サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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NGO共同声明:東京五輪は「見せかけのサステナビリティ」(2020/3/30)

〜施設建設で東南アジアの熱帯林を破壊、調達の失敗から教訓を学び是正を〜
東京五輪および「持続可能性大会前報告書」公表延期を受けて

国内外のNGO8団体は、本日30日、東京五輪の延期を受けて、東京2020大会主催者に東京五輪の木材調達による環境および社会への悪影響を認めるよう求める共同声明を発表しました。東京2020組織委員会は持続可能性報告書を3回公表する予定でしたが、2021年までの大会延期によって、2回目の「持続可能性大会前報告書」も延期される見込みです。延期によって、組織委員会はこの報告書を見直し、調達の失敗と教訓を記録し、持続可能性の実現ための明確な道筋を示すことができます。

「本声明の賛同団体は、東京五輪も含め、世界中の人々が現在直面している新型コロナウィルスによる生命、健康、生計手段への深刻な影響による緊急事態を認識している。パンデミックおよびそれに付随する経済的影響への緊急対応が当面の優先事項とされるべきとの認識の下、今回の声明を発表している。しかしながら、地球が急激な気候変動と前例のない生物多様性の損失という二重の危機に直面していることには変わりない。私たちはこれらの危機について人々の意識が東京五輪によって高まり、地球に生きる私たちにとってより持続可能で公正な未来を実現できるよう願っている

東京2020大会主催者は『持続可能な大会』の実施を約束しているが、現状は『見せかけのサステナビリティ』である。五輪施設建設に森林減少を引き起こした大量の熱帯材合板が使用されたことは明確な調達基準違反でありながら、基準の不遵守が起きていないように都合よく非常識な解釈をしている。前回の報告書(注1、2019年3月26日)では、大会主催者はこの問題に向き合わず、持続可能性の約束を守っているかのように見せかけようとしてきた。さらに、指摘された問題から学ぶという姿勢が見られない。このままでは東京五輪は『見せかけのサステナビリティ』でよいという『悪しきレガシー』を後世に残してしまう恐れがある。

大会開催が延期されたため、東京2020大会主催者は大会前報告書を見直し、持続可能性の面での失敗を認めて教訓とし、森林保護に必要な前向きな行動を促進できるはずだ。東京五輪が熱帯林破壊に加担した事実を認めて問題と向き合い、そして問題が起きた経緯を検証し、繰り返さないための対応策を教訓にすることが求められる。できたところだけを評価し、できなかった点は無かったことにしてしまうような、無責任な対応は許されない。持続可能性の担保方法に問題があった点を課題として真摯に認め、その是正策を国と東京都をはじめとする自治体、そして業界が持続可能な調達のために将来参考にできるよう、報告書で提示することが『真のレガシー』である。

森林、特に熱帯林は、地球の気候と降雨パターンを調節する重要な役割を果たしている。また、炭素を吸収かつ貯留し、そこに暮らす人々の生活や水、食料などの基本的ニーズを満たし、生物多様性の保護に不可欠である。森林と野生生物の生息地保護は、新型コロナウィルスのような死に至る感染症の防護物として認識され始めている(注2)。そのため、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)「ターゲット15.2」は2020年までの森林破壊阻止、「ターゲット15.5」は生物多様性損失の阻止及び2020年までに絶滅危惧種保護と絶滅防止の対策を講じることを目標としている。東京五輪はSDGsの推進も約束したが(注3)、熱帯材の大量使用はサステナビリティの取り組みと大きく逆行する。この点は、大会前報告書および大会後報告書に明記し、持続可能性に配慮した調達のための今後の教訓とすべきである

賛同団体
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、米国)
TuK インドネシア(インドネシア)
サラワク・キャンペーン委員会(SCC、日本)
ウータン・森と生活を考える会(日本)
ブルーノマンサー基金 (スイス)
熱帯林行動ネットワーク(JATAN、日本)
国際NGO EIA(環境調査エージェンシー)
国際環境NGO FoE Japan(日本)

  

