サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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NGO共同プレスリリース:三菱UFJ株主総会を前に世界同時アクション実施(2021/6/23)

〜気候変動を悪化させる投融資の中止を求め〜

2021年6月23日
国際環境NGO 350.org Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
Oil Change International
Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)
BankTrack

東京ー6月17日〜22日まで、化石燃料部門や森林破壊など気候危機への資金提供でアジア最大の銀行である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して、化石燃料、森林破壊や人権侵害への支援をやめるように求める世界一斉アクションが、東京のMUFG本店、およびマニラ、ジャカルタ、ニューヨーク、アムステルダム、バルセロナ、ブラジルなど各国のグローバル拠点で行われました。アクションはMUFG年次株主総会の1週間前に行われました。株主総会では、同行に対する史上初の気候変動株主提案に対して、投資家が投票を行います。

活動家たちは、MUFGがパリ気候協定の採択以降、アジアで最大の化石燃料への資金提供者であり、世界中で石炭、石油、ガスの拡大に資金を提供し続けていると訴えました。MUFGが関与するプロジェクトとして特に注目を集めたのは、物議を醸しているライン3タールサンドパイプライン東アフリカ原油パイプライン(EACOP)、およびアジアにおける石炭火力発電事業でした。活動家たちはまた、MUFGとインドネシアの子会社であるバンクダナモンが、同国において熱帯林の破壊、石炭採掘、人権侵害に資金提供を行なっていると非難しました。

オフラインのアクションに加え、SNS上でのアクションも行われ「#気候変動への支援をやめてください」「#EndFossilFinance」「#DefundDeforestation」などのハッシュタグとともにツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどで投稿が行われました。ニューヨーク市では、森林と人権に対するより強化された行動を要求する約20,000筆の署名が提出されました。また、MUFGに対し、30を超える国・地域の143団体は、化石燃料への投融資のフェーズアウト(段階的撤退)などを求める署名を提出しました。

アクションの写真やビデオはこちらからご覧いただけます。(日付、撮影場所、撮影者の名前を記載)

各国参加者からのコメント:

<東京>

350 Japanボランティアによるローカルグループで、石炭火力発電所の問題に特化したキャンペーンを展開する、350 New Enerationの山崎鮎美は「残念ながら日本の銀行が、アジアや世界レベルで見ても、化石燃料産業への支援に大きく加担してしまっていることは、日本では積極的に情報をとりにいかない限り、その恐ろしい事実を感じることができません。MUFGさんの公式サイトやSNSはクリーンなイメージで、一見、気候危機と何も関係がないように見えます。だからこそ、私たちはずっと声を上げ続けなければいけないと思います。#気候変動への支援をやめてください」と訴えました。

<サンフランシスコ、ニューヨーク>

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)のハナ・ハイネケンは「MUFGは、熱帯林や泥炭地の破壊、ライン3パイプラインのような化石燃料の拡張プロジェクトに対して無謀な資金提供を続けながら、漠然とした2050年ネットゼロを公約することによって、気候破壊的な資金提供をグリーンウォッシュしようとしています。私たちはもうこんなことは懲り懲りだと伝えるために、ここにやってきました。真の気候変動対策は今すぐ始める必要があります」と訴えました。

<マニラ>

Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)のコーディネーターのリディ・ナクピルは「MUFGの環境ポリシーの例外規定、特にCCUS、混焼などの技術を用いる石炭火力へのファイナンスに対して、私たちは警鐘を鳴らします。これらの技術を装備した場合でも、石炭火力発電所からの温室効果ガス排出量は、人々や地球が許容できないレベルに達します。株主総会を控えた今、気候危機の緊急性に鑑みて、MUFGに例外なく石炭火力へのファイナンスを停止し、アジアにおけるガスおよび石油プロジェクトへの関与を段階的に廃止するよう要請します」とコメントしました。

Asian Energy Networkのコーディネーターであるスザンヌ・タグルは、「MUFGは、アジアだけでなく世界中で、化石燃料プロジェクトのトップの資金提供者であり続けています。これが、アジアの「ダーティ・カンパニー」の1つとして特定した理由です。MUFGの政策は、パリ協定の目標を達成するために必要な野心と緊急性を欠いています」とコメントしました。

<ジャカルタ> 

インドネシアの若者コミュニティであるFossil Free Universitas Indonesiaに所属する大学生のナイファ・ウズラは、「私たちはNoCoal Japanと連帯し、MUFGが地球と私たちの世代の未来を破壊している石炭とパーム油への資金提供を終了することを求めています。汚染企業への資金の流れを遮断することで、私たちの国および世界の気候災害を悪化させるプロジェクトを阻止できることを願っています」と述べました。

