サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘人権侵害’カテゴリーの記事一覧

NGO共同声明:東京五輪「SDGs:2020年森林破壊ゼロ」達成に黄色信号(2019/12/20)

競技場建設による熱帯林破壊について大会当局に説明責任を要求
〜新国立競技場オープニングイベントを受けて〜

国内外のNGO 11団体は、本日20日、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場のオープニングイベント(注1)が21日に開催されることを受けて以下の共同声明を発表し、東京2020大会の施設建設によるインドネシアとマレーシアの熱帯林破壊が国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の「2020年までに森林破壊ゼロ」目標の達成を困難にしていると批判しました。

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

新国立競技場の建設で、東南アジアの熱帯林は多大な犠牲を強いられました。インドネシアとマレーシア産の熱帯材合板の大量使用によって、気候、生物多様性、先住民族と地域コミュニティの権利や生活が犠牲となり、貴重な熱帯林が劣化したり永久に失われることになりました。今日の祝賀ムードの中にあっても、新国立競技場の建設が不必要な損害を熱帯林に与えたことを忘れてはいけません。

東京2020大会当局はSDGsの推進を約束しましたが(注2)、熱帯材の甚大な搾取はSDGs達成を後退させ、特に「ターゲット15.2」(2020年までに森林破壊を阻止し、劣化した森林を回復する)は達成困難です。また「ターゲット15.5」(生物多様性損失の阻止と、2020年までに絶滅危惧種を保護と絶滅防止の対策を講じる)も達成できそうになく、東京2020大会の「SDGs」への貢献には『黄色信号』がともっています。

東京2020組織委員会が公開した情報によって、マレーシアとインドネシア産の熱帯材合板が新国立競技場等の土台のコンクリートを固める型枠として使用されたことが明らかになり、その量は丸太換算で最大6,902立方メートルに相当します(注3)。コンクリート型枠合板は、通常は数回使用された後に廃棄されます。このような使い方は自然資源の破壊的な消費であり持続可能でないとして、広く批判されています。熱帯林の重要性、つまり多くの陸上生物の生息地として、そして二酸化炭素吸収源としてだけでなく先住民族の人々が暮らす場所としての重要性を考えると、東京五輪の施設建設における熱帯材の使い捨ては、持続可能なオリンピックを開催するという日本の公約に違反していることは明らかです。

国立競技場の木材供給企業を詳しく調べると、インドネシア産型枠合板がコリンドという批判の多いインドネシアの企業が供給していることがわかりました。同社は、国立競技場で使われたインドネシア産型枠の全てを供給した可能性があります。コリンド社については、熱帯林伐採、土地収奪、違法行為、脱税問題が問われています(注4)。コリンド社の東京五輪関連の合板サプライチェーンを調べたところ、2017年に製造された合板の4割近くが炭鉱開発やパーム油等の農園開発のために土地転換された熱帯林に由来していることがわかりました。これには絶滅危惧種のボルネオ・オランウータンの生息地の破壊も含まれます(注5)。 また、同社は地域コミュニティの土地権を侵害し、保護価値の高い森林(HCV)地域を含む約3万ヘクタールの天然林を2013年以降にアブラヤシ農園拡大のために皆伐したこともわかっています。最近、森林管理協議会(FSC)はこれらの調査結果が事実であると正式に発表しました(注6)。国立競技場でのコリンド社の木材使用は、これらインドネシアの森林犯罪への東京五輪の関連性の明確な証拠です。

国立競技場は、違法伐採、汚職、土地権侵害の長い歴史があるマレーシア・サラワク州産の木材も相当な量を使用していました。競技場で見つかった木材は、過去に熱帯林破壊と人権侵害に繰り返し関与した伐採企業のシンヤンが供給していました(注7)。シンヤンの木材を国立競技場の建設に供給した合板工場は労働組合に対する差別行為でも批判を受けています(注8)。また以前、世界の6%もの生物多様性の宝庫といわれる「ハート・オブ・ボルネオ」で伐採事業を行なっていました。