【これまでの経緯】
NGOは、東京五輪が熱帯林破壊に加担してきた問題を指摘し続けてきた。東京2020組織委員会が公表した情報によると(注4)、夢の島公園アーチェリー会場以外の全ての施設で熱帯合板が利用された。大会施設の基礎工事でコンクリートを成形するために使われた型枠合板は、インドネシアとマレーシア産合計で22万5千枚以上(全体の68%)にも上る。そのうち、持続可能性の認証を取得していないインドネシア産合板が新国立競技場と有明アリーナで、それぞれ約12万枚、約1万枚も使われた。国立競技場で使われたインドネシア産型枠合板は全体の36%を占め、丸太換算で約6,731立方メートルと推計される。これは、国立競技場の屋根等の国産木材使用量2,000立方メートルを上回る(注5)。また、認証されたマレーシア産木材の持続可能性も極めて疑わしい(注6)。以下、持続可能性の公約を守っていない二つの例を提示する。

持続可能でない「転換材」の使用について
第一に、持続可能でない「転換材」が大会施設の建設に使用された点にある。2018年5月、RANなどのNGOの調査によって、東京都が管轄する有明アリーナの建設現場でインドネシア産の型枠合板の使用が見つかった(注7)。この合板を製造した企業の工場では、2017年に製造された合板原料の約4割が炭鉱開発やアブラヤシ農園などの開発のために土地転換された熱帯林に由来していることが、インドネシア政府へ提出された書類によって確認された。その後、同インドネシア産合板を提供した住友林業は有明アリーナ及び新国立競技場の両方に転換材を提供したことを認め、東京都は有明アリーナに調達したインドネシア材のほとんどが転換材であったことを認めた。

このような「転換材」は森林を全面伐採する「皆伐」を伴うため、五輪の木材調達基準に定められた「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林」由来とは言えない。また、科学者によると、すべての陸生種の約3分の2を熱帯林に生息しているといわれ、インドネシアは地球上の生物種の約1〜2割が生息する生物多様性の非常に豊かな国である(注8)。実際、五輪のために皆伐された熱帯林には原生林および絶滅危惧種のボルネオ・オランウータンの生息地の破壊も含まれることもNGOの調査でわかった。そのため、木材調達基準の「伐採に当たって、生態系の保全に配慮されていること」という項目にも反する(注9)。実際、五輪に皆伐された熱帯林には絶滅危惧種のボルネオ・オランウータンの生息地の破壊も含まれることもNGOの調査でわかった。

「通報受付窓口」の機能不全について
第二に、2件の苦情が上記の問題に基づいて大会主催者である東京都と日本スポーツ振興センターに通報されたが、苦情を受け入れず、責任逃れをするような姿勢も、持続可能性の約束を守っていない一例である。

2018年11月、RANは、ボルネオオランウータンと熱帯林を代弁して、新国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センターと有明アリーナを管轄する東京都に、非認証のインドネシア産「転換材」の大量使用及びボルネオ・オランウータンの生息地を含む伐採地からの木材使用を理由に、調達基準の不遵守を通報した(注10)。しかし現在まで16カ月が経ってもこの通報については正式に苦情処理手続きを開始せず、東京都とスポーツ振興センターの対応には、これまでのやりとりで以下の4点の大きな疑問が判明している。

1.東京都の通報制度には、違反が疑わしい事例であれば対象案件とする規定があるが(注11)、不遵守が確定しなければ通報の処理手続きを開始しない、という独自解釈を行っている。

2.2019年1月の木材調達基準改定で「転換材」の調達禁止が追加されたが、東京都は改定前の「転換材」使用は、計画に基づいて農地などに転換され、適切に管理活用されるなら趣旨に反しないと容認されていると、重大な解釈変更を行っている。

3.東京都は、インドネシア政府によるオランウータン生息地評価では不十分で、オランウータンが伐採地にいることを証明できなければ不遵守とはならず、苦情として認めないとしている。