MUFGとインドネシア子会社のバンクダナモン、インドネシア金融庁(OJK)に対する請願を始めたTuKインドネシアの事務局長エディ・ストリスノは、「MUFGがインドネシアにダブル・スタンダードを適用し、同社の子会社が世界の他の地域よりも低い基準を用いて、気候を破壊する企業を支援することを許可していることは恥ずべきことです。投資家は株主総会で、『MUFGの長期的なコミットメントは、熱帯林の破壊、森林火災、人権侵害への資金提供を停止するための早急な対策とは代替できない』という明確なメッセージを送るべきです」とコメントしました。

<アムステルダム、バルセロナ>

アムステルダムでの行動に参加したBanktrackヘンリケ・ブティジンは次のように述べています。「MUFGのネットゼロの発表と責任銀行原則へのコミットメントは、銀行が新しい化石燃料プロジェクトや東アフリカ原油パイプライン(EACOP)のような人権に深刻な影響を与えるプロジェクトを除外しない限り、空虚な約束のままです。EACOPのパイプラインは、地域社会に広範な悪影響を及ぼし、野生生物や水源を脅かし、新たな炭素排出源となるでしょう。だからこそ、MUFGにEACOPへの融資を公に除外するよう呼びかけているのです。」

本件に関するお問い合わせ

350.org Japan  担当:渡辺瑛莉  japan[@]350.org

RAN  担当: 関本幸 yuki.sekimoto[@]ran.org

プレスリリース『森林と金融』メガバンク等の森林方針の評価を発表(2021/6/22)

〜世界のトップ50銀行・投資機関、不十分な方針と多額の投融資で森林破壊を加速〜
三菱UFJは高評価も方針適用が限定的、GPIFは低評価(7月9日更新)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)他7団体は、6月8日に『森林と金融』データベース(注1)のウェブサイトをリニューアルし、世界最大手54金融機関(銀行と投資機関)の森林関連方針を新たに評価・分析した結果、総じて方針が不十分であると指摘しました。

本データベースを用いた分析の結果、対象金融機関による森林をリスクにさらす産品(以下、森林リスク産品)への多額の金融サービスが明らかになり、不十分な方針のもとで森林リスク産品への多額の投融資が行われ、森林破壊を加速させていると結論づけました。

対象となった金融機関には日本のメガバンク3行、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)なども含まれます。メガバンクの方針評価は平均(2.4ポイント)以上だった一方、GPIFの方針は0.6ポイントと低評価でした。

1位 ABNアムロ(7.1ポイント)
2位 ラボバンク(6.8ポイント)
3位 ノルウェー政府年金基金(6.5)
7位 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(5.4ポイント)
13位 みずほフィナンシャルグループ(3.9ポイント)
16位 三井住友フィナンシャルグループ(3.3ポイント)
24位 野村グループ(2.6ポイント)
30位 三井住友トラスト・グループ(1.9ポイント)
39位 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)(0.6ポイント)

【概要】

『森林と金融』は、東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカにおける紙パルプやパーム油など森林リスク産品への資金流入を包括的に分析したオンラインデータベースです。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年、部門別に検索が可能です。今回の調査対象となった54金融機関は、森林リスク産品セクターの企業を投融資先とする銀行および投資機関で、銀行には日本のメガバンク3行、バンクオブアメリカ、中国工商銀行(ICBC)など、投資機関には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、ブラックロック、バンガードなどが含まれます。

今回の調査では、森林リスク産品セクターのサプライチェーンに直接関わり、その事業が東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカ(コンゴ盆地含む)の天然熱帯林に影響を与える可能性がある企業200社以上に対して行われた金融サービス を分析しています。

●対象事業地域:世界三大熱帯林地域である東南アジア、ラテンアメリカ(アマゾン)、中央・西アフリカ(コンゴ盆地)
●対象産品:牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材
●対象期間:融資・引受は2016年から2020年4月、債券・株式保有は2021年4月時点

【主な分析結果】

方針評価:各金融機関の森林関連方針を環境・社会・ガバナンス(ESG)の3分野35項目の基準で評価した結果、総じて低評価で、10ポイント満点で平均2.4 ポイントだった(注2)。上記6産品セクターへの投融資の大半は、顧客企業の基準の検証はおろか、ESGの基本的な書類確認も行われていないことが判明した。
金融サービス:対象金融機関の金融サービスの合計を調査・分析。その結果、森林リスク産品への融資・引受額はパリ協定締結以降の2016年から2020年4月で1,280億米ドル、株式・債券の保有額は2021年4月時点で280億米ドルであることがわかった。
●メガバンクの方針がこの数年で改善した一方(注3)、野村グループ、三井住友トラスト・グループ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の方針は低いままである。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「邦銀の森林セクターに関する方針が毎年改善されていることは評価できます。特に、みずほとMUFGが国際基準であるNDPE基準を方針に盛り込んだことは重要です。しかし実際に、方針が投融資先企業の現地の事業で遵守されているかどうかを確認する必要があります。それがない限り、方針の効果は限定的です。
一方、MUFGは方針で高評価を得ながらも、インドネシアの子会社であるバンクダナモンにはMUFGの方針は適用されていません。バンクダナモンは問題あるパーム油大手企業に資金を提供しているため、大きな抜け穴となっています。方針が改善されながらも、森林や泥炭地の破壊、さらに人権侵害に関わりのある企業との取引が継続しています。今後、方針の実施状況をモニタリングしていく必要があります」と指摘しました(注4)

