

□ 国際環境NGO FoE Japan https://www.foejapan.org/
担当者:深草亜悠美 E-mail: fukakusa[@]foejapan.org

□ 気候ネットワーク https://www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

□ レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

プレスリリース:日清食品株主総会でアピール〜日清食品 問題あるパーム油企業との取引停止事例公表、国内外5万人の声が後押し〜(2023/6/28)

日清食品 苦情処理リスト初公開、生産地での問題をRANが指摘

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
ウータン・森と生活を考える会
熱帯林行動ネットワーク・JATAN

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)など3団体の代表者は、本日28日、日清食品ホールディングスの第75期定時株主総会に参加し、同グループ経営陣に、森林破壊や人権侵害、違法農園開発のない「責任あるパーム油調達」の早期実現を求めました。一方、日清食品は総会前に「苦情処理(グリーバンス)リスト」を初めて公開し、環境・社会面で問題視されてきたパーム油企業との取引停止などの対応状況を公表しました。RANは株主総会に合わせて約5万筆の署名を提出。今回の日清食品の是正措置は、国内外の多くの消費者の声が後押しした形となりました。

 

総会開催前には、RAN、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワークのスタッフとボランティアが、会場のホテルニューオータニ大阪前で「日清さん、問題あるパーム油はストップ Do It Now! 」と書かれたバナーを掲げ、日清食品が「持続可能なパーム油調達100%」の目標年度としている2030年(注1)を待つことなく、熱帯林保護と生態系保護、人権尊重における問題に早急に取り組む必要性を参加株主らに訴えました。

RANはこれまでインドネシアでの現地調査を実施し、スマトラ島の野生生物保護区で生産された違法パーム油などの事例を指摘してきました(注2)。日清食品は総会前の24日に「持続可能な調達」を一部更新し、ウェブサイトで「苦情処理リスト」を公開しました。同リストでは、RANの指摘に対処する形で該当農園との取引を停止していたことが公表されました(注3)。一方「持続可能なパーム油調達100%目標年」については「2030年度まで」に据え置かれました。RANらNGOは総会で、2024年末から適用される欧州連合(EU)「森林破壊防止法」(注4)の規制に言及し、目標年度の前倒しの必要性について質問しましたが明確な回答は得られませんでした。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は、「日清食品が苦情処理リストを公開したことは、問題あるパーム油をサプライチェーンから確実に排除する上で、一歩前進したといえます。日清食品の違法パーム油や森林破壊に関与した農園との取引停止措置は、パーム油サプライチェーン(供給網)において、問題が発覚した場合の是正措置の実行と、農園までのトレーサビリティ確保の必要性を示す格好の事例となりました」と指摘しました。

続けて「一方でNGOの調査が示すように、生産地では森林破壊と人権侵害が未だ報告されています。責任あるパーム油生産には『森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ』(NDPE)という国際基準が欠かせません。日清食品グループが、NDPE方針を企業グループ全体で遵守する供給業者からのパーム油だけを調達するには、2030年を待たずに野心的な目標年が期待されます」と強調しました。

今年3月、RANはオンライン署名「問題あるパーム油はストップ Do It Now!」を開始し、日清食品に「持続可能なパーム油調達比率100%」目標の大幅な前倒しを求めてきました(注5)英語でも同様の署名を展開し、株主総会前に48,409筆(日本語約13,432筆、英語版 約34,977筆)の署名を同社に提出しました。高まる消費者の懸念と期待の声が、苦情処理リストの公開と問題企業との取引停止といった日清食品の一定の前進を後押しした形となりました。

RANは2020年から「キープ・フォレスト・スタンディング:森と森の民の人権を守ろう」キャンペーンを展開し、日清食品は対象消費財企業10社の内の1社です。2022年に実施した「森林&人権方針ランキング」では20点満点中4点で、他2社とともに最下位グループの「不可」と評価されました(注6)。方針改善のためには、森林破壊リスクが高い「森林リスク産品」全品(パーム油だけでなく)の調達方針策定と、森林リスク産品供給業者が遵守すべきNDPE項目の明記および供給業者のNDPE採用義務化(注7)、といった強化などが早急に求められます。