4. 日本スポーツ振興センターは、東京都が都への苦情を却下したという決定に基づき、同センターに通報された転換材の使用に関する苦情を却下した。
(*1〜3は、東京都との面談やメールでの返答、4は日本スポーツ振興センターからのメールでの返答による)

2019年3月に公表された持続可能性進捗報告書では「通報受付窓口」の運用が持続可能性を担保するメカニズムとして記載されたが、NGOの通報によって、このように通報制度が実際には機能していないことが明らかになった。

なお、上記を求めた署名には、世界中から約3万筆の賛同が集まっている。署名は二度にわたってオンラインで実施され、本日、組織委員会、日本スポーツ振興センター、東京都に提出された。同署名は、熱帯林破壊に関する通報を苦情処理の案件として受理すること、東京五輪の木材調達が熱帯林に与えた影響を調査すること、そして今後の調達方針の実施の改善について大会主催者に求めている(注12)。

注1)東京2020組織委員会「『持続可能性進捗状況報告書』の公表について」、2019年3月26日

注2)参考:英ガーディアン紙記事
Coronavirus: ‘Nature is sending us a message’, says UN environment chief」2020年3月25日

‘Tip of the iceberg’: is our destruction of nature responsible for Covid-19?」2020年3月18日

注3)国際連合広報センター「国際連合と東京2020組織委員会が東京2020大会を通したSDGsの推進協力に関する基本合意書に署名」、2018年11月14日

注4)東京2020組織委員会「『持続可能性に配慮した木材の調達基準』の実施状況に関するフォローアップについて」、2020年1月10日(2019年11月末時点。総数は33万1,700枚。その内、国産材は3万9,500枚、再利用は6万6,600枚でその多くは熱帯材である)

注5)注4)の公開情報によると、新国立競技場では117,800枚のインドネシア産コンクリート型枠合板が使われた。日本では、コンクリート型枠合板の典型的なサイズは、12X900X1800mm〜15x910x1820mmであり、合板の量を生産において利用する丸太の量に変換する場合に使用される係数は2.3となる(出所: UNECE/FAO)。これは約6,731立方メートルもの丸太材に相当する。

日本スポーツ振興センター「新しい国立競技場の竣工について」、2019年11月29日
※国立競技場で使われた国産材の少なくとも約9割が集成材であった。そのため、集成材における丸太換算率60%を適用すると(出所:林野庁)、約3,333立方メートルの丸太に相当する。

注6)RAN他「2020 年東京五輪􏰀熱帯材使用に関する公式な情報開示に対する NGO 􏰀解説」、 2018年2月

注7)RAN他、報告書「守られなかった約束」、2018年11月

注8)国際熱帯木材機関「熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ」
ODA見える化サイト「生物多様性保全センター整備計画」

注9)東京2020組織委員会「持続可能性に配慮した木材の調達基準」(2019年1月改定)
※改定で「森林の農地等への転換に由来するものでないこと」が明記されたが、改定前の基準でも「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来するもの」と「森林に由来する」との記載があり、森林ではなくなる「転換材」は基準を満たせなかった。特に非認証材については「当該木材が生産される森林について、森林経営計画等の認定を受けている、 あるいは、森林所有者等による独自の計画等に基づき管理経営されているこ とを確認する」と管理経営されている森林についての中長期的な計画の確認が求められている。

注10)参考:RANブログ「東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり」2019年9月9日

注11) 東京都「『持続可能性に配慮した調達コード』に係る通報受付窓口 業務運用基準」

注12)RANは東京2020大会主催者宛て(東京2020組織委員会、日本スポーツ振興センター、東京都)に、2回の署名を実施した。
2019年11月の署名(英語)
2020年3月11日の署名(英語)

*英語版声明はこちら Joint NGO Statement on Tokyo 2020 Olympics’ “Fake Sustainability”: Organizers called on to learn from & fix procurement failures linked to rainforest destruction in light of the Olympics postponement

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

NGO共同声明:東京五輪「SDGs:2020年森林破壊ゼロ」達成に黄色信号(2019/12/20)