私たちNGOは大会当局に、国立競技場と熱帯林破壊及び人権侵害とのつながりについて説明責任を求めています。しかし国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)はこれまで、調達による悪影響について一切責任を取ろうとしていません。2018年11月、RANらはJSCに2件の苦情を通報しました: 1)オランウータン生息地の破壊を含む転換材の使用、2)土地権侵害に関与しているコリンド社の木材使用に関して。苦情を通報してから1年以上が経ちますが、JSCの苦情処理メカニズム(通報窓口)はこの苦情をいまだに通報案件として正式に受け入れておらず、受け入れるかどうか検討していると伝えてきました(注9)。これは苦情処理メカニズムが機能していないことを表しています。

東京大会当局とスポンサー企業は、この国立競技場での残念なレガシーについて説明責任を果たす必要があり、オリンピックのために熱帯林が、これ以上犠牲にならないことを確実にしなければなりません。大会当局は最初のステップとして、大会自体の持続可能性に関する方針に対する違反と、その結果生じた負の影響を公式に認め、苦情処理メカニズムを通じて改善措置の実行に協力する必要があります。また、石炭採掘による森林伐採からの木材も含め、全ての転換材が持続可能ではないと判断されるよう、今年1月に改定した木材調達方針の明確化を行う必要があります。

賛同団体
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、米国)
熱帯林行動ネットワーク(JATAN、日本)
国際環境NGO FoE Japan(日本)
地球・人間環境フォーラム(日本)
ウータン・森と生活を考える会(日本)
サラワク・キャンペーン委員会(SCC、日本)
ブルーノマンサー基金(スイス)
サラワク・ダヤック・イバン協会(SADIA、マレーシア)
Tukインドネシア(インドネシア)
マイティ・アース(米国)
ボブ・ブラウン財団(オーストラリア)
国際NGO EIA(環境調査エージェンシー、米国)

注1)「国立競技場オープニングイベント~HELLO, OUR STADIUM」
注2)国際連合広報センター「国際連合と東京2020組織委員会が東京2020大会を通したSDGsの推進協力に関する基本合意書に署名」、2018年11月14日
注3)東京2020組織委員会「『持続可能性に配慮した木材の調達基準』の実施状況に関するフォローアップについて」、2019年8月2日
公開情報によると、新国立競技場では139,800枚のコンクリート型枠合板が使われた。その内、120,800枚が熱帯材である(117,800枚がインドネシア産、3,000枚がマレーシア産)。
※日本では、コンクリート型枠合板の典型的なサイズは、12X900X1800mm〜15x910x1820mmであり、合板の量を生産において利用する丸太の量に変換する場合に使用される係数は2.3となる(出所: UNECE/FAO)。これは約6,902立方メートルもの丸太材に相当する。
注4)コリンド社は、オフショアのペーパーカンパニーを使って韓国で脱税を行なった疑惑で調査され、韓国国税庁(NTS)から8,500万米ドルの罰金を科せられた。スン・ウンホ会長は不服申し立てをしている。
出典: Seung Eun-Ho vs Kepala Kantor Pajak Seocho, Kasus No. 2016GuHap69079, Tanggal pengumuman keputusan: 24/08/18
注5)RAN他、報告書「守られなかった約束」、2018年11月
注6)FSCジャパン「コリンドグループに対する厳しい改善措置の義務付け」、2019年7月24日
注7)RAN他「2020年東京五輪の熱帯材使用に関する公式な情報開示に対するNGOの解説」、2018年2月16日
注8) 国際建設林業労働組合連盟(BWI)による東京2020組織委員会への苦情, “Complaint by Building and Wood Workers’ International (BWI) & Timber Industry Employees Union of Sarawak”(英語)
注9)参考:RANブログ「東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり」2019年9月9日