写真はこちらからダウンロードいただけます(©️RAN / Yasunori Matsui)
https://www.flickr.com/photos/rainforestactionnetwork/albums/72177720309404964

注1)日清食品ホールディングス「地球のために、未来のために。環境戦略『EARTH FOOD CHALLENGE 2030』始動!」、2020年6月9日(2023年6月閲覧)
https://www.nissin.com/jp/news/8690

注2)RANプレスリリース「新調査報告書『炭素爆弾スキャンダル』発表 〜日清食品など大手消費財企業、インドネシア違法パーム油との関連性が継続〜」 2022年9月22日
https://japan.ran.org/?p=2062

RANは2019年と2022年にインドネシアで現地調査を実施。スマトラ島の野生生物保護区内、とりわけ炭素を多く含む泥炭地でパーム油が違法生産されている実態を突き止めた。さらに、違法農園の追跡調査と大手消費財企業10社のサプライチェーン調査を実施し、日清食品やプロクター&ギャンブル(P&G)などの調達先が同保護区内からの違法パーム油を購入していたことが判明していた。日清食品が発表した「苦情処理リスト」では、「事例2」(アチェ州の女性実業家 Ibu Nasti氏が管理する違法農園)との取引を2022年10月に停止していたことが記載されていた。

注3)日清食品ホールディングス「持続可能な調達:パーム油の調達状況」(2023年6月閲覧)
https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/#procurement_materials

”NISSIN FOODS Group Palm Grievance Tracker” (「苦情処理リスト」、英語)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/pdf/NISSIN%20FOODS%20Group-Palm-Oil-Grievance-Tracker.pdf

注4)EU「森林破壊防止法」:EU域内で販売される製品は生産地までのトレーサビリティの確認と、森林破壊等との関連有無を確認する「デューデリジェンス」の公表が義務化される。森林破壊と人権侵害の有無のリスク評価や確認も含め、グローバル企業は同法への対応が迫られる。

注5)RANプレスリリース:日清食品に新署名開始「問題あるパーム油はストップ Do It Now!」2023年3月29日
https://japan.ran.org/?p=2118

英語版オンライン署名「NISSIN’S TOP RAMEN COMES DEAD LAST」(34,977筆)
https://act.ran.org/page/42473/petition/1?locale=en-US

注6)RANプレスリリース「新報告書『森林&人権方針ランキング2022』発表〜日清食品、三菱UFJは低評価 〜」2022年6月15日
https://japan.ran.org/?p=2011

注7) 日清食品ホールディングスの「日清食品グループ持続可能な調達方針」におけるNDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation)に関する記述では、調達先に対してのNDPE遵守は求めていない。(2023年6月閲覧)
https://www.nissin.com/jp/sustainability/management/policy/basic-policy/

 

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)
米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGO。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より日本代表部を設置しています。
japan.ran.org

ウータン・森と生活を考える会
「森を守りたい」と願う熱い心をもった人々が集まった市民団体。オランウータンなど数多くの 生きものが棲み、先住民にとっても生きる糧を与えてくれるインドネシア・ボルネオ島の自然豊かな熱帯林を、国内外のNGOや現地の村人と共に減少を食い止め回復し保全する活動や、森林減少の要因となっている商品の消費者としての私たちの日本での生活を考える活動を35年以上、市民の力ですすめてきました。hutangroup.org

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
1986年にマレーシアで開催された国際会議において、熱帯林保護のために活動する世界各国のNGOの要請を受け、日本の市民と団体によって1987年に設立。熱帯林をはじめとした世界の森林を保全し、環境面、社会面において健全な状態にすることを目指しています。
jatan.org

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-4F
川上豊幸 Email: toyo@ran.org
広報:関本幸 Email: yuki.sekimoto@ran.org