競技場建設による熱帯林破壊について大会当局に説明責任を要求
〜新国立競技場オープニングイベントを受けて〜

国内外のNGO 11団体は、本日20日、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場のオープニングイベント(注1)が21日に開催されることを受けて以下の共同声明を発表し、東京2020大会の施設建設によるインドネシアとマレーシアの熱帯林破壊が国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の「2020年までに森林破壊ゼロ」目標の達成を困難にしていると批判しました。

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

新国立競技場の建設で、東南アジアの熱帯林は多大な犠牲を強いられました。インドネシアとマレーシア産の熱帯材合板の大量使用によって、気候、生物多様性、先住民族と地域コミュニティの権利や生活が犠牲となり、貴重な熱帯林が劣化したり永久に失われることになりました。今日の祝賀ムードの中にあっても、新国立競技場の建設が不必要な損害を熱帯林に与えたことを忘れてはいけません。

東京2020大会当局はSDGsの推進を約束しましたが(注2)、熱帯材の甚大な搾取はSDGs達成を後退させ、特に「ターゲット15.2」(2020年までに森林破壊を阻止し、劣化した森林を回復する)は達成困難です。また「ターゲット15.5」(生物多様性損失の阻止と、2020年までに絶滅危惧種を保護と絶滅防止の対策を講じる)も達成できそうになく、東京2020大会の「SDGs」への貢献には『黄色信号』がともっています。

東京2020組織委員会が公開した情報によって、マレーシアとインドネシア産の熱帯材合板が新国立競技場等の土台のコンクリートを固める型枠として使用されたことが明らかになり、その量は丸太換算で最大6,902立方メートルに相当します(注3)。コンクリート型枠合板は、通常は数回使用された後に廃棄されます。このような使い方は自然資源の破壊的な消費であり持続可能でないとして、広く批判されています。熱帯林の重要性、つまり多くの陸上生物の生息地として、そして二酸化炭素吸収源としてだけでなく先住民族の人々が暮らす場所としての重要性を考えると、東京五輪の施設建設における熱帯材の使い捨ては、持続可能なオリンピックを開催するという日本の公約に違反していることは明らかです。

国立競技場の木材供給企業を詳しく調べると、インドネシア産型枠合板がコリンドという批判の多いインドネシアの企業が供給していることがわかりました。同社は、国立競技場で使われたインドネシア産型枠の全てを供給した可能性があります。コリンド社については、熱帯林伐採、土地収奪、違法行為、脱税問題が問われています(注4)。コリンド社の東京五輪関連の合板サプライチェーンを調べたところ、2017年に製造された合板の4割近くが炭鉱開発やパーム油等の農園開発のために土地転換された熱帯林に由来していることがわかりました。これには絶滅危惧種のボルネオ・オランウータンの生息地の破壊も含まれます(注5)。 また、同社は地域コミュニティの土地権を侵害し、保護価値の高い森林(HCV)地域を含む約3万ヘクタールの天然林を2013年以降にアブラヤシ農園拡大のために皆伐したこともわかっています。最近、森林管理協議会(FSC)はこれらの調査結果が事実であると正式に発表しました(注6)。国立競技場でのコリンド社の木材使用は、これらインドネシアの森林犯罪への東京五輪の関連性の明確な証拠です。

国立競技場は、違法伐採、汚職、土地権侵害の長い歴史があるマレーシア・サラワク州産の木材も相当な量を使用していました。競技場で見つかった木材は、過去に熱帯林破壊と人権侵害に繰り返し関与した伐採企業のシンヤンが供給していました(注7)。シンヤンの木材を国立競技場の建設に供給した合板工場は労働組合に対する差別行為でも批判を受けています(注8)。また以前、世界の6%もの生物多様性の宝庫といわれる「ハート・オブ・ボルネオ」で伐採事業を行なっていました。