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※追記(2019年12月21日)
・2018年10月時点で、コリンドはインドネシアで唯一の型枠用塗装合板メーカーであり(出典:日刊木材新聞、2018年10月16日付)、型枠用塗装合板は新国立競技場の建設現場で広く使われていたことがNGOの調査で確認されていた。また毎日新聞の記事では(2018年11月27日付)、コリンド社の合板を有明アリーナ(五輪のパレーボール競技会場)建設に供給した住友林業が、インドネシア産の転換材を国立競技場建設に提供したことを認めている。

・国際NGO EIA(環境調査エージェンシー、米国)を賛同団体に追加。11団体は声明発表時の数字、現在は合計12団体(12月21日時点)。

メディア掲載:RIEF環境金融研究機構にRANハイネケンが寄稿しました(2019/12/18)

RIEF(環境金融研究機構)にRANハナ・ハイネケン が「日本の3メガバンク含むアジアの銀行。パーム油問題企業の「インドフード」への融資を増加〜欧米銀行の融資停止を穴埋め〜」を寄稿しました(2019年12月18日)

「銀行や投資家には、熱帯林減少の原因となっているパーム油等「森林リスク産品」への投融資に対して、NGOらから厳しい目が向けられています。それは当然で、森林セクターが抱える多くの問題ーー違法性、土地収奪、泥炭地及び熱帯林破壊、森林火災、労働者酷使といった環境、社会、ガバナンス(ESG)リスクは、銀行や投資家にとって重大な評判リスクや財務リスクとなる可能性があるからです。

 しかし日本の3メガバンクを含むアジアの銀行は、このようなESGリスクへの対応が欧米の銀行と比べて明らかに遅れています。(続きを読む)

関連プレスリリース「米シティグループ、パーム油大手インドフードへの融資を停止 〜アブラヤシ農園での労働問題を巡って、3メガは取引継続 みずほが最大の資金提供者〜」 (2019/6/18)

インドフードの農園で働く少年 ©RAN

メディア掲載:HBOにRAN関本幸が寄稿しました(2019/10/22)

ハーバー・ビジネス・オンライン(HBO)にRAN 関本幸が「東京五輪施設建設の『目に見えない部分』に、21万畳分の熱帯材が使われている!?」を寄稿しました(2019年10月22日)

「東京五輪開催まで1年を切った。それとともに、大会中の猛暑対策など、さまざまな問題が現実味を帯びてきている。そのような中、東京五輪で使われた木材と、東南アジアの森林破壊とのつながりが問題視され続けている。「新国立競技場には国産材がたくさん使われているのでは?」と思う人も多いだろう。しかし、47都道府県から提供される国産材は屋根やひさしで使われるだけで、土台のコンクリートを成形する型枠用合板(コンクリートパネル=コンパネ)には、東南アジアからの熱帯材が使われた。 続きを読む )

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

メディア掲載:東洋経済でRAN東京五輪木材関連の調査が紹介されました(2019/10/19)

東洋経済「五輪の施設建設に疑惑、『調達基準』が抱える課題:住友林業が納入した合板に、環境・人権への配慮の欠落が指摘されている」(2019年10月19日)〜RAN報告書「守られなかった約束」での調査が紹介されました〜

「東京五輪・パラリンピックの開催まで1年を切り、都内ではさまざまな大規模施設の建設が急ピッチで進行中だ。そうした中、施設建設に関わる調達をめぐって、厳しい指摘が挙がっている。東京五輪は「持続可能性への配慮」を重要な取り組みの1つと位置づけ、環境や人権、労働問題などを考慮した大会運営を掲げてきた。そのため東京五輪組織委員会は「持続可能性に配慮した調達コード」(調達基準)を定め、物品やサービスの調達を行っている。だが、環境問題や人権問題に取り組むNGO(非政府組織)、レインフォレスト・アクション・ネットワークの川上豊幸日本代表は「環境や人権の問題をはらんだ木材が五輪施設の建設に使われている」と指摘する。 続きを読む 」