—————–

*追記:日清食品のURL変更に伴い、以下を変更しました(11月16日)。

注3)日清食品ホールディングス「持続可能な調達:パーム油の調達状況」(2023年6月閲覧)

旧)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/#procurement_materials
新)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/#procurement_materials

”NISSIN FOODS Group Palm Grievance Tracker” (「苦情処理リスト」、英語)

旧)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/business/procurement/pdf/PalmGrievanceTracker.pdf
新)https://www.nissin.com/jp/sustainability/environment/procurement/pdf/NISSIN%20FOODS%20Group-Palm-Oil-Grievance-Tracker.pdf

プレスリリース:「化石燃料ファイナンス報告書2023」発表〜日本の3メガバンク、LNGと北極圏石油ガス、化石燃料全体と拡大への資金提供でワースト10入り(2023/4/13)

化石燃料への資金の流れを追跡し、気候破壊を引き起こす世界最悪の企業を支援する銀行による莫大な支援を詳述

米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)をはじめとするNGOは、12日(米国東海岸時間)、新報告書『化石燃料ファイナンス報告書2023〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』(第14版、注)を発表しました。本報告書は、化石燃料への銀行業務について最も包括的分析であり、化石燃料業界への資金提供状況を吟味することで、銀行による気候に関する公約の実態を明らかにしています。

『化石燃料ファイナンス報告書2023』概要

2019年以来初めて、カナダの銀行が米国の銀行 JPモルガンチェースを抜いて、化石燃料への年間での資金提供者の第1位となりました。カナダロイヤル銀行 (RBC) は、2022 年にタールサンド部門に48億ドル、シェールガス部門に74億ドルを含む 421億ドルを化石燃料プロジェクトに投じました。カナダの銀行が化石燃料の最後の手段となりつつあり、パリ協定発効以降、化石燃料企業に8,620億ドルを提供しています。RBC はコースタル・ガスリンク(Coastal GasLink)シェールガス向けパイプラインのような拡張事業に資金提供を続けています。このプロジェクトでは人権や先住民族の主権を侵害しており、先住民族リーダーの同意なしに進められています。

化石燃料への資金提供において、全体として米国の銀行が優位に立ち、2022年には化石燃料への融資全体の28%を占めていることを本報告書は示しています。シティウェルズ・ファーゴバンク・オブ・アメリカは、2016 年以来、依然として化石燃料への資金提供者の上位5行に入っています。一方、2022年の化石燃料企業全般への資金提供額で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)のメガバンク3行は、ワースト10位に入りました。

欧州とウクライナの人々は、ロシアの残虐行為への資金提供をやめるために再生可能エネルギーへの移行を求めましたが、化石燃料会社は拡大を倍増させ、気候への取り組みを弱めました。液化天然ガス(LNG)を拡大している上位 30 社は危機を利用して、2021年に比べて2022年に銀行から50% 近く多くの資金を確保しました。ただし、ほとんどのエネルギー専門家が、ヨーロッパでのLNG 拡大計画は不要であり、新しいプロジェクトがこの化石燃料への供給過剰と長期的な依存に寄与してしまうことで合意しています。

報告書によると、これまでのところ、世界の銀行によるネットゼロの約束は何のメリットもありません。報告書で示した60銀行のうち49行がネットゼロのコミットメントを行いましたが、ほとんどの銀行が化石燃料拡大のための融資を除外する厳格な方針を伴っていません。実際の方針には化石燃料の顧客への融資を銀行が継続できるようにする多くの抜け穴が含まれています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が 2023年3月の報告書で確認したように、今日生きている何百万人もの人々や、今後の数え切れない世代に渡る容認できない損害を回避する機会を人類に与えるには、化石燃料の拡大を止めなければならず、すべての部門で化石燃料の利用を急激に低下させなければなりません。IPCCは、気温を1.5度未満に保ち、安全で住みやすく、持続可能な未来を築くチャンスをもたらす窓が急速に閉ざされつつあると主張しています。