私たちNGOは大会当局に、国立競技場と熱帯林破壊及び人権侵害とのつながりについて説明責任を求めています。しかし国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)はこれまで、調達による悪影響について一切責任を取ろうとしていません。2018年11月、RANらはJSCに2件の苦情を通報しました: 1)オランウータン生息地の破壊を含む転換材の使用、2)土地権侵害に関与しているコリンド社の木材使用に関して。苦情を通報してから1年以上が経ちますが、JSCの苦情処理メカニズム(通報窓口)はこの苦情をいまだに通報案件として正式に受け入れておらず、受け入れるかどうか検討していると伝えてきました(注9)。これは苦情処理メカニズムが機能していないことを表しています。

東京大会当局とスポンサー企業は、この国立競技場での残念なレガシーについて説明責任を果たす必要があり、オリンピックのために熱帯林が、これ以上犠牲にならないことを確実にしなければなりません。大会当局は最初のステップとして、大会自体の持続可能性に関する方針に対する違反と、その結果生じた負の影響を公式に認め、苦情処理メカニズムを通じて改善措置の実行に協力する必要があります。また、石炭採掘による森林伐採からの木材も含め、全ての転換材が持続可能ではないと判断されるよう、今年1月に改定した木材調達方針の明確化を行う必要があります。

賛同団体
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、米国)
熱帯林行動ネットワーク(JATAN、日本)
国際環境NGO FoE Japan(日本)
地球・人間環境フォーラム(日本)
ウータン・森と生活を考える会(日本)
サラワク・キャンペーン委員会(SCC、日本)
ブルーノマンサー基金(スイス)
サラワク・ダヤック・イバン協会(SADIA、マレーシア)
Tukインドネシア(インドネシア)
マイティ・アース(米国)
ボブ・ブラウン財団(オーストラリア)
国際NGO EIA(環境調査エージェンシー、米国)

注1)「国立競技場オープニングイベント~HELLO, OUR STADIUM」
注2)国際連合広報センター「国際連合と東京2020組織委員会が東京2020大会を通したSDGsの推進協力に関する基本合意書に署名」、2018年11月14日
注3)東京2020組織委員会「『持続可能性に配慮した木材の調達基準』の実施状況に関するフォローアップについて」、2019年8月2日
公開情報によると、新国立競技場では139,800枚のコンクリート型枠合板が使われた。その内、120,800枚が熱帯材である(117,800枚がインドネシア産、3,000枚がマレーシア産)。
※日本では、コンクリート型枠合板の典型的なサイズは、12X900X1800mm〜15x910x1820mmであり、合板の量を生産において利用する丸太の量に変換する場合に使用される係数は2.3となる(出所: UNECE/FAO)。これは約6,902立方メートルもの丸太材に相当する。
注4)コリンド社は、オフショアのペーパーカンパニーを使って韓国で脱税を行なった疑惑で調査され、韓国国税庁(NTS)から8,500万米ドルの罰金を科せられた。スン・ウンホ会長は不服申し立てをしている。
出典: Seung Eun-Ho vs Kepala Kantor Pajak Seocho, Kasus No. 2016GuHap69079, Tanggal pengumuman keputusan: 24/08/18
注5)RAN他、報告書「守られなかった約束」、2018年11月
注6)FSCジャパン「コリンドグループに対する厳しい改善措置の義務付け」、2019年7月24日
注7)RAN他「2020年東京五輪の熱帯材使用に関する公式な情報開示に対するNGOの解説」、2018年2月16日
注8) 国際建設林業労働組合連盟(BWI)による東京2020組織委員会への苦情, “Complaint by Building and Wood Workers’ International (BWI) & Timber Industry Employees Union of Sarawak”(英語)
注9)参考:RANブログ「東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり」2019年9月9日

本件に関するお問い合わせ先
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
広報:関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

※追記(2019年12月21日)
・2018年10月時点で、コリンドはインドネシアで唯一の型枠用塗装合板メーカーであり(出典:日刊木材新聞、2018年10月16日付)、型枠用塗装合板は新国立競技場の建設現場で広く使われていたことがNGOの調査で確認されていた。また毎日新聞の記事では(2018年11月27日付)、コリンド社の合板を有明アリーナ(五輪のパレーボール競技会場)建設に供給した住友林業が、インドネシア産の転換材を国立競技場建設に提供したことを認めている。