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

NGO共同プレスリリース:新報告書『紛争パルプ材植林地』発表〜インドネシア製紙大手APP社と地域社会との対立、数百の紛争を特定〜 (2019/10/3)

〜インドネシア煙害深刻化、森林火災に責任ある企業として地域社会と森林保護の誓約を守るようNGOが要請

サンフランシスコ発ーーインドネシアのNGOとエンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、1日(現地時間)、新報告書『紛争パルプ材植林地:製紙企業アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)のインドネシア各地での紛争概要』(注1)を発表し、紙パルプ世界大手の一社であるAPPが、スマトラ島とボルネオ島の地域コミュニティとの間に起きている数百にのぼる紛争に関係していることを明らかにしました。過去約20年分の資料や記録を集めて分析した調査結果は、同国の5つの州だけで少なくとも107の村・地域コミュニティと、APP関連企業や供給企業との対立が起きたことを説明しています。本報告書は、インドネシアで現在深刻化している煙害(ヘイズ)に責任を負うべき企業の一つとして同社が名指しされた直後に発表されました(注2)

【調査結果】

  • 顕在的紛争(公になった紛争。報告があり特定された紛争)
    APP社とインドネシアの供給企業は107件の「顕在的紛争」に責任がある。紛争が集中している5州と州別内訳件数: リアウ州(50件)、ジャンビ州(30件)、南スマトラ州(16件)、西カリマンタン州(10件)、東カリマンタン州(1件)。
  • 顕在的紛争の理由
    慣習地をめぐる対立、暴力と脅迫や強制的な立退き、事業許可地域と村との境界の重複など。他にも、生計のために認められた事業許可地内での作物自給、企業とコミュニティ間のパートナーシップからの利益配分の不公平、コミュニティ内またはコミュニティ間の対立、作業要員からの村人の排除なども含まれる。
  • 潜在的紛争(植林地の開発により影響を受ける可能性が高い村やコミュニティの事例)
    APP供給企業の森林事業によって影響を受けた村々を分析し、事業許可地内または隣接する544の村で「潜在的紛争」が特定された。面積は2,536,110ヘクタールにのぼる。最も多いのはリアウ州(195村)、次にジャンビ州(120村)、西カリマンタン州(89村)、南スマトラ州(70村)、東カリマンタン州(70村)。

APP社のパルプ材植林地の拡大は批判の的になっており、土地収奪地元住民の立ち退き、時には残虐な暴力など、地域コミュニティに大きな社会的影響を与えてきました。また同社は、過去に危機的な森林火災にも関与していました。特にシンガポールは2015年に、10万人の早期死亡(注3)の原因となった可能性のある2015年の煙害とAPP社が深く関与していると判明した後、同社製品の販売を一時停止しました。APP社はこれらの社会紛争の全てを解決すると誓約を発表しました(注4)が、本新報告書においては、ほとんど進展を確認することはできませんでした。

インドネシアの環境NGO、WALHI(ワルヒ)・ジャンビ事務局長のルディアンシャは「この数ヵ月、森林火災と土地火災による煙害がスマトラ島とカリマンタン島の様々な地域に広がり、大気汚染を深刻化させています。APP社の事業許可地での森林火災による煙害の再発と、事業を行っている地域でのコミュニティとの数百の紛争は同社が誓約した方針の実行に失敗している証拠です」と批判しました。

APP社自身は、木材供給企業と地域コミュニティとの間に数百もの紛争が存在することを認めており、紛争が起きている場所を地図に落とし込み(注5)、自社事業に関連する土地紛争の49%を解決したと主張しています。しかし村の名前や場所、関係する地域の大きさ、過程の詳細、結果など、特定の情報は公開されていません。

EPNの構成団体であるレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の森林シニアキャンペーナー ブリアナラ・モーガンは「APP社は森林と地域コミュニティの保護を約束しましたが、現地の実態は違っています。地域コミュニティとの紛争と、今も起きている煙害は、APP社が森林、地域コミュニティ、そして気候を守るまでの道のりがまだ長いことを表しています。APP社は、現地の実情と報告内容とをきちんと一致させる必要があります。また、必要な変化を成し遂げる過程で偽りがないことを証明するためにも透明性が必要です」と強調しました。