化石燃料部門別の傾向

●拡大企業: 本報告書で取り上げた60行の銀行は2022年に、TCエナジー、トータル・エナジー、ヴェンチャー・グローバル、コノコ・フィリップス、サウジ・アラムコを含めて、化石燃料を拡大している上位100社に1500億ドルを投入した。

●液化天然ガス(LNG): 2022 年の液化天然ガス (LNG)への資金提供額で上位の銀行は、みずほFG、モルガンスタンレー、JPモルガンチェース、ING、シティ、SMBCグループ。LNG に対する全体的な資金提供は、2021年の152 億ドルから2022年の227億ドルへと50%近く増加。

●オイルサンド(タールサンド): 上位のオイルサンド企業は、2022 年に210億ドルの資金を受け取りました。これらの資金の89%を提供したカナダの大手銀行が主導。TDRBCモントリオール銀行が上位にある。

●北極圏の石油ガス: 中国の銀行であるICBC、中国農業銀行、中国建設銀行が北極圏の石油ガス事業への融資を主導し、2022年にこのセクターの上位企業に総額29億ドルを投じた。米国の銀行を含む26の銀行がいまだ北極圏の石油ガスに資金提供。JPモルガンチェースシティバンク・オブ・アメリカ

●アマゾンの石油ガス: スペインの銀行サンタンデールは、アマゾンの生態系から資源を取得する企業への資金提供をリードし、米国の銀行シティが僅差で続く。2022年の資金調達総額は7億6,900 万ドル

●シェールオイルガス: フラッキングを行う企業への融資は2022年に合計670億ドルに達しました。これは、2021年に報告された上位のフラッキング企業の資金提供額を8%上回る。フラッキングによる極端なメタン排出量を考えると、この増加は特に気がかり。RBCJPモルガンチェースは、2022年とパリ協定発効以降で、フラッキングでの石油とガスの最大の資金提供者である。

●海洋の石油ガス: 欧州の銀行のBNPパリバクレディ・アグリコル、日本の銀行のSMBCグループは、2022 年の海洋の石油ガスのワースト資金提供リストの上位。2022 年の資金調達額は合計340億ドル

●石炭採掘: 世界最大の 30 社の炭鉱会社に提供された130 億ドルの資金提供のうち、87%は中国にある銀行から提供されたもので、中信銀行、中国光大銀行、興業銀行が率いていた。

●石炭火力発電: 石炭火力発電の世界上位30社への融資のうち、97%は中国の銀行から提供されたものです。石炭火力発電能力の拡大を計画しているこれらの企業は、2022年にプロファイルされた銀行から295億ドルを受け取った。

日本の3メガバンクの動向

上述の2022年の化石燃料企業全般への資金提供額のみならず、分野別では、LNGと北極圏石油ガス分野、化石燃料事業拡大企業への2022年の資金提供額でも、MUFGみずほFGSMBCグループの全3行が、ワースト10位に入りました。特に、LNG上位30社への2022年の資金提供で、みずほFGがモルガン・スタンレーに代わり初めて1位となり、2016年から2022年の資金提供累計総額でも、LNG分野で3メガバンクがワースト10位入りしました。化石燃料企業全体への資金提供では、MUFGが6位、みずほFGが8位で、SMBCグループは16位となりました。

 

以下は、化石燃料企業への資金提供額の推移を示しています。2016年のパリ協定発効時よりも資金提供額は増加した状況で維持されており、大きな増加傾向は見られませんが、大きな減少も確認できていません。

賛同団体からのコメント

気候ネットワーク プログラム・コーディネーター 鈴木康子

「気候危機を回避するためには再エネの主力化と脱炭素化を加速させる必要があることが明らかであるにも関わらず、本年の報告書でも、日本の3メガバンクを含む世界の大手60行がいまだに化石燃料事業に多額の支援をしていることが明らかになっています。3メガバンクともネットゼロ目標を掲げ、プログレスレポートの開示などを行っていますが、その一方で化石燃料事業への支援を継続していては、本当の気候危機対策は進みません。特にMUFGはアジアの化石燃料事業への金融支援が最大であると指摘されている上、日本政府が国内外、特にアジア諸国に向けて広げようとしているグリーントランスフォーメーション(GX)促進に積極的な姿勢を示していることが懸念されます」