今回の調査では、森林リスク産品企業への投資額が372億米ドル(2020年4月時点)から453億米ドル(2021年4月)に増加し、新型コロナウイルスの世界的流行と同時期に、投資機関が森林破壊への投資を増やしていたことも明らかになりました。2020 年だけでも1,220万ヘクタールの熱帯林が失われました(注5)。

森林生態系の破壊は、新型コロナのような新たな人畜共通伝染病の出現との相関を指摘する研究もあり(注6)、森林破壊を止めることが将来のパンデミックを防ぐためにもきわめて重要です。

注1)「森林と金融」データベース(日本語は準備中)

「森林と金融」ブリーフィングペーパー(2021年6月22日更新)

銀行方針評価まとめ(英語:右上のオレンジのボタンからダウンロード可能)

「森林と金融」協力団体:レインフォレスト・アクション・ネットワーク、TuKインドネシア、プ ロフンド(Profundo)、レポーターブラジル、アマゾン・ウォッチ、バンクトラック、Sahabat Alam マレーシア、FoE US。各団体からのコメントは英語のプレスリリースをご覧ください。

注2)方針評価の方法論:54の大手銀行・投資機関の公開されている方針を環境・社会・ガバナンス(ESG)の3分野35項目の基準で採点・分析。各金融機関が基準項目に明確に取り組み、対象企業とサプライヤーに基準を適用していれば10点、サプライヤーに基準が適用されていないなど部分的遵守は8.5点とした。そして35項目の合計得点を0から10ポイントに標準化した。また産品別でも採点され、各金融機関の投融資額の合計に各産品事業が占める割合を算出し、荷重計算の上、合計した数字を総合得点とした。

評価基準35項目の概要:
●環境分野(10項目):森林破壊禁止、泥炭地開発禁止など
●社会分野(10項目):先住民族や地域コミュニティの権利尊重(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則の実施)など
●ガバナンス分野(15項目):投融資の透明性、汚職規制、情報開示など

注3)NGO共同プレスリリース「日本のメガバンク3行の気候関連ポリシー比較を公表:総合評価ではみずほがトップ」、2021年6月21日

参考資料:NGO共同プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出」、2021年3月29日 

注4)RAN、TuKインドネシア、ジカラハリ「三菱 UFJ、森林リスク産品セクターの ESG 方針で後れ:インドネシア子会社 バンクダナモンは方針適用から除外」、2021年4月

注5)Fiona Harvey, “Destruction of world’s forests increased sharply in 2020”, The Guardian, 21 March 2021

注6)Laura S. P. Bloomfield, Tyler L. McIntosh & Eric F. Lambin, “Habitat fragmentation, livelihood behaviors, and contact between people and nonhuman primates in Africa”, Landscape Ecology volume 35, pages 985–1000 (2020)

【7月9日追記】
6月22日時点では、6月8日にグローバルで発表した方針評価を掲載していました。その後、日本の金融機関の方針をレビューして方針評価を更新しました。更新内容は以下の通りです。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(8位:5.1ポイント)→7位 5.4ポイント
みずほフィナンシャルグループ(14位:3.8ポイント)→13位 3.9ポイント
三井住友フィナンシャルグループ(19位:3.1ポイント)→16位 3.3ポイント
31位 三井住友トラスト・グループ(31位:1.8ポイント)→30位1.9ポイント

参考:「森林と金融」ウェビナー(2021年6月11日実施、日本語訳)

団体紹介
レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11-4F
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:みずほ、石炭採掘・化石燃料コーポレートファイナンスなどで進展するもパリ協定の目標達成の水準にはなお及ばず(2021/5/14)

昨日13日、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)が「サステナビリティアクションの強化について」を発表し(注1)、パリ協定の目標と整合するポートフォリオへの転換、化石燃料企業の移行リスクへの対応強化、新規炭鉱採掘への投融資禁止などの方針を明らかにしました。みずほのポリシー改定は、いくつかの点で他のメガバンクよりも前進しており、脱炭素化に向けた方針強化を歓迎します。一方で、現時点でそこに届かない点もあります。今改定をもってしてもパリ協定と整合的であると判断することは難しく、気候危機の緊急性を踏まえて、より具体的な目標や指標、ロードマップの早急な策定が求められます。