・国際NGO EIA(環境調査エージェンシー、米国)を賛同団体に追加。11団体は声明発表時の数字、現在は合計12団体(12月21日時点)。

メディア掲載:HBOにRAN関本幸が寄稿しました(2019/10/22)

ハーバー・ビジネス・オンライン(HBO)にRAN 関本幸が「東京五輪施設建設の『目に見えない部分』に、21万畳分の熱帯材が使われている!?」を寄稿しました(2019年10月22日)

「東京五輪開催まで1年を切った。それとともに、大会中の猛暑対策など、さまざまな問題が現実味を帯びてきている。そのような中、東京五輪で使われた木材と、東南アジアの森林破壊とのつながりが問題視され続けている。「新国立競技場には国産材がたくさん使われているのでは?」と思う人も多いだろう。しかし、47都道府県から提供される国産材は屋根やひさしで使われるだけで、土台のコンクリートを成形する型枠用合板(コンクリートパネル=コンパネ)には、東南アジアからの熱帯材が使われた。 続きを読む )

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

メディア掲載:東洋経済でRAN東京五輪木材関連の調査が紹介されました(2019/10/19)

東洋経済「五輪の施設建設に疑惑、『調達基準』が抱える課題:住友林業が納入した合板に、環境・人権への配慮の欠落が指摘されている」(2019年10月19日)〜RAN報告書「守られなかった約束」での調査が紹介されました〜

「東京五輪・パラリンピックの開催まで1年を切り、都内ではさまざまな大規模施設の建設が急ピッチで進行中だ。そうした中、施設建設に関わる調達をめぐって、厳しい指摘が挙がっている。東京五輪は「持続可能性への配慮」を重要な取り組みの1つと位置づけ、環境や人権、労働問題などを考慮した大会運営を掲げてきた。そのため東京五輪組織委員会は「持続可能性に配慮した調達コード」(調達基準)を定め、物品やサービスの調達を行っている。だが、環境問題や人権問題に取り組むNGO(非政府組織)、レインフォレスト・アクション・ネットワークの川上豊幸日本代表は「環境や人権の問題をはらんだ木材が五輪施設の建設に使われている」と指摘する。 続きを読む 」

※関連声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害: 東京五輪開幕まで1年、IOCへ文書を送付、抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 『東京五輪のレガシー』としないために」(2019/7/24)

東京五輪開幕1年前セレモニーが開催された東京国際フォーラム前でアピール(2019年7月24日)

ブログ:東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり(2019/9/9)

責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

2020年の東京五輪開幕まで1年を切りました。東京2020大会の主催者が「持続可能なオリンピックを開催する」という約束をしっかり守っているかどうか、今こそ現状を把握しなければなりません。

答えを一言でいうと、主催者は約束を守っていません。そして、自分たちの過ちを隠そうとしています。

NGOによる継続的なキャンペーンの成果で、東京2020組織委員会は競技会場の建設で使われた熱帯材合板の数量の情報を開示しました。その結果、21万枚以上もの膨大な量の熱帯林由来の合板が建設に使用されたことがわかり(2019年5月末時点)、私たちNGOは衝撃を受けました。そして、その半数以上が「新国立競技場」の建設で使われていたことも判明しました。実際「夢の島公園アーチェリー会場」を除いて、東京2020大会のために新たに建設されるほとんどの競技会場ではマレーシアまたはインドネシア産の熱帯材合板を使用しています。

2018年秋、レインフォレスト・アクション・ネットワークは、協力団体の TuKインドネシアとWALHIと行った共同調査で、東京五輪の主なコンクリート型枠サプライヤーであるコリンド社が、世界で最も豊かな生物多様性を誇る熱帯生態系で森林伐採を行ない、地域コミュニティの土地を違法に強奪していたことを明らかにしました。私たちは、コリンド社が住友林業を通じて供給した木材について、東京の五輪施設建設現場から、パーム油生産のために伐採されたインドネシアの原生林までのサプライチェーンを追跡しました。また、絶滅が危惧されるボルネオ島のオランウータンの生息地からも、コリンド社が木材を調達していたことも突き止めました。これは最悪の持続可能でない調達でした。現地を取材した映像をご覧ください。

*動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏
(Centre for Orangutan Protection 代表)

そこで私たちNGO3団体は、3つの五輪主催者(東京2020組織委員会、東京都、日本スポーツ振興センター(JSC))それぞれに2件の苦情を通報し、是正を求めました。さらに「ともだち」のオランウータンの「ストロベリー」といっしょに、サンフランシスコの日本国総領事館で要請文を手渡しました(動画)。そしてRAN会員らの協力を得て、東京五輪主催者が、森林減少、人権侵害、生息地喪失に拍車をかけていることを批判し、持続可能性についての約束を守るよう求める声を上げました。

東京2020組織委員会の名誉のために伝えておくと、一定の進展はあったものの、熱帯林を保護し、五輪の影響を受けている地域コミュニティの権利を尊重するには決して十分とは言えません。

2019年1月、東京2020組織員会は「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を改訂し、パーム油生産などのために大規模農園に転換された森林で伐採された木材の調達を明確に排除しました。国際オリンピック委員会(IOC)は「持続可能な調達に関する指針」(Olympic Games Guide on Sustainable Sourcing)を2019年4月に発表し、「森林減少ゼロ誓約に関する進捗状況をモニタリングし、保護価値の高い森林環境の保護を促進する調達方針」の採用を求めました。こうした対策は適切なように見えますが、結局は実施と執行状況次第です。残念なことに今年の7月、高リスクのマレーシア・サラワク州産熱帯材合板が、五輪施設の建設でいまだに使われていることがわかりました。東京2020組織員会ら主催者は、自分たちの調達方法の失敗を全く認めていないようです(参考:「持続可能性進捗状況報告書」)。

同様に懸念されるのは、東京五輪主催者がすでに起こした被害について、いまだに責任を問われていないという事実です。この記事を書いている時点で、私たちNGOが提出した6件の苦情のうち3件は却下され、そのうちの1件は非常に疑問の残る理由で却下されました。それは、コリンド社の木材使用に関して、有明アリーナを管轄する東京都に通報した苦情です。通報してから音沙汰がないまま数カ月が経った後に、木材供給会社から受け取った情報と矛盾するという理由で却下されました。しかもそれはNGOの苦情が通報された「後」に会社から提供された情報で、私たちには開示できないと言われました。この苦情が対象案件として正式には受理されないままとなっていたにも関わらずです。これは「苦情処理メカニズム」のあるべき姿ではありません。少なくとも、世界で通用する国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に説明されている原則に沿っていません。皮肉なことに、日本政府も東京2020組織委員会いずれもこの指導原則を支持しており、彼らの言葉と行動が一致していないことは明らかです。

では、私たちは何をしてきたのでしょうか? まず第一段階として、国際オリンピック委員会(IOC)に上記の問題を提起しました。定期的に開催されるIOCと東京2020主催者の間の調整委​​員会合の数日前に、私たちは東京五輪の苦情処理メカニズムが実際に機能しているか、また「ビジネスと人権に関する指導原則」と一致しているかどうかを、徹底的に調査するよう求める書簡 を送りました。

一方で、私たちNGOは、木材以外で熱帯林と人権をおびやかすような東京五輪の調達事例、特に紙・パルプおよびパーム油の調達にも注意を払っています。ご存知の通り、日本は、炭素集約度の高いインドネシアの熱帯泥炭地で生産されたパルプを原料とする紙製品の大量消費国です。また、ますます多くの日本企業が自社製品にパーム油を使用するようになっています。そのため、今すぐ行動しなければ、東京五輪によってさらなる被害が熱帯林に及ぶことが非常に現実的になっています。

東京五輪に関する話題はまだ続きます。

動画「東京五輪開幕まで1年 熱帯林の破壊をやめて!」アピール行動
(2019年7月、東京国際フォーラム前にて)