マーケット・フォース、日本エネルギーファイナンスキャンペーナー、渡辺瑛莉

「日本のメガバンク3行が、2050年までのネットゼロ排出を達成するという宣言に反し、依然として化石燃料を拡大する企業への融資・引受を継続していることは容認できません。メガバンク3行は2022年において化石燃料への資金提供で世界トップ10に名を連ねており、メガバンクの同セクターへのエクスポージャーに伴う財務リスクについて、投資家の間で懸念が高まっています。3行とも新たな油田やガス田、LNGプロジェクトへの資金提供を制限する方針はなく、これは、2050年ネットゼロ排出達成のため、今後新規の石油やガスの開発は必要ないとする国際エネルギー機関の結論と明らかに矛盾しています。地球温暖化を1.5度に抑えるために残されている時間は僅かであり、メガバンク3行は、化石燃料セクターへの資金提供を減らすための方針と目標を早急に強化することが必要です。銀行は気候危機を解決するため、さらにはより良い環境を築き上げるために資金提供を行うべきです」

国際環境NGO 350.org Japanチームリーダー代行、伊与田昌慶

「この最新レポートは、パリ協定への約束とは裏腹に大手金融機関が化石燃料に対する巨額の投融資を継続している事実の告発状です。三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループなどの大手金融機関が関与を続ける化石燃料産業は、未曾有の気候危機に人々が傷つき倒れる中、過去最高水準の利益をあげました。

G7広島サミットを控え、日本の官民が気候危機を深刻化させる「化石燃料中毒」から脱却するか否かが注目されています。昨年発表された350.org Japan調査によって、日本の主な金融機関は、パリ協定採択後、再エネ関連企業への融資引受額の19倍もの資金を化石燃料関連企業に提供してきたことも明らかになっています。最新のIPCC第6次評価報告書に学び、化石燃料やアンモニア・水素混焼、原子力、CCUS等といったまやかしではなく、最も有力な再生可能エネルギーにこそ、その資金を投じるべきです」

 

注)日本語要約版

化石燃料の金融データ、方針スコア、最前線の現場からのストーリーを含む完全なデータセット(英語)は、bankingonclimatechaos.org からダウンロード可能。世界の主要民間銀行60行が化石燃料部門に行った資金提供を示した包括的な報告書。石炭、石油、ガス部門の約3,210社(親会社2,000社)に対する2016年〜2022年の7年間の融資・引受を分析の対象としている。

「化石燃料ファイナンス2023〜気候カオスをもたらす銀行業務〜」は、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、バンク・トラック、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェインジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラ・クラブ、ウルゲバルトによって執筆されている。世界70カ国以上の550を超える組織がこの報告書を支持し、気候破壊への資金提供を停止するよう銀行に呼びかけている。

 

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
川上豊幸  Email: toyo[@]ran.org

※更新
『化石燃料ファイナンス報告書2023〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』日本語要約版を追加しました(2023年9月28日)

 

共同プレスリリース:国内外の環境NGOが東証プライム6企業に株主提案 〜メガバンク全3社含む日本企業の気候変動対策に問題提起〜(2023/4/11)

国際環境NGO マーケット・フォース
国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

4月11日、国内外の環境NGOとその代表者を含む個人株主は金融、商社、電力の3業界の6企業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱商事、日本最大の発電会社・JERAの経営に大きく関与する東京電力ホールディングスと中部電力)に対し、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出したことを発表しました。

