サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘気候変動’カテゴリーの記事一覧

プレスリリース:RANとボルネオオランウータン、東京都とJSCに通報〜新国立など五輪会場の木材、オランウータン生息地に深刻な危害〜(2018/11/30)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、本日30日(米国太平洋時間29日)、ボルネオオランウータンとインドネシア熱帯林に代わって、東京都と日本スポーツ振興センター(JSC)に、東京五輪会場建設での熱帯材合板の使用が絶滅の危機にあるボルネオオランウータンの生息地を含むインドネシアの貴重な熱帯林を破壊しているとして、苦情を通報しました(注1)。本苦情は、30日から東京で行われる国際オリンピック委員会(IOC)理事会に合わせて提出されました。理事会では東京2020大会の準備進捗について話し合われる予定です。

今回の苦情申し立ては、東京五輪の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」と「持続可能性に配慮した調達コード」にサプライヤー企業や契約企業が違反したとして、新国立競技場を運営するJSCと、有明アリーナを運営する東京都に通報しました。東京2020組織委員会は持続可能性の観点から、合法的に伐採され、「生態系の保全に配慮」し、先住民族と地域住民の権利や労働者の安全対策に配慮した「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来する」木材の調達をサプライヤー企業に求めています(注2)。この苦情は両機関の通報窓口を通じて提出されたと同時に、RAN本部があるサンフランシスコの日本国総領事館へも、オランウータンの着ぐるみを着たRANスタッフによって提出されました。

【苦情の概要】
通報者:ボルネオオランウータン、インドネシアの熱帯林、レインフォレスト・アクション・ネットワーク
被通報者:住友林業などサプライヤー企業、建設会社、設計会社など契約企業数社
通報先:東京都、日本スポーツ振興センター(JSC)※各機関に1通ずつ
内容:熱帯林とオランウータン生息地の破壊
今年5月11日、インドネシアの大手伐採会社コリンド・グループのバリクパパン工場で製造された合板が有明アリーナの建設現場で見つかり、その合板は住友林業によって輸入されていたことが明らかになった(注3)。同工場が2017年に供給した木材の約4割は、植林やアブラヤシ農園、石炭採掘のための皆伐(「転換材」)に由来している。同工場の調達先には東カリマンタン州のオランウータン生息地で皆伐された熱帯林も含まれた。住友林業は、新国立競技場の建設にもインドネシア産合板を提供し、提供した木材に転換材が含まれたことを認めたため、コリンド材が新国立競技場に利用された可能性は高い。RANは東京五輪の木材サプライチェーンを調査し、コリンド社が新国立競技場及び有明アリーナのインドネシア産合板の全部ではないとしても一部を供給していることを新報告書「守られなかった約束」で明らかにし、それに基づいて通報した。

今回の通報に先立ち、RANはWALHI北マルク(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)、Tukインドネシア(トゥック)とともに、東京2020組織委員会、JSC、東京都に、合計4件の苦情を通報しました(注4)。東京五輪施設建設用に、コリンド社の調達した木材が、同国北マルク州の地域コミュニティの土地所有者たちの土地権を侵害しているため、調達基準を違反していることを指摘しました。この主張は今月12日に発表した報告書「ペリラス:コリンド、土地強奪と銀行」(注5)に基づいています。また、RANはオンライン署名「The Olympics vs. the Orangutan(オリンピックvsオランウータン)」も展開し(英語、注6)、IOCと東京五輪関係機関に、コリンドのような問題ある企業からの木材調達を禁止し、合法で持続可能な木材の使用を求めています。11月12日の実施以来、米国を中心にほぼ2万5千人の賛同が集まっています。

RANのシニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは「東京五輪のためにコリンド社の木材を使用することは、東京2020大会の『持続可能性に配慮したオリンピックの実現』という約束に違反します。さらに、2020年までに森林破壊を止めるという持続可能な発展目標(SDGs)の実現をも危うくしています。苦情に記載した違反行為は非常に残念なものですが、明らかになったからには、東京五輪関係機関、日本政府、企業が過ちから学び、このような環境破壊が今後繰り返されないための重要な機会とすることが必要です」と訴えました。

東京2020組織委員会は、NGOからの度重なる要請にこたえる形で、大会の会場建設に使用された熱帯材合板の産地などを公開しました(注7)。2018年5月末時点で、マレーシアとインドネシアの熱帯材合板の少なくとも134,400枚(一般的なサイズは91センチ x 182センチ)が、コンクリートを固めるための型枠に使用されています。これには非認証のインドネシア産合板が大量に含まれ、新国立競技場の建設に110,200枚、有明アリーナ(バレーボール競技場)の建設に8,700枚が使われています。