みずほ株主総会会場前での環境NGOアクション、2020年6月25日、東京

石炭採掘(一般炭)セクター方針の改定
今般、「新規の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする投融資等は行わない」としたことは他の邦銀に先駆けた方針強化として歓迎します。一方で、「既存の炭鉱採掘(一般炭)を資金使途とする案件については、パリ協定と整合的な方針を表明している国のエネルギー安定供給に資する案件に限り、慎重に検討の上、対応する可能性あり」と例外を残したことは不十分です。

石炭火力セクター方針は抜け穴残す
石炭火力発電所の投融資等停止の例外として「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠、且つ、リプレースメント案件は慎重に検討」「革新的、クリーンで効率的な次世代技術の発展」等の規定を残したことは問題です。現在実用化されていないCCUSやアンモニア・水素混焼等は、2030年までの排出削減にほとんど寄与せず、石炭火力を延命させるものになりかねず、パリ協定1.5度目標に必要な中期目標と整合しません。OECD諸国では2030年までに、世界全体では2040年までに石炭火力発電所を全廃するための具体的なロードマップを描くべきです。

化石燃料企業の移行リスクをセクター方針に追加
「石炭火力発電、石油火力発電、ガス火力発電、石炭鉱業および石油・ガスを主たる事業とする企業は、脱炭素社会に向けた移行が適切になされない場合、移行リスクに晒される可能性があり」「〈みずほ〉は、気候変動に伴う移行リスクへの対応が進展するよう、取引先とエンゲージメントを行い、一定期間を経過しても、移行リスクへの対応に進捗がない取引先への投融資等は、慎重に取引判断を行います」と発表したことについては、今回初めて化石燃料に依存する企業に対するコーポレートファイナンスに踏み込んで対応しようとする姿勢がみられます。ただし、その具体性には欠けています。エンゲージメントの実効性を担保するためにも、パリ協定と整合的な目標・指標を含む具体的なロードマップを示す必要があります。

パリ協定の目標と整合するポートフォリオ
「環境方針」の改定として、「パリ協定における世界全体の平均気温上昇を抑制する目標達成に向けた資金の流れをつくり、 同目標に整合したファイナンスポートフォリオへと段階的に転換を図っていきます」と明確化したことは歓迎されます。一方で、1.5度目標に整合するには(注2)、石炭火力向け与信残高削減目標をコーポレートファイナンスへ適用拡大、より早期の実現、石油・ガスおよび森林関連セクターへ拡大することが求められます。今回、北極圏での石油・ガス採掘事業、オイルサンド、シェールオイル・ガス事業を明記しましたが、環境・社会リスク評価の実施に留まり、パリ協定の整合性に必要な具体的禁止事項が示されるべきです。
また、SMBCグループが投融資ポートフォリオのGHG排出量把握(Scope3)にコミットしたことは重要であり、みずほも続くべきです。

大規模農園(大豆等)セクター、パームオイルセクター
パーム油および木材・紙パルプセクターの顧客企業に限定されていた「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」(NDPE)等の環境・人権方針の策定や、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC、注3)の尊重が、大規模農園(大豆等)セクターにも拡大された点は歓迎します。一方パーム油セクターでは、顧客農園企業に全農園での「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)認証取得を求めるものの、取得予定のない企業との取引も「同水準の対応」であれば可能とし、抜け穴になる可能性があります。方針は顧客の独立系サプライヤーやパーム油購入企業には適用されないため、人権侵害や環境破壊への加担を避けることは困難です。そしてNDPE方針の策定やFPICの尊重を求めるだけでなく、遵守状況の確認も求められます。さらに農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは気候対策面から大きな失敗です。

<各団体からのコメント>
国際環境NGO 350.org Japanキャンペーナーの渡辺瑛莉は「今般のみずほの方針は、石炭採掘の新規投融資停止など、邦銀の中では最も先進的だと言えますが、世界の主要銀行と比べると低い水準に留まっています。パリ協定と整合的なポートフォリオへ転換、化石燃料企業と移行リスクエンゲージメント強化などは具体的な中期目標や指標の設定・公表、化石燃料セクターからのフェーズアウト方針などがなければ、実効性あるポリシーとは見なされません。今後のさらなる方針強化に期待します」と述べました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「昨年、私たちの株主提案は否決されましたが、提案していたパリ協定との整合性を図ることに向けて方針を強化し、コーポレートファイナンスにも踏み込んで対応しようとする姿勢は重要な進展だと考えます。しかしその具体的目標設定に至らなかったこと、石炭火力の延命の可能性を残していることなど、対応はまだ不十分であり、更なる強化が必要です」と指摘しました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク「責任ある金融」シニアキャンペーナーのハナ・ハイネケンは、「投融資先企業との対話を通じてパリ協定と整合する事業を促す意図は評価できますが、気候危機を回避するためには化石燃料の拡大、森林破壊、泥炭地の破壊などを直ちにやめなければいけません。化石燃料及び森林破壊を起こす産品産業への資金提供者として世界トップ10に入るみずほは、現在のポートフォリオを大胆に変えることが必須です」と指摘しました。