昨年の株主総会シーズンでは、日本企業も過去最多の気候変動に関する株主提案に直面しました。こうした株主提案は我々環境NGOに限らず、国外の機関投資家や地方自治体からも提案されています。多様なステークホルダーが高炭素排出企業による気候変動対策の遅れに対して危機意識を共有し、行動に移しています。我々が提出した議案も機関投資家に幅広く支持されました。

今年6企業に対して提出された株主提案はパリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画、あるいは、2050年炭素排出実質ゼロ(ネットゼロ)への移行に向けた取り組みに関する情報開示を企業に求めるものです。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3月に公表した第6次統合報告書によれば、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2035年までに19年比で60%減らす必要があります。しかし気候変動対策の強化がなければ、2100年までに約3.2℃の上昇が見込まれており、現状の各国の削減努力は極めて不十分です。この報告書の公表に合わせ、国連のグテーレス事務総長は「気候時限爆弾が刻々と時を刻んでいる」と危機感を示し、先進国は2035年までに電力部門における温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを求めています。

日本が議長国を務めるG7広島サミットを前に、日本が化石燃料(LNG等)投資の必要性を認めるよう求めたり、発電部門で化石燃料の利用継続を前提とした技術導入を推進していることについて、G7加盟国の反発を招いたとの報道もあります。米国や英国を含む加盟国の政府関係者は、札幌で開催される気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケ草案に疑問を呈し、気候変動対策を加速させる取り組みにあまり重点が置かれていないと指摘しています。

民間企業の気候変動対策は日本政府のこうした方針に大きく影響を受けるとはいえ、国際社会において事業を展開し、信頼を得るためには業界あるいは企業独自の気候変動対策が求められています。とりわけ、今回株主提案の対象となった企業(メガバンク3社や三菱商事)や対象企業ら(東京電力HDと中部電力傘下のJERAを含む)は国内外で化石燃料事業への投融資および関与を継続しています。特に、LNG火力のパイプライン開発や発電所の新設、既存の石炭火力発電所の稼働を延命させるアンモニア・水素の混焼技術の推進は大きな問題です。

提出先企業が抱える問題の要点(業界ごと)

■メガバンク

「メガバンクの気候関連方針、目標、移行計画は、国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオや、メガバンクも署名しているネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)のような世界的スタンダード設定を行うイニシアチブにも沿っておらず、2050年までに排出量をネットゼロにする道筋を示すものとして信頼性を欠いています。とりわけ新規の石油・ガス開発事業への支援を制限する方針を持つ海外の競合他社と比べても、大きく遅れを取っています。自らの公約を果たすためにも、ネットゼロ長期目標と整合性ある短期・中期目標および投融資方針の設定に向けた行動を急ぐべきです」
(マーケット・フォース, 日本・エネルギーファイナンスキャンペーン担当, 渡辺瑛莉)

「銀行は、日本政府のGX基本方針に準じ、エネルギーの安定供給を目的とした高効率火力へのアンモニア・水素混焼への投資を継続的に行おうとしていますが、国際社会はより直接的な削減に寄与する再生可能エネルギーに関連開発への投資に重きをおいています。日本のメガバンクも、持続可能な、真に「グリーン」なエネルギーシステムの構築を目指すべきです」
(気候ネットワーク, プログラム・コーディネーター, 鈴木康子)

「気候変動への対応には土地利用セクターも重要です。NZBAガイドラインで炭素集約分野とされる農業分野で排出量や集約度の削減目標の設定が求められていますが、日本のメガバンクでは行っていません。また木質バイオマス発電所のGHG排出係数は、燃焼時に石炭火力発電所より高いにもかかわらず、木質バイオマス燃料の燃焼からのCO2排出量を報告していないので、適切な情報開示が行われておらず、電力部門での気温上昇を1.5度以内に抑える移行実現を困難にしてしまいます」
(レインフォレスト・アクション・ネットワーク, 日本代表, 川上豊幸)