1990年以来、インドネシアでは2,500万ヘクタール以上の熱帯林が失なわれました。日本は数十年間、インドネシア合板の最大の輸入国です。熱帯林の破壊で、インドネシアは温室効果ガスの主要排出国になりました。10月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の画期的な「1.5度特別報告書」が発表され、12月の気候変動枠組条約締約国会議(COP24)までのこの期間、IOC理事会と東京2020大会主催者が取るべきアクションには重要な意味があります。

東京五輪の木材調達基準は現在改定中です(注8)。東京2020組織委員会の改定案では、森林の農地等への転換に由来する「転換材」の排除を明記し、サプライヤーが伐採地までのトレーサビリティを確保するよう推奨しています。しかしながら、ハイネケンは「コリンド社の木材の使用で明らかになったように、現在の調達基準はあまりにも弱く、容認できません。26日に承認された木材調達基準の改定案でも、インドネシアとマレーシアで森林破壊が加速する要因となっている、日本での熱帯材合板消費におけるデューデリジェンス(相当の注意による適正評価)の欠如には対応できていません。基準を強化するための努力が待たれます」と強調しました。

注1)調達コードに係る通報受付窓口の設置について
注2)「持続可能性に配慮した木材の調達基準」
注3)RANプレスリリース「新報告書『守られなかった約束』発表 〜東京五輪木材供給企業コリンドの熱帯林破壊、 違法伐採、人権侵害が明るみに〜 」
注4)4件の苦情は11月23日と26日に提出。詳細はお問い合わせ下さい。
注5)RAN「ペリラス:土地収奪と銀行」、2018年11月12日
RANは、コリンド社の事業全般における違法行為、環境破壊、コミュニティの権利侵害に関する証拠を明らかにした。
注6)オンライン署名URL
注7)東京2020組織委員会「コンクリート型枠合板の調達状況について」
注8)持続可能な調達ワーキンググループ、第27回 資料(2018年11月26日)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org


声明:東京五輪「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定〜SDGs目標、2020年まで「森林破壊ゼロ」達成には不十分〜(2018/11/27)

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、本日27日、東京2020組織委員会の作業部会で「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定案が26日に提案・了承されたことを受けて、森林の農地等への転換に由来する「転換材」の排除が明記されたことを歓迎するも、合法性以外の基準が適用されない再利用コンクリート型枠の継続利用といった「抜け穴」が残されているなど、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標達成には不十分であるとして、以下の声明を発表しました。

今回の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」改定案に、森林の農地等への転換に由来する「転換材」の排除が明記されたことは評価できる。現在、森林減少の主な要因はパーム油などのための農地への転換のため、持続可能性を担保するには転換材の排除は不可欠である。

しかしながら、既存の基準にも「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来する」との記載がある。アブラヤシ農園などの開発のために天然林の大規模な皆伐を伴う森林の土地利用転換はそもそも中長期的な計画に基づいた森林管理とは程遠く、実質的に「転換材」は排除していると考えられる。よって、今回の改定は明示化とは言えるが、大幅な変更とは言えない。一方、持続不可能で権利を尊重していない木材の使用を許す「再利用」コンクリート型枠合板の「抜け穴」が引き続き残ることを提案している。東京2020組織委員会はSDGsへの貢献を約束しているが、このままでは2020年までに「森林破壊ゼロ」を掲げる「目標15: 陸の豊かさも守ろう」への貢献にも支障が出る。

今年5月、有明アリーナの建設現場で、インドネシア企業コリンド社製造の型枠用合板が使用されていることが見つかった。RANの調査では、日本向けに合板を輸出している同社工場の原料の約4割は、樹木を全て伐採する「皆伐」による転換材であることがわかっている。コリンド製型枠合板が見つかったのは有明アリーナのみであるが、新国立競技場のインドネシア産合板も転換材に由来していた可能性が高い。これらの木材は、既存の「持続可能性に配慮した木材調達基準」を満たしておらず、東京2020組織委員会をはじめ、有明アリーナを管轄する東京都、新国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)が今後どのように対応するかが課題である。