注1)みずほフィナンシャルグループ「サステナビリティアクションの強化について」2021年5月13日

注2)詳細はRAN「パリ協定と整合性のある金融機関原則」を参照。

注3)Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)

<本件に関するお問い合わせ>
国際環境NGO 350.org Japan 担当:渡辺 japan@350.org
気候ネットワーク 担当:平田 khirata@kikoent.org
レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN) 担当:関本 yuki.sekimoto@ran.org

プレスリリース:森林&人権方針ランキング2021発表〜日清食品、花王、三菱UFJは低評価 〜 (2021/4/27)

各社、取り組み遅れ〜森林破壊と人権侵害をもたらす消費財企業・銀行17社の実施方針を比較〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日27日、新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2021」(注1)を発表しました。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある消費財企業と銀行の17社を対象に(注2)、各社の方針と実施計画を森林と人権の二分野で評価した結果、自社サプライチェーンおよび投融資で森林破壊と人権侵害を止めるために適切な措置を講じている企業と銀行は一社もないと結論づけました。人権侵害には土地収奪や地域住民および先住民族への暴力なども含まれます。

本ランキングは、日本企業の日清食品ホールディングス、花王、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)を含むグローバル消費財企業と銀行の17社を対象に、森林と人権分野の10項目を20点満点で評価しています。得点に合わせてA(18〜20点)、B(15〜17点)、C(12〜14点)、D(5〜11点)、不可(0〜4点)で評価しました。最も高評価だったのはユニリーバですがCランクにとどまり、日本企業はいずれも最低ランクの「不可」でした。

主な森林・人権方針の評価項目(全10項目、各2点)

「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」(NDPE)採用:パーム油や紙パルプなど森林破壊を引き起こす産品事業の生産・投融資に欠かせない国際基準(注3)

「森林フットプリント」開示:サプライチェーンや投融資先の事業が影響を与える森林の総面積(注4)

「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)原則」の実施:先住民族および地域コミュニティの権利尊重(注5)

暴力や脅迫への「ゼロトレランス」(不容認)方針の有無

NDPE方針遵守の証明・独立検証、など

日本企業は3社とも方針にNDPEを限定的ながら採用するも、森林フットプリント開示、FPIC原則の実施、ゼロトレランス方針の有無、NDPE方針遵守の証明では得点がなく、総合点は2〜4点という低評価となりました。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表の川上豊幸は「日清食品、花王、三菱UFJはいずれも低評価だったのは残念です。3社ともベストプラクティスである『森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止』(NDPE)を方針に採用したことは評価できます。しかし同時に、自社のサプライチェーンや投融資先で起きている人権侵害を止めるための方針策定が急務です。さらにNDPE方針の適用セクターの拡大や遵守のための独立検証、森林フットプリントに代表される情報開示といった、具体的な取り組みを進める必要があります」と訴えました。

日本企業各社の点数と評価概要、改善点

日清食品(2点):グループ全体の調達方針に「NDPEを支持する」と記載しているが、消費財企業10社で最も低評価だった。改善のためには、グループ調達方針に供給業者が遵守すべきNDPE項目を明記し、供給業者にNDPE採用を義務付ける必要がある。またパーム油の搾油工場リストといった供給業者の情報開示を通して、生産地の現状把握と問題対応のための体制強化を行う必要がある。持続可能なパーム油100%調達を2030年までに達成するという目標も大幅な前倒しが必要。

花王(3点):原材料調達ガイドラインで森林破壊ゼロを支持し、人権方針で人権尊重を支持している。供給業者や合弁企業側のグループ全体でのNDPE遵守を要請はしているが、NDPE方針採用の義務化が必要。2021年の活動方針に「人権擁護者への暴力や不当告発、脅迫などを容認しない」とあるが、企業方針となっていないので国際基準のゼロトレランス・イニシアティブ(注6)に沿った企業方針としての公表が必要。そしてインドネシアでの森林フットプリントを作成し公表する迅速な動きが求められる。

MUFG(4点)環境・社会方針を4月26日に改定し、投融資先に「NDPE遵守の公表」の要求を追加したがパーム油の農園企業に限定され、パーム油購入企業や、紙パルプや大豆など他の森林リスク産品セクターには適用されなかった。MUFGはパーム油セクターへの融資・引受額が東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、紙パルプ産業にも多額の融資を提供している。今後、NDPE方針の適用拡大と、投融資先にNDPE方針遵守のための独立検証を求めていくことが課題になる。