インドネシアNGOによる独立調査の結果は、APP社が社会紛争解決のために誓約を実行している状態には程遠いことを明らかにしました。 同社は社会紛争に関する詳細な情報、及び供給企業の事業許可地内での生物多様性価値と泥炭地評価に関する詳細な報告書の共有を拒否しており、「完全な透明性」(注6)への誓約を守れていないことは大きな問題です。

【調査方法】
本調査の分析のために収集された記録は1996年から2017年の期間で発生した社会紛争の記録である。紛争は集落、地域コミュニティ、先住民族コミュニティの単位別に分類している。記録の情報源は以下の通りである。
 ・一般からの苦情通報
 ・影響を受けた地域コミュニティの人々からの情報
 ・メディア:紙媒体の切り抜きとオンライン記事
収集された記録は、衛星分析と現場での無作為抽出によってさらに検証されている。収集された記録と情報はインドネシアの5つの州 、リアウ、ジャンビ、南スマトラ、西カリマンタン、東カリマンタンを対象としている。

注1)『紛争パルプ材植林地』日本語要約版報告書全文(英語)*英語の報告書全文には、顕在的紛争の一覧(村・コミュニティ名、紛争の種類、紛争の対象となっている面積)が記載されています。

注2)Foresthints.news, “Spreading peat fires in APP concession causing haze”, September 22, 2019

注3)The Guardian, “Haze from Indonesian fires may have killed more than 100,000 people – study”, September 16, 2019

注4)APP, “Forest Conservation Policy

注5)APP, “Progress Monitoring Tool: Overview of Forest Conservation Policy”

注6)APP Forest Conservation Policy: One Year Summary, February 2014

エンバイロンメンタル・ペーパー・ネットワーク(EPN)は、140以上の市民団体で構成される世界的なネットワークで、「グローバルペーパービジョン」に向けて協力して活動しています。このビジョンは、紙の生産と使用が地球上の生命にきれいで健康的、かつ公正で持続可能な未来に貢献するよう、紙パルプ産業及び周辺社会に変革をもたらすという共通の目的を表しています。RANは構成団体の一つです。

レインフォレスト・アクションネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境・森林保護で最前線に立つ人々とのパートナーシップと戦略的キャンペーンを通じて、環境保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動をさまざまな角度から行っています。http://japan.ran.org

WALHI は、インドネシアで最も大きく歴史ある環境政策アドボカシーNGOです。国内31州の内27州に独立した事務所と草の根の構成団体があります。WALHIは、天然資源へのアクセスに関する農業紛争、先住民族の権利、森林破壊など多くの問題に取り組んでいます。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜 (2019/9/23)

東京 — 環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)らNGO21団体は、本日23日(日本時間)、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が支援する責任銀行原則(PRB)の22日の発足をうけて、銀行セクター主導の新イニシアティブを慎重に歓迎しつつ、実質的な好結果を伴うよう要求しました。責任銀行原則には日本の3メガバンクと三井住友信託銀行を含む130銀行が署名しています。*9月24日更新:NGO25団体

責任銀行原則発足のイベントが開催されたBNPパリバ・ニューヨーク支店前でのアクション(2019/9/23)

上記の通り、日本の大手4銀行は国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束しています。その事実には勇気づけらますが、現在の4行の資金提供、特にメガバンクによる資金提供は、グローバルなイニシアティブである責任銀行原則と明らかに矛盾しています。メガバンクによる化石燃料企業や熱帯林を破壊する企業への資金提供、特に東南アジアにおける石炭火力とパーム油への多額の資金提供は、気候危機と自然環境の前例のない悪化を促進しています。メガバンクの資金提供は土地収奪や労働者の権利侵害にもつながっています。