■東京電力・中部電力

「東京電力、中部電力、及び両社の合弁企業で高炭素排出企業であるJERAは、新規の化石燃料事業に投資をしながらネットゼロ企業と名乗ることは許されません。これら企業は、資本配分を気温上昇を1.5度以下抑える道筋と整合させるなど、移行計画の信頼性を示す必要があります」
(マーケット・フォース, エネルギーファイナンスアナリスト, 鈴木幸子)

日本最大の発電事業者であるJERAは『JERAゼロエミッション2050』を掲げ、低炭素社会を目指すと表明しています。現在社会においてサステナブルなエネルギーへの切り替えは簡単ではないとの意見もありますが、タイムリミットが刻々と近づく中、欧米では同業会社が着々とゼロエミッションへの取り組みを進めています。既に「いかに実現させるか」が焦点であり、既存の火力発電設備にアンモニアや水素を混焼させることで排出削減を狙うという日本のやり方は、科学的にも経済的に疑問視されています。JERAおよび東電HD・中電がこうした戦略を続けるのであれば、その効果の真偽を判断するための情報を正確かつタイムリーに公開すべきでしょう」
(気候ネットワーク, プログラム・コーディネーター, 鈴木康子)

■三菱商事

三菱商事が現在示している気候変動に関する目標や情報開示は、同社が2050年までにネットゼロ目標を達成するための実行可能な道筋があると投資家が結論づけるには全く不十分です。例えば三菱商事のScope3排出量(3億8100万トン)は、英国、フランス各国の化石燃料の年間排出量を上回っています。だからこそ、Scope3排出量目標を設定することで同社がネットゼロ約束をどのように達成するのか、投資家が確認できるようにする必要があるのです」
(マーケット・フォース, アジア・エネルギーファイナンスキャンペーン担当,  福澤恵)

今回、株主提案を提出先となった企業は、座礁資産リスク(環境や市場、規制の変化で企業が将来的に減損処理する資産を抱えること)や訴訟リスク、ブランド価値の毀損など将来の企業価値に関する重大なリスクを抱えています。また、こうした企業が誤った戦略を取り続けると気候変動対策の妨げともなりかねません。

企業が我々の株主提案を真摯に受け止め、投資家の方々の後押しを受けて気候変動対策を強化するとともに情報開示を進めることが、企業価値の向上に繋がり、ひいては気候危機を防ぐ一助となるとして、ご理解を得られることを期待しています。

メガバンク3社への株主提案
団体としては、NGOマーケット・フォース(豪)、気候ネットワーク(日)、個人としては、川上豊幸(米NGO RAN日本代表)が共同提案に参加。

三菱商事への株主提案
法人としては、マーケット・フォース、個人としては、深草 亜悠美 (FoE Japan 気候変動・エネルギー担当) が共同提案に参加。

東京電力ホールディングスおよび中部電力への株主提案
マーケット・フォース、気候ネットワークが共同で提案。

提案文書

三菱UFJフィナンシャル・グループへの提案文書(PDF

みずほフィナンシャルグループへの提案文書(PDF

三井住友フィナンシャルグループへの提案文書(PDF

三菱商事への株主提案(PDF

東京電力ホールディングスと中部電力への株主提案(PDF

株主提案に関する投資家向け説明資料

3メガバンク 投資家向け説明資料(PDF

三菱商事 投資家向け説明資料(PDF

東京電力ホールディングスと中部電力 投資家むけ説明資料(PDF

※各社への提案書および投資家向け説明資料は特設サイトからもダウンロードいただけます。

株主提案に関する特設サイト

Asia Shareholder Action: https://shareholderaction.asia/ja/

連絡先

マーケット・フォース(Market Forces) https://www.marketforces.org.au
担当者:鈴木幸子 E-mail: sachiko.suzuki[@]marketforces.org.au
担当者:福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa[@]marketforces.org.au

国際環境NGO FoE Japan https://www.foejapan.org/
担当者:深草亜悠美 E-mail: fukakusa[@]foejapan.org

気候ネットワーク https://www.kikonet.org
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:川上豊幸 E-mail: toyo[@]ran.org