17社の消費財企業・銀行の持つ影響力

評価対象となった企業や銀行の多くは、「森林破壊禁止」と先住民族の権利および人権尊重の達成のために、国連「持続可能な開発目標」(SDGs 15.2:2020年までに森林減少阻止)への賛同をはじめ様々なコミットメントを表明して自社方針を策定してきました。しかし、インドネシアの熱帯林と世界中の熱帯林はパーム油や紙パルプ、牛肉、大豆、カカオ、木材製品といった産品のために伐採されて火を入れられ、さら地にされています。

川上は「評価対象となった消費財企業と銀行は熱帯林破壊や土地収奪、人権擁護活動家の殺害といった問題に対して大きな影響力を持っています。なぜならば、インドネシアで大規模な森林破壊や人権侵害を行っている林業やアグリビジネス企業は、グローバル消費財企業との取引に支えられ、大手銀行からは多額の資金が流れているためです。今回の評価と分析からは、人権侵害や森林破壊を止めるための方針策定と、具体的な取り組みを十分に実践している企業がないことが明らかになりました」と指摘しました。

今回の評価では、以下の通り、方針の実施を改善するために必要な手順も示しています:

●第一段階として、自社のサプライチェーンや投融資から森林破壊と人権侵害を停止するための方針を採用すること

●自社事業が森林と先住民族・地域コミュニティの権利に与える影響の全容を公表すること

●暴力的行為を未然に防ぎ、先住民族・地域コミュニティの権利が十分に尊重されることを保証していること

●供給業者や投融資先企業の自社方針遵守を証明すること

森林、特に熱帯林は温室効果ガスを吸収して貯留し、地球全体の降雨量を維持しています。インドネシアの森林は地球で3番目に大きな熱帯林で、地球全体の気候と生物多様性の危機に対処する上で重要な役割をもちます。インドネシアの先住民族と地域コミュニティは森林減少を効果的に防いできた守り手であり、何世代にもわたって森林を上手に管理してきました。そして今、自分たちの同意なしに土地や森林を搾取しようとする様々な企業に抵抗しています。

さらなる森林破壊と人権侵害を防ぐために、森林破壊と人権侵害を行う大手アグリビジネス企業と林業企業に対して大きな影響力をもつ消費財企業と銀行は、実質的な行動を早急に取ることが要求されます。

注1)新報告書「キープ・フォレスト・スタンディング:森林&人権方針ランキング2021〜森林破壊と人権侵害をもたらす企業と銀行の実施方針を評価〜」(日本語版)

方法論等の詳細は英語版を参照ください:「 Keep Forests Standing: Evaluating Brands and Banks Driving Deforestation and Human Rights Abuses」

注2)消費財企業(10社):日清食品、花王、ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、フェレロ、モンデリーズ、マース
銀行(7社):MUFG、JPモルガン・チェース、中国工商銀行(ICBC)、DBS、バンクネガラインドネシア(BNI)、CIMB、ABNアムロ

「キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう」は、RANが2020年4月から展開しているキャンペーンです。熱帯林破壊と人権侵害を助長している最も影響力のある上記の消費財企業・銀行17社に実際の行動を起こすよう要求しています。注3)〜注5)の参考資料としてもご参照ください。

注3)NDPEはNo Deforestation、No Peat、No Exploitationの略。森林減少や劣化に対しての保護(炭素貯留力の高い(High Carbon Stock:HSC)森林の保護、保護価値の高い(HCV: High Conservation Value)地域の保護)、泥炭地の保護(深さを問わず)、人権尊重、火入れの禁止といった要素を含む方針を公表している企業は「あり」の評価を得る。

注4)「森林フットプリント」とは、森林を犠牲にして生産される「森林リスク産品」の消費財企業の利用や、銀行による資金提供によって影響を与えた森林と泥炭地の総面積をいう(影響を与える可能性がある面積も含む)。消費財企業と銀行の森林フットプリントには、供給業者や投融資先企業が取引期間中に関与した森林および泥炭地の破壊地域、さらに供給業者や投融資先企業全ての森林リスク産品のグローバルサプライチェーンと原料調達地でリスクが残る地域も含まれる。森林および泥炭地が先住民族や地域コミュニティに管理されてきた土地にある場合は、その先住民族と地域コミュニティの権利への影響も含む。

注5)「FPIC」(エフピック)とは Free, Prior and Informed Consentの略。先住民族と地域コミュニティが所有・利用してきた慣習地に影響を与える開発に対して、事前に十分な情報を得た上で、自由意志によって同意する、または拒否する権利のことをいう。

注6)「ゼロトレランス・イニシアティブ」ウェブサイト

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず(2021/4/26)

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークの改定について 」(注1)における「特定セクターに係る項目」の石炭火力発電セクターおよび森林、パーム油セクターに関するファイナンス方針の改定を公表しました。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「本改定は、いくつかの部門において対策強化が図られていますが、急を要する気候危機への対応として、なお不十分なものです。日本の金融機関を代表するMUFGには今後、パリ協定の1.5度目標達成に整合した、より野心的な石炭関連の方針を策定し、その他化石燃料や森林破壊を引き起こす産品に関する方針の強化を期待します」と述べました。