メガバンクと三井住友信託銀行が責任銀行原則の公約を果たすには、化石燃料の拡大や、森林破壊または泥炭地破壊を引き起こす事業への資金提供を直ちに停止し、「1.5度目標」に合致して、化石燃料セクターと森林リスク産品セクターへの資金提供の段階的廃止を約束し、国連のビジネスと人権に関する指導原則の全ての要件を満たすことで事業全体を通して人権と先住民の権利を尊重することが必要です。

NGO共同声明:国連「責任銀行原則」発足をうけて
グリーンウォッシュはもういらない 、好結果がともなう原則を

2019年9月22日

(PDF) (英語の声明)

私たち、以下の署名団体は、本日22日に発足した国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が支援する「責任銀行原則」(PRB)を歓迎します。しかし同時に、この銀行主導によるイニシアティブの有効性には強い懸念を抱いています。

世界は数多くの重大な社会危機と環境危機に瀕しており、地球上の生命の存在そのものが脅かされています。そのため、各銀行が社会および環境に関する責任を自覚し、持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束することが何よりも重要です。本日、130の銀行がこれを公約したことをうれしく思います。

同時に私たちは、この新しい原則が人と地球にどのような好影響をもたらすかについては強い懸念があります。現在策定されている原則には、署名銀行に期待されることと、その達成期限については大きな自由裁量の余地があります。よって、多くのPRB署名銀行を含む、金融セクターの大多数が地球環境の破壊や重大な人権侵害を加速させているという事実が覆い隠され、PRBもまた、環境・社会に配慮しているかのように見せかけた「グリーンウォッシュ」の手段となる恐れがあります。

長期に及んだPRBの策定・署名段階は、BNPパリバのニューヨーク支店での公式発足をもって終わりを迎えます。PRBの創立に参加した30銀行には同原則の導入計画を打ち出す時間が十分にありました。しかし、原則への賛同にあたって発表された各銀行の多数の声明と比較して、これまでのところ、多くのPRB銀行は具体的な計画や誓約の公表していません。

残念なことに、このイニシアティブでは賛同する全ての銀行に野心的かつ具体的な計画と目標の提示を正式署名前に求めておらず、署名銀行は4年以内に原則の実施を証明すればよいことになっています。このような期間設定は、30年前であれば許容されたかもしれません。しかし、今の時代には全くそぐわないものと考えます。

このように必要条件が事前に課されていないため、金融セクターを監視する市民団体であるバンクトラックはこの数週間、PRBを創立した30銀行および早期に署名した29銀行に、各銀行の目標と実行計画を公開することで、PRB発足後すぐに本腰を入れて取り組む よう要請しました。しかし計画を公開して信頼を高める機会とする代わりに、大多数のPRB創立銀行はその要請に無反応か、UNEP FIが起草した定型文を繰り返し、PRBでは長期の導入期間が認められているため現時点での計画の公開は不要だという回答が出されただけでした。

PRB署名銀行の資金提供が招く気候問題と森林破壊

化石燃料産業と森林リスク産品事業の拡大により、気候や自然生態系、人々の生活に大規模な破壊がもたらされています。一部のPRB署名銀行の資金提供が 依然として上記事業の重大な推進要因であることを考えると、緊急行動がますます切実に必要です。

パリ協定採択後の3年間(2016~2018年)で、世界の主要33銀行(内16行はPRB署名銀行)は化石燃料セクターに1.9兆ドルの貸付と引受を行い、その金額は年々増加しています。この内6000億ドルは、化石燃料を積極的に拡大している上位100社に提供されました。PRB署名銀行であるシティグループ、バークレイズ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) 、みずほフィナンシャルグループ(みずほ) はいずれも、パリ協定以降に化石燃料セクターへ融資を行った世界の上位10銀行に入ります。