英語のブログはこちら(2019/8/7)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

プレスリリース:東京五輪スポンサー日清食品に「森林破壊フリーの東京五輪に!」署名開始〜問題あるパーム油を使わないで〜 (2019/8/21)

〜「即席ラーメン記念日」を前に、日清食品にパーム油調達方針の強化を求めて〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日21日、日清食品ホールディングスにパーム油調達方針の強化を求めて、「日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜問題あるパーム油を使わないで〜」署名の日本語版を開始しました(注1)

東京2020大会まで1年を切り、同社に東京五輪スポンサー企業として、パーム油調達の方針強化を実施するよう、日本の消費者と共に働きかけていきます。日清食品は8月25日を「即席ラーメン記念日」とし、1958年のこの日に「チキンラーメン」を初めて発売したことにちなんでいます。

本署名は、署名サイト「change.org」で展開され、宛先は日清食品ホールディングス安藤宏基取締役社長 CEOです。日清食品が「持続可能性」を追求する東京2020五輪・パラリンピックの「オフィシャルパートナー」(スポンサー)であることから、環境面・社会面におけるパーム油調達方針の強化が求められます。パーム油は同社の看板商品である『カップヌードル』の揚げ油として利用されていますが、アブラヤシ農園開発による熱帯林破壊や、生産国での人権侵害など多くの問題が指摘されています。方針の具体的な強化内容としては、森林破壊ゼロを基本に、インドネシアやマレーシアなどパーム油生産国の熱帯林及び泥炭地の保護、アブラヤシ農園での労働権保護、先住民族や地域コミュニティの土地権を含む人権尊重が挙げられます。英語版の署名(注2)は2018年1月18日より開始し、これまで米国を中心に16,800筆が集まっています。

【日清食品のパーム油調達方針と実施について】
日清食品グループでは、今年から持続可能なパーム油円卓会議(RSPO)の認証油の利用を開始しました。しかし「マスバランス」(MB)と呼ばれる方法による調達で、非認証パーム油が混入されています。そのため、パーム油産業が引き起こしている森林破壊や気候変動への影響、様々な人権侵害といった問題への対応は困難です。

日清食品ホールディングスのウェブサイトによると、現在のグループ全体のRSPO認証パーム油使用量の比率は20%程度にとどまっています。同社は、2025年までにその比率を25%にまで高めることを目標としていますが、それでは不十分です。利用する全てのパーム油について、森林破壊や人権侵害などの、問題がある農園や企業から調達されていないかどうかを確認する「NDPE方針(森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)」を採択するなど、責任ある調達に早急に取り組む必要があります。すでにネスレ、ハーシーズ、ケロッグ、ユニリーバなどの欧米企業は、NDPE方針の実施に取り組んでいます。

【日清食品のパーム油調達における取り組みの経過】
RANは、2013年に「スナック食品20キャンペーン」を開始し、日清食品に調達方針の策定及び問題点への対応を求める要請文を送付しました(注3)。日清食品はこれを受けて、パーム油調達方針を策定。同年、日清食品USAがRSPOに加盟しました。現在はRSPO認証油を全て利用していますが、非認証油が混入されているMBです。続いて日清食品ハンガリーも2016年にRSPOへ加盟し、現在は、非認証油の混入がない「セグリゲーション」(SG)のRSPO認証油を全て利用しています。

日清食品ホールディングスは2017年10月にRSPOへ加盟。日本では、2019年3月からRSPO認証油を利用開始していますがMBです。

注1)RAN「日清食品さん、森林破壊フリーの東京五輪に! 〜 問題あるパーム油を使わないで〜」署名
注2)RAN英語版署名「Olympic Sponsor Nissin Foods At Risk of Conflict Palm Oil」
注3)RAN「スナック食品20キャンペーン」は、20社の食品・菓子企業に、パーム油の調達方針の強化と、問題あるパーム油の排除を求めて、2013年に開始したキャンペーンです。日本からは日清食品と東洋水産が対象企業の20社に入り、調達方針制定と対応の遅れが指摘されました。英語のウェブサイトはこちら

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org