本改定でMUFGは、石炭火力発電所の新設に加え、既存発電設備の拡張にも原則としてファイナンスを実行しないと規定しましたが、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS、混焼等の技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合があります」と例外を残しています。CCUSも混焼も2030年までの削減にはほとんど寄与しないと考えられており、石炭火力を延命することにすぎない技術です。これらの技術への支援はパリ協定と整合しません。

国際環境NGO 350.org Japan代表である横山隆美は、「MUFGのセクター方針のスコープは基本的にプロジェクトファイナンスに限定されており、コーポレートファイナンスは含まれていないことは大きな懸念事項です。「脱石炭リスト(Global Coal Exit List)」投融資調査 (注2、3)によると、MUFGの石炭産業 への融資は世界第3位です。石炭火力セクターのポリシーとしてはバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンスへと拡大し、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を策定すべきですが、今回の改訂では踏み込めていません」と指摘しました。

MUFGはまた、熱帯林破壊を引き起こしている企業に資金提供を行っている世界有数の金融機関であり、パーム油および紙パルプセクターの顧客企業に関連するESG(環境・社会・ガバナンス)リスクへのエクスポージャーが高い銀行です。特にパーム油セクターへの融資・引受額は東南アジア以外の地域に本社を置く銀行では最大で、インドネシア6位のバンクダナモンを買収して東南アジアでの存在感を高めつつあります。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「今回の方針改定でパーム油セクターにおいて『森林破壊ゼロ、 泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を遵守する旨の公表を求める』ことが追加されたことは評価できます。しかしNDPE基準の適用はパーム油のプランテーション企業に限定され、パーム油購入企業には適用されず、そして紙パルプなど熱帯林や泥炭地の破壊を引き起こしているパーム油以外の産品に対しても適用されなかったことは非常に残念です。そしてNDPE方針を遵守するための独立検証を求めていないことも課題です。農園開発時の火入れの禁止を明記しなかったことは、気候対策面からは大きな失敗といえます」と指摘しました。

今回の改定ではまた、石油・ガスセクター方針に何らの変更がなく、パリ協定の目標に沿ってフェーズアウトする約束がされなかったのは大きな懸念です。マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGを始め日本の金融機関は化石燃料企業へのエクスポジャーが大きく、中でもMUFGは今年3月にRAN他が発表した調査(注4) では、過去5年間の化石燃料事業への融資・引受額で世界第6位を占め、アジアで第1位を占めました。本改定をもってしても、MUFGの化石燃料セクターポリシーは、諸外国の金融機関と比べても極めて不十分です。昨今、世界の投資家や金融機関による2050年ネットゼロ実現に向けて、投融資による排出をゼロにするコミットメントが相次ぐ中、MUFGは遅れをとっています。」と述べました。

気候ネットワークおよび環境NGOに所属する個人株主3名は今年3月 、MUFGに対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めた株主提案を提出しました(注5)。本改定内容は提案内容とはいまだに乖離があり、パリ協定1.5℃目標に整合していると理解できるものではありません。今後、株主としてMUFGと引き続き協議を進めてまいります。

注1)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2021年4月26日

注2)共同プレスリリース「日本の金融機関が石炭産業への融資総額で世界第1位に」、2021年2月25日

注3)本調査の対象および調査方法はこちらをご参照。

注4)共同プレスリリース「『化石燃料ファイナンス成績表2021』発表〜世界60銀行、パリ協定後も化石燃料に3.8兆ドルを資金提供〜」、2021年3月24日

注5)プレスリリース「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出」、2021年3月29日

英語のプレスリリース:“Japan’s largest bank MUFG tightens coal power and forest sector policies – but far from aligned with Paris Agreement”

本件に関するお問い合わせ

気候ネットワーク 平田仁子 khirata@kikonet.org

マーケット・フォース 福澤恵 meg.fukuzawa@marketforces.org.au

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 関本幸 yuki.sekimoto@ran.org

国際環境NGO 350.org Japan 横山隆美 japan@350.org

NGO共同プレスリリース:三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出(2021/3/29)

〜昨年のみずほFGに続く日本での株主アクション〜

2021年3月29日

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
マーケット・フォース
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
国際環境NGO 350.org Japan

本日、気候ネットワークおよび個人株主3名は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の株主として、同社に対してパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めた株主提案を提出しました(注1・注2) 。これにより、投資家がMUFGの投融資にかかる気候変動リスクを適切に評価し、投資判断できることを確保すること、またMUFGが気候変動リスクを削減し、企業価値を維持向上することを目的としています。
 