世界の大手銀行 は、東南アジアやアマゾンの生物多様性が最も豊かな熱帯林地域を含め、世界中の森林の急速な消失にも拍車をかけています。2013年から2018年6月までの間に、多くはパーム油事業を行っている東南アジアを拠点とする103社の森林リスク産品事業に対し、少なくとも622億ドルの貸付と引受が行われました。PRB署名銀行である三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほ、MUFG、中国工商銀行(ICBC) 、CIMBグループ は、これらの企業に融資する業界上位の金融機関です。また、PRB署名企業のBNPパリバ、バークレイズ、シティ、INGグループ 、クレディ・アグリコル も、最近のアマゾンの森林火災に関与しているアグリビジネス企業数社に数十億ドルの与信枠を供与しています(詳細は以下を参照)。

無視される人権への責任

PRB署名銀行を含む世界の大手銀行は土地収奪や、紛争を助長して一般市民に死傷者を出すような武器製造、先住民族の権利を侵害するプロジェクトへの融資に関与しています。しかしPRBでは、銀行には人権尊重の責任があり、それはいかなる場所でも企業の基本要件であることが明記されておらず、基本的な人権方針さえ持たないPRB創立銀行もあります。

PRBは銀行の事業戦略をSDGsやパリ協定に沿ったものとすることを約束させていますが、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)については言及していません。そのため、金融セクターにおいて人権の尊重を推進する大きな機会を逃しています。それどころか、PRBは人権分野におけるUNEP FIの他のイニシアティブを台無しにし、人権をまったく無視しても「責任ある銀行」となりえるという印象を与える恐れがあります。

好結果をともなう原則を

本日、130の銀行が、SDGsやパリ協定の目標達成という大きな社会的目標に、銀行としての自社事業を沿うものとし、目標達成に向けて顧客と協働し、あらゆる利害関係者とともに前進する方法を探ることを公約しました。

事業戦略をSDGsやパリ協定に真に沿ったものとするためには、全てのPRB署名銀行は、化石燃料の拡大や森林・泥炭地の破壊を加速させるあらゆる活動への資金提供を即時停止することを約束しなければならないと固く信じています。また、PRB署名銀行は、自社の資金提供がもたらす影響の包括的な分析と投融資先企業およびプロジェクトの完全な透明性を基盤とし、気温上昇を1.5度に抑えるための道筋に沿って 、化石燃料産業と森林リスク産品事業への投融資の段階的停止を約束しなければなりません。そして最後に、PRB署名銀行はUNGPに準拠した苦情処理メカニズムの確立やメカニズムへの参加を含め、UNGPの全ての要件を満たす必要があることを強調しておきます。

以上のように憂慮はありますが、私たち署名団体は同原則の発展を注意深く見守り、利害関係者との対話に関するPRB原則4の精神に基づいて、署名銀行と市民団体との対話が今後行われることを期待し、歓迎します。私たちは、署名銀行がどれだけ迅速に化石燃料や森林破壊への資金提供を停止し、金融業務を通じて人権および先住民族の権利が確実に尊重されるよう行動を起こせるかに注目し 、PRBの妥当性および信頼性を評価していきます。

***

PRBコミットメントと代表的なPRB署名銀行による資金調達との整合性評価

PRBに署名している銀行で、以下の8銀行は資金提供業務が持続可能ではなく、PRBの誓約と大きな隔たりがあるため、特に注意を払う必要があります。

銀行*=PRB創立銀行
資金提供(融資と引受)とPRBの不整合(B=十億)

シティグループ(米国)*

●世界3位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $129.5B)
●世界2位:化石燃料拡大企業上位100社への資金提供(2016-2018年: $40.0B)
●世界5位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $4.4B)
● アマゾンの森林破壊に関係がある産品取引業者への主な資金提供者

中国工商銀行/ICBC(中国)*

● 世界2位:石炭火力企業 上位30社への資金提供
● 3位:東南アジアで事業を行う紙パルプ企業への資金提供 (2013-2018年: $1.4B)、主に泥炭地破壊、森林火災、社会紛争、違法行為、汚職に関係がある企業

バークレイズ(英国)

●  世界6位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $85.2B)
● 欧州で首位:シェールオイル・ガス企業 上位40社への資金提供、石炭火力企業 上位30社への資金提供
● アマゾンの森林破壊に関係がある産品取引業者への主な資金提供者

CIMB(マレーシア)*

●   世界4位:東南アジアでのパーム油事業への資金提供 (2013-2018年:$1.9B) 

BNPパリバ(フランス)*

●   フランス首位:先進的な資金提供方針にも関わらず、化石燃料産業全体への資金提供(2016-2018年: $51.0B)
● フランス首位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $1.5B)
● アマゾンの森林破壊に関係がある産品取引業者への最大の資金提供者

MUFG(日本)

●  日本首位:パーム油企業への資金提供者(2013-2018年: $2.2B)、違法行為、汚職、森林破壊、搾取に関係がある問題企業を含む
● 世界7位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $80.0B)
● 世界6位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $3.5B)

みずほ(日本)

●  世界3位:東南アジアの森林リスク産品企業への資金提供 (2013-2018年: $3B)、違法行為、森林破壊、搾取に関係がある問題企業を含む
●  世界10位:化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年: $67.7B)
● 世界8位:石炭火力企業 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $3.1B)

SMBC (日本)

●  世界1位:東南アジアの森林リスク産品企業への資金提供 (2013-2018年: $4.5B),、違法行為、森林破壊、搾取に関係がある問題企業を含む
● 世界3位:北極圏の石油・ガス企業 上位30社とLNG輸出ターミナル 上位30社への資金提供 (2016-2018年: $921M, $3.3B)
● 東南アジアでの問題となっている石炭火力プロジェクトへの資金提供者

注)資金提供に関する出典
・レインフォレスト・アクション・ネットワーク他「化石燃料ファイナンス成績表2019」(2019年4月)
・レインフォレスト・アクション・ネットワーク他「森林と金融」データベース

・アマゾンウォッチ、“Complicity In Destruction II: How Northern Consumers and FinanciersEnable Bolsonaro’s Assault on the Brazilian Amazon”, (2019年4月)

署名団体

Johan Frijns
Executive Director
BankTrack

Lindsey Allen
Executive Director
Rainforest Action Network

Osprey Orielle Lake
Founder/Executive Director
Women’s Earth and Climate Action Network (WECAN)

Leila Salazar-López
Executive Director
Amazon Watch

Jennifer Morgan
International Executive Director
Greenpeace

Evert Hassink
Senior Campaigner
Milieudefensie – Friends of the Earth Netherlands

Kuba Gogolewski
Project Coordinator and Senior Finance Campaigner
Fundacja “Rozwoj TAK – Odkrywki NIE”

Andy Whitmore
Co-Chair
London Mining Network

Jan Willem van Gelder
Director
Profundo

満田夏花
国際環境NGO FoE Japan 事務局長

Alexey Zimenko
Director General
Biodiversity Conservation Center

Hrant Sargsyan
Chairman
Eco-club ‘Tapan’

Sviatoslav Zabelin
Coordinator
Socio-ecological Union International

Edi Sutrisno
Executive Director
TuK Indonesia

Zanaa Jurmed
Board Director
Oyu Tolgoi Watch

Eugene Simonov
Coordinator
Rivers Without Boundaries International Coalition

Heffa Schuecking
Director
urgewald

Andreas Missbach
Joint Managing Director
Public Eye

David Pred
Executive Director
Inclusive Development International

Olivia Langhoff
Director of Global Programmes
350.org

Shonan Kothari
Convener
Change Finance

Steve Kretzmann
Executive Director
Oil Change International

(以下、9月24日に追加)
Tom B.K. Goldtooth
Executive Director
Indigenous Environmental Network

Carla Fredericks
Director
First Peoples Worldwide

Khaled Gaiji
President
Friends of the Earth France

David Hillman
Director
Stamp Out Poverty

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org