また、改定案では、サプライヤーについて以下の記載も追加された。

「サプライヤーは、伐採地までのトレーサビリティ確保の観点も含め、可能な範囲で当該木材の原産地や製造事業者に関する指摘等の情報を収集し、その信頼性・客観性等に十分留意しつつ、上記 2 を満たさない木材を生産する事業者から調達するリスクの低減に活用することが推奨される」

調達基準を満たさない「木材」だけでなく、基準を満たさない「企業」からの木材調達をリスクとして捉えるリスク低減措置も言及された。そのような措置が言及されたことは進歩だ。しかしトレーサビリティ確認による合法性に関するリスク低減措置は、EU木材法(EUTR)や米国のレイシー法ではすでに義務化されているため、改訂では「推奨」ではなく「義務」とすべきだった。さらに、リスクに基づいたデューデリジェンス、伐採地の森林まで遡る完全なトレーサビリティ、および木材サプライチェーンの合法性及び持続可能性に関する第三者検証を要求すべきであった。

 

◆改定では修正されなかった問題点◆

●合法性の証明については、「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(グリーン購入法)と関連する「木材・木材製品の合法性、 持続可能性の証明のためのガイドライン」に沿って行うという規定が改定案に残っている。これらは証明書類のリスク評価やデューデリジェンスが欠けていると広く批判されており、国際的に認められている基準を大きく下回る。

●「先住民族や地域住民の権利に配慮」する基準に「 自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)に関する検証が含まれなかったこと。紙やパーム油の調達基準にはFPICは含まれていた。

●認証材向けに3割まで利用可能となっている非認証材について五輪の木材調達基準への適合の評価について含まれなかったこと。

参考:RANプレスリリース「新報告書『守られなかった約束』発表 〜東京五輪木材供給企業コリンドの熱帯林破壊、 違法伐採、人権侵害が明るみに〜」(2018年11月12日)

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

メディア掲載:雑誌『DAYS JAPAN』にRANが寄稿しました(2018/11/20)

雑誌『DAYS JAPAN』12月号「特集不都合な東京オリンピック:インドネシア・現地ブラック企業から買い付ける木材、森林伐採天国からの悲鳴」(2018年11月20日発売)〜RANが寄稿しました〜

DAYS JAPANのウェブサイトへ

RIEFでRANアピール行動が紹介されました(2018/9/25)

RIEF(環境金融研究機構)、「環境NGOのRAN、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、改定した人権・環境方針への「実践」を迫る署名2万強を提出。『気候変動 への融資』の停止を求める」(2018年9月25日付)〜サンフランシスコでの三菱UFJへのRANアピール行動が紹介されました〜

「国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、本部米サンフランシスコ)は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がタールサンドのパイプラインや石炭火力発電、そして熱帯林破壊への資金提供等の「気候変動への融資」を増やしているとして、どう融資を止めるよう求める署名を提出した。署名は10日間で、2万4747人をグローバルに集めた。続きを読む

この件についての情報はこちら
「プレスリリース:三菱UFJ子会社のMUFGユニオン・バンクにアピール行動」(2018/9/15)

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々

ブログ:「MUFGユニオン・バンク、気候変動に融資しないで」グローバル気候行動サミットに合わせて(2018/9/20)

ユニオン・バンクの親会社、三菱UFJに環境負荷が高い化石燃料と森林破壊への資金提供停止を求めて

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

ゼロ・カーボンの未来へ移行するためには、銀行は重要な役割を担っています。しかし残念ながら多くの大手銀行は、自然エネルギーなどの持続可能で正しい解決策よりも、化石燃料と森林破壊に多くの資金を提供しており、環境と未来の両方を危険にさらしています。

「グローバル気候行動サミット」(GCAS) は、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事の主催で2018年9月に開催され、大企業が気候変動への新たなコミットメントを発表する機会としてPRされていました。しかし実際は数千人規模の街頭抗議が起き、抗議した人々は、GCASは企業の「グリーンウォッシュ」(*)の場で、他の場所も汚染する新たなお墨付きを与えてしまうと批判しました。*環境配慮の実態がないにも関わらず、あたかも環境に配慮しているように見せかけること。

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々

一週間にわたって、数千もの人々や様々な団体、環境破壊の最前線で抵抗するコミュニティのリーダーたちが気候正義を求めて抗議活動を行いました。GCAS最終日の9月14日、RANら活動家は、ユニオン・バンクのサンフランシスコ本社前に集まり、同銀行の親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して「気候変動に融資しないで」と横断幕を掲げ、気候変動への資金提供停止を求めました。MUFGは日本最大で世界第5位の銀行ですが、実は、気候変動を引き起こしている企業に多額の融資を行なっています。そういった企業は熱帯林を破壊し、世界で最も多くの二酸化炭素を排出する化石燃料を開発して輸送し、燃やしています。

MUFGは、物議を醸している「ダコタ・アクセス・パイプライン」(DAPL)への融資で中心的な役割を果たした銀行の一つでした。この1,172マイル(約1,875km)にもおよぶ石油パイプライン事業は、米国ノースダコタ州スタンディングロックでの数カ月にもわたる先住民族主導による歴史的な抗議に火をつけました。同事業は、国連の代表者らにも先住民族の権利を侮辱したとして非難されています。

MUFGは、他の化石燃料インフラ計画にも資金提供をしています。それには、物議を醸した「キーストーンXL」や「ライン3」といったタールサンド・パイプライン計画、「バイユー・ブリッジ・パイプライン」計画が含まれ、エナジー・トランスファー・パートナーズ社、トランスカナダ社、エンブリッジ社への資金調達を通じて加担しています。RANが4月に発表した「化石燃料ファイナンス成績表2018」に基づくと、MUFGは世界中の石炭火力発電所に資金提供し、2015年から2017年の間の石炭火力発電への融資・引受額では世界5位でした。

シャイアン・リバー・スー族のジョイ・ブラウンさんは、RANとともに、MUFGへの抗議活動に参加しました。彼女は先住民環境ネットワークのコミュニティ・オーガナイザーで、ダコタ・アクセス・パイプライン計画への抗議活動に初日から参加してきました。

ブラウンさんは「三菱UFJのタールサンドやパイプライン建設企業への資金提供は大量虐殺的で、環境及び社会的配慮がほとんどされていません。銀行が私たちの民族や孫たちの生活を脅かし続けることを許しません」と声をあげました。ブラウンさんらは、MUFGの代表取締役に宛てた手紙をユニオン・バンクに手渡し、持続可能な未来の障害となる企業とのビジネスをやめるよう求めました。

MUFGは、化石燃料に固執する企業だけでなく、熱帯林を破壊し、熱帯林破壊に付随して起こる人権侵害や労働権侵害を行っている企業にも多額の資金を提供しています。MUFGは、インドフードなどパーム油大手企業にも融資を続けていますが、こういった企業は熱帯林破壊と労働者搾取が問題視されています。MUFGはインドネシアでの事業拡大の計画があり、森林破壊と人権問題にさらされるリスクがさらに大きくなる可能性があります。

2018年5月15日、MUFGは融資・引受に関する広範な「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を初めて制定しました。これは日本の三メガバンクでも初めての取り組みで、大胆なステップだったといえます。同方針は環境保護に関していくつかの重要な基準や人権尊重を明確に誓約している一方で、気候変動による破壊をもたらす活動への資金提供停止を約束するまでには至りませんでした。現在でもMUFGは、重大な社会・環境影響を引き起こす企業に資金提供を続けています。

MUFGは現行の方針を完全に実践し、かつ方針をさらに強化して、持続可能な未来に貢献することを確かにする必要があります。今こそ、人々と地球を守ることができる方針を制定し、その理念を実際の行動に移すことで、5月に始めた環境・社会配慮への取り組みを完成させるチャンスです。世界はこれ以上待てません。

関連資料
プレスリリース「三菱UFJ子会社のMUFGユニオン・バンクにアピール行動」(2018/9/15)

署名「MUFGユニオン・バンク、気候変動に融資しないで」(英語、MUFG stop bankrolling climate change!)

写真はこちらから

原文:“RAN targets MUFG Union Bank during Global Climate Action Summit: Climate activists demand that parent company MUFG end financing of extreme fossil fuels and deforestation” , September 20, 2018(和訳は2019年5月17日に投稿しました)

プレスリリース:三菱UFJ子会社のMUFGユニオン・バンクにアピール行動(2018/9/15)

〜三菱UFJに森林破壊と環境負荷が最も高い化石燃料への資金提供停止を求めて〜
「グローバル気候行動サミット」開催中のサンフランシスコにて

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々

サンフランシスコ−−環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、14日(現地時間)、環境・人権・先住民族の権利を主張する人々とともに数十名で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)子会社のMUFGユニオン・バンクの本社前でアピール行動を行い、森林破壊及び環境負荷が最も高い「エクストリーム化石燃料」(注1)への資金提供を停止することで「気候変動への融資」を止めるようMUFGに求めました。MUFGは日本最大の銀行で、世界第5位の銀行です。このアピール行動は9月12日から14日にサンフランシスコで開催された「グローバル気候行動サミット」(GCAS)と国連の「責任投資原則」(PRI)主催で毎年開催される、責任ある投資家のための世界最大の国際会議「PRI in Person」にともなって行われました。

RAN責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三菱UFJは、問題の多いタールサンドのパイプラインや世界中の石炭火力発電、そして熱帯林破壊への資金提供を通じて、気候変動に多額の融資をしています。ゼロ・カーボンの未来へ移行するためには、銀行は重要な役割を担っています。しかしあまりにも多くの銀行が化石燃料と森林破壊に資金提供を続け、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)の達成を弱めています。三菱UFJは今年になって融資・引受に関して環境と社会に配慮した方針を制定し、大胆な最初の一歩を踏み出しました。しかし、さらなる改善が求められます」と訴えました。

国際的なキャンペーン団体は、気候変動危機に「油を注ぐような」役割を果たす金融機関に対し、ますます働きかけを強めています。特に日本の銀行は、気候に損害をもたらす産業を支援し、非常に大きな地域的役割を果たしているため、キャンペーン団体から監視の対象とされています。MUFGは今年の株主総会で環境NGOの350.org から批判されました。

先住民環境ネットワークのコミュニティ・オーガナイザーで、シャイアン・リバー・スー族のジョイ・ブラウン氏は「三菱UFJのタールサンドやパイプライン建設企業への資金提供は大量虐殺的で、環境及び社会的配慮がほとんどされていません。銀行が私たちの民族や孫たちの生活を脅かし続けることを許しません」と声をあげました。ブラウン氏は以前、日本に留学生した経験もあります。

MUFGはこれまで、大問題となったダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)への融資で中心的な役割を果たす銀行に含まれていたため、論争と無縁だったわけではありません。DAPL建設はスタンディングロックでの数カ月にもわたる歴史的な抗議に火をつけ、国連の代表者は先住民の権利が侮辱されたと非難しました。MUFGは、他の化石燃料インフラ計画にも資金提供をしています。それには物議を醸したバイユー・ブリッジ、キーストーンXL、ライン3などのパイプライン建設計画が含まれ、エナジー・トランスファー・パートナーズ、トランスカナダ、エンブリッジといった北米のタールサンド・パイプライン建設企業への資金調達を通じて加担しています。RANが4月に発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表2018」(注2)に基づくと、MUFGは世界中の石炭火力発電所に資金提供し、2015年から2017年の間の石炭火力発電への融資・引受額では世界5位でした。

化石燃料だけでなく、MUFGは、気候変動を悪化させる熱帯林破壊と、関連する人権侵害に関わる企業へも資金提供していることがRANの調査で明らかになっています。インドフード社のようなパーム油大手企業にも融資を続けていますが、インドフード社は熱帯林破壊と労働者搾取が問題視されています(注3)。MUFGはインドネシアで事業を拡大しようとしているため、森林破壊と人権問題にさらされるリスクが増大する可能性があります。

今年5月15日、MUFGは融資・引受に関する広範な「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を初めて制定しました。日本の3メガバンクの中でも初めての適用でしたが、気候変動がもたらす破壊的活動への融資・引受を終わらせるまでには至りませんでした。本日のアピール行動に集まった人々は、MUFGは社会及び環境への影響にしっかりと責任を果たしている企業にのみ資金提供し、持続可能な社会の実現に確実に貢献するよう、自社の方針を実行し、かつ強化するよう訴えました。

*MUFGの 環境方針、人権方針、取引先などに適用される環境・社会ポリシーフレームワークの制定についてはこちらをご参照ください。

NGO共同声明「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表」(2018/5/25)

注1)「エクストリーム化石燃料」は最も炭素集約度が高く財務上リスクのある燃料で、石炭採掘、石炭火力発電、エクストリーム・オイル(タールサンド、北極・超深海の石油)、北米での液化天然ガス(LNG)輸出ターミナルが含ま れる。

注2)プレスリリース:新報告書 「化石燃料ファイナンス成績表2018」日本語要約版発表(2018/4/9)

注3)参考:「3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク:インドフード社への事例」(ハナ・ハイネケン、「RIEF環境金融研究機構」への寄稿)

アピール行動の写真はこちらからダウンロードしていただけます。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)