MUFGはこれまでに、環境方針やサステナビリティに関する方針を定め、石炭火力事業へのプロジェクト・ファイナンスをゼロにする方針等を掲げています。しかし、今なお国内外の化石燃料や森林破壊に関連する事業に多額の資金提供を続けており、石炭産業への過去2年の融資総額は世界3位、化石燃料部門への過去5年の融資・引受額は世界6位、パーム油産業への過去4年の融資・引受額は世界7位と、気候変動を加速する事業に世界最大規模の融資・引受を行っています。現行の方針では、1.5℃目標の達成に不可欠な2050年ネットゼロを実現できず、パリ協定の目標とは全く整合していません。MUFGが真にネットゼロを達成しようとするならば、例外なく化石燃料や森林破壊への投融資をやめなければなりません。

近年、海外の金融機関らによる石炭火力発電事業への支援中止や投融資からの撤退が進んでいます。最近では、英HSBCが、2040年までに石炭火力発電や発電用石炭開発への融資を段階的に廃止する方針を決定し、全セクターの中短期戦略を含む戦略の策定・公表とその進捗報告について5月の株主総会で提案すると報じられています。また、米シティグループは、石炭火力の拡大を計画する新規顧客への融資を2021年以降引き受けず、今後20年間でほぼすべての石炭火力企業への融資を段階的に廃止する計画を記した方針を、米国大手銀行として初めて発表しています。

気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子は、「MUFGのポリシーは幾分かの強化が図られていますが、現状ではパリ協定と全く整合していません。特にコーポレートファイナンスを含む全ての投融資をパリ協定に整合させるには、会社として、短期及び中期の目標を含む経営戦略を決定し、早々に実質的な行動を起こし、気候変動に伴う投資リスク・評判リスクを招かない対応が必要です。」と述べています。

マーケット・フォース(Market Forces)エネルギーキャンペーン担当である福澤恵は、「MUFGが化石燃料へのファイナンスから軸足を移しきれていないことは、世界的な競争相手行の方針や行動の転換が急速に進む中、株主にとって大きな不安材料です。2040年までに全世界の石炭火力発電所の稼働を停止させなければならない中、プロジェクト・ファイナンスに限定した残高ゼロ目標は不十分です。MUFGは投融資先企業が2040年までに脱石炭を達成するために、どのように支援するか計画を示すべきです。」と指摘しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表である川上豊幸は、「MUFGは、森林破壊や土地紛争といった問題を抱える『紛争パーム油』に最も多額の資金を提供している銀行の一つです。MUFGは膨大な量の炭素を貯留する熱帯林と泥炭地の破壊に資金提供という形で加担しています。しかし、気候変動への影響については一切開示していません。 MUFGは森林破壊の阻止を含む1.5℃目標に整合する方針を示す必要があります。」と強調しました。

また、350.org Japan代表である横山隆美は、「気候危機解決には、パンデミックへの対応と同様に、科学者の知見を取り入れることや、全てのセクターを取り込んだ迅速かつ大胆な対策が必要です。気温上昇を1.5度に抑えるのは時間との勝負であり、ネガティブ・エミッションなど今はない技術に頼ることは若い世代や将来世代に対する責任放棄と同じことです。経済に対し非常に大きな影響力を持つMUFGは、気候危機問題に対し国連責任銀行原則に基づき、責任を持って解決に取り組む必要があります。」と訴えています。 

気候ネットワークおよび共同提案者3名は、MUFGに対する本提案に、多数の投資家の方々からの賛同を求めていく予定です。

株主提案

三菱UFJフィナンシャル・グループへの株主提案(日本語PDF)
The Proposal for MUFG(英語PDF)
投資家向け説明資料:三菱UFJフィナンシャル・グループへの株主提案(日本語PDF)
Investor Briefing:Shareholder resolution filed with MUFG(英語PDF)

注1)本提案は、昨年の気候ネットワークによるみずほフィナンシャルグループに対する株主提案に続く、日本の金融機関に対する気候変動株主提案になります。

注2)豪NGOマーケット・フォース、米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク、国際環境NGO 350.orgは本提案を支持し、それぞれ、エネルギーキャンペーン担当の福澤恵、日本代表の川上豊幸、日本支部代表の横山隆美が個人株主として共同提案に参加します。

連絡先

気候ネットワーク www.kikonet.org
東京事務所:TEL:+81-3-3263-9210
担当者:平田仁子 E-mail: khirata[@]kikonet.org TEL: 090-8430-7453
担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org

マーケット・フォース(Market Forces) www.marketforces.org.au
担当者:福澤恵 E-mail: megu.fukuzawa[@]marketforces.org.au
担当者:鈴木幸子 E-mail: sachiko.suzuki[@]marketforces.org.au

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)japan.ran.org
担当者:関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org

350.org Japan world.350.org/ja/
担当者:横山隆美 E-mail: taka.yokoyama[@]350.org TEL: 090-4668-6653
担当者:渡辺瑛莉 E-mail: eri.watanabe[@